説明

腫瘍壊死因子関連リガンド

【課題】TNFファミリーのメンバーであるさらなる分子を同定および特徴付し、それにより疾患を制御しそして免疫系を操作するさらなる手段を提供する。
【解決手段】新規の腫瘍壊死因子関連リガンド(TRELL)をコードするDNA配列またはそれらのフラグメントであって、1つの実施形態において、TRELLをコードするDNA配列であって、該配列が本質的にヒトTRELLに由来する特定のDNA配列と相同であって、該DNAがポリペプチドをコードし、該ポリペプチドが本質的にヒトTRELLに由来する特定のアミノ酸配列と相同である。また、少なくとも1つのフラグメントにハイブリダイズするDNA配列であって、該フラグメントが少なくとも20の連続した塩基を含み、該DNA配列がTRELLの活性部位と少なくとも30%相同であるポリペプチドをコードする、DNA配列。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、腫瘍壊死因子関連リガンドまたは「TRELL」(腫瘍壊死因子ファミリーのメンバーであるポリペプチド)に関する。このタンパク質またはそのレセプターは、抗ガンおよび/または免疫調節適用を有し得る。さらに、TRELLの遺伝子でトランスフェクトされた細胞は、腫瘍、自己免疫疾患、炎症性疾患、または遺伝性遺伝子疾患を処置するための遺伝子治療において使用され得る。
【0002】
本明細書に記載された発明は、その一部が、Swiss National FundからIrene Garciaへの助成金第31-42275.94号および第32-41729.94号の下での研究の過程でなされた。Swiss National Fund法の第28項および第29項に記載される権利が留保される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腫瘍壊死因子(TNF)関連サイトカインは、宿主防御および免疫調節のメディエーターである。このファミリーのメンバーは、膜アンカー形態で存在し、細胞−細胞接触に通じて局所的に作用するか、またはより遠位の標的へ拡散し得る分泌タンパク質として作用する。同様なファミリー(parallel family)のレセプターは、これら分子の存在をシグナル伝達し、標的組織における細胞死または細胞増殖および分化の開始を導く。現在、TNFファミリーのリガンドおよびレセプターは、少なくとも9つの認知されたレセプター−リガンド対を有する。この対には、TNF:TNF-R;LT-α:TNF-R;LT-α/β:LT-β-R;FasL:Fas;CD40L:CD40;CD30L:CD30;CD27L:CD27;OX40L:OX40および4-1BBL:4-1BBが含まれる。これらのリガンドをコードするDNA配列は、最も関連する場合においてさえ、僅かに、約25%〜約30%の同一性を有するのみであるが、アミノ酸関連性は約50%である。
【0004】
このファミリーのサイトカインレセプターを規定する特徴は、2つの異なるTNFレセプターの分子クローニングによって最初に明らかにされた、システインリッチな細胞外ドメインに見出される。このファミリーの遺伝子は、細胞外リガンド結合ドメイン、一回膜貫通領域、および細胞機能の活性化に関与する細胞質領域と共に、I型膜貫通タンパク質に特徴的な糖タンパク質をコードする。システインリッチなリガンド結合領域は、強固に結合したジスルフィド結合コアドメインを示す。このドメインは、特定のファミリーメンバーに依存して、複数回反復される。ほとんどのレセプターは4つのドメインを有するが、3つ程度または6つ程度が存在し得る。
【0005】
TNFファミリーのリガンド中のタンパク質は、膜透過停止配列として働くと考えられるいくつかのリジン残基またはアルギニン残基をしばしば含む、通常短い親水性アミノ酸からなる短いN末端領域によって特徴付けられる。次に、膜貫通領域、および膜からC末端のレセプター結合ドメインを引き離す、種々の長さの細胞外領域が続く。この領域は、時々「ストーク」と呼ばれる。C末端結合領域は、このタンパク質の大半を含み、そしてしばしば(しかし常にではない)グリコシル化部位を含む。これら遺伝子は、I型膜タンパク質に特徴的な古典的なシグナル配列を欠き、C末端が細胞の外部に横たわり、そして短いN末端が細胞質にあるII型膜タンパク質を有する(having)。いくつかの場合(例えば、TNFおよびLT-α)において、ストーク領域における切断は、タンパク質プロセシングの間の初期に生じ、次いでリガンドは、主に、分泌形態で見出される。しかし、ほとんどのリガンドは、膜形態で存在し、局所的なシグナル伝達を媒介する。
【0006】
これらリガンドの構造は、TNF、LT-α、およびCD40Lの結晶解析によって十分に規定された。TNFおよびリンホトキシンーα(LT-α)は共に、2つの逆平行βプリーツシートと「ゼリーロール」とのサンドイッチまたはグリークキートポロジーの構造をとる。Cαとβストランド残基との間のrms偏差は、0.61Cである。このことは、それらの分子トポグラフィーにおける高度な類似性を示唆する。CD40L、TNFおよびLT-αの分子研究から明らかにされた構造的特徴は、オリゴマー複合体を組み立てる性向である。多価リガンドを生じる、隣接するサブユニット間の接合部でのレセプター結合部位の形成は、オリゴマー構造に固有である。TNF、CD40LおよびLT-αの四次元構造は、結晶構造の分析によって、トリマーとして存在することが示された。異なるリガンド間で保存される多くのアミノ酸は、骨格βシートの領域に存在する。基本的なサンドイッチ構造は、これら分子のすべてにおいて保存される可能性が高い。なぜなら、これら骨格配列の部分は、種々のファミリーメンバーにまたがって保存されるからである。サブユニットのコンホメーションも同様に保持される可能性が高いので、四次元構造もまた維持され得る。
【0007】
TNFファミリーメンバーは、細胞の生存および分化の両方を制御する免疫系においてマスタースイッチとして、最も適切に説明され得る。TNFおよびLTαのみが、現在、TNFファミリーの他の大部分の膜にアンカーされたメンバーとは対照的に、分泌サイトカインとして認知されている。TNFの膜形態は十分に特徴付けられ、そして固有の生物学的役割を有する可能性が高い一方、分泌TNFは、引き金となる事象の部位からより遠位の細胞への一般的な警報シグナル伝達として機能する。したがって、TNF分泌は、脈管構造裏打ちの十分に記載された変化および細胞の炎症状態を導く事象を増幅し得る。対照的に、このファミリーの膜結合メンバーは、直接接触した細胞に対してのみ、TNF型レセプターを通じてシグナルを送る。例えば、T細胞は、コグネイトTCR相互作用を介して、直接接触したB細胞に対してのみ、CD40を媒介する「ヘルプ」を提供する。細胞死を誘導する能力についての同様な細胞−細胞接触限定は、十分に研究されたFas系に適用される。
【0008】
プログラムされた細胞死を誘導する能力は、TNFファミリーのいくつかのメンバーの重要で十分に研究された特徴である。Fas媒介アポトーシスは、末梢および多分胸腺において、自己反応性リンパ球の調節で役割を果たすようであり(Castroら、1996)、そして最近の研究もまた、T細胞および大細胞未分化リンパ腫株の生存におけるTNFおよびCD30系を示した(Amakawaら、1996;Grussら、1994;Sytwuら、1996;Zhengら、1995)。本発明者らおよび他の研究者は、以前に、TNF、FasまたはLTbレセプターシグナル伝達に応答したこの株の死滅が、アポトーシスの特徴を有することを示した(Abreu-Martinら、1995;Browningら、1996)。
【0009】
細胞死を誘導する能力に基づいて、TNFリガンドは3群に分けられ得るようである(表III)。第1に、TNF、FasリガンドおよびTRAILは、多くの株において細胞死を効率的に誘導し得、そしてそれらのレセプターは、ほとんどが、良好な容認された死滅ドメインを有する可能性が高い。おそらく、DR-3に対するリガンド(TRAMP/WSL-1)もまた、このカテゴリーに分けられる。次に、僅かに少数の細胞型に限定されたより弱い死滅シグナルの引き金となるリガンドが存在し、そしてTRELL、CD30リガンドおよびLTalb2は、このクラスの例である。容認された死滅ドメインの非存在下で、この群がどのように細胞死の引き金となり得るかは、興味ある疑問であり、そして別個のより弱い死滅シグナル伝達機構が存在することを示唆する。最後に、死滅シグナルを効率的に送達し得ないメンバーが存在する。おそらく、すべての群が、細胞分化(例えば、CD40)の誘導の結果として、いくつかの細胞型に対する抗増殖効果を有し得る(Funakoshiら、1994)。
【0010】
TNFファミリーは、近年、劇的に増えて、免疫系の調節を含む少なくとも11の異なるシグナル伝達経路を包含する。TRELLおよびTRAILの発現パターンは、このファミリーに、発見されるべき、なおより多くの機能的変種が存在することを示す。この局面は、ラウス肉腫および単純ヘルペスウイルスの複製能力に影響する2つのレセプターの発見、および、TNFが抗ウイルス活性を有し、そしてポックスウイルスがデコイTNFレセプターをコードするという歴史的知見により、近年特に強調されている(Brojatschら、1996;Montgomeryら、1996;Smith、1994;Vassalli、1992)。可溶性TRELLの作製およびTRELLレセプターの同定は、この興味深いタンパク質の生物学的機能を解明するためのツールを提供するにちがいない。
【0011】
TNFは、敗血性ショックおよび敗血症のメディエーターであり、そして造血細胞発達の調節に関与する。これは、炎症、ならびに細菌、ウイルスおよび寄生生物の感染に対する防御のメディエーターとして主要な役割を演じ、そして抗腫瘍活性を有するようである。TNFはまた、異なる自己免疫疾患に関与する。TNFは、いくつかの型の細胞(マクロファージ、線維芽細胞、T細胞およびナチュラルキラー細胞を含む)により産生され得る。TNFは、2つの異なるレセプターに結合する。これらレセプターは、それぞれ、特異的な細胞内シグナル伝達分子を通じて作用し、したがってTNFの異なる効果を生じる。TNFは、膜結合形態または可溶性分泌サイトカインのいずれかとして存在し得る10
【0012】
LT-αは、TNFと多くの活性(すなわち、TNFレセプターへの結合11)を共有するが、TNFとは異なり、主として活性化されたT細胞およびいくつかのβリンパ芽球腫瘍によって分泌されるようである12。LT-αとLT-βとのヘテロマー複合体は、LT-βレセプターに結合する膜結合複合体である13。LT-βの遺伝子崩壊が、膵臓におけるTおよびB細胞の混乱およびリンパ節の不在を導くので、LT系(LTおよびLT-R)は、末梢リンパ系器官の発達に関与するようである14。LT-β系はまた、いくつかの腺ガン細胞株の細胞死に関与する15
【0013】
Fas-L(TNFファミリーの別のメンバー)は、活性化されたT細胞に優勢に発現される16。これは、そのレセプターを有する細胞(腫瘍細胞およびHIV感染細胞を含む)の死滅を、プログラムされた細胞死またはアポトーシスとして知られる機構によって誘導する17。さらに、FasまたはFas-Lのいずれかの欠損は、リンパ増殖性障害を導き得る。このことは、免疫応答の調節におけるFas系の役割を確認する18。Fas系はまた、肝炎慢性感染に起因する肝臓障害19およびHIV感染患者における自己免疫20に関与する。Fas系はまた、HIV患者におけるT細胞破壊に関与する21。TRAIL(このファミリーの別のメンバー)もまた、多様な起源の、広範囲の形質転換細胞株の死滅に関与するようである22
【0014】
CD40-L(TNFファミリーの別のメンバー)は、T細胞に発現され、そしてCD40を有するB細胞の調節を誘導する23。さらに、CD40-L遺伝子の改変は、X連鎖高IgM症候群として知られる疾患を生じる24。CD40系はまた、異なる自己免疫疾患に関与し25、そしてCD40-Lは、抗ウイルス特性を有することが知られている26。CD40系は、アポトーシス性B細胞のレスキューに関与する27が、非免疫細胞において、これはアポトーシスを誘導する28。TNFファミリーの多くのさらなるリンパ球メンバーもまた、同時刺激に関与する29
【0015】
一般に、TNFファミリーのメンバーは、免疫系の制御および急性宿主防御系の活性化において基本的な調節的役割を有する。治療的利益のためにTNFファミリーのメンバーを操作することにおける現在の進歩を考えれば、このファミリーのメンバーは、疾患を制御するための独特な手段を提供し得る可能性が高い。このファミリーのいくつかのリガンド(例えば、LT、TNF、FasリガンドおよびTRAIL)は、多くの形質転換細胞のアポトーシス性死滅を直接誘導し得る(Nagata、1997)。Fasならびに多分TNFおよびCD30レセプターの活性化は、免疫調節機能を果たし得る、形質転換されていないリンパ球において細胞死を誘導し得る(Amakawaら、1996;Nagata、1997;Sytwuら、1996;Zhengら、1995)。一般に、死滅は、TNFレセプターの細胞質側に存在する死滅ドメインの凝集に続いて引き金を引かれる。死滅ドメインは、カスパーゼカスケードの活性化を生じる、種々のシグナル変換成分の組立を調整する(Nagata、1997)。いくつかのレセプターは、認定された死滅ドメインを欠く。しかし、例えば、LTbレセプターおよびCD30(Browningら、1996;Leeら、1996)は、より弱くにではあるが、細胞死を誘導し得る。これらレセプターは、細胞分化を誘導するために主として機能し、そして死滅は、いくつかの形質転換細胞株における異常な結果である可能性が高い。しかし、CD30ヌルマウスについての研究により、胸腺でのネガティブ選択における死滅の役割が示唆される(Amakawaら、1996)ので、この説明は不明確である。逆に、他の経路(例えば、CD40)を通じてのシグナル伝達は、細胞の生存を維持するために必要とされる。したがって、TNFファミリーのメンバーであるさらなる分子を同定および特徴付し、それにより疾患を制御しそして免疫系を操作するさらなる手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によって以下が提供される:
(1)TRELLをコードするDNA配列またはそれらのフラグメント。
(2)TRELLをコードするDNA配列であって、該配列が本質的に配列番号1または配列番号3からなる、DNA配列。
(3)本質的に配列番号1または配列番号3からなるDNA配列であって、該DNAがポリペプチドをコードし、該ポリペプチドが本質的に配列番号2または配列番号4からなる、DNA配列。
(4)配列番号1または配列番号3の少なくとも1つのフラグメントにハイブリダイズするDNA配列であって、該フラグメントが少なくとも20の連続した塩基を含み、該DNA配列がTRELLの活性部位と少なくとも30%相同であるポリペプチドをコードする、DNA配列。
(5)前記配列が、本質的に、保存的な置換、改変、または欠失を有する配列番号1または配列番号3からなる、項目2に記載のDNA配列。
(6)TRELLをコードするDNA配列を含む組換えDNA分子であって、該配列が発現制御配列に作動可能に結合される、組換えDNA分子。
(7)配列番号1または配列番号3を含む、項目6に記載の分子。
(8)項目6または7に記載の組換えDNA分子で形質転換された宿主。
(9)配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有するTRELLをコードするDNA配列。
(10)項目8に記載の単細胞宿主を培養する工程を包含する実質的に純粋なTRELLを生成するための方法。
(11)正常に結合している動物タンパク質を本質的に欠く、TRELL。
(12)本質的に配列番号2または配列番号4からなる、項目11に記載のTRELL。
(13)TRELLまたはそれらの活性なフラグメントの治療的に有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(14)項目13に記載の薬学的組成物の治療的に有効量を投与する工程を包含する、自己免疫疾患の重症度を予防または低減するための方法。
(15)前記TRELLまたはそれらの活性なフラグメントが配列番号2もしくは配列番号4またはそれらの生物学的に活性なフラグメントを含む、項目13に記載の薬学的組成物。
(16)項目13に記載の薬学的組成物の治療的に有効量を投与する工程を包含する、組織移植片に対する免疫応答の重症度を予防または低減するための方法
(17)項目13に記載の組成物を投与する工程を包含する、免疫系を刺激するための方法。
(18)項目13に記載の薬学的組成物の有効量を投与する工程を包含する、免疫系を抑制するための方法。
(19)項目13に記載の薬学的組成物の治療的に有効量を投与する工程を包含する、癌を処置するための方法。
20)TRELLのレセプターを同定するための方法であって、該方法は、以下の工程:
a.TRELLまたはそれらのフラグメントを提供する工程;
b.該TRELLまたはそれらのフラグメントを検出可能な標識で標識する工程;
c.成分をスクリーニングし、工程bの検出可能に標識されたTRELLに結合するレセプターを検出する工程、
を包含する、方法。
(21)項目11に記載のTRELLの可溶性の生物学的に活性なフラグメント。
(22)以下からなる群より選択されるDNAによってコードされるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド:
a.配列番号1または配列番号3を含む、DNA配列;
b.a.に定義されるDNAにハイブリダイズし、発現に際して、項目12に記載されるTRELLと少なくとも40%相同であるポリペプチドをコードするDNA配列。
(23)TRELLもしくはそのレセプターまたはそれらの生物学的に活性なフラグメントに反応する、抗体調製物。
(24)モノクローナル抗体を含む、項目23に記載の抗体調製物。
(25)TRELLもしくはそのレセプターまたはそれらの免疫原性フラグメントで生物を免疫する工程を包含する、TRELLまたはそのレセプターに反応性の抗体調製物を生成するための方法。
(26)配列番号1または配列番号3の少なくとも一部にハイブリダイズする核酸配列を含む、TRELLに対するアンチセンス核酸。
(27)項目24に記載される抗体調製物を含む、薬学的組成物。
(28)哺乳動物細胞において遺伝子を発現する方法であって、該方法は以下:
a.TRELLをコードする遺伝子を細胞に導入する工程;
b.該細胞を該遺伝子が該哺乳動物で発現される条件下で生存させる工程、
を包含する、方法。
(29)哺乳動物においてTRELLに関連する疾患を処置する方法であって、該方法は以下:
a.TRELLをコードする遺伝子を含むベクターの治療的に有効量を細胞に導入する工程;
b.該哺乳動物細胞中で該遺伝子を発現する工程、
を包含する、方法。
(30)前記哺乳動物がヒトである、項目29に記載の方法。
(31)前記ベクターがウイルスである、項目29に記載の方法。
(32)TRELLのレセプターへの結合を妨害し得る薬剤の投与を包含する、細胞死を誘導する、方法。
(33)インターフェロンγの投与をさらに包含する、項目32に記載の方法。
(34)TRELLとそのレセプターとの間のシグナル経路を含む免疫応答を処置、抑制、または改変する方法であって、TRELLとそのレセプターとの間の会合を妨害し得る有効量の薬剤を投与する工程を包含する、方法。
(35)前記免疫応答がヒトの腺癌細胞を含む、項目35に記載の方法。
【0017】
発明の要旨
従って、本発明は、TRELLと呼称される腫瘍壊死因子関連リガンドであるポリペプチドに関する。これは、関連分野の限界および不都合に起因する1つ以上の問題を実質的に取り除く。本発明者は、サイトカインのTNFファミリーの新たなメンバーを発見し、そしてこのタンパク質のヒトアミノ酸配列およびマウスアミノ酸配列の両方、ならびにこれらのタンパク質をコードするDNA配列を規定した。請求項に記載される発明は、以下により詳細に議論される多くの疾患および状態についての新たな診断薬および治療剤を同定するために、ならびに免疫系およびそのプロセスについての情報を手に入れ、そして操作するために使用され得る。さらに、請求項に記載される発明は、癌における細胞死の誘導に関する。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は以下の説明に記載され、そして部分的に説明から明らかであるか、そうでなければ本発明の実施によって理解され得る。本発明の目的および他の利点は、本明細書の記載された説明および請求の範囲において、ならびに添付の図面において特に指摘される構成および方法によって理解され、そして達成される。
【0019】
従って、これらの利点および他の利点を達成するために、そして本発明の目的に従って、本明細書中で具体化され、そして広く記載されるように、本発明はTRELLをコードするDNA配列を含む。マウスTRELL(mTRELL)についてのヌクレオチド配列は配列番号1において示され、そしてヒトTRELL(hTRELL)についてのヌクレオチド配列は配列番号3において示される。詳細には、本発明は、配列番号2(mTRELL)または配列番号4(hTRELL)に同定されるアミノ酸配列を有するTRELLをコードするDNA配列に関する。他の実施態様において、本発明は、TRELLのC末端レセプター結合ドメインをコードするDNAと少なくとも50%相同性を有し、そして請求されるDNA配列またはそれらのフラグメントにハイブリダイズし、そして配列番号4または配列番号2に同定される配列を有するTRELLをコードする配列に関する。
【0020】
特定の実施態様における本発明は、TRELLをコードするDNA配列にさらに関する。ここでその配列は発現制御配列に作動可能に連結される。任意の適切な発現制御配列が請求項に記載される発明において有用であり、そして当業者によって容易に選択され得る。
【0021】
本発明はまた、TRELLまたはそれらのフラグメントをコードする配列を含む組換えDNA、ならびにゲノム中に導入され、安定に組み込まれたTRELL配列を有する宿主、またはエピソームエレメントを有する宿主を意図する。任意の適切な宿主が本発明で使用され得、そして過度の実験を要することなく当業者によって容易に選択され得る。
【0022】
他の実施態様において、本発明は、形質転換された宿主を培養する工程を包含し、実質的に純粋なTRELLおよび通常には結合している動物タンパク質を本質的に含まないTRELLを生成する方法に関する。
【0023】
本発明は、配列番号4または配列番号2に同定されるアミノ酸配列を有するTRELLならびにそれらのフラグメントまたはそれらの相同体を意図する。種々の実施態様において、以下にさらに定義されるように、TRELLのアミノ酸配列および/またはDNA配列は、保存的な挿入、欠失、および置換を含み得るか、またはその配列のフラグメントを含み得る。
【0024】
本発明は、他の実施態様において可溶性TRELL構築物に関する。これはTRELL媒介性薬理学的事象を直接的に誘発するために使用され得る。このような事象は、癌の処置において有用な治療的利点または免疫学的疾患を処置するための免疫系の操作を有する。可溶性TRELL形態は容易に認識可能なタグを組み込むように再び遺伝子操作され得る。それによってTRELLレセプターの同定が容易になる。
【0025】
さらに他の実施態様において、本発明は、本明細書中で記載され、そして請求されるTRELLを使用する遺伝子治療の方法に関する。
【0026】
本発明の薬学的調製物は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、賦形剤、または他の薬学的な成分を含み得、そして任意の当該分野で公知の多くの形態または経路で投与され得る。
【0027】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が例示かつ説明であり、そして請求される本発明のさらなる説明を提供することが意図されることが理解されるべきである。
【0028】
添付の図面は本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、そして本明細書に組み込まれ、そしてその一部を構成し、本発明のいくつかの実施態様を例示し、そして説明と一緒になって本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1はヒトTRELLおよびマウスTRELLのアミノ酸配列比較である。
【図2A】図2Aおよび2BはTNFファミリーのヒトのメンバーのアミノ酸比較である。
【図2B】図2Aおよび2BはTNFファミリーのヒトのメンバーのアミノ酸比較である。
【図3】図3は種々のマウス細胞株および組織におけるTRELL mRNA発現のノーザン分析である。レーンは二連であり、そして(1)チオグリコレート誘導腹腔内マクロファージ、(2)骨髄、(3)脾臓、および(4)肝臓由来のRNAを含んだ。
【図4】図4は種々のヒト組織におけるTRELL mRNA発現のノーザン分析である。
【図5】図5:還元条件下および非還元条件下の組換えTNF、LTα、およびTRELLのSDS-PAGE。
【図6A】図6A:TRELLはヒト腺癌株HT29に対して細胞傷害性である。A.ヒトインターフェロンgの存在下でのHT29株の増殖をブロックする、TNF、TRELL、LTα/βおよび抗Fasの能力。細胞を種々の薬剤の存在下で4日間増殖させ、そして増殖をMTT染色を使用して評価した。B.細胞死を起こす細胞の形態。細胞を2日間予め増殖させ、次いで80U/ml インターフェロンgで24時間およびA.さらなる添加無しB.100ng/mlで処置し、エタノールで固定し、そして上のパネルでは位相差顕微鏡(倍率400×)によって示し、そして下のパネルでは核を明らかにするために1μg/ml Hoescht色素で染色した。アポトーシスに特徴的な凝集した核を有する代表的な細胞を矢印で示す。
【図6B】図6B:TRELLはヒト腺癌株HT29に対して細胞傷害性である。A.ヒトインターフェロンgの存在下でのHT29株の増殖をブロックする、TNF、TRELL、LTα/βおよび抗Fasの能力。細胞を種々の薬剤の存在下で4日間増殖させ、そして増殖をMTT染色を使用して評価した。B.細胞死を起こす細胞の形態。細胞を2日間予め増殖させ、次いで80U/ml インターフェロンgで24時間およびA.さらなる添加無しB.100ng/mlで処置し、エタノールで固定し、そして上のパネルでは位相差顕微鏡(倍率400×)によって示し、そして下のパネルでは核を明らかにするために1μg/ml Hoescht色素で染色した。アポトーシスに特徴的な凝集した核を有する代表的な細胞を矢印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
ここで、本発明の現在好ましい実施態様への参照が詳細になされる。本発明は、ヒトまたはマウスTRELLをコードするDNA配列、そのフラグメントおよび相同体、およびこれらで形質転換された宿主におけるこれらDNA配列の発現に関する。本発明は、これらDNA配列およびこれらによりコードされるペプチドの使用に関する。さらに、本発明は、ヒトおよびマウス両方のTRELLアミノ酸配列、そのフラグメント、およびこれらを含有するまたはこれらから派生する組成物を包含する。
【0031】
A.定義
本明細書で用いられる「相同体」は、比較されている分子の配列の間の配列類似性をいう。2つの比較された配列の両方における位置が、同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットで占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置が、アデニンで占められている場合、そのときは、分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同性のパーセントは、比較される位置の数で除した、2つの配列によって共有される一致するまたは相同な位置の数×100という関数である。例えば、2つの配列における位置の10のうちの6が一致または相同である場合、そのときは、この2つの配列は、60%相同である。例示すれば、DNA配列ATTGCCとTATGGCとは50%の相同性を共有する。一般に、2つの配列が最大の相同性を与えるようにならべられたときに比較がなされる。
【0032】
本明細書で用いられるポリペプチドの「精製された調製物」または「実質的に純粋な調製物」は、それととともに天然に存在する他のタンパク質、脂質、および核酸から分離されたポリペプチドを意味する。好ましは、ポリペプチドはまた、それを精製するために用いられる、その他の物質、例えば、抗体、マトリックスなどから分離されている。
【0033】
本明細書で用いられる「形質転換された宿主」は、そのゲノム中に導入された、安定に組み込まれた配列、すなわちTRELL配列を有する任意の宿主、または宿主プロセッシング配列、すなわちTRELLを所有し、エピソーム要素をコードする宿主を包含することを意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「処置」は、任意の治療措置、例えば、治療薬剤または物質、例えば薬物の投与を包含する。
【0035】
「実質的に純粋な核酸」、例えば、実質的に純粋なDNAは、以下の1つまたは両方の核酸である:配列(例えば、核酸が由来する生物の天然に存在するゲノム中でそれと直接連続するコード配列)の1つまたは両方(すなわち、1つは5'末端および1つは3'末端)のいずれかと直接連続ではない;または(2)この核酸が由来する生物中でそれとともに存在する核酸配列を実質的に含まない核酸。この用語は、例えば、ベクター中、例えば、自己複製性プラスミドまたはウイルス中、または原核生物または真核生物のゲノムDNA中に取り込まれた、または他のDNA配列から独立した別の分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されるcDNAまたはゲノムDNAフラグメント)として存在する組換えDNAを包含する。実質的に純粋なDNAはまた、TRELLをコードするハイブリッド遺伝子の一部分である組換えDNAを包含する。
【0036】
用語「ペプチド」、「タンパク質」、および「ポリペプチド」は、本明細書では交換可能に用いられる。
【0037】
本明細書で用いられる「生物学的に活性な」は、直接的にまたは間接的に奏され得るインビボまたはインビトロ活性を有することを意味する。TRELLの生物学的に活性なフラグメントは、例えば、TRELLの活性部位と70%のアミノ酸相同性、より好ましくは少なくとも80%の、そして最も好ましくは、少なくとも90%の相同性を有し得る。TRELLに関する同一性または相同性は、本明細書では、配列番号2または4中のTRELL残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして規定される。
【0038】
本発明の実施は、特に指示がなければ、当該分野の技術内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学を利用し得る。このような技術は文献30に記載されている。
【0039】
B.本発明のDNA配列
本明細書に記載されるように、本発明の1つの局面は、配列番号1または3に記載のDNAおよび/またはこのような核酸の等価物のような、TRELLポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、実質的に純粋な(または組換え)核酸を特徴とする。本明細書で用いられる用語核酸は、例えば、機能的に等価なペプチドをコードする配列のような、フラグメントおよび等価物を包含し得る。等価なヌクレオチド配列は、対立遺伝子座改変体、変異体などのような、1つ以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失により異なる配列を含み、そして遺伝子コードの縮重性に起因して、配列番号1または3に示されるTRELLをコードするヌクレオチド配列と異なる配列を含み得る。本発明者らは、配列番号4で同定されるような248アミノ酸配列を有するTRELLペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む、ヒトの1936bp DNAを配列決定した。
【0040】
本発明者らは、本明細書に、ヒトおよびマウス配列の両方を記載する;本発明は、一般に、ヒト配列を参照して記載されるが、当業者は、マウス配列が本明細書に包含されることを理解する。TRELLの顕著な特徴は、マウスとヒトとの間におけるレセプター結合ドメインの広範囲の配列保存性である;Fasリガンドのみがこのレベルの保存性に接近している。マウスおよびヒトTRELLタンパク質の両方は、TNFファミリー、すなわち、II型膜タンパク質組織のすべての特徴、およびタンパク質のTNFアンチパラレルβシート構造への折り畳みに関与する配列モチーフの保存性を有する。
【0041】
mTRELLのヌクレオチド配列は配列番号1に呈示される;mTRELLのアミノ酸配列は配列番号2に呈示される。hTRELLのDNAおよびアミノ酸配列は、配列番号3および4にそれぞれ記載される。
【0042】
本発明の配列を用いて、TRELLをコードするDNA配列またはそのフラグメントまたは誘導体の存在について、天然および合成DNAの種々のコレクションをスクリーニングすることにおいて有用である一連のDNAプローブを調製し得る。当業者は、本明細書で用いられる「TRELL」への参照がまた、生物学的に活性なその誘導体、フラグメントまたは相同体をいうことを理解する。
【0043】
本発明のTRELLをコードするDNA配列を利用して、これらで形質転換された種々の原核生物および真核生物宿主における発現でTRELLペプチドを産生し得る。これらのTRELLペプチドは、抗癌、および免疫調節適用で用いられ得る。一般に、これは、発現制御配列に作動可能に連結されたTRELLをコードする配列を含むDNA分子で形質転換された宿主を培養する工程を包含する。
【0044】
本発明のDNA配列および組換えDNA分子は、広範な種類の宿主/ベクターの組合せを用いて発現され得る。例えば、有用なベクターは、染色体の、非染色体のまたは合成のDNA配列のセグメントから構成され得る。本発明の発現ベクターは、DNA配列の発現を制御および調節するために、ベクター中に挿入されたTRELL DNA配列に作動可能に連結され得る少なくとも1つの発現制御配列により特徴付けられる。
【0045】
さらに、各発現ベクター内で、種々の部位が、本発明のTRELL配列の挿入のために選択され得る。通常、これらの部位は、それらを切断する制限エンドヌクレアーゼにより命名され、そしてこれらの部位およびエンドヌクレアーゼは、当業者により周知である。本発明で有用な発現ベクターが、所望のDNAフラグメントの挿入のために制限エンドヌクレアーゼ部位を有する必要はないこともまた勿論理解され得る。あるいは、ベクターは、代替手段によりフラグメントに対してクローン化され得る。発現ベクター、そして特に、選択されたDNAフラグメントの挿入についてその中で選択された部位、およびその中の発現制御配列への作動的な連結は、種々の因子により決定される。これらの因子は、限定されないが、発現されるべきタンパク質のサイズ、所望のタンパク質の宿主細胞酵素によるタンパク質分解に対する感受性、特定の制限酵素に感受性の部位の数、精製の間に除去することが困難であり得る宿主細胞タンパク質による発現タンパク質の汚染または結合を含む。考慮され得るべきさらなる因子は、ベクター配列に対する開始および停止コドンの位置のような発現特徴を含み得、そしてその他の因子は、当業者により認識される。請求項に記載されたDNA配列に対するベクターおよび挿入部位は、これら因子のバランスにより決定され、所望の適用に対してすべての選択が等しく有効であるわけではない。しかし、特定の適用に依存して、これらのパラメーターを分析し、そして適切な系を選択することは、当業者にとって日常的である。
【0046】
当業者は、発現制御配列に対して適切な修飾を容易に作成し得、タンパク質発現のより高いレベルを得る。すなわち、コドンの置換、または特定の生物により優先的に用いられる特定のアミノ酸に対するコドンの選択により、タンパク質分解を最小にするかまたはグリコシル化組成を改変する。同様に、システインを他のアミノ酸に変化させ、産生、再折り畳みまたは安定性問題を単純にし得る。
【0047】
従って、すべての宿主/発現ベクターの組合せが、本発明のDNA配列を発現することにおいて等しい効率で機能するわけではない。しかし、特定の宿主/発現ベクターの組合せの選択が、当業者によりなされ得る。考慮すべき因子は、例えば、宿主とベクターの適合性、DNA配列によりコードされるタンパク質の宿主に対する毒性、所望のタンパク質の回収の容易さ、DNA配列およびこれらに作動可能に連結された発現制御配列の発現特徴、生体安全性、コスト、および所望のタンパク質の折り畳み、形態またはその他の発現後に必要な修飾を含む。
【0048】
本発明の配列で形質転換された宿主により産生されるTRELLおよびその相同体、および本発明の方法により精製された、または請求項に記載されたアミノ酸配列から産生されたネイティブなTRELLは、抗癌および免疫調節適用のための種々の組成物および方法で有用である。それらはまた、他の疾患に関する治療および方法において有用である。
【0049】
本発明はまた、異常条件下、すなわち遺伝子治療セッティングにおいてTRELLを発現するための、本明細書に開示されるDNA配列の使用に関する。TRELLは、このような適用に適切なプロモーターの方向の下で腫瘍細胞中で発現され得る。このような発現は、抗腫瘍免疫応答を増大し得るかまたは腫瘍の生存に直接影響し得る。TRELLのようなサイトカインはまた、局所免疫応答を改変することにより器官移植片の生存に影響し得る。この場合には、移植片自身または周辺細胞は、操作されたTRELL遺伝子で修飾され得る。
【0050】
本発明の別の局面は、「アンチセンス」治療におけるTRELLをコードする単離された核酸の使用に関する。本明細書で用いられる「アンチセンス」治療は、コードされたタンパク質の発現を阻害するように、すなわち、転写および/または翻訳を阻害することにより、細胞内条件下で、細胞内mRNAおよび/またはTRELLをコードするDNAと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドまたはそれらの誘導体の投与またはインサイチュ生成をいう。この結合は、通常の塩基対相補性により、または、例えば、DNA二本鎖への結合の場合には、二重ヘリックスの主溝における特異的相互作用を通じてであり得る。一般に、「アンチセンス」治療は、当該分野で一般に利用される範囲の技術をいい、そしてオリゴヌクレオチド配列への特異的結合に依存する任意の治療を包含する。
【0051】
本発明のアンチセンス構築物は、例えば、発現プラスミドとして送達され得、それは、細胞中で転写されるとき、TRELLをコードする細胞内mRNAの少なくとも一部分に相補的であるRNAを生成する。あるいは、アンチセンス構築物は、エクスビボで生成されるオリゴヌクレオチドプローブであり得る。好ましくは、このようなオリゴヌクレオチドプローブは、内因性のヌクレアーゼに抵抗性である、修飾されたオリゴヌクレオチドであり、そしてそのためにインビボで安定である。アンチセンスオリゴヌクレオチドとしての使用のための例示の核酸分子は、DNAのホスホルアミデート、ホスホチオエートおよびメチルホスホネートアナログである(例えば、5,176,996;5,264,564;および5,256,775を参照のこと)。さらに、アンチセンス治療において有用なオリゴマーを構築することの一般的なアプローチは、例えば、本明細書に参考として特に援用される、Van Der Krolら(1988) Biotechniques 6:958-976;およびSteinら(1988) Cancer Res 48:2659-2668により総説されている。
【0052】
C.TRELLおよびそのアミノ酸配列
上記で論議されたように、本発明の腫瘍壊死因子ファミリー関連タンパク質(TRELL)は、TNFファミリーのメンバーである。このタンパク質、そのフラグメントまたは相同体は、広範な治療および診断適用を有し得る。
【0053】
TRELLは多くの組織中に、TNFファミリーのメンバーの間で比較的特有であるパターンで存在する。TNFファミリーのメンバーは、細胞死および生存の調節、および細胞分化に関与しているので、TRELLはまた、種々の組織中の細胞生存、分化、および修復に関与している可能性がある。
【0054】
TRELLの正確な3次元構造は未知であるが、TNFファミリーのメンバーとして、TRELLが、このファミリーの他のメンバーと特定の構造的特徴を共有し得ることが予測される。マウスTRELLおよびヒトTRELLの両方が本明細書中に開示される。既存のcDNA配列から推定されるマウスTRELLは、おそらくII型膜タンパク質のための膜アンカードメインとして作用する、一続きの少なくとも21の疎水性アミノ酸を含む。mTRELLのアミノ酸配列は配列番号2に記載される。
【0055】
ヒトTRELLは、N末端親水性細胞質ドメイン、およそ27アミノ酸の疎水性膜貫通II型ドメイン、および204アミノ酸の細胞外ドメインを含む。hTRELLのアミノ酸配列は、配列番号4に記載される。
【0056】
図1は、ヒトTRELLおよびマウスTRELLのアミノ酸配列の比較を示す。
【0057】
52アミノ酸のN末端領域が、cDNAクローンにおけるオープンリーディングフレームから予測され得るが、正確な開始メチオニンは予測され得ない。Met-36は合理的なコンセンサスKozak配列を有しており、これはMet-36を好ましい開始コドンにし得る。TRELL配列のヒトTNFファミリーの他のメンバーとの比較は、かなりの構造的類似性を明らかにする。例えば、図2Aおよび図2Bにおいて見られ得るように、全てのタンパク質は、II型膜タンパク質に類似し、そして細胞外ドメインにおける配列保存のいくつかの領域を共有する。配列の上の棒をともなう領域は、分子のβ鎖構成に関与するTNFおよびLTα中の配列を示す。推定のN結合グリコシル化部位に下線を付す。アステリスクは、TNFにおいてジスルフィド結合に関与するシステインを示す。保存ドメインはサブユニット間相互作用およびシート構成に関与するようである。
【0058】
ESTサーチは、マウスTRELLに高度に相同な345塩基のヒトクローンを明らかにした。ヒトTRELLのアミノ酸配列は配列番号4に示される。ESTによってコードされるオープンリーディングフレームは、この配列を、リガンドのTNFファミリーのメンバーとして特徴付けることを可能にする配列モチーフ(例えば、既存のデータベース内でTRAIL ESTを同定するためにWileyらによって使用されたモチーフ)を含まない。
【0059】
本発明の新規のポリペプチドは、レセプターと特異的に相互作用し、これは未だ同定されていない。しかし、本明細書中に開示されるペプチドおよび方法は、TRELLまたはそのフラグメントと特異的に相互作用するレセプターの同定を可能にする。
【0060】
特定の実施態様における本発明は、TRELLレセプターに結合する能力を有するTRELLに由来するペプチドを包含する。TRELLのフラグメントは、いくつかの方法(例えば、組換えで、PCRによって、タンパク質分解消化、または化学合成によって)で産生され得る。ポリペプチドの内部フラグメントまたは末端フラグメントは、ポリペプチドをコードする核酸の一方の末端または両方の末端から1つ以上のヌクレオチドを除去することによって生成され得る。変異誘発されたDNAの発現は、ポリペプチドフラグメントを産生する。従って、「末端噛み取り(end-nibbling)」エンドヌクレアーゼでの消化は、種々のフラグメントをコードするDNAを生成し得る。タンパク質のフラグメントをコードするDNAはまた、ランダムな剪断、制限消化、または上記で論じられる方法の組み合わせによって生成され得る。
【0061】
ポリペプチドフラグメントはまた、従来のMerrifield固相F-mocまたはt-boc化学のような当該分野で公知の技術を使用して、化学合成され得る。例えば、本発明のペプチドおよびDNA配列は、任意に、フラグメントの重複を有しない所望の長さのフラグメントに分割され得るか、または所望の長さの重複フラグメントに分割され得る。これらのような方法は、以下でより詳細に記載される。
【0062】
D.可溶性TRELLの生成
リガンドの可溶性形態はしばしば有効にシグナルし得、従って今や天然の膜形態を模倣する薬物として投与され得る。TRELLが可溶性サイトカインとして天然に分泌されることは可能であるが、しかし、そうでない場合、分泌を強制するように遺伝子を再び操作し得る。可溶性分泌形態のTRELLを作製するために、DNAレベルでN末端膜貫通領域および軸(stalk)領域のいくらかの部分を除去し、そしてそれらを、選択される発現系における効率的なタンパク質分解切断を可能にするI型リーダーあるいはII型リーダー配列で置換する。当業者は、レセプター結合特性および分泌効率の両方を至適化するように、分泌発現構築物中に保持される軸領域の量を変化させ得る。例えば、全ての可能な軸長さを含む構築物(すなわち、N末端短縮物)が調製され得、その結果アミノ酸81〜139において開始するタンパク質が生じる。至適長さの軸配列はこの型の分析から生じる。
【0063】
E.TRELLと反応性の抗体の生成
本発明はまた、TRELLまたはそのレセプターと特異的に反応性である抗体を含む。抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体は、標準的なプロトコルによって作製され得る(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual、HarlowおよびLane編 (Cold Spring Harbor Press: 1988))。マウス、ハムスター、またはウサギのような哺乳動物は、免疫原性形態のペプチドで免疫され得る。タンパク質またはペプチドに免疫原性を与えるための技術は、当該分野において周知のキャリアへの結合または他の技術を含む。
【0064】
TRELLまたはそのレセプターの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与され得る。免疫の進行は、血漿または血清中の抗体力価の検出によってモニターされ得る。抗体のレベルを評価するための抗原として免疫原を用いて、標準的ELISAまたは他のイムノアッセイが使用され得る。
【0065】
好ましい実施態様において、本発明の抗体は、TRELLまたはそのレセプターの抗原決定基(例えば、配列番号2もしくは4のポリペプチド、または近縁のヒトもしくは非ヒト哺乳動物相同体(例えば、70、80、または90%相同、より好ましくは少なくとも95%相同)の抗原決定基)に対して免疫特異的である。本発明のなおさらに好ましい実施態様において、抗TRELLまたは抗TRELLレセプター抗体は、例えば、配列番号2または4に80%未満相同;好ましくは配列番号2または4に90%未満相同;および最も好ましくは配列番号2または4に95%未満相同であるタンパク質と実質的に交差反応(すなわち特異的に反応)しない。「実質的に交差反応しない」によって、抗体が、配列番号2または4のタンパク質に対する結合親和性の10%未満、より好ましくは5%未満、およびなおより好ましくは1%未満である非相同性タンパク質に対する結合親和性を有することが意味される。
【0066】
本明細書中で用いられる用語、抗体は、これもまたTRELLまたはTRELLレセプターと特異的に反応性であるそのフラグメントを含むことが意図される。抗体は、従来の技術を使用してフラグメント化され得、そしてフラグメントは全体の抗体について上記した方法と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。例えば、F(ab')2フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって生成され得る。得られるF(ab')2フラグメントは、ジスルフィド結合を還元するように処理されて、Fab'フラグメントを生成し得る。本発明の抗体は、抗TRELLまたは抗TRELLレセプター活性を有する生物特異的(biospecific)およびキメラ分子を含むことがさらに意図される。従って、TRELLおよびそのレセプターに対するモノクローナルおよびポリクローナルの両方の抗体(Ab)、ならびにFab'およびF(ab')2のような抗体フラグメントが、TRELLおよびそのレセプターの作用をブロックするために使用され得る。
【0067】
種々の形態の抗体はまた、標準的な組換えDNA技術を使用して作製され得る(WinterおよびMilstein, Nature 349:293-299 (1991)、本明細書中に参考として特定して援用される)。例えば、動物抗体由来の抗原結合ドメインがヒト定常ドメインに連結されているキメラ抗体が構築され得る(例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号、本明細書中に参考として援用される)。キメラ抗体は、ヒト臨床処置において使用される場合に、動物抗体によって誘起される、観察される免疫原性応答を減少させ得る。
【0068】
さらに、TRELLまたはそのレセプターを認識する組換え「ヒト化」抗体が合成され得る。ヒト化抗体は、その中に、特異的抗原結合を担う領域が挿入されている、大部分ヒトのIgG配列を含むキメラである。動物は所望の抗原で免疫され、対応する抗体は単離され、そして特異的抗原結合を担う可変領域配列の部分が取り出される。次いで、動物由来抗原結合領域は、抗原結合領域が欠失されているヒト抗体遺伝子の適切な部分中にクローン化される。ヒト化抗体は、ヒト抗体における異種(すなわち、種間)配列の使用を最小にし、従って処置される被験体において免疫応答をあまり誘起しそうにない。
【0069】
異なるクラスの組換え抗体の構築はまた、可変ドメインおよび異なるクラスの免疫グロブリンから単離されるヒト定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を含むキメラまたはヒト化抗体を作製することによって達成され得る。例えば、増加した抗原結合部位価を有する抗体は、抗原結合部位をヒト:鎖定常領域を有するベクター中にクローン化することによって組換え産生され得る(Arulanandamら、J. Exp. Med., 177: 1439-1450 (1993)、本明細書中に参考として援用される)。
【0070】
さらに、標準的組換えDNA技術は、抗原結合部位の近傍のアミノ酸残基を変化させることによって、組換え抗体の、それらの抗原との結合親和性を変化させるために使用され得る。ヒト化抗体の抗原結合親和性は、分子モデリングに基づく変異誘発によって増加され得る(Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 10029-33 (1989)、本明細書中に参考として援用される)。
【0071】
F.アナログの生成:変化されたDNAおよびペプチド配列の産生
TRELLのアナログは、アミノ酸配列が、または配列を含まない方法で、またはその両方で、天然に存在するTRELLと異なり得る。非配列修飾は、TRELLのインビボまたはインビトロにおける化学的誘導体化を含む。非配列修飾は、アセチル化、メチル化、リン酸化、カルボキシル化、またはグリコシル化の変化を含むが、それらに限定されない。
【0072】
好ましいアナログは、その配列が配列番号2または4に与えられる配列と、1つ以上の保存的アミノ酸置換で、またはTRELLの活性を損なわない1つ以上の非保存的アミノ酸置換、欠失、もしくは挿入で異なる、TRELLまたはその生物学的に活性なフラグメントを含む。保存的置換は、代表的には、1つのアミノ酸の類似の特性を有する別のアミノ酸での置換、例えば、以下の群内での置換を含む:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0073】
表1
保存的アミノ酸置換
【0074】
【表1−1】

【0075】
【表1−2】

【0076】
変異誘発のために有用な方法は、以下により詳細に説明するように、PCR変異誘発および飽和変異誘発を含む。ランダムアミノ酸配列変異体のライブラリーもまた、縮重オリゴヌクレオチド配列のセットの合成によって生成され得る。
【0077】
−PCR変異誘発
PCR変異誘発では、Taqポリメラーゼ忠実度の低下が、ランダム変異をDNAのクローン化フラグメントに導入するために用いられ得る(Leungら、1989、Technique 1:11-15)。これは、ランダム変異を導入する非常に強力であり、かつ比較的迅速な方法である。変異誘発されるDNA領域は、例えば、dGTP/dATP比5を用い、Mn2+をPCR反応に添加することによって、Taq DNAポリメラーゼによるDNA合成の忠実度を低下させる条件下でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅され得る。増幅されたDNAフラグメントのプールは、適切なクローン化ベクターに挿入されて、ランダム変異ライブラリーを提供し得る。
【0078】
−飽和変異誘発
飽和変異誘発は、クローン化DNAフラグメントへの多数の一塩基置換の迅速な導入を可能にする(Mayersら、1985、Science 229:242)。この技術は、変異の生成(例えば、インビトロでの一本鎖DNAの化学処理または放射線照射による)および相補的DNA鎖の合成を包含する。変異頻度は処理の重度を調整することによって調整され得、そして本質的に全ての可能な塩基置換が得られ得る。この手順は、変異フラグメントについての遺伝的選択を包含しないので、中性的な置換、ならびに機能を変化させるDNAのランダム変異誘発によって調製され得るタンパク質の置換が、得られ得る。点変異の分布は、保存された配列エレメントに対して傾斜されない。
【0079】
−縮重オリゴヌクレオチド
相同体のライブラリーは、縮重オリゴヌクレオチド配列のセットから生成され得る。縮重配列の化学合成は、自動DNA合成機によって実行され得、そして次いで、合成遺伝子が適切な発現ベクター中に連結され得る。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当該分野において公知である31。このような技術は、他のタンパク質の方向付けられた進化において用いられている。
【0080】
非ランダムまたは方向付けられた変異誘発技術は、特定の領域において特定の配列または変異体を提供するために用いられ得る。これらの技術は、タンパク質の既知のアミノ酸配列の例えば、欠失、挿入、または置換を含む改変体を作出するために用いられ得る。変異部位は、個々にまたは連続して、例えば、(1)まず保存されたアミノ酸と、次いで達成された結果に依存してよりラジカルな選択物と置換すること、(2)標的残基を欠失させること、もしくは(3)位置された部位に隣接して、同一または異なるクラスの残基を挿入すること、または選択(1)から(3)の組み合わせによって、改変され得る。
【0081】
−アラニンスキャニング変異誘発
アラニンスキャニング変異誘発は、変異誘発のために好ましい位置またはドメインである、所望のタンパク質の特定の残基または領域の同定のための有用な方法である(CunninghamおよびWells(Science 244:1081-1085, 1989)、特に参考として援用される)。アラニンスキャニングでは、残基または標的残基のグループが同定され(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluのような荷電残基)、そして中性または負に荷電したアミノ酸によって置換される(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)。アミノ酸の置換は、細胞の中または外側のアミノ酸と周囲の水環境との相互作用に影響を及ぼし得る。置換に対する機能的感受性を示すそれらのドメインは、置換の部位にまたは置換の部位についてさらなるまたは他の改変体を導入することにより精製され得る。従って、アミノ酸配列変異の導入部位は予め決定されるが、変異の性質そのものは予め決定される必要はない。例えば、所定の部位での変異の性質を最適化するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異誘発が標的コドンまたは領域で実施され得、そして発現された所望のタンパク質サブユニット改変体が所望の活性の至適組み合わせについてスクリーニングされる。
【0082】
−オリゴヌクレオチド媒介変異誘発
オリゴヌクレオチド媒介変異誘発は、DNAの置換、欠失、および挿入改変体を調製するための有用な方法である。例えば、Adelmanら(DNA 2:183, 1983)が本明細書中に参考として援用される。簡潔に述べると、所望のDNAは、変異をコードするオリゴヌクレオチドをDNAテンプレートにハイブリダイズすることにより、変化され得る。ここでこのテンプレートは、所望のタンパク質の非改変またはネイティブなDNA配列を含むプラスミドまたはバクテリオファージの一本鎖形態である。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼが、テンプレートの完全な第二の相補鎖を合成するために用いられる。この相補鎖は、オリゴヌクレオチドプライマーをこのように組み込み、所望のタンパク質DNAにおける選択された変化をコードする。一般には、少なくとも25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドが用いられる。至適オリゴヌクレオチドは、変異をコードするヌクレオチド(1つまたは複数)のいずれかの側にテンプレートに完全に相補的な12〜15ヌクレオチドを有する。これは、オリゴヌクレオチドが、一本鎖DNAテンプレート分子に適切にハイブリダイズすることを確実にする。オリゴヌクレオチドは、当該分野で公知の技術(例えば、Creaら(Proc. Natl. Acvad. Sci. USA, 75: 5765[1978])(本明細書中に参考として援用される)に記載の技術)を用いて容易に合成される。
【0083】
−カセット変異誘発
改変体を調製するための別の方法であるカセット変異誘発は、Wellsら(Gene,34:315[1985]、(本明細書中に参考として援用される))による記載の技術に基づく。出発材料は、変異されるタンパク質サブユニットDNAを含むプラスミド(または他のベクター)であり得る。変異されるタンパク質サブユニットDNA中のコドン(1つまたは複数)が同定される。同定された変異部位(1つまたは複数)の各側に独特の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しなければならない。このような制限部位が存在しない場合、それらは、所望のタンパク質サブユニットDNA中にそれらを適切な位置に導入するために、上記オリゴヌクレオチド媒介変異誘発方法を用いて生成され得る。制限部位がプラスミド中に導入された後、このプラスミドは、これらの部位で切断されて、これを線状化する。制限部位間のDNAの配列をコードし、所望の変異(1つまたは複数)を含む二本鎖オリゴヌクレオチドが、標準的な技術を用いて合成される。2つの鎖は別個に合成され、次いで標準的な技術を用いて共にハイブリダイズされる。この二本鎖オリゴヌクレオチドは、カセットと呼ばれる。このカセットは、線状化プラスミドの末端と適合性の3'および5'末端を有するように設計され、それによりそれは、直接プラスミドに連結され得る。このプラスミドは、現在、変異された所望のタンパク質サブユニットDNA配列を含む。
【0084】
−コンビナトリアル変異誘発
コンビナトリアル変異誘発もまた、変異体を生成するために用いられ得る。例えば、相同体のグループまたは他の関連タンパク質についてのアミノ酸配列を、好ましくは、最も高い相同性が可能となるように整列させる。整列させた配列の所定の位置に見られるアミノ酸の全てが、コンビナトリアル配列の縮重セットを作出するために選択され得る。改変体のまだらな(variegated)ライブラリーは、核酸レベルにおけるコンビナトリアル変異誘発によって生成され、そしてまだらな遺伝子ライブラリーによってコードされる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、可能な配列の縮重セットが個々のペプチドとして、または縮重配列のセットを含むより大きな融合タンパク質のセットとして発現可能であるように、遺伝子配列に酵素連結され得る。
【0085】
生成された変異遺伝子産物のスクリーニングのために、当該分野で種々の技術が公知である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための技術は、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローン化する工程、適切な細胞をベクターの得られたライブラリーで形質転換する工程、および遺伝子を所望の活性(例えば、この場合、TRELLのそのレセプターへの結合)の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を促進する条件下で発現させる工程を包含する。以下に記載の技術のそれぞれは、(例えば、ランダム変異誘発技術によって)作出された多数の配列をスクリーニングするための高スループット分析に適応される。
【0086】
本発明はまた、模倣物(例えば、ペプチドまたは非ペプチド薬剤)を生成するために、かかるTRELLポリペプチドまたはそのレセプターのタンパク質結合ドメインの減少を提供する。ペプチド模倣物は、TRELLおよびそのレセプターの結合を破壊することができる。レセプターポリペプチドまたは下流細胞内タンパク質の分子認識に関与するTRELLの必須残基が決定され得、そしてTRELLまたはそのレセプター由来ペプチド模倣物を生成するために使用され得る。この模倣物は、TRELLとレセプターとの結合を競合または非競合的に阻害する。(例えば、「Peptide inhibitors of human papilloma virus protein binding to retinoblastoma gene protein」欧州特許出願EP-412,762AおよびEP-B31,080A;これは本明細書中に参考として援用される)。
【0087】
G.薬学的組成物
利用可能な精製および組換えTRELLを作製することにより、本発明は、(この場合、TRELLまたはそのレセプターの)正常細胞機能のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかである薬物候補体についてスクリーニングするために使用され得るアッセイを提供する。1つの実施態様では、アッセイは、化合物の、TRELLとそのレセプターとの間の結合を調整する能力を評価する。種々のアッセイ形式が満足するものであり、そして本発明を考慮して、当業者により理解される。
【0088】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所定の期間で調査される化合物の量を最大にするために、高スループットアッセイが所望される。無細胞系において実施されるアッセイ(例えば、精製または半精製タンパク質を用いて誘導され得る)は、しばしば、それらが、試験化合物により媒介される分子標的における変化の迅速な展開および比較的容易な検出を可能にするように生成されるので、「一次」スクリーンとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞毒性および/またはバイオアベイラビリティの効果は、インビトロ系においては一般に無視され得る。このアッセイは、他のタンパク質との結合親和性の変化または分子標的の酵素特性の変化で表され得るような、分子標的に対する薬物の効果に主に集中される。
【0089】
本発明の薬学的組成物は、治療有効量のTRELLまたはそのレセプター、またはそれらのフラグメントもしくは模倣物を含み得、そして必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。従って、本発明は、薬学的有効量の本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩または誘導体を投与することにより、癌を処置する方法を、および免疫系を刺激する、もしくは特定の場合阻害する方法、またはそれらの一部を提供する。もちろん、本発明の組成物および方法が種々の処置のための他の治療法と合わせて用いられ得ることが理解されるべきである。
【0090】
組成物は、種々の投与経路のために処方され得る。このような経路としては、全身、局所または局在化投与が挙げられる。全身投与のために、注射が好ましい。このような注射としては、筋内、静脈内、腹腔内、および皮下が挙げられる。注射のために、本発明の組成物は、液体溶液、好ましくは、ハンクス溶液またはリンガー溶液のような生理的に適合可能な緩衝液中に処方され得る。さらに、組成物は、固体形態で処方され得、そして必要に応じて使用直前に再蒸留または懸濁され得る。凍結乾燥形態もまた本発明内に含まれ得る。
【0091】
組成物は、経口投与され得るか、または経粘膜もしくは経皮手段により投与され得る。経粘膜または経皮投与のために、透過される障壁に適切な浸透剤が処方において用いられ得る。このような浸透剤は、当該分野で公知であり、そして例えば、経粘膜投与のために、胆汁酸塩、フシジン酸誘導体、および界面活性剤を含む。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用を介し得る。経口投与のために、組成物は、従来の経口投与形態(例えば、カプセル剤、錠剤、および炭酸剤)に処方され得る。局所投与のために、本発明の組成物は、当該分野で公知のように軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに処方される。
【0092】
好ましくは、本発明の組成物は、単位用量の形態であり、そして1日に1回以上投与される。1回に、または処置の過程にわたって投与される活性化合物の量は、多くの要素に依存する。例えば、被験体の年齢およびサイズ、処置される疾患の重篤度および経過、投与様式および投与形態、ならびに処置を行う医者の判断。しかし、有効用量は、約0.005mg/kg/日〜約5mg/kg/日、好ましくは約0.05mg/kg/日〜約0.5mg/kg/日の範囲であり得る。当業者は、より低い用量およびより高い用量もまた有用であり得ることを認識する。
【0093】
本発明による遺伝子構築物はまた、アゴニスト形態またはアンタゴニスト形態のいずれかのTRELLポリペプチドをコードする核酸を送達するための遺伝子治療プロトコルの一部として用いられ得る。
【0094】
TRELLの発現構築物は、任意の生物学的に有効なキャリア(例えば、TRELLの遺伝子をインビボで細胞に有効に送達し得る任意の処方物または組成物)中で投与され得る。アプローチは、細胞を直接トランスフェクトし得るウイルスベクター中の遺伝子の挿入、または例えば、リポソームまたは細胞内キャリアの助けによりプラスミドDNAを送達すること、ならびに遺伝子構築物の直接注射を含む。ウイルスベクター移入方法が好ましい。
【0095】
遺伝子治療構築物の薬学的調製物は、本質的に、受容可能な希釈剤中の遺伝子送達系からなり得るか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた低速放出マトリックスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達系(例えば、レトロウイルスベクター)が組換え体細胞からインタクトに産生され得る場合、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含み得る。
【0096】
治療における使用に加えて、本発明のオリゴマーは、これらが特異的に結合する、標的DNA、RNA、またはアミノ酸配列の存在または非存在を検出するための診断試薬として用いられ得る。他の局面では、請求される発明は、TRELLポリペプチドまたはそのフラグメントと相互作用する(例えば、結合する、または物理的に会合する)その能力について化学的存在を評価するために用いられ得る。この方法は、化学的存在をTRELLポリペプチドと接触させること、およびその存在がTRELLと相互作用する能力を評価することを含む。さらに、本発明のTRELLは、TRELLの天然に存在するリガンドまたはレセプターを評価する方法において、ならびにTRELLのレセプターと会合または結合する化学的存在を評価するために、用いられ得る。
【0097】
特定の局面では、請求される発明は、化学的存在を、TRELLとそのレセプターとの間の相互作用を調節する能力について評価する方法を特徴とする。本方法は、TRELLレセプターおよびTRELLを、この対が相互作用し得る条件下で合わせる工程、評価される化学的存在を添加する工程、および複合体の形成または解離を検出する工程を含む。これらの調節剤は、例えば、無細胞系でその活性を試験し、次いで必要に応じてこの化合物を細胞または動物に投与し、そしてこの効果を評価することにより、インビトロでさらに評価され得る。
【実施例】
【0098】
H.実施例
1.TRELL cDNAの単離
a)マウスTRELLのクローン化
mTRELLをコードするcDNAを、マウス腹膜マクロファージ由来のcDNAライブラリーからPCRにより単離した。このアミノ酸配列および膜貫通領域の配置は、膜貫通タンパク質にはよくある。mTRELLのアミノ酸配列を、配列番号2に示し、そしてDNA配列を配列番号1に示す。
【0099】
マクロファージ細胞を、腹膜洗浄によりBalb/cマウスから得、そして1時間以内にプラスチックに付着した細胞を溶解し、そしてRNA抽出のために加工した。マウスエリスロポイエチン配列由来のアンチセンスオリゴヌクレオチドプライマー5'GTTCCAGGCCAGCCTGGG3'を合成した。本明細書中に参考として特に援用される、C.B. ShoemakerおよびL.D.Mistock, 「Murine erythropoietin gene: cloning, expression and human gene homology」, Mol. Cell. Biol., 6, 849 (1986)。このプライマーを、製造者(BRLからの5'RACEシステム)の推奨に従って5'RACEプロトコルにおいてBRL設計アンカープライマーとともに用いた。cDNAの第1鎖を、1時間付着腹膜マクロファージからのRNAから作製した。増幅を、Perkin ElmerからのTaq DNAポリメラーゼを用いてPerkin Elmer DNAサーマルサイクラーにおいて行なった。94℃にて5分間の変性の後、サイクル条件は以下の通りであった:94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、および72℃にて3分間を35サイクル。72℃でのさらなる伸長を行い、次いで反応物を4℃で保持した。アガロースゲルでのPCR実験の分析は、650bpおよび500bpの2つの増幅フラグメントを明らかにした。2つのフラグメントをゲルから切り出し、pBS-Tベクター中に挿入し、そして配列決定した。2つの挿入物は異なっていた。これらは両方とも、それぞれの先端に、PCR合成を開始するために用いた同じエリスロポエチン遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを有していた。32P標識ランダムプライムフラグメントを用いたノーザンハイブリダイゼーションは、これらが2つの異なるRNAにハイブリダイズし、500bpフラグメントは、マクロファージ中の1.4kb RNAにハイブリダイズしたことを示した。両方向の32P標識リボプローブをノーザンブロットハイブリダイゼーションに用いて、cDNAの配向を決定した。
【0100】
決定した配向および配列から、1.4Kb mRNAについての2つの内部プライマーを得た。これらを、それぞれ、3'および5'のRACE-PCRに用いた。3'RACE実験は、pBS-Tベクター中に挿入され、そして配列決定された750bpのフラグメントを明らかにした。これは、1.4Kb RNAの3'末端に対応する。なぜなら、この配列は、ポリAトラクトの直前にポリA付加シグナルAATAAAを有するからである。5'RACEは、何のバンドも明らかにしなかった。Clontech Marathon cDNA増幅キットを用いて、1時間付着マクロファージからcDNAライブラリーを調製した。決定したcDNA配列由来のセンスおよびアンチセンスのオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRにより単離した1040bp PCRフラグメントならびにキットからのユニバーサルプライマーを用いた。これは、元の1040bpのフラグメントより大きなサイズのフラグメントの単離をもたらした。配列決定された新たなフラグメントには、5'配列に60bpが付加されていた(配列番号1)。
【0101】
RNAを、マウスチオグリコレート誘導腹膜マクロファージから、1時間の付着後に抽出した。ハイブリダイゼーションを、32P標識mTRELL cDNAを用いて行なった。図3は、マウス腹膜マクロファージおよび異なるマウス組織におけるTRELL mRNA発現のノーザン分析を示す。
【0102】
最初の21アミノ酸は、疎水性の膜貫通ドメインを示す。ヌクレオチドまたはアミノ酸のレベルで同一の配列は、利用可能なデータベースには見出されなかった。PROSITEプログラムおよび225アミノ酸配列を用いて、この配列がTNFファミリーのタンパク質に属することが決定された。このタンパク質はまた、LT-αおよびこのファミリーの他のメンバーについて記載された異なるドメイン(J. Browningら, 「Lymphotoxin-α, a novel member of the TNF family that forms a heteromeric complex with lymphotoxin on the cell surface」, Cell, 72, 847 (1993); C.F.Wareら, 「The ligands and receptors of the lymphotoxin system」, Pathways for cytolysis, G.M. GriffithsおよびJ. Tschopp(編), Springer-Verlag, Berlin, Heidelberg, 175-218頁 (1995), これらのそれぞれは本明細書中に参考として特に援用される)を有していた。この配列は独特である。ヌクレオチドまたはアミノ酸のレベルで、TNFファミリーの異なるメンバーとまたは任意の配列と弱い同一性または類似性が観察された。ESTデータベースにおいて検索することにより、1つのヒト配列は、マウス配列に対して明らかに相同であった。Soares, Washington Universityにより作製された胸部ライブラリーからのクローン154742,5'(GenBank登録番号:R55379)は、マウスTRELLに対して89%相同な345塩基対の配列を有する。利用可能なデータベースにおいてmTRELLの利用可能な5'DNAにマッチするヒト配列は見出されなかった。
b)ヒトTRELLのクローン化i)オリゴヌクレオチドプローブおよびPCRプライマーの作製。
【0103】
マウスTRELLに対して相同性を有するヒトEST R55379の配列を、オリゴヌクレオチドプライマーの合成のための基礎として用いた。2つのセンス鎖の20マーオリゴヌクレオチド:
LTB-065 5=-CCC TGC GCT GCC TGG AGG AA(R55379のNT 70〜89)
LTB-066 5=-TGA TGA GGG GAA GGC TGT CT(R55379のNT 14〜33)
および1つのアンチセンス20マーオリゴヌクレオチド:
LTB-067 5=-AGA CCA GGG CCC CTC AGT GA(R55379のNT 251〜270)
を合成した。
ii)hTRELLをクローン化するためのmRNAおよびcDNAライブラリー供給源の同定。
【0104】
ヒト肝臓(カタログ番号6510-1)、脾臓(カタログ番号6542-1)およびリンパ節(カタログ番号6594-1)由来のポリA+ mRNAを、Clontechから購入した。ヒト細胞株THP-1、U937、およびII-23由来のポリA+ mRNAを、Biogen, Cambridge, M.A.で作製した。λgt10におけるヒト扁桃cDNAライブラリー、および扁桃ライブラリーからのDNAをまた、Biogenで調製した。
【0105】
RT-PCRを、6個のRNAサンプルで行なった。各cDNA反応物は、1μgのポリA+ mRNA、50mM Tris pH8.3、75mM KCl、3mM MgCl2、10mM DTT、250μM dNTP、50ngランダムヘキサマー(50ng/μl)および400単位のSuperscriptII Reverse transcriptase(Gibco BRLカタログ番号6542-1)を40μlの最終容量中に含んでいた。反応物を、20ECで20分間、42ECで50分間、および99ECで5分間インキュベートした。PCRのために、5分の1の各cDNA反応物または100〜1000ngのcDNAライブラリーDNAを用いた。各サンプルについて2つのPCR反応物(転写産物がサンプル中に提示される場合、201bpのPCR産物を生じるプライマー対LTB-065およびLTB-067を有する反応物、および257bpの産物を生じるプライマー対LTB-066およびLTB-067を有する2つ目の反応物)を設定した。PCR反応を、10mM Tris pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl2、0.01%ゼラチン、10% DMSO、100μM dNTP、30pmoleの各プライマー、および5単位のAmplitaq(Perkin Elmerカタログ番号N801-0060)中で行なった。PCRを、Perkin Elmer Cetus DNA Thermal Cycler Model番号480において実施した。用いたサイクル条件は、95EC 1分間、60EC 1分間、および72EC 1分間を35サイクルであった。
【0106】
適切なサイズの産物が、肝臓、脾臓、リンパ節、THP-1、および扁桃から得られたが、U937 mRNAからもII-23 mRNAからも得られなかった。肝臓から生成した201bpのPCR産物を、cDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとしての使用のために精製した。
iii)cDNAライブラリースクリーニング
扁桃ライブラリーがTRELLを含んでいたことがPCRによって実証されたので、λgt10ヒト扁桃cDNAライブラリーからの100万のプラーク形成単位(PFU)を、1×10 PFU/NuncTMプレートの密度でプレートした。二連のリフトを、20×20cm Schleicher and Scheull BA-S 85 OptitranTMフィルター上に作製した。201bpのPCR産物を、ランダムプライミング(本明細書中に参考として特に援用される、Feinberg and Vogelstein, Anal. Biochem 137:266-267, 1984)により32P標識した。フィルターを、10%デキストラン硫酸、100μg/ml tRNA、および6×10 CPM/mlプローブを含むプラークスクリーン緩衝液(50mM Tris pH7.5、1M NaCl、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.2% PVP、および0.2% Ficoll)400ml中で65ECで一晩ハイブリダイズした。これらを、プラークスクリーン緩衝液で2回、および2×SSC、0.1% SDSで2回、65Cにて洗浄し、そして増感スクリーンとともにフィルムに−70Cで40時間曝露した。
【0107】
二連のポジティブを、マスタープレートからSM(100mM NaCl、10mM MgSO4、50mM Tris pH 7.5)+ゼラチン中に円形に抜き取った。ポジティブのうちの12を、プラーク精製した。12個の精製した候補物からのλミニプレップDNAを、Not1で消化し、1%アガロースゲルで電気泳動し、サザンブロットし、そして201bpのプローブでハイブリダイズした。プローブにハイブリダイズした最大の挿入片(約2kb)を有するクローンを、大規模DNA精製およびDNA配列決定のために選択した。これらのクローンの各々からの挿入片を、pBluescript SK+(Strategene 番号212205)のNot1部位にサブクローン化した。DNA配列を、λDNAおよびプラスミドDNAから得た。2006bpのcDNA挿入片を有するクローンF1aは、コード領域の5'末端にイントロンを有するようであり、そして完全なオープンリーディングフレームを含まなかった。クローンA2a(PB133とも呼ぶ)は、1936bpのcDNA挿入片を含んでいた。このクローンは、543bpの5'非翻訳領域、852bpのオープンリーディングフレーム、および3'非翻訳領域を含んでいたが、ポリアデニル化シグナルもポリAテイルも含んでいなかった。
【0108】
hTRELL cDNAクローンA2aのオープンリーディングフレームをコードするヌクレオチド配列を配列番号3に示す。推定の284アミノ酸配列を、配列番号4に示す。36位の第2のメチオニンは、より可能性が高い翻訳開始部位である。なぜなら、この部位は、Kozakにより定義されたような開始のための必要条件をよりきっちりと満たすからである。
【0109】
同定された配列を用いて、TRELLをコードするcDNAの配列を決定した。上記のDNA配列(すなわち、配列番号3)から、本発明者らは、TRELLのアミノ酸配列(配列番号4)を推定した。タンパク質工学の分野の現在の状態を考慮に入れれば、当業者が目的のある改変、挿入、または欠失をこれらのアミノ酸配列に行い、そして本発明者らが本明細書中に記載した分子の生物学的または免疫学的活性と実質的に同じ生物学的または免疫学的活性を有する種々の分子を取得し得ることは明らかであるはずである。
iv. ヒトTRELL発現のノーザン分析
ヒトcDNAクローン2aの440bp PpuM1/BstX1フラグメントを、ランダムプライミングにより32P標識し、そしてこれを使用して、種々のヒト組織由来のRNAを含む市販のノーザンブロットをプローブした。ノーザン分析は、hTRELLフラグメントが約1.4〜1.6kb長の単一のmRNA種にハイブリダイズしたことを示した。ヒトTRELLは、免疫系のほとんどの器官(すなわち、脾臓、末梢血リンパ球(pbl)、リンパ節、虫垂)に発現するが、胸腺、胎児肝臓(リンパ球前駆体の供給源)および骨髄では比較的低かった(図4)。従って、二次免疫系の器官が、主としてTRELLを発現する。発現はまた、卵巣、前立腺、小腸、結腸、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓において検出された。発現は、精巣、骨格筋、腎臓および膵臓で相対的に低かった。このパターンは、TRAILは、心臓および脳において貧弱に発現することを除いて、TRAILリガンドの発現に密接に類似する広範な発現を示す。
【0110】
c)TRELLリガンドへ結合するレセプターの単離
TNFファミリーのリガンドを使用して、レセプターを同定および単離し得る。記載されるTRELL配列を用いて、レセプター結合配列を構成するTRELLリガンドの細胞外ドメインの5’末端をマーカーまたはタグ化配列に融合させ、次いで、多数の発現系のいずれかにおいてリガンドの分泌をさせるリーダー配列を添加し得る。この技術の一例は、Browningら(1996)(JBC 271,8618-8626)に記載されており、ここで、LT-βリガンドはこのような形態で分泌された。VCAMリーダー配列を短いmycペプチドタグに続いてLT-βの細胞外ドメインに結合させた。VCAM配列を使用して正常に膜結合したLT-β分子の分泌をさせた。分泌されるタンパク質は、N末端上のmycタグを保持している。これは、レセプターへ結合する能力を付与しない。このような分泌タンパク質を、一過的にトランスフェクトされたCos細胞または類似の系(EBNA由来ベクター、昆虫細胞/バキュロウイルス、picchiaなど)のいずれかにおいて発現し得る。未精製の細胞上清を、タグ化リガンドの供給源として使用し得る。
【0111】
レセプターを発現する細胞を、それらをタグ化リガンドに曝露することにより同定し得る。結合したリガンドを有する細胞を、FACS実験においてmycタグを抗mycペプチド抗体(9E10)続いてフィコエリトリン(または、類似の標識)標識抗マウスイムノグロブリンで標識することにより同定する。FACS陽性細胞を、容易に同定し得、そしてこれはレセプターをコードするRNAの供給源として役立つ。次いで、発現ライブラリーをこのRNAから標準的な技術を介して調製し、そしてプールに分割する。クローンのプールを適切な宿主細胞にトランスフェクトし、そしてタグ化リガンドのレセプター陽性トランスフェクト細胞への結合を、酵素で標識された抗マウスIg試薬(すなわち、ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼ標識抗体)に結合したmycペプチドタグの標識に続く顕微鏡検査を介して決定する。一旦陽性プールが同定されると、プールサイズを、レセプターをコードするcDNAが同定されるまで低減する。この手順は、マウスまたはヒトのいずれかのTRELLで実施し得る。なぜなら、レセプターへと容易に導き得るからである。
【0112】
2.細胞および試薬
Kawashima博士(Geneva Biomedical Research Institute, Geneva, Switzerland)から得たWEHI 164クローン13を除くすべての細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Rockwille,MD)から得た。HT29サブクローン(HT29-14)は前に記載され(Browningら、1996)、そしてTNF感受性ME180サブクローンは、Carl Ware博士から得た。II-23T細胞ハイブリドーマは記載されている(Brwoningら、1991)。Balb/cマウスに、屠殺3日前に1.5mlのチオグリコレートブロス(Difco Lab.,MI)を腹腔投与した。細胞を腹腔からとり、そしてDMEM(Gibco Lab)中で1時間106細胞/mlで培養した。非接着性細胞をプレートから洗い流し、そして接着細胞(ほとんど例外なくマクロファージ)をTri-Reagent(Molecular Research Center Inc.)中で溶解し、そしてRNA抽出を行った。
【0113】
組換えヒトTNF、LTa、LTa1/b2、これらのタンパク質に対する抗体、およびレセプター−IgG融合タンパク質は以前に記載されている(Browningら、1995)。抗CD40L抗体5C8は記載されている。ポリクローナル抗hTRELL血清を、以前に記載のように(BrowningおよびRibolini,1989)、CFA中の純粋組換えhTRELLのリンパ節内投与により調製した。2ヶ月後、抗hTRELL応答を観察して、そしてイムノグロブリンをプロテインA-Sepharoseを用いて精製した。
【0114】
マウスTRELLクローニング
マウスエリスロポエチン配列由来のアンチセンスオリゴヌクレオチドプライマー5'GTTCCAGGCCAGCCTGGG3'を、BRL設計アンカープライマーと組み合わせて、5'RACEプロトコルにおいて製造者(BRLからの5'RACEシステム)の推薦法に従って使用した。第一鎖cDNAを、1時間接着腹腔マクロファージ由来のRNAから作製した。増幅をPerkin-Elmer DNAサーマルサイクラー中でTaq DNAポリメラーゼとともに実施した。94度での5分間の変性後、サイクル条件は以下のようであった:35サイクルの、94℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で3分間、続いて最後のさらなる72℃での延伸。アガロースゲル上のPCR実験の分析は、2個の650および500の増幅フラグメントを明らかにした。2つのフラグメントをゲルから切り出し、pBS-Tベクターへ挿入し、そして配列決定した。32P標識ランダムプライムフラグメントを用いるノーザンハイブリダイゼーションは、500bpフラグメントが、マクロファージにおいて1.4kb RNAとハイブリダイズしたことを示した。cDNAの方向を決定するために、両方向に32P標識リボプローブを、ノーザンハイブリダイゼーションに使用した。決定された方向および配列から、本発明者らは、1.4kb mRNA:5' TCAGGTGCACTTTGATGAGG3'および5'CTGTCAGCTCCTCCTGAG 3'についての2つの内部プライマーを得た。これらを、それぞれ3'および5' RACE-PCRに使用した。3' RACE実験は、750bpフラグメントを明らかにした。これを、pBS-Tベクターに挿入し、そして配列決定した。これは、1.4kb RNAの3'末端に相当した。なぜなら、配列はポリA領域の直前のポリA付加シグナルを有していたからである。5' RACEは、バンドを明らかにしなかった。Clontech Marathon cDNA増幅キットを使用して1 hr.接着マクロファージからcDNAを調製した。PCRは、決定したcDNA配列(5'AGCAGGAGCCTTCTCAGGAG3'および5'GATCCAGGGAGGAGCTTGTCC3')からのセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドプライマーならびにキットからのユニバーサルプライマーを用いて単離した1040bp PCRフラグメントを使用した。これは、もとの1040bpフラグメントよりも5’末端側に60bp長いフラグメントの単離をもたらした。
【0115】
ヒトTRELLクローニング
ESTデータベースの検索は、マウス配列に明らかに相同である1個のヒトクローンを示した。クローン154742(Genbank受託番号第R55379号)は、マウスcDNAに対して89%相同な345bp配列を有する。 ETSから得た2つのプライマー(5'CCCTGCGCTGCCTGGAGGAA3':および5'AGACCAGGGCCCCTCAGTGA3')を使用してRT-PCRにより異なる組織およびライブラリーを、hTRELL転写物の存在についてスクリーニングした。正確なサイズの産物を、肝臓、脾臓、リンパ節、THP-1および扁桃腺から得たが、U937 mRNAからは得なかった。201bpの産物をクローン化し、そしてλgt10ヒト扁桃腺cDNAライブラリーをスクリーニングするために使用した。106プラーク形成単位を105PFU/プレートでプレートした。複製リフトを、20×20cmニトロセルロースフィルター上に作製し、そしてランダムプライミングにより調製したプローブでハイブリダイズした。フィルターを、10%硫酸デキストラン、100mg/ml tRNAおよび6×105cpm/mlのプローブを含むプラークスクリーニング緩衝液(50mM Tris pH7.5、1M NaCl、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.2%ポリビニルピロリドンおよび0.2%Ficoll)中で65℃で一晩ハイブリダイズし、これらを、65℃でプラークスクリーニング緩衝液で2回、および2×SSC、0.1% SDSで2回洗浄した。λミニプレップDNAを陽性コロニーから調製し、そして最大のインサートを有するクローンをラージスケールのDNA精製およびDNA配列決定のために選択した。インサートを、pBlueScript SK+のNotI部位にサブクローン化した。___ヒトESTは、___の部分をコードすることが見い出された。
【0116】
RNA分析
hTRELL cDNAの0.45 kb PpuM1/BstX1または1.25 NarI/NotIフラグメントのいずれかを、ランダムプライミングで標識して、そしてClontechから購入したヒトおよびマウスの組織ノーザンブロットをプローブするために使用した。マウスの組織及び細胞から、TRI試薬でRNA抽出し、ノーザン分析を本質的にすでに記載される(ChicheporticheおよびVassalli,1994)ように、4μgの総RNAおよび32P標識ランダムプライムmTRELL cDNAを用いて行った。
【0117】
染色体指定
単一染色体細胞ハイブリッド由来のDNAのパネル(HGMP Resource centre, Hinxton, Cambridge, UK)を使用して、PCRにより、マウス配列に非相同である3'非翻訳領域において選択したプライマー(5'AGTCGTCCCAGGCTGCCGGCT3'および5'CCTGAAGTGGGGTCTTCTGGA3')を用いて340bpのフラグメントを増幅した。増幅を、40サイクルの、94℃30秒間、65℃90秒間、および72℃90秒間で行った。検出をエチジウムブロマイドで染色したアガロースゲル上で実施した。
【0118】
組換えhTRELLタンパク質の発現
VCAMリーダー配列、mycペプチドタグ、およびリンホトキシン-b(ref)について記載されるのと同様のhTRELLの細胞外ドメインを合わせた可溶性発現構築物を、LTbについて記載されたのと同様の様式で調製した(Browningら、1996)。以下のDNAフラグメントを単離した。VCAMリーダーをコードするNotI/平滑フラグメントおよびmycタグをコードするオリゴヌクレオチドの対(5'平滑、3'PpuM1部位)(これらは記載されている)、TRELLの0.45 kb PpuM1/BstX1フラグメントおよびTRELLの0.65 BstX1/Not1フラグメント。4つのフラグメントをNot1/リン酸化pBluescriptベクター中に連結した。このベクターからのNot1インサートをpFastBac1ベクター(GibcoBRL)へ移し、そしてこれを使用して組み換えバキュロウイルスを作製した。可溶性TRELLを10のMOIでHiFiveTM昆虫細胞に感染させることにより調製し、そして培地を2日後に採集した。以下の項目を培地に添加した:HEPES緩衝液(最終濃度25mM,pH 7.4, 1mM AEBSF(Pierce))および1mg/mlペプスタチン。培地を濾過し、そしてAmicon 10kDaカットオフフィルター上での限外濾過により10倍に濃縮した。濃縮TRELL含有培地を、SP sepharose Fast Flowカラム上に直接充填し、そして0.4M NaClを含有する25mM HEPES緩衝液pH7.0で洗浄した。TRELLを0.6M NaClを有する同一の緩衝液で溶出した。精製TRELLを___上のサイズ分析に供した。
【0119】
分泌の分析
EBNAベースの発現のためのベクターを、ベクターCH269を用いて構築した。CH269はpEBVHis ABC(Invitrogen)の改変版であり、ここでEBNA遺伝子およびヒスチジンタグを除去した。pFastBacベクター中のhTNFの0.71kbフラグメントは、P.Pescamento博士およびA.Goldfeldにより提供された。SnaBI/XhoIインサートをCH269のPvuII/XhoI部位に連結した。_1-12切断部位欠失を含むゲノムTNFインサートは、G.Kollias博士からの贈答であり、そしてA.GoldfeldによりCH269ベクターに挿入された。hTRELLクローンA2Aの1.8kb NotIインサート、hCD40L cDNAを含む0.98kb NotIフラグメント(E.Garber博士から得た)、およびhLTaを含む1.46kb NotIインサート(Browningら、1995)をCH269のNotI部位に連結した。改変開始部位を有するhLTbコード領域を含む0.81kb HindIIIインサート(Browningら、、1995)を、CH269のHindIII部位に連結した。EBNA-293細胞を、種々のCH269ベクターとともにGFPベクターでリポフェクトアミンを用いてトランスフェクトし、そしてFACS分析のために5mM EDTAを含むPBSで除去したか、または2日後に細胞を代謝的標識に供した。両方の手順とも、以下の抗体を利用した。hTRELL ウサギポリクローナルIg画分、hTNF mAB 104c、hTLa mAb AG9、LTa1 b2 mAb B9およびCD40L mAb 5C8。FACS分析を、10%FBSおよび50μg/ml熱凝集ヒトIgGを含むRMPI培地中で5μg/mlの抗体を用いて実施した。フィコエリトリン標識抗マウスまたは抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch)を使用して、抗体結合を検出した。GFP光(GFP bright)トランスフェクト細胞を、生存ゲート(live gate)した。免疫沈降について、トランスフェクション後2日の細胞をPBSで洗浄し、そして200μCi/ml TranSlabel(ICN)を含み、met/cysを含まないMEM中に移した。__時間後、上清を採集し、そして記載のように免疫沈降に供した(Browningら、1995)。
【0120】
細胞傷害性アッセイ:
細胞増殖アッセイを以前に記載(BrowningおよびRibolini,1989)の通りに実施した。顕微鏡検査のために、HT29-14細胞を12ウェルプレートに200,000細胞/ウェルの密度で播種して、そして2日間増殖させた。ヒトTRELL、TNF、リンホトキシン-a1b2(Browningら、1996)または抗fas(CH11、Kamaya)を80単位/mlのヒトインターフェロンγとともに添加した。26時間後、培地を除去した。これは、サイトカインまたは抗fas処理の後の、プラスチックから剥離した多くの死細胞を含んでいた。残りの細胞を80%エタノールで固定し、そして1mg/ml Hoechst色素を含むPBSで洗浄した。2分後色素を除去し、細胞をPBS中で洗浄し、そして蛍光顕微鏡により検査した。
表II:種々の細胞株上のヒトTRELL結合部位および細胞傷害性効果
【0121】
【表2】

【0122】
表III:細胞傷害性パターンによる種々のTNFファミリーメンバーの分類
【0123】
【表3】

【0124】
【数1−1】

【0125】
【数1−2】

【0126】
【数1−3】

【0127】
【数1−4】

【0128】
【数1−5】



(配列表)
【0129】
【数2−1】

【0130】
【数2−2】

【0131】
【数2−3】

【0132】
【数2−4】

【0133】
【数2−5】

【0134】
【数2−6】

【0135】
【数2−7】

【0136】
【数2−8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2009−183294(P2009−183294A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80644(P2009−80644)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【分割の表示】特願2007−28621(P2007−28621)の分割
【原出願日】平成9年8月7日(1997.8.7)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【出願人】(507041652)ザ ファカルティー オブ メディスン オブ ザ ユニバーシティ オブ ジュネーブ (2)
【Fターム(参考)】