説明

腫瘍特異的組換え抗体およびその使用

【課題】 癌特異的マーカーに結合しかつヒトに投与されたときの免疫原性が低い抗体が求められている。さらに、毒素または免疫刺激成分を、たとえば融合タンパク質や免疫コンジュゲートとして癌特異的マーカーに送達して、腫瘍細胞を選択的に死滅させる抗体も当技術分野で求められている。
【解決手段】 1箇所または複数のフレームワーク領域および/または相補性決定領域を規定するアミノ酸配列がその免疫原性が低下するよう改変されている組換えKS抗体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2001年5月3日に出願された米国特許出願第60/288,564号に対して利益と優先権を主張するものであり、この出願を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に組換え抗体に関する。より詳細には、本発明はヒト上皮細胞接着分子を特異的に結合する組換え抗体ならびに診断、予後予測および治療用作用物質としてのその抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ここ数年にわたり、抗体療法の開発がかなり進歩してきている。たとえば、研究者等は、様々な癌特異的マーカーだけでなく、そのようなマーカーに特異的に結合する様々な抗体を特定している。抗体を使用して、マーカーを発現している癌細胞に特定の分子(たとえば毒素または免疫刺激成分(たとえばサイトカイン))を送達すると、癌細胞を選択的に死滅させることができる(たとえば特許文献1および2を参照)。
【0004】
KS−1/4抗体は、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)に対するマウス由来のモノクローナル抗体である。EpCAMはある特定の上皮細胞表面の先端に非常に低レベルで発現する。たとえば、EpCAMは、腸管細胞の摂取した食物に面し、循環から離れた細胞表面で発現し、そこでは免疫系の大部分のタンパク質および細胞の影響を受けにくい(非特許文献1)。
【0005】
しかし、ある特定の条件下では、EpCAMは特定の細胞たとえば上皮起源の腫瘍細胞上に高率に発現する。通常、そのような腫瘍細胞はその極性を失っており、その結果EpCAMが細胞表面全体にわたって発現される。したがって、EpCAMは抗体系免疫刺激成分を腫瘍細胞に向けるのに好都合な腫瘍特異的マーカーである(非特許文献2および3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,541,087号明細書
【特許文献2】米国特許第5,650,150号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Balzarら、[1999年]J. Mol. Med. 第77巻:699〜712頁
【非特許文献2】Simonら、[1990年] Proc. Nat. Acad. Sci. USA 第78巻:2755〜2759頁
【非特許文献3】Perezら、[1989年]J Immunol.第142巻:3662〜3667頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし宿主哺乳動物中では抗体が免疫原性を伴う。これは抗体が自己由来でない場合により起こりやすい。その結果、抗体療法の有効性はしばしば抗体に向けられた免疫原性応答によるものである。免疫原性応答は、通常、抗体の全体または部分が宿主哺乳動物と異なる哺乳動物に由来する場合、たとえば抗体がマウス由来でありレシピアントがヒトである場合に増強される。したがって、マウス由来抗体の免疫原性を低減しまたは最小限に抑えるために、マウス由来抗体を改変してヒト抗体により近付けることが有用となろう。
【0009】
したがって、たとえばキメラ抗体、抗体のヒト化および抗体の張り合わせ(veneering)を含む様々な取り組みが開発されているとはいえ、当技術分野では癌特異的マーカーに結合しかつヒトに投与されたときの免疫原性が低い抗体が求められている。さらに、毒素または免疫刺激成分を、たとえば融合タンパク質や免疫コンジュゲートとして癌特異的マーカーに送達して、腫瘍細胞を選択的に死滅させる抗体も当技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ヒトEpCAMを特異的に結合するが、ヒトにおける免疫原性が鋳型よりも低い組換え抗体であるマウス抗EpCAM抗体を特定したことに基づく。特に、本発明は、1箇所または複数のフレームワーク領域および/または相補性決定領域を規定するアミノ酸配列がその免疫原性が低下するよう改変されている組換えKS抗体を提供する。
【0011】
本明細書で使用する用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、(i)未処置抗体(たとえばモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、(ii)たとえばFab断片、Fab'断片、(Fab')2断片、Fv断片、1本鎖抗体結合部位、sFvを含むその抗原結合部分、(iii)二重特異的抗体およびその抗原結合部分、および(iv)多重特異的抗体およびその抗原結合部分を意味すると理解される。
【0012】
本明細書で使用する用語「結合特異的」、「特異的に結合する」、および「特異的結合」は、抗体の特定の抗原に対する結合親和性が少なくとも約106M‐1、より好ましくは少なくとも約107M‐1、より好ましくは少なくとも約108M‐1、最も好ましくは少なくとも約1010M‐1であることを意味すると理解される。
【0013】
本明細書で使用する用語「相補性決定領域」および「CDR」は、主として抗原と相互に作用する超可変領域または免疫グロブリン可変領域ループを意味すると理解される。免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、図1に示すようにフレームワーク領域の間に挿入されたCDRを3箇所含んでいる。たとえば、配列番号1で示す、KS−1/4抗体の免疫グロブリン軽鎖可変領域を規定するアミノ酸配列に関しては、CDRは、Ser24からLeu33(CDR1)、Asp49からSer55(CDR2)、およびHis88からThr96(CDR3)のアミノ酸配列によって規定される。配列番号2で示す、KS−1/4抗体の免疫グロブリン重鎖可変領域のアミノ酸配列に関しては、CDRは、Gly26からAsn35(CDR1)、Trp50からGly66(CDR2)、およびPhe99からTyr105(CDR3)によって規定される。本明細書で記載する他の抗体の対応するCDRは、対応するKS−1/4の重鎖または軽鎖の配列と揃えて図1A〜1Cに示す。
【0014】
本明細書で使用する用語「フレームワーク領域」および「FR」は、相補性決定領域に近接する免疫グロブリン可変領域を意味すると理解される。免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、図1に示すように、どちらも4箇所のFRを含む。たとえば、配列番号1で示す、KS−1/4抗体の免疫グロブリン軽鎖可変領域を規定するアミノ酸配列に関しては、FRは、Gln1からCys23(FR1)、Trp34からPhe48(FR2)、Gly56からCys87(FR3)、およびPhe97からLys106(FR4)のアミノ酸配列によって規定される。配列番号2で示す、KS−1/4抗体の免疫グロブリン重鎖可変領域を規定するアミノ酸配列に関しては、FRは、Gln1からSer25(FR1)、Trp36からGly49(FR2)、Arg67からArg98(FR3)、およびTrp106からSer116(FR4)のアミノ酸配列によって規定される。本明細書で記載する他の抗体のFRは、対応するKS−1/4の重鎖または軽鎖の配列と揃えて図XおよびYに示す。
【0015】
本明細書で使用する用語「KS抗体」は、ハイブリドーマによって発現したマウス抗体KS−1/4が結合した同じヒトEpCAM抗原に特異的に結合する抗体を意味すると理解される(たとえばCancer Res.1984年、第44巻(2):681〜7頁を参照)。KS抗体は、(i)免疫グロブリン軽鎖のCDR1配列を少なくとも一部分規定するアミノ酸配列SASSSVSY(配列番号1のアミノ酸24〜31)、(ii)免疫グロブリン軽鎖のCDR2配列を少なくとも一部分規定するアミノ酸配列DTSNLAS(配列番号1のアミノ酸49〜55)、(iii)免疫グロブリン軽鎖のCDR3配列を少なくとも一部分規定するアミノ酸配列HQRSGYPYT(配列番号1のアミノ酸88〜96)、(iv)免疫グロブリン重鎖のCDR1配列を少なくとも一部分規定するアミノ酸配列GYTFTNYGMN(配列番号2のアミノ酸26〜35)、(v)免疫グロブリン重鎖のCDR2配列を少なくとも一部分規定するアミノ酸配列WINTYTGEPTYAD(配列番号2のアミノ酸50〜62)、(vi)免疫グロブリン重鎖のCDR3配列を少なくとも一部分規定するアミノ酸配列SKGDY(配列番号2のアミノ酸配列101〜105)、または前記諸配列の任意の組合せを含むことが好ましい。
【0016】
本発明は、一態様において、その一部分によって免疫グロブリンVLドメインのフレームワーク領域が規定されるアミノ酸配列を含む、EpCAMを特異的に結合する組換え抗体を提供する。一実施形態では、フレームワーク領域(FR1)が、配列番号5のアミノ酸残基1〜23によって規定され、ここで、Xaa1はQまたはEであり、Xaa3はLまたはVであり、Xaa10はIまたはTであり、Xaa11はMまたはLであり、Xaa13はAまたはLであり、Xaa18はKまたはRであり、Xaa21はMまたはLであり、ただし、Xaa1、Xaa3、Xaa10、Xaa11、Xaa13、Xaa18またはXaa21に位置するアミノ酸残基の少なくとも1個は、配列番号1の対応する位置のアミノ酸と同じものではない。アミノ酸は各々の位置で標準の一文字略号で表示する。
【0017】
別の実施形態では、フレームワーク領域(FR2)が配列番号5のアミノ酸残基34〜48によって規定され、ここでXaa41はSまたはQであり、Xaa42はSまたはAであり、Xaa45はPまたはLであり、あるいはXaa46はWまたはLであり、ただし、Xaa41、Xaa42、Xaa45またはXaa46に位置するアミノ酸残基の少なくとも1個は、配列番号1の対応する位置のアミノ酸配列と同じものではない。
【0018】
別の実施形態では、フレームワーク領域(FR3)が配列番号5のアミノ酸残基56〜87によって規定され、ここでXaa57はFまたはIであり、Xaa69はSまたはDであり、Xaa71はSまたはTであり、Xaa73はIまたはTであり、Xaa77はMまたはLであり、Xaa79はAまたはPであり、Xaa82はAまたはFであり、Xaa84はTまたはVであり、ただし、Xaa57、Xaa69、Xaa71、Xaa73、Xaa77、Xaa79、Xaa82またはXaa84に位置するアミノ酸残基の少なくとも1個は、配列番号1の対応する位置のアミノ酸と同じものではない。
【0019】
別の態様では、本発明は、その一部分によって免疫グロブリンVLドメインのフレームワーク領域が規定されるアミノ酸配列を含む、EpCAMを特異的に結合する組換え抗体を提供する。一実施形態では、フレームワーク領域(FR1)が配列番号6のアミノ酸残基1〜25によって規定され、ここでXaa2はIまたはVであり、Xaa9はPまたはAであり、Xaa11はLまたはVであり、あるいはXaa17はTまたはSであり、ただし、Xaa2、Xaa9、Xaa11またはXaa17に位置するアミノ酸残基の少なくとも1個は、配列番号2の対応する位置のアミノ酸と同じものではない。
【0020】
別の実施形態では、フレームワーク領域(FR2)が配列番号6のアミノ酸残基36〜49によって規定され、ここでXaa38はKまたはRであり、Xaa40はTまたはAであり、あるいはXaa46はKまたはEであり、ただし、Xaa38、Xaa40、Xaa46に位置するアミノ酸残基の少なくとも1個は、配列番号2の対応する位置のアミノ酸と同じものではない。
【0021】
別の実施形態では、フレームワーク領域(FR3)が配列番号6のアミノ酸残基67〜98によって規定され、ここでXaa68はFまたはVであり、Xaa69はAまたはTであり、Xaa70はFまたはIであり、Xaa73はEまたはDであり、Xaa76はAまたはTであり、Xaa80はFまたはYであり、Xaa83はIまたはLであり、Xaa84はNまたはSであり、Xaa85はNまたはSであり、Xaa88はN、AまたはSであり、Xaa91はMまたはTであり、あるいはXaa93はTまたはVであり、ただし、Xaa68、Xaa69、Xaa70、Xaa73、Xaa76、Xaa80、Xaa83、Xaa84、Xaa85、Xaa88、Xaa91またはXaa93に位置するアミノ酸残基の少なくとも1個は、配列番号2の対応する位置のアミノ酸と同じものではない。別の実施形態では、フレームワーク領域(FR4)が配列番号6のアミノ酸残基106〜116によって規定されXaa108はQまたはTである。
【0022】
別の実施形態では、免疫グロブリンVLドメインが、(i)配列番号9のアミノ酸残基1〜23と(ii)配列番号8のアミノ酸残基1〜23とからなる群から選択されたFR1配列を含む。別の実施形態では、免疫グロブリンVHドメインが配列番号18のアミノ酸残基1〜25によって規定されたFR配列、および/または配列番号18のアミノ酸残基67〜98によって規定されたFR配列を含む。より好ましくはVLドメインが配列番号9のアミノ酸1〜106によって規定されたアミノ酸配列を含み、かつ/またはVHドメインが配列番号18のアミノ酸1〜116によって規定されたアミノ酸配列を含む。
【0023】
さらに、抗体は、たとえば(i)配列番号1のアミノ酸残基24〜31、(ii)配列番号1のアミノ酸残基49〜55、および/または(iii)配列番号1のアミノ酸残基88〜96を含む、CDR配列の少なくとも一部分を規定するアミノ酸配列を任意選択で含んでいてもよい。同様に、抗体は、たとえば(i)配列番号2のアミノ酸残基26〜35、(ii)配列番号2のアミノ酸配列50〜62、および/または(iii)配列番号2のアミノ酸残基101〜105を含む、CDR配列の少なくとも一部分を規定するアミノ酸配列を任意選択で含んでいてもよい。
【0024】
別の実施形態では、抗体は抗体−サイトカイン融合タンパク質の抗原標的部分(antigen targeting portion)を含む。サイトカインは好ましくはインターロイキンであり、より好ましくはインターロイキン2である。
【0025】
別の態様では、本発明は本発明の抗体の少なくとも一部分をコードする発現ベクターを提供する。好ましい実施形態では、発現ベクターは配列番号40で述べるヌクレオチド配列を含む。
【0026】
別の態様では、本発明はEpCAMの過剰発現を伴う疾患(たとえば、患部組織のEpCAMレベルがその疾患に罹患していない組織よりも高い疾患)に罹患しているヒトの患者の診断、予後予測および/または治療を行う方法を提供する。この方法はそのような診断、予後予測または治療が必要な個人に本発明の抗体の一種を投与することを含む。
【0027】
抗体はそれと結合した診断および/または治療用作用物質を任意選択で含む。作用物質を抗体と融合させて融合タンパク質を生成すればよい。あるいは、作用物質を抗体に化学的に結合させて免疫コンジュゲートを得てもよい。作用物質には、たとえば、トキシン、放射標識、サイトカイン、画像処理剤などが含まれると考える。好ましい実施形態では、本発明の抗体を融合タンパク質としてサイトカインと融合させる。好ましいサイトカインには、好ましくはインターロイキン2(IL−2)、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−18などのインターロイキン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エリスロポエチンなどの造血因子;TNFαなどの腫瘍壊死因子(TNF)、リンホトキシンなどのリンホカイン、レプチンなどの代謝プロセス制御因子;インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγなどのインターフェロン;およびケモカインが含まれる。抗体−サイトカイン融合タンパク質がサイトカイン生理活性を示すことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】軽鎖および重鎖変異型およびKS抗体の共通配列を整列させて示す図である。免疫グロブリンフレームワーク領域(FR1〜FR4)を−で表示する。免疫グロブリン相補性決定領域(CDR1〜CDR3)を*で表示する。個々のKS抗体軽鎖V領域のセグメントを「VK」と称するが、Kは軽鎖がκ鎖であることを指す。個々のKS抗体重鎖V領域のセグメントを「VH」と称する。共通配列では置換できるアミノ酸を「X」で示す。
【図1B】軽鎖および重鎖変異型およびKS抗体の共通配列を整列させて示す図である。免疫グロブリンフレームワーク領域(FR1〜FR4)を−で表示する。免疫グロブリン相補性決定領域(CDR1〜CDR3)を*で表示する。個々のKS抗体軽鎖V領域のセグメントを「VK」と称するが、Kは軽鎖がκ鎖であることを指す。個々のKS抗体重鎖V領域のセグメントを「VH」と称する。共通配列では置換できるアミノ酸を「X」で示す。
【図1C】軽鎖および重鎖変異型およびKS抗体の共通配列を整列させて示す図である。免疫グロブリンフレームワーク領域(FR1〜FR4)を−で表示する。免疫グロブリン相補性決定領域(CDR1〜CDR3)を*で表示する。個々のKS抗体軽鎖V領域のセグメントを「VK」と称するが、Kは軽鎖がκ鎖であることを指す。個々のKS抗体重鎖V領域のセグメントを「VH」と称する。共通配列では置換できるアミノ酸を「X」で示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を特異的に結合する組換え抗体を提供する。本発明の好ましい抗体は、可変領域が変更されており、そのためヒトにおける免疫原性が低下している。本発明の抗体可変領域は、ヒトの患者においてEpCAMが過剰発現している腫瘍組織に対して、抗体および抗体融合タンパク質を標的とすることに、特に有用である。好ましい実施形態では、本発明の抗体をサイトカインと融合させて免疫サイトカインを得る。
【0030】
本発明のタンパク質配列
本発明は、適切にヘテロ二量体化された場合に、KS抗原またはKSAとしても知られているヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)に結合する抗体可変領域またはV領域配列のファミリーを開示する。本発明の好ましいタンパク質は本明細書で述べたようにヒトの患者を治療するのに有用である。したがって、好ましいKS抗体変異型は、ヒトへの投与時の免疫原性を低減するために、ヒト化されているか、免疫原性除去(deimmunize)されているか、またはその両方である。本発明によれば、たとえば、ペプチドエピトープがMHCクラスII分子に結合するのを減少する突然変異を導入してT細胞エピトープの潜在的存在を除去または弱化する免疫原性除去方法(たとえばWO98/52976およびWO00/34317を参照)を使用するか、あるいは、非ヒトT細胞エピトープをヒト抗体中に存在するヒト自己エピトープと一致するように変化させる方法(たとえば米国特許第5,712,120号を参照)を使用することにより、マウスKS抗体に免疫原性除去またはヒト化を施すことができる。
【0031】
I.可変軽鎖
組換え抗EpCAM抗体は、以下のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン可変軽鎖配列を備えている。
【0032】
【表1】

【0033】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号3の残基1〜23、すなわちX−I−X−L−T−Q−S−P−A−X−X−X−X−S−P−G−X−X−X−T−X−T−Cで表される、免疫グロブリン軽鎖FR1を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、この組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa1位にQもしくはE、Xaa3位にLもしくはV;Xaa10位にI、T、もしくはS;Xaa11位にMもしくはL、Xaa12位にSもしくはA;Xaa13位にA、L、もしくはV;Xaa17位にEもしくはQ、Xaa18位にKもしくはR、Xaa19位にVもしくはA;およびXaa21位にM、L、もしくはIを有する。より好ましくは、この組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa1位にE、Xaa3位にV、Xaa10位にTもしくはS、Xaa11位にL、Xaal2位にA、Xaa13位にLもしくはV、Xaa17位にQ、Xaa18位にR、Xaa19位にA、およびXaa21位にLもしくはIを有する。
【0034】
別の実施形態では、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、配列番号3の残基24〜33、すなわちS−A−S−S−S−V−S−T−X−Lで表される、免疫グロブリン軽鎖CDR1を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、CDR1領域に以下のアミノ酸を1個、すなわちXaa32位にMまたはIを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、CDR1領域にアミノ酸置換基、たとえばXaa32位にIを有する。
【0035】
別の実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号3の残基34〜48、すなわちW−Y−X−Q−K−P−G−X−X−P−K−X−X−I−Xで表される、免疫グロブリン軽鎖FR2を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、その組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa36位にQもしくはL、Xaa41位にSもしくはQ;Xaa42位にS、A、もしくはP;Xaa45位にPもしくはL、Xaa46位にWもしくはLおよびXaa48位にFもしくはYを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体はFR2領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa36位にL、Xaa41位にQ、Xaa42位にAまたはP、Xaa45位にL、Xaa46位にLおよびXaa48位にYを有する。
【0036】
別の実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号3の残基56〜87、すなわちG−X−P−X−R−F−S−G−S−G−S−G−T−X−Y−X−L−X−I−X−S−X−E−X−E−D−X−A−X−Y−Y−Cで表される、免疫グロブリン軽鎖FR3を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、その組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa57位にFもしくはI、Xaa59位にAもしくはS、Xaa69位にS、D、もしくはT、Xaa71位にIもしくはT、Xaa73位にIもしくはT、Xaa75位にSもしくはN、Xaa77位にMもしくはL、Xaa79位にAもしくはP、Xaa82位にAもしくはF、およびXaa84位にTもしくはVを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa57位にI、Xaa59位にS、Xaa69位にDもしくはT、Xaa71位にT、Xaa73位にT、Xaa75位にN、Xaa77位にL、Xaa79位にP、Xaa82位にF、およびXaa84位にVを有する。
【0037】
別の実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号3の残基97〜106、すなわちF−G−G−G−T−K−X−E−I−Kで表される、免疫グロブリン軽鎖FR4を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR4領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、たとえばXaa103位にLまたはVを有する。したがって、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR4領域にアミノ酸置換基、たとえばXaa103位にVを有する。
【0038】
II.可変重鎖
組換え抗EpCAM抗体は、以下のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン可変重鎖配列を備えている。
【0039】
【表2】

【0040】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号4の残基1〜25、すなわちQ−X−Q−L−V−Q−S−G−X−E−X−K−K−P−G−X−X−V−K−I−S−C−K−A−Sで表される、免疫グロブリン重鎖FR1を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、この組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa2位にIもしくはV、Xaa9位にPもしくはA、Xaa11位にLもしくはV、Xaa16位にEもしくはS、およびXaa17位にTもしくはSを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa2位にV、Xaa9位にA、Xaa11位にV、Xaa16位にSおよびXaa17位にSを有する。
【0041】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号4の残基36〜49、すなわちW−V−X−Q−X−P−G−X−G−L−X−W−M−Gで表される、免疫グロブリン重鎖FR2を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下のアミノ酸配列少なくとも1個、すなわち、Xaa38位にKもしくはR、Xaa40位にTもしくはA、Xaa43位にKもしくはQ、およびXaa46位にKもしくはEを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa38位にR、Xaa40位にA、Xaa43位にQおよびXaa46位にEを有する。
【0042】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号4の残基50〜66、すなわち、W−I−N−T−Y−T−G−E−P−T−Y−A−D−X−F−X−Gで表される、免疫グロブリン重鎖CDR2を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、CDR2領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa63位にDもしくはK、およびXaa65位にKもしくはQを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、CDR2領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa63位にK、およびXaa65位にQを有する。
【0043】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号4の残基67〜98、すなわちR−X−X−X−X−X−X−T−S−X−S−T−X−X−L−Q−X−X−X−L−R−X−E−D−X−A−X−Y−F−C−V−Rで表される、免疫グロブリン重鎖FR3を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa68位にFもしくはV;Xaa69位にA、T、もしくはV;Xaa70位にFもしくはI、Xaa71位にSもしくはT、Xaa72位にLもしくはA、Xaa73位にEもしくはD、Xaa76位にAもしくはT、Xaa79位にAもしくはL、Xaa80位にFもしくはY、Xaa83位にIもしくはL、Xaa84位にNもしくはS、Xaa85位にNもしくはS;Xaa88位にN、A、もしくはS;Xaa91位にMもしくはT、およびXaa93位にTもしくはVを有する。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa68位にV、Xaa69位にTもしくはV、Xaa70位にI、Xaa71位にT、Xaa72位にA、Xaa73位にD、Xaa76位にT、Xaa79位にL、Xaa80位にY、Xaa83位にL、Xaa84位にS、Xaa85位にS、Xaa88位にAもしくはS、Xaa91位にTおよびXaa93位にVを有する。
【0044】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号4の残基99〜105、すなわちF−X−S−K−G−D−Yで表される、免疫グロブリン重鎖CDR3を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、CDR3領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、たとえばXaa100位にIもしくはMを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、CDR3領域にアミノ酸置換基、たとえばXaa100位にMを有する。
【0045】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号4の残基106〜116、すなわちW−G−X−G−T−X−V−T−V−S−Sで表される、免疫グロブリン重鎖FR4を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、FR4領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa108位にQもしくはT、およびX111位にSもしくはTを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR4領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa108位にT、およびX111位にTを有する。
【0046】
III.精製可変軽鎖
別の実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は以下のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン可変軽鎖配列を備えている。
【0047】
【表3】

【0048】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号5の残基1〜23、すなわちX−I−X−L−T−Q−S−P−A−X−X−S−X−S−P−G−E−X−V−T−X−T−Cで表される、免疫グロブリン軽鎖FR1を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa1位にQもしくはE、Xaa3位にLもしくはV、Xaa10位にIもしくはT、Xaa11位にMもしくはL、Xaa13位にAもしくはL、Xaa18位にKもしくはR、およびXaa21位にMもしくはLを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa1位にE、Xaa3位にV、Xaa10位にT、Xaa11位にL、Xaa13位にL、Xaa18位にRおよびXaa21位にLを有する。
【0049】
別の好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa1位にQもしくはE、Xaa11位にAもしくはL、およびXaa21位にMもしくはLを有する、免疫グロブリン軽FR1を規定するアミノ酸配列を有している。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下の置換基少なくとも1個、すなわちXaa1位にE、Xaa11位にL、およびXaa21位にLを有する、免疫グロブリン軽鎖FR1を規定するアミノ酸配列を有している。
【0050】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号5の残基34〜48、すなわちW−Y−Q−Q−K−P−G−X−X−P−K−X−X−I−Fで表される、免疫グロブリン軽鎖FR2を規定するアミノ酸配列を有している。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa41位にSもしくはQ、Xaa42位にSもしくはA、Xaa45位にPもしくはL、およびXaa46位にWもしくはLを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、Xaa41位にQ、Xaa42位にA、Xaa45位にLおよびXaa46位にLを有する。
【0051】
別の好ましい実施形態では、本発明の組換え抗EpCAM抗体はFR2領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa42位にSもしくはA、Xaa45位にPもしくはL、およびXaa46位にWもしくはLを有する、免疫グロブリン軽FR2を規定するアミノ酸配列を有している。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下の置換基少なくとも1個、すなわちXaa42位にA、Xaa45位にLおよびXaa46位にLを有する、免疫グロブリン軽FR2を規定するアミノ酸配列を有している。
【0052】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号5の残基56〜87、すなわちG−X−P−A−R−F−S−G−S−G−S−G−T−X−Y−X−L−X−I−S−S−X−E−X−E−D−X−A−X−Y−Y−Cで表される、免疫グロブリン軽鎖FR3を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa57位にFもしくはI、Xaa69位にSもしくはD、Xaa71位にSもしくはT、Xaa73位にIもしくはT、Xaa77位にMもしくはL、Xaa79位にAもしくはP、Xaa82位にAもしくはF、およびXaa84位にTもしくはVを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa57位にI、Xaa69位にD、Xaa71位にT、Xaa73位にT、Xaa77位にL、Xaa79位にP、Xaa82位にFおよびXaa84位にVを有する。
【0053】
別の好ましい実施形態では、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa57位にFもしくはI、Xaa69位にSもしくはD、Xaa79位にAもしくはP、Xaa82位にAもしくはF、およびXaa84位にTもしくはVを有する、免疫グロブリン軽FR3を規定するアミノ酸配列を有している。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下の置換基少なくとも1個、Xaa57位にI、Xaa69位にD、Xaa79位にP、Xaa82位にF、およびXaa84位にVを有する、免疫グロブリン軽FR3を規定するアミノ酸配列を有している。
【0054】
IV.精製可変重鎖
組換え抗EpCAM抗体は、以下のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン可変重鎖配列を備えている。
【0055】
【表4】

【0056】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号6の残基1〜25、すなわちQ−X−Q−L−V−Q−S−G−X−E−X−K−K−P−G−E−X−V−K−I−S−C−K−A−Sで表される、免疫グロブリン重鎖FR1を規定するアミノ酸配列を有している。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa2位にIもしくはV、Xaa9位にPもしくはA、Xaa11位にLもしくはV、およびXaa17位にTもしくはSを有する。したがって、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa2位にV、Xaa9位にA、Xaa11位にV、およびXaa17位にSを有する。
【0057】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa2位にIもしくはV、Xaa9位にPもしくはA、およびXaa11位にLもしくはVを有する、免疫グロブリン重FR1を規定するアミノ酸配列を有している。したがって、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下の置換基少なくとも1個、すなわちXaa2位にV、Xaa9位にA、およびXaa11位にVを有する、免疫グロブリン重FR1を規定するアミノ酸配列を有している。
【0058】
別の好ましい実施形態では、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、配列番号6の残基36〜49、すなわちW−V−X−Q−X−P−G−K−G−L−X−W−M−Gで表される、免疫グロブリン重鎖FR2を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa38位にKもしくはR、Xaa40位にTもしくはA、およびXaa46位にKもしくはEを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR2領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa38位にR、Xaa40位にA、およびXaa46位にEを有する。
【0059】
別の好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸、たとえばXaa46位にKまたはEを有する、免疫グロブリン重FR2を規定するアミノ酸配列を有している。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR1領域に以下のアミノ酸置換基、たとえばXaa46位にEを有する、免疫グロブリン重FR2を規定するアミノ酸配列を有している。
【0060】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号6の残基50〜66、すなわちW−I−N−T−Y−T−G−E−P−T−Y−A−D−X−F−X−Gで表される、免疫グロブリン重鎖CDR2を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、CDR2領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa63位にDもしくはK、およびXaa65位にKもしくはQを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、以下のCDR2領域中のアミノ酸置換基、すなわちXaa63位にK、およびXaa65位にQを有する。
【0061】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号6の残基67〜98、すなわちR−X−X−X−S−L−X−T−S−X−S−T−A−X−L−Q−X−X−X−L−R−X−E−D−X−A−X−Y−F−C−V−Rで表される、免疫グロブリン重鎖FR3を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa68位にFもしくはV、Xaa69位にAもしくはT、Xaa70位にFもしくはI、Xaa73位にEもしくはD、Xaa76位にAもしくはT、Xaa80位にFもしくはY、Xaa83位にIもしくはL、Xaa84位にNもしくはS、Xaa85位にNもしくはS;Xaa88位にN、A、もしくはS;Xaa91位にMもしくはT、およびXaa93位にTもしくはVを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸置換基少なくとも1個、すなわちXaa68位にV、Xaa69位にT、Xaa70位にI、Xaa73位にD、Xaa76位にT、Xaa80位にY、Xaa83位にL、Xaa84位にS、Xaa85位にS、Xaa88位にAもしくはS、Xaa91位にT、およびXaa93位にVを有する。
【0062】
別の好ましい実施形態では、本発明の組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、すなわちXaa68位にFもしくはV、Xaa73位にEもしくはD、Xaa84位にNもしくはS、Xaa85位にNもしくはS、Xaa88位にNもしくはA、およびXaa93位にTもしくはVを有する、免疫グロブリン重鎖FR3を規定するアミノ酸配列を有している。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR3領域に以下の置換基少なくとも1個、すなわちXaa68位にV、Xaa73位にD、Xaa84位にS、Xaa85位にS、Xaa88位にA、およびXaa93位にVを有する、免疫グロブリン重FR3を規定するアミノ酸配列を有している。
【0063】
好ましい実施形態では、組換え抗EpCAM抗体は、配列番号6の残基106〜116、すなわちW−G−X−G−T−S−V−T−V−S−Sで表される、免疫グロブリン重鎖FR4を規定するアミノ酸配列を有している。より詳細には、組換え抗EpCAM抗体は、FR4領域に以下のアミノ酸少なくとも1個、たとえばXaa108位にQもしくはTを有する。より好ましくは、組換え抗EpCAM抗体は、FR4領域中のアミノ酸置換基、たとえばXaa108位にTを有する。
【0064】
したがって、好ましいV領域は、マウスKS−1/4可変領域に対応するVHおよび/またはVK領域のFRドメイン中に置換基を含む。さらに、本発明の好ましいV領域は、マウスKS−1/4可変領域に対してアミノ酸の挿入および欠失を含まない。
【0065】
好ましい変異型には、マウスKS−1/4との同一性/相同性が80%より高い可変領域を有するタンパク質が含まれる。マウスKS可変領域のアミノ酸配列またはその部分を基準配列として使用して、本発明の方法での成功がある程度見込めるだけのアミノ酸類似性を候補配列が備えているかどうかを判定することもできる。好ましくは、変異型配列は、マウスKS可変重鎖または軽鎖FRまたはCDRに少なくとも70%類似または60%同一、より好ましくは少なくとも75%類似または65%同一、最も好ましくは80%類似または70%同一である。
【0066】
候補ペプチド領域が、マウスKS配列に対する必要な類似性または同一性百分率を有するかどうかを判定するために、SmithおよびWaterman(1981年)のJ. Mol. Biol. 第147巻:195〜197頁に記載されている動的なプログラミングアルゴリズムと、HenikoffおよびHenikoff(1992年)のPNAS第89巻:10915〜10919頁の図2に記載されているBLOSUM62の置換行列とを組み合わせて使用して、まず候補アミノ酸配列とマウスKS配列を整列させる。本発明では、ギャップ挿入ペナルティーの適正値を−12とし、ギャップ伸長ペナルティーの適正値を−4とする。GCGプログラム一式(Oxford Molecular Group、イングランド、オックスフォード)など、Smith-WatermanおよびBLOSUM62の行列のアルゴリズムを用いて整列を行うコンピュータープログラムは、市販されており、当分野の技術者に広く利用されている。候補配列と基準配列との整列が済んだら類似性百分率のスコアを算出すればよい。各配列の個々のアミノ酸をその互いの類似性に従って連続的に比較する。整列した2個のアミノ酸に対応する、BLOSUM62行列での値が0または負の数である場合、その対の類似性スコアは0であり、そうでない場合、その対の類似性は1.0である。整列したアミノ酸対の類似性スコアの合計を生類似性スコア(raw similarity score)とする。次いでこの生類似性スコアを候補配列または基準配列の短い方のアミノ酸数で割ることによって正規化する。この正規化された生スコアが類似性百分率である。あるいは、同一性百分率を算出するには、整列した各配列のアミノ酸をここでも連続的に比較する。アミノ酸が同一でない場合その対の同一性スコアは0であり、そうでない場合その対の同一性スコアは1.0である。同一な整列アミノ酸の合計を生同一性(raw identity score)スコアとする。次いでこの生同一性スコアを候補配列または基準配列の短い方のアミノ酸数で割ることによって正規化する。この正規化された生スコアが同一性百分率である。類似性および同一性百分率を算出する目的では挿入および欠失を無視する。したがって最初の整列ではギャップペナルティーを使用してもこの算出ではそれを使用しない。
【0067】
本発明は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞、他の真核生物もしくは原核生物細胞などの細胞からのKS抗体の発現を検定する方法も開示する(実施例1を参照)。好ましい方法では、KS抗体V領域を未処置のヒト抗体成分として発現させ、ヒトFc領域を検出するELISAによって真核細胞系からのその抗体の発現を検定する。KS抗体のEpCAMへの結合を精密に定量化するには、Biacoreによる検定を使用すればよい。
【0068】
ヒトの疾患のKS抗体融合タンパク質での治療
本発明は、癌などのヒトの疾患を治療するのに有用なKS抗体−IL2融合タンパク質の配列も開示する。KS−1/4−IL2など、あるKS抗体−IL2融合タンパク質(たとえば実施例Xの構築物3を参照)を使用すると、この抗体に対する免疫応答が驚くほど少ない状態で癌に罹患しているヒトの患者を治療することができる。
【0069】
KS−1/4(VH2/VK1)−IL2でヒトの癌を治療する間は、KS−1/4(構築物3)−IL2で治療するよりも免疫原性が少ないことがわかっている。具体的には、臨床試験の間、抗イディオタイプ抗体、および抗体−IL2接合部またはIL−2部分に指向性のある抗体を有する患者が見られる頻度は、KS−1/4(構築物3)−IL2を有する患者よりもずっと低い。本発明の抗体可変領域は、他のサイトカイン類、たとえばインターロイキン1、2、6、10、もしくは12;インターフェロンαおよびβ;TNF、およびINFγと融合させることもできる。以下の非限定的な実施例を参照することにより本発明がより十分に理解されよう。
【実施例】
【0070】
[実施例1]
KS抗体の発現およびその抗原結合活性の検定のための方法および試薬
1A.細胞培養および形質移入
次の実施例では以下の一般的技術を使用した。一過性の形質移入については、リン酸カルシウムを用いるプラスミドDNAの共沈によって、ヒト腎臓293細胞にプラスミドDNAを導入した[Sambrook等(1989年)の「Molecular Cloning: a Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor、ニューヨーク]。
【0071】
安定した形質移入クローンを得るためにプラスミドDNAを電気穿孔法によってマウス骨髄腫NS/0細胞に導入した。NS/0細胞は10%の胎児ウシ血清を補充したダルベッコの改変イーグル培地中で増殖させた。約5×106個の細胞をPBSで1度洗浄し、0.5mlのリン酸緩衝液(PBS)中に再懸濁させた。次いで氷上のGene Pulser Cuvette(電極間ギャップ0.4cm、BioRad)中で10μgの直線化したプラスミドDNAを細胞と共に10分間インキュベートした。設定を0.25Vかつ500μFとしたGene Pulser(BioRad)を使用して電子穿孔法を行った。細胞を氷上で10分間回復させ、その後増殖培地中に再懸濁させ、次いで2枚の96ウェルプレートに塗末した。形質移入後2日目に導入する100nMのメトトレキサート(MTX)の存在下で増殖させて、安定に形質移入されたクローンを選択した。細胞に3日毎にもう2〜3回養分補給を行い、MTX耐性クローンを2〜3週間中に出現させた。クローンの上清を抗ヒトFcによるELISAによって検定して高産生株を特定した[Gillies等(1989年)のJ. Immunol. Methods 第125巻:191頁]。高産生クローンを単離し100nMのMTXを含有する増殖培地中で増殖させた。
【0072】
1B.ELISA
3種の異なるELISAを利用してMTX耐性クローンおよび他の試験サンプルの上清中タンパク質産物濃度を決定した。抗huFc ELISAは、ヒトFc含有タンパク質、たとえばキメラ抗体の量を測定するのに使用した。抗ヒトκELISAは(キメラもしくはヒト免疫グロブリンの)κ軽鎖の量を測定するのに使用した。抗muFc ELISAは試験サンプル中のmuFc含有タンパク質量を測定するのに使用した(以下の実施例1Cを参照)。以下に抗huFcELISAを詳述する。
【0073】
A.プレートをコートする
PBS中5μg/mlのAffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immuno Research)を96ウェルプレート(Nunc-Immuno plate Maxisorp)のウェル当り100μl使用してELISAプレートをコートした。コートしたプレートを覆い4℃で終夜インキュベートした。次いで、プレートをPBS中0.05%のTween(Tween20)で4回洗浄し、PBS中、1%BSA/1%ヤギ血清を200μl/ウェル使用してブロックした。ブロッキング緩衝液と共に37℃で2時間インキュベートした後、プレートをPBS中0.05%のTweenで4回洗浄し、ペーパータオル上で軽く叩いて乾燥させた。
【0074】
B.試験サンプルおよび二次抗体とのインキュベート
PBSに1%BSA/1%ヤギ血清/0.05%Tweenを含んだサンプル緩衝液で試験サンプルを適当な濃度に希釈した。既知の濃度の(ヒトFcとの)キメラ抗体を用いて検量線を作成した。検量線を作成するには、サンプル緩衝液で連続希釈を行って、125ng/ml〜3.9ng/mlの範囲の検量線を得る。プレートに100μl/ウェルの希釈したサンプルおよび基準物質を加え、このプレートを37℃で2時間インキュベートした。
【0075】
インキュベートした後、プレートをPBS中0.05%のTweenで8回洗浄した。次いで、各ウェルに100μlの二次抗体を加え、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research)をサンプル緩衝液で約1:120,000に希釈した。HRP結合抗ヒトIgGの各ロットについて、二次抗体の厳密な希釈度を決定する必要があった。37℃で2時間インキュベートした後、プレートをPBS中0.05%Tweenで8回洗浄した。
【0076】
C.発色
100μl/ウェルの基質溶液をプレートに加えた。この基質溶液は、新たに加えたH22 0.03%を含んだpH5の0.025Mクエン酸/0.05M Na2HPO4緩衝液15mlにo−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)30mg(1錠)を溶解させることによって調製した。暗所において室温で30分間発色させた。コートしたプレートや二次抗体などのロット間の変動性に応じて発色時間を変更した。検量線で発色を観察して反応を停止させる時間を決定した。反応は100μl/ウェルの4N H2SO4を加えることによって停止した。490nmおよび650nmの両方に設定し、490nmのバックグラウンドODから650nmのバックグラウンドODを減じるようにプログラムされたプレートリーダーでプレートを読み取った。
【0077】
抗ヒトκELISAは、使用した二次抗体がホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトκ(Southern Biotechnology Assoc. Inc.、アラバマ州バーミングハム)を、1:4000希釈で使用したものであったことを除き、上述したものと同じ手順に従った。
【0078】
ELISAプレートを、PBS中5μg/mlのAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson Immuno Research)を100μl/ウェル使用してコートし、二次抗体がホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGであるFcγ(Jackson Immuno Research)を1:5000希釈で使用したものであったことを除き、抗muFc ELISAの手順も同様である。
【0079】
1C.KS抗原(KSA、EpCAM)のクローニングおよびヒトEpCAM−マウスFcとしての可溶性形態の発現
Dynabeads mRNA Direct Kit(Dynal, Inc.、ニューヨーク州レークサクセス)を製造者の指示に従って使用して、LnCAP細胞からメッセンジャーRNA(MRNA)を調製した。最初の鎖のcDNAをオリゴ(dT)および逆転写酵素で合成してから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、(KS抗原またはKSAとしても知られている)上皮細胞接着分子をコードする全長cDNAをクローン化した。PCRプライマーの配列は、PerezおよびWalker(1989年)のJ. Immunol. 第142巻:3662〜3667頁に記載の公表されている配列に基づいている。センスプライマ−の配列は、 TCTAGAGCAGCATGGCGCCCCCGCA(配列番号27)であり、ナンセンスプライマ−の配列は、CTCGAGTTATGCATTGAGTTCCCT(配列番号28)であり、翻訳開始コドンおよび翻訳終止コドンであるアンチコドンを太字で表示し、制限部位XbaI(TCTAGA)およびXhoI(CTCGAG)には下線を引いてある。PCR産物をクローン化し、いくつかの独立したクローンの配列決定を行うことによってKSA配列が正確であることを確認した。LnCAPから得たKSAのcDNA配列は、UCLA−P3細胞から得られた公表されているKSA配列(PerezおよびWalker、1989年)と本質的に同一であった。しかし、115番目のアミノ酸残基の箇所がLnCAPから得たヌクレオチド配列ではACGでなくATG(Thrの代わりにMet)であり、277番目のアミノ酸残基の箇所がLnCAPから得たヌクレオチド配列ではATGでなくATA(Metの代わりにIle)であった。
【0080】
KS−1/4抗体が組換えKSAに結合したことを免疫染色によって実証した。細胞、たとえばCT26、B16などに適切な哺乳動物発現ベクター(米国特許第5,541,087号に記載のpdCs)に入れた全長KSAを形質移入することによって、KSAを表面に発現させてから、KS−1/4抗体の免疫染色を行った。KSAの可溶性抗体としての発現についてはKSAの膜貫通ドメインをコードするDNAの部分が欠失していた。発現、検出および精製を行いやすくするために可溶性KSAをKSA−muFcとして発現させたがその構築を以下で記載する。可溶性KSAをコードする780bpのXbaI−EcoRI制限断片を、次のリンカー−アダプターを介してmuFcをコードするAflII−XhoI断片(米国特許第5,726,044号)に連結した。
【0081】
【表5】

【0082】
可溶性KSA−muFcをコードするXbaI−XhoI断片をpdCsベクターに連結した。得られた発現ベクターpdCs−KSA−muFcを使用して細胞に形質移入を施し、抗muFc ELISAによってKSA−muFcを発現する安定なクローンを特定した。
【0083】
1D.抗原結合の測定
まず、供給業者のプロトコルに従って、ProteinAクロマトグラフィー(Repligen、マサチューセッツ州ケンブリッジ)によって条件培地中のKSA−muFcを精製した。精製したKSA−muFcをPBS中5μg/mlで100μl/ウェル使用して、96ウェルプレート(Nunc−Immuno plate、Maxisorp)をコートした。このアッセイは実施例1Bに記載のELISAの手順と同様とした。簡潔に述べると、コートしたプレートを覆い4℃で終夜インキュベートした。次いでプレートを洗浄しブロックした。試験サンプルをサンプル緩衝液で適当な濃度に希釈し100μl/ウェルをプレートに加えプレートを37℃で1時間インキュベートした。インキュベートした後プレートをPBS中0.05%Tweenで8回洗浄した。次いで、各ウェルに二次抗体であるホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research)100μlを加え、サンプル緩衝液で約1:120,000に希釈した。次いで実施例1Bに記載したとおりにプレートを発色させ、読み取った。
【0084】
1E.Biacoreアッセイを使用する、EpCAMから得たKS−1/4抗体のオン速度およびオフ速度の測定
KS−1/4およびKS−IL2分子の抗原EpCAMに対する親和性は、Biacore装置(Biacore International AB、Uppsala、スウェーデン)を使用する、抗体−抗原相互作用の表面プラスモン共鳴分析によって測定した。製造業者が提供するアミン結合プロトコルを利用してEpCAM−マウスFcをCM5センサーチップに結合させた。次いで、このチップを25nmと200nMの間の様々な濃度のKS−1/4およびKS−IL2に通し、それによってチップへの結合を観察した。ソフトウェアに組み込まれたカーブフィッティングルーチンを利用して、オン速度、オフ速度、結合定数および解離定数を算出した。
【0085】
1F.EpCAMを発現する細胞系を使用する、KS−1/4抗体の結合親和性の測定
標準の技術を利用して、精製したKS−1/4抗体を125Iでヨウ素化し、濃度を徐々に増加させてある標識タンパク質を、EpCAM陽性細胞系PC−3と共にインキュベートした。飽和結合曲線を作成し、スキャッチャード分析(Scatchard analysis)によって解離定数を決定した。
【0086】
[実施例2]
マウスKS−1/4のVHおよびVKをコードするcDNAのクローンニングおよびKS−1/4ハイブリドーマ由来抗体を発現させるベクターの構築
(R. Reisfeld、Scripps Research Instituteから提供を受けた)マウスKS−1/4を発現するハイブリドーマから調製したメッセンジャーRNAにオリゴ(dT)で逆転写を起こし、次いで、PCR用の鋳型として使用して、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VK)をコードする配列を増幅した。PCRプライマーは公表されている配列(Beavers等、前記)に基づいて設計した。VH用のPCRプライマーは以下の配列を備え、
【0087】
【表6】

【0088】
そのCTCGAGおよびAAGCTT配列が、それぞれVHを発現ベクター(以下参照)に連結するために使用されるXhoIおよびHindIII制限部位を表し、逆プライマー中のTACが、PCR産物のセンス鎖中にGTA、すなわちスプライス供与共通配列を導入することになるものであった。
【0089】
K用のPCRプライマーは、以下の配列を備え、
【0090】
【表7】

【0091】
そのTCTAGAおよびAGATCT配列が、それぞれ、VKを発現ベクター(以下参照)に連結するために使用されるXbaIおよびBglII制限部位を表し、ATGが軽鎖の翻訳開始コドンであり、逆プライマーのTACがPCR産物のセンス鎖中にGTAすなわちスプライス供与共通配列を導入することになるものであった。
【0092】
マウスKS−1/4抗体のVHおよびVKをコードするPCR産物をpCRIIベクター(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)中でクローン化した。いくつかのVHおよびVKクローンの配列決定を行い各々の共通配列を決定した。発現ベクターpdHL7にそのVHおよびVK配列を段階的に導入した。連結には、VHでは特有のXhoIおよびHindIII部位、ならびにVKでは特有のXbaIおよびBglII/BamHI部位を利用した(VK挿入断片中の特有のBglIIとベクター中の特有のBamHIは、適合するオーバーハングを有する)。得られた構築物は、pdHL7ハイブリドーマchKS−1/4と称するが、これは、キメラ抗体を発現させるための転写調節成分およびヒトIg定常領域配列を既に含んでいた(Gillies等(1989年)のJ. Immunol. Methods 第125巻:191頁)。
【0093】
発現ベクターpdHL7はpdHL2[Gillies等(1991年)のHybridoma第10巻:347〜356頁]由来であり以下の改変を伴う:発現ベクターpdHL2では、軽鎖用および重鎖−サイトカイン用の転写単位が重鎖免疫グロブリン遺伝子のエンハンサーとメタロチオネインプロモーターとからなる。pdHL7では、これらの2個の転写単位がCMVエンハンサー−プロモーター[Boshart等(1985年)のCell第41巻:521〜530頁]からなっていた。CMVエンハンサー−プロモーターをコードするDNAは、市販のpcDNAI(Invitrogen Corp.、カリフォルニア州サンディエゴ)のAflIII−HindIII断片から得た。
【0094】
[実施例3]
マウスKS−1/4抗体の発現研究
この実施例では、米国特許第4,975,369号に開示されているV領域配列をコードする抗体発現プラスミドを使用して実施した発現研究を論じる。
【0095】
3A.プラスミドの構築
ハイブリドーマKS−1/4配列にコードされたキメラ抗体と、米国特許第4,975,369号に記載の諸配列にコードされたキメラ抗体とを直接に比較するために、米国特許第4,975,369号に記載のVH配列をコードするcDNAを合成した。次いで既にKS−1/4のVKを含んでいるpdHL7発現ベクターにこれを連結した。
【0096】
米国特許第4,975,369号に記載のVH配列を構築するために、VH配列の部分をコードするNdeI−HindIII断片を完全な化学合成によって得た。部分的に重なり合うオリゴヌクレオチドを化学的に合成し、連結した。次いで、この連結された二本鎖をXbaI−HindIII pBluescriptベクター(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)でサブクローニングした。
【0097】
このDNAは米国特許第4,975,369号のタンパク質配列IQQPQNMRTMをコードしている。コード配列のすぐ3'側はgtaで始まるスプライス供与部位である。上部鎖5'末端側のctagはXbaIクローン化部位に対するオーバーハングである。XbaI部位はpBluescriptベクターのポリリンカーに導入(cloning)するためだけに作製した。この部位のすぐ後はNdeI制限部位(CATATG)とした。下部鎖5'末端側のagctはHindIIIクローン化部位のオーバーハングである。このHindIII付着末端は、後にCγ1遺伝子の前にあるイントロン中のHindIII部位に連結される[Gillies等(1991年)のHybridoma第10巻:347〜356頁]。
【0098】
配列を確認した後NdeI−HindIII制限断片を単離した。次いで、この断片、ならびにVHのN末端側半分をコードするXhoI−NdeI断片を、KS−1/4のVKを含む、XhoI−HindIIIで消化したpdHL7発現ベクターに連結した。得られた構築物、pdHL7−'369chKS−1/4は、米国特許第4,975,369号に記載のVKおよびVH(US4,975,369chKS−1/4と呼ばれる)を含んでいた。
【0099】
3B.ハイブリドーマchKS−1/4とUS4,975,369chKS−1/4抗体の比較
プラスミドDNAのpdHL7−ハイブリドーマchKS−1/4およびpdHL7−'369chKS−1/4を、上述のリン酸カルシウム共沈法によって並行してヒト腎臓293細胞に導入した。形質移入後5日目に、抗huFc ELISAおよびκELISA(ELISA法についての実施例1を参照)によって条件培地を検定したが、その結果を表1に要約する。
【0100】
【表8】

【0101】
結果は、2種の異なるELLSAの精度の範囲内で、ハイブリドーマchKS−1/4が発現し、分泌されたこと、ならびに分泌された抗体が、おおよそ等モル量の重鎖および軽鎖からなっていたことを示した。一方、US4,975,369chKS−1/4抗体の条件培地では、重鎖が少ないレベルでしか検出されず、それと結合したκ軽鎖はなかった。
【0102】
一過性に形質移入した2種の細胞系の全細胞溶解産物および条件培地全体についてウェスタンブロット分析を行った。ウェスタンブロット分析の手順は、(Sambrook等(1989年)、上記)に記載のとおりとした。全細胞溶解産物を分析するためには、形質移入した細胞を溶解し、遠心分離して壊死組織片を除去し、レーン毎に、5×105個の細胞に相当するものから得られた溶解産物を載せた。条件培地を分析するためには、SDS−PAGEの前に、まず還元性条件下でのProteinA Sepharoseクロマトグラフィーによって、300μLの条件培地から得られたタンパク質産物を精製した。ウェスタンブロット転写後、そのブロットを、1:2000希釈で用いた、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgGであるFcγ(Jackson ImmunoResearch)とハイブリッド形成させた。
【0103】
ウェスタンブロット転写は、用いた条件下では、pdHL7−ハイブリドーマchKS−1/4を形質移入した条件培地および溶解細胞の両方で重鎖が検出されたことを示した。この結果は、chKS−1/4抗体の重鎖が(軽鎖と共に)細胞中で産生され、効率よく分泌されたことを示唆する。その一方で、pdHL7−'369chKS−1/4を形質移入して得られた重鎖は、細胞溶解産物中だけでしか検出されず、条件培地中にはなかった。この結果は、細胞内で匹敵するレベルの重鎖が産生されたものの、分泌されなかったことを示唆するものであった。この発見は、US4,975,369chKS−1/4抗体では、少量の分泌重鎖と結合したκ軽鎖がなかったことが示されたELISAのデータと一致していた。免疫グロブリン重鎖は通常、免疫グロブリン軽鎖なしでは正常に分泌されないことがわかっている[Hendershot等(1987年)のImmunology Today第8巻:111頁]。
【0104】
前述の例に加え、NS/0細胞にも、プラスミドpdHL7−ハイブリドーマchKS−1/4およびpdHL7−US4,975,369chKS−1/4を電子穿孔法によって並行して形質移入した。実施例1に記載のとおりに、100nMのMTX存在下で安定なクローンを選択し、96ウェルプレートに入ったMTX耐性クローンの条件培地を、抗huFc ELISAによって実施例1に記載のとおりに検定した。結果を表2に要約する。
【0105】
【表9】

【0106】
96ウェルの台でスクリーニングを行うと、pdHL7−ハイブリドーマchKS−1/4構築物を用いて得たクローンの大部分は、約100ng/mL〜500ng/mLの抗体を産生し、最良のクローンは、約10〜50μg/mLを産生した。一方、pdHL7−'369chKS−1/4構築物を用いて得たクローンの大部分は約0ng/mL〜10ng/mLの抗体を産生し、最高の産生量は約300〜400ng/mLであった。US4,975,369chKS−1/4抗体の組成および結合特性を調べるためには、300〜400ng/mLを産生したクローンを増殖させる必要があった。これらのクローンの2集団を増殖用に選択した。しかしこれらの発現レベルは非常に不安定であることがわかった。抗Fc ELISAによって検定したところ、培養物が200mLに増えるまでに、両方のクローンの発現レベルが約20ng/mLに低下していた。抗κELISAによって同じ条件培地を検定すると、293細胞中で一過性に発現させた場合と同様に、κ軽鎖が検出されなかった。
【0107】
以下の実験によって、US4,975,369chKS−1/4重鎖と結合した検出可能なκ軽鎖がなかったことが示された。簡潔に述べると、各50mLの各クローンの条件培地をProteinAクロマトグラフィーによって濃縮した。溶出物を抗Fc ELISAおよび抗κELISAによって検定した。対照として、ハイブリドーマchKS−1/4産生クローンの条件培地を同じ方法で処理し、同時に検定にかけた。ELISAの結果を表3に要約する。
【0108】
【表10】

【0109】
結果は、US4,975,369chKS−1/4重鎖と結合した検出可能なκ軽鎖が実際になかったことを示した。さらに、US4,975,369抗体は、両方のクローンに由来するものが、253ng/mLおよび313ng/mLに濃縮してもKS抗原を結合しなかったのに対し、ハイブリドーマchKS−1/4抗体は、10〜20ng/mLでKS抗原を結合したことが示された(KS抗原への結合の測定についての実施例9を参照)。
【0110】
[実施例4]
変異体KS抗体の発現および特徴付け
標的分子に対する抗体の発現または親和性をかなり低下させる突然変異は、ヒトの治療目的にそれほど有効でないことが予想される。「張り合わせ」、「ヒト化」、「免疫原性除去」など、免疫原性を低下させる手法は、多くのアミノ酸置換基を導入するものであり、抗体の抗原への結合を妨害することもある(たとえば、米国特許第5,639,641号、米国特許第5,585,089号、PCT公告番号WO98/52976、WO00/34317を参照)。当技術分野では、上皮細胞接着分子に結合するが、その抗原を認識する元のマウスモノクローナル抗体と性質が異なる抗体配列のクラスが求められている。
【0111】
KS−1/4の重鎖および軽鎖可変(「V」)領域の様々な組合せの発現性(ability to be expressed)およびEpCAM結合能を試験した。それらの結果を表4〜6に要約し以下で説明する。
【0112】
【表11】

【0113】
【表12】

【0114】
【表13】

【0115】
これらの配列は次のように関連している。実施例で記載したように、VH0およびVK0配列は、元のマウス由来KS−1/4(配列番号1および配列番号2)を発現するハイブリドーマ細胞系からPCR増幅によって得た。VH−'369は、米国特許第4,975,369号に開示されているVH配列である。配列VH1、VH2、VH2.1−2.4VK1、およびVK2は、ペプチドエピトープがMHCクラスII分子に結合するのを減少する突然変異を導入してT細胞エピトープの潜在的存在を除去または弱化する免疫原性除去技術を使用するか、あるいは非ヒトT細胞エピトープをヒト抗体中に存在する自己エピトープと一致するように変化させることによって得た。これらの構築物の設計を以下でさらに説明し、分析する。表6の構築物は、哺乳動物細胞に、対応する重鎖および軽鎖の各V領域を発現している核酸の組合せを形質移入することによって作製した。配列VH6、VH7、VK6、VK7およびVK8は、ヒトB細胞エピトープの潜在的存在を除去する目的で、以下で述べるように、ハイブリドーマKS−1/4の表面残基をヒトの対応物に変更することによって生成した。構築物1から3は、哺乳動物細胞に、表4および以下に記載の重鎖および軽鎖の各V領域VH6、VH7、VK6、VK7およびVK8を発現する核酸の組合せを形質移入することによって生成した。
【0116】
4A.ヒトT細胞エピトープがよりわずかなKS抗体の特徴付け
配列VH2.1〜VH2.5を作製して、KS−1/4重鎖CDR3領域でのあるアミノ酸の挿入および置換が許容されるかを試験した。前述の実施例に記載の方法に従って、軽鎖および重鎖の組合せであるVK0/VH1、VK1/VH7、VK1/VH1、VK1/VH2、VK1/VH1−IL2、VK1/VH2−IL2およびVK1/VH2.5−IL2の発現ベクターを構築し、これらに対応する抗体、および抗体−IL2融合タンパク質を発現させ、試験した。
【0117】
具体的には、配列VH1、VH2、VK1およびVK2は、完全化学合成によって得た。これらの各配列について、これらの領域のコード鎖および相補鎖全体を含む、一連の重複オリゴヌクレオチドを化学的に合成し、リン酸エステル化し、連結した。次いで、連結された二重鎖の分子を、断片の末端に適切なプライマーを用いたPCRによって増幅し、pCRIIベクター(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)に導入し、配列を確認した。次いで、これらのDNA断片を発現ベクターpdHL7の適切な部位に挿入して、完全な重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖をそれぞれ生成した。
【0118】
配列VH2.5は、標準の分子生物学的技術を使用して、108位がGinでなくThrになるよう1個のコドンを変更することによってVH2から得た(表4)。
【0119】
抗体をELISAによって試験し(表6)、表面プラスモン共鳴(Biacore装置およびソフトウェア)を使用して、そのEpCAMへの結合能を比較した。ELISAによる実験の結果は、主としてオフ速度を反映し、オン速度は反映しておらず、さらに、一般にそれほど正確でないと考えられるので、不十分なELISAの結果は一般にある種の構築物をこれ以上の考察から除外するために使用された。しかし、ELISA試験によって良好な結合を示した抗体は、さらに特徴付けを行う必要があった。
【0120】
表面プラスモン共鳴分析の結果は以下のとおりであった。
【0121】
【表14】

【0122】
VK1/VH1−IL2のオフ速度は、VK1/V2−IL2またはVK8/VH7−IL2よりも格段に速いので、VK1/VH1−IL2は、あまり有用でない融合タンパク質であるとみなした。
【0123】
VK1/VH1−IL2とVK1/VH2−IL2は、CDR3中のVH100位のメチオニン/イソロイシンの違いだけであることを考えると、VK1/VH1−IL2のオフ速度がVK1/VH2−IL2よりも向上していたことは、この位置がEpCAMと疎水性に接触すること、および若干長い方のメチオニン側鎖では接触の有効性が低いことを示している。タンパク質−タンパク質の相互作用の分野では、一般に、疎水性の相互作用はオフ速度の決定において重要な役割を担っているものの、オン速度決定におけるその役割の重大性はそれよりずっと低いと考えられている。
【0124】
4B.1個のアミノ酸が挿入されたKS−1/4変異型の特徴付け
EpCAMに対するKS抗体の親和性について、重鎖V領域のCDR3配列が重要であるかを、この領域にアミノ酸の挿入または置換を含む一連の変異型を用いて決定した。配列VH2.1、VH2.2、VH2.3およびVH2.4は、標準の組換えDNA技術を使用して、VH2およびVK1をコードする発現ベクターを操作することによって生成した。前述の実施例で記載したように、得られる発現ベクターをNS/0細胞に形質移入し、分泌された抗体タンパク質を精製した。
【0125】
VH1変異型は、VH2変異型よりも最適でないことが判明し、CDR3中のイソロイシンをメチオニンで置換できなかったことが示された。次の目的は、CDR3中のアミノ酸の挿入によって結合特性がVH1よりも良好なKS−1/4重鎖V領域が得られるかを試験することであった。表6のデータは、VK1/VH2.1、VK1/VH2.2、VK1/VH2.3およびVK1/VH2.4の結合を、VK1/VH1と比較するものである。KS−1/4VHのCDR3中にアミノ酸が挿入された構築物はどれも、VH1よりも抗原結合が向上しておらず、むしろ挿入変異型の抗原結合活性は、若干低下しまたは大いに低下していたことが判明した。
【0126】
これらの結果は、CDR3中のアミノ酸の挿入が、一般にKS−1/4重鎖V領域の抗原結合活性にとって有害であることを示唆している。このデータを分析すると普遍的な結論がいくつか浮かび上がる。詳細には、アミノ酸Asn−Asn−Leu−Arg−Asn−Glu−Asp−Met−Ala−Thr−Tyr−Phe−Cys−Val−Arg−Phe−Ile−Ser−Lys−Gly−Asp−Tyr−Trp−Gly−Glnからなる84〜108位のKS−1/4VHアミノ酸セグメントが、KS−1/4抗原結合にとって重要である。このセグメントは、一般に1個および多数のアミノ酸の置換には耐性であるが、発現および組立に有害な影響を及ぼし得るアミノ酸挿入には耐性でないフレームワークセグメントAsn−Asn−Leu−Arg−Asn−Glu−Asp−Met−Ala−Thr−Tyr−Phe−Cys−Val−Argを含む。さらに、このデータは、効率よく発現され、EpCAMに結合する抗体であるためには、86、91、93、94、および95位のアミノ酸が疎水性アミノ酸であることが好ましいことを示唆している。
【0127】
Phe−Ile−Ser−Lys−Gly−Asp−TyrからなるVH CDR3セグメントでのアミノ酸の挿入は、一般にKS−1/4抗体のEpCAM抗原結合機能に有害であるが、ある種の挿入は、部分的な活性の喪失しか伴わずに許容される。同様に、これらの位置での置換も、一般にEpCAM抗原の結合に有害であるが、ある種の挿入が部分的な活性の喪失しか伴わずに許容される。
【0128】
4C.マウス表面残基がそのヒト対応物に変換してあるKS−1/4抗体の活性誘導体の構築
マウス由来V領域の免疫原性を最小にするために、KS−1/4抗体内のアミノ酸をヒト抗体中に普通に見られるアミノ酸で置換することによって、抗体を調製した。また好ましいKS誘導体ではヒトEpCAMに対する特異的な結合親和性が保たれている。
【0129】
構築物1.KS−1/4軽鎖はヒト共通サブグループIIIに最もよく似ており、重鎖はサブグループIに最もよく似ていることがわかった。このような類似性に基づき、ヒト共通サブグループアミノ酸と、KS−1/4由来CDRと、非共通アミノ酸とからなる概念上の配列を作製した。Silicon GraphicsのWorkstationおよびBioSym分子模型製作ソフトウェアを使用してこの構築物および以下の構築物について3次元モデルを作成した。
【0130】
その3次元モデルを観察すると、あるヒト由来アミノ酸がCDRに接近しており、CDRの高次構造に影響を及ぼすようであることが明らかになった。この分析に基づき、軽鎖のヒトSer22、Arg44およびPhe66を元に戻して、それぞれThr、LysおよびTyrにした。重鎖ではこのような変更は必要ないと考えられた。構築物1の最終的な設計では、軽鎖がマウス軽鎖では見られない18個のヒトアミノ酸を含み、重鎖がマウス重鎖では見られない22個のヒトアミノ酸を含んでいた。
【0131】
構築物1を発現するDNAは、合成オリゴヌクレオチドを使用して作製した。構築物1のタンパク質が効率よく発現されたが、EpCAM結合アッセイで活性が10分の1より低いことがわかった。
【0132】
構築物2.次いで、次の変更しか導入しないより穏やかな方法を採用した。
【0133】
【表15】

【0134】
構築物2を発現するDNAは、合成オリゴヌクレオチドおよび標準の組換えDNA技術を使用して作製した。構築物2のタンパク質は効率よく発現されなかった。さらに、構築物2の軽鎖とマウスKS−1/4重鎖の組合せは効率よく発現されないが、構築物2の重鎖とマウスKS−1/4軽鎖の組合せは効率よく発現されることがわかった。したがって、発現の欠陥は構築物2の軽鎖にあると思われた。
【0135】
構築物3.構築物2軽鎖の見かけ上の発現の欠陥に基づいて、構築物1の軽鎖のN末端部分とマウス軽鎖のC末端部分とを融合させることによって、新たな軽鎖を構築した。35位および36位のアミノ酸をコードするKpnI部位を使用した。この軽鎖と構築物2の重鎖を組み合わせると、効率よく発現され、結合の有意な損失は認められなかった。
【0136】
構築物3は、構築物1または2と比べると、タンパク質の発現および抗原に対する親和性に関してより優れた特性を備えた抗体をもたらしたので、構築物3のDNA配列をpdHL7s−IL2に導入して、配列番号40として開示しているpdHL7s−VK8/VH7−IL2を得た。発現の目的で、実施例1Aに記載のとおりに、このプラスミドDNAを電気穿孔によってマウス骨髄腫細胞NS/0に導入して、安定に形質移入された細胞系を生成した。次いで、実施例1Bに記載のとおりに、ヒトFcでコートするELISAにおいて、安定なクローンから取った培地の抗体の発現を検定した。この抗体融合タンパク質の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号41および配列番号42で示す。
【0137】
さらに、実施例1Fに記載の方法を使用して、PC−3腫瘍細胞の表面に発現されたEpCAMに対する、ヨウ素化されたVK8/VH7およびVK8/VH7−IL2の結合と、ヨウ素化されたVK0/VH0−IL2の結合とを比較した。実験上の誤差の範囲内で、VK8/VH7とVK0/VH0、およびVK8/VH7−IL2とVK0/VH0−IL2について、本質的に同一な結合親和性が見られた。
【0138】
4D.活性なKS−1/4抗体の構築に有用な構造−機能の関連性
まとめると、KS−1/4抗体の抗原結合活性、および開示されたV領域配列との融合タンパク質の抗原結合活性は、EpCAMに対するKS−1/4抗体の配列の設計に、ならびにKS−1/4抗体の適切な発現および分泌のために指標を提供している。特に、KS−1/4重鎖および軽鎖V領域は、多数のアミノ酸置換を許容でき、活性を保持し得るが、ただしこれらのアミノ酸置換はCDR以外である。KS−1/4重鎖および軽鎖V領域は、特にCDR内、またはCDR間のフレームワーク領域中のアミノ酸挿入を一般に許容しないようである。
【0139】
たとえば、ハイブリドーマKS−1/4配列を出発「野生型」配列とする場合、データは、重鎖V領域が、活性をほとんどまたはまったく喪失せずに、9、11、16、17、38、40、69、70、71、72、76、79、80、83、88、91および111位でのアミノ酸置換を許容できることを示す。同様に、軽鎖は、活性をほとんどまたはまったく喪失せずに、1、3、10、11、12、13、17、18、19、21、41、42、59、71、73、75、77および103位でのアミノ酸置換を許容できる。これらの変更はKS−1/4重鎖および軽鎖V領域のCDR以外である。明らかに許容可能な17個の重鎖アミノ酸置換基はCDR以外のアミノ酸位置の約21%に相当し、CDR以外のアミノ酸位置の約68%に対してアミノ酸置換を試みた。同様に、明らかに許容される18個の軽鎖アミノ酸置換基は、CDR以外のアミノ酸位置の約23%に相当し、CDR以外のアミノ酸位置の約72%に対してアミノ酸置換を試みた。有用性のかなり劣るタンパク質がもたらされたCDR以外でのアミノ酸置換例は、発現にマイナスの影響を及ぼすと思われた軽鎖でのAla79Proの置換、および抗原結合にマイナスの影響を及ぼした重鎖でのQ108Tの置換の2例だけである。したがって、KS−1/4抗体のCDR以外の重鎖または軽鎖配列にアミノ酸置換基を導入することができ、置換によって活性なタンパク質が得られる確立は高い。
【0140】
CDRでのアミノ酸の置換を伴う突然変異はしばしば抗原結合にマイナスの影響を及ぼす。たとえば重鎖でのI100Mの置換は結合を約8分の1に低下させる。アミノ酸の挿入を伴う突然変異は一般にKS−1/4配列の有用性にマイナスの影響を及ぼす。たとえばVH−'369重鎖V領域は本明細所で記載する軽鎖を有する適切な抗体に組み立てることができない。VH2.1〜2.4の変異型は重鎖V領域CDR3中にアミノ酸が挿入されており、それぞれの変異型が抗原結合に対してマイナスの影響力を有する。
【0141】
[実施例5]
ヒトにおけるKS抗体(構築物3)−IL2融合タンパク質の免疫原性
ヒトでの臨床試験では、患者22名を対象に1日4時間のKS抗体(構築物3)−IL2静脈内注入連続3日間行うことを含む治療処置を1回または複数回受けた。治療処置ごとに1カ月の間隔を設けた(Weber等(2001年)のProc. Am. Soc. Clin. Oncology第20巻:259頁a)。各々の治療処置の前後に各患者から血清サンプルを採取し、全KS抗体(構築物3)−IL2分子または(Fv領域なしの)Fc−IL2成分に対する抗体の反応性について試験した。免疫化前(pre−immune)血清ではいずれにも反応性が認められなかった。結果は、Fv領域単独、またはFv領域およびFc−IL2成分の両方に対して何らかの有意な免疫応答を経験した患者が4名しかいなかったことを示した。さらにこのような応答は、その後huKS−IL2を作用させても増大するようには思われなかった。
【0142】
インターロイキン2部分はアジュバント効果を有しているので、抗体−IL2融合タンパク質の使用によって、V領域の免疫原性試験が特に厳密なものになると考えられる。したがって、KS抗体(構築物3)−IL2融合タンパク質に対する抗体応答をはっきりと示したレシピアントは少数しかおらず、結果は、KS抗体(構築物3)をヒトに投与できることを示唆している。KS抗体(構築物3)が、対応するヒトアミノ酸残基で数個のアミノ酸残基が置換されているものの、ほとんど完全にマウス由来である可変領域を含んでいることを考慮すると、これらの結果は、特に有望である。
【0143】
同等な形態
本発明は、その精神または本質的な特徴から外れることなく、他の特定の形態で具体化してもよい。したがって、上述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するものでなく、すべての点で例示的なものであるとみなされる。すなわち、本発明の範囲は、これまでの記述でなく、添付の特許請求の範囲によって示され、請求項の同等性の意味および範囲から逸脱することなく生じるすべての変更がそこに含まれるものとする。
【0144】
参照による組み込み
本明細書で開示した各々の特許文献および特定の刊行物の開示を参照により全体として本出願に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)抗体の軽鎖のCDR1配列を規定する、配列番号1のアミノ酸残基24〜31、(ii)抗体の軽鎖のCDR2配列を規定する、配列番号1のアミノ酸残基49〜55、および(iii)抗体の軽鎖のCDR3配列を規定する配列番号1のアミノ酸残基88〜96、ならびに、(iv)免疫グロブリン軽鎖フレーム領域を規定し、配列番号9のアミノ酸残基1〜23からなるアミノ酸配列をさらに含む軽鎖と、
(b)(i)抗体の重鎖のCDR1配列を規定する、配列番号2のアミノ酸残基26〜35、(ii)抗体の重鎖のCDR2配列を規定する、配列番号2のアミノ酸残基50〜62、および(iii)抗体の重鎖のCDR3配列を規定する、配列番号2のアミノ酸残基101〜105、ならびに、(iv)(i)配列番号18のアミノ酸残基1〜25および(ii)配列番号18のアミノ酸残基67〜98からなる群から選択される、免疫グロブリン重鎖フレーム領域を規定するアミノ酸配列をさらに含む重鎖と、
を含む組換え抗EpCAM抗体。
【請求項2】
前記軽鎖が配列番号9のアミノ酸残基1〜106を含む、請求項1に記載の組換え抗EpCAM抗体。
【請求項3】
前記重鎖が配列番号18のアミノ酸残基1〜116を含む、請求項1に記載の組換え抗EpCAM抗体。
【請求項4】
配列番号9のアミノ酸残基1〜106により規定されるアミノ酸配列を含む抗体の軽鎖と、配列番号18のアミノ酸残基1〜116により規定されるアミノ酸配列を含む抗体の重鎖とを含む、組換え抗EpCAM抗体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の抗体をコードする発現ベクター。
【請求項6】
前記抗体に融合されるサイトカインをさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の組換え抗EpCAM抗体。
【請求項7】
前記サイトカインがIL2である、請求項6に記載の組換え抗EpCAM抗体−サイトカイン融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号41の重鎖と配列番号42の軽鎖とを有する、請求項7に記載の組換え抗EpCAM抗体−サイトカイン融合タンパク質。
【請求項9】
疾患の患部組織のEpCAMレベルが該疾患に罹患していない組織よりも高いレベルを有するEpCAM過剰発現に関連する疾患を処置するための薬剤を製造するための請求項1から4のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項10】
疾患の患部組織のEpCAMレベルが該疾患に罹患していない組織よりも高いレベルを有するEpCAM過剰発現に関連する疾患を処置するための薬剤を製造するための、請求項6から8のいずれかに記載の抗体−サイトカイン融合タンパク質の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公開番号】特開2009−131284(P2009−131284A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64775(P2009−64775)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【分割の表示】特願2002−587625(P2002−587625)の分割
【原出願日】平成14年5月3日(2002.5.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】