説明

腸内状態測定装置

【課題】非接触で便のpH値を推測できる腸内状態測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便器に付設される腸内状態測定装置であって、便を画像として取り込む画像認識部と、前記画像認識部の解析を行う画像解析部と、前記便のpHと前記便の色との関係が記憶される記憶部とを備え、前記画像解析部の結果を前記記憶部に適用し前記便のpHを演算する演算部を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内の健康状態を判断するための有力な指標の一つである排泄物中のpH値を、非接触で推定することのできる健康状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の腸内の健康状態を知るための指標の一つとして便のpH値を計測することが行われている。具体的には、排泄された便を採取し、水等で希釈あるいはそのままの状態でpH電極を接触させて計測を行い、この便のpH値から腸内のpH値を推測している。
【0003】
便とは関係しないが、非接触でpH値を測定する技術としては、たとえば特許文献1および2がある。特許文献1は、試料表面へpH指示薬を含む粒子を吐出し、この粒子の変色状態に基いて試料表面のpHを測定する方法に関するものである。
【0004】
また、特許文献2は、測定対象物に色変化型のpH指示色素を均一に混合して撮影し、得られたカラー画像を信号化し、該測定対象物についてあらかじめ作成した検量線と対比することによりpH値を推定してディスプレーに表示する方法である。
【0005】
非接触で便の状態を計測し、健康状態の良し悪しを判断する技術として特許文献3および4がある。特許文献3は非接触で便の状態を判定するために、便の落下中の状態を画像として取り込み、画像解析結果から便の状態を判定するものである。
【0006】
また、特許文献4は、使用者が排泄後の便を見て体調の良し悪しを判断するために便器内を覗き込まなくても便を確認できるように、便器内の便を撮影し撮影した画像を表示する手段を着座姿勢で視認可能な位置に備えるものである。
【0007】
【特許文献1】特開平1−96535号公報
【特許文献2】特開2001−343328号公報
【特許文献3】特許3282345号公報。
【特許文献4】特開2006−61296号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腸内状態を表す指標として便pHがある。しかしながら排便時のサンプリングは検便を行わなければならず採取が面倒であり、またpH電極を計測のたびに洗浄しなくてはならない。さらに、採取してから計測までの間、便を安定して保存しておく必要があり、そうでないと、便に含まれている腸内細菌の代謝によりpH値が排便直後の便のpH値からずれて正確に計測できなくなる等の不具合もある。また非接触でpH値を測定する技術は特許文献1および2に記載されたようなものであり、いずれも試料にpH指示薬を付着あるいは混入する操作を必要とするため便のpH値測定に採用することは困難であった。
【0009】
一方で便を撮影し、色や形の状態を把握する装置は、特許文献3および4に記載されたようなものであり、色や形の1次情報のみの入手が主な目的であった。そこで本発明は、非接触で便のpH値を推測できる腸内状態測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る腸内状態測定装置は、便器に付設される腸内状態測定装置であって、便を画像として取り込む画像認識部と、前記画像認識部の解析を行う画像解析部と、前記便のpHと前記便の色との関係が記憶される記憶部とを備え、前記画像解析部の結果を前記記憶部に適用し前記便のpHを演算する演算部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る腸内状態測定装置は、前記便の色が封水中の便の色であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の健康状態測定装置によれば、非接触で便のpH値を測定できるので、通常の排便動作で簡便に便のpH値、すなわち腸内のpH値を精度良く測定することができる。そのため、従来困難であった毎日の生活の中での腸内の定常的チェックを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を説明するに先立って、本発明の作用効果について説明する。
【0014】
本発明に係る腸内状態測定装置は、便器に付設される腸内状態測定装置であって、便を画像として取り込む画像認識部と、前記画像認識部の解析を行う画像解析部と、前記便のpHと前記便の色との関係が記憶される記憶部とを備え、前記画像解析部の結果を前記記憶部に適用し前記便のpHを演算する演算部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明において、便を画像として取り込み、その画像から便のpH値を推定するので、日常的に行われる排便行為時に、何の負荷もなく簡便にpH値を知ることができる。従来困難であった毎日の生活の中での腸内の定常的チェックを可能とすることができる。
【0016】
また本発明に係る腸内状態測定装置は、前記便の色が封水中の便の色であることを特徴とするので、便の撮影の際に封水の影響を受けることなく精度良くpH値を推測することができる。
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするために、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符合を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
本発明の腸内状態測定装置は、例えば洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵したり、洋式便器の便座に内蔵したり、あるいは、既設の洋式便器に後付けすることができる。
【0019】
図1は、本発明の腸内状態測定装置Mを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。便器1に付設された腸内状態測定装置Mを内蔵した衛生洗浄便座装置2が設置されている。衛生洗浄便座装置2の裏面には便座と一体になっていて、便器1に排泄された便の色を画像として取り込む画像認識部であるCCDカメラ3が備えられている。また画像認識部により得られた便の色の画像信号を解析する画像解析部、画像信号を記憶する記憶部、演算部、画像認識部を制御する制御部は一体化して衛生洗浄便座装置2の後部内に組み込まれ、さらに、演算結果を報知する報知部8およびユーザが撮影開始を指示する撮影開始ボタン9および演算結果を表示させる表示開始ボタン10も衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている。
【0020】
すなわち、腸内状態測定装置Mの構成は、画像認識部、画像解析部、記憶部、演算部、制御部、報知部11からなる。なお、画像認識部と制御部とのデータ交換は結線により、また制御部と報知部8とのデータ交換は赤外線により行っている。
【0021】
図2は本発明の腸内状態測定装置Mの一例を示す構成の概略図である。画像認識部は制御部により動きを制御され、便器1に排泄された落下中の便を撮影し便の色を画像信号として取り込む。画像解析部は前記画像認識部で得られた画像信号(RGB)から色の特性を輝度解析によりパラメーター化する。記憶部には便の色そのものの輝度情報と便pHとの関係を示す検量線が記憶されている。便の色そのものの輝度情報はあらかじめpHが既知である便そのものの色の画像信号を画像解析部によりパラメーター化したものである。記憶部に記憶されている輝度情報と便pHとの検量線から、演算部は前記画像解析部によりパラメーター化した輝度情報に対応するpH値を演算する。制御部は前記演算部で得られた演算結果を報知部に伝え、報知部は演算結果をユーザに報知する。
【0022】
図3は、本発明の腸内状態測定装置M(衛生洗浄便座装置に搭載)を使用し、健康状態を報知する方法の手順を示す一例である。図4は画像解析部4での輝度解析により得られた便そのものの色の輝度情報と便のpHとの対応を示す検量線のモデルである。
【0023】
以下、本図を説明する。
腸内状態測定装置Mの記憶部には、図4に示すような便そのものの色の輝度情報と便のpHとの対応を示す検量線が記憶されている。ユーザが便座に着座し排便を開始すると、排便認識部である赤外線センサ(図示していない)が便器1内の落下物を認識する。その動きに連動して待機状態にあった画像認識部であるCCDカメラ3は落下中の便の色の画像信号を入手するために連続撮影を開始する。尚、ユーザの着座により便器1内部が暗くなる場合に備え、画像認識部は便器1内部を明るくする照明部を備えていてもよい。CCDカメラ3はユーザが排便を開始して終了するまでの間、所定範囲内の画像を取り込み、落下中の便の画像信号を画像解析部4に送る。次いで画像解析部4はCCDカメラ3で得られた落下物の画像信号から色の特性を輝度解析によりパラメーター化する。次いで演算部6は、前記記憶部5に記憶されている検量線を用いて、画像解析部4によりパラメーター化された色の輝度情報(Lu1)に対応するpH値(pH1)を演算する。ユーザが排便終了後に、衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている表示開始ボタン10を押すと、制御部7は演算結果を報知部8である衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている液晶パネルに表示させユーザに報知する。
【0024】
本発明によれば、便のpHを落下中の便の色の画像により推測できるので、非接触で便のpHを知ることが出来、簡便にその日の体調を知ることができる。あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0025】
本発明の腸内状態測定装置Mを使用し、健康状態を報知する方法の手順を示す別の実施例を示す。実施例1では落下中の便の画像信号を用いたがここでは封水中に存在する便の画像信号を画像解析に用いる。装置の構成および動きはほぼ実施例1と同様であり、ここでは実施例1との相違点のみ記載する。図5は本発明の腸内状態測定装置Mを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。画像認識部であるCCDカメラ3は便座と一体になっており、便座後部の洗浄ノズルの近くに設置されている。画像認識部であるCCDカメラ3は制御部7により動きを制御され、便器1の封水13に存在する便を撮影する。また記憶部(図示していない)には実施例1で示したようなあらかじめpHが既知である便そのものの画像信号を画像解析部4によりパラメーター化した情報とpHとの関係を示す検量線のかわりに、あらかじめpHが既知である便の色を封水越しに撮影した画像信号を画像解析部4によりパラメーター化した情報とpHとの関係をあらわす検量線が記憶されている。
【0026】
以下、本発明の腸内状態測定装置M(衛生洗浄便座装置に搭載)を使用し、健康状態を報知する方法の手順を示す。図6は画像解析部4での輝度解析により得られた封水越しに撮影した便の色の画像信号から得られた輝度情報と便のpHとの対応を示す検量線のモデルである。尚、この検量線は腸内状態測定装置Mの記憶部に記憶されている。
ユーザが排泄終了後に衛生洗浄装置の操作部11上にある撮影開始ボタン9を押すと、待機状態にあった画像認識部であるCCDカメラ3は封水13に存在する便の色の画像信号を入手するために撮影を開始する。CCDカメラ3は所定範囲内の画像を取り込み、封水越しに撮影した便の画像信号を画像解析部4に送る。次いで画像解析部4は前記CCDカメラ3で得られた封水越しに撮影した便の色の画像信号(RGB)の色の特性を輝度解析によりパラメーター化する。次いで演算部6は、前記記憶部5に記憶されている検量線を用いて、画像解析部4によりパラメーター化された色の輝度情報(Lu2)に対応するpH値(pH2)を演算する。ユーザが衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている表示開始ボタン10を押すと、制御部7は演算結果を報知部8である衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている液晶パネルに表示させユーザに報知する。
【0027】
本実施例によれば、あらかじめ封水中の便の色と便pHとの関係を対応をさせているので、撮影時の封水の影響を含めてpHとの対応づけが出来ており、精度よくpHの推測ができる。また封水に存在中の便の撮影を行うので、落下中の撮影のような排便検知部や連続撮影の必要がなく手間がかからない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の腸内状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)の一例を示す(部分透視)外観図
【図2】本発明の腸内状態測定装置の構成の一例を示す図。
【図3】本発明に係る画像信号から便pHを推定するための手順を示す図。
【図4】本発明に係る画像信号から便pHを推定するための一例を示す換算グラフ。
【図5】本発明の腸内状態測定装置(衛生洗浄便座装置に搭載)の一例を示す(部分透視)外観図
【図6】本発明に係る画像信号から便pHを推定するための一例を示す換算グラフ。
【符号の説明】
【0029】
1…便器、2…衛生洗浄便座装置、3…CCDカメラ、4…画像解析部、5…記憶部、6…演算部、7…制御部、8…報知部、9…撮影開始ボタン、10…表示開始ボタン、11…操作部、M…腸内状態測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に付設される腸内状態測定装置であって、
便を画像として取り込む画像認識部と、
前記画像認識部の解析を行う画像解析部と、
前記便のpHと前記便の色との関係が記憶される記憶部と、を備え、
前記画像解析部の結果を前記記憶部に適用し前記便のpHを演算する演算部を備えることを特徴とする腸内状態測定装置。
【請求項2】
前記便の色が封水中の便の色であることを特徴とする請求項1記載の腸内状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−270951(P2009−270951A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121919(P2008−121919)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】