説明

腸溶性カプセル

【課題】カプセル表面を腸溶性皮膜で被覆することなく、カプセル基剤そのものが腸溶性フィルムで形成されてなる腸溶性カプセルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 カプセル皮膜を、(1)アルギン酸の水溶性塩と、(2)ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも一種;上記(1)成分と(2)成分に加えて、さらに(3)ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤;または、上記(1)成分および(2)成分、または(1)成分、(2)成分および(3)成分に加えて、さらに可塑剤を含有するカプセル調製液から調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸溶性カプセルに関する。より詳細には、カプセル表面を腸溶性皮膜で被覆することなく、カプセル基剤そのものが腸溶性フィルムで形成されてなる腸溶性カプセルおよびその製造方法に関する。さらに本発明は、当該腸溶性カプセルに経口医薬品や食品などの可食性の内容物が充填されてなる腸溶性カプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腸溶性カプセルの調製方法としては、ゼラチンを基剤として成形された胃易溶性カプセルの表面をホルマリンや腸溶性高分子物質などで被覆する方法、ゼラチンと水溶性多価アルコールまたはその誘導体からなる基剤にアルギン酸ナトリウムを配合し、これをシームレスカプセル化した後に、2価以上の陽イオンで硬化処理する方法(特許文献1参照)、アルギン酸ナトリウム等の架橋性ゲル化剤またはこれと助剤からなる非ゼラチン系基剤より形成したシームレスカプセルを2価以上の陽イオンで硬化する方法(特許文献2参照)、アルギン酸ナトリウムを含有するゼラチン基剤から形成したカプセルを2価以上の陽イオンで硬化する方法(特許文献3参照)、およびマイナスの電荷をもつアルギン酸とプラスの電荷をもつキトサンを結合させることにより硬化処理する方法(非特許文献1参照)など、カプセル表面を腸溶性皮膜で被覆する方法が知られている。しかし、これらの方法は、製造工数の増加による生産性の低下やホルマリン使用による作業環境の悪化という問題がある。
【0003】
また、有効成分のアルギン酸ナトリウムの懸濁液を調製し、これをカルシウム溶液に滴下することにより腸溶性ビーズを作成する方法など、カプセル表面を腸溶性皮膜で被覆することなく、カプセル基剤そのものを腸溶性フィルムで形成する方法も知られている。上記方法は、腸溶性を付与できるという利点はあるものの、生産性が低いという問題がある。
【特許文献1】特開昭58−172313号公報
【特許文献2】特開昭61−44810号公報
【特許文献3】特開平1−228909号公報
【非特許文献1】Pharmaceutical Research 誌、2000年1月号; Volume 17 Issue 1: ページ 94-99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術を鑑みて、従来の製造技術を工数を増加させることなくそのまま利用できるという利点を有し、かつ上記の従来方法による問題のない、カプセル基剤そのものを腸溶性フィルムで形成してなる腸溶性カプセルおよびその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、当該腸溶性カプセルに経口医薬品や食品などの可食性内容物が充填されてなる腸溶性カプセル製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、カプセル基剤の成分として、アルギン酸の水溶性塩に、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも一種を組み合わせて用いることにより、またこれにペクチン、ジェランガム、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を併用することにより、またさらにこれらに可塑剤を併用することにより、浸漬法によってカプセル成型が可能な、腸溶性フィルムを調製することができることを見出し、斯くして調製されたカプセルは、耐酸性を備え胃液と同等の酸性溶液中では難溶性である一方で、腸環境と同等の中性〜弱アルカリ性溶液中では易溶性であることを確認した。
【0006】
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものであり、下記の態様を含むものである。
【0007】
(I)腸溶性カプセル
(I-1)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種を含有するフィルムからなる腸溶性カプセル。
(I-2)上記アルギン酸の水溶性塩が、1重量%水溶液に調整した場合の粘度〔BL型回転粘度計(粘度500mPa・s未満はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満はローター番号3、粘度2000mPa・s以上はローター番号4)を用いて、20℃、回転数60rpm、測定時間1分〕が5〜50mPa・sであることを特徴とする、(I-1)に記載する腸溶性カプセル。
(I-3)上記フィルムが、さらにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を含有するものである、(I-1)または(I-2)に記載する腸溶性カプセル。
(I-4)上記フィルムが、さらに可塑剤を含有するものである、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する腸溶性カプセル。
(I-5)可塑剤がグリセロールまたはソルビトールである、(I-4)に記載する腸溶性カプセル。
【0008】
(I-6)上記フィルムが、アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種を含有するカプセル調製液を、カプセル形態に乾燥固化して形成されるものである、(I-1)または(I-2)に記載する腸溶性カプセル。
(I-7)上記カプセル調製液が二価金属イオンを含まないものである、(I-6)に記載する腸溶性カプセル。
(I-8)上記フィルムが、アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種、ならびにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を含有するカプセル調製液を、カプセル形態に乾燥固化して形成されるものである、(I-3)に記載する腸溶性カプセル。
(I-9)上記カプセル調製液が二価金属イオンを含まないものである、(I-8)に記載する腸溶性カプセル。
【0009】
(I-10)上記フィルムが、
(a)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチンおよび寒天からなる群から選択される少なくとも1種、または
(b)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチンおよび寒天からなる群から選択される少なくとも1種、ならびにジェランガム、カラギーナンおよびペクチンからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤
に加えて、さらに(c)可塑剤を含有するカプセル調製液を、カプセル形態に乾燥固化して形成されるものである、(I-4)に記載する腸溶性カプセル。
(I-11)上記カプセル調製液が二価金属イオンを含まないものである、(I-10)に記載する腸溶性カプセル。
(I-12)可塑剤がグリセロールまたはソルビトールである、(I-11)に記載する腸溶性カプセル。
【0010】
(II)腸溶性カプセルの製造方法
(II-1)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬して引き上げ、当該成型用ピンに付着した上記カプセル調製液を乾燥固化し、これを成型ピンから脱離回収する工程を有する、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する腸溶性カプセルの調製方法。
(II-2)上記カプセル調製液が二価金属イオンを含まないものである、(II-1)に記載する調製方法。
(II-3)上記カプセル調製液が、さらにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を含有するものである、(II-1)または(II-2)に記載する調製方法。
(II-4)上記カプセル調製液が、さらに可塑剤を含有するものである、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する調製方法。
【0011】
(II-5)可塑剤がグリセロールまたはソルビトールである、(II-4)に記載する調製方法。
(II-6)上記カプセル調製液が、BL型回転粘度計(粘度500mPa・s未満はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満はローター番号3、粘度2000mPa・s以上はローター番号4)を用いて、20℃、回転数60rpm、測定時間1分の条件下で、粘度が1000〜5000mPa・sであり、固形分含量が10〜25重量%であることを特徴とする、(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する調製方法。
【0012】
(III)腸溶性カプセル製剤
(III-1)(I-1)乃至(I-12)のいずれかに記載する腸溶性カプセルに内容物が充填されてなる腸溶性カプセル製剤。
(III-2)内容物が食品または経口医薬品である(III-1)に記載する腸溶性カプセル製剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カプセル基剤の成分として、アルギン酸の水溶性塩に、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも一種を組み合わせて用いることにより、またこれにペクチン、ジェランガム、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を併用することにより、またさらにこれらに可塑剤を併用することにより、カプセル表面を腸溶性皮膜で被覆することなく、カプセル基剤そのものが腸溶性フィルムで形成されてなる腸溶性カプセルを提供することができる。
【0014】
本発明の腸溶性カプセルは、アルギン酸の水溶性塩に上記各成分を組み合わせることによって、アルギン酸の水溶性塩から形成されるフィルムが有する乾燥時の収縮およびひび割れという問題が解消されてなり、これにより、従来の浸漬法によって簡便に均一なフィルム厚を有する硬質カプセルを調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
I.腸溶性カプセルおよびその調製方法
本発明の腸溶性カプセルは、アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種を含有するカプセル皮膜(カプセルフィルム)からなり、胃環境で溶解せず、腸環境で溶解する特性、すなわち腸溶性を有することを特徴とする。
【0016】
ここで「胃環境で溶解しない」か否かは、第15改正日本薬局方に規定する腸溶性製剤の崩壊試験法に準じて評価することができる。具体的には、試験器のガラス管に試験対象とするカプセル剤(試料)6個を入れ、これをあらかじめ試験液として第1液(37±2℃)を入れたビーカー内に浸漬し、120分間上下運度を行った後、観察する。このとき、試料6個中、崩壊ならびにカプセルの開口、剥離または破損などのため内容物の放出が認められたものが1個以下の場合は、第1液試験に適合、すなわち「胃環境で溶解しない」と判断することができる。また、試料6個中、崩壊など前記の異状が認められたものが2個の場合は、新たに試料6個をとってこの試験を繰り返し、6個とも異状が認められないときは「胃環境で溶解しない」と判断される。
【0017】
また「腸環境で溶解する」か否かも、第15改正日本薬局方に規定する腸溶性製剤の崩壊試験法に準じて評価することができる。具体的には、試験器のガラス管に試験対象とするカプセル剤(試料)6個を入れ、これをあらかじめ試験液として第2液(37±2℃)を入れたビーカー内に浸漬し、補助盤を入れて、60分間上下運度を行った後、観察する。このとき、試料の残留物がガラス管内に認められないか、又は認められても皮膜若しくは海綿状の物質であるか、または軟質の物質若しくは泥状の物質がわずかのときは、第2液試験に適合、すなわち「腸環境で溶解する」と判断することができる。
【0018】
なお、ここで第1液および第2液として、下記の水溶液が使用される:
<第1液>
塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0mLおよび水を加えて溶かし1000mLに調整したもの(pHは約1.2)。
【0019】
<第2液>
0.2mol/Lのリン酸二水素カリウム試液250mLに、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム試液118mLおよび水を加えて溶かし1000mLに調整したもの(pHは約6.8)。
【0020】
本発明においてアルギン酸の水溶性塩としては、医薬上許容されるものを広く使用することができる。アルギン酸の水溶性塩として、具体的には、アルギン酸のナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩;アルギン酸のマグネシウム塩;およびアルギン酸のアンモニウム塩を挙げることができる。好ましくはアルギン酸のアルカリ金属塩である。なお、これらのアルギン酸の水溶性塩は、一種単独で使用しても、また二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0021】
ここで使用されるアルギン酸の水溶性塩は、それを1重量%水溶液に調整した場合に20℃で5〜200mPa・sの範囲の粘度を呈するものが好ましい。好ましくは1重量%水溶液に調整した場合に、20℃で5〜80mPa・s、より好ましくは5〜50mPa・sの粘度を呈するアルギン酸の水溶性塩である。
【0022】
なお、本発明で規定する粘度は、BL型回転粘度計で、粘度500mPa・s未満の場合はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満の場合はローター番号3、粘度2000mPa・s以上の場合はローター番号4を用いて、所定温度で、回転数60rpm、測定時間1分の条件で測定した場合の粘度を意味する(以下、同じ)。
【0023】
アルギン酸の水溶性塩の1重量%水溶液が上記粘度範囲を満たす限りにおいて、アルギン酸を構成するマンヌロン酸とグルロン酸の割合は特に制限されない。好ましくはM/G比(マンヌロン酸/グルロン酸比)が0.4〜1.95の範囲、より好ましくは0.45〜1.6の範囲にあることが望ましい。本発明において使用に適した市販のアルギン酸水溶性塩としては、例えば、商品名ダックアルギン(紀文フードケミファ社製)、商品名キミカアルギン(株式会社キミカ社製)などを挙げることができる。
【0024】
前述するアルギン酸の水溶性塩と併用されるゼラチンは、食品または医薬品に使用されるゼラチン、好ましくはカプセル基剤の原料として使用されるゼラチンであれば特に制限されない。ゼラチンは通常、ウシ(皮、骨)、豚(皮、骨)および魚から調製され、いずれのゼラチンも用いることが出来る。ゼラチンの製造は、一般に、前処理にアルカリを用いる場合と酸を用いる場合とに大別されるが、本発明においては、いずれの前処理で製造されたゼラチンであっても区別なく使用することができる。カプセル製造に用いられるゼラチンの品質規格の基準として、通常、ゼリー強度が用いられる。なお、当該ゼリー強度の定義ならびに測定方法は、日本工業規格(JIS K6503)に規定されている。具体的には、6.67%ゼラチン溶液を10℃で17時間冷却して調製したゼリーの表面を、2分の1インチ(12.7mm)径のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重がゼリー強度として定められている。本願発明においては、ゼリー強度の値が100g以上、好ましくは150g以上のゼラチンを用いることができる。上限値に特に制限はないが、好ましくは330g以下を例示することができる。
【0025】
前述のアルギン酸の水溶性塩と併用される寒天も、食品または医薬品に使用される寒天であれば特に制限されない。由来も特に制限されず、天草(マクサ)、オゴノリ、オバクサ、イタニグサおよびオオオゴノリなどの紅藻類を原料として調製される。なお、寒天のゲル化力を表す方法として、日寒水式の方法で測定されるゼリー強度(g/cm2)が用いられる。当該ゼリー強度(g/cm2)は、具体的には、寒天の1.5%溶液を調製し、20℃で15時間放置、凝固せしめたゲルについて、その表面1cm当たり20秒間耐え得る最大重量(g数)で表される。通常、市販されている寒天には、ゼリー強度が、粉末寒天の場合30g/cm2〜2000g/cm2程度、糸寒天の場合300g/cm2〜500g/cm2程度、角寒天の場合200g/cm2〜400g/cm2程度である。
【0026】
カードランは、AgrobacteriumAlcaligenesなどの細菌が発酵により培地中に生産する多糖で、ほぼ純粋な直鎖のβ1,3-グルカンである。本発明においてアルギン酸の水溶性塩と併用されるカードランも、食品または医薬品に使用されるカードランであれば特に制限されない。また、その重合度は特に制限されないが、約6000の重合度を有するカードランが好適に用いられる。
【0027】
これらのゼラチン、寒天およびカードランは、アルギン酸の水溶性塩と1種単独で組み合わせて用いてもよいし、また少なくとも2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の腸溶性カプセルを形成するフィルムに含まれるアルギン酸の水溶性塩の割合としては、水分を除いたカプセルフィルムの重量を100重量%とした場合、通常20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜75重量%を挙げることができる。また、同様に水分を除いたカプセルフィルムの重量を100重量%とした場合のゼラチン、寒天またはカードランの配合割合としては、通常0.2〜80重量%、好ましくは0.2〜70重量%、より好ましくは0.2〜60重量%を挙げることができる。
【0029】
また、上記配合割合においてカプセルフィルム中に含まれるアルギン酸の水溶性塩に対するゼラチンの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、10〜80重量部の範囲から適宜調整することができる。好ましくは15〜70重量部、より好ましくは20〜60重量部である。また同様に、上記配合割合においてカプセルフィルム中に含まれるアルギン酸の水溶性塩に対する寒天の割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、1〜30重量部の範囲から適宜調整することができ、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部である。さらに同様に、上記配合割合においてカプセルフィルム中に含まれるアルギン酸の水溶性塩に対するカードランの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、1〜30重量部の範囲から適宜調整することができ、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0030】
本発明の腸溶性カプセルを構成するフィルムには、前述するアルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種に加えて、さらにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を配合することができる。ゲル化剤を併用することにより、カプセル調製液のゲル化能を強化することができ、浸漬法によるカプセル成型時に問題となる液ダレを有意に抑制することができる。
【0031】
ここでカラギーナンには、一般にカッパ−カラギーナン、イオタ−カラギーナンおよびラムダ−カラギーナンの3種が知られている。本発明では、カッパおよびイオタ−カラギーナンを好適に使用することができる。より好ましくはイオタカラギーナンである。またペクチンはエステル化度の違いでLMペクチンとHMペクチンとに分類されているが、本発明ではいずれも区別することなく使用することができる。なお、ジェランガムもアシル化の有無によってアシル化ジェランガム(ネイティブジェランガム)と脱アシル化ジェランガムに分類することができるが、本発明では脱アシル化ジェランガムを好適に使用することができる。
【0032】
キサンタンガムは、トウモロコシなどの澱粉を細菌Xanthomonas campestris により発酵させて作られる多糖類の1つである。キサンタンガムにはカリウム塩、ナトリウム塩およびカルシウム塩があるが、本発明ではいずれも区別することなく使用することができる。
【0033】
ローカストビーンガムは多年生のマメ科植物イナゴ豆の胚乳区分より製造される水溶性の天然多糖類であり、タマリンドシードガムはマメ科植物タマリンドの種子から精製したグルコースの主鎖にキシロース、ガラクトースの側鎖を持つ中性多糖である。
【0034】
これらのゲル化剤は、1種単独で用いてもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。アルギン酸の水溶性塩に対するジェランガムの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、0.1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは2〜8重量部を挙げることができる。またアルギン酸の水溶性塩に対するカラギーナンの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、より好ましくは0.2〜5重量部を挙げることができる。さらにアルギン酸の水溶性塩に対するペクチンの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜50重量部を挙げることができる。
【0035】
またアルギン酸の水溶性塩に対するキサンタンガムの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部を挙げることができる。またアルギン酸の水溶性塩に対するローカストビーンガムの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部を挙げることができる。さらにアルギン酸の水溶性塩に対するタマリンドシードガムの割合としては、アルギン酸100重量部に対する割合に換算して、1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部を挙げることができる。
【0036】
なお、上記で使用するゲル化剤の種類に応じてゲル化補助剤を使用することもできる。ゲル化剤としてカラギーナンを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、水中でカリウムイオンおよびアンモニウムイオンの1種又は2種を与えることのできる化合物、例えば塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウムを挙げることができる。またゲル化剤としてジェランガムを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、水中でナトリウムイオンおよびカリウムイオンの1種又は2種を与えることのできる化合物、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムを挙げることができる。
【0037】
なお、キサンタンガムとローカストビーンガムは、両者を併用することによりゲル化し、またタマリンドシードガムはジェランガムと併用することによりゲル化する。このため、これらのゲル化剤を併用する場合、特にゲル化補助剤は必要とされない。
【0038】
本発明の腸溶性カプセルを構成するフィルムには、前述する(a)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種、または(b)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種、ならびにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤に加えて、可塑剤を配合することができる。
【0039】
可塑剤の配合により、カプセルフィルムに柔軟性や可とう性を付与することができ、耐われ性を高めることができる。
【0040】
医薬品または食品に使用できる可塑剤としては、一般にアジピン酸ジオクチル,アジピン酸ポリエステル,エポキシ化ダイズ油,エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル,カオリン,クエン酸トリエチル,グリセロール,グリセリン脂肪酸エステル,ゴマ油,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物,ソルビトール,中鎖脂肪酸トリグリセリド,トウモロコシデンプン由来糖アルコール液,トリアセチン,濃グリセロール,ヒマシ油,フィトステロール,フタル酸ジエチル,フタル酸ジオクチル,フタル酸ジブチル,ブチルフタリルブチルグリコレート,プロピレングリコール,ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール,ポリソルベート80,平均分子量が1500,400,4000,600,6000のポリエチレングリコール(PEG1500、PEG400、PEG4000、PEG600、PEG6000),ミリスチン酸イソプロピル,綿実油・ダイズ油混合物,モノステアリン酸グリセリン,リノール酸イソプロピルなどが知られている。本発明において、可塑剤としてグリセロールおよびソルビトールが好適に使用できる。より好ましくはグリセロールである。
【0041】
なお、可塑剤を用いる場合、本発明で用いる硬質カプセル(カプセルフィルム)中の含有量として、水分を除いたカプセルフィルムの重量を100重量%とした場合、通常50重量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下の範囲である。なお、配合下限としては0.5重量%を挙げることができる。
【0042】
なお、本発明の腸溶性カプセル(カプセルフィルム)には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分に加えて、必要に応じて、金属封鎖剤、不透明化剤、着色料または香料などを配合することもできる。これらはいずれも医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されない。
【0043】
本発明の腸溶性カプセルは、硬質カプセルの調製に通常使用される浸漬法を利用して製造することができる、具体的には前述する成分を含有する水溶液(ここでは、以下「カプセル調製液」という)を浸漬液とし、これにカプセル成型用ピンを浸漬し、次いで引き上げてカプセル成型用ピンの外表面に形成されたカプセル調製液からなる皮膜を冷却してゲル化させ(カプセル形態への成型)、次いで乾燥固化する工程を経て製造することができる。
【0044】
ここでカプセル調製液に二価金属イオンが含まれていると、カプセル調製液のゲル化が促進し、高粘度になるためカプセル成形性が悪化する傾向が生じる。従って、カプセル調製液には、二価金属イオン、なかでもアルギン酸をゲル化する傾向の強い二価金属イオンを含まないことが好ましい。かかる二価金属イオンとしては、銅イオン、バリウムイオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを挙げることができる。
【0045】
カプセル調製液は、カプセル成型用ピンの浸漬時に採用される温度(浸漬液の温度)条件下(30〜80℃、好ましくは40〜60℃)での粘度が100〜20000mPa・s、好ましくは300〜10000mPa・sとなるように、上記各成分(固形分の総量)が、10〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、より好ましくは12〜24重量%の割合で含まれるように調整することが望ましい。
【0046】
カプセル調製液中に含まれる上記各成分(アルギン酸の水溶性塩、ゼラチン、寒天、カードラン、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、および可塑剤)の濃度は、前述するカプセルフィルム中の各成分の割合ならびにカプセル調製液中の上記固形分含量に従って適宜調整することができる。
【0047】
具体的には、カプセル調製液中に含まれるアルギン酸の水溶性塩の割合としては5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%、ゼラチン、寒天およびカードランの割合としては0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムといったゲル化剤の割合としては0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、ならびに可塑剤の割合としては0.05〜3重量%、好ましくは0.05〜2重量%を例示することができる。
【0048】
カプセル調製液(浸漬液)の調製において、上記各成分の溶解順序に制限はなく、上記各成分を同時に水に溶解してもよい。溶解温度は、通常60℃以上とすることが各成分の溶解性などから好ましいが、特に制限されるものではない。なお、使用される成分のうち、ジェランガム、カラギーナン、ぺクチン、ロースカストビーンガム、タマリンドシードガムおよび寒天は、一般に水に難溶性であるため、先に80〜90℃程度の熱水に溶解しておき、これを60℃程度以下に冷却した後、アルギン酸の水溶性塩を始めとする他の成分を配合して溶解させてもよい。
【0049】
次いでカプセル調製液は、減圧脱泡、超音波脱泡、あるいは静置により微細な泡を取り除き、50〜60℃に保温した状態で、浸漬法によるカプセル成型に供することが好ましい。
【0050】
本発明の腸溶性カプセルは、かくして調製されるカプセル調製液(浸漬液)にカプセル成型用ピンを浸漬した後、これを引き上げ、カプセル成型用ピンに付着した溶液をゲル化させ、その後、ゲル化した皮膜を20〜80℃程度の温度で乾燥することによって製造される。具体的には、本発明で用いる腸溶性カプセルは下記の工程を経て製造することができる。
【0051】
(1)(a)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種(また必要に応じて、可塑剤)、または(b)アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種、ならびにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤(また必要に応じて、可塑剤)を含有するカプセル調製液(浸漬液)に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程(浸漬工程)、
(2)カプセル調製液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化する工程(ゲル化工程(成型工程))、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセルフィルム(ゲル化皮膜)を乾燥する工程(乾燥固化工程)、
(4)乾燥したカプセルフィルム(皮膜)をカプセル成型用ピンから脱離する工程(脱離工程)。
【0052】
なお、上記の(2)ゲル化工程は、用いるゲル化剤の特性に応じて加熱または冷却することによって行うことができる。例えば、本発明で使用するカプセル調製液(浸漬液)は、これを低温状態、特に35℃以下にすることでゲル化することを利用して、カプセル製造機周辺の温度を通常35℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは室温下に設定して、上記ゲル化工程(2)をカプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製溶液を放冷することによって行うことができる(冷ゲル法)。
【0053】
具体的には、浸漬工程(1)において、40〜60℃、好ましくは50〜60℃の一定温度に調整したカプセル調製溶液(浸漬液)に、その液温に応じて10〜30℃、好ましくは13〜28℃、より好ましくは15〜25℃に調整したカプセル成型用ピンを浸漬し、次いでゲル化工程(2)において、カプセル調製溶液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製溶液をゲル化する。
【0054】
乾燥工程(3)は20〜80℃程度の温度で行うことができる。好ましくは20〜40℃の空気を送風することによって行なわれる。脱離工程(4)は、カプセル成型用ピン表面に形成された乾燥カプセルフィルムをカプセル成型用ピンから抜き出すことによって行われる。
【0055】
斯くして調製されるカプセルフィルムは、所定の長さに切断調整された後、ボディ部とキャップ部を一対に嵌合した状態または嵌合しない状態で、腸溶性の硬質カプセルとして提供することができる。また、予め食用油等を剥離剤として成型ピンに塗布しておくことにより、得られたカプセル(ボディ部とキャップ部)の離型性が向上して、得られた硬質カプセルの剥離回収を容易することができる。
【0056】
斯くして得られる本発明の硬質カプセルは、別途、その表面を腸溶性被膜でコーティングすることなく、フィルムそのものの特性に基づいて、腸溶性(胃環境で溶解せず、腸環境で溶解する特性)を呈することを特徴とする。また本発明の硬質カプセルは、耐割れ性が高く、乾燥時に皮膜(フィルム)に亀裂が入りにくいことを特徴とする。さらに本発明の硬質カプセルは、乾燥時の収縮が少なく、皮膜の厚さが均一であることを特徴とする。
【0057】
II.腸溶性カプセル製剤およびその調製方法
斯くして調製される硬質カプセルのボディ部とキャップ部は、前述する内容物をボディ部に充填したのち、該ボディ部にキャップ部を被覆して両者を嵌合させることによりボディ部とキャップ部を接合させることによって硬質カプセル剤として提供することができる。
【0058】
なお本発明の硬質カプセル剤には、上記で調製された硬質カプセルのボディ部とキャップ部の嵌合部に、バンドシールを付したものも含まれる。かかる硬質カプセル剤は、上記ボディ部とキャップ部を接合させた後、キャップ部の端縁部を中心として、それを跨ぐように一定幅でボディ部の表面とキャップ部の表面に、その円周方向に、バンドシール調製液を1回〜複数回、好ましくは1〜2回塗布して嵌合部を封緘することによって、調製することができる。
【0059】
硬質カプセルのボディ部とキャップ部の両者を嵌合させる際に、ボディ部の外周とキャップ部の内周とが重なっている嵌合巾はカプセルの軸線方向の距離で、3号カプセルについては約4.5〜6.5mm、4号カプセルについては約4〜6mmが一般的に好ましい。また、封緘(シール)巾は、3号カプセルで約1.5〜3mm、4号カプセルで約1.5〜2.8mmが一般的に好ましい。
【0060】
本発明の硬質カプセル剤のバンドシール形成には、腸溶性を有するフィルムを形成する溶液であれば制限はされないが、前述する腸溶性カプセルの調製に使用するカプセル調製液と同様の組成からなるバンドシール調製液を用いることができる。
【0061】
腸溶性カプセルに充填する内容物は、ヒトまたは動物の経口医薬品または食品を制限なく挙げることができる。なお、内容物の形状は特に問わない。例えば、液状物、ゲル状物、粉末状、顆粒状、錠剤状、ペレット状、またこれらの混合形状(ハイブリッド状)であってもよい。
【0062】
腸溶性カプセルに充填する内容物としては、経口医薬品の場合は、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬。血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張剤、末梢血管拡張薬、抗高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病治療薬、骨粗鬆症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮痙剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤などから選ばれる1種または2種以上の薬物成分を挙げることができる。なお、これらの薬効成分は、特に制限されず公知のものを広く挙げることができるが、具体的には、WO2006/070578号パンプレットの段落[0055]〜 [0060]に記載されている各成分を例示として挙げることができる。
【0063】
また、食品の場合は、例えばドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α−リポ酸、ローヤルゼリー、イソフラボン、アガリクス、アセロラ、アロエ、アロエベラ、ウコン、エルカルニチン、オリゴ糖、カカオ、カテキン、カプサイシン、カモミール、寒天、トコフェロール、リノレン酸、キシリトール、キトサン、GABA、クエン酸、クロレラ、グルコサミン、高麗人参、コエンザイムQ10、黒糖、コラーゲン、コンドロイチン、サルノコシカケ、スクワレン、ステビア、セラミド、タウリン、サポニン、レシチン、デキストリン、どくだみ、ナイアシン、納豆菌、にがり、乳酸菌、ノコギリヤシ、ハチミツ、はとむぎ、梅肉エキス、パントテン酸、ヒアルロン酸、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ケルセチン、プロテイン、プロポリス、モロヘイヤ、葉酸、リコピン、リノール酸、ルチン、霊芝などの機能性成分などを挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0064】
かかる内容物の腸溶性カプセル内への充填は、それ自体公知のカプセル充填機、例えば全自動カプセル充填機(型式名:LIQFILsuper80/150、クオリカプス社製)、カプセル充填・シール機(型式名:LIQFILsuperFS、クオリカプス社製)等を用いて実施することができる。また腸溶性カプセルの封緘は、それ自体公知のカプセル充填シール機、例えば前記カプセル充填・シール機またはカプセルシール機(型式名:HICAPSEAL 40/100、クオリカプス社製)等を使用して実施することができる。
【0065】
カプセル封緘時、バンドシール調製液は、一般に室温あるいは加温下で使用することができる。硬質カプセルの液漏れ防止という観点から、好ましくは約23〜45℃、さらに好ましくは約23〜35℃、最も好ましくは約25〜35℃の温度範囲内にあるシール調製液を用いることが望ましい。なお、シール調製液の温度調節は、パネルヒーター、温水ヒーター等のそれ自体公知の方法で実施することができるが、例えば循環式温水ヒーターあるいは前記一体型カプセル充填シール機のシールパンユニットを循環式温水ヒーター型に改造したもの等で調節するのが、温度幅が微妙に調節できるので好ましい。
【0066】
斯くして得られる本発明の腸溶性カプセル製剤は、ヒトまたは動物の体内に投与および摂取されたときに、胃内では溶解せず、腸に移行して初めてカプセル皮膜が溶解し内容物が放出されるように設計されている。このため、胃内での放出が好ましくない医薬品や食品を充填した製剤として好適である。
【実施例】
【0067】
以下、実験例および実施例を示して本発明を説明するが、本発明はかかる実施例などによって制限されるものではない。なお、特に言及しない限り、下記でいう「%」は重量%を意味する。
【0068】
実験例1
表1に記載する種々の粘度(1重量%水溶液)を有する市販のアルギン酸の水溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩)を用いて下記の方法に従って、各種濃度のフィルム調製液を形成し、フィルム作成上の作業性、フィルム形成能、および形成したフィルムの特性を評価した。なお、アルギン酸の水溶性塩の1重量%水溶液の粘度は、BL型回転粘度計(粘度500mPa・s未満はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満はローター番号3、粘度2000mPa・s以上はローター番号4)を用いて、20℃、回転数60rpm、測定時間1分の条件で測定した場合の粘度である。
【0069】
<フィルム調製液の調製、およびそれを用いたフィルムの形成方法>
アルギン酸の水溶性塩として、表1に示す各種のアルギン酸ナトリウム(いずれも紀文フードケミファー社製)またはアルギン酸カリウムを用い、これらをそれぞれ60℃に加温した精製水に撹拌しながら溶解し、10〜25重量%の範囲で各種濃度の水溶液を調製した。調製した水溶液を減圧下で脱泡し、フィルム調製液(ジェリー)を調製した。この調製液を、スリット幅約1mmのキャスターを用いてガラス板上に均一な薄膜を作成し、室温で乾燥してフィルムを調製した。
【0070】
<フィルム調製液およびフィルムの評価>
(1)フィルム作成上の作業性
フィルム形成上の作業性は、上記で調製した各種フィルム調製液の脱泡のし易さを基準として判断した。フィルム調製液を減圧下で12時間放置した後に液中に泡を認めない場合は作業性良好として“○”、液中に泡が認められる場合は作業性不良として“×”とした。
【0071】
(2)フィルム形成能
各種フィルム調製液を用いて調製したフィルムを乾燥した後に、目視によりひび割れを全く認めない場合、フィルム形成能良好として“○”、ひび割れが認められた場合、フィルム形成能不良として”דとした。
【0072】
(3)フィルム特性
各種フィルム調製液を用いて調製したフィルムを手で折り曲げた時に、フィルムが割れない場合はフィルム特性良好として“○”、フィルムが割れる場合はフィルム特性不良として“×”とした。
【0073】
結果を表1にあわせて示す。また、上記の評価結果から求めたフィルム形成可能なフィルム調製液の濃度も合わせて示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1の結果から、フィルム形成に使用可能なアルギン酸の水溶性塩は、1重量%水溶液に調整した場合の粘度が50mPa・s以下、好ましくは2〜50mPa・s以下であることがわかった。また、フィルム形成可能なフィルム調製液の固形分含量は、表1に示すようにアルギン酸の水溶性塩の種類(1重量%水溶液の粘度)によって異なるが、いずれも10〜30重量%の範囲内に含まれ、この範囲で適宜調整することができる。好ましくは10〜25重量%の範囲、より好ましくは10〜20重量%の範囲から適宜調整することができる。
【0076】
上記の結果から、1重量%水溶液に調整した場合の粘度が50mPa・s以下、好ましくは2〜50mPa・sになるように、低粘度と高粘度のアルギン酸の水溶性塩を組み合わせて調製したフィルム調製液を用いた場合でも、上記と同様にフィルム形成が可能であると考えられる。
【0077】
実施例1〜実施例5
60℃に加温した精製水795gに攪拌しながらアルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s、紀文フードケミファー社製)100g、ゼラチン(新田ゼラチン製)100gおよびグリセロール5gを溶解し、この溶液を60℃、減圧下で5時間脱泡した。 斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込んだ。カプセル調製液の温度を58〜60℃に保持しながら、これにカプセル成型ピンを浸漬して引き上げ、カプセル成型ピンの周囲に形成された皮膜を乾燥固化して、サイズ0号の硬質カプセル(ボディ、キャップ)を調製した。
【0078】
また、同様にして、表2に示すように、アルギン酸ナトリウムとゼラチンの配合比率をそれぞれ変えて硬質カプセル調製した。なお、比較例としてゼラチンを含まないカプセル調製液を用いて同様の操作を行った。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例1〜実施例5で調製された硬質カプセルはいずれも光沢性に優れたカプセルであった。
【0081】
<カプセル調製液およびカプセルの評価>
(1)カプセル調製液の液ダレの有無
上記のカプセル調製に際して使用したカプセル調製液(58〜60℃)について、カプセル成型ピンを浸漬し引き上げたときの液ダレの有無を観察した。
【0082】
(2)カプセル皮膜の亀裂の有無
各カプセル調製液(58〜60℃)にカプセル成型ピンを浸漬し引き上げ、次いでカプセル成型ピンの表面に形成された皮膜を27℃で乾燥固化させたときに、皮膜に亀裂が生じるか否かを観察した。
【0083】
(3)カプセル皮膜の均一性
上記で形成したカプセル皮膜をカプセル成型ピンから脱離し、形成されたカプセル皮膜について、収縮の有無を含めて厚みの均一性を、目視により評価した。
【0084】
(4)腸溶性の評価
上記で調製した硬質カプセルについて、第15改正日本薬局方に規定する溶解試験法に従って、腸溶性の有無を評価した。具体的には、各硬質カプセルを第15改正日本薬局方に規定する第一液(pH1.2)(37℃)900ml中に沈め、50rmpでパドルを回転し、溶解するまでの時間を測定し耐酸性を評価した。同様に、各硬質カプセルを第15改正日本薬局方に規定する第二液(pH6.8)(37℃)900ml中に沈め、50rmpでパドルを回転し、溶解するまでの時間を測定した。
結果を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
この結果からわかるように、アルギン酸の水溶性塩とゼラチンとグリセロールを含有するカプセル調製液(実施例1〜4)およびアルギン酸水溶性塩とゼラチンを含有するカプセル調製液(実施例5)から、腸溶性の硬質カプセルが調製された。一方、ゼラチンを含まないカプセル調製液(比較例)は、室温乾燥時にひび割れが生じたため、カプセルが得られなかった。
【0087】
実施例6
ジェランガム(脱アシル型;三栄源F.F.I.製)5gを精製水820gに分散させ、更に塩化カリウム5gを加え、90℃に加温して溶解した。この溶液を約60℃で保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s)120g、ゼラチン40g及びグリセロール10gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。
【0088】
斯くして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0089】
また得られたカプセルにアセトアミノフェン50mgを充填してカプセル製剤を調製した。このカプセル製剤について、第15改正日本薬局方第一液(pH1.2)900mlを用いて、パドル回転数50rpm、温度37℃の条件で溶出試験を実施した。また、同様にして第15改正日本薬局方第二液(pH6.8)900mlを用いて、パドル回転数50rpm、温度37℃の条件で溶出試験を実施した。結果をそれぞれ図1および図2に示す。
【0090】
この結果からわかるように、上記で調製したカプセルおよびカプセル製剤は、胃環境を模倣した酸性条件下では内容物を溶出せず、一方、腸環境を模倣したアルカリ環境下で内容物を溶出する挙動を示す、腸溶性のカプセルおよびカプセル製剤であることが確認できた。
【0091】
実施例7
60℃に保持した精製水820gに、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s)100g、ゼラチン40g及びペクチン(三晶社製)40gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液を浸漬液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0092】
実施例8
約95℃に加温した精製水785gに寒天(伊那食品工業社製)10gを溶解し、この溶液を60℃に降温し、グリセロール5gを加えた後、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s)100gとアルギン酸カリウム100gを攪拌しながら溶解した。この溶液を60℃で5時間減圧下で脱泡し、カプセル調製液とした。この溶液を浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0093】
実施例9
ジェランガム(脱アシル型;三栄源F.F.I.製)5gを精製水819.17gに分散させ、更に塩化カリウム5gを加え、90℃に加温して溶解した。この溶液を約60℃で保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s)120g、ゼラチン40g、グリセロール10gおよびショ糖脂肪酸エステル0.83gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0094】
実施例10
ジェランガム(脱アシル型;三栄源F.F.I.製)5gおよびιカラギーナン2gを精製水827.17gに分散させ、更に塩化カリウム5gを加え、90℃に加温して溶解した。この溶液を約60℃で保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s)120g、ゼラチン40gおよびショ糖脂肪酸エステル0.83gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0095】
実施例11
寒天10gを精製水820gに分散させた後、90℃に加温して溶解した。この溶液を約60℃に保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃)が10.7mPa・sのもの)170gを攪拌しながら溶解後、減圧下で約5時間脱泡した。かくして調製した水溶液をカプセル調製液として浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。斯くして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0096】
実施例12
ガードラン(和光純薬製)20gを精製水820gに分散させた後、60℃に加温して溶解した。この溶液を約60℃に保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃)が10.7mPa・sのもの)120gおよびゼラチン40gを加え、攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。斯くして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜4と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0097】
実施例13
キサンタンガム(三晶社製)10gとローカストビーンガム(三晶社製)10gを精製水820gに分散させた後、85℃に加温して溶解した。この溶液を約60℃で保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃)が10.7mPa・sのもの)120gおよびゼラチン40gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0098】
実施例14
タマリンドシードガム(MRC社製)10gとジェランガム(三晶社製)10gを精製水820gに分散させた後、85℃に加温して溶解した。この溶液を約60℃で保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃)が10.7mPa・sのもの)120gおよびゼラチン40gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0099】
実施例15
寒天(伊那食品工業社製)10gとジェランガム(三晶社製)10gを精製水820gに分散させ、85℃に加温して溶解し、この溶液を約60℃で保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s)160gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0100】
実施例16
カラギーナン(MRC社製)5gと塩化カリウム5gを精製水820gに分散させ、85℃に加温して溶解し、この溶液を約60℃で保持し、アルギン酸ナトリウム(1重量%水溶液の粘度(20℃):10.7mPa・s)120g、ゼラチン50gを攪拌しながら溶解した。この溶液を減圧下で約5時間脱泡した。斯くして調製した水溶液をカプセル調製液として、浸漬法による慣用のカプセル製造装置に仕込み、浸漬液の温度を58〜60℃に保持しながら、実施例1〜5と同様に、常法に従ってサイズ0号の硬質カプセルを調製した。かくして調製した硬質カプセルについて、実施例1〜5と同様にして、カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無、カプセル皮膜の均一性、および耐酸性と腸溶性を評価した。
【0101】
実施例6〜10の結果を表4および表5に、実施例11〜16の結果を表6および表7に、まとめる。
【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
表4および表7に示すように、実施例6〜16のいずれのカプセルも、カプセル調製過程において液ダレおよび乾燥過程でのヒビ割れを生じなかった。また得られたカプセルをシンカーに入れ、日局第一液(pH1.2)900ml中に沈め、50rmpで2時間パドルを回転したところ、カプセルは全く崩壊しなかった。更に、このカプセルを日局第二液(pH6.8)に沈め、同様にパドルを50rpmで回転したところ、3〜5分で崩壊し(内容物の溶出)、腸溶性を備えていることが確認された。
【0107】
実施例17 硬質カプセル製剤の調製
全自動カプセル充填機(クオリカプス社製、LIQFILsuper40)を用いて、上記実施例1〜9で調製した腸溶性の硬質カプセルに、デキストリンと乳酸菌粉末の混合末を充填してなる本発明の硬質カプセル製剤を調製した。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施例6で調製したカプセル製剤について、第15改正日本薬局方第一液(pH1.2)900mlを用いて、パドル回転数50rpm、温度37℃の条件で溶出試験を行い、中に充填したアセトアミノフェンの溶出率(%)を経時的に測定した結果を示す図である。
【図2】実施例6で調製したカプセル製剤について、第15改正日本薬局方第二液(pH6.8)900mlを用いて、パドル回転数50rpm、温度37℃の条件で溶出試験を行い、中に充填したアセトアミノフェンの溶出率(%)を経時的に測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも一種を含有するフィルムからなる腸溶性カプセル。
【請求項2】
上記アルギン酸の水溶性塩が、1重量%水溶液に調整した場合の粘度〔BL型回転粘度計(粘度500mPa・s未満はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満はローター番号3、粘度2000mPa・s以上はローター番号4)を用いて、20℃、回転数60rpm、測定時間1分〕が5〜50mPa・sであることを特徴とする、請求項1に記載する腸溶性カプセル。
【請求項3】
上記フィルムが、さらにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を含有するものである、請求項1または2に記載する腸溶性カプセル。
【請求項4】
上記フィルムが、さらに可塑剤を含有するものである、請求項1乃至3のいずれかに記載する腸溶性カプセル。
【請求項5】
可塑剤がソルビトールまたはグリセロールである、請求項4に記載する腸溶性カプセル。
【請求項6】
上記フィルムが、アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種を含有するカプセル調製液を、カプセル形態に乾燥固化して形成されるものである、請求項1または2に記載する腸溶性カプセル。
【請求項7】
アルギン酸の水溶性塩と、ゼラチン、寒天およびカードランからなる群から選択される少なくとも1種を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬して引き上げ、当該成型用ピンに付着した上記カプセル調製液を乾燥固化し、これを成型ピンから脱離回収する工程を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載する腸溶性カプセルの調製方法。
【請求項8】
上記カプセル調製液が、さらにジェランガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも一種のゲル化剤を含有するものである、請求項7に記載する調製方法。
【請求項9】
上記カプセル調製液が、さらに可塑剤を含有するものである、請求項7または8に記載する調製方法。
【請求項10】
可塑剤がソルビトールまたはグリセロールである、請求項9に記載する調製方法。
【請求項11】
上記カプセル調製液が、B型回転粘度計(粘度500mPa・s未満はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満はローター番号3、粘度2000mPa・s以上はローター番号4)を用いて、20℃、回転数12rpm、測定時間1分の条件下で、粘度が1000〜5000mPa・sであり、固形分含量が10〜25重量%であることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれかに記載する調製方法。
【請求項12】
請求項1乃至6のいずれかに記載する腸溶性カプセルに内容物が充填されてなる腸溶性カプセル製剤。
【請求項13】
内容物が食品または経口医薬品である請求項12に記載する腸溶性カプセル製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−196961(P2009−196961A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42910(P2008−42910)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000228110)クオリカプス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】