説明

腸管吸収性を改善する医薬組成物

【課題】 一般式[1]で表される構造を有する化合物の腸管吸収性を改善する医薬組成物を提供すること。
【解決手段】 一般式[1]で表される化合物又はその塩、及び(b)親油性物質を含有する組成物は、該化合物の腸管吸収性を改善する。式中、Aは−(NR)−、−(CR)−などを、Bはアルキレン基又はアルケニレン基を、Rはアルキル基、アルケニル基などを、Rはアダマンチルアルキル基などを、Rは不飽和の複素環を、R、R及びRは水素原子などを、Xは酸素原子などをそれぞれ示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)下記一般式[1]で表される化合物又はその塩(以下、これらを総称して「本化合物」ともいう)、及び(b)親油性物質を含有する医薬組成物に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
[式中、Aは、−(NR)−、−(CR)−又は−O−を示し;Bは鎖中に、−O−、−S−、−(NR)−、−CO−、−N=若しくは
【0004】
【化2】

【0005】
を含有してもよいアルキレン基又はアルケニレン基を示し、該アルキレン基及びアルケニレン基はヒドロキシ基、アルコキシ基、アリール基、シロキシ基又は飽和若しくは不飽和の複素環で置換されていてもよく、Aと結合して飽和の複素環を形成してもよく;Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヒドロキシ基又はアミノ基を示し、該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アダマンチル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基又は飽和若しくは不飽和の複素環で置換されていてもよく、上記された各アミノ基、ヒドロキシ基及びアミノカルボニル基の水素原子はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールアルコキシカルボニル基、ハロゲノアルコキシカルボニル基、不飽和の複素環又は不飽和の複素環で置換されたアルキル基で置換されていてもよく;Rはアダマンチルアルキル基、アダマンチルオキシアルキル基、アダマンチルアミノアルキル基又はアダマンチルアミノカルボニルアルキル基を示し;Rは不飽和の複素環を示し;Rは水素原子、アルキル基、アダマンチルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基又はアルコキシカルボニルアミノ基を示し;R及びRは同一又は異なって水素原子、アルキル基、アミノ基又はアルコキシカルボニルアミノ基を示し;Rは水素原子又はアルキル基を示し;Xは酸素原子又は硫黄原子を示し;nは1〜5の整数を示す。]
【背景技術】
【0006】
本化合物は、その製造方法と共に特許文献1に開示されており、TNF−α(Tumor Necrosis Factor−α:腫瘍壊死因子)産生阻害活性を有する。したがって、本化合物は、慢性関節リウマチ、アレルギー、糖尿病等の自己免疫疾患の治療剤となりうることが示唆されている(特許文献1)。
【0007】
また、本化合物は、血管新生阻害作用を有しており、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオ−シス、角膜新生血管症等の治療剤となりうることが示唆されている(特許文献2)。さらに、本化合物は、骨粗しょう症、変形性関節症、呼吸器疾患、皮膚疾患、神経変性疾患等の治療剤となりうることも示唆されている(特許文献3〜7)。以上のように、本化合物は、臨床上極めて有用な化合物である。
【0008】
一方で、本化合物は経口投与時の腸管吸収性が低く、経口投与では十分な薬効を得ることができない場合がある。しかしながら、本化合物の腸管吸収性を改善する製剤の検討を行った報告は全く存在せず、どのような組成物が本化合物の腸管吸収性を改善するかについては、これまで全く明らかとなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−53555号公報
【特許文献2】特開2003−226686号公報
【特許文献3】特開2005−336173号公報
【特許文献4】特開2005−336174号公報
【特許文献5】特開2006−117654号公報
【特許文献6】特開2006−117653号公報
【特許文献7】特開2006−143707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち、本発明の目的は、本化合物の腸管吸収性を改善する医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者は、本化合物の腸管吸収性を改善する医薬組成物を探索すべく鋭意研究したところ、本化合物を親油性物質に溶解させることにより、その腸管吸収性が向上することを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、(a)下記一般式[1]で表される化合物又はその塩、及び(b)親油性物質を含有する医薬組成物である。
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、Aは、−(NR)−、−(CR)−又は−O−を示し;Bは鎖中に、−O−、−S−、−(NR)−、−CO−、−N=若しくは
【0015】
【化4】

【0016】
を含有してもよいアルキレン基又はアルケニレン基を示し、該アルキレン基及びアルケニレン基はヒドロキシ基、アルコキシ基、アリール基、シロキシ基又は飽和若しくは不飽和の複素環で置換されていてもよく、Aと結合して飽和の複素環を形成してもよく;Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヒドロキシ基又はアミノ基を示し、該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アダマンチル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基又は飽和若しくは不飽和の複素環で置換されていてもよく、上記された各アミノ基、ヒドロキシ基及びアミノカルボニル基の水素原子はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールアルコキシカルボニル基、ハロゲノアルコキシカルボニル基、不飽和の複素環又は不飽和の複素環で置換されたアルキル基で置換されていてもよく;Rはアダマンチルアルキル基、アダマンチルオキシアルキル基、アダマンチルアミノアルキル基又はアダマンチルアミノカルボニルアルキル基を示し;Rは不飽和の複素環を示し;Rは水素原子、アルキル基、アダマンチルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基又はアルコキシカルボニルアミノ基を示し;R及びRは同一又は異なって水素原子、アルキル基、アミノ基又はアルコキシカルボニルアミノ基を示し;Rは水素原子又はアルキル基を示し;Xは酸素原子又は硫黄原子を示し;nは1〜5の整数を示す。]
また、本発明の他の態様は、(a)以下の群から選ばれる少なくとも1つの化合物又はその塩、及び(b)親油性物質を含有する医薬組成物である。
【0017】
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]−1−(3,3,3−トリフルオロプロピル)ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−(2−ブテニル)−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・1−[3−(1−アダマンチル)プロピル]−1−プロピル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・(Z)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレア、
・(−)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[1−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
・(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・5−(4−ピリジル)吉草酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・3−(4−ピリジルメチルチオ)プロピオン酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・2−[2−(4−ピリジル)エチルチオ]酢酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・6−(4−ピリジル)カプロン酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・cis−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[2−(4−ピリジル)シクロプロピルメチル]ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア
・(E)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレアおよび
・(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア。
【0018】
また、本発明の他の態様は、(a)本化合物、並びに(b)プロピレングリコール脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルを含有する医薬組成物である。
【0019】
また、本発明の他の態様は、(a)本化合物、(b)プロピレングリコール脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル、並びに(c)可溶化剤及び/又は界面活性剤を含有する医薬組成物である。
【発明の効果】
【0020】
後述するように、本化合物を親油性物質に溶解させた溶液をラットの十二指腸又は空腸に注射したところ、良好な血中移行が確認された。すなわち、本発明は、本化合物の腸管吸収性を改善する医薬組成物を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中で使用される文言(原子、基、環等)の定義について以下に詳しく説明する。なお、定義が準用される場合、その好ましい範囲等も含め準用できる。
【0022】
アルキレン基とはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、メチルメチレン基、エチルエチレン基、ジメチルエチレン基、プロピルエチレン基、イソプロピルエチレン基、メチルトリメチレン基、1−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基などの1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキレン基を示す。
【0023】
アルケニレン基とは、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、ブタンジイリデン基、メチルプロペニレン基などの1個以上の二重結合を有し、2〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルケニレン基を示す。
【0024】
アルキル基とはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、t-ブチル基、3,3−ジメチルブチル基などの1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基を示す。
【0025】
アルコキシ基とはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基などの1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルコキシ基を示す。
【0026】
アルケニル基とはビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基などの2〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルケニル基を示す。
【0027】
アルキニル基とは、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基などの2〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキニル基を示す。
【0028】
シクロアルキル基とはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などの3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル基を示す。
【0029】
シクロアルケニル基とはシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基などの5〜20個の炭素原子を有するシクロアルケニル基を示す。
【0030】
アリール基とはフェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素環を示し、それらは1個以上の置換基を有してもよく、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基などが挙げられる。
【0031】
シロキシ基とは、トリアルキルシリルオキシ基、ジアルキル(アリール)シリルオキシ基、アルキル(ジアリール)オキシ基、トリアリールシリルオキシ基などの珪素含有有機基を示す。
【0032】
アシル基とは、ヒドロカルボニル基、アルキルカルボニル基、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環カルボニル基を示す。具体例として、ヒドロカルボニル基であるホルミル基;アルキルカルボニル基であるアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、モノクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基など;シクロアルキルカルボニル基であるシクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基など;アリールカルボニル基であるベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基など;複素環カルボニル基であるフロイル基、テノイル基、ピコリノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、イミダゾリルカルボニル基などが挙げられる。
【0033】
ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を示す。
【0034】
複素環とは、例えば窒素原子、酸素原子又は硫黄原子から選択される原子を1〜4個を含む5〜20員環の飽和若しくは不飽和の単環式複素環又は2環式複素環を示し、これらの複素環は、1個以上の置換基を有してもよく、その置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリール基、アリールアルキル基、飽和若しくは不飽和の複素環などが挙げられる。また、上記の複素環が環内に窒素原子又は硫黄原子を有するとき、それらの原子が酸化され、N−オキシド、S−オキシド等の形になっていてもよい。
【0035】
飽和の複素環の具体例としては、窒素原子を環内に有するピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン又はピペラジン、窒素原子と酸素原子を環内に有するモルホリン、窒素原子と硫黄原子を環内に有するチオモルホリンなどの単環式複素環が挙げられ、それらはベンゼン環等と縮合してテトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリンなどの2環式複素環を形成してもよい。
【0036】
不飽和の複素環の具体例としては、窒素原子を環内に有するピロール、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン等の単環式複素環又はインドール、キノリン、イソキノリン、ベンズイミダゾール、ナフチリジン、ピロロピリジン、イミダゾピリジン等の2環式複素環;酸素原子を環内に有するフラン等の単環式複素環又はベンゾフランなど等の2環式複素環;硫黄原子を環内に有するチオフェン等の単環式複素環又はベンゾチオフェン等の2環式複素環;窒素原子と酸素原子若しくは硫黄原子を環内に有するオキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール等などの単環式複素環又はベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、チエノピリジン、オキサゾロピリジン、チアゾロピリジン、フロピリジン等の2環式複素環などが挙げられる。さらに、上記の不飽和複素環は部分的に飽和結合を含む形であってもよい。
【0037】
本発明における塩とは医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸との塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。また、本化合物の第四級アンモニウム塩も本発明における塩に包含される。さらに、本化合物に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合には、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。なお、本化合物は水和物及び溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0038】
本化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0039】
一般式[1]で規定された各基が以下の基から選択され、又はそれらの組み合わせからなる化合物又はその塩
1)R:アダマンチルアルキル基。
【0040】
2)R:ピリジン環。
【0041】
これらのうち、一般式[1]で規定された各基が以下の基からなる化合物又はその塩がさらに好ましい。
【0042】
A:−(NR)−又は−(CR)−
B:鎖中に、−S−若しくは
【0043】
【化5】

【0044】
を含有してもよいアルキレン基又はアルケニレン基、
:アルキル基又はアルケニル基であって、該アルキル基及びアルケニル基はハロゲン原子又はアミノ基で置換されていてもよく、さらに該アミノ基はアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はシクロアルキルオキシカルボニル基で置換されていてもよい、
:アダマンチルアルキル基、
:ピリジン環、
:水素原子、
及びR:水素原子、
X:酸素原子、
n:1。
【0045】
これらのうち、一般式[1]で規定された各基が以下の基からなる化合物又はその塩が特に好ましい。
【0046】
A:−NH−又はメチレン基、
B:プロピレン基、1−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、−CH−S−CH−、−S−CHCH−、ブタン−1,4−ジイル基、ビニレン基、プロペン−1,3−ジイル基又は
【0047】
【化6】

【0048】
:ハロゲン原子若しくはアミノ基で置換されていてもよいエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基であって、さらに該アミノ基はメチル基及び/又はt−ブトキシカルボニル基で置換されていてもよい、
:アダマンチルエチル基又はアダマンチルプロピル基、
:ピリジン環、
X:酸素原子。
【0049】
本化合物の好ましい具体例として、下記化合物及びその塩が挙げられる。
【0050】
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア
【0051】
【化7】

【0052】
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]−1−(3,3,3−トリフルオロプロピル)ウレア
【0053】
【化8】

【0054】
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−(2−ブテニル)−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア
【0055】
【化9】

【0056】
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア
【0057】
【化10】

【0058】
1−[3−(1−アダマンチル)プロピル]−1−プロピル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア
【0059】
【化11】

【0060】
(Z)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレア
【0061】
【化12】

【0062】
(−)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア
【0063】
【化13】

【0064】
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[1−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア
【0065】
【化14】

【0066】
(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア
【0067】
【化15】

【0068】
5−(4−ピリジル)吉草酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド
【0069】
【化16】

【0070】
3−(4−ピリジルメチルチオ)プロピオン酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド
【0071】
【化17】

【0072】
2−[2−(4−ピリジル)エチルチオ]酢酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド
【0073】
【化18】

【0074】
6−(4−ピリジル)カプロン酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド
【0075】
【化19】

【0076】
cis−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[2−(4−ピリジル)シクロプロピルメチル]ウレア
【0077】
【化20】

【0078】
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア
【0079】
【化21】

【0080】
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア
【0081】
【化22】

【0082】
(E)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレア
【0083】
【化23】

【0084】
(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア
【0085】
【化24】

【0086】
本化合物として最も好ましいのは、1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア(以下、「化合物A」ともいう)である。
【0087】
本化合物は、例えば、特開2002−53555号公報記載の方法によって製造できる。
【0088】
本発明における親油性物質としては、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸と一価アルコールとのエステル又は脂肪酸と多価アルコールとのエステルを挙げることができる。また、これらは天然の動植物界に油脂、脂質等の一成分としても広く存在しており、これらを含有する天然油脂又は天然脂質も本発明における親油性物質として挙げることができる。
【0089】
以下に、本発明における親油性物質としての脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸と一価アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのエステル及びこれらを含有する天然油脂又は天然脂質について説明する。
【0090】
脂肪酸とは、炭素数6〜13の飽和又は不飽和の中鎖脂肪酸及び炭素数14〜22の飽和又は不飽和の長鎖脂肪酸をいう。脂肪酸の例としては、中鎖脂肪酸として、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、イソオクタン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ジメチルオクタン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸(ウンデシル酸)、ウンデシレン酸、ラウリン酸などを挙げることができ、長鎖脂肪酸として、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸(マーガリン酸)、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ノナデカン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘン酸などを挙げることができる。
【0091】
脂肪酸塩とは、上記脂肪酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)又はアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)をいう。脂肪酸塩の例としては、カプロン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0092】
脂肪酸と一価アルコールとのエステルとは、上記脂肪酸とメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキシルアルコール、デシルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデシルアルコール等の一価アルコールとのエステルをいう。上記脂肪酸と一価アルコールとのエステルの例としては、リノール酸エチル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、リノール酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシルなどを挙げることができる。
【0093】
脂肪酸と多価アルコールとのエステルとは、上記脂肪酸と多価アルコールとのエステルをいう。ここで、多価アルコールとしては、分子内に2個以上のアルコール性水酸基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。すなわち、上記脂肪酸と多価アルコールとのエステルとしては、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0094】
なお、脂肪酸と多価アルコールのエステルは、多価アルコールが有する水酸基と1つ以上の脂肪酸がエステル結合して形成されているものであり、複数個の水酸基が脂肪酸とエステル結合する場合の脂肪酸は同一のものでも良いし、異なったものでも良い。ただし、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の重合体は、本発明における脂肪酸と多価アルコールとのエステルには含まれない。
【0095】
上記エチレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、特に、モノカプリル酸エチレングリコール、ジカプリル酸エチレングリコール、モノイソオクタン酸エチレングリコール、ジイソオクタン酸エチレングリコールなどを挙げることができる。
【0096】
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、特に、モノカプリル酸プロピレングリコール(propylene glycol monocaprylate)(製品名:日光ケミカルズ社製 Sefsol−218等)、ジカプリル酸プロピレングリコール(propylene glycol dicaprylate)(製品名:日光ケミカルズ社製 Sefsol−228等)、カプリル酸プロピレングリコール(propylene glycol caprylate)(Gattefosse社製 CAPRYOL(登録商標) PGMC等)、モノカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール(製品名:日光ケミカルズ社製 PDD等)、モノラウリン酸プロピレングリコール(製品名:Gattefosse社製 Lauroglycol(登録商標) 90等)、ジラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコール(製品名:Gattefosse社製 Lauroglycol(登録商標) FCC等)、モノイソオクタン酸プロピレングリコール(製品名:日光ケミカルズ社製 Sefsol−2126等)、ジイソオクタン酸プロピレングリコール(製品名:日光ケミカルズ社製 Sefsol−2226等)、ミリスチン酸プロピレングリコール(propylene glycol myristate)、モノステアリン酸プロピレングリコール(propylene glycol monostearate)、ジステアリン酸プロピレングリコール(propylene glycol distearate)、イソステアリン酸プロピレングリコール(propylene glycol isostearate)(CORUM社製 Corum 5083)、オレイン酸プロピレングリコール(propylene glycol oleate)(製品名:BASF社製 Lutrol(登録商標) OP2000等)、リシノール酸プロピレングリコール(propylene glycol ricinoleate)、プロピレングリコールカプリレート/カプレート(propylene glycol caprylate/caprate)、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート(propylene glycol dicaprylate/dicaprate)(製品名:Abitec社製 Captex 200等)などを挙げることができる。
【0097】
上記グリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、特に、カプリル酸モノグリセリド(glycerol monocaprylate)(製品名:花王社製 HOMOTEX PT、SASOL社製 IMWITOR 308等)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(glycerol mono/dicaprylate)(製品名:SASOL社製 IMWITOR 988、Abitec社製 Capmul(登録商標) MCM C8等)、カプリル酸グリセリル(glyceryl caprylate)、カプリン酸グリセリル(glyceryl caprate)(製品名:Abitec社製 Capmul(登録商標) MCM C10等)、カプリル酸/カプリン酸グリセリド(caprylic/capric glyceride)(製品名:SASOL社製 IMWITOR 742等)、モノラウリン酸グリセリル(glyceryl monolaurate)(製品名:SASOL社製 IMWITOR 312等)、モノミリスチン酸グリセリル(glyceryl monomyristate)、モノステアリン酸グリセリル(glyceryl monostearate)(製品名:日本エマルジョン社製 EMALEX GMS−50等)、パルミチン酸グリセリル(glyceryl palmitate)(製品名:日本エマルジョン社製 EMALEX GMS−P等)、グリセリルモノステアレート/パルミテート(glyceryl monostearate/palmitate)、グリセリルパルミチン酸/ステアリン酸(glyceryl palmitic/stearic)、モノオレイン酸グリセリル(glyceryl monooleate)(製品名:日光ケミカルズ社製 MGO等)、オレイン酸グリセリル(glyceryl oleate)(製品名:Abitec社製 Capmul(登録商標) GMO等)、グリセリルモノ/ジオレエート(glyceryl mono/dioleate)、モノリノレン酸グリセリル(glyceryl monolinoleate)、グリセロールモノオレエート/リノレエート(glycerol monooleate/linoleate)、リシノール酸グリセリル(glyceryl ricinoleate)(製品名:SASOL社製 Softigen 701等)、グリセリルトリカプロエート、グリセリルトリカプリレート、グリセリルトリカプレート(glyceryl tricaprate)(製品名:Abitec社製 Captex 1000等)、グリセリルトリウンデカノエート(glyceryl triundecanoate)(製品名:Abitec社製 Captex 8227等)、グリセリルトリラウレート、グリセリルトリオレエート、グリセリルトリリノレエート、グリセリルトリリノレネート、グリセリルトリカプリレート/カプレート(caprylic/capric triglyceride)(製品名:SASOL社製 MIGLYOL(登録商標) 810等)、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレート(glyceryl tricaprylate/caprate/laurate)(製品名:SASOL社製 MIGLYOL(登録商標) 818等)、グリセリルトリカプリレート/カプレート/リノレエート(製品名:Abitec社製 Captex 810等)、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ステアレート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ミリスチレート/ステアレート(caprylic/capric/myristic/stearic triglyceride)(製品名:SASOL社製 SOFTISAN 378等)などを挙げることができる。
【0098】
上記親油性物質を含有する天然油脂又は天然脂質としては、例えば、アーモンド油、ババス油、ルリヂサ油、クロフサスグリ種子油、カノーラ油、ヒマシ油、ココヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、マツヨイグサ油、ブドウ種子油、アメリカホドイモ油、カラシナ種子油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ラッカセイ油、ナタネ油、サフラワー油、ゴマ油、サメ肝油、ダイズ油、ヒマワリ油、硬化ヒマシ油、硬化ココヤシ油、硬化パーム油、硬化ダイズ油などを挙げることができる。
【0099】
本発明における親油性物質は、脂肪酸と多価アルコールのエステルが好ましく、プロピレングリコール脂肪酸エステル又はグリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、カプリル酸プロピレングリコール、カプリル酸モノグリセリド、カプリル酸モノ/ジグリセリド、カプリル酸グリセリル又はグリセリルトリカプリレートがさらに好ましく、モノカプリル酸プロピレングリコール、カプリル酸モノグリセリド又はカプリル酸モノ/ジグリセリドが特に好ましい。
【0100】
本発明における親油性物質として最も好ましいのは、モノカプリル酸プロピレングリコールである。
【0101】
これらの親油性物質は、通常動物や植物由来の原料を用いて製造されるため、その脂肪酸組成は単一ではないが、これらのものも本発明の目的に好適に用いられる。また、本発明において、親油性物質は単独でも、二種以上を混合して用いてもよい。
【0102】
本発明の組成物における親油性物質の配合量(配合比率)は、化合物により適宜調節することができるが、本化合物に対して、重量比で0.01〜100が好ましく、0.1〜20がより好ましく、1〜10が特に好ましい。
【0103】
本発明の組成物には、さらに可溶化剤及び/又は界面活性剤を添加することができる。
【0104】
本発明における可溶化剤は、本化合物の溶解性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、アルコール、アミド、エステル、その他の可溶化剤等が挙げられる。ただし、本発明において、脂肪酸と一価アルコール又は多価アルコールとのエステルは、可溶化剤としてのエステルには含まれない。
【0105】
以下に、本発明における可溶化剤としての一価アルコール又は多価アルコール、アミド、エステル及びその他の可溶化剤について説明する。
【0106】
上記一価アルコール又は多価アルコールの具体例としては、特に、エタノール、無水エタノール、イソプロパノール、無水イソプロパノール、ブタノール、無水ブタノール、ベンジルアルコール、無水ベンジルアルコール、エチレングリコール、無水エチレングリコール、プロピレングリコール、無水プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体などを挙げることができる。
【0107】
上記アミドの具体例としては、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン(N−メチルピロリドンを含む)、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。
【0108】
上記エステルの具体例としては、エチルプロピオネート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、エチルオレアート、エチルカプリレート、エチルブチレート、トリアセチンなどを挙げることができる。
【0109】
上記その他の可溶化剤の具体例としては、特に、ジメチルイソソルビド、モノオクタン、アセトンなどを挙げることができる。
【0110】
本発明における可溶化剤は、一価アルコール又は多価アルコールが好ましく、一価アルコールが特に好ましい。
【0111】
また、本発明において、可溶化剤は単独でも、二種以上を混合して用いてもよい。
【0112】
本発明の組成物に可溶化剤を添加する場合、該可溶化剤の配合量(配合比率)は化合物により適宜調節することができるが、本化合物に対して、重量比で0.001〜10が好ましく、0.005〜5がより好ましく、0.01〜2が特に好ましい。
【0113】
本発明における界面活性剤は、本化合物の溶解性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、胆汁酸塩、リン脂質、カチオン性界面活性剤等のイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル、飽和ポリグリコール化グリセリド等の非イオン性界面活性剤、その他の界面活性剤などが挙げられる。
【0114】
以下に、本発明における界面活性剤としての胆汁酸塩、リン脂質、カチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル、飽和ポリグリコール化グリセリド及びその他の界面活性剤について説明する。
【0115】
上記胆汁酸塩の具体例としては、特に、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0116】
上記リン脂質の具体例としては、特に、精製卵黄レシチン、精製大豆レシチンなどを挙げることができる。
【0117】
上記カチオン性界面活性剤の具体例としては、特に、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチンなどを挙げることができる。
【0118】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、特に、ポリオキシエチレンオレインエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどを挙げることができる。
【0119】
上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、特に、ポリソルベート20(製品名:CRODA社製 CRILLET 1 HP等)、ポリソルベート60(製品名:CRODA社製 CRILLET 3 NF等)、ポリソルベート80(製品名:CRODA社製 CRILLET 4 HP等)、ポリソルベート120(製品名:CRODA社製 CRILLET 6等)などを挙げることができる。
【0120】
上記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの具体例としては、特に、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビットなどを挙げることができる。
【0121】
上記ポリオキシエチレンヒマシ油の具体例としては、特に、PEG−20ヒマシ油(製品名:日本エマルジョン社製 EMALEX C−20等)、PEG−30ヒマシ油(製品名:日本エマルジョン社製 EMALEX C−30等)、ポリオキシル35ヒマシ油(製品名:BASF社製 Cremophor EL等)、PEG−40ヒマシ油(製品名:日本エマルジョン社製 EMALEX C−40等)、PEG−50ヒマシ油(製品名:日本エマルジョン社製 EMALEX C−50等)などを挙げることができる。
【0122】
上記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、特に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−5等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−10等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−20等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−30等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−40等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−50等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−60等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−80等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(製品名:日光ケミカルズ社製 HCO−100等)などを挙げることができる。
【0123】
上記ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、特に、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(製品名:日本エマルジョン社製 EMALEX PEL−12等)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(製品名:日光ケミカルズ社製 MYO−10V等)、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどを挙げることができ、さらに、モノステアリン酸ポリエチレングリコールの具体例としては、ステアリン酸PEG−10(製品名:日光ケミカルズ社製 MYS−10V等)、ステアリン酸PEG−25(製品名:日光ケミカルズ社製 MYS−25V等)、ステアリン酸PEG−40(製品名:日光ケミカルズ社製 MYS−40V等)、ステアリン酸PEG−45(製品名:日光ケミカルズ社製 MYS−45V等)、ステアリン酸PEG−55(日光ケミカルズ社製 MYS−55V等)などを挙げることができる。
【0124】
上記ショ糖脂肪酸エステルの具体例としては、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖ジオレイン酸エステルなどを挙げることができる。
【0125】
上記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーの具体例としては、ポリオキシエチレン(150)ポリオキシプロピレン(35)グリコール(製品名:BASF社製 プルロニックF−87等)、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール(製品名:BASF社製 プルロニックF−127等)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(ポロクサマー188ともいう)(製品名:BASF社製 プルロニックF−68等)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(製品名:BASF社製 プルロニックL−44等)、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール(PEP―101ともいう)などを挙げることができる。
【0126】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノステアリン酸ジグリセリル(製品名:日光ケミカルズ社製 DGMS等)、モノオレイン酸ジグリセリル(製品名:日光ケミカルズ社製 DGMO−CV等)、モノイソステアリン酸ジグリセリル(製品名:日光ケミカルズ社製 DGMIS等)、モノラウリン酸デカグリセリル(製品名:日光ケミカルズ社製 Decaglyn 1−L等)、モノオレイン酸デカグリセリル(製品名:日光ケミカルズ社製 Decaglyn 1−OV等)などを挙げることができる。
【0127】
上記飽和ポリグリコール化グリセリドの具体例としては、Gelucire44/14、Gelucire50/13、Gelucire53/10(いずれも製品名)などを挙げることができる。
【0128】
上記その他の界面活性剤の具体例としては、特に、d−α−tocopherylpolyethylene glycol 1000(製品名:Eastman社製 ビタミンE TPGS NF)などを挙げることができる。
【0129】
本発明における界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はd−α−tocopherylpolyethylene glycol 1000が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が特に好ましい。
【0130】
また、本発明において、界面活性剤は単独でも、二種以上を混合して用いてもよい。
【0131】
本発明の組成物に界面活性剤を添加する場合、該界面活性剤の配合量(配合比率)は化合物により適宜調節することができるが、本化合物に対して、重量比で0.001〜20が好ましく、0.005〜10がより好ましく、0.01〜5が特に好ましい。
【0132】
本化合物は、必要に応じて、医薬として許容される添加剤を加え、単独製剤又は配合製剤として汎用されている技術を用いて製剤化することができる。
【0133】
本発明の組成物は、通常用いられる方法によって、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤又は液剤とすることができるが、カプセル剤が特に好ましい。
【0134】
本発明の組成物は液状、半固形状又は固形であるが、そのまま、あるいは必要に応じて、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油等の滑沢剤;精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のコーティング剤;クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントール等の矯味剤などを適宜選択して添加し、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤又は液剤として使用することができる。
【0135】
本発明において、「腸管吸収性を改善する」とは、本化合物を錠剤等の固形製剤、液剤(カプセル化したものを含む)等として患者に投与した場合に、それらの製剤の基剤に親油性物質が含有されていない場合と比較して、より高い本化合物の腸管吸収性が得られ、結果として、高いバイオアベイラビリティが得られることを意味する。なお、ここでいう腸管とは、小腸(空腸、十二指腸等)、大腸(結腸、直腸等)などを意味する。
【0136】
以下に、実施例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0137】
[実施例1〜6及び比較例]
本発明の組成物をラット十二指腸内投与した場合の本化合物の血中移行性を検討した。
【0138】
[実施例1]
50重量部の化合物Aを、150重量部のカプリル酸モノ/ジグリセリド(SASOL社製 IMWITOR 988、実施例において以下同じ)に溶解し、試料を調製した。次に、化合物A 1mgに相当する量の試料を、針付注射筒を用いて非絶食ラット(SD系雄性ラット、n=3)の十二指腸内に投与した。投与後、0.25、0.5、1、2、4及び6時間に血液を採取し、得られた血漿中の化合物Aの濃度を高速液体クロマトグラフ/質量分析計(LC−MS/MS)により測定した。得られた化合物Aの血漿中濃度推移から、血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)及び最大血漿中濃度(Cmax)を算出した。
【0139】
[実施例2]
50重量部の化合物Aを、100重量部のカプリル酸モノ/ジグリセリド、25重量部のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(日光ケミカルズ社製 HCO−60、実施例において以下同じ)及び25重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例1と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの十二指腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0140】
[実施例3]
50重量部の化合物Aを、227重量部のカプリル酸モノ/ジグリセリド、113重量部のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及び30重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例1と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの十二指腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0141】
[実施例4]
50重量部の化合物Aを、150重量部のモノカプリル酸プロピレングリコール(日光ケミカルズ社製 Sefsol−218、実施例において以下同じ)に溶解し、試料を調製した。実施例1と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの十二指腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0142】
[実施例5]
50重量部の化合物Aを、148重量部のモノカプリル酸プロピレングリコール及び2重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例1と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの十二指腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0143】
[実施例6]
50重量部の化合物Aを、237重量部のカプリル酸モノグリセリド(花王社製 HOMOTEX PT、実施例において以下同じ)、118重量部のモノラウリン酸デカグリセリル(日光ケミカルズ社製 Decaglyn 1−L)及び15重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例1と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの十二指腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0144】
[比較例]
10重量部の化合物Aを、1000重量部の第十五改正日本薬局方 溶出試験第1液(以下、「溶出試験第1液」という)に懸濁し、試料を調製した。次に、化合物A 1mgに相当する量の試料を、針付注射筒を用いて非絶食ラット(SD系雄性ラット、n=3)の十二指腸内に投与した。実施例1と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの十二指腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。なお、溶出試験第1液は、塩化ナトリウム 2.0gを塩酸 7.0mL及び水に溶かして1000mLとすることで得ることができる。
【0145】
上記実施例1〜6及び比較例の組成物の配合比率、並びに算出されたAUC及びCmaxを表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
表1の比較例、実施例1及び実施例4の比較から明らかなように、化合物A(1mg相当)をカプリル酸モノ/ジグリセリド又はモノカプリル酸プロピレングリコールに溶解させて十二指腸内に投与した場合のAUC及びCmaxは、化合物Aを溶出試験第1液に懸濁した液(錠剤などの通常の固形製剤が胃中で崩壊した状態をシミュレート)として投与した場合のそれよりも大きいことが示された。特に、モノカプリル酸プロピレングリコールについては、同種の親油性物質であるカプリル酸モノ/ジグリセリドと比較しても、高いAUC及びCmaxが得られた。これは驚くべき結果である。
【0148】
さらに、実施例1〜5の比較から明らかなように、可溶化剤である無水エタノール、及び/又は界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油若しくはモノラウリン酸デカグリセリルを添加することにより、前述のAUC及びCmaxはさらに向上することが確認された。
【0149】
なお、実施例6に示されるように、他の親油性物質であるカプリル酸モノグリセリドを用いた場合にも同様の傾向が認められた。
【0150】
すなわち、化合物Aに代表される本化合物、及びモノカプリル酸プロピレングリコール、カプリル酸モノ/ジグリセリド又はカプリル酸モノグリセリドに代表される親油性物質を含有する組成物は、本化合物の腸管吸収性を顕著に改善するものと考えられる。
【0151】
[実施例7〜12]
本発明の組成物をラット空腸内投与した場合の本化合物の血中移行性を検討した。
【0152】
[実施例7]
50重量部の化合物Aを、120重量部のモノカプリル酸プロピレングリコール、5重量部のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及び25重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。化合物A 1mgに相当する量の試料を、針付注射筒を用いて一晩絶食したラット(SD系雄性ラット、n=3)の空腸内に投与した。投与後、0.25、0.5、1、2、4及び6時間に血液を採取し、得られた血漿中の化合物Aの濃度を高速液体クロマトグラフ/質量分析計(LC−MS/MS)により測定した。得られた化合物Aの血漿中濃度推移から、AUC及びCmaxを算出した。
【0153】
[実施例8]
50重量部の化合物Aを、100重量部のモノカプリル酸プロピレングリコール、25重量部のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及び25重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例7と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの空腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0154】
[実施例9]
50重量部の化合物Aを、100重量部のモノカプリル酸プロピレングリコール、25重量部のポリソルベート80(CRODA社製 CRILLET 4 HP、実施例において以下同じ)及び25重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例7と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの空腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0155】
[実施例10]
50重量部の化合物Aを、100重量部のモノカプリル酸プロピレングリコール、25重量部のポリオキシル35ヒマシ油(BASF社製 Cremophor EL)及び25重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例7と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの空腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0156】
[実施例11]
50重量部の化合物Aを、125重量部のカプリル酸モノグリセリド及び25重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例7と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの空腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0157】
[実施例12]
50重量部の化合物Aを、100重量部のカプリル酸モノグリセリド、25重量部のポリオキシル35ヒマシ油及び25重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例7と同様の方法にて、化合物A 1mgに相当する量の試料をラットの空腸内に投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0158】
上記実施例7〜12の組成物の配合比率、並びに算出されたAUC及びCmaxを表2に示す。
【0159】
【表2】

【0160】
表2の結果から明らかなように、化合物A(1mg相当)をモノカプリル酸プロピレングリコール又はカプリル酸モノグリセリドに溶解させて空腸内に投与した場合にも、前述の十二指腸内投与同様に良好なAUC及びCmaxが得られた。
【0161】
すなわち、化合物Aに代表される本化合物、及びモノカプリル酸プロピレングリコール又はカプリル酸モノグリセリドに代表される親油性物質を含有する組成物は、本化合物の腸管吸収性を顕著に改善するものと考えられる。
【0162】
[実施例13〜15]
本発明の組成物をカプセルに充填し、イヌに経口投与した場合の本化合物の血中移行性を検討した。
【0163】
[実施例13]
50重量部の化合物Aを、227重量部のカプリル酸モノ/ジグリセリド、113重量部のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及び30重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。化合物A 20mgに相当する量の試料をゼラチンハードカプセル(クオリカプスカプセル、1号)に充填した後、一晩絶食したイヌ(雄性ビーグル、n=1)に経口投与した。投与後、0.5、1、2、4、6、8及び24時間に血液を採取し、得られた血漿中の化合物Aの濃度を高速液体クロマトグラフ/質量分析計(LC−MS/MS)により測定した。得られた化合物Aの血漿中濃度推移から、AUC及びCmaxを算出した。
【0164】
[実施例14]
75重量部の化合物Aを、203重量部のカプリル酸モノ/ジグリセリド、102重量部のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及び40重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例13と同様の方法にて、化合物A 20mgに相当する量の試料をカプセルに充填し、イヌに経口投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0165】
[実施例15]
50重量部の化合物Aを、237重量部のカプリル酸モノグリセリド、118重量部のモノラウリン酸デカグリセリル及び15重量部の無水エタノールに溶解し、試料を調製した。実施例13と同様の方法にて、化合物A 20mgに相当する量の試料をカプセルに充填し、イヌに経口投与した後、血漿中濃度推移を測定し、AUC及びCmaxを求めた。
【0166】
上記実施例13〜15で求めたAUC及びCmaxを表3に示す。
【0167】
【表3】

【0168】
表3の結果から明らかなように、化合物A(20mg相当)をカプリル酸モノ/ジグリセリド又はカプリル酸モノグリセリドに溶解させた組成物をカプセルに充填し、経口投与した場合においても、前述の十二指腸内投与及び空腸内投与と同様に良好なAUC及びCmaxが得られた。
【0169】
すなわち、化合物Aに代表される本化合物、及びカプリル酸モノ/ジグリセリド又はカプリル酸モノグリセリドに代表される親油性物質を含有する組成物については、これらをカプセルに充填し、経口投与した場合においても、本化合物の腸管吸収性を顕著に改善するものと考えられる。
【0170】
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
【0171】
処方例1 カプセル剤(内容量:200mg中)
化合物A 50mg
モノカプリル酸プロピレングリコール 148mg
無水エタノール 2mg
上記成分を混合して得られた溶液をカプセルに充填することで、カプセル剤を得ることができる。化合物Aの量、並びに添加剤の種類及び/又は量を適宜変更することで、化合物Aの内容量の異なる所望のカプセル剤を得ることもできる。
【0172】
処方例2 液剤(210mg中)
化合物A 25mg
カプリル酸モノ/ジグリセリド 113.5mg
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 56.5mg
無水エタノール 15mg
化合物Aの量、並びに添加剤の種類及び/又は量を適宜変更することで、化合物Aの内容量の異なる所望の液剤を得ることもできる。
【0173】
処方例3 錠剤(200mg中)
化合物A 50mg
モノカプリル酸プロピレングリコール 2mg
乳糖 95mg
トウモロコシデンプン 40mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 6mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
上記処方の錠剤にコーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、タルク、酸化チタン、シリコーン樹脂等のコーティング剤)3mgを用いてコーティングを施し、目的とする錠剤を得ることができる。また、化合物Aの量、並びに添加物の種類及び/又は量を適宜変更することで、化合物Aの内容量の異なる所望の錠剤を得ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、本化合物の腸管吸収性を改善する医薬組成物を提供するものとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式[1]で表される化合物又はその塩、及び(b)親油性物質を含有する医薬組成物。
【化1】

[式中、Aが、−(NR)−、−(CR)−又は−O−を示し;Bが鎖中に、−O−、−S−、−(NR)−、−CO−、−N=若しくは
【化2】

を含有してもよいアルキレン基又はアルケニレン基を示し、該アルキレン基及びアルケニレン基はヒドロキシ基、アルコキシ基、アリール基、シロキシ基又は飽和若しくは不飽和の複素環で置換されていてもよく、Aと結合して飽和の複素環を形成してもよく;Rが水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヒドロキシ基又はアミノ基を示し、該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アダマンチル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基又は飽和若しくは不飽和の複素環で置換されていてもよく、上記された各アミノ基、ヒドロキシ基及びアミノカルボニル基の水素原子はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールアルコキシカルボニル基、ハロゲノアルコキシカルボニル基、不飽和の複素環又は不飽和の複素環で置換されたアルキル基で置換されていてもよく;Rがアダマンチルアルキル基、アダマンチルオキシアルキル基、アダマンチルアミノアルキル基又はアダマンチルアミノカルボニルアルキル基を示し;Rが不飽和の複素環を示し;Rが水素原子、アルキル基、アダマンチルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基又はアルコキシカルボニルアミノ基を示し;R及びRが同一又は異なって水素原子、アルキル基、アミノ基又はアルコキシカルボニルアミノ基を示し;Rが水素原子又はアルキル基を示し;Xが酸素原子又は硫黄原子を示し;nが1〜5の整数を示す。]
【請求項2】
がアダマンチルアルキル基を示し、Rがピリジン環を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
Aが−(NR)−又は−(CR)−を示し;Bが鎖中に−S−若しくは
【化3】

を含有してもよいアルキレン基又はアルケニレン基を示し;Rがアルキル基又はアルケニル基を示し、該アルキル基及びアルケニル基はハロゲン原子又はアミノ基で置換されていてもよく、さらに該アミノ基はアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はシクロアルキルオキシカルボニル基で置換されていてもよく;Rがアダマンチルアルキル基を示し;Rがピリジン環を示し;Rが水素原子を示し;R及びRが水素原子を示し;Xが酸素原子を示し;nが1を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
一般式[1]で表される化合物又はその塩が、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]−1−(3,3,3−トリフルオロプロピル)ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−(2−ブテニル)−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・1−[3−(1−アダマンチル)プロピル]−1−プロピル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・(Z)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレア、
・(−)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[1−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
・(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・5−(4−ピリジル)吉草酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・3−(4−ピリジルメチルチオ)プロピオン酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・2−[2−(4−ピリジル)エチルチオ]酢酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・6−(4−ピリジル)カプロン酸 N−[2−(1−アダマンチル)エチル]−N−ペンチルアミド、
・cis−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[2−(4−ピリジル)シクロプロピルメチル]ウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
・1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−[2−[N−(t−ブトキシカルボニル)−N−メチルアミノ]エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア、
・(E)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレアおよび
・(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア
よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物又はその塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
(a)1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア又はその塩、及び(b)親油性物質を含有する医薬組成物。
【請求項6】
該親油性物質が、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1〜5記載の組成物。
【請求項7】
該親油性物質が、モノカプリル酸プロピレングリコール、カプリル酸モノグリセリド及びカプリル酸モノ/ジグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
該親油性物質が、モノカプリル酸プロピレングリコールである、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
可溶化剤及び/又は界面活性剤を含有する、請求項7記載の組成物。

【公開番号】特開2010−120930(P2010−120930A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242956(P2009−242956)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】