説明

膜ろ過処理システム

【課題】粒状活性炭等を膜ろ過装置の前段で分離あるいは回収することで膜の目詰まりを抑制しながら、溶解性成分や微量有害物質を吸着除去することを課題とする。
【解決手段】水源から取水した原水を貯留する着水井2と、前記着水井に活性炭を供給する活性炭添加設備8と、処理すべき原水に含まれる活性炭を水から分離する固液分離装置3と、凝集剤を供給する凝集剤添加設備9と、フロックを形成させるためのフロック形成池5と、水と不溶解性成分を分離する膜ろ過装置6とを備え、前記着水井の後段に前記固液分離装置が設置されていることを特徴とする膜ろ過処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場における水処理プロセスにおいて、活性炭と膜ろ過を組み合わせて水と不溶解性成分または水と溶質成分を分離する膜ろ過処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場において、活性炭処理は、緩速ろ過、急速ろ過、膜ろ過といった不溶解性成分を対象とした処理プロセスでは除去できない溶解性成分、例えば、2−メチルイソボルネオール(2−MIB)、ジェオスミン等の異臭味成分や、陰イオン界面活性剤、フェノール類、トリハロメタン及びその前駆物質、トリクロロエチレン等の低沸点有機塩素化合物、農薬などの微量有害物質を吸着除去する目的で導入されている。浄水場で用いられる活性炭には粒状活性炭と粉末活性炭、さらに粉末活性炭を微細化した微粉炭があり、それぞれ粒径、使用法が異なっている。
【0003】
粉末活性炭あるいは微粉炭と膜ろ過を併用する技術としては、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1は、活性炭供給装置を原水の臭気濃度に応じた時間ずつ間欠運転し、膜モジュール内に保持される粉末活性炭により臭気を吸着させるものである。特許文献1には、粉末活性炭として、平均粒径が20μm以下の微粉炭を使用することが好ましい旨記載されている。しかしながら、特許文献1のように、粉末活性炭や微粉活性炭と膜ろ過を併用した場合、活性炭の微細な粉末により膜の目詰まりを引き起こすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−229581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、粒状活性炭、粉末活性炭、微粉炭を膜ろ過装置の前段で分離あるいは回収することで膜の目詰まりを抑制しながら、溶解性成分、例えば、2−MIB、ジェオスミン等の異臭味成分や、陰イオン界面活性剤、フェノール類、トリハロメタン及びその前駆物質、トリクロロエチレン等の低沸点有機塩素化合物、農薬などの微量有害物質を吸着除去する膜ろ過処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膜ろ過処理システムは、水源から取水した原水を貯留する着水井と、前記着水井に活性炭を供給する活性炭添加設備と、処理すべき原水に含まれる活性炭を水から分離する固液分離装置と、凝集剤を供給する凝集剤添加設備と、フロックを形成させるためのフロック形成池と、水と不溶解性成分を分離する膜ろ過装置とを備え、前記着水井の後段に前記固液分離装置が設置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る膜ろ過処理システムは、水源から取水した原水を貯留する着水井と、前記着水井に活性炭を供給する活性炭添加設備と、処理すべき原水に含まれる活性炭を水から分離する固液分離装置と、凝集剤を供給する凝集剤添加設備と、フロックを形成させるためのフロック形成池と、水と溶質成分を分離する膜ろ過装置とを備え、前記フロック形成池の後段に前記固液分離装置が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粒状活性炭、粉末活性炭、微粉炭を膜ろ過装置の前段で分離あるいは回収することで膜の目詰まりを抑制しながら、溶解性成分や低沸点有機塩素化合物、農薬などの微量有害物質を吸着除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図2】本発明の実施例2に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図3】本発明の実施例7に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図4】本発明の実施例8に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図5】本発明の実施例9に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図6】本発明の実施例10に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図7】本発明の実施例11に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図8】本発明の実施例12に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図9】本発明の実施例14に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図10】本発明の実施例15に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図11】本発明の実施例16に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図12】本発明の実施例17に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図13】本発明の実施例18に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【図14】本発明の実施例19に係る膜ろ過処理システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る膜ろ過処理システムについて更に詳しく説明する。
本発明において、活性炭添加設備に収容される活性炭としては、平均粒径150μm以上の粒状活性炭、もしくは平均粒径150μm未満の粉末活性炭、もしくは粉末活性炭を微細化した平均粒径20μm未満の微粉炭が挙げられる。
【0011】
粒状活性炭は、一般に、急速ろ過プロセスにおける砂ろ過の後段に設置され、カラムに1〜2mの厚さでろ過槽に充填される。除去対象は、低分子量の着色成分(分子量:約1500以下)や、その他の有機化合物である。粒状活性炭は吸着とともに活性炭の破過が進む。破過とは、吸着速度と脱着速度がつりあって平衡となり、吸着能力を示さなくなった状態を表す。粒状活性炭は回収により再生が可能である。再生方法としては、900℃前後の高温で水蒸気を用いて活性化する水蒸気賦活法と、塩化亜鉛、硫酸等の薬品に浸漬した後、炭化させる薬品賦活法が知られている。薬品賦活法は処理水中に亜鉛などの薬品が溶出することがあるため、浄水処理用の活性炭再生には水蒸気賦活法が主流となっている。再生された活性炭の吸着能力は、新品の活性炭と比べて劣り、再生操作を繰り返すと徐々に吸着能力は低下していく。粒状活性炭による処理は、対象物質を恒久的に除去する際に用いられる。
【0012】
粉末活性炭は、浄水場では、特に粒径75μm以下の水蒸気賦活法で作られたものが多く用いられる。渇水時や夏季に藻類および放線菌の増殖により生じる臭気発生時や、水質事故などによる一時的な原水水質悪化時に、原水に粉末活性炭を投入して吸着除去する。一般に、取水井や着水井などの凝集沈殿より前のプロセスに適用される。粉末活性炭はその粒径の細かさから回収が難しいため再生処理も困難である。通常、粉末活性炭は凝集沈殿槽でフロック化され、沈降、分離される。粉末活性炭は、夏季の臭気発生時や緊急・非常時の一時的な対策として用いられる。微粉炭は、通常の粉末活性炭に比べ比表面積が大きいため、投入量を抑制することができる。
【0013】
次に、本発明に係る膜ろ過処理システムの具体的な例について図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1を参照する。
図中の符番1は、沈砂池である。この沈砂池1の下流側には、着水井2、固液分離装置3、混和池4、フロック形成池5、膜ろ過装置6、浄水池7が順次接続されている。着水井2には、平均粒径150μm未満の粉末活性炭を供給する活性炭添加設備8が接続されている。前記混和池4には、凝集剤を供給する凝集剤添加設備9が接続されている。ここで、着水井2は、水源から取水した原水を貯留する機能を有する。固液分離装置3は、処理すべき原水に含まれる活性炭を水から分離する機能を有する。混和池4は、粉末活性炭を分離した原水と凝集剤添加設備9からの凝集剤を攪拌するための機能を有する。フロック形成池5は、固液分離装置3で分離されなかった微細な活性炭のフロックを成長させるための機能を有する。膜ろ過装置6には精密ろ過膜または限外ろ過膜等が配置され、水と不溶解性成分が分離される。
【0014】
次に、図1のろ過膜処理システムの作用について説明する。
原水は水源から取水され、沈砂池1を経て着水井2に一時的に貯留される。原水の水質状況に応じて、活性炭添加設備8により活性炭を着水井2に投入し、不溶解性成分の吸着除去を行う。投入する活性炭の量は、取水水質の状況に応じて調整する。活性炭が供給された原水は、固液分離装置3へ導入され、活性炭が分離・回収される。分離されなかった微細な活性炭(微粉炭)は凝集剤添加設備9により供給される凝集剤と混和池4で混和されてフロックを生成し、フロック形成池5で成長する。膜ろ過装置6に供給された活性炭を含むフロックは膜ろ過装置6に配置された精密ろ過膜、限外ろ過膜などにより分離され、膜の処理水等による定期的な逆洗により膜面から除去される。膜ろ過装置6で処理された処理水は、浄水池7に送られる。浄水池7には消毒剤10が供給される。
【0015】
実施例1に係るろ過膜処理システムは、図1に示すように、沈砂池1と、この沈砂池1の下流側に順次配置された、着水井2、固液分離装置3、混和池4、フロック形成池5、膜ろ過装置6、浄水池7と、粉末活性炭を着水井2に供給する活性炭添加設備8と、凝集剤を混和池4に供給する凝集剤添加設備9を備えた構成になっている。このシステムによれば、以下に述べる効果が得られる。
【0016】
膜ろ過装置6の上流側に配置された固液分離装置3で活性炭を分離することで、膜の目詰まりを抑制しながら、溶解性成分、例えば、2−MIB、ジェオスミン等の異臭味成分や、陰イオン界面活性剤、フェノール類、トリハロメタン及びその前駆物質、トリクロロエチレン等の低沸点有機塩素化合物、農薬などの微量有害物質を吸着除去することができる。特に、凝集剤を添加する前に分離・回収された活性炭は凝集剤を添加したものに比べて再生が容易であるため、分離回収した活性炭を再利用することができる。
【0017】
なお、上記実施例1では、混和池に凝集剤添加設備から凝集剤を直接供給する場合について述べたが、これに限らず、固液分離装置とフロック形成池を接続する配管に凝集剤を注入してもよい。この場合、混和池を省略することができる。
【0018】
(実施例2)
図2を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
沈砂池1の下流側には、着水井2、混和池4、フロック形成池5、固液分離装置3、膜ろ過装置16、浄水池7が順次配置されている。混和池4には、凝集剤添加設備9が接続されている。膜ろ過装置16は、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などにより、水と溶質成分を分離する機能を有する。
【0019】
次に、図2のろ過膜処理システムの作用について説明する。
原水は水源から取水され、沈砂池1を経て着水井2に一時的に貯留される。原水の水質状況に応じて、活性炭添加設備8により粉末活性炭を着水井2に投入し、不溶解性成分の吸着除去を行う。投入する粉末活性炭の量は、取水水質の状況に応じて調整する。原水に投入された粉末活性炭は、凝集剤添加設備9により供給される凝集剤と混和池4で混和されてフロックを生成し、フロック形成池5で成長する。粉末活性炭を含む成長したフロックは固液分離装置3へ導入され、粉末活性炭が分離・回収される。固液分離されなかった微細な活性炭(微粉炭)は膜ろ過装置16に供給され、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などにより分離され、膜の処理水等による定期的な逆洗により膜面から除去される。
【0020】
実施例2に係るろ過膜処理システムは、図2に示すように、沈砂池1と、この沈砂池1の下流側に順次配置された、着水井2、混和池4、フロック形成池5、固液分離装置3、膜ろ過装置16、浄水池7と、粉末活性炭を着水井2に供給する活性炭添加設備8と、凝集剤を混和池4に供給する凝集剤添加設備9を備えた構成になっている。このシステムによれば、以下に述べる効果が得られる。
【0021】
膜ろ過装置16の前段の固液分離装置3で大部分の粉末活性炭を分離することで、膜の目詰まりを抑制しながら、溶解性成分、例えば、2−MIB、ジェオスミン等の異臭味成分や、陰イオン界面活性剤、フェノール類、トリハロメタン及びその前駆物質、トリクロロエチレン等の低沸点有機塩素化合物、農薬などの微量有害物質を吸着除去することができる。
【0022】
(実施例3)
本実施例3は、実施例1と比べて固液分離装置の構成のみ異なり、他は実施例1と同様な構成であり、各部材の配置は図1に示すとおりである。
本実施例3の固液分離装置は、活性炭を水との比重差と遠心力を利用して水と活性炭とに分離する液体サイクロンであり、流入する液体の旋回力によって生じる遠心力によって固液分離を行う装置である。なお、液体サイクロンで分離・回収できるのは、粒状活性炭と粉末活性炭のうち粒径の大きいものである。例えば、比重2.6〜2.7の珪砂の場合、20μmまで液体サイクロンで分離・回収することができる。従って、活性炭の再利用を前提とした回収を行う場合には、粒状活性炭が望ましい。また、本実施例3の固液分離装置では、固体に加わる遠心力を分離に利用しているため、対象粒子の粒径や比重、形状といった因子が分離性能に影響する。
本実施例3に係るろ過膜処理システムの作用は、固液分離装置での水と活性炭の分離の仕方を除いて、実施例1の場合と同様である。実施例3によれば、実施例1と同様の効果の他、固液分離装置が液体サイクロンであるため、稼動部分がなく、構造が単純であるので、床占有面積あたりの処理能力が大きいといった効果が得られる。
【0023】
(実施例4)
本実施例4は、実施例2と比べて固液分離装置の構成のみ異なり、他は実施例2と同様な構成であり、各部材の配置は図2に示すとおりである。
本実施例4の固液分離装置は、活性炭を水との比重差と遠心力を利用して水と活性炭とに分離する液体サイクロンであり、流入する液体の旋回力によって生じる遠心力によって固液分離を行う装置である。なお、粒状活性炭等に関する考察は実施例3で述べたとおりである。
本実施例4に係るろ過膜処理システムの作用は、固液分離装置での水と活性炭の分離の仕方を除いて、実施例2の場合と同様である。実施例4によれば、実施例2と同様の効果の他、稼動部分がなく、構造が単純であるので、床占有面積あたりの処理能力が大きいといった効果が得られる。
【0024】
(実施例5)
本実施例5は、実施例1と比べて固液分離装置の構成のみ異なり、他は実施例1と同様な構成であり、各部材の配置は図1に示すとおりである。
本実施例5の固液分離装置は、金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタにより、水と活性炭とに分離する機能を有している。ここで、膜フィルタの目開きは、活性炭の粒径に応じて、活性炭の粒径よりも小さなものを選択することが望ましい。金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタにより分離された活性炭は、膜フィルタの透過水または膜の処理水等による定期的な逆洗によりフィルタ面より分離される。
本実施例5に係るろ過膜処理システムの作用は、実施例1の場合と同様である。実施例5によれば、実施例1と同様の効果が得られる。
【0025】
(実施例6)
本実施例6は、実施例2と比べて固液分離装置の構成のみ異なり、他は実施例2と同様な構成であり、各部材の配置は図2に示すとおりである。
本実施例6の固液分離装置は、金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタにより、水と活性炭とに分離する機能を有している。ここで、膜フィルタの目開きは、活性炭の粒径に応じて、活性炭の粒径よりも小さなものを選択することが望ましい。金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタにより分離された活性炭は、膜フィルタの透過水または膜の処理水等による定期的な逆洗によりフィルタ面より分離される。
本実施例6に係るろ過膜処理システムの作用は、実施例2の場合と同様である。実施例6によれば、実施例2と同様の効果が得られる。
【0026】
(実施例7)
図3を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例7は、実施例1(図1参照)と比べ、固液分離装置3として金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタにより、水と活性炭とに分離する機能を有した固液分離装置を用いる点、着水井2と固液分離装置3を接続する配管21aにプレコート槽22及びプレコート剤添加設備23を順次接続させた点、及びプレコート液を固液分離装置3とプレコート槽22間で循環させる点が異なり、他は実施例1と同様な構成である。ここで、プレコート剤添加設備23はプレコート助剤をプレコート槽22に供給するものである。プレコート槽22は、プレコート助剤とプレコート液を混合するものである。
【0027】
実施例7の作用は、プレコート助剤の導入、プレコート液の循環の点を除き、実施例1のそれと基本的に同様であるので、相違点のみ説明する。プレコート助剤には、珪藻土や活性炭などを原水の性状に応じて選定する。プレコート助剤をプレコート槽22に供給して、プレコート液と充分に攪拌、混合する。このプレコート液を図示しないポンプで固液分離装置3の膜フィルタに送液し、固液分離装置3とプレコート槽22間を循環させる。プレコート助剤は、前記膜フィルタの膜面に堆積し、プレコート層を作る。プレコート層で分離された活性炭は、膜フィルタの透過水または膜の処理水等による定期的な逆洗により、プレコート層とともにフィルタ面より分離される。
【0028】
実施例7によれば、膜ろ過装置6の上流側の金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタを備えた固液分離装置3で活性炭を分離することで、膜の目詰まりを抑制しながら、溶解性成分、例えば、2−MIB、ジェオスミン等の異臭味成分や、陰イオン界面活性剤、フェノール類、トリハロメタン及びその前駆物質、トリクロロエチレン等の低沸点有機塩素化合物、農薬などの微量有害物質を吸着除去することができる。特に、凝集剤を添加する前に分離・回収された活性炭は凝集剤を添加したものに比べて再生が容易であるため、分離回収した活性炭を再利用することができる。
【0029】
(実施例8)
図4を参照する。但し、図1、図3と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例8は、実施例2(図2参照)と比べ、固液分離装置として金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタにより、水と活性炭とに分離する機能を有した固液分離装置を用いる点、フロック形成池5と固液分離装置3を接続する配管21bにプレコート槽22及びプレコート剤添加設備23を順次接続させた点、及びプレコート液を固液分離装置3とプレコート槽22間で循環させる点を除いて実施例2と同様な構成である。
実施例8の作用、効果は実施例7と同様である。
【0030】
(実施例9)
図5を参照する。但し、図1、図3、図4と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例9は、実施例7(図3参照)と比べ、固液分離装置3とプレコート剤添加設備23とを循環配管21cで接続し、プレコート剤添加設備23、プレコート槽22及び固液分離装置3をループ状に接続させた点、及び循環配管21cから分岐した循環配管21dにより固液分離装置3と活性炭添加設備8を接続させた点が異なり、他の構成は実施例7と同様である。
【0031】
実施例9においては、実施例7と同様な効果が得られる他、プレコート剤添加設備23、プレコート槽22及び固液分離装置3を循環配管21cによりループ状に接続させるとともに、固液分離装置3と活性炭添加設備8を循環配管21c、21dにより接続した構成にすることにより、固液分離装置3で分離した活性炭を再利用でき、活性炭添加設備8での活性炭使用量を抑制できるという効果を有する。
【0032】
(実施例10)
図6を参照する。但し、図1、図4、図5と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例10は、実施例8(図4参照)と比べ、固液分離装置3とプレコート剤添加設備23とを循環配管21cで接続し、プレコート剤添加設備23、プレコート槽22及び固液分離装置3をループ状に接続させた点、及び循環配管21cから分岐した循環配管21dにより固液分離装置3と活性炭添加設備8を接続させた点が異なり、他の構成は実施例8と同様である。
【0033】
実施例10においては、実施例8と同様な効果が得られる他、プレコート剤添加設備23、プレコート槽22及び固液分離装置3を循環配管21cによりループ状に接続させるとともに、固液分離装置3と活性炭添加設備8を循環配管21c、21dにより接続した構成にすることにより、固液分離装置3で分離した活性炭を再利用でき、活性炭添加設備8での活性炭使用量を抑制できるという効果を有する。
【0034】
(実施例11)
図7を参照する。但し、図1、図3、図5と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例11は、実施例9(図5参照)と比べ、固液分離装置3とプレコート剤添加設備23を接続する循環配管21cに活性炭を再生する機能を有する再生設備24を介装した点が異なり、他は実施例9と同様である。実施例11によれば、実施例9と同様な効果が得られる他、プレコート剤添加設備23、プレコート槽22、固液分離装置3及び再生装置24を循環配管21cによりループ状に接続させるとともに、固液分離装置3と再生装置24と活性炭添加設備8を循環配管21c、21dにより接続した構成にすることにより、再生装置24により活性炭を再生できるので、実施例9と比べて活性炭添加設備8での活性炭使用量をいっそう抑制できるという効果を有する。
【0035】
(実施例12)
図8を参照する。但し、図1、図2、図4、図6、図7と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例12は、実施例10(図6参照)と比べ、固液分離装置3とプレコート剤添加設備23を接続する循環配管21cに活性炭を再生する機能を有する再生設備24を介装した点を除き、他は実施例10と同様である。実施例12によれば、実施例10と同様な効果が得られる他、プレコート剤添加設備23、プレコート槽22及び固液分離装置3を循環配管21cによりループ状に接続させるとともに、固液分離装置3と活性炭添加設備8を循環配管21c、21dにより接続した構成にすることにより、再生装置24により活性炭を再生できるので、実施例10と比べて活性炭添加設備8での活性炭使用量をいっそう抑制できるという効果を有する。
【0036】
(実施例13)
本実施例13では、上記実施例1〜12において、活性炭として平均粒径20μm未満の微粉炭を活性炭添加設備から着水井に供給する場合について実施した。実施例13によれば、微粉炭を用いることにより、比表面積が大きくなり、活性炭の投入量を抑制することができる。
【0037】
(実施例14)
図9を参照する。但し、図1、図3、図5、図7と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例14は、実施例11(図7参照)と比べ、沈砂池1と着水井2を接続する配管21eの途中と活性炭添加設備8間の配管、及び着水井2と固液分離装置3を接続する配管21aの途中と活性炭添加設備8間の配管に夫々水質を検知する計測計25,26を設けた点が異なり、他は実施例11と同様である。計測計は、オンライン測定できることが望ましく、例えば、濁度計、紫外吸光光度計、蛍光強度計などを用いることができる。
実施例14によれば、計測計25,26の配置により活性炭添加設備8からの活性炭の投入量を制御でき、過剰な活性炭注入を抑制して使用量を適正化することができる。なお、計測計の配置は、計測計25,26のいずれか一方でもよい。
【0038】
(実施例15)
図10を参照する。但し、図2、図4、図6、図8、図9と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例15は、実施例12(図8参照)と比べ、沈砂池1と着水井2を接続する配管21eの途中と活性炭添加設備8間の配管、及び着水井2と混和池4を接続する配管21fの途中と活性炭添加設備8間の配管に夫々水質を検知する計測計25,26を設けた点を除き、他は実施例12と同様である。計測計は、実施例14の場合と同様であり、計測計25,26のいずれか一方を配置してもよい。実施例15によれば、実施例14と同様な効果が得られる。
【0039】
(実施例16)
図11を参照する。但し、図1、図3、図4、図5、図7、図9と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例16は、実施例14(図9参照)と比べ、固液分離装置3と混和池4を接続する配管21gの途中と凝集剤添加設備9間の配管、及び混和池4とフロック形成池5を接続する配管21hの途中と凝集剤添加設備9間の配管に夫々水質を検知する計測計27,28を設けた点が異なり、他は実施例14と同様である。ここで、計測計としては、オンライン測定できることが望ましく、例えば、濁度計、流動電流計などを用いることができる。
【0040】
実施例16によれば、計測計27,28の配置により凝集剤添加設備9からの凝集剤の投入量を制御でき、過剰な凝集剤注入を抑制して使用量を適正化することができる。なお、計測計の配置は、計測計27,28のいずれか一方でもよい。
【0041】
(実施例17)
図12を参照する。但し、図2、図4、図6、図8、図10、図11と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例17は、実施例15(図10参照)と比べ、着水井24と混和池4を接続する配管21fの途中と凝集剤添加設備9間の配管、及び混和池4とフロック形成池5を接続する配管21iの途中と凝集剤添加設備9間の配管に夫々水質を検知する計測計27,28を設けた点が異なり、他は実施例15と同様である。計測計は、実施例16の場合と同様であり、計測計27,28のいずれか一方を配置してもよい。実施例17によれば、実施例16と同様な効果が得られる。
【0042】
(実施例18)
図13を参照する。但し、図1、図3、図5、図7、図9、図11と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例18は、実施例16(図11参照)と比べ、膜ろ過装置6に給湯装置29を接続した点が異なり、他は実施例16と同様である。給湯装置29は、膜ろ過装置6を原水より高い温度で定期的に洗浄する機能を有する。ここで、給湯装置29としては、省エネ機器であるヒートポンプや太陽光を利用したものであることが望ましい。実施例18によれば、膜ろ過装置6は通常の膜の処理水による逆洗に加え、定期的に原水よりも高い温度で洗浄することにより、膜面に付着した汚れとともに、微細な粉末活性炭を効果的に除去することができる。
【0043】
(実施例19)
図14を参照する。但し、図1、図2、図4、図6、図10〜図13と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施例19は、実施例17(図11参照)と比べ、膜ろ過装置6に給湯装置29を接続した点が異なり、他は実施例17と同様である。実施例19によれば、実施例18と同様の効果を有する。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。具体的には、上記実施例9〜19においては、プレコート剤添加設備、プレコート槽及び固液分離装置への循環ラインを用いる場合について述べたが、これに限らず、固液分離装置として液体サイクロンを用いる場合には前記循環ラインを省略することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…沈砂池、2…着水井、3…固液分離装置、4…混和池、5…フロック形成池、6,16…膜ろ過装置、7…浄水池、8…活性炭添加設備、9…凝集剤添加設備、22…プレコート槽、23…プレコート剤添加設備、24…再生設備、25〜28…計測計、29…給湯装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源から取水した原水を貯留する着水井と、
前記着水井に活性炭を供給する活性炭添加設備と、
前記着水井の下流側に配置されて処理すべき原水に含まれる活性炭を水から分離する,金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタと、
この膜フィルタの下流側に配置された混和池と、
この混和池に凝集剤を供給する凝集剤添加設備と、
前記混和池の下流側に配置され,活性炭と凝集剤により生成したフロックを成長させるためのフロック形成池と、
このフロック形成池の下流側に配置されて水と不溶解性成分を分離する、精密ろ過膜,限外ろ過膜,ナノろ過膜あるいは逆浸透膜のいずれかとを備えていることを特徴とする膜ろ過処理システム。
【請求項2】
水源から取水した原水を貯留する着水井と、
前記着水井に活性炭を供給する活性炭添加設備と、
前記着水井の下流側に配置された混和池と、
この混和池に凝集剤を供給する凝集剤添加設備と、
前記混和池の下流側に配置され,活性炭と凝集剤により生成したフロックを成長させるためのフロック形成池と、
このフロック形成池の下流側に配置されて処理すべき原水に含まれる活性炭を水から分離する,金属またはセラミックを主材料とする膜フィルタと、
この膜フィルタの下流側に配置されて水と溶質成分を分離する、精密ろ過膜,限外ろ過膜,ナノろ過膜あるいは逆浸透膜のいずれかとを備えていることを特徴とする膜ろ過処理システム。
【請求項3】
前記活性炭は、平均粒径150μm未満の粉末活性炭であることを特徴とする請求項1または2記載のろ過膜処理システム。
【請求項4】
プレコート助剤とプレコート液を混合するプレコート槽と、前記膜フィルタの上流側に接続された,プレコート槽にプレコート助剤を供給するプレコート剤添加設備とを有することを特徴とする請求項1または2記載の膜ろ過処理システム。
【請求項5】
前記膜フィルタと前記活性炭添加設備またはプレコート剤添加設備とを接続する循環配管を設け、膜フィルタで分離された活性炭が再利用される構成であることを特徴とする請求項4記載の膜ろ過処理システム。
【請求項6】
前記膜フィルタと前記活性炭添加設備またはプレコート剤添加設備とを接続する循環配管に、活性炭を再生する機能を有する再生設備が介装されていることを特徴とする請求項5記載の膜ろ過処理システム。
【請求項7】
前記活性炭添加設備から着水池への活性炭の注入点の前段および後段の少なくとも一方に、水質を検知する計測手段を有し、活性炭添加設備からの活性炭の投入量を調整する構成であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか一記載の膜ろ過処理システム。
【請求項8】
凝集剤を添加して攪拌するための混和池を前記膜フィルタの上流側又は下流側に備え、凝集剤添加装置から混和池への凝集剤の注入点の前段および後段の少なくとも一方に、水質を検知する計測手段を有し、凝集剤添加装置からの凝集剤の投入量を調整する構成であることを特徴とする請求項1乃至7いずれか一記載の膜ろ過処理システム。
【請求項9】
前記精密ろ過膜,限外ろ過膜,ナノろ過膜あるいは逆浸透膜のいずれかに、原水よりも高い温度で定期的に洗浄するための給湯装置が接続されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれか一記載の膜ろ過処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−232311(P2012−232311A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194702(P2012−194702)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2009−295622(P2009−295622)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】