説明

膜パターンの製造方法、それを用いた電子デバイス、電子放出素子、電子源及び画像表示装置の製造方法

【課題】下地膜を有する膜パターンの製造に際し、得られる膜パターンが基板全面で下地膜とのパターンの位置ズレを発生させることなく均一に得られるようにする。
【解決手段】下地膜上に、成膜成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成し、この樹脂パターンに成膜成分を含む溶液を吸収させ、高温乾燥して樹脂パターンを硬化させた後、樹脂パターンを保護膜にして下地膜をエッチングしてから樹脂パターンを焼成して膜パターンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニングされた導体膜として形成される電極、配線、電子放出素子構成部材などの形成や、薄膜トランジスタにおけるパターニングされた半導体膜などの形成に用いることができる金属酸化物の形成法に関する。また、それを用いた電子デバイス、電子放出素子、電子源及び画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に、感光性樹脂を用いて樹脂パターンを形成し、該樹脂パターンに金属成分を含む溶液を吸収させた後、当該樹脂パターンを焼成することで、基板上に導電性薄膜のパターンが得られることが知られている。そして、これを利用して、電子放出素子の製造、電子源の製造、さらには画像表示装置の製造を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−36781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法によって、同じパターンの下地膜を有する膜パターンを形成した場合、例えば20インチを超える高精細な画像表示装置で使用するときは、特に基板全面での下地膜とのパターンの位置ズレを生じやすい。このため、配線や電極などの形成に用いるにはパターン精度の上で十分満足できるものではない。
【0005】
本発明は、下地膜を有する膜パターンの製造に際し、得られる膜パターンが基板全面で下地膜とのパターンの位置ズレを発生させることなく均一に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下地膜を形成する工程と、
該下地膜上に、導電性膜又は半導電性膜の成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、
該樹脂パターンに前記導電性膜又は半導電性膜の成分を含む溶液を吸収させる吸収工程と、
該吸収工程後に、前記溶液を吸収した樹脂パターンを高温乾燥する樹脂硬化工程と、
該樹脂パターンを保護膜にして下地膜をエッチングする下地膜エッチング工程と、
前記樹脂パターンを焼成して、導電性膜又は半導電性膜の成分を含む膜パターンを形成することを特徴とする膜パターンの製造方法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、上記膜パターンの製造方法を用いた電子デバイス、電子放出素子、電子源及び画像表示装置の製造方法を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電性膜又は半導電性膜の成分を吸収した樹脂パターンを高温乾燥することで、樹脂パターンを硬化させる。そして、この硬化した樹脂パターンを保護膜にして下地膜をエッチングすることで、上記膜のパターンと、下地膜の位置ズレをなくすことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明においては、金属酸化物膜などの下地膜は、基板全面に形成することができる。
【0010】
この下地膜上に形成された、導電性膜又は半導電性膜の成分を吸収した樹脂パターンを高温乾燥することで、樹脂パターンを硬化させ、この硬化した樹脂パターンを保護膜にして下地膜のエッチングが可能である。このため、導電性膜又は半導電性膜のパターンの下にのみ、下地膜が存在するため微細な膜パターンの構成が可能となり、例えば表示装置の製造に利用した場合に、高精細化に対応することが可能となる。
【0011】
また、下地膜と導電性膜又は半導電性膜とを別々にパターニングする必要がないため、表示装置全面での位置ズレもなく、全面均一な高精細パターンを形成することが可能となる。
【0012】
本発明の実施の形態で用いる液体は、導電性膜又は半導電性膜を構成する成分を含むものである。焼成によって導電性膜又は半導電性膜を形成できるものであれば、有機溶剤を50重量%以上含む有機溶剤系溶媒を用いた有機溶剤系溶液でも、水を50重量%以上含む水系溶媒を用いた水系溶液でもよい。なお、本発明において、金属とは、合金をも含めて意味するものである。
【0013】
本発明によれば、導電性または半導電性の膜パターンを形成することができ、電極、配線、電子放出素子を構成する導電性部材、薄膜トランジスタにおけるパターニングされた半導電性膜の形成に用いることができる。具体的には、本発明は、電子デバイス、電子放出素子、電子源、画像表示装置などの製造に利用することができる。
【0014】
電子デバイスとは、少なくとも一部に導電性または半導電性の膜パターンを有する回路が設けられた基板を備えた装置で、例えば液晶表示パネル、コンピューターなどを挙げることができる。
【0015】
さらに本発明は、電子放出素子、該電子放出素子を複数備えた電子源および該電子源を用いた画像表示装置の製造に利用することができる。
【0016】
電子放出素子の例としては、絶縁性の基板上に対向して形成した一対の電極に接続して導電性薄膜を形成し、この導電性薄膜にフォーミングと称される通電処理を施した表面伝導型電子放出素子を挙げることができる。フォーミングは、導電性薄膜に間隙(亀裂)を形成する。この表面伝導型電子放出素子は、電極間に電圧を印加することで、導電性薄膜から電子放出を生じる。本発明は、上記表面伝導型電子放出素子だけでなく、構成部材として導電性の膜パターンを有する電子放出素子の製造にも用いることができる。この他の電子放出素子の例としては、「FE型」と称される電界放出型の電子放出素子や、「MIM型」と称される金属/絶縁層/金属型の構成を有する電子放出素子を挙げることができる。
【0017】
また、本発明は、基板上に、複数の電子放出素子と、この電子放出素子を駆動するための配線とを備えた電子源の製造にも利用することができる。即ち、電子放出素子および配線の少なくとも一部が導電性の膜パターンによって構成されている場合、該膜パターンの少なくとも一部を本発明の膜パターンの製造方法で形成することにより、当該電子源を製造することができる。
【0018】
さらに、本発明は、上記のように製造される電子源と、この電子源の電子放出素子より放出された電子線の照射により画像を表示する画像表示部材とを対向させて組み合わせて、画像表示装置を製造することができる。
【0019】
以下、さらに本発明を説明する。
【0020】
(1)下地膜(金属酸化物膜)の形成
本発明の下地膜としては、一般に金属酸化物膜が用いられる。この金属酸化物膜の形成は、後述する導電性膜又は半導電性膜の膜パターンを形成する前の基板上に行われる。形成方法の具体例としては、酸化物ターゲットを用いたスパッタ、金属ターゲットを用いて酸素雰囲気中での反応性スパッタ、金属酸化物膜形成用スピンコート液を基板上に塗布し高温焼成する方法がある。また、金属種を添加したアクリル酸樹脂を基板上に塗布し高温焼成する方法もある。本発明では形成方法は問わない。この金属酸化物膜は後工程でエッチングするため、この段階ではできるだけ均一膜厚にしておくことが好ましい。金属酸化物膜の形成は、バインダーと水溶性金属化合物を含む液体の塗布により行うこともできる。また、有機性金属化合物溶液の塗布で行うこともできる。
【0021】
金属酸化物膜の構成成分としては、ロジウム、ビスマス、バナジウム、クロム、錫、鉛、ケイ素、亜鉛、インジウム、ニッケル、コバルトから選択されるいずれかであることが好ましい。また、金属酸化物膜は、フッ素系溶液でエッチング可能なもの、キレート剤、エデト酸、クエン酸、フィチン酸でエッチング可能なものであることが好ましい。
【0022】
(2)樹脂パターン成材料
本発明で使用する樹脂パターンの形成材料としては、感光性樹脂を用いることができる。使用する感光性樹脂は、これを用いて形成した樹脂膜が、後述する導電性膜又は半導電性膜を構成する成分を含む液体を吸収可能なものであれば特に制限はなく、水溶性の感光性樹脂でも、溶剤溶解性の感光性樹脂でもよい。水溶性の感光性樹脂とは、後述する現像工程における現像を水もしくは水を50重量%以上含む現像剤で行うことができる感光性樹脂をいう。溶剤溶解性の感光性樹脂とは、現像工程における現像を有機溶剤もしくは有機溶剤を50重量%以上含む現像剤で行う感光性樹脂をいう。
【0023】
感光性樹脂としては、樹脂構造中に感光基を有するタイプのものであっても、例えば環化ゴム−ビスアジド系レジストのように、樹脂に感光剤が混合されたタイプのものでもよい。いずれのタイプの感光性樹脂成分においても、光反応開始剤や光反応禁止剤を適宜混合しておくことができる。また、現像液に可溶な感光性樹脂塗膜が光照射によって現像液に不溶化するタイプ(ネガタイプ)であっても、現像液に不溶な感光性樹脂塗膜が光照射によって現像液に可溶化するタイプ(ポジタイプ)であってもよい。
【0024】
本発明では、上記のように、一般の感光性樹脂を広く用いることができる。特に好ましくは、導電性膜又は半導電性膜を構成する成分の吸収を向上させ、材料の利用効率を高める上で、また、より形状の整ったパターンを形成できる点から、後述する溶液中の成膜成分と反応し、イオン交換可能な樹脂が好ましい。イオン交換が可能な樹脂とは、イオン交換基を有する樹脂で、とりわけ、形状の整ったパターンを形成しやすいことから、カルボン酸基を有するものが好ましい。また、良好な作業環境を維持しやすいこと、廃棄物の自然に与える負荷が小さいことなどから、水溶性の感光性樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
この水溶性の感光性樹脂としては、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、例えば乾燥速度を速めるためのメチルアルコールやエチルアルコールなどの低級アルコールを加えた現像剤を使用するものを用いることができる。また、50重量%未満の範囲で、例えば感光性樹脂成分の溶解促進や安定性向上などを図るための成分を加えた現像剤を使用するものも用いることができる。但し、環境負荷を軽減する観点から、水の含有率が70重量%以上の現像剤で現像できるものが好ましい。さらに好ましくは水の含有率が90重量%以上の現像剤で現像できるものであり、水だけを現像剤として現像できるものが最も好ましい。この水溶性の感光性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂やポリビニルピロリドン系樹脂などの水溶性の樹脂を用いたものを挙げることができる。
【0026】
(3)導電性膜又は半導電性膜を構成する成分を含む液体
本発明で用いる導電性膜又は半導電性膜を構成する成分を含む液体は、乾燥と焼成によって導電性膜又は半導電性膜を形成できるものであればよく、導電性膜又は半導電性膜を構成する成分としては、金属または金属化合物を用いることができる。電子デバイス、電子放出素子、電子源および画像表示装置の製造への利用を考慮すると、導電性膜又は半導電性膜の構成成分としては、金、銀、銅、ルテニウム、パラジウム、イリジウムから選択されるいずれかであることが好ましい。また、上記構成成分を含む液体は、有機溶剤を50重量%以上含む有機溶剤系溶媒を用いた有機溶剤系溶液でも、水を50重量%以上含む水系溶媒を用いた水系溶液でもよい。構成成分を含む液体は、例えば、水または有機溶剤に可溶性の金属錯体などの金属有機化合物を水系溶媒または有機溶剤系溶媒に溶解させることで容易に得ることができる。
【0027】
本発明で用いる上記液体としては、上記感光性樹脂と同様に、良好な作業環境を維持しやすいこと、廃棄物の自然に与える負荷が小さいことなどから、水系液体であることが好ましい。この水系液体の水系溶媒としては、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、例えば乾燥速度を速めるためのメチルアルコールやエチルアルコールなどの低級アルコールを加えたものとすることができる。また、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、上述した金属有機化合物の溶解促進や安定性向上などを図るための成分を加えたものとすることもできる。特に環境負荷を軽減する観点からは、水の含有率が70重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは水の含有率が90重量%以上であり、総て水であることが最も好ましい。
【0028】
また、上記金属錯体としては、樹脂の吸収した後、高温になることによって熱硬化することが必要である。熱硬化条件は、上記錯体吸収樹脂が硬化する温度であれば、温度は自由に設定することができ、保持時間の設定も自由である。いすれにしても熱硬化することで、フッ素系溶液耐性があること、キレート剤、エデト酸、クエン酸、フィチン酸耐性があることが好ましい。
【0029】
(4)導電性膜又は半導電性膜の膜パターンの製造方法
樹脂として感光性樹脂を用いた導電性膜又は半導電性膜又は導電性膜と半導電性膜とを含む膜パターンの形成は次の工程で行うことができる。即ち、以下に述べる樹脂パターン形成工程と、吸収工程と、必要に応じて行われる洗浄工程と、高温乾燥による樹脂硬化工程と、下地膜エッチング工程と、焼成工程と、必要に応じて行われるミリング工程を経て行うことができる。樹脂パターン形成工程は、塗布工程、乾燥工程、露光工程、現像工程から構成される。
【0030】
塗布工程は、膜パターンを形成すべき基板上に前述の感光性樹脂を塗布する工程である。この塗布は、各種印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷など)、スピンナー法、ディッピング法、スプレー法、スタンプ法、ローリング法、スリットコーター法、インクジェット法などを用いて行うことができる。
【0031】
乾燥工程は、上記塗布工程において基板上に塗布した感光性樹脂塗膜中の溶媒を揮発させて塗膜を乾燥する工程である。この塗膜の乾燥は、室温下で行うこともできるが、乾燥時間を短縮するために加熱下で行うことが好ましい。加熱乾燥は、例えば無風オーブン、乾燥機、ホットプレートなどを用いて行うことができる。塗布する電極・配線形成用組成物の配合や塗布量などによっても相違するが、一般的には50〜120℃の温度下に1〜30分間置くことで行うことができる。
【0032】
露光工程は、上記乾燥工程において乾燥された基板上の感光性樹脂膜を、所定のパターン、即ち、製造される膜のパターン(例えば所定の電極や配線の形状)に応じて露光する工程である。露光工程で光照射して露光する範囲は、使用する感光性樹脂がネガタイプであるかポジタイプであるかによって相違する。光照射によって現像液に不溶化するネガタイプの場合、樹脂膜の残すべき領域に光を照射して露光するが、光照射によって現像液に可溶化するポジタイプの場合、ネガタイプとは逆に、樹脂膜の残すべき領域以外の領域に光を照射して露光する。光照射領域と非照射領域の選択は通常のフォトレジストによるマスク形成における手法と同様にして行うことができる。
【0033】
現像工程は、上記露光工程で露光された感光性樹脂膜について、樹脂膜の残すべき領域以外の領域を除去する工程である。感光性樹脂がネガタイプの場合、光照射を受けていない感光性樹脂膜は現像液に可溶で、光照射を受けた露光部の感光性樹脂膜が現像液に不溶化する。このため、現像液に不溶化していない非光照射部の感光性樹脂膜を現像液で溶解除去することで現像を行うことができる。また、感光性樹脂がポジタイプの場合、光照射を受けていない感光性樹脂膜は現像液に対して不溶で、光照射を受けた露光部の感光性樹脂膜が現像液に可溶化する。このため、現像液に可溶化した光照射部の感光性樹脂膜を現像液で溶解除去することで現像を行うことができる。
【0034】
なお、水溶性の感光性樹脂を用いた場合、現像液としては、例えば、水や通常の水溶性フォトレジストに用いられる現像液と同様のものを用いることができる。また、有機溶媒樹脂の場合は、有機溶媒や溶剤系フォトレジストに用いられる現像液と同様のものを用いることができる。
【0035】
樹脂パターン中に、導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含ませる吸収工程は、上記で形成した樹脂パターンに前述した導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体を吸収させる工程である。吸収は、形成した樹脂パターンを前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体と接触させることで行われる。具体的には、例えば前記構成成分を含む液体に浸漬させるディッピング法や、樹脂パターンに例えばスプレー法やスピンコート法で前記構成成分を含む液体を塗布する塗布法などで行うことができる。前記構成成分を含む液体を接触させる以前に、例えば、前記水系液体を用いる場合に、前記水系溶媒を用いて樹脂パターンを膨潤させておくこともできる。
【0036】
洗浄工程は、樹脂パターンに前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体を吸収させた後、樹脂パターンに付着した余剰の液体や、樹脂パターン以外の箇所に付着した余剰の液体を除去・洗浄する工程である。この洗浄工程は、前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体中の溶媒と同様の洗浄液を用い、この洗浄液に前記樹脂パターンを形成した基板を浸漬する方法や、該洗浄液を前記樹脂パターンを形成した基板に吹き付けることなどによって行うことができる。
【0037】
樹脂硬化工程は、前記吸収工程後または必要に応じて行われる上記洗浄工程後に高温乾燥して、前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む樹脂を硬化させる工程である。高温乾燥は、例えば無風オーブン、乾燥機、ホットプレートなどを用いて行うことができる。
【0038】
下地膜エッチング工程は、現像され、乾燥された樹脂パターンをマスクとして、下地被膜をエッチングする工程である。
【0039】
焼成工程は、エッチング工程を経た樹脂パターンを焼成し、樹脂膜パターン中の有機成分を分解除去し、樹脂パターン中に含まれている前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分で膜パターンを形成する工程である。焼成は、貴金属で導電性膜のパターンを形成する場合には大気中で行うことができる。銅やパラジウムなどの酸化しやすい金属で導体性膜のパターンを形成する場合には、真空もしくは脱酸素雰囲気下(例えば窒素などの不活性ガス雰囲気下など)で行うこともできる。焼成する樹脂パターンは、ネガタイプでは光照射部の感光性樹脂膜、ポジタイプでは非光照射部の感光性樹脂膜である。
【0040】
焼成は、樹脂パターンに含まれる有機成分の種類などによっても相違するが、通常400℃〜600℃の温度下に数分〜数十分置くことで行うことができる。焼成は、例えば熱風循環炉、ベルト炉、タクト炉、ホットプレート、IR炉などで行うことができる。この焼成によって、基板上に、所定のパターンに沿った形状で、導電性膜又は半導電性膜又は導電性膜と半導電性膜とを含む膜を形成することができる。
【0041】
(5)電子放出素子の製造方法
本発明の膜パターンの製造方法は、前述したように、電子放出素子の製造方法として利用できるもので、表面伝導型電子放出素子の製造方法に用いる場合について以下に説明する。
【0042】
図1は、本発明の膜パターンの製造方法を用いて製造することができる電子放出素子の一構成例を模式的に示す図で、(a)は断面図、(b)は平面図である。図中、1は基板、2a,2bは電極、3は導電性薄膜、4は間隙である。
【0043】
図示されるように、本例の電子放出素子は、基板1上に形成した一対の電極2a,2bに間に跨って導電性薄膜3が形成されている。電極2a,2bおよび導電性薄膜3は、導電性の膜パターンとして形成されるもので、両者を形成した後、電極2a,2b間にフォーミングと称される通電処理を施すことにより、導電性薄膜3の一部に、間隙4が形成されたものとなっている。この電子放出素子は、通常、上記フォーミングの後、有機ガスの存在下で電極2a,2b間に電圧を印加し、間隙4およびその近傍に炭素を付着させる活性化処理により、電子放出効率が高められる。
【0044】
上記のように電極2a,2および導電性薄膜3は、導電性の膜パターンとして形成されることから、このうちの一方または両者を、本発明の膜パターン形成方法で形成することができる。
【0045】
(6)電子源および画像表示装置の製造方法
本発明の膜パターンの形成方法は、前述したように、電子源および画像表示装置の製造方法としても利用できるもので、表面伝導型電子放出素子を用いた電子源およびそれを用いた画像表表示装置の製造方法に用いる場合について以下に説明する。
【0046】
図2は、本発明の膜パターンの製造方法を用いて製造することができる電子源を用いた画像表示装置を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【0047】
電子源10は、基板11上に電極12a,12bと、間隙14を有する導電性薄膜13を備えた電子放出素子15を複数個、X・Y方向に配列し、Y方向配線(下配線)16とX方向配線(上配線)17で接続した単純マトリクス配置のものである。Y方向配線16には各電子放出素子15の電極2bが接続され、X方向配線17には各電子放出素子15の電極2aが接続されている。電子放出素子15は、基本的には図1に示されるものと同様で、基板11、電極12a,12b、導電性薄膜13および間隙14は、それぞれ図1における基板1、電極2a,2b、導電性薄膜3および間隙4に対応する。
【0048】
上記電子源10は、リアプレート18上に設けられている。このリアプレート18上に設けられた電子源10に対向して、内面側に蛍光膜19とメタルバック20が設けられたフェースプレート21が設けられている。リアプレート18とフェースプレート21間は、両者間の周囲を囲む支持枠23を介して封止されており、内部が真空雰囲気となっている。
【0049】
上記画像表示装置は、X方向配線17およびY方向配線16にそれぞれ接続された引き出し端子X〜X,Y〜Yを介して、選択された電子放出素子15の電極12a,12b間に電圧を印加する。これと共に、高圧端子22からメタルバック20に10〜15KVの高電圧を印加することで、上記選択された電子放出素子15から放出される電子線を対応する蛍光体19に照射して画像を表示するものとなっている。
【0050】
上記画像表示装置における電子源10は、次のようにして製造される。即ち、複数対の電極12a,12bと、該各対の電極12a,12b間を接続する導電性薄膜13と、各電極12b間を接続するY方向配線16と、各電極12a間を接続するX方向配線17とを形成する。そして、その後、各対の電極12a,12b間に通電し、各導電性薄膜13に間隙14を形成することで製造される。
【0051】
上記電極12a,12b、導電性薄膜13、Y方向配線16およびX方向配線17は、いずれも導電性の膜パターンとして形成可能であり、これらのいずれかまたは総てを本発明の膜パターン形成方法で形成することで、電子源10を製造することができる。また、得られた電子源10を、電子線の照射によって画像を表示する画像表示部材である蛍光膜19と対向配置することで、画像表示装置を製造することができる。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
[下地膜の形成]
酸化ビスマススピンコート液(豊島製作所製)を、ガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで1500rpm/30秒で全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。その後、熱風循環炉にて500℃1時間焼成した。
【0053】
得られた酸化ビスマス膜の膜厚は12.3nmであった。
【0054】
[電極の形成]
得られた酸化ビスマス膜上に感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)をスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。
【0055】
次いで、フォトマスクを用いて感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1600mW/cm)にて、スキャンスピード26mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3200(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0056】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Pt錯体(酢酸白金(II)モノエタノールアミン錯体・白金含有量0.5重量%)溶液に60秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0057】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のPt錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。
【0058】
この基板をホットプレートにおいて、200℃で15分間保持した。
【0059】
冷却後、バッファーフッ酸溶液0.9%で1分間浸し、下地の酸化ビスマス層をエッチングしたのち、純水で洗い流した。エッチング量は、酸化ビスマス膜はなく、さらにSiO層が8nmエッチングした。
【0060】
次いで熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0061】
得られた白金膜の直線状膜パターンの線幅を、線幅測定機で測定し、直線状膜パターンの直線性を、マスクパターンとのバラツキ(3σ/平均値、σ=標本標準偏差)で評価した。この線幅パターンは、線幅が6μm、8μm、10μm、20μm、50μmの5種類、長さは総て1000μmとし、各膜パターンの線幅を10μmピッチで90ポイント測定した。
【0062】
結果を表1に示す。
【0063】
(実施例2)
[下地膜の形成]
酸化ビスマススピンコート液(豊島製作所製)を、熱酸化膜100nmのSiウエハー(5インチ)にスピンコーターで1500rpm/30秒で全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。その後、熱風循環炉にて500℃1時間焼成した。
【0064】
得られた酸化ビスマス膜の膜厚は12.1nmであった。
【0065】
[電極の形成]
得られた酸化ビスマス膜上に感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)をスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。
【0066】
次いで、フォトマスクを用いて感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1600mW/cm)にて、スキャンスピード26mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3200(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0067】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Pt錯体〔テトラアンミン白金(II)酢酸水溶液、白金含有量1.0重量%〕溶液に60秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0068】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のPt錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。
【0069】
この基板をホットプレートにおいて、200℃で15分間保持した。
【0070】
冷却後、バッファーフッ酸溶液0.9%で1分間浸し、下地酸化ビスマス層をエッチングしたのち、純水で洗い流した。エッチング量は、酸化ビスマス膜はなく、さらにSiO2層が8nmエッチングした。
【0071】
次いで熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0072】
得られた白金膜の直線状膜パターンの線幅を、線幅測定機で測定し、直線状膜パターンの直線性を、マスクパターンとのバラツキ(3σ/平均値、σ=標本標準偏差)で評価した。この線幅パターンは、線幅が6μm、8μm、10μm、20μm、50μmの5種類、長さは総て1000μmとし、各膜パターンの線幅を10μmピッチで90ポイント測定した。
【0073】
結果を表1に示す。
【0074】
(実施例3)
[下地膜の形成]
PVAのジルコニウム溶液(Zr濃度0.5重量%)を、プリント基板(75mm×100mm)にスピンコーターで2000rpm/30秒で全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。その後、熱風循環炉にて250℃1時間焼成した。
【0075】
得られた酸化ビスマス膜の膜厚は8.3nmであった。
【0076】
[電極の形成]
得られた酸化ビスマス膜上に感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)をスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。
【0077】
次いで、フォトマスクを用いて感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1600mW/cm)にて、スキャンスピード26mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3200(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0078】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Ru錯体溶液に300秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0079】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のRu錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。
【0080】
この基板をホットプレートにおいて、200℃で15分間保持した。
【0081】
冷却後、バッファーフッ酸溶液0.9%で1分間浸し、下地酸化ビスマス層をエッチングしたのち、純水で洗い流した。エッチング量は、酸化ビスマク膜はなく、さらにSiO2層が8nmエッチングした。
【0082】
次いで熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0083】
得られた酸化ルテニウム膜の直線状膜パターンの線幅を、線幅測定機で測定し、直線状膜パターンの直線性を、マスクパターンとのバラツキ(3σ/平均値、σ=標本標準偏差)で評価した。この線幅パターンは、線幅が6μm、8μm、10μm、20μm、50μmの5種類、長さは総て1000μmとし、各膜パターンの線幅を10μmピッチで90ポイント測定した。
【0084】
結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
[下地膜の形成]
酸化ビスマススピンコート液(豊島製作所製)を、熱酸化膜100nmのSiウエハー(5インチ)にスピンコーターで1500rpm/30秒で全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。その後、熱風循環炉にて500℃1時間焼成した。
【0086】
得られた酸化ビスマス膜の膜厚は12.1nmであった。
【0087】
[電極の形成]
得られた酸化ビスマス膜上に感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)をスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。
【0088】
次いで、フォトマスクを用いて感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1600mW/cm)にて、スキャンスピード26mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3200(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0089】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Ru錯体〔トリス(2、2‘−ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物水溶液、白ルテニウム含有量0.2重量%〕溶液に180秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0090】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のPt錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。
【0091】
冷却後、バッファーフッ酸溶液0.9%で1分間浸し、下地酸化ビスマス層をエッチングしようとしたが、Ru浸漬したポリマーが剥離した。
【0092】
バッファーフッ酸溶液耐性がなかった。
【0093】
【表1】

【0094】
(実施例4)
本実施例は、図1に示したような電子放出素子の複数をマトリクス配線接続した図2に示したような電子源を製造した例である。以下、本実施例の電子源の製造方法を、図1乃至図6を参照しつつ説明する。
【0095】
[下地膜の形成と電極の形成]
実施例1で、フォトマスクを変更した以外は、全く同様の方法で行い、基板を作製した。この基板を観察した結果、下地の酸化ビスマス膜はPt膜に対して+0.7μm大きくパターニングされていた。これにより、白金薄膜からなる電極3a,3bが形成された(図3)。
【0096】
本実施例において、幅60μm、長さ480μmの電極3aと、幅120μm、長さ200μmの電極3bとを、電極間ギャップ20μm(即ち、導電性薄膜4の形成領域)で対向させたものとした。また、一対の電極は、そのピッチが、横方向300μm、縦方向650μm、その数は720×240としてマトリクス形状に配置した。
【0097】
[下配線の形成]
共通配線としてのY方向配線(下配線)24は、一方の電極3bに接して、かつそれらを連結するようにライン状のパターンで形成した。材料にはAgフォトぺーストインキを用い、スクリーン印刷した後、乾燥させてから、所定のパターンに露光し現像した。この後480℃前後の温度で焼成して下配線24を形成した(図4参照)。この下配線24の厚さは約10μm、幅は約50μmである。なお終端部は配線取り出し電極として使うために、線幅をより大きくした。
【0098】
[絶縁層の形成]
上下配線を絶縁するために、絶縁層25を形成する。後述のX方向配線(上配線)下に、先に形成したY方向配線(下配線)24との交差部を覆うように、かつ上配線(X配線)と他方の電極3aとの電気的接続が可能なように、接続部にコンタクトホールを開けて形成した(図5参照)。
【0099】
具体的には、PbOを主成分とする感光性のガラスペーストをスクリーン印刷した後、露光−現像した。これを4回繰り返し、最後に480℃前後の温度で焼成した。この絶縁層25の厚みは、全体で約30μmであり、幅は150μmである。
【0100】
[上配線の形成]
先に形成した絶縁層25の上に、Agペーストインキをスクリーン印刷した後乾燥させ、この上に再度同様に印刷を行い2度塗りしてから、480℃前後の温度で焼成してX方向配線(上配線)26を形成した(図6参照)。X方向配線26は絶縁層25を挟んでY方向配線24と交差しており、絶縁層25のコンタクトホール部分で電極3aとも接続されている。このX方向配線26の厚さは、約15μmである。図示していないが、外部駆動回路への取り出し電極部もこれと同様の方法で形成した。
【0101】
このようにして、基板21上に形成した複数の電極3a、3bをXYマトリクス配線接続した。
【0102】
次に、上記基板を十分にクリーニングした後、撥水剤を含む溶液で表面を処理し、表面が疎水性になるようにした。これはこの後塗布する導電性薄膜形成用の水溶液が、電極3a、3b上に適度な広がりをもって配置されるようにするためである。
【0103】
[導電性薄膜の形成]
次に、電極3a,3b間に導電性薄膜3を形成した。本工程を図9の模式図を用いて説明する。尚、基板21上における個々の電極の平面的ばらつきを補償するために、基板上の数箇所に於いてパターンの配置ずれを観測した。観測点間のポイントのずれ量は直線近似して位置補完し、導電性薄膜形成材料を塗付することによって、全画素の位置ずれをなくして、対応した位置に的確に塗付するようにした。
【0104】
導電性薄膜3としてパラジウム膜を得る目的で、先ず水85:イソプロピルアルコール(IPA)15からなる水溶液に、パラジウム−プロリン錯体0.15重量%を溶解し、有機パラジウム含有溶液を得た。この他若干の添加剤を加えた。この溶液の液滴を、液滴付与手段201として、ピエゾ素子を用いたインクジェット噴射装置を用い、ドット径が60μmとなるように調整して素子電極間に付与した(図9(a))。
【0105】
その後、この基板を空気中にて、350℃で10分間の加熱焼成処理をして酸化パラジウム(PdO)からなる導電性薄膜3が形成された(図9(b))。
【0106】
[フォーミング工程]
次にフォーミングと呼ばれる通電処理を行い、導電性薄膜3に間隙(亀裂)4を形成する(図9(c))。
【0107】
フォーミングに用いた電圧波形は図7(b)の様な三角パルス波形を用い、T1を0.1msec、T2を50msecとした。印加した電圧は0.1Vから始めて5秒ごとに0.1Vステップ程度ずつ増加させた。フォーミングの終了は、パルス電圧印加時に導電性薄膜に流れる電流を測定して抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示した時にフォーミングを終了した。
【0108】
フォーミングに要した消費電力は、1素子あたり、(a)1500mW、(b)400mW、(c)0.8mWであった。このように、フォーミング時に必要な消費電力が減少していた。また形成された間隙は、導電性薄膜3の中央に直線的に形成されており、間隙(亀裂)の長さ及び形状が均一に形成されていた。
【0109】
[活性化工程]
次にフォーミングと同様に、再び上記導電性薄膜3に通電処理を施す。今度は、雰囲気中に炭素化合物のガスを導入し、それに由来する炭素あるいは炭素化合物を、前記間隙(亀裂)近傍に堆積させる。
【0110】
本工程では、炭素化合物としてトルニトリルを用いた。
【0111】
図8に、上記活性化工程で用いられる電圧印加の好ましい一例を示した。印加する最大電圧値は、10〜20Vの範囲で適宜選択される。
【0112】
図8(a)に於いて、T1は電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。また、図8(b)に於いて、T1およびT1’はそれぞれ電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、T1>T1’、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。
【0113】
このとき、電極3bに与える電圧を正としており、素子電流Ifは、電極3bから電極3aへ流れる方向が正である。約60分後に放出電流Ieがほぼ飽和に達した時点で通電を停止し、活性化処理を終了した。
【0114】
以上の工程で、基板上に多数の電子放出素子をマトリクス配線接続してなる電子源(図2)を作成することができた。
【0115】
次に、以上のようにして製造した単純マトリクス配置の電子源を用いて図2に示すような画像表示装置を製造した。
【0116】
図2において、10は上記の電子源、21ガラス基板の内面に蛍光膜19とメタルバック20が形成されたフェースプレート、23は支持枠である。リアプレート18、支持枠23及びフェースプレート21をフリットガラスによって接着し、480℃で、30分焼成することで、封着して、外囲器を得た。
【0117】
上記の外囲器に、走査回路・制御回路・変調回路・直流電圧源などからなる駆動回路を接続し、画像表示装置を製造した。
【0118】
X方向配線17とY方向配線16に引き出し端子X〜X,Y〜Yを通じて、時分割で所定電圧を印加し、高電圧端子22を通じてメタルバック20に高電圧を印加することによって、任意のマトリクス画像パターンを良好な画像品質で表示することができた。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の膜パターンの製造方法を用いて製造することができる電子放出素子の一構成例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の膜パターンの製造方法を用いて製造することができる電子源基板を用いた画像形成装置を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る電子源の製造工程の説明図である。
【図4】本発明の実施例に係る電子源の製造工程の説明図である。
【図5】本発明の実施例に係る電子源の製造工程の説明図である。
【図6】本発明の実施例に係る電子源の製造工程の説明図である。
【図7】フォーミング電圧の例を示す図である。
【図8】活性化電圧の例を示す図である。
【図9】本発明の実施例に係る電子源の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0120】
1 基板
2a 電極
2b 電極
3 導電性薄膜膜
4 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地膜を形成する工程と、
該下地膜上に、導電性膜又は半導電性膜の成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、
該樹脂パターンに前記導電性膜又は半導電性膜の成分を含む溶液を吸収させる吸収工程と、
該吸収工程後に、前記溶液を吸収した樹脂パターンを高温乾燥する樹脂硬化工程と、
該樹脂パターンを保護膜にして下地膜をエッチングする下地膜エッチング工程と、
前記樹脂パターンを焼成して、導電性膜又は半導電性膜の成分を含む膜パターンを形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項2】
前記下地膜が、金属酸化物膜であることを特徴とする請求項1に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項3】
金属酸化物の成分が、ロジウム、ビスマス、バナジウム、クロム、錫、鉛、ケイ素、亜鉛、インジウム、ニッケル、コバルトから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項4】
前記導電性膜又は半導電性膜の成分が、金、銀、銅、ルテニウム、パラジウム、イリジウムから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物膜の形成を、バインダーと水溶性金属化合物を含む液体の塗布により行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物膜の形成方法が、有機性金属化合物溶液の塗布で形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂パターンを、イオン交換可能な樹脂またはカルボン酸基を有する樹脂によって形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項8】
前記導電性膜又は半導電性膜の成分を含む溶液が、前記導電性膜又は半導電性膜の成分を含む錯体の溶液であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項9】
前記導電性膜又は半導電性膜の成分を含む溶液が、水系溶液であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項10】
前記下地膜が、フッ素系溶液でエッチング可能な金属酸化物膜であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項11】
前記下地膜が、キレート剤、エデト酸、クエン酸、フィチン酸でエッチング可能な金属酸化物膜であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法。
【請求項12】
少なくとも一部に導電性膜又は半導電性膜の膜パターンを有する回路が設けられた基板を備えた電子デバイスの製造方法であって、前記膜パターンの少なくとも一部を、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
構成部材として導電性膜の膜パターンを有する電子放出素子の製造方法であって、前記膜パターンを、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項14】
基板上に、一対の電極と、該電極間を接続する導電性薄膜とを形成した後、電極間に通電して、導電性薄膜に間隙を形成する電子放出素子の製造方法において、電極と導電性薄膜のいずれか一方または両者を、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項15】
基板上に設けられた複数の電子放出素子と、該電子放出素子を駆動するための配線とを備え、該電子放出素子および配線の少なくとも一部が導電性膜の膜パターンによって構成された電子源の製造方法において、前記膜パターンの少なくとも一部を、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子源の製造方法。
【請求項16】
請求項15の電子源の製造方法により得られた電子源を、電子線の照射によって画像を表示する画像表示部材を有する基板と対向配置することを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−43511(P2009−43511A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206294(P2007−206294)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】