説明

膜分離活性汚泥処理方法

【課題】汚泥処理量の大量化による膜ろ過ユニット数の増加に伴う弊害をなくし、所要量の汚泥処理が維持される生物学的な膜分離活性汚泥処理方法を提供する。
【解決手段】ばっ気槽(4) に4基以上の膜ろ過ユニット(5) を所要の間隔をおいて直列状に浸漬配置する。処理方向の上流側から下流側にかけて膜ろ過ユニット(5) のろ過水吸引量と同膜ろ過ユニット(5) に対するエア放出量を順次増加させている。これにより、汚泥回収側の膜ろ過ユニット(5) の膜面に付着する固形物の付着量に対応して、同固形物を確実に膜面から剥離させることができ、同時に最も汚泥濃度の高い回収側の端部の汚泥濃度を高くして、回収された汚泥の廃棄処理を容易にし、且つ廃棄時の乾燥エネルギーの低減が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用排水や生活用排水中に含まれる有機物やその残骸、或いは微生物や細菌類を含む排水を生物化学的に処理して分離膜を用いて固液分離を行う膜分離活性汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の膜分離活性汚泥処理方法によれば、微細目スクリーンにて比較的大きな固形分が除去された排水(原水)が原水調整槽に導入される。この原水調整槽では、液面を液面計により測定し、第1送液ポンプを間欠駆動して槽内の液面高さを所定の範囲内となるように調整している。第1液送ポンプによって送られる原水は嫌気槽に導入されたのち、嫌気槽から溢流する原水を隣接するばっ気槽に流入させる。このばっ気槽には膜ろ過ユニットが浸漬して配されている。この膜ろ過ユニットにて活性汚泥と処理水とに膜分して、ろ過された処理水を吸引ポンプにより処理水槽へと送液する。余剰汚泥は汚泥貯留槽に貯蔵される。また、ばっ気槽の内部の汚泥の一部は第2液送ポンプによって上記嫌気槽へと返送されて循環する。
【0003】
前記膜ろ過ユニットは、例えば特開2000−51672号公報(特許文献1)に開示されているように、多数の多孔性中空糸を同一平面上に平行に並べたシート状の中空糸膜エレメントを、所要の間隔をおいて複数枚並べて得られる中空糸膜モジュールと、同中空糸膜モジュールの下方に配された散気発生装置とを備えている。前記中空糸膜モジュールは、複数枚の中空糸膜エレメントからなる全体形状が略直方体をなしている。一方の散気発生装置は、例えば金属、樹脂などからなるパイプに孔やスリットを設けた複数本の散気管を平行に配設し、各散気管の一端をばっ気ブロアに接続させている。ばっ気ブロアから送られるエアを散気発生装置を介して気泡に変えて汚泥中に放出する。生活排水、工場排水などの汚水を処理する場合、好気性微生物の存在下でばっ気槽の汚泥中の有機物に、散気装置から発生した空気と接触させることにより、前記有機物を前記好気性微生物に吸着・代謝分解させて、生物学的に汚泥処理がなされる。
【0004】
前記中空糸膜モジュールと散気発生装置とは上下が開口する矩形筒状の遮閉板により囲まれている。この遮閉板は、散気発生装置から発生する気泡の上昇により気液混合流を生成し、その流れを上昇流から下降流へと導くための壁部となる。散気発生装置から放出される気泡により発生した気液混合流は、斜め方向に飛散せず、まっすぐに上昇して中空糸膜モジュールに効率よく接触する。このとき、中空糸膜モジュールの膜面に対する気液混合流の一様な分散により、中空糸膜を振動させて各中空糸膜エレメントを均一に洗浄する。また、この気液混合流の発生時にエア中の酸素が溶解して上記生物学的処理を効率的に行うとともに、中空糸膜のろ過機能により汚泥を固形分と水とに分離する。前記膜ろ過ユニットには集水配管の一端が接続され、その他端には吸引ポンプが接続されており、この集水配管を通して、膜ろ過ユニットによってろ過された処理水(ろ過水)が吸引ポンプにより吸引されて処理水槽へと送液される。
【0005】
膜モジュールとしては、多孔性中空糸を構成部材とするシート状の中空糸膜エレメントの他にも、複数の微細な孔を有するろ過膜を備えたものであればよく、例えば平膜タイプ、管状膜タイプ、袋状膜タイプなどの種々の公知の分離膜を適用することができる。しかして、中空糸膜エレメントを使った中空糸膜モジュールは、ろ過面積が広くなることから多用されるようになった。また、その材質としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、セラミックスなどが挙げられる。
【0006】
上記多孔性中空糸に形成された微細孔の平均孔径は、一般に限外ろ過膜と呼ばれる膜で平均孔径0.001〜0.1μm、一般に精密ろ過膜と呼ばれる膜では平均孔径0.1〜1μmである。例えば、活性汚泥の固液分離に用いるときは、0.5μm以下の孔径であることが好ましく、浄水のろ過のように除菌が必要な場合は0.1μm以下の孔径であることが好ましい。
【0007】
膜分離活性汚泥処理装置は、原水を嫌気槽及びばっ気槽(好気槽、硝化槽)において活性汚泥を生物学的に浄化する。窒素の除去は、嫌気槽とばっ気槽との間で汚泥を循環させて、いわゆる硝化反応と脱窒反応にを繰り返すことによってなされる。BODに換算される有機物は、主としてばっ気槽4内に配置された膜ろ過ユニットの散気管から放出される空気により好気的に酸化され分解される。
【0008】
またリンの除去は、汚泥中の微生物(リン蓄積細菌)の作用によりポリリン酸として微生物体内に取り込まれることにより行われる。この微生物は好気状態においてリンを取り込み、嫌気状態において体内に蓄えたリンを放出する。リン蓄積細菌は、嫌気状態と好気状態に繰り返して晒されると、嫌気状態で放出したリンの量より多くのリンを好気状態で吸収する。
【0009】
生物由来の排泄物や残骸などの窒素化合物の一部は、肥料として植物やバクテリアに同化される。また、こうした窒素化合物の一部は、酸素の多い好気条件下で独立栄養アンモニア酸化細菌や独立亜硝酸酸化細菌により、亜硝酸、硝酸へと酸化される。他方、酸素がない無酸素の条件下では、脱窒菌と呼ばれる微生物が酸素に代わって硝酸から亜硝酸を生成し、更には一酸化二窒素、窒素ガスへと還元する。この酸化・還元反応が上記硝化脱窒反応と称される。
【0010】
中空糸膜モジュールを用いてろ過を行うと、膜の微細孔により水中の懸濁物質や細菌類等が除去され、良質のろ過水が得られる。しかしながら、長時間連続してろ過運転を行うと、微細孔が懸濁物質などにより閉塞され、ろ過水量が低下してろ過圧力の上昇が起こり、中空糸膜モジュールを頻繁に交換する必要に迫られる。
【0011】
この中空糸膜モジュールの早期目詰まりを防止するために、例えば上記ばっ気用の散気発生装置から放出される比較的大きな気泡により生起される気液混合流を利用して、中空糸や中空糸膜エレメントに振動を与え、膜面に付着する閉塞物質を剥離洗浄する、いわゆるエアスクラビング洗浄を行い、更には中空糸膜の中空部の内部から膜外にろ過水を逆通水する逆洗浄が行われて、ろ過膜のろ過性能の回復がなされている。
【0012】
近年、工業用排水処理や汚泥処理場などにおける1日の処理量は数万トンにまでおよび、従来のような1基又は2基程度の膜分離活性汚泥処理の技術だけでは到底まかないきれなくなってきたため、これを効率的に処理する技術の開発が強く望まれている。この要望に応えるべく、例えば米国特許第5,944,997号明細書(特許文献2)に記載されているように、ばっ気槽を大きくするとともに、単一のばっ気槽に多数の膜ろ過ユニットを浸漬して並置し、活性汚泥を一方向に流すようにして、同時に大量の排水処理を行おうとする技術が開発されつつある。上記中空糸膜モジュールを使った複数基の膜ろ過ユニットがばっ気槽内に所要の間隔をおいて直列的に並べて浸漬され、各膜ろ過ユニットに一本の集水管(ろ過水吸引管路)から分岐する分岐管路を介して接続させている。この複数基の中空糸膜モジュールにてろ過された処理水は集水管に集められて一括して吸引ポンプにより集水がなされる。
【特許文献1】特開2000−51672号公報
【特許文献2】米国特許第5,944,997号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
因みに、20基の膜ろ過ユニットをばっ気槽に直列的に並置すると、ばっ気槽の長さは一般の競泳用プールよりも長くなる。例えば、膜ろ過ユニットの奥行き寸法を1552.5mmとして、上記特許文献2に記載されているように、前記奥行き寸法の1/2の間隔をおいてばっ気槽内に20基の膜ろ過ユニットを並設したとすると、上記吸引管の全長は46575mm以上にもおよぶことになる。
【0014】
一方、通常の膜分離活性汚泥処理装置によれば、ばっ気槽の処理方向の一端部に隣接した嫌気槽から原水を溢流させてばっ気槽に流入させ、処理済の余剰汚泥の一部をばっ気槽から前記嫌気槽へと外部配管を通して戻し、活性汚泥を循環させている。原水流入側の汚泥は処理が進んでいないため活性汚泥濃度は低いが、ばっ気槽の汚泥回収側端部では汚泥の処理が進むため活性汚泥濃度が次第に高くなり、いわゆる濃度勾配ができる。このときの汚泥回収側端部の汚泥濃度は、膜ろ過ユニットの数が増えれば増える程大きくなる。この汚泥濃度が高い領域は汚泥処理に使われる酸素(溶存酸素)の必要量も増加する。この汚泥濃度が高い領域では好気性菌類の増殖により、通常の散気発生装置から放出されるエア量だけでは酸素量が不足しがちとなる。すなわち、上述のように多数基の膜ろ過ユニットが配された場合には、下流側の膜ろ過ユニットの周辺の汚泥中の溶存酸素量不足が際立ってくる。
【0015】
更に、上記各膜ろ過ユニットの散気発生装置から放出されるエアは、活性汚泥の生物学的処理に貢献する以上に、気液混合流を利用したエアスクラビングによる膜洗浄に貢献している。この気液混合流は、散気発生装置から放出される比較的大きな気泡の上昇流により発生し、膜モジュールに強い振動と衝撃を与えながら膜面に付着した固形物を剥離させ、ろ過能を回復させながら膜間を上昇しユニットの外に出たのち下降流となって再び散気発生装置から放出される気泡と一体化して上昇を繰り返し、ばっ気槽内の汚泥を一様に攪拌する。また、この散気発生装置から放出されるエア中の全ての酸素が汚泥中に溶解して溶存酸素を作りだすものでもない。その結果、特に汚泥濃度の高い汚泥回収側の膜ろ過ユニットの内部では溶存酸素量が不足しやすく、十分な汚泥処理がなされなくなる。
【0016】
そこで、従来も上記散気発生装置とは別に、溶解度の高い微細気泡を発生する補助散気発生装置を、ばっ気槽の膜ろ過ユニット間の空き領域に配置して溶存酸素量を増加させようとしている。しかしながら、前述のように膜ろ過ユニットの周辺には膜ユニットの内部を上昇したのち、その外部を下降する旋回流が発生している。この旋回流は汚泥を攪拌して槽内の汚泥分布を均一化させるのに一役かっている。一方、前記補助散気発生装置は、前述のように膜ろ過ユニットの側部の槽底部に配されることが多い。そのため、補助散気発生装置から放出される微細気泡により発生する上昇流が前記旋回流の下降する流れと干渉し、旋回流の流れを乱し、流れの生じない停滞領域が発生するおそれがあり、上記処理方向の汚泥濃度差に基づく溶存酸素量の過不足に加えて、補助散気発生装置の設置に基づく溶存酸素量にも領域により過不足が生じ、結果として均等で効率的な汚泥処理ができなくなる。
【0017】
本発明は、汚泥処理量の大量化に伴う溶存酸素量不足を解消するとともに、散気発生装置から放出される気泡により生じる気液混合旋回流を維持する膜分離活性汚泥処理方法を提供することを主な目的としている。その他の目的は以下に述べる具体的な説明により明らかとされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の課題は、本発明の第1の態様における主要な構成である、無酸素槽又は嫌気槽とばっ気槽とを備え、前記ばっ気槽には膜ろ過ユニットが浸漬され、排水を嫌気槽側から生物学的に順次処理して活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥処理方法であって、前記ばっ気槽に4基以上の膜ろ過ユニットを所要の間隔をおいて浸漬配置すること、前記各膜ろ過ユニットの膜モジュールから分岐管路を介して接続されたろ過水ろ過水吸引管路を通してろ過水を吸引して排出すること、前記各膜ろ過ユニットの散気発生装置からエアの気泡を発生させること、及び前記各膜モジュールにおける1以上のろ過水吸引源により吸引されるろ過水の吸引量及び各散気発生装置から発生する気泡の発生量を、原水流入側から汚泥回収側の順に漸次増加させることを含んでいることを特徴とする膜分離活性汚泥処理方法により効果的に解消される。
【0019】
本発明の好適な第2の態様は、無酸素槽又は嫌気槽とばっ気槽とを備え、前記ばっ気槽には膜ろ過ユニットが浸漬され、排水を嫌気槽側から生物学的に順次処理して活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥処理方法であって、前記ばっ気槽に4基以上の膜ろ過ユニットを所要の間隔をおいて浸漬配置すること、前記各膜ろ過ユニットの膜モジュールから分岐管路を介して接続されたろ過水吸引管路を通してろ過水を吸引して排出すること、前記各膜ろ過ユニットの散気発生装置からエアの気泡を発生させること、及び前記ばっ気槽の最も排出側に配された膜ろ過ユニット下方の槽底部から上記無酸素槽又は嫌気槽の原水流入部に送液手段により処理済汚泥を返戻させ、汚泥を無酸素槽又は嫌気槽とばっ気槽との間を循環させることを含んでなることを特徴とする膜分離活性汚泥処理方法がある。
【0020】
更に本発明における第3の態様は、ばっ気槽に導入される原水を膜ろ過ユニットを介してばっ気し、生物学的に処理される活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥処理方法であって、前記ばっ気槽に4基以上の膜ろ過ユニットを所要の間隔をおいて浸漬配置すること、前記各膜ろ過ユニットの膜モジュールから分岐管路を介して接続されたろ過水吸引管路を通してろ過水を吸引して排出すること、前記各膜ろ過ユニットの散気発生装置からエアの気泡を発生させること、及び原水を前記ばっ気槽の複数の異なる部位に流入させることを含んでなることを特徴とする膜分離活性汚泥処理方法がある。
【0021】
前記第2及び第3の態様にあっても、前記各膜モジュールにおける1以上のろ過水吸引源により吸引されるろ過水の吸引量及び/又は各散気発生装置から発生する気泡の発生量を、排水流入側から排出側の順に漸次増加させることを更に含むことができる。
【0022】
また、前記第3の態様にあっても、前記第2態様の特徴的構成である、前記ばっ気槽の最も排出側に配された膜ろ過ユニット下方の槽底部と前記無酸素槽又は嫌気槽の原水流入部とを接続する汚泥返戻管路に、切替バルブを介して接続された余剰汚泥回収管路から余剰汚泥を回収することを含ませることも可能である。
【0023】
更に、本発明における上記第1〜第3の態様にあって、前記ばっ気槽の汚泥排出側端部に独立して設けられた余剰汚泥取出口から余剰汚泥を回収することを含んでいることが好ましい。
【作用効果】
【0024】
前記ばっ気槽に4基以上の膜ろ過ユニットを所要の間隔をおいて直列状に浸漬配置する場合、各膜ろ過ユニットの膜モジュール毎に分岐管路を介して単一のろ過水吸引管路によりろ過水を吸引し、或いは各膜ろ過ユニットの散気発生装置毎に分岐管路を介して単一のエア主管によりエアが供給される。通常は各膜モジュールによりろ過されるろ過水の量は一律であり、また各散気発生装置から放出されるエアの量も一律である。本発明によれば、ばっ気槽内の処理方向の上流側から下流側に向かうにつれて膜ろ過ユニットに対するろ過水の吸引量及びエア量の放出量を順次大きくしている。この吸引量及び放出量の大きさは、例えば各分岐管路に流量調整バルブを配して、同バルブの開度を順次調整することにより調整でき、或いは分岐管路の内径を順次大きくすることによっても調整できる。
【0025】
こうして、汚泥処理方向の上流側から下流側に向けて膜ろ過ユニットから吸引されるろ過水吸引量、或いは膜ろ過ユニットに向けて放出されるエア放出量を順次大きくすることにより、汚泥処理の少なく汚泥の固形分も少ない上流側の領域では、膜モジュールに付着する固形分の量も少ないためろ過水の吸引量を少なくするとともに、散気発生装置からのエア放出量を少なくしても十分なスクラビング洗浄が可能となる。一方、処理方向の下流側領域ではろ過水の吸引量を大きくするとともに、散気発生装置からのエア放出量も大きくすると、汚泥濃度が高く固形分も大量に発生している汚泥の攪拌が進み、更には膜面に付着する固形分をも強力な気液混合流により確実に剥離できるようになるばかりでなく、増殖したバクテリアの汚泥処理に必要な溶存酸素量も確保され、十分な汚泥処理がなされるようになる。更にはろ過水の吸引量が多く回収される汚泥濃度が高くなるため、余剰汚泥の固形分が多くなって嵩が小さくなり、取扱性も向上し、乾燥のための熱エネルギーが節約できる。
【0026】
本発明にあって、ばっ気槽の回収側端部の槽底部から嫌気槽の原水導入側端部の槽底部へと余剰汚泥の一部を返送して循環させる場合には、溶存酸素量の極めて少ない汚泥を嫌気槽へと戻すため、脱窒菌による脱窒反応が効率的に進ませることができる。このとき、嫌気槽に戻される余剰汚泥以外の余剰汚泥は、上記構成により返送と同時に又は選択的に汚泥貯蔵槽へと送液される。このとき汚泥貯蔵槽に送られる余剰汚泥は、その活性汚泥濃度が上述のごとく極めて高く且つ水分が少ないため扱いやすくなり、その後の処理も効率的な処理が可能となる。
【0027】
更に本発明にあって、嫌気槽からの原水をばっ気槽の異なる複数の部位に流入させるようにすると、上述のごとき汚泥濃度差の大きな上流部と中流部との間の濃度勾配を小さくすることができ、上記構成と相まって生物的汚泥処理とエアスクラビングによる洗浄がより効果的になされるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明の膜分離活性汚泥処理方法を実施するための代表的な処理装置の概略構造を示している。
【0029】
この膜分離活性汚泥処理装置によれば、微細目スクリーン1にて比較的大きな固形分が除去された排水(原水)は、原水調整槽2に導入される。ここでは、液面を図示せぬ液面計測器により測定し、第1送液ポンプP1を間欠作動して槽内の液面高さを所定の範囲内で調整している。第1液送ポンプP1によって送られる原水は無酸素槽3に導入されたのち、無酸素槽3から溢流する原水を使って隣接するばっ気槽4に流入させる。このばっ気槽4には多数基の膜ろ過ユニット5を浸漬して配している。この膜ろ過ユニット5にて活性汚泥と処理水とに膜分離された処理水は吸引ポンプPvにより処理水槽8に送液される。一方、ばっ気槽4にてばっ気処理されて増殖した微生物などからなる汚泥の固形分(懸濁物質)は、自重で槽底部へと沈殿し、その余剰汚泥は汚泥貯留槽7に貯蔵される。また、ばっ気槽4の内部の汚泥の一部は第2液送ポンプP2によって上記無酸素槽3へと返送されて循環する。
【0030】
この膜分離活性汚泥処理装置によれば、原水は無酸素槽3及びばっ気槽(好気槽)4において、活性汚泥により生物学的に浄化される。窒素の除去は、無酸素槽3とばっ気槽4との間で汚泥を循環させて、いわゆる硝化脱窒反応によってなされる。BOD(生物化学的酸素要求量)に換算される有機物は、主としてばっ気槽4内に配置されたばっ気装置である膜ろ過ユニット5の散気発生装置15から放出されるエアにより好気的に酸化され分解される。またリンの除去は、汚泥中の微生物(リン蓄積細菌)の作用によりポリリン酸として微生物の体内に取り込まれることにより行われる。
【0031】
この微生物は好気状態においてリンを取り込み、嫌気状態において体内に蓄えたリンを放出する。リン蓄積細菌は、嫌気状態、好気状態に繰り返して晒されると、嫌気状態で放出したリンの量より多くのリンを好気状態で吸収する。生物由来の排泄物や残骸などの窒素化合物の一部は、肥料として植物やバクテリアに同化される。また、こうした窒素化合物の一部は、酸素の多い好気条件下で独立栄養アンモニア酸化細菌や独立亜硝酸酸化細菌により、亜硝酸、硝酸へと酸化される。他方、酸素がない嫌気条件下では、脱窒菌と呼ばれる微生物が酸素に代わって硝酸から亜硝酸を生成し、更には一酸化二窒素、窒素ガスへと還元する。
【0032】
無酸素槽3及びばっ気槽4の間での汚泥の循環は、どちらの槽からポンプを用いて送液するかは必ずしも限定されないが、通常は第2液送ポンプP2を用いてばっ気槽から無酸素槽3へと送液し、無酸素槽3から溢流によってばっ気槽4に流入させる。このときのばっ気槽4からの汚泥の取出口は、ばっ気槽4の汚泥回収側端部の槽底部とし、無酸素槽3の汚泥導入口は無酸素槽3の上流側の原水調整槽2からの原水導入端部の槽底部としている。このように設定することにより、ばっ気槽4からの循環液が無酸素槽3に導入口付近のDO(溶存酸素濃度)を0.2mg/L以下とすることができ、ばっ気槽4より循環液を取出口付近のDOを0.5mg/L以下とすることにより、無酸素槽3への溶存酸素の流入を抑制し、無酸素槽3内の嫌気度を十分維持し、これによりリンの放出を促進させる。
【0033】
無酸素槽3内に溶存酸素、硝酸イオン、亜硝酸イオンが実質的に存在しないと有機物が嫌気的に分解され、このとき菌に蓄積されたポリリン酸がリン酸として菌体外に放出される。本実施形態において循環汚泥がばっ気槽4から無酸素槽3に返送される部位のDOは0.2mg/L以下とすることが好ましく、0.1mg/L以下であるとリンの除去性がより安定し、さらに0.05mg/L以下とするとより安定化するため好ましい。なお、DOの測定は、隔膜電極法による通常のDO計を用いて測定することができる。
【0034】
ばっ気槽4から循環液(汚泥)を取り出す部位のDOを0.5mg/L以下とするためには、ばっ気槽4から無酸素槽3へ汚泥を取り出す部位を汚泥の滞留部とすることが好ましい。汚泥の滞留部とは、ばっ気による汚泥の流動の影響を受けにくい部位を意味する。例えば、膜ろ過ユニット5とばっ気槽4の底部との間に空間を設けてやると、膜ろ過ユニット5の下の部分に存在する汚泥は良く撹拌されないため、滞留部となる。
【0035】
したがって図1に示すように膜ろ過ユニット5の位置よりも下から汚泥を取り出すことにより、ばっ気槽4より循環液(汚泥)を取り出す部位6のDOを0.5mg/L以下とすることができる。なお、ばっ気槽4内に複数基の膜ろ過ユニット5が並列されて配される場合は、循環液(汚泥)を取り出す部位をばっ気装置の下方とする。また、膜ろ過ユニット5から汚泥を取り出す部位までの距離は20cm以上下方に離すことが好ましく、30cm以上離すことがさらに好ましい。
【0036】
ばっ気槽4内における汚泥の流動は、主として膜ろ過ユニット5による領域において散気発生装置の気体放出孔からの気泡の上昇に伴って汚泥も上昇し、ばっ気されていない部分において汚泥が下降し、これにより全体が撹拌される。この際、ばっ気槽4内の汚泥の酸素利用速度(rr )を高く維持すると、ばっ気されていない部分で酸素が急速に消費されることから、ばっ気槽4中で溶存酸素が低くなる部位を形成しやすくなる。ここで、ばっ気槽4内の汚泥の酸素利用速度(rr )とは、ばっ気槽4のばっ気されている部分から取った汚泥の酸素利用速度をいい、測定方法は下水道試験方法(1997年、社団法人日本下水道協会)に従って求めることができる。
【0037】
図2は、通常の膜ろ過ユニット5の代表的な例を示している。同図に示すように膜ろ過ユニット5は、糸長さ方向を垂直に配した複数枚の中空糸膜エレメント10を並列させて支持固定された中空糸膜モジュール9と、同中空糸膜モジュール9の下方に所要の間隔をおいて配される散気発生装置15とを含んでいる。前記中空糸膜エレメント10は、多数本の多孔性中空糸10aを平行に並列させた膜シート11の上端開口端部をポッティング材11aを介してろ過水取出管12に連通支持させるとともに、下端を閉塞して同じくポッティング材11aを介して下枠13により固定支持させ、前記ろ過水取出管12及び下枠13の各両端を一対の縦杆14により支持して構成される。多数枚の膜エレメント10が、シート面を鉛直にして上下端面が開口した矩形筒状の上部壁材20のほぼ全容積内に収容されて並列支持される。ここで、上記中空糸膜エレメント10は、一般には図3に示すように多数本の多孔性中空糸10aが同じ間隙をもたせて同一平面上を並列して配されている。
【0038】
本実施形態にあって、前記中空糸10aは中心部に沿って長さ方向に中空とされたPVDF(ポリフッ化ビニデン)の多孔質中空糸が使われており、そのろ過孔の孔径は0.4μmである。また、1枚あたりの有効膜面積は25m2 である。上記シート状の膜エレメント10は1膜ろ過ユニット5あたり20枚が使われ、その大きさは奥行きが30mm、幅が1250mm、ろ過水取出管12の上面から下枠13の下面までの長さが2000mmである。散気発生装置15をも含めた1膜ろ過ユニット5の大きさは、奥行きが1552.5mm、幅が1447mm、高さが3043.5mmである。上記ろ過水取出管12の長さが1280mm、その材質はABS樹脂であり、縦杆14の材質はSUS304が使われている。
【0039】
ただし、多孔性中空糸10a、ろ過水取出管12及び縦杆14などの材質、膜エレメント10の大きさ、1膜ろ過ユニット5の大きさやユニット1基あたりの膜エレメント10の枚数などは、用途に応じて多様に変更が可能である。例えば、膜エレメント10の枚数で言えば処理量に合わせて20枚、40枚、60枚、…と任意に設定でき、或いは多孔中空糸10aの材質には、セルロース系、ポリオレフィン系、ポリスルホン系、ポリビニルアルコール系、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化エチレンなど、従来公知のものを適用することができる。
【0040】
各膜エレメント10の上記ろ過水取出管12の一端には各多孔性中空糸10aによってろ過された高水質のろ過水(処理水)の取出口12aが形成されている。本実施例にあって、各取出口12aには、図2に示す膜ろ過ユニット5と同様に、それぞれL型継手12bがシール材を介して液密に取り付けられる。また、図3に示すように、上記上部壁材20の上端の前記取出口12aが形成されている側の端縁に沿って集水ヘッダー管21が横設されている。この集水ヘッダー管21は複数の前記取出口12aに対応する位置にはそれぞれに集水口21aが形成されており、各集水口21aに上記取出口12aと同様のL型継手21bがシール材を介して液密に取り付けられている。前記ろ過水取出管12の処理水取出口12aと前記集水ヘッダー管21の集水口21aとが、それぞれに取り付けられたL型継手12b,21b同士を接続することにより通水可能に連結される。集水ヘッダー管21の一端部には吸引ポンプPvとろ過水吸引管路22を介して接続される吸水口21cが形成されている。各集水ヘッダー管21ごとに形成された吸水口21cと前記ろ過水吸引管路22とは、図1に示すように、同ろ過水吸引管路22からそれぞれ分岐した分岐管路22a内に介装された流量調整バルブ23を介して連結されている。
【0041】
一方、前記散気発生装置15は、図4に示すように、前記上部壁材20の下端に結合された同じく上下が開口する矩形筒体からなり、その4隅の下端から下方に延びる4本の支柱24aを備えた下部壁材24の底部に収容固設されている。前記散気発生装置15は、前記下部壁材24の正面側内壁面に沿って幅方向に水平に延設され、図1に示すように外部に配されたばっ気ブロアBとエア主管18を介して接続される分岐管路であるエア導入管16と、同エア導入管16の長さ方向に所定の間隔をおいて配され、一端が固設されるとともに、他端が背面側の内壁面に沿って水平に固設された複数本の散気管17とを有している。散気管17の前記エア導入管16との接続側端部は同エア導入管16の内部と連通しており、散気管17の他端は閉塞されている。
【0042】
図示例によれば、この散気管17の本体はスリット付きゴム管から構成されており、水平に配された下面には、長さ方向に沿って内外に連通する図示せぬスリットが形成されている。前記散気発生装置15は上記中空膜エレメント10の下端から下方に45cmの間隔をおいて配されることが好ましく、前記支柱24aを下部壁材24から下方に突出させて、外部に露呈させることは汚泥の流動を円滑にするため望ましい。このとき、ばっ気槽4から循環液(汚泥)を取り出す部位のDOを0.5mg/L以下とするため、膜ろ過ユニット5から汚泥を取り出す部位までの距離を、既述したとおり20cm以上下方に離すことが好ましく、30cm以上離すことがさらに好ましい。また、本実施例による散気発生装置15は複数基の膜ろ過ユニット5ごとに対応して配され、同じばっ気ブロアBから送られるエアを、それぞれの散気発生装置15に分流させるため、前記ばっ気ブロアBに直接接続されたエア主管18を有し、同エア主管18から分岐管路であるエア導入管16を介して各散気発生装置15に接続される。
【0043】
本発明は、例示した上述のような構成を備えた4基以上の膜ろ過ユニット5を同一ばっ気槽4に浸漬して並置し、無酸素槽3とばっ気槽4との間で汚泥を循環させながら、上述のような生物学的な活性汚泥処理を大量に行うことを前提としている。そのため、上述のように膜ろ過ユニット5の間をそれぞれ流量調整バルブ23を介して同一のろ過水吸引管路22に接続している。しかし、この汚泥処理を長期間にわたって継続して行うと、膜ろ過ユニット5のろ過膜の表面に目詰まりが進行するため、ろ過流量の低下、或いは膜間差圧の上昇が生じる。
【0044】
このような膜間差圧の上昇を抑えるため、中空糸膜エレメント10の下方に配された上記散気発生装置15から噴出するエアと汚泥液との混合流体を利用して、生物学的処理を行うとともに、いわゆるエアスクラビングを行い、各中空糸10aを振動させて表面に付着した懸濁物質を剥がして離脱させ、物理的な洗浄を行う。ところが、このエアスクラビングは、エアスクラビングと同時に中空糸10aの中空部を通してろ過水を積極的に外部の吸引ポンプPvから吸引して汚泥とろ過水とに分離させているため、処理が長期にわたると相変わらず懸濁物質が膜表面に吸引されて、目詰まりが生じろ過流量が著しく低下する。その結果、汚泥処理を一旦停止して、定期的に大がかりな洗浄をする必要があった。
【0045】
ところで、上述のように膜ろ過ユニットの奥行きの寸法を1552.5mmとして、前記奥行き寸法の1/2の間隔をおいてばっ気槽内に25基の膜ろ過ユニットを並設したとすると、上記ろ過水吸引管路22やエア主管18の全長は58219mm以上にもおよぶ。
【0046】
このような長い管路を通過する間に吸引源やブロア源に近い、ろ過水吸引管路22と各膜ろ過ユニット5の中空糸膜モジュール9とを接続する分岐管路22aや、ばっ気ブロアBからエアがエア主管18を通して送られる各導入管路(分岐管路)16と、処理方向の上流側端部に配された分岐管路22a,16とでは管路抵抗の影響により、ろ過水の吸引量やエアの放出量にさが生じる。一方、処理方向の上流側端部と下流側端部とでは活性汚泥処理が進むことから、25基もの膜ろ過ユニット5が並設されていると、ばっ気槽4の活性汚泥濃度にも上流側端部と下流側端部とでは特に大きな差が生じる。この活性汚泥濃度が大きくなればなるほど溶存酸素の必要量が増加する。
【0047】
しかるに、配管抵抗に基づくろ過水の吸引量やエア放出量の上記低下量と溶存酸素の必要量とは直接関係はなく、配管抵抗が低い分、ばっ気ブロアBに最も近い膜ろ過ユニット5に向けて散気発生装置15から放出されるエア量は他の散気発生装置15から放出されるエア量よりも多いものの、汚泥濃度が高いため膜面に付着する固形分の量も多くなり、早期に目が詰まるばかりでなく、そこに存在する汚泥濃度に見合った溶存酸素量をまかないきれない。一方、配管抵抗の関係で吸引源に最も近い膜ろ過ユニット5から吸引されるろ過水の吸引量も他の膜ろ過ユニット5から吸引されるろ過水の吸引量よりも多くはなるが、余剰汚泥の処理の点から見ると、汚泥貯留槽7に集められる余剰汚泥の濃度は可能な限り高い方が好ましい。この汚泥貯留槽7の汚泥は、乾燥させたのち焼却処分に付される。そのためには汚泥中に含まれる水分が少なければ、嵩が小さくなって取扱性が容易となるばかりでなく、乾燥時間の短縮にもつながり、省エネルギーに貢献する。しかるに、通常のろ過水の吸引量では前述のような好適な汚泥濃度までには至らない。
【0048】
そこで本発明では、図5に矢印で示すように、ばっ気槽4内の汚泥濃度を上流側端部から下流側端部にかけて順次汚泥濃度を積極的に高めていき、最終的な廃棄処理をするに好適な濃度をもつ汚泥とすべく、膜ろ過ユニット5から吸引するろ過水の吸引量を処理方向の上流側から下流側に順に順次増加させている。具体的には、上流側から下流側の順にろ過水吸引管路22に接続された各分岐管路22aに流量調整バルブ23を配して、上流側から下流側の順にその開度を大きくしている。このとき同時に、ばっ気ブロアBのエア主管18に接続された各エア導入管路16に配された流量調整バルブ19の開度を、ばっ気ブロアBから遠い順に調整して、ばっ気ブロアBに最も近い散気発生装置15から放出するエア放出量を最も多くなるようにしている。
【0049】
かかる構成により、汚泥が最も少なく、その膜面への固形物の付着が最も少ない原水流入側端部の膜ろ過ユニット5へのエア供給量を生物学的汚泥処理に必要で且つエアスクラビング洗浄が効率的に行える必要量に抑えるとともに、汚泥濃度が最も高く、固形物の付着量が最も多い余剰汚泥回収側端部の膜ろ過ユニット5へのエア供給量を最も多くして、その領域における気液混合旋回流の勢いを強くしてスクラビング洗浄を強力に行うとともに、汚泥の攪拌機能を増加させて、生物学的汚泥処理に十分な溶存酸素量を確保する。また、汚泥貯留槽7に貯蔵される余剰汚泥の濃度が増すため、その嵩が小さくなり取扱いがしやすくなるばかりか、乾燥時に使われる熱エネルギーの量が減少し省エネルギーにもつながる。
【0050】
図6は本発明の第2の実施形態を示している。この実施形態によれば、ばっ気槽4に4基を一組として3組、計12基の膜ろ過ユニット5が並設されている。この各膜ろ過ユニット5の構成は、図2に示した構成と実質的に変わるところがない。ただし、膜ろ過ユニット5の各組ごとに第1〜第3のろ過水吸引ポンプPv1 〜Pv3 が接続され、各ろ過水吸引ポンプPv1 〜Pv3 の吐出側配管路22' は合流して図示せぬ処理水槽へと延びている。そして、原水流入側の第1ろ過水吸引ポンプPv1 から第3ろ過水吸引ポンプPv3 へと、そのろ過水の吸引量を順次増加させている。また、各膜ろ過ユニット5の図示せぬ中空糸膜モジュールの下方には同じく図示せぬ散気発生装置が配されており、原水流入側の第1組目の散気発生装置、第2組目の散気発生装置、第3組目の散気発生装置から放出されるエア量もまた、第1の上記実施形態吸引量と同様に順次多くしている。この実施形態では、1組4基の膜ろ過ユニット5ごとに原水流入側から汚泥回収側へとろ過水の吸引量とエア放出量を増加させている。その作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
図7は、前記第2実施形態の変形例を示している。この変形例にあっても、ばっ気槽4には4基1組の膜ろ過ユニットが3組並設されており、ただ無酸素槽3とばっ気槽4との間を循環する汚泥の送液方向が第2実施形態とは逆になっている。しかも、槽内をばっ気槽4から無酸素槽3へと流入する部位に原水を流入させている点が上記第2実施形態と異なっているが、この実施形態にあってもばっ気槽4の汚泥濃度の高い領域の槽底部から無酸素槽3の原水流入部位の槽底部へと汚泥が送られる点では上記第1実施形態と同じである。
【0052】
図8は、本発明の第3実施形態を示している。この第3実施形態は余剰汚泥の循環管路の途中に3ポート2方向切換バルブ25を介して余剰汚泥の回収管路26を汚泥貯留槽7に臨ませている。汚泥循環路の汚泥取出口は上述の汚泥循環管路の汚泥取出口と同様に第3組目の膜ろ過ユニット5の下方槽底部に設けられる。余剰汚泥の取出口から取り出された余剰汚泥は3ポート2方向切換バルブ25を切り換えることにより、共通の液槽ポンプ28により無酸素槽3に返送するか、或いは汚泥貯蔵槽に送液する。このときも、膜ろ過ユニット5から吸引されるろ過水の吸引量及び散気発生装置15から放出されるエア量は、第1組目から第3組目へと順次増加させている。図9に示す前記第3実施形態の変形例では、汚泥循環管路と汚泥回収管路26とを切り離して、それぞれに循環用ポンプPrと汚泥回収用ポンプPcとを設け、循環用汚泥と回収用汚泥とを任意の時期に独立して送液出来るようにしている。
【0053】
図10は、本発明の更なる第4実施形態を示している。この実施形態では、無酸素槽3からばっ気槽4に流入させる流入路を、第1組目〜第3組目の各4基の膜ろ過ユニット5の処理方向上流側に分散して配するとともに、ばっ気槽4から無酸素槽3へと汚泥を返送する汚泥取出口を第1組目〜第3組目の各4基の膜ろ過ユニット5の下方槽底部にそれぞれ設けている。更に、各汚泥取出口に接続された各汚泥送液管路の途中に第1〜第3の循環用ポンプPr1 〜Pr3 を配して、これを合流させて無酸素槽3の原水流入側端部の槽底部へと送液するようにしている。この実施形態にあっても、上記実施形態と同様に1組4基の膜ろ過ユニット5ごとに原水流入側から汚泥回収側へとろ過水の吸引量とエア放出量を増加させている。
【0054】
このように、ばっ気槽4の膜ろ過ユニット5の組ごとに原水を流入させるとともに、循環用汚泥の取り出し口も各組ごとに設けることにより、処理方向の上流側から下流側にかけて増加する濃度勾配を小さくし、可能な限り濃度分布を均等にすることにより、原水流入側から汚泥回収側へとろ過水の吸引量とエア放出量を増加させることに基づく各膜ろ過ユニット5の負担を軽減させて、長期の使用に耐えられるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る処理方法を実施するために好適な膜分離汚泥処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】通常の膜ろ過ユニットの全体構成を一部破断して示す立体図である。
【図3】糸膜モジュールの構成部材である膜エレメントの構成例を模式的に示す斜視図である。
【図4】膜ろ過ユニットの構成部材の一つである散気発生装置の立体図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るばっ気処理の一例を示す工程説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る膜分離活性汚泥処理方法の一例を示す工程説明図である。
【図7】第2実施形態の変形例を示す工程説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る膜分離活性汚泥処理方法の一例を示す工程説明図である。
【図9】第3実施形態の変形例を示す工程説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る膜分離活性汚泥処理方法の一例を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 微細目スクリーン
2 原水調整槽
3 無酸素槽
4 ばっ気槽
5 膜ろ過ユニット
6 循環液の取出し部位
7 汚泥貯留槽
8 処理水槽
9 糸膜モジュール
10 膜エレメント
10a 中空糸
11 膜シート
11a ポッティング材
12 ろ過水取出管
12a ろ過水取出口
12b L型継手
13 下枠
14 縦杆
15 散気発生装置
16 エア導入管(分岐管路)
17 散気管
18 エア主管
19 流量調整バルブ
20 上部壁材
21 集水ヘッダー管
21a 集水口
21b L型継手
21c 吸水口
22 吸引管路
22' 吐出側配管路
22a 分岐管路
23 流量調整バルブ
24 下部壁材
24a 支柱
25 3ポート2方向切換バルブ
26 回収管路
P1 第1送液ポンプ
P2 第2送液ポンプ
Pv 吸引ポンプ
Pv1 〜Pv3 第1〜第3吸引ポンプ
Pr 循環用ポンプ
Pc 汚泥回収用ポンプ
B ばっ気ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばっ気槽に導入される原水を膜ろ過ユニットを介してばっ気し、生物学的に処理された活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥処理方法であって、
前記ばっ気槽に4基以上の膜ろ過ユニットを所要の間隔をおいて浸漬配置すること、
前記各膜ろ過ユニットの膜モジュールから分岐管路を介して接続されたろ過水吸引管路を通してろ過水を吸引して排出すること、
前記各膜ろ過ユニットの散気発生装置からエアの気泡を発生させること、及び
前記各膜モジュールにおける1以上のろ過水吸引源により吸引されるろ過水の吸引量及び/又は各散気発生装置から発生する気泡の発生量を、排水流入側から排出側の順に漸次増加させること、
を含んでなることを特徴とする膜分離活性汚泥処理方法。
【請求項2】
無酸素槽又は嫌気槽とばっ気槽とを備え、前記ばっ気槽には膜ろ過ユニットが浸漬され、排水を嫌気槽側から生物学的に順次処理して活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥処理方法であって、
前記ばっ気槽に4基以上の膜ろ過ユニットを所要の間隔をおいて浸漬配置すること、
前記各膜ろ過ユニットの膜モジュールから分岐管路を介して接続されたろ過水吸引管路を通してろ過水を吸引して排出すること、
前記各膜ろ過ユニットの散気発生装置からエアの気泡を発生させること、及び
前記ばっ気槽の最も排出側に配された膜ろ過ユニット下方の槽底部から上記無酸素槽又は嫌気槽の原水流入部に送液手段により処理済汚泥を返戻させ、汚泥を無酸素槽又は嫌気槽とばっ気槽との間を循環させること、
を含んでなることを特徴とする膜分離活性汚泥処理方法。
【請求項3】
ばっ気槽に導入される原水を膜ろ過ユニットを介してばっ気し、生物学的に処理される活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥処理方法であって、
前記ばっ気槽に4基以上の膜ろ過ユニットを所要の間隔をおいて浸漬配置すること、
前記各膜ろ過ユニットの膜モジュールから分岐管路を介して接続されたろ過水吸引管路を通してろ過水を吸引して排出すること、
前記各膜ろ過ユニットの散気発生装置からエアの気泡を発生させること、及び
原水を前記ばっ気槽の複数の異なる部位に流入させること、
を含んでなることを特徴とする膜分離活性汚泥処理方法。
【請求項4】
前記各膜モジュールにおける1以上のろ過水吸引源により吸引されるろ過水の吸引量及び/又は各散気発生装置から発生する気泡の発生量を、排水流入側から排出側の順に漸次増加させることを更に含んでなる請求項2又は3に記載の膜分離活性汚泥処理方法。
【請求項5】
前記ばっ気槽の最も排出側に配された膜ろ過ユニット下方の槽底部と前記無酸素槽又は嫌気槽の原水流入部とを接続する汚泥返戻管路に、切替バルブを介して接続された余剰汚泥回収管路から余剰汚泥を回収することを含んでなる請求項3に記載の膜分離活性汚泥処理方法。
【請求項6】
前記ばっ気槽の汚泥排出側端部に独立して設けられた余剰汚泥取出口から余剰汚泥を回収することを含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載の膜分離活性汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−152282(P2007−152282A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353668(P2005−353668)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)
【Fターム(参考)】