説明

膜分離活性汚泥処理装置および膜分離活性汚泥処理方法

【課題】膜分離槽の水位を容易に一定に維持できる、シンプルな構成の別置型の膜分離活性汚泥処理装置および膜分離活性汚泥処理方法の提供。
【解決手段】被処理水を活性汚泥により生物処理し、生物処理水とする反応槽11と、活性汚泥と生物処理水からなる汚泥含有処理水を膜処理する膜分離槽13と、該膜分離槽13から反応槽11に、汚泥含有処理水の一部を返送する汚泥返送手段とを備えた膜分離活性汚泥処理装置10であって、汚泥返送手段が、膜分離槽13に設けられ、所定水位を超えた汚泥含有処理水を排出する溢流口49を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物処理と膜処理とにより被処理水を処理する膜分離活性汚泥処理装置および膜分離活性汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水、生活排水などの有機性の被処理水の処理方法として、活性汚泥中の微生物の作用により、被処理水に含まれる汚濁物質を生物分解する生物処理と、活性汚泥を分離膜により固液分離して、浮遊物のない処理水を得る膜処理とを組み合わせた膜分離活性汚泥処理法がある。
この処理方法に用いられる膜分離活性汚泥処理装置としては、活性汚泥を含み生物処理を行う反応槽とは別に、分離膜を浸漬した膜分離槽を設け、反応槽での生物処理後に膜分離槽で膜分離を行うようにした、いわゆる別置型の処理装置がある。分離膜による膜処理としては、分離膜に接続した吸引ポンプを作動させることによる吸引ろ過が一般的である。
【0003】
別置型の処理装置においては、反応槽に接続された原水ポンプを作動させることにより、反応槽で生物処理された生物処理水が、活性汚泥を含んだ状態で膜分離槽に送液される。膜分離槽では、反応槽から送られた生物処理水と活性汚泥とからなる汚泥含有処理水に対して膜処理が行われ、活性汚泥が膜面で除去され、処理水(ろ過水)が得られる。得られた処理水は系外へと排出される。一方、膜処理の継続に伴って活性汚泥が濃縮された膜分離槽内の汚泥含有処理水は、その一部が反応槽に返送される。
【0004】
このように別置型処理装置の膜分離槽では、(1)反応槽からの被処理水の流入、(2)膜処理による処理水の排出、(3)濃縮された汚泥含有処理水の反応槽への返送、が並行して進行する。
そして、前記(3)の反応槽への返送は、膜分離槽内または返送ラインに設置された返送ポンプを作動させる方法により実施される
【0005】
膜分離槽を安定に運転する観点からは、できるだけ膜分離槽の水位を一定に維持することが有効である。仮に膜分離槽の水位が大きく低下した場合には、一般に、吸引ポンプの運転を停止する制御がなされるため、膜分離槽の水位変動が大きいと、安定な膜処理の継続が困難となる。また、膜分離槽の水位が変動すると、膜分離槽の濃縮倍率(活性汚泥濃度)が安定せず、その結果、分離膜の目詰まりが顕著になりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−167827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、別置型処理装置の膜分離槽では、上記(1)〜(3)の液の流れが並行して進行するため、上記(1)〜(3)のバランスを常に良好に維持して、膜分離槽の水位を一定に維持することは難しい。例えば、上記(1)の反応槽からの被処理水の流入量)と、上記(3)の汚泥含有処理水の反応槽への返送量とがほぼ同量である運転をしている場合に、工場からの排水量が低下するなどして上記(1)の量のみが減少すると、膜分離槽の水位が急激に低下してしまう。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、膜分離槽の水位を容易に一定に維持できる、シンプルな構成の別置型の膜分離活性汚泥処理装置および膜分離活性汚泥処理方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の膜分離活性汚泥処理装置は、被処理水を活性汚泥により生物処理し、生物処理水とする反応槽と、前記活性汚泥と前記生物処理水からなる汚泥含有処理水を膜処理する膜分離槽と、該膜分離槽から前記反応槽に、前記汚泥含有処理水の一部を返送する汚泥返送手段とを備えた膜分離活性汚泥処理装置であって、前記汚泥返送手段は、前記膜分離槽に設けられ、所定水位を超えた前記汚泥含有処理水を排出する溢流口を有することを特徴とする。
前記汚泥返送手段は、前記溢流口から排出された前記汚泥含有処理水を貯留する活性汚泥貯留槽と、該活性汚泥貯留槽内の前記汚泥含有処理水を前記反応槽へ送液する汚泥排出ポンプとを備えることが好ましい。
本発明の膜分離活性汚泥処理方法は、被処理水を反応槽で活性汚泥により生物処理し、生物処理水とする工程と、前記活性汚泥と前記生物処理水からなる汚泥含有処理水を膜分離槽で膜処理する工程と、前記膜分離槽から前記反応槽に、前記汚泥含有処理水の一部を返送する工程とを備えた膜分離活性汚泥処理方法であって、前記汚泥含有処理水の一部を返送する工程は、前記膜分離槽に設けられた溢流口から、所定水位を超えた前記汚泥含有処理水を排出する工程を有することを特徴とする。
前記汚泥含有処理水の一部を返送する工程は、前記溢流口から排出された前記汚泥含有処理水を活性汚泥貯留槽に貯留する工程と、汚泥排出ポンプにより前記活性汚泥貯留槽内の前記汚泥含有処理水を前記反応槽へ送液する工程とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膜分離槽の水位を容易に一定に維持できる、シンプルな構成の別置型の膜分離活性汚泥処理装置および膜分離活性汚泥処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】別置型である本発明の膜分離活性汚泥処理装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の別置型の膜分離活性汚泥処理装置(以下、処理装置という場合がある。)の一例を示す概略構成図である。
図1の処理装置10は、活性汚泥の作用により、工場排水などの被処理水を生物処理し、生物処理水とする反応槽11と、反応槽11から引き抜かれた活性汚泥と生物処理水とからなる汚泥含有処理水を分離膜12で膜処理する膜分離槽13とを別々に備える、いわゆる別置型の処理装置10である。
【0013】
反応槽11には、定流量ポンプなどの原水ポンプ14が接続され、この原水ポンプ14により、反応槽11から汚泥含有処理水が引き抜かれ、膜分離槽13へと送液される。膜分離槽13に浸漬された分離膜12には、吸引ポンプ15が接続され、この吸引ポンプ15が作動することにより、分離膜12の膜面で汚泥含有処理水が吸引ろ過され、処理水が得られる。
【0014】
分離膜12としては、精密ろ過膜または限外ろ過膜が好ましい。また、フラックスが高く取れること、取り扱い性が容易であることからは、精密ろ過膜がより好ましい。精密ろ過膜の孔径は、通常0.1〜0.4μm程度が好適である。
分離膜12の形態としては、中空糸膜、平膜、管状膜などが挙げられる。これらのうちでは、容積基準で比較した場合に、膜面積の高集積が可能であることから、中空糸膜がより好ましい。中空糸膜の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0015】
この処理装置10は、吸引ポンプ15の作動を制御する手段として、吸引ポンプ15を間欠的に作動させる吸引ポンプ制御手段C1を備えている。
吸引ポンプ制御手段C1は、膜分離槽13の水位を検知するレベルセンサ28および吸引ポンプ15と電気的に接続されているとともに、タイマー機能を有しており、膜分離槽13の汚泥含有処理水の水位に応じて、吸引ポンプ15を制御できるようになっている。
具体的には、膜分離槽13の水位が所定水位以上である場合には、所定の一定周期で運転と停止とを繰り返すように、吸引ポンプ15を制御する。一方、膜分離槽13の水位が所定水位に満たなくなった場合には、水位が回復するまで吸引ポンプ15を停止するように、吸引ポンプ15を制御する。
【0016】
また、この処理装置10は、分離膜12を洗浄する洗浄手段として、薬液が貯留された薬液タンク16と、薬液タンク16内の薬液を分離膜12にろ液側から送液する薬液ポンプ17とを備え、分離膜12をインライン洗浄できるようになっている。インライン洗浄とは、分離膜12を膜分離槽13に浸漬したまま、分離膜12に対して薬液をろ過側から逆通液することにより、分離膜12を洗浄する方法である。
この例では、分離膜12に向けて薬液が送液される薬液ライン18は、分離膜12と吸引ポンプ15とを接続する吸引ライン19に合流している。そのため、分離膜12による吸引ろ過が行われるか、または、分離膜12のインライン洗浄が行われるかに応じて、吸引ライン19に設けられた開閉バルブ20と薬液ライン18に設けられた開閉バルブ21がそれぞれ開または閉に適宜切り換わるようになっている。
【0017】
薬液としては、薬剤が溶解した水溶液が使用される。薬剤としては、有機性物質の洗浄に対しては、例えば次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩が使用され、無機性物質の洗浄に対しては、例えばシュウ酸、クエン酸、硫酸、塩酸などの酸性物質が使用されることが好ましい。
薬液中の薬剤濃度は適宜設定でき、例えば100〜5000mg/L程度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液、0.1〜1N程度の塩酸および硫酸、0.2〜2%程度のシュウ酸およびクエン酸などが好適に使用される。
【0018】
また、この処理装置10は、洗浄手段の作動を制御する手段として、吸引ポンプ15の運転が所定回数に到達するごとに、洗浄手段の薬液ポンプ17を作動させる洗浄制御手段C2を有している。
洗浄制御手段C2は、吸引ポンプ15および薬液ポンプ17と電気的に接続され、これにより、吸引ポンプ15の運転回数をカウントし、この回数が所定回数となるごとに、薬液ポンプ17に信号を送り、薬液ポンプ17を作動させるようになっている。
【0019】
また、この例の洗浄制御手段C2はタイマー機能を有し、所定時間内における吸引ポンプ15の運転回数が、上述の所定回数未満であった場合には、洗浄手段を強制的に作動させるようになっている。
【0020】
また、この例の洗浄制御手段C2は、吸引ポンプ15の吸引圧力を測定する負圧計47にも電気的に接続され、負圧計47により測定される吸引圧力(絶対値)が所定値以上となった場合には、洗浄手段を強制的に作動させるようになっている。
洗浄手段を強制的に作動させる際の吸引圧力は、例えば分離膜の種類、孔径などに応じて適宜設定できるが、絶対値として15〜50kPaを目安にすることが好ましい。
【0021】
そして、この処理装置10においては、膜処理の継続に伴って活性汚泥が濃縮された膜分離槽13内の汚泥含有処理水の一部を反応槽11に返送するための汚泥返送手段として、膜分離槽13の側壁面に、所定水位を超えた汚泥含有処理水をオーバーフローさせる溢流口49が設けられている。さらに、汚泥返送手段は、溢流口49よりも下方に設置され、溢流口49から排出された汚泥含有処理水を一旦貯留する活性汚泥貯留槽24と、レベルセンサ27で検知される活性汚泥貯留槽24内の水位が所定水位以上になると、活性汚泥貯留槽24内の汚泥含有処理水を反応槽11へ送液する汚泥排出ポンプ25とを備えている。
【0022】
また、この処理装置10は、分離膜12のエアスクラビング(バブリング)手段として、膜分離槽13内の分離膜12の下方に設置され、分離膜12に向けて気泡を放出する散気装置22と、散気装置22に接続された曝気ブロア23とを備えている。
【0023】
なお、図1中、符号26、29は水位を検知するレベルセンサ、符号30は空気を逃がしエアスクラビング手段の音を抑制するサイレンサ、符号31はサイホン止めチャッキ弁、符号32は処理水の水質確認用のサンプリングコック、符号33は可変式定流量弁、符号34は薬液流量チェック用コックである。符号35、36は流量計、符号38〜46は開閉バルブ、符号47は負圧計、符号48は逆止弁である。膜分離槽13の底部の開閉バルブ40、膜分離槽13と活性汚泥貯留槽24との間の開閉バルブ39は、いずれも、膜分離槽13および活性汚泥貯留槽24内の汚泥含有処理水をすべて排出する必要がある際に開放されるバルブである。
【0024】
次に図1の処理装置10の運転方法について説明する。
反応槽11においては、工場排水などの被処理水を活性汚泥により生物処理して生物処理水とする。反応槽11に設置されたレベルセンサ26で検知される水位が所定水位以上の場合には、原水ポンプ14が作動し、反応槽11内の汚泥含有処理水が膜分離槽13へと送液される。
【0025】
膜分離槽13においては、レベルセンサ28により検知される膜分離槽13の水位が所定水位以上の場合には、吸引ポンプ制御手段C1からの信号により、吸引ポンプ15は所定の一定周期で運転と停止とを繰り返し、分離膜12による間欠的な吸引ろ過が行われる。例えば、吸引ポンプ15は、7分間の運転と1分間の停止とを交互に繰り返す。また、エアスクラビング洗浄手段によるバブリングが開始される。
【0026】
その後、工場排水量の低下などにより反応槽11の水位が低下し、それに伴って膜分離槽13の水位が所定水位未満となった場合には、吸引ポンプ制御手段C1からの信号により、吸引ポンプ15は停止する。そして、膜分離槽13の水位が回復して所定水位以上となると、吸引ポンプ制御手段C1からの信号により、吸引ポンプ15は運転を再開し、膜分離槽13の水位が所定水位以上である限り、上述の所定の一定周期で運転と停止とを交互に繰り返す。
【0027】
一方、洗浄制御手段C2は、吸引ポンプ15が上述のように膜分離槽13の水位に応じた間欠的な作動をしている間、吸引ポンプ15の運転回数をカウントする。そして、運転回数が所定回数(例えば1260回。)に到達するごとに、薬液ポンプ17に信号を送り、薬液ポンプ17を作動させてインライン洗浄を実施する。インライン洗浄時には、開閉バルブ21が開、開閉バルブ20が閉に切り換わり、吸引ろ過は停止する。インライン洗浄時間は、分離膜12の汚染度合い、薬液の薬剤濃度、薬液の種類などに応じて、適宜設定できる。
なお、インライン洗浄が行われるタイミングは、吸引ポンプ15の運転が所定回数に到達し、その回の運転が終了して停止に切り換わった直後でもよいし、その回の運転が終了して停止に切り換わってから、次回の吸引ポンプ15の運転が始まるまでの間でもよい。
【0028】
インライン洗浄が終了すると、開閉バルブ21が閉、開閉バルブ20が開に切り換わり、吸引ろ過が再開され、吸引ポンプ15は再び上述の所定の一定周期で運転と停止とを交互に繰り返す。洗浄制御手段C2は、吸引ポンプ15の運転回数のカウントを再開し、再開後の運転回数が所定回数(例えば1260回。)となるごとに、薬液ポンプ17に信号を送り、薬液ポンプ17を作動させてインライン洗浄を実施する。
【0029】
ここで仮に、所定時間(例えば2週間。)内における吸引ポンプ15の運転回数が所定回数(例えば1260回。)未満であった場合には、その時点で、洗浄制御手段C2は薬液ポンプ17に信号を送り、薬液ポンプ17を作動させてインライン洗浄を強制的に実施する。
【0030】
また、吸引ポンプ15の運転回数にかかわらず、負圧計47が示す吸引ポンプ15の吸引圧力(絶対値)が所定値(例えば40kPa。)以上となった場合には、その時点で、洗浄制御手段C2は薬液ポンプ17に信号を送り、薬液ポンプ17を作動させてインライン洗浄を強制的に実施する。
【0031】
そして、このように膜処理が行われている間に、膜分離槽13の水位が上昇して溢流口49の設置位置に到達すると、膜分離槽13内の汚泥含有処理水が溢流口49から排出される。そして、排出された汚泥含有処理水は、活性汚泥貯留槽24に貯留され、レベルセンサ27により検知される活性汚泥貯留槽24内の水位が所定水位以上になると、汚泥排出ポンプ25により、反応槽11に返送される。
【0032】
このように、膜分離槽13から反応槽11へと汚泥含有処理水の一部を返送する汚泥返送手段が、膜分離槽13に設けられた溢流口49を有していると、膜分離槽13からは、オーバーフローした分だけ、汚泥含有処理水が膜分離槽13から排出される。よって、膜分離槽13からの汚泥含有処理水の排出に伴う膜分離槽13の水位変動を簡単かつ確実に抑制できる。そのため、膜処理を安定に継続できる。また、膜分離槽13の濃縮倍率(活性汚泥濃度)が安定し、分離膜12の目詰まりも低減される。また、このようにオーバーフローさせる方法は、膜分離槽13に溢流口49を設けるだけで実施でき、処理装置10の構成を複雑にすることなく、シンプルに維持できる。
【0033】
また、オーバーフローした汚泥含有処理水は、重力により反応槽11に直接返送されてもよいが、この例のように、汚泥返送手段が活性汚泥貯留槽24と汚泥排出ポンプ25とをさらに備え、活性汚泥貯留槽24を介して反応槽11に返送される形態であると、反応槽11の設置位置が膜分離槽13よりも上方であって、重力による返送ができない場合でも、何ら問題なく、反応槽11に返送することができる。
【0034】
また、この例では、吸引ポンプ15の運転が所定回数に到達するごとに、洗浄制御手段C2が薬液ポンプ17に信号を送り、インライン洗浄を実施するようにしているため、インライン洗浄の頻度が積算ろ過量に応じて適正に制御され、薬剤のコストを抑制できる。
【0035】
すなわち、吸引ポンプ15の1回の運転時間が一定であれば、吸引ポンプ15の運転回数と分離膜12の積算ろ過量とはほぼ比例関係となる。また、積算ろ過量が増加するにしたがって、分離膜12の汚染度合いは増す関係にある。よって、吸引ポンプ15の運転が所定回数に到達するごとに、洗浄手段を作動させる洗浄制御手段C2を採用することにより、分離膜12の実際の汚染度合いに対応した適正な頻度で、インライン洗浄が実施されることになる。仮に、定期的に(例えば1週間に1回。)インライン洗浄する方法では、例えば工場の一時操業停止などに起因して被処理水量が低下し、吸引ポンプ15が長期間運転休止となって積算ろ過量が少ない場合でも、それとは無関係に、予め決められた時間の経過によりインライン洗浄が強制的に実施され、薬液が無駄に消費される。これに対して、吸引ポンプ15の運転が所定回数に到達するごとに、洗浄手段を作動させる方法を採用すれば、薬液が無駄に消費されることがない。なお、積算ろ過量は、流量積算計37により測定できる。
また、インライン洗浄が適正な頻度で行われることにより、薬液による活性汚泥の死滅を最低限に抑えることもできる。
【0036】
また、この例では、所定時間内における吸引ポンプ15の運転回数が所定回数未満であった場合には、その時点で洗浄制御手段C2が薬液ポンプ17に信号を送り、インライン洗浄を強制的に実施するようにしているため、分離膜12の透過性を高く維持することができる。
【0037】
また、この例では、吸引ポンプ15の運転回数にかかわらず、吸引ポンプ15の吸引圧力が所定値以上となると、その時点で洗浄制御手段C2が薬液ポンプ17に信号を送り、インライン洗浄を強制的に実施するようにしているため、被処理水の水質変化などで急激に分離膜12の目詰まりが顕著になった場合などでも、迅速に分離膜12をインライン洗浄することができる。
【0038】
なお、図1に示された洗浄手段は、薬液タンク16と薬液ポンプ17とを1ずつ備え、1種類の薬液によりインライン洗浄が行われる形態を示しているが、例えば、薬液タンクを2以上備え、2種類以上の薬液によりインライン洗浄を実施できる形態としてもよい。具体的な形態としては、複数の薬液タンクに、薬剤濃度が異なる薬液がそれぞれ投入されている形態、薬剤の種類が異なる薬液がそれぞれ投入されている形態などが挙げられる。薬液ポンプは、各薬液タンクごとに設けてもよいし、複数の薬液タンクに対して1台設け、バルブの切り換え操作などにより、逆通液する薬液を選択できるようにしてもよい。
【0039】
また、2種類以上の薬液によりインライン洗浄を実施できる形態とする場合には、各薬液によるインライン洗浄それぞれが、吸引ポンプの所定の運転回数ごとに実施されるように、洗浄制御手段により制御することができる。具体的には、低濃度の薬液が投入された薬液タンクと、高濃度の薬液が投入された薬液タンクとを設置し、低濃度の薬液によるインライン洗浄は、吸引ポンプの運転が例えば1000回に到達するごとに実施され、高濃度の薬液によるインライン洗浄は、吸引ポンプの運転が例えば2万回程度に到達するごとに実施されるように制御できる。また、インライン洗浄時には、薬液を逆通液するだけでなく、必要に応じて、膜に薬液を含ませた状態で一定時間保持してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 膜分離活性汚泥処理装置
11 反応槽
12 分離膜
13 膜分離槽
15 吸引ポンプ
16 薬液タンク
17 薬液ポンプ
24 活性汚泥貯留槽
25 汚泥排出ポンプ
49 溢流口
C1 吸引ポンプ制御手段
C2 洗浄制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を活性汚泥により生物処理し、生物処理水とする反応槽と、
前記活性汚泥と前記生物処理水からなる汚泥含有処理水を膜処理する膜分離槽と、
該膜分離槽から前記反応槽に、前記汚泥含有処理水の一部を返送する汚泥返送手段とを備えた膜分離活性汚泥処理装置であって、
前記汚泥返送手段は、前記膜分離槽に設けられ、所定水位を超えた前記汚泥含有処理水を排出する溢流口を有する、膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項2】
前記汚泥返送手段は、前記溢流口から排出された前記汚泥含有処理水を貯留する活性汚泥貯留槽と、該活性汚泥貯留槽内の前記汚泥含有処理水を前記反応槽へ送液する汚泥排出ポンプとを備える、請求項1に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項3】
被処理水を反応槽で活性汚泥により生物処理し、生物処理水とする工程と、
前記活性汚泥と前記生物処理水からなる汚泥含有処理水を膜分離槽で膜処理する工程と、
前記膜分離槽から前記反応槽に、前記汚泥含有処理水の一部を返送する工程とを備えた膜分離活性汚泥処理方法であって、
前記汚泥含有処理水の一部を返送する工程は、前記膜分離槽に設けられた溢流口から、所定水位を超えた前記汚泥含有処理水を排出する工程を有する、膜分離活性汚泥処理方法。
【請求項4】
前記汚泥含有処理水の一部を返送する工程は、前記溢流口から排出された前記汚泥含有処理水を活性汚泥貯留槽に貯留する工程と、汚泥排出ポンプにより前記活性汚泥貯留槽内の前記汚泥含有処理水を前記反応槽へ送液する工程とを有する、請求項3に記載の膜分離活性汚泥処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−170895(P2012−170895A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35633(P2011−35633)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】