説明

膜分離装置

【課題】生物反応槽と膜分離槽間の汚泥液循環に要する動力を削減し、より効率的に膜分離処理を行う構造とする。
【解決手段】汚泥液を収容した生物反応槽20と別途に、膜モジュール40を縦向きに複数配置した膜分離槽30を設け、両槽を下部の汚泥液供給管60および上部の汚泥液返送管70で接続し汚泥液を循環させる。汚泥液供給管60は、膜分離槽30の内部まで貫入し、膜モジュール40の下部に延びて開口部62が上向きに開放し、この開口部62に膜モジュール40に向けて空気を噴出する空気供給口81を設け、噴出する空気により汚泥液を汚泥液供給管60から吐出させて循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥処理法により下水や産業廃水等の処理を行う水処理装置において、ろ過膜による膜モジュールを用いて固液分離を行う膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水処理装置において、活性汚泥液を収容した生物反応槽による生物反応処理後の汚泥液を固液分離する際に、活性汚泥液の沈降性に左右されず、清澄で高度な水質の処理水が得られ、処理施設のコンパクト化が図れる水処理方法として膜分離技術を用いた膜分離方法が注目されている。これは活性汚泥と処理水の固液分離を、微細な孔径を有するろ過膜を生物反応槽に浸漬させて行う方法が主に研究され、実用化がなされてきた。
【0003】
上記のような生物反応槽に浸漬された膜モジュール(膜分離ユニット)は、下部から膜面洗浄用の空気を供給する散気装置、膜面を処理水や清澄な水により逆洗するための機構、次亜塩素酸などの洗浄用薬剤を注入するための機構を有し、これらにより膜面の閉塞を防止して処理を継続するのが一般的である。そして、長期的に使用すると有機物などの付着により膜面が閉塞してしまうため、定期的に生物反応槽から膜モジュールを取り出し、所定の濃度に調整した次亜塩素酸などの洗浄用薬液を満たした浸漬洗浄槽にて浸漬洗浄を行う必要があった。
【0004】
下水処理施設などの大水量を処理する施設においては、使用する膜モジュールが大きく、生物反応槽から取り出すためにはクレーンなどを用いなければならず、容易ではない。そこで、浸漬洗浄の手間を簡素化するため、汚水の生物処理を行う生物反応槽と、固液分離を行うための膜分離槽を別個に設置する水処理装置が考案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
非特許文献1には、膜分離活性汚泥法(MBR)として、従来の活性汚泥法では最終沈殿池などで重力沈降により行っていた活性汚泥と処理水との分離操作を膜により行う点、および生物反応槽とは別個に膜分離槽を設けることが好適な点が記載されている。つまり、膜分離槽を設けることは、膜分離槽と生物反応槽との間に汚泥液の循環ラインやポンプを設ける必要もあり付加設備が増加するが、膜分離槽を複数の系列に区切り処理水量に応じて稼動系列数を変えるなど運転操作上の融通性に優れ、浸漬洗浄の際に膜モジュールを移動する必要がないなどの利点を有するものである。
【0006】
そして、膜分離槽を別個に設置する場合、生物反応槽での汚泥液流量の維持や、膜分離槽で汚泥濃度が高くなりすぎることを防止するため、生物反応槽と膜分離槽間で汚泥液を循環させることが必要となる。
【0007】
また、膜への汚泥付着を防止する目的で、膜分離槽における膜モジュールの下部から膜面洗浄用の空気を供給し、膜への汚泥付着を阻止する手法が実施されている。この膜モジュールへの空気供給は、膜分離槽内の汚泥液に旋回流を起こし、膜分離槽内の汚泥濃度を均一にする働きをも有している。
【非特許文献1】下水道協会誌Vol.43、No.528、p87〜98、ヨーロッパの下水処理施設における膜分離活性汚泥法の実態調査、2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、原水の生物処理を行う生物反応槽と、固液分離を行うための膜分離槽を別個にした場合、上記のように生物反応槽と膜分離槽との間で汚泥液の循環を行わなければならず、ポンプの設置により汚泥液の循環を行うのが一般的であり、その場合、膜モジュールの浸漬洗浄を実施するための手間は、生物反応槽にて膜分離を行う方法に比べて簡単ではあるものの、汚泥液循環のためのポンプなどの動力が余分に必要となり、処理費用が増大する問題点があった。
【0009】
本発明は上記点に鑑みなされたもので、生物反応槽と膜分離槽の接続方法を工夫することにより、生物反応槽と膜分離槽間の汚泥液循環に要する動力を削減し、より効率的に膜分離処理を行うことができる膜分離装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の膜分離装置は、活性汚泥液を収容した生物反応槽における生物反応処理後の汚泥液を固液分離するための膜分離装置であって、
前記生物反応槽とは別途に設置された膜分離槽と、
該膜分離槽内に縦向きに複数配置された膜モジュールと、
前記生物反応槽と前記膜分離槽とで汚泥液を循環させるために、前記膜分離槽と前記生物反応槽とを下部で接続する汚泥液供給管と、
前記生物反応槽と前記膜分離槽とで汚泥液を循環させるために、前記膜分離槽と前記生物反応槽とを上部で接続する汚泥液返送管と、
前記膜分離槽内に空気を噴出する空気供給手段とを備え、
前記汚泥液供給管は、下流端部分が前記膜分離槽の内部まで貫入し、前記膜モジュールの各々の下部に延びて、各膜モジュールの底部位置に対応して上向きに開放した分離槽側開口部と、
該分離槽側開口部に設置され、前記膜モジュールに向けて空気を噴出する前記空気供給手段の空気供給口とを有し、
前記空気供給口から噴出する空気により、前記汚泥液供給管の前記分離槽側開口部から汚泥液を前記膜分離槽内に送給するとともに、前記膜モジュールの膜洗浄を行うことを特徴とするものである。
【0011】
その際、前記汚泥液供給管の分離槽側開口部内に、前記膜モジュールの下部を固定し、該膜モジュールの下部外周を囲んで前記分離槽側開口部の延長筒部を形成するのが好適である。
【0012】
また、前記生物反応槽内に設置する前記汚泥液供給管の上流端部分は、該生物反応槽内の汚泥液の循環流における下降流部に、下向きに開放して設置するように構成してもよい。
【0013】
また、前記空気供給手段により前記空気供給口から前記膜分離槽に供給する空気流量を、該空気流量をQa[Nm3/h]、膜分離槽へ供給される汚泥液流量をQw[m3/h]としたとき、揚水係数k=1−[1÷(Qa÷Qw+1)]が0.2〜0.8となるような範囲に規定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の膜分離装置によれば、活性汚泥液を収容した生物反応槽とは別途に設置した膜分離槽に、膜モジュールを縦向きに複数配置するとともに、前記生物反応槽と前記膜分離槽とで汚泥液を循環させるために、膜分離槽と生物反応槽とを下部の汚泥液供給管および上部の汚泥液返送管でそれぞれ接続し、前記汚泥液供給管は、下流端部分が膜分離槽の内部まで貫入し、膜モジュールの各々の下部に延びて、各膜モジュールの底部位置に対応して上向きに開放した分離槽側開口部を有する一方、膜分離槽内に空気を噴出する空気供給手段は、膜モジュールに向けて空気を噴出する空気供給口を上記分離槽側開口部に設置しているため、この空気供給口から噴出する空気により、汚泥液供給管の分離槽側開口部を通して生物反応槽からの汚泥液を膜分離槽内に送給するとともに、膜モジュールの膜洗浄を行うことができることにより、膜分離槽と生物反応槽との汚泥液循環に必要な動力が削減でき、さらに、膜分離槽内の汚泥液濃度を一定に保ち、膜モジュールによる生物反応処理後の汚泥液の固液分離を安定的に継続処理することができる。
【0015】
特に、上記生物反応槽から膜分離槽への下部の汚泥液供給管が膜分離槽内まで貫入しており、この汚泥液供給管は分離槽側開口部が上方向のみであり、分離槽側開口部の上部に各膜モジュールが設置され、膜洗浄のための空気を噴出することに応じて、この噴出空気の混入によって膜分離槽内での汚泥液供給管内の汚泥液の比重が、生物反応槽と汚泥液供給管の接続部分の比重よりも軽くなると同時に、供給された空気が上昇移動するのに伴い、汚泥液供給管の分離槽側開口部から汚泥液が膜分離槽へ順次押し出されて、上昇移動するように送給される。そのため、生物反応槽の汚泥液は、汚泥液供給管に吸い込まれて流入し膜分離槽へ送給され、膜分離槽内に増量した汚泥液は、上部の汚泥液返送管によって生物反応槽に戻されるように、生物反応槽と膜分離槽間にて汚泥液の循環が生じることとなる。
【0016】
なお、膜分離槽内の汚泥液供給管に上向き方向以外に分離槽側開口部が開口していると、この分離槽側開口部から汚泥液供給管内に膜分離槽内の汚泥液を吸い込むこととなり、生物反応槽から汚泥液供給管内に汚泥液を吸い込まなくなって、上記のような空気噴出に伴う汚泥液の循環作用を得ることができない。
【0017】
その際、上記汚泥液供給管の分離槽側開口部内に、前記膜モジュールの下部を固定し、該膜モジュールの下部外周を囲んで前記分離槽側開口部の延長筒部を形成すると、汚泥液供給管内の汚泥液の送給特性と、供給空気による膜閉塞の阻止特性とが効率よく良好に確保できる。
【0018】
また、上記生物反応槽内に設置する汚泥液供給管の上流端部分は、この生物反応槽内の汚泥液の循環流における下降流部に、下向きに開放して設置する構成とすると、生物反応槽における良好な生物処理特性を確保しつつ、汚泥液供給管への空気の流入を抑制して、所望の汚泥液の循環量を維持することができる。
【0019】
上記生物反応槽においては、様々な汚水の生物処理方法があるが、膜分離槽に供給される汚泥液は、好気的に生物処理を行う生物反応槽である場合が多い。そして、生物反応槽が好気槽である場合、この生物反応槽には空気が供給される。本発明においては、汚泥液供給管の分離槽側開口部に空気を供給して、空気による押上げ力で分離槽側開口部付近の汚泥液を押し出し、汚泥液供給管内における比重差と分離槽側開口部からの汚泥液の流出に伴う負圧とにより生物反応槽から汚泥液を吸い込み、液面差などの圧力差で汚泥液返送管により膜分離槽から生物反応槽へ余剰の汚泥液を戻すように汚泥液の循環を行わせる装置であるため、気泡が生物反応槽より汚泥液供給管内に混入してしまうと比重差が小さくなるとともに吸引力が低下し、汚泥液の循環量が減ってしまう。
【0020】
このために生物反応槽における汚泥液供給管の上流端部分の反応槽側開口部を、好気処理用の空気供給に伴う生物反応槽内の汚泥液の循環流における下降流部に、下向きに開放して設置した場合には、気泡の吸い込みを低減でき、汚泥液循環量の低下を抑制することができる。特に、生物反応槽として好気槽での空気(酸素)供給手段が、微細気泡による散気装置である場合、酸素溶解効率が高いため、吹き込む空気流量は少なくてすむし、気泡自体が小さいため、汚泥液供給管内への生物反応槽側からの気泡流入量を少なくすることができる。
【0021】
また、前記空気供給手段により空気供給口から膜分離槽に供給する空気流量を、この空気流量をQa[Nm3/h]、膜分離槽へ供給される汚泥液流量をQw[m3/h]としたとき、揚水係数k=1−[1÷(Qa÷Qw+1)]が0.2〜0.8となるような範囲に規定すると、膜モジュールの膜閉塞を防止して良好な分離処理を継続することができる。
【0022】
つまり、膜モジュールの閉塞阻止用の空気流量を確保するとともに、それに伴う汚泥液流量すなわち生物反応槽からの汚泥液の循環供給を確保することで、膜分離槽内MLSS濃度が過大とならないようにして、膜分離性能が維持できる。汚泥液流量が膜モジュールの処理能力を超えて大きくなると、その汚泥液流量を得るための空気流量が膨大となり、不適切である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の第1〜第4の実施形態に係る膜分離装置について詳細に説明する。図1〜図3は、それぞれ本発明の第1〜第3の実施形態に係る膜分離装置の概略構成を示す立面図、図4は本発明の第4の実施形態にかかる膜分離装置の概略構成を示す平面図である。
【0024】
<第1の実施形態>
図1に示すように、本実施形態の膜分離装置10は、活性汚泥と原水を混合した汚泥液を収容する生物反応槽20とは別途に設置された膜分離槽30を備える。膜分離装置10は、生物反応槽20における生物反応処理後の汚泥液を活性汚泥と処理水とに固液分離するためのものであって、前記膜分離槽30の槽内には、縦向きに複数の膜モジュール40が配置され、各膜モジュール40には不図示の吸引ポンプを備えた排水管50が接続され、ろ過膜41を透過した処理水を排出して膜分離を行う。
【0025】
上記膜モジュール40は、チューブ状または膜状に形成された中空糸膜などの微多孔性膜により形成されたろ過膜41と、該ろ過膜41を複数並べて下端部を保持する下支持体42と、上端部を保持する上支持体43とで構成されている。上支持体43は上記ろ過膜41を透過した処理水が集まる集水部(図示せず)を内蔵し、前記排水管50が接続される排水口43aを備えている。この排水管50は、膜分離槽30の外部に導出され、図示しない吸引ポンプに接続される。
【0026】
1つの膜分離槽30の槽内には、処理流量に対応した複数の膜モジュール40が設置されるものであり、膜分離槽30の槽内を下方より上方に汚泥液が流動できるように所定の間隔を保って、列状(図4参照)、円弧状などに配置される。
【0027】
前記生物反応槽20と前記膜分離槽30とで汚泥液を循環させるために、この生物反応槽20と膜分離槽30とは、下部の汚泥液供給管60で接続されるとともに、上部の汚泥液返送管70で接続されている。そして、上記汚泥液供給管60には、膜分離槽30の槽内に空気を噴出する空気供給手段80が接続され、加圧空気が供給される。
【0028】
そして、前記汚泥液供給管60の上流端部は、前記生物反応槽20の下部の壁面に接続され、液面より下方位置の壁面に開口して、該生物反応槽20に収容した中間部近傍の汚泥液が流入する反応槽側開口部61となる。
【0029】
また、前記汚泥液供給管60の下流端部は、前記膜分離槽30の底部近傍の壁面に接続され、該壁面を貫通して先端部分が膜分離槽30の内部まで貫入し、必要に応じて分岐し、前記膜モジュール40の各々の下部に延びて、各膜モジュール40の底部位置に対応してそれぞれ分離槽側開口部62が上向きに開放している。
【0030】
上記汚泥液供給管60の分離槽側開口部62には、前記膜モジュール40の下部の下支持体42が固定保持されるものであり、この分離槽側開口部62の周囲には延長筒部63が膜モジュール40の下部の外周に沿って囲むように、上方に延びて形成されている。この延長筒部63の高さは、膜モジュール40の下部から少なくとも汚泥液供給管60の管径の3倍以上の高さまで囲むように形成するのが好ましい。
【0031】
また、上記汚泥液供給管60の分離槽側開口部62には、前記空気供給手段80の空気供給口81が各膜モジュール40に向けて空気を噴出するように設置されている。この空気供給手段80は、各膜モジュール40に対応する空気供給口81に接続されたエアパイプ82を備え、エアポンプ83に接続されて加圧空気を供給する。上記空気供給口81は、前記汚泥液供給管60の分離槽側開口部62の近傍に存在する汚泥液を、分離槽側開口部62から延長筒部63に押し上げて、膜分離槽30の内部に吐出するように作用させる。そのために、該空気供給口81は、噴出した空気が汚泥液供給管60の内部の汚泥液に混ざって分離槽側開口部62の方向に移動するように、この分離槽側開口部62より下方位置に設置された単数または複数の空気噴出口によって構成される。なお、上記延長筒部63が設置されている場合には、空気供給口81の開口位置は、この延長筒部63内に配置してもよい。
【0032】
一方、前記汚泥液返送管70は、その上流端部は前記膜分離槽30の上部の壁面に接続され、液面近傍位置の壁面に開口して、該膜分離槽30に貯留した余剰の返送汚泥液が流入する上流開口部71となる。また、前記汚泥液返送管70の下流端部は、前記生物反応槽20の上部の壁面に接続され、通常水位の液面より上方の壁面に開口して、該生物反応槽20への返送汚泥液が流出する下流開口部72となる。
【0033】
上記汚泥液返送管70は、汚泥の逆流を防止するために膜分離槽30から生物反応槽20に向けた下り方向のゆるやかな傾斜を有するように設置することが望ましい。
【0034】
なお、生物反応槽20での処理に応じて発生した余剰汚泥は、別途引き抜かれて外部に排出される。
【0035】
上記のような第1の実施形態の作用を説明すれば、空気供給手段80の空気供給口81から空気を噴出すると、その気泡が汚泥液供給管60の内部に存在する汚泥液に混入することによって、気泡の浮力による押上げ力が作用するとともに、空気の混入によって汚泥液供給管60の分離槽側開口部62における汚泥液の比重が軽くなることで、汚泥液供給管60の分離槽側開口部62より汚泥液が上方に押し上げられる。この分離槽側開口部62より順に汚泥液が上昇して吐出されるのに伴って、汚泥液供給管60の内部より分離槽側開口部62に向けて汚泥液が吸引移動され、生物反応槽20内の汚泥液が反応槽側開口部61より汚泥液供給管60内に流入する流動が生起する。
【0036】
前記分離槽側開口部62より延長筒部63および膜モジュール40の下部外周に沿って上昇移動した汚泥液は、膜モジュール40のろ過膜41と接触することにより水分がろ過膜41を透過し、この透過した処理水が上支持体43の排水口43aから排水管50を経て排出される。これと同時に、膜モジュール40のろ過膜41の表面に噴出空気が接触してその表面に付着する汚泥を洗浄剥離し、膜閉塞を阻止することで、安定したろ過処理特性を維持することができる。
【0037】
上記延長筒部63の上端より膜分離槽30へ順次押し出され、上昇移動する汚泥液によって、膜分離槽30内の汚泥液量が増加し、その液面が上昇して汚泥液返送管70の上流開口部71の高さに達すると、この膜分離槽30内の上部汚泥液が汚泥液返送管70を通って生物反応槽20へ送給される。
【0038】
なお、後述の第3の実施形態のように、汚泥液供給管60が接続される生物反応槽20が好気槽20Cで好気処理用の空気供給に伴う汚泥液の旋回流Rがある場合には、前記汚泥液供給管60の上流側の部分は、先端部60aが生物反応槽20に貫入し、上流端部分を下向きに屈曲させて、その反応槽側開口部61が上記旋回流Rにおける下降流部に下向きに開放するように設置する。旋回する汚泥液が直接に汚泥液供給管60の開口部分に流入しないようにすることにより、気泡の吸い込みによる汚泥循環量の低下を抑制するように設けるものである。後述の第2の実施形態においても同様である。
【0039】
上記のように本実施形態においては、膜分離槽30における上向きに開口する分離槽側開口部62からの空気の噴出のみによって、生物反応槽20において処理された汚泥液が膜分離槽30に循環するように送給するものである。その汚泥液の循環流量は、前記空気供給手段80による噴出空気流量に応じて増大する。
【0040】
そして、上記汚泥液供給管60の分離槽側開口部62に設けた空気供給口81から膜分離槽30に供給する空気流量を、この空気流量をQa[Nm3/h]、膜分離槽30へ供給される汚泥液流量をQw[m3/h]としたとき、揚水係数k=1−[1÷(Qa÷Qw+1)]が0.2〜0.8となるような範囲に規定する。
【0041】
特に、本実施形態のように、循環汚泥液の全量を噴出空気によって送給するための空気流量Qaは、比較的大きな量となるもので、上記揚水係数kも大きな値となる傾向にある。この空気流量Qaと汚泥液流量Qwとの適性関係については、後述の実施例に示す。
【0042】
そして、上記空気流量Qaの供給により、膜モジュール40の膜閉塞を阻止して良好な分離性能を継続することができる。つまり、膜モジュール40の閉塞阻止用の空気流を確保するとともに、それに伴う汚泥液流量すなわち生物反応槽20からの汚泥液の供給を確保することで、膜分離槽内MLSS濃度(1リットル中の活性汚泥浮遊物質mg)が過大とならないようにして、膜分離性能が維持できる。汚泥液流量が膜モジュール40の処理能力を超えて大きくなると、その汚泥液流量を得るための空気流量が膨大となり、不適切である。
【0043】
<第2の実施形態>
図2に示すように、本実施形態の膜分離装置11は、第1の実施形態と同様に、汚泥液を収容する生物反応槽20とは別途に設置された膜分離槽30を備え、膜分離槽30には複数の膜モジュール40が配置され、各膜モジュール40には排水管50が接続され、さらに、生物反応槽20と膜分離槽30とは汚泥液の循環のために、下部の汚泥液供給管60および上部の汚泥液返送管70で接続されている。反応槽側開口部61が生物反応槽20に接続された汚泥液供給管60は、各膜モジュール40の底部位置に対応してそれぞれ上向きに開放した分離槽側開口部62に、膜分離槽30の槽内に空気を噴出する空気供給手段80が接続され、空気供給口81より加圧空気が噴出される。
【0044】
前記汚泥液供給管60の下流端部は、膜分離槽30の壁面を貫通して先端部分が膜分離槽30の内部まで貫入し、必要に応じて分岐し、前記膜モジュール40の各々の下部に延びて、各膜モジュール40の底部位置に対応してそれぞれ分離槽側開口部62が上向きに開放している。また、汚泥液供給管60の分離槽側開口部62には、前記膜モジュール40の下部の下支持体42が固定保持され、分離槽側開口部62の周囲には延長筒部63が膜モジュール40の下部の外周を囲んで上方に延設されている。そして、汚泥液供給管60の分離槽側開口部62には、前記空気供給手段80の空気供給口81が各膜モジュール40に向けて空気を噴出するように設置されている。一方、前記汚泥液返送管70は、上流開口部71が膜分離槽30の液面近傍位置の壁面に開口し、下流開口部72が生物反応槽20の液面より上方の壁面に開口して、膜分離槽30の余剰の汚泥液を生物反応槽20へ返送する。その他、第1の実施形態と同様の構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
本実施形態において、前述の第1の実施形態と異なる構成は、生物反応槽20の底部より膜分離槽30の底部に対し、汚泥液を動力によって送給する汚泥液送給手段90が別途設置されている点である。この汚泥液送給手段90は、一端が生物反応槽20に接続され、他端が分岐して膜分離槽30の複数位置に接続開口された汚泥液送給管91と、その途中に配設された送給ポンプ92とを備えてなる。
【0046】
つまり、本実施形態の空気供給手段80による膜分離槽30に対する空気供給口81からの空気噴出に伴う汚泥液の循環供給は、補助的なものとして使用され、膜モジュール40の膜洗浄に必要な空気流量の供給を優先し、汚泥液循環に必要とされる空気流量より少ない噴出流量に設定されている。
【0047】
上記のような第2の実施形態の作用を説明する。本実施形態においても、上記空気供給手段80の空気供給口81から空気を噴出することにより、第1の実施形態とほぼ同様の汚泥液の供給作用と膜モジュール40の膜洗浄作用とを有する。しかし、汚泥液の供給能力つまり生物反応槽20から膜分離槽30に送給する汚泥液流量は、必要量の全量ではなく、動力を用いた汚泥液送給手段90による供給量との合計量が必要量となるように設定されている。そして、汚泥液送給手段90により、全量を供給する場合より送給ポンプ92の駆動に必要な動力が削減でき、空気噴出に伴う膜洗浄および濃度の均等化の作用が得られる。
【0048】
上記のように本実施形態においては、生物反応槽20からの膜分離槽30への汚泥液の供給は、空気噴出によるものが補助的に利用される。この場合においても、膜分離槽30に供給する空気流量を、この空気流量をQa[Nm3/h]、膜分離槽30へ供給される汚泥液流量をQw[m3/h]としたとき、揚水係数k=1−[1÷(Qa÷Qw+1)]が0.2〜0.8となるような範囲に規定するものであるが、上記揚水係数kは小さな値となる傾向にある(後述の実施例参照)。
【0049】
<第3の実施形態>
図3に示すように、本実施形態の膜分離装置12は、3つの槽で構成された生物反応槽20を備えるとともに、この生物反応槽20とは別途に設置された膜分離槽30を備える。生物反応槽20は、嫌気槽20Aと、無酸素槽20Bと、好気槽20Cとで構成され、第1槽の嫌気槽20Aに原水パイプ25が接続され、原水がポンプ26によって供給され、順に第2槽の無酸素槽20Bから第3槽の好気槽20Cに送給され、好気槽20Cに汚泥液供給管60の上流端部が挿入され、汚泥液を吸引するように設置されている。
【0050】
前記膜分離槽30の槽内には、前述の第1および第2の実施形態と同様に、縦向きに複数の膜モジュール40が配置され、各膜モジュール40には排水管50が接続され、ろ過膜41を透過した処理水を排出して膜分離を行う。膜モジュール40の構造も同様で、ろ過膜41と下支持体42と上支持体43とで構成され、上支持体43に排水管50が接続される。
【0051】
上記生物反応槽20の第3槽の好気槽20Cと、前記膜分離槽30とで汚泥液を循環させるために、好気槽20Cと膜分離槽30とは、下部の汚泥液供給管60で接続されるとともに、上部の汚泥液返送管70で接続されている。
【0052】
そして、前述の第1および第2の実施形態と同様に、膜分離槽30における前記汚泥液供給管60には、膜分離槽30の槽内に空気を噴出する空気供給手段80が接続され、加圧空気が供給される。つまり、汚泥液供給管60の下流端部は、前記膜分離槽30の底部近傍の壁面に接続され、該壁面を貫通して先端部分が膜分離槽30の内部まで貫入し、必要に応じて分岐し、前記膜モジュール40の各々の下部に延びて、各膜モジュール40の底部位置に対応してそれぞれ分離槽側開口部62が上向きに開放している。この分離槽側開口部62には、膜モジュール40の下部の下支持体42が固定保持されるとともに、開口の周囲には延長筒部63が膜モジュール40の下部外周を囲むように、上方に延びて形成されている。さらに、上記分離槽側開口部62には、空気供給口81が各膜モジュール40に向けて空気を噴出するように設置され、エアパイプ82を経て加圧空気が供給される。
【0053】
そして、前記汚泥液供給管60の上流側部分は、前記生物反応槽20の第3槽の好気槽20Cの液面より下方位置の壁面に接続され、この壁面を貫通して先端部60aが好気槽20Cの内部に貫入してから下向きに屈曲され、先端の反応槽側開口部61が下向きに開口する。この先端の反応槽側開口部61が開口する好気槽20Cの部分には、後述のように、好気性処理のための空気の噴出に伴う汚泥液の旋回流Rがあり、この旋回流Rにおける下降流部に下向きに開放するように設置されている。この下向きに開口した反応槽側開口部61より、旋回する汚泥液流における混入空気が多い上昇流部の汚泥液が直接に流入しないようにして、空気の流入を抑制しつつ、好気槽20Cの汚泥液を吸引するように設けられている。
【0054】
一方、前記汚泥液返送管70は、その上流開口部71は前記膜分離槽30の上部の壁面に接続され、液面近傍位置の壁面に開口し、下流側部分は前記生物反応槽20の嫌気槽20A、無酸素槽20B、好気槽20Cの上部に設置された返送分岐管73A,73B,73Cにそれぞれ接続されて、膜分離槽30の余剰汚泥液をそれぞれ返送し、さらなる余剰汚泥液は排出バルブ74を経て、外部に引き抜き排出される。
【0055】
上記生物反応槽20においては、投入される活性汚泥により様々な原水の浄化処理能力があり、この活性汚泥の中には細菌、原生動物などいろいろな微生物が数多く生きており、浄化する原水の種類によりその含まれる成分に対応して、反応条件を変更するものである。前記第1槽の嫌気槽20Aは、酸素が存在する状態で生存が困難な嫌気性微生物が活動して原水中の汚染物質の分解を行う嫌気性処理用のもので、例えば、メタン発酵処理がある。第2槽の無酸素槽20Bは、無酸素状態で脱窒細菌が有機物をエネルギー源として亜硝酸態窒素や硝酸態窒素を窒素ガスなどに還元する処理を行うもので、硝化作用と組み合わせることによって原水中の窒素を除去することができる。
【0056】
そして、第3槽の好気槽20Cは、空気の存在下で生育、増殖する好気性細菌、カビ類、原虫類、藻類、プランクトンその他の好気性微生物により有機物を分解し、原水の安定化を図る好気性処理用のもので、この好気槽20Cには散気装置85が設置されて空気(酸素)が供給されるとともに、空気の供給に伴う旋回流Rによって攪拌が行われる。散気装置85は、好気槽20Cの底部中央に配設された散気口86を備え、エアポンプ88からの散気管87が接続され、気泡状の空気を噴出するように設けられている。この空気の供給に伴って好気槽20Cの内部には、中央付近の散気口86上方の空気噴出部分で上昇流が、周辺部で下降流が発生し、全体で矢印Rで示すような汚泥循環流(旋回流)が生起するものであり、この旋回流Rに対し、上記のように汚泥液供給管60の先端の反応槽側開口部61を、空気の混入が少ない下降流の部分に下向きに開口させて、空気の吸引をできるだけ少なくしている。
【0057】
なお、上記のように、前記好気槽20Cでの空気の供給が散気装置85によって微細気泡を汚泥液に混入するようにした場合には、酸素溶解効率が高いため、好気槽20Cへ吹き込む空気流量は少なくてすむとともに、気泡自体が小さいため、汚泥液供給管60内への好気槽20C側からの気泡流入量を少なくすることができる。
【0058】
上記のような第3の実施形態の作用を説明すれば、膜分離槽30における空気供給手段80の空気供給口81から空気を噴出することに伴う作用は、第1の実施形態とほぼ同様の汚泥液循環作用と膜洗浄作用とを有する。つまり、膜分離槽30の内部における汚泥液供給管60の分離槽側開口部62に空気を供給して、空気による押上げ力で開口部付近の汚泥液を押し出し、汚泥液供給管60内における比重差と負圧により好気槽20Cから汚泥液を吸い込み、液面差などの圧力差で汚泥液返送管70により膜分離槽30から好気槽20Cに戻すように汚泥液の循環を行わせる。この場合に、好気槽20Cでは好気反応のために空気の混入による汚泥液に旋回流Rが発生しているのに伴って、例えば、好気槽20Cの上昇流部分では汚泥液に多量の空気が混入しているので、この部分の汚泥液を吸引すると汚泥液とともに気泡を汚泥液供給管60内に吸引することになる。この場合には、比重差が小さくなるとともに汚泥液の吸い込み力が低下し、好気槽20Cからの汚泥液の吸引量が減少し、循環液流量の低減に伴って膜分離槽30での処理量が低下することになる。
【0059】
これに対し、本実施形態では、好気槽20Cにおける汚泥液供給管60の上流端部分の反応槽側開口部61を、汚泥液の旋回流Rの下降流部に下向きに開放したことにより、空気の混入が低減した部分の汚泥液を吸い込むために、比重差も大きく吸引負圧も維持でき、好気槽20Cからの汚泥液流量の低下を抑制することができ、膜分離槽30での処理能率を維持できる。
【0060】
<第4の実施形態>
図4に示すように、本実施形態の膜分離装置13は、生物反応槽20から汚泥液が循環される膜分離槽30を複数、図示の場合は第1膜分離槽30A、第2膜分離槽30Bおよび第3膜分離槽30Cの3つの膜分離槽を備えた例である。
【0061】
各膜分離槽30A〜30Cには、それぞれ6個の膜モジュール40が配設され、一端の反応槽側開口部61が生物反応槽20の下部に接続された汚泥液供給管60は、途中で3つの汚泥液供給管60A,60B,60Cに分岐し(分岐しないでそれぞれ独立接続してもよい)、それぞれ開閉バルブ65A,65B,65Cが設置され、各膜分離槽30A〜30Cの下部に接続される。各汚泥液供給管60A〜60Cは、各膜分離槽30A〜30Cの内部に貫入してさらに枝管に分岐し、各先端部はそれぞれの膜モジュール40の下方位置に延びて、前記第1の実施形態と同様に、不図示の分離槽側開口部62が上向きに開口し、不図示の空気供給手段80の空気供給口81が開口して、各膜モジュール40に対して空気を噴出するように構成されている。
【0062】
また、詳細構造は図示していないが、各膜分離槽30A〜30Cと生物反応槽20とを上部で接続する汚泥液返送管70、各膜モジュール40のろ過膜41を透過した処理水を排出する排水管50などが、第1の実施形態と同様に設置されている。
【0063】
図4に示した状態は、第1膜分離槽30Aおよび第2膜分離槽30Bでは、それぞれの汚泥液供給管60A,60Bの開閉バルブ65A,65Bが開作動され、空気供給手段80によってそれぞれの膜分離槽30A,30Bにおける膜モジュール40に対して下方より空気が噴出されて、前述の第1の実施形態で説明したような生物反応槽20との間で汚泥液が循環し、各膜モジュール40でろ過膜41を透過した処理水が吸引され、排水管50によって排出される水処理が継続されている。
【0064】
一方、第3膜分離槽30Cでは膜分離処理が停止されて浸漬洗浄処理が行われている。この第3膜分離槽30Cに対する汚泥液供給管60Cの開閉バルブ65Cは閉作動され、汚泥液の循環が停止されるとともに、内部の汚泥液が排出され、槽内に次亜塩素酸などの洗浄用薬液が投入されて、膜モジュール40などの槽内洗浄が実施されている。
【0065】
上記のような洗浄処理は、他の第1膜分離槽30Aおよび第2膜分離槽30Bに対しても、順次所定間隔で実施されるものであり、複数の膜分離槽を設置していることにより、膜分離装置13の全体としては水処理を停止させることなく、処理能力を一部低下させた状態で継続処理を行いつつ、メンテナンスを実行できる構成としている。
【0066】
上記のような第1〜第4の実施例形態には、次のような変形態様も含まれる。前記膜分離槽30に設置される膜モジュール40の下部は、汚泥液供給管60の延長筒部63によって囲まれ覆われているが、この延長筒部63をさらに延長して膜モジュール40の全てを覆う程の長い延長筒部を形成してもよい。上記汚泥液供給管60の延長筒部63をさらに延長形成し、この延長筒部63の先端と、前記汚泥液返送管70の先端とを接続するようにしてもよく、その際には、膜モジュール40を収容した延長筒部63の内部、つまり、汚泥液供給管60および/または汚泥液返送管70の内部に膜分離槽を構成した形態となる。
【0067】
また、前記膜分離槽30内には、補助的混合方法として攪拌機や混合液の液送による攪拌混合手段を用いるようにしてもよい。
【実施例】
【0068】
本発明の実施例として、直径16cmの円筒形膜モジュール1本と、直径20cmの汚泥液供給管および有効容量0.75m3の膜分離槽からなる試験装置を運転した。
【0069】
膜洗浄空気供給によって必要十分な循環水量(汚泥液流量)が確保できるか確認するために、模擬的な生物反応槽として水深4mの水槽に水道水を貯留させ、水道水貯槽の底部から50cm上部に膜分離槽へつながる汚泥液供給管を設けた。汚泥液供給管は膜分離槽内で上向きに立ち上がり、膜モジュールの下部100cmを覆うように立ち上げた延長筒部を設け、その立ち上げ配管底部から20cm上方に設置した洗浄用空気供給手段から空気を8Nm3/h供給したところ、汚泥液供給管によって膜分離槽に流入する循環液流量は約3m3/hであった。膜モジュール1本のろ過水量0.5m3/hで連続運転を行ったところ、膜分離槽からの汚泥液返送量は2.5m3/hとなった。
【0070】
実際に汚泥液を通液した場合、ろ過処理によって膜分離槽内は生物反応槽よりもMLSS濃度が高くなるが、この循環量では生物反応槽のMLSS濃度の約120%程度に抑えることができ、安定したろ過運転が可能となることが確認できた。
【0071】
次に、前述の揚水係数kを0.2〜0.8の範囲に規定するデータについて説明する。
【0072】
前述のように、揚水係数kは、空気流量をQa[Nm3/h]、汚泥液流量をQw[m3/h]として、k=1−[1÷(Qa÷Qw+1)] により求まる。この揚水係数kは、上限の境界値より高い場合、膜分離槽への汚泥液流量Qwが低減し、膜モジュールによるろ過継続に応じて排出される処理液量に伴い、膜分離槽MLSS濃度が高くなり、膜モジュールによるろ過に支障を来す問題がある。一方、揚水係数kが、下限の境界値より低い場合、汚泥液流量Qwが過剰となり動力の過剰投入の問題、または、空気流量Qaが過小の場合は膜モジュールの洗浄不足となって、やはりろ過に支障を来す問題があり、それらを解消する適正な範囲を見出したものである。
【0073】
前述の実施例において、空気流量Qaを3[Nm3/h]、5[Nm3/h]、10[Nm3/h]と変化させ、それぞれの空気流量Qaにおいて、供給する汚泥液流量Qwを2〜10[m3/h]に変化させた場合の、揚水係数kの変化を求めた結果を、図5のグラフに示す。この図5に示すように、揚水係数kは、空気流量Qaが多いほど高くなり、汚泥液流量Qwが増加するほど低くなっている。なお、実施例の膜モジュールの場合、1本当たりの洗浄空気流量は5[Nm3/h]が標準値である。
【0074】
前記汚泥液流量Qwは膜分離槽内のMLSS濃度と関係があり、図5のように空気流量Qaと汚泥液流量Qwを変化させた場合に、膜モジュールでのろ過水量を0.83[m3/h]に維持した際の、各空気流量Qaの変化に対する膜分離槽内MLSS濃度[mg/L]と揚水係数の変化を求めた結果を、図6のグラフに示す。
【0075】
上記実施例の中空糸膜モジュールでは、膜分離槽内MLSS濃度は12000mg/Lが上限であり、それ以上であると液体の粘性が高くなりすぎて混合できなくなるので、供給する汚泥液流量Qwは3[m3/h]以上でなければろ過が継続できない。逆に汚泥液流量Qwが高すぎると、そのための空気流量Qaが膨大となる問題がある。10[m3/h]を超える汚泥液流量Qwは必要性がなく現実的ではない。
【0076】
上記のような観点から図5および図6の特性を判断すると、空気流量Qaを余裕を持って多めの10Nm3/hに設定した場合、揚水係数は0.5〜0.8の範囲が最適である。また、必要とされる空気流量Qaが3Nm3/hに減少した場合、揚水係数は0.2〜0.5の範囲が最適となり、上記のような点に基づき、空気流量Qaは揚水係数が0.2〜0.8となるような範囲に規定することが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる膜分離装置の概略構成を断面形状で示す立面図
【図2】本発明の第2の実施形態にかかる膜分離装置の概略構成を断面形状で示す立面図
【図3】本発明の第3の実施形態にかかる膜分離装置の概略構成を断面形状で示す立面図
【図4】本発明の第4の実施形態にかかる膜分離装置の平面図
【図5】実施例における膜分離装置おいて、空気流量Qaおよび汚泥液流量Qwの変化と揚水係数の関係を示すグラフ
【図6】図5の結果に基づき膜分離槽内MLSS濃度と揚水係数の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0078】
10〜13 膜分離装置
20 生物反応槽
20C 好気槽
30 膜分離槽
40 膜モジュール
41 ろ過膜
50 排水管
60 汚泥液供給管
61 反応槽側開口部
62 分離槽側開口部
63 延長筒部
70 汚泥液返送管
80 空気供給手段
81 空気供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥液を収容した生物反応槽における生物反応処理後の汚泥液を固液分離するための膜分離装置であって、
前記生物反応槽とは別途に設置された膜分離槽と、
該膜分離槽内に縦向きに複数配置された膜モジュールと、
前記生物反応槽と前記膜分離槽とで汚泥液を循環させるために、前記膜分離槽と前記生物反応槽とを下部で接続する汚泥液供給管と、
前記生物反応槽と前記膜分離槽とで汚泥液を循環させるために、前記膜分離槽と前記生物反応槽とを上部で接続する汚泥液返送管と、
前記膜分離槽内に空気を噴出する空気供給手段とを備え、
前記汚泥液供給管は、下流端部分が前記膜分離槽の内部まで貫入し、前記膜モジュールの各々の下部に延びて、各膜モジュールの底部位置に対応して上向きに開放した分離槽側開口部と、
該分離槽側開口部に設置され、前記膜モジュールに向けて空気を噴出する前記空気供給手段の空気供給口とを有し、
前記空気供給口から噴出する空気により、前記汚泥液供給管の前記分離槽側開口部から汚泥液を前記膜分離槽内に送給するとともに、前記膜モジュールの膜洗浄を行うことを特徴とする膜分離装置。
【請求項2】
前記汚泥液供給管の分離槽側開口部内に、前記膜モジュールの下部を固定し、該膜モジュールの下部外周を囲んで前記分離槽側開口部の延長筒部が形成されたことを特徴とする請求項1記載の膜分離装置。
【請求項3】
前記生物反応槽内に設置する前記汚泥液供給管の上流端部分が、該生物反応槽内の汚泥液の循環流における下降流部に、下向きに開放して設置されたことを特徴とする請求項1または2記載の膜分離装置。
【請求項4】
前記空気供給手段により前記空気供給口から前記膜分離槽に供給する空気流量を、該空気流量をQa[Nm3/h]、膜分離槽へ供給される汚泥液流量をQw[m3/h]としたとき、揚水係数k=1−[1÷(Qa÷Qw+1)]が0.2〜0.8となるような範囲に規定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の膜分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−125360(P2010−125360A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300413(P2008−300413)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000101374)アタカ大機株式会社 (55)
【Fターム(参考)】