説明

膜厚検査装置

【課題】信頼性高く、高効率に膜の厚みを検査することが出来る膜厚検査装置の提供。
【解決手段】この膜厚検査装置1は、針部3と、針部3が挿通されたスライダー4と、スライダー4の後端外周側に装着されたつるまきバネ部5と、スライダー4の後端側に配された板バネ部6と、スライダー4及び板バネ部6が遊嵌された前筒部8と、前筒部8が螺合された後筒部11と、板バネ部6の圧縮により通電された場合に発光するLED部14とを備える。(検査する塗膜の厚みの規格値D−つるまきバネ部5及び板バネ部6の圧縮分d)分、針部3を露出させ、塗膜に針部3を刺し通すと、規格値D分、針部3が塗膜に挿入された場合に、板バネ部6が圧縮してLED部14が発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床及び壁、道路等に形成された膜の厚みを検査するために使用される膜厚検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床及び壁、道路等に、塗装等により樹脂製の膜が形成される場合、この塗膜が所定の規格値以上の厚みを有するか否かが検査される必要がある。従来、この塗膜の厚みを検査するために、塗膜に針が刺し通され、目視により所定の厚みを有するか否かが判断されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、検査する者の主観に基づく、目視による判断は不正確であり、また、効率が悪いという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、信頼性高く、高効率に膜の厚みを検査することが出来る膜厚検査装置の提供にある。
【0005】
また、本発明の目的は、正確に膜の厚みを計測することが出来る膜厚検査装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膜厚検査装置は、
(1)所定値以上の厚みを有するか否かを検査すべき膜に刺し通される針部、
(2)針部が挿通されており、針部に対して針部の軸方向に摺動可能に構成されているスライダー、
(3)スライダーを針部の先端方向に付勢する付勢手段、
(4)スライダーの摺動により、通電の有無が切り替えられる通電スイッチ
及び
(5)通電スイッチにより通電された場合に、光又は音を発して上記膜が上記厚みを有することを報知する報知手段
を備える。
【0007】
好ましくは、この膜厚検査装置は、スライダー、付勢手段及び通電スイッチが遊嵌されており、装置本体に対して進退可能に構成されている前筒部を備える。
【0008】
好ましくは、この膜厚検査装置においては、前筒部が、上記装置本体に螺合されている。
【0009】
好ましくは、この膜厚検査装置においては、前筒部が、上記スライダーの摺動を停止させるストッパー部を備える。
【0010】
また、本発明に係る膜厚検査装置は、
(1)厚みを測定すべき膜に刺し通される針部、
(2)針部が挿通されており、針部に対して針部の軸方向に摺動可能に構成されているスライダー、
(3)スライダーを針部の先端方向に付勢する付勢手段、
(4)スライダーと当接しており、スライダーの摺動に従い、針部の軸方向に摺動される摺動軸
及び
(5)摺動軸と当接しており、摺動軸の摺動に従い、針部の軸方向に摺動され、その摺動量に基づき上記膜の厚みが計測されるべく構成されている膜厚計測部
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の膜厚検査装置によれば、信頼性高く、高効率に膜の厚みを検査することが可能である。そして、膜厚検査装置が上記前筒部を備える場合は、作業者が、種々の膜の規格値に対応させて針部の露出量を変化させ、膜の厚みを検査することが可能である。この前筒部が装置本体に螺合されている場合は、容易に針部の露出量を変化させることが出来る。また、前筒部が上記ストッパー部を備える場合は、確実にスライダーの摺動が停止され得る。
【0012】
また、本発明の膜厚検査装置によれば、針部の膜への挿通に従う膜厚計測部の摺動量に基づいて正確に膜厚を計測することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
実施の形態1
【0015】
図1は、本発明の実施の形態1に係る膜厚検査装置が示された正面図、図2は、図1の膜厚検査装置が示された縦断面図である。
【0016】
この膜厚検査装置1は、建築物の床及び壁、道路等に、塗装等により形成された、樹脂製等の膜が所定の規格値以上の厚みを有するか否かを検査するための装置であり、作業者は、後述する方法により、膜厚検査装置1に備えられる針部の先端部を所定量、露出させた後、上記膜に針部を刺し通し、報知手段により膜厚の合否を知るように構成されている。
【0017】
ペン型の膜厚検査装置1は、ボディ部2と、前述した針部3と、針部3が挿通されたスライダー4と、スライダー4の後端部の外周側に装着されたつるまきバネ部5と、スライダー4の後端側に配置された板バネ部6と、スライダー4、つるまきバネ部5及び板バネ部6が遊嵌された前筒部8と、ボディ部2と前筒部8とを連結する後筒部11と、板バネ部6の圧縮により通電された場合に発光する発光ダイオード(LED)部14と、クリップ部15とを備える。
【0018】
板バネ部6は板バネ固定部7の先端面に固定されている。板バネ固定部7は、針部3の後端部が挿通された状態で固定された、針固定部9の先端部外周側を進退出来るように構成されている。
【0019】
スライダー4は、針部3の軸方向に、前筒部8内を摺動出来るように構成されている。スライダー4は、中央部4aが大径である。前筒部8は、中央部4aの外径より小径である先端孔8aと、中央部4aの外径と同径である中央孔8bと、中央部4aの外径より大径である後端孔8cとを有する。中央孔8bの先端部には、スライダー4の中央部4aが当接することでスライダー4の摺動が停止されるように、ストッパー部8dが設けられている。また、前筒部8の略中央部の外周面には、目盛が記載された目盛部8eが設けられている。前筒部8は後筒部11に螺合されており、前筒部8を1回転させることで前筒部8が1mm進退するように構成されている。
【0020】
板バネ固定部7は前筒部8に螺合されている。従って、前筒部8を回転させて針部3の先端側に下降させると、これに伴い、スライダー4、つるまきバネ部5及び板バネ部6も下降する。
【0021】
ボディ部2には電池13、13が収納されており、電池13のマイナス極側には、マイナス極押えバネ部12が配されている。マイナス極押えバネ部12は、押えバネ12aと、針接点部12bとを備える。押えバネ12aは電池13のマイナス極と当接しており、針接点部12bは、針固定部9に連設された接点挿通部10内を挿通されて、針部3の後端面と当接している。
【0022】
LED部14の一方のリード14aは、電池13のプラス極と当接しており、他方のリード14bはボディ部2と当接している。
【0023】
図3は、板バネ部6が示された拡大図であり、図3(a)は、平面図、図3(b)は、側面図である。板バネ部6は垂下部6a、6aを備えており、通電スイッチとして機能する。
【0024】
前述の針部3、板バネ部6、前筒部8、後筒部11、マイナス極押さえバネ部12は鋼製であり、導電性を有する。ボディ部2はアルミニウム合金製であり、導電性を有する。スライダー4、板バネ固定部7、針固定部9及び接点挿通部10はプラスチック製であり、絶縁性を有する。つるまきバネ部5が圧縮され、スライダー4が前筒部8に対し相対的に上昇すると、図3(b)に示されるように、板バネ部6の垂下部6a、6aが圧縮して、針部3と接触する。これにより、ボディ部2、後筒部11、前筒部8、板バネ部6、針部3及びマイナス極押さえバネ部12を介し、LED部14は電池13のマイナス極と接続されて通電し、LED部14が発光する。
【0025】
この膜厚検査装置1は、次のようにして使用される。まず、作業者は、硬質体であるコンクリート20の表面に針部3を当接させ、前筒部8を回転させて下降させる。前筒部8の下降に伴い、スライダー4、つるまきバネ部5及び板バネ部6が下降する。やがて、スライダー4の先端面がコンクリート20の表面に当接する。図4は、スライダー4の先端面がコンクリート20の表面に当接した状態が示された一部拡大断面図である。この段階では、スライダー4の中央部4aの先端面は前筒部8のストッパー部8dに当接しており、これらの間に隙間はない。
【0026】
さらに、前筒部8を回転させると、前筒部8はさらに下降し、これに伴い、つるまきバネ部5及び板バネ部6が下降する。しかし、スライダー4は、その先端がコンクリート20の表面に当接しているので、これ以上、下降することが出来ず、静止する。ここで、つるまきバネ部6が圧縮されつつ、スライダー4が前筒部8に対して相対的に上昇し、板バネ部6が圧縮されて、通電スイッチが入り、LED部14が発光する。図5は、板バネ部6が圧縮され、通電スイッチが入った状態が示された一部拡大断面図である。このときのスライダー4の先端面とストッパー部8dとの間に生じた隙間が、つるまきバネ部5及び板バネ部6の圧縮分dに相当する。この発光を確認した作業者は、前筒部8の回転を停止する。
【0027】
作業者が膜厚検査装置1をコンクリート20の表面から離すと、つるまきバネ部5が伸長して、スライダー4が下降する。図6は、このつるまきバネ部5が伸長した状態が示された一部拡大断面図である。スライダー4の先端面がストッパー部8dに当接しており、針部3の先端部が、つるまきバネ部5及び板バネ部6の伸長分dだけ、前筒部8内に入り込んでいる。
【0028】
次に、作業者は、目盛部8eの目盛を見て、塗膜に必要とされている厚みの規格値D(mm)分、前筒部8を後退させる。例えばDが2.0mmである場合、作業者は前筒部8を2.0mm後退させる。前筒部8の後退に伴い、スライダー4も後退し、針部3の先端部がスライダー4から露出する。図7は、この針部3の先端部がスライダー4から露出した状態が示された一部拡大断面図である。針部3の先端部の露出量は、D−d(mm)である。
【0029】
そして、作業者は、コンクリート20の表面に形成された塗膜21に、膜厚検査装置1の針部3を刺し通す。図8は、針部3が塗膜21に刺し通された状態が示された一部拡大断面図である。
【0030】
針部3の露出量はD−d(mm)であるので、針部3がDだけ塗膜21内に挿入され、スライダー4が前筒部8のストッパー部8dに対して遊び代dだけ上昇し、板バネ部6が圧縮したときに、通電スイッチがONになる。図9は、針部3がDだけ塗膜21内に挿入され、板バネ部6が圧縮されて、通電スイッチがONとなった状態が示された一部拡大断面図である。このとき、LED部14が発光する。
【0031】
塗膜21のDが2.0mmである場合、塗膜21の膜厚が2.0mm以上であるときは、針部3がD分、塗膜21に挿入されると、通電スイッチがONとなる。塗膜21の膜厚が2.0mm未満であるときは、針部3がD分、塗膜21に挿入されることはないので、針部3がコンクリート20の表面に当接していても、通電スイッチはOFFのままである。従って、本実施形態の膜厚検査装置1を使用することで、確実に、高効率に、膜厚がD以上であるか否かが判断され得る。
【0032】
上記実施形態においては、LED部14の発光により膜厚の合否が報知される場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、豆電球が発光したり、音声を発したりすることにより報知されることにしてもよい。さらに、スライダー4を針部3の先端方向に付勢する手段はつるまきバネ部5に限定されず、通電スイッチは板バネ部6に限定されるものではない。
【0033】
また、上記実施形態においては、作業者が予め板バネ部6の遊び代d分、較正をし、針部3を膜厚検査装置1から(D−d)分、露出させて膜厚を検査する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、所定の膜厚の検査用に、針部3の露出量が固定された膜厚検査装置1を使用することにしてもよい。
【0034】
実施の形態2
【0035】
図10は、本発明の実施の形態2に係る膜厚検査装置21が示された正面図、図11は、図10の膜厚検査装置21が示された縦断面図である。
【0036】
この膜厚検査装置21は、建築物の床及び壁、道路等に、塗装等により形成された、樹脂製等の膜の厚みを測定するための装置であり、作業者は、後述する方法により、膜厚検査装置21に備えられる針部を膜に刺し通し、膜厚計測部の摺動量により膜厚を計測出来るように構成されている。
【0037】
ペン型の膜厚検査装置21は、前筒部22、後筒部23、前述した針部24、スライダー25、つるまきバネ部26、針固定部27、摺動軸28、前述した膜厚計測部29、リング30、目盛部31及びクリップ部32を備える。
【0038】
スライダー25には針部24が挿通されており、前筒部22内を摺動出来るように構成されている。針部24の後端部は、針固定部27に、ピン31によりピン留めされて固定されている。スライダー25と針固定部27との間には、針部24が挿通された状態で、つるまきバネ部26が配されている。摺動軸28によりスライダー25と膜厚計測部29とが橋絡されており、スライダー25の摺動に従って、摺動軸28及び膜厚計測部29が摺動するように構成されている。
【0039】
針部24の先端部は、針部24が厚み分、膜に挿入され、最後にスライダー25が上昇してつるまきバネ部26が縮むときの縮み代d分、スライダー25の先端面からスライダー25内に入り込んだ状態で設けられている。
【0040】
そして、目盛部31は後筒部23の外周面に設けられており、mm単位で線が付されているが、最初の状態で、目盛部31の厚み計測線31aは、「0」線よりdだけマイナス側に位置しており、補正されている。従って、針部24が膜の厚み分、挿通されたときの厚み計測線31aの位置に対応する目盛を読むと、膜厚計測部29の摺動量からd分減じられていることになるので、膜の実際の厚みが計測されたことになる。
【0041】
この膜厚検査装置21は、次のようにして使用される。作業者は、コンクリート等の硬質体の表面に形成された塗膜に、この膜厚検査装置21を垂直に押し当て、押圧する。スライダー25が押し上げられて、針部24が膜に刺し通される。針部24が膜厚分、刺し通されてコンクリートの表面に突き当たり、動かなくなったときに、厚み計測線31aの位置に対応する目盛を読むと、膜厚が計測される。使用後は、膜厚計測部29の後端部を押圧して、元に戻す。
【0042】
本実施形態の膜厚検査装置21を使用することで、正確に膜厚が計測される。従って、本実施形態の膜厚検査装置21によれば、信頼性高く、高効率に膜の厚みを検査することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、建築物の床及び壁、道路等に形成された膜の厚みを検査するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る膜厚検査装置が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の膜厚検査装置1の縦断面図である。
【図3】図3は、板バネ部が示された拡大図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。
【図4】図4は、スライダーの先端面がコンクリートの表面に当接した状態が示された一部拡大断面図である。
【図5】図5は、板バネ部が圧縮され、通電スイッチが入った状態が示された一部拡大断面図である。
【図6】図6は、つるまきバネ部が伸長し、針部がスライダーに収容された状態が示された一部拡大断面図である。
【図7】図7は、針部の先端部がスライダーから露出した状態が示された一部拡大断面図である。
【図8】図8は、針部が塗膜に刺し通された状態が示された一部拡大断面図である。
【図9】図9は、針部がDだけ塗膜内に挿入され、通電スイッチが入った状態が示された一部拡大断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2に係る膜厚検査装置21が示された正面図である。
【図11】図11は、図10の膜厚検査装置21が示された縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・膜厚検査装置
3・・・針部
4・・・スライダー
5・・・つるまきバネ部
6・・・板バネ部
8・・・前筒部
11・・・後筒部
14・・・LED部
21・・・膜厚検査装置
22・・・前筒部
23・・・後筒部
24・・・針部
25・・・スライダー
26・・つるまきバネ部
28・・・摺動軸
29・・・膜厚計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定値以上の厚みを有するか否かを検査すべき膜に刺し通される針部と、
該針部が挿通されており、該針部に対して該針部の軸方向に摺動可能に構成されているスライダーと、
該スライダーを上記針部の先端方向に付勢する付勢手段と、
上記スライダーの摺動により、通電の有無が切り替えられる通電スイッチと、
該通電スイッチにより通電された場合に、光又は音を発して、上記膜が上記厚みを有することを報知する報知手段と
を備える膜厚検査装置。
【請求項2】
上記スライダー、付勢手段及び通電スイッチが遊嵌されており、装置本体に対して進退可能に構成されている前筒部を備える請求項1に記載の膜厚検査装置。
【請求項3】
上記前筒部が、上記装置本体に螺合されている請求項2に記載の膜厚検査装置。
【請求項4】
上記前筒部が、上記スライダーの摺動を停止させるストッパー部を備える請求項2又は3に記載の膜厚検査装置。
【請求項5】
厚みを測定すべき膜に刺し通される針部と、
該針部が挿通されており、該針部に対して該針部の軸方向に摺動可能に構成されているスライダーと、
該スライダーを上記針部の先端方向に付勢する付勢手段と、
上記スライダーと当接しており、上記スライダーの摺動に従い、上記針部の軸方向に摺動される摺動軸と、
該摺動軸と当接しており、上記摺動軸の摺動に従い、上記針部の軸方向に摺動され、その摺動量に基づき上記膜の厚みが計測されるべく構成されている膜厚計測部と
を備える膜厚検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−184147(P2006−184147A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378864(P2004−378864)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(591020526)井本刃物株式会社 (8)
【Fターム(参考)】