説明

膜回収装置及び膜回収方法

【課題】太陽電池等の表面に施される希少金属や有機物等を回収する。
【解決手段】透光基板の表面に膜が施された太陽電池等の板材からこの膜を回収する膜回収装置及び膜回収方法である。前記透光基板の表面の膜に照射するレーザ光を発生させ、当該レーザ光を制御して前記透光基板の裏面側から当該レーザ光を前記膜に照射し、前記透光基板にほとんど影響を与えずに当該膜を瞬時に加熱して局所的に膨張収縮させ、前記透光基板と前記膜の境界面をずらして互いの接着を破壊して剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光基板の表面に膜が施された太陽電池や液晶パネル等の板材から前記膜を回収する膜回収装置及び膜回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透光基板の表面に種々の機能を有する膜が施された板材は多数生産されている。例えば、地球温暖化対策等の目的で、世界中にたくさんの太陽電池が設置され始めている。太陽電池は、発電効率の低下等により寿命を迎える。そして、世界中に設置される太陽電池は、いずれ寿命を迎えて、大量の太陽電池の廃棄物が発生してしまう。太陽電池は、パネルの面積に比例した発電量になるため、大量のパネルが回収されることが予想される。
【0003】
また、テレビ等の表示装置では、液晶パネルが主流となっており、次世代の有機ELテレビ等も含めて、寿命を迎えたパネルが大量に発生することが予想される。この結果、太陽電池や液晶パネル等の、膨大な数のパネルが回収されることになる。これらのパネルからは、外装部や表示パネル部を含めて、再生されるべき部材が大量に出るものと予想される。
【0004】
太陽電池には、希少金属、有害金属、高額有機物等を使用して製造されている。このような太陽電池から、希少金属等を取り出すには、薬品等を用いるのが通常である。
【0005】
現在、上述のようなパネルを処理する技術としては、ガラス基板等の表面の薄膜を、化学薬品等を使用して回収する方法が一般的である。例えば太陽電池には、希少金属、有害金属、高額有機物等を使用して製造されている。このような太陽電池から、希少金属等を取り出すには、薬品等を用いるのが通常である。この薬品等を用いた回収工程としては、例えば、モジュールを粉砕する工程、粉砕物を酸で処理して薄膜の成分である金属等を溶出させる工程、金属含有固形物をケーキの状態で回収する工程、前記ケーキを多段プロセスで精製する工程等で、前記パネルが回収される。
【0006】
また、太陽電池、TFT液晶、カラーフィルター等の製造工程においては、金属膜や有機膜の製膜工程で不良と判断されるガラスがでる。このガラスは、その金属膜に対して酸処理をし、有機膜に対して強アルカリ溶剤等を用いて溶解して取り除く処理をして、再利用されていた。
【0007】
このようなパネルの処理方法としては特許文献1のようなものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、パネルを粉砕して化学薬品等を用いて処理する再生方法では、人体に悪影響を及ぼす有害物質が大量に発生してしまうという問題がある。
【0009】
また、上記処理には大量の化学薬品、酸、アルカリ液等を使用するが、多量の有害金属を含む化学薬品、酸、アルカリ液等の廃液がでるため、その廃液を処理するのにコストが嵩むという問題がある。
【0010】
本発明は、上述の問題点に考慮してなされたもので、膜を固形物の状態で回収して再利用をしやすくした膜回収装置及び膜回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、本発明は、透光基板の表面に膜が施された板材から当該膜を回収する膜回収装置及び膜回収方法である。この膜回収装置及び膜回収方法は、前記透光基板の膜に照射するレーザ光を発生させ、当該レーザ光を制御して、前記透光基板の裏面側から当該レーザ光を前記膜に照射し、前記透光基板にほとんど影響を与えずに当該膜を瞬時に加熱して局所的に膨張させると共に放熱して収縮させて前記透光基板と前記膜の境界面をずらし互いの接着を破壊して剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記透光基板の裏面側から前記レーザ光を前記膜に照射して前記透光基板にほとんど影響を与えずに当該膜を瞬時に加熱して局所的に膨張させると共に放熱して収縮させ、前記透光基板と前記膜の境界面をずらして互いの接着を破壊して剥離するため、化学薬品等を必要とせずに、前記膜を固形物のままで回収することができ、回収及びその後の再利用が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態にかかる薄膜回収装置1を示す概略構成図である。
【図2】薄膜回収部の一例を示す概略構成図である。
【図3】薄膜回収部の他の例を示す概略構成図である。
【図4】剥がれ落ちた薄膜の分離手段の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について説明する。本発明の膜回収装置及び膜回収方法は、透光基板の表面に施される膜材を剥離して回収するものである。膜材としては種々のものがあるが、ここでは太陽電池や液晶パネル等の表面に施される薄膜を回収する場合を例に説明する。太陽電池や液晶パネル等の透光基板の表面の薄膜には、希少金属(レアメタル)や、有害金属や、有機物が含まれている。本実施形態の膜回収装置及び膜回収方法は、このような薄膜を透光基板から回収して、薄膜の成分や透光基板を再利用するための装置及び方法である。透光基板は、透明基板や半透明基板等であって、レーザ光の一部又は全部を透過する基板である。透光基板の具体例としては、半導体用石英ガラスやアクリル樹脂やフィルムやカラーフィルタやTFT基板等がある。さらに、半導体ウエハやプリント基板等の、レーザ光の一部しか透過しない半透明の基板でも、本実施形態に係る膜回収装置及び膜回収方法を適用することができる。後述するようにレーザ光の周波数等を調整して、レーザ光のエネルギーが、なるべく半透明の基板に吸収されずに、表面の積層回路等の膜に多く吸収させてその膜を破壊するようになっている。
【0015】
[膜回収装置]
まず、薄膜回収装置1を図1〜3に基づいて説明する。この薄膜回収装置1は、レーザ照射部2と、パネル搬送部3と、薄膜回収部4とから構成されている。
【0016】
レーザ照射部2は、レーザ発生器6と、反射ミラー7と、走査装置8と、集光レンズ9とから構成されている。なおここでは、液晶パネル10を例に説明する。液晶パネル10は、透光基板11と、この透光基板11の表面に施された薄膜12とを備えて構成されている。
【0017】
レーザ発生器6は、ガラス等の透光基板11の表面の薄膜12に照射するレーザ光13を発生させる。レーザ発生器6は、特定波長のレーザ光13を発生させる。このレーザ光13は、透光基板11を透過してこの透光基板11に影響を及ぼさない波長のレーザ光である。例えば、波長が245〜1064ナノメーターのYAGレーザ、イットリウム・バナデート(YVO4)レーザ、エキシマレーザ、アルゴンレーザ等を用いる。さらに、薄膜12に吸収されてこの薄膜12を効率的に加熱し、薄膜12を溶かさないで膨張させる特性の波長になっている。このレーザ光13は、透光基板11をその裏面側から透過して透光基板11の表面の薄膜12を効率的に加熱する。具体的には、薄膜12の材料等の諸条件によって、薄膜12を効率的に加熱できるレーザ光13の特性が異なるため、各薄膜12に応じて、連続光、パルス光、パルス光の周波数、光の強度、光量、波長、位相、焦点等を調整して、透光基板11に影響をほとんど及ぼさないで、薄膜12を最も効率的に加熱できるレーザ光13にする。薄膜12に含まれる材料は1種類とは限らないため、透光基板11に吸収されにくく各材料に吸収されやすい波長のレーザ光13を選択する。複数のレーザ光13を選択する場合は、各レーザ光13が効率的に各材料に吸収されるように、位相や偏光も必要に応じて設定する。これにより、透光基板11にほとんど影響を及ぼさずに薄膜12を瞬時に加熱して膨張させる特性のレーザ光13を発生させる。
【0018】
反射ミラー7は、レーザ発生器6から発振されたレーザ光13を走査装置8まで導くためのミラーである。ここでは、2つの反射ミラー7が配設されているが、レーザ発生器6と走査装置8との位置関係に応じて適宜枚数が配設される。
【0019】
走査装置8は、前記レーザ光13を、後述するように薄膜12に対して焦点をぼかした状態を保って、液晶パネル10全体をむらなく走査させるためのビーム制御部である。走査装置8は、反射ミラー7で反射されたレーザ光13をパネルに対して走査するためのガルバノミラーを備えて構成されている。なお、ガルバノミラーの代わりにポリゴンミラー等でも良い。走査装置8による走査は、一定の面積で行われる。例えば、走査装置8で、液晶パネル10の薄膜12の全面積の1/4〜1/2の範囲を一度に走査する。この範囲は、走査装置8の機能は液晶パネル10の大きさ等によって適宜設定される。
【0020】
集光レンズ9は、レーザ発生器6から発生したレーザ光13を薄膜12に絞るためのレンズである。この集光レンズ9は、レーザ光13の焦点を薄膜12に正確に合わせるのではなく、薄膜12を最も効率的に加熱することができるように焦点をぼかす。即ち、レーザ光13は、薄膜12に焦点を合わせて薄膜12の一点を照射するのではなく、薄膜12に対して焦点をぼかして薄膜12のある程度の範囲を照射することで、その照射点を溶かさずに高温に加熱して膨張させるようになっている。具体的には、一旦、焦点を薄膜12に合わせてからずらし、薄膜12を最も効率的に加熱できる点を実験的に探してぼかす。これにより、レーザ光13で薄膜12のある程度の範囲の点(焦点ぼかしで多少大きくなる点)を瞬時に高温に加熱して薄膜12を溶かさずに膨張収縮させ、レーザ光13の影響をほとんど受けない透光基板11との間で膨張収縮させて互いに接着した境界面をずらして破壊して剥離させる。即ち、走査されるレーザ光13を透光基板11の裏面側から表面の薄膜12に照射して薄膜12を膨張収縮させて剥離させる。具体的には、薄膜12の一点に、走査されるレーザ光13が一瞬だけ照射されることで、薄膜12の一点が局所的に瞬時に加熱されて膨張し、次の瞬間には加熱されていない周囲に熱が伝わって瞬時に放熱される。これにより、薄膜12の一点が、瞬間的に膨張して収縮される。これに対して、透光基板11は、ほとんどレーザ光13の影響を受けないため、膨張収縮しない。薄膜12が膨張収縮し、透光基板11がほとんど変化しないため、透光基板11と薄膜12との境界面が強制的にずらされて破壊され、互いに剥がれてしまう。さらに、薄膜12の一点を膨張させて、膨張しない周囲の部分と軋轢を生じさせ、次の瞬間に放熱して収縮させることでその部分が周囲の薄膜12から引きちぎれて破壊される。これにより、レーザ光13が照射された点の薄膜12を、透光基板11から剥離して破壊するようになっている。これにより、薄膜12を、後の処理が容易な固形物のままの状態で回収する。
【0021】
パネル搬送部3は、前記走査装置8によるレーザ光13の走査を薄膜12全体に施すことができるように、適宜液晶パネル10をずらすための装置である。パネル搬送部3は、搬送ローラ14を備えて構成されている。搬送ローラ14は、適宜駆動されて、液晶パネル10を搬送する。液晶パネル10は、この搬送ローラ14に載置され、走査装置8による走査に応じて、適宜搬送される。液晶パネル10は、その裏面を上側に向けてパネル搬送部3の搬送ローラ14に載置される。パネル搬送部3は、レーザ照射部2と共に制御部(図示せず)に接続されて、レーザ照射部2とパネル搬送部3とが連動して制御されるようになっている。パネル搬送部3は、液晶パネル10を連続的にずらしても良く、非連続的にずらしても良い。
【0022】
薄膜回収部4は、透光基板11から剥離して破壊して下方へ落下する薄膜12を回収するための装置である。薄膜回収部4による回収方法としては、粘着や吸引等が用いられる。粘着の場合は、粘着フィルムを用いる。この場合、薄膜回収部4は、図2に示すように、粘着フィルム15を巻いた繰り出しローラ16と、粘着フィルム15を巻き取る巻き取りローラ17とから構成されている。粘着フィルム15は、繰り出しローラ16と巻き取りローラ17とで、薄膜12へのレーザ光13の照射部分に面して配設される。これにより、レーザ光13で剥離して落下する薄膜12を粘着フィルム15で吸着して回収する。
【0023】
吸引による場合は、薄膜回収部4は、図3に示すように、吸引ノズル20と、フィルタ21と、ブロア22とから構成されている。
【0024】
吸引ノズル20は、剥がれ落ちる薄膜12を受け取るためのノズルである。吸引ノズル20は、漏斗状に上方へ開いて形成されている。吸引ノズル20の下端部に吸引パイプ23が接続されている。吸引ノズル20は、走査装置8による走査範囲に対応して形成されている。具体的には、吸引ノズル20を、走査装置8による走査範囲全体を覆う大きさに形成したり、吸引ノズル20を小さく形成して走査装置8による操作位置に移動に応じて吸引ノズル20を移動させるようにしたりする。
【0025】
フィルタ21は、剥がれ落ちる薄膜12を捕集して回収するための部材である。フィルタ21は、吸引ノズル20とブロア22との間に設けられている。
【0026】
ブロア22は、空気を吸引するための装置である。ブロア22は、吸引パイプ23を介して吸引ノズル20に接続されている。
【0027】
また、図4に示すように、必要に応じて分離手段24が設けられる。この分離手段24は、剥がれ落ちた膜材の磁性や比重や帯電性等の特性の違いに応じて異なる材料を分離する手段である。ここでは、分離手段24は、膜材の磁性の違いに応じて異なる材料を分離する手段として説明する。分離手段24は、搬送ダクト25と、第1高圧電極箱26と、第2高圧電極箱27と、第3高圧電極箱28を備えて構成されている。搬送ダクト25は、その先端部が、剥がれ落ちた材料を直下に望ませて設けられ、基端部にブロア29及びフィルタ30が設けられる。搬送ダクト25の途中に、第1高圧電極箱26と、第2高圧電極箱27と、第3高圧電極箱28とがそれぞれ設けられる。ブロア29は搬送ダクト25内の空気を吸引して剥がれ落ちた材料を空気と共に搬送する。フィルタ30は、第3高圧電極箱28までで捕集されなかった材料を最終的に捕集する。
【0028】
第1高圧電極箱26は例えば5000〜5万ボルトのマイナス電極板で構成され、マイナス5000〜5万ボルトで吸着する材料を捕集する。プラス5000〜5万ボルトで吸着する材料を捕集する場合もある。それ以外の材料は反発して搬送ダクト25に押し戻される。第2高圧電極箱27は5000〜5万ボルトのプラス電極板又はマイナス電極板で構成され、プラス5000〜5万ボルト又はマイナス5000〜5万ボルトで吸着する材料を捕集する。それ以外の材料は反発して搬送ダクト25に押し戻される。第3高圧電極箱28は5000〜5万ボルトのマイナス電極板で構成され、マイナス5000〜5万ボルト又はプラス5000〜5万ボルトで吸着する材料を捕集する。それ以外の材料は反発して搬送ダクト25に押し戻される。前記各高圧電極箱の数及び印加する電圧は、剥がれ落ちる膜材の特性の違いに応じて適宜設定する。
【0029】
また、分離手段24としては、剥がれ落ちた膜材の比重の違いに応じて異なる材料を分離するように構成してもよい。この場合は、例えば、剥がれ落ちる膜材の搬送経路に風を当てて軽い材料を飛ばして分離したり、比重を調整した液体に浸して浮く材料と沈む材料に分離したりする。
【0030】
また、分離手段24は、設置された液晶パネル10の直下に設置して剥がれ落ちた材料を直接分離するようにしても良く、薄膜回収部4の下流に設けて薄膜回収部4で回収した材料を分離するようにしても良い。
【0031】
[薄膜回収方法]
次に、以上のように構成された薄膜回収装置を用いた薄膜回収方法を説明する。
【0032】
まず、レーザ照射部2のレーザ発生器6で液晶パネル10の透光基板11の薄膜12に照射するレーザ光13を発生させる。このレーザ光13を走査装置8に導き、走査装置8で走査させて、集光レンズ9でレーザ光13を前記薄膜12に照射する。
【0033】
走査装置8は、レーザ発生器6からのレーザ光13を制御して、透光基板11の裏面側からレーザ光13を薄膜12に照射して、一定範囲を捜査する。このレーザ光13によって、透光基板11にほとんど影響を与えずに薄膜12を瞬時に加熱して局所的に膨張収縮させる。これにより、薄膜12が透光基板11との境界の接着面でずらされて接着部分が破壊され、薄膜12が剥離する。これと同時に、レーザ光13の照射部分の薄膜12が瞬時に膨張収縮するのに対して、その周囲の薄膜12はほとんど熱による影響を受けずに膨張収縮しないため、軋轢が生じてレーザ光13の照射部分の薄膜12が破壊される。これにより、剥離して破壊された薄膜12が下方へ落下して薄膜回収部4で回収される。
【0034】
走査装置8で一定範囲を走査したら、パネル搬送部3で液晶パネル10をずらして、次の領域を走査装置8で走査する。
【0035】
薄膜回収部4に回収された薄膜は分離手段24で分離される。また、薄膜回収部4を設けずに分離手段24だけを設けている場合は、剥がれ落ちた薄膜12を直接回収して分離する。
【0036】
薄膜12の全面に対して走査が終了したが、外部に搬送して次の液晶パネル10をパネル搬送部3に載置して、上記同様の処理をする。
【0037】
分離回収した透光基板11と薄膜12は、それぞれ再利用する。
【0038】
[効果]
以上のように、薄膜12をレーザ光13で瞬時に膨張収縮させて透光基板11から剥離させて破壊するため、例えば太陽電池の希少金属(レアメタル)や有害金属や高額有機物等を容易に回収することができるようになる。
【0039】
さらに、薄膜12を、化学薬品等を使用することなく、固形物の状態で回収することができるため、透光基板11も薄膜12も容易に再利用することができる。
【0040】
これにより、希少金属、有害金属、高額有機物等の回収が低コストで容易に行えるようになる。
【0041】
また、剥離、破壊された薄膜12を薄膜回収部4で回収するため、破壊された薄膜12が周囲への飛散するのを防止することができ、環境の悪化を防止することができる。
【0042】
また、回収した複数種類の薄膜12を分離手段24で分離するため、効率的に分離回収することができる。
【0043】
[変形例]
前記実施形態では、太陽電池や液晶パネルの表面に施された薄膜12の回収を例に説明したが、薄膜12に限らず、厚膜でも回収することができる。ある程度厚い膜の場合は、熱膨張で接着面が剥離した後、破壊されることは少なくなるが、接着面が剥離することで、基板から完全に剥がすことができ、前記実施形態同様に、厚膜を回収して再利用することができる。
【0044】
前記実施形態では、一点に集光するレーザ光を用いたが、レーザ光を線状にして、液晶パネル10を一回の走査だけで処理するようにしても良い。即ち、線状のレーザ光に、前記実施形態の一点に集光するレーザ光と同様の特性を持たせて、その線状のレーザ光を用いて、液晶パネル10を走査するようにしても良い。また、同様に、広い面で液晶パネル10に照射するレーザ光でも、前記実施形態の一点に集光するレーザ光と同様の特性を持たせて、その面状のレーザ光を用いて、液晶パネル10を走査するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、太陽電池や、テレビ等の液晶パネル等の基板及びその表面の膜材の再利用に適用することができるが、これ以外にも、透光基板の表面に、膜材が施された板材を再利用する必要がある全ての分野において、本発明を適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2001−337305号公報
【符号の説明】
【0047】
1:薄膜回収装置、2:レーザ照射部、3:パネル搬送部、4:薄膜回収部、6:レーザ発生器、7:反射ミラー、8:走査装置、9:集光レンズ、10:液晶パネル、11:透光基板、12:薄膜、13:レーザ光、14:搬送ローラ、15:粘着フィルム、16:繰り出しローラ、17:巻き取りローラ、20:吸引ノズル、21:フィルタ、22:ブロア、23:吸引パイプ、24:分離手段、25,搬送ダクト、26:第1高圧電極箱、27:第2高圧電極箱、28:第3高圧電極箱、29:ブロア、30:フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光基板の表面に膜が施された板材から当該膜を回収する膜回収装置であって、
前記透光基板の表面の膜に照射するレーザ光を発生させるレーザ発生器と、
当該レーザ発生器からのレーザ光を制御して前記透光基板の裏面側から当該レーザ光を前記膜に照射し、前記透光基板にほとんど影響を与えずに当該膜を瞬時に加熱して局所的に膨張させると共に放熱して収縮させて前記透光基板と前記膜の境界面をずらし互いの接着を破壊して剥離するビーム制御部とを備えたことを特徴とする膜回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の膜回収装置において、
前記ビーム制御部が、前記レーザ光を前記透光基板の裏面側から前記膜に照射する際に、当該レーザ光の焦点を前記膜の表面からずらしてぼかすことを特徴とする膜回収装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜回収装置において、
前記ビーム制御部が、前記レーザ光を前記板材の全面に走査させることを特徴とする膜回収装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の膜回収装置において、
前記レーザ発生器が、前記透光基板には吸収されにくく当該透光基板の表面に施された膜の成分に吸収されやすい波長のレーザ光を発生させることを特徴とする膜回収装置。
【請求項5】
請求項4に記載の膜回収装置において、
前記レーザ発生器が、前記膜に含まれる複数の成分のそれぞれに吸収されやすい複数の波長のレーザ光をそれぞれ発生させることを特徴とする膜回収装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の膜回収装置において、
前記透光基板の表面に施される膜が薄膜であることを特徴とする膜回収装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の膜回収装置において、
剥離した前記膜材の磁性や比重や帯電性等の特性の違いに応じて異なる材料を分離する分離手段を備えたことを特徴とする膜回収装置。
【請求項8】
透光基板の表面に膜が施された板材から当該膜を回収する膜回収方法であって、
レーザ発生器で前記透光基板の膜に照射するレーザ光を発生させ、
ビーム制御部で前記レーザ発生器からのレーザ光を制御して、前記透光基板の裏面側から当該レーザ光を前記膜に照射して前記透光基板に影響を与えずに当該膜を瞬時に加熱して局所的に熱膨張させ、前記透光基板と前記膜の境界面をずらして互いの接着を破壊して剥離することを特徴とする膜回収方法。
【請求項9】
請求項8に記載の膜回収方法において、
前記レーザ光を前記板材の全面に走査させることを特徴とする膜回収方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の膜回収方法において、
剥離した前記膜材の磁性や比重や帯電性等の特性の違いに応じて異なる材料を分離することを特徴とする膜回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−172856(P2010−172856A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20329(P2009−20329)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【特許番号】特許第4472014号(P4472014)
【特許公報発行日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(503137621)株式会社 エスアンドデイ (4)
【Fターム(参考)】