説明

膜材同士の接合装置

【課題】2枚の膜材の重ね合わせ部同士を接合させる接合作業をする場合に、接合作業が容易にできるようにし、かつ、両膜材に所望の接合精度が得られるようにする。
【解決手段】膜材同士の接合装置は、両膜材2,3を前、後から挟むよう作業面4側にそれぞれ固定され、両膜材2,3の各前端部側と、各後端部側とをそれぞれ一体的に把持してこれら両膜材2,3に前後方向に向かう張力を付与する前、後張力付与装置7,8と、これら前、後張力付与装置7,8の間に配置されて作業面4上を前、後方に自走可能とされ、その前方自走と共に両重ね合わせ部2a,3a同士を順次接合する接合機19と、前張力付与装置7と接合機19との間における両膜材2,3の前部分2F,3Fを作業面4上の所定高さに維持するようその下方から支持し、支持状態を維持したまま接合機19の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する支持装置42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向で重ね合わされた2枚の膜材の互いの重ね合わせ部同士を縫合や熱溶着により接合可能にする膜材同士の接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜材を用いて構築される膜構造物には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、膜構造物は、地盤上に設置される枠組体と、この枠組体をその外方から覆うように設けられると共にこの枠組体に支持される膜体とを備えている。
【0003】
上記膜構造物における膜体は、通常、面積が極めて大きいため、一般に、次のように形成される。
【0004】
即ち、工場において、予め形成された長尺で所定幅寸法の2枚の膜材が水平な作業面上に載置されて並設される。また、これら両膜材の互いの対向縁部が上下方向で重ね合わされる。次に、これら両膜材の長手方向の各一端部が作業面側に固定される一方、上記両膜材の各他端部側が引っ張られて上記両膜材にその長手方向に向かう張力が付与される。これにより、上記両膜材に弛みが生じることが防止される。
【0005】
そして、上記両膜材の長手方向でその他端部側に向かって、接合機としてのミシンが作業面上を移動することとされ、このミシンによって、上記両膜材の重ね合わせ部同士が順次縫合により接合される。このような作業面上における両膜材の配置の設定と接合作業とが所望回数繰り返されて、ある程度面積の大きい膜材ユニットが必要枚数分、次々と形成される。
【0006】
次に、上記各膜材ユニットが上記膜構造物の設置現場にまで搬送される。そして、上記各膜材ユニットが上記枠組体に対し、次々と組み付けられると共に互いに接合されて、上記膜体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−172967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したように、工場において、2枚の膜材の互いの重ね合わせ部同士を接合する接合作業をする場合、次のような問題点がある。
【0009】
即ち、上記重ね合わせ部同士をミシンにより縫合する場合、このミシンは、その一部である基台部が上記作業面と両膜材との間を押し拡げながら通過して上記両膜材の長手方向に沿って移動する。このため、このように移動するミシンは、前記張力が付与された両膜材から大きい抵抗力を与えられがちとなる。よって、ミシンの円滑な移動が阻害されて、上記接合作業が煩雑になるおそれがある。
【0010】
そこで、上記両膜材を作業面の上方域に設定して、これら両膜材と作業面との間に、上記ミシンの基台部を円滑に通過させるための空間を形成することが考えられる。また、この場合、上記両膜材が自重により下方に弛むことを防止するため、これら両膜材に対しより大きい張力を付与することが考えられる。しかし、単にこのようにすると、これら両膜材に生じる内部応力が過大となって無用な伸びが発生するおそれがある。この結果、寸法などにつき、上記両膜材に所望の接合精度が得られないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、2枚の膜材を互いに重ね合わせて、その互いの重ね合わせ部同士を接合させる接合作業をする場合に、この接合作業が容易にできるようにし、かつ、上記両膜材に所望の接合精度が得られるようにすることである。
【0012】
請求項1の発明は、それぞれ水平方向に延びると共に上下方向で重ね合わされた2枚の膜材2,3を水平な作業面4の上方域に設定し、上記両膜材2,3において前後方向に延びる互いの重ね合わせ部2a,3a同士を接合可能にする膜材同士の接合装置であって、
上記両膜材2,3を前、後から挟むよう作業面4側にそれぞれ固定され、上記両膜材2,3の各前端部側と、各後端部側とをそれぞれ一体的に把持してこれら両膜材2,3に前後方向に向かう張力を付与する前、後張力付与装置7,8と、これら前、後張力付与装置7,8の間に配置されて作業面4上を前、後方に自走可能とされ、その前方自走と共に上記両重ね合わせ部2a,3a同士を順次接合する接合機19と、上記前張力付与装置7と上記接合機19との間における上記両膜材2,3の前部分2F,3Fを作業面4上の所定高さに維持するようその下方から支持し、この支持状態を維持したまま上記接合機19の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する支持装置42とを備えたことを特徴とする膜材同士の接合装置である。
【0013】
請求項2の発明は、上記支持装置42が、上記前張力付与装置7と上記接合機19との間で、作業面4側に固定される前支持体43と、この前支持体43の後方に配置されて上記接合機19と共に移動する後支持体44と、これら前、後支持体43,44に架設され、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの下面に面接触してこれら両膜材2,3の前部分2F,3Fを支持する支持膜45と、上記接合機19の自走時に、上記支持膜45に生じようとする弛みを除去する弛み除去装置46とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の膜材同士の接合装置である。
【0014】
請求項3の発明は、上記支持装置42が、上記前、後支持体43,44の間における作業面4上を前後に自由に移動可能とされ、上記支持膜45を作業面4上の所定高さに維持するようその下方からそれぞれ支持する前後複数の可動支持体58と、前後方向に延びてこれら可動支持体58をそれぞれ互いに連結すると共に、前端の可動支持体58と上記前支持体43側とを互いに連結し、かつ、後端の可動支持体58と上記後支持体44側とを互いに連結するそれぞれ所定長さ寸法の可撓性長尺体65とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の膜材同士の接合装置である。
【0015】
請求項4の発明は、上記弛み除去装置46が、上記前、後支持体43,44のうちのいずれか一方の支持体44に設けられ、正、逆回転して前後方向における上記支持膜45の一端部側を巻き取りA、もしくは巻き戻しB可能とするローラ55と、このローラ55を正、逆回転駆動させる回転駆動部68と、上記接合機19の前、後方自走に上記ローラ55が連動して、このローラ55が上記支持膜45を巻き取りA、もしくは巻き戻しBすることにより、この支持膜45に生じようとする弛みを除去するよう上記回転駆動部68を制御する制御装置17とを備えたことを特徴とする請求項2、もしくは3に記載の膜材同士の接合装置である。
【0016】
請求項5の発明は、上記支持膜45の他端部側を上記前、後支持体43,44のうち、他方の支持体43の上面に対し前後に移動可能となるよう当接させ、かつ、この当接部で上記支持膜45の他端部側を下方に向け屈曲させ、上記弛み除去装置46が、上記支持膜45の他端部に対し下方への負荷を付与する負荷付与手段71を備え、上記接合機19の自走時に、上記支持膜45の他端部が所定高さに位置するよう上記制御装置17が上記回転駆動部68を制御するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の膜材同士の接合装置である。
【0017】
請求項6の発明は、上記前、後張力付与装置7,8のうち、少なくともいずれか一方の張力付与装置7が張力付与のための引張駆動部11を備え、上記両膜材2,3に与えられる張力が所定値に維持されるよう上記引張駆動部11を制御する制御装置17を設けたことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1つに記載の膜材同士の接合装置である。
【0018】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0019】
本発明による効果は、次の如くである。
【0020】
請求項1の発明は、それぞれ水平方向に延びると共に上下方向で重ね合わされた2枚の膜材を水平な作業面の上方域に設定し、上記両膜材において前後方向に延びる互いの重ね合わせ部同士を接合可能にする膜材同士の接合装置であって、
上記両膜材を前、後から挟むよう作業面側にそれぞれ固定され、上記両膜材の各前端部側と、各後端部側とをそれぞれ一体的に把持してこれら両膜材に前後方向に向かう張力を付与する前、後張力付与装置と、これら前、後張力付与装置の間に配置されて作業面上を前、後方に自走可能とされ、その前方自走と共に上記両重ね合わせ部同士を順次接合する接合機と、上記前張力付与装置と上記接合機との間における上記両膜材の前部分を作業面上の所定高さに維持するようその下方から支持し、この支持状態を維持したまま上記接合機の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する支持装置とを備えている。
【0021】
このため、互いに接合させようとする上記両膜材の前部分と、作業面との間に空間が形成される。よって、上記両膜材の互いの重ね合わせ部同士を接合させる接合作業において、上記接合機を前方自走させるとき、この接合機の一部を、上記空間に対し前方に向けて通過させることができる。この結果、上記接合機は、前記のように張力が付与された上記両膜材から大きい抵抗を与えられることなく、円滑に前方自走し、このため、上記接合作業が容易にできる。
【0022】
また、上記したように、両膜材の前部分は作業面上の所定高さに支持装置により支持され、かつ、この支持装置は、上記支持状態を維持したまま上記接合機の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する。
【0023】
このため、上記接合機がいずれの位置にまで自走したかにかかわらず、上記両膜材の前部分の前後方向のほぼ全体が、上記のように接合機に連動して収縮、伸長する支持装置により支持されることから、上記両膜材の前部分の前後方向における各部分につき、自重による下方への弛みの発生が防止される。
【0024】
よって、弛み防止のために上記両膜材に対し大きい張力を付与することは不要であることから、これら両膜材に大きい内部応力が生じることが防止され、無用な伸びの発生が防止される。この結果、上記両膜材に所望の接合精度が得られる。
【0025】
請求項2の発明は、上記支持装置が、上記前張力付与装置と上記接合機との間で、作業面側に固定される前支持体と、この前支持体の後方に配置されて上記接合機と共に移動する後支持体と、これら前、後支持体に架設され、上記両膜材の前部分の下面に面接触してこれら両膜材の前部分を支持する支持膜と、上記接合機の自走時に、上記支持膜に生じようとする弛みを除去する弛み除去装置とを備えている。
【0026】
このため、上記両膜材の前部分の前後方向におけるほぼ全体が、上記のように弛みの発生が除去される支持膜との面接触によって、より確実に均一に支持される。よって、上記両膜材の前部分の前後方向における各部分についての弛みの発生が、より確実に防止される。この結果、上記両膜材に所望の接合精度がより確実に得られる。
【0027】
請求項3の発明は、上記支持装置が、上記前、後支持体の間における作業面上を前後に自由に移動可能とされ、上記支持膜を作業面上の所定高さに維持するようその下方からそれぞれ支持する前後複数の可動支持体と、前後方向に延びてこれら可動支持体をそれぞれ互いに連結すると共に、前端の可動支持体と上記前支持体側とを互いに連結し、かつ、後端の可動支持体と上記後支持体側とを互いに連結するそれぞれ所定長さ寸法の可撓性長尺体とを備えている。
【0028】
このため、上記接合機が後方自走したときには、この接合機と共に後方移動する上記後支持体に、上記各長尺体を介し各可動支持体が順次引っ張られて後方移動する。そして、これら各可動支持体は、上記前、後支持体の間で、上記各長尺体の長さに応じて所定のピッチで配置され、この状態で上記支持膜を支持する。
【0029】
よって、上記支持膜の前後方向の各部につき、それぞれ弛みの発生が防止されることから、この支持膜に支持される上記両膜材の前部分の前後方向における各部分についての弛みの発生が更に確実に防止される。この結果、上記両膜材に所望の接合精度が更に確実に得られる。
【0030】
請求項4の発明は、上記弛み除去装置が、上記前、後支持体のうちのいずれか一方の支持体に設けられ、正、逆回転して前後方向における上記支持膜の一端部側を巻き取り、もしくは巻き戻し可能とするローラと、このローラを正、逆回転駆動させる回転駆動部と、上記接合機の前、後方自走に上記ローラが連動して、このローラが上記支持膜を巻き取り、もしくは巻き戻しすることにより、この支持膜に生じようとする弛みを除去するよう上記回転駆動部を制御する制御装置とを備えている。
【0031】
このため、上記したように支持装置の支持膜に生じようとする弛みは制御装置の制御により除去される分、上記両膜材の前部分は上記支持膜によって、更に精度よく均一に支持される。よって、上記両膜材の前部分の前後方向における各部分についての弛みの発生が更に確実に防止される。この結果、上記両膜材に所望の接合精度が更に確実に得られる。
【0032】
請求項5の発明は、上記支持膜の他端部側を上記前、後支持体のうち、他方の支持体の上面に対し前後に移動可能となるよう当接させ、かつ、この当接部で上記支持膜の他端部側を下方に向け屈曲させ、上記弛み除去装置が、上記支持膜の他端部に対し下方への負荷を付与する負荷付与手段を備え、上記接合機の自走時に、上記支持膜の他端部が所定高さに位置するよう上記制御装置が上記回転駆動部を制御するようにしている。
【0033】
このため、上記弛み除去装置の負荷付与手段の負荷が上記支持膜の前後方向の全体にわたり張力として常に付与されることから、この支持膜の前後方向における各部分につき、それぞれ弛み発生が確実に未然に防止される。よって、この支持膜に支持される上記両膜材の前部分の前後方向における各部分についての弛みの発生が更に確実に防止される。この結果、上記両膜材に所望の接合精度が更に確実に得られる。
【0034】
請求項6の発明は、上記前、後張力付与装置のうち、少なくともいずれか一方の張力付与装置が張力付与のための引張駆動部を備え、上記両膜材に与えられる張力が所定値に維持されるよう上記引張駆動部を制御する制御装置を設けている。
【0035】
このため、上記両膜材の前後方向の全体に対し、上記引張駆動部によって適度な所定値の張力が付与されることから、上記両膜材における弛みの発生は、より直接的に確実に防止される。よって、上記両膜材に所望の接合精度がより確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1を示し、膜材同士の接合装置の前部斜視図であり、図の簡素化のため、可動支持体は複数台のうちの一台のみを記載している。
【図2】実施例1を示し、全体側面図である。
【図3】実施例1を示し、全体平面図である。
【図4】実施例1を示し、図2のIV−IV線矢視図である。
【図5】実施例1を示し、図2のV−V線矢視図である。
【図6】実施例1を示し、図2のVI−VI線矢視図である。
【図7】実施例1を示し、制御装置による制御のフローチャートを示す図である。
【図8】実施例1を示し、両膜材の重ね合わせ態様の変形例を示す図である。
【図9】実施例2を示し、図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の膜材同士の接合装置に関し、2枚の膜材を互いに重ね合わせて、その互いの重ね合わせ部同士を接合させる接合作業をする場合に、この接合作業が容易にできるようにし、かつ、上記両膜材に所望の接合精度が得られるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0038】
即ち、膜材同士の接合装置は、それぞれ水平方向に延びると共に上下方向で重ね合わされた2枚の膜材を水平な作業面の上方域に設定し、上記両膜材において前後方向に延びる互いの重ね合わせ部同士を接合可能にするものである。
【0039】
上記膜材同士の接合装置は、両膜材を前、後から挟むよう作業面側にそれぞれ固定され、上記両膜材の各前端部側と、各後端部側とをそれぞれ一体的に把持してこれら両膜材に前後方向に向かう張力を付与する前、後張力付与装置と、これら前、後張力付与装置の間に配置されて作業面上を前、後方に自走可能とされ、その前方自走と共に上記両重ね合わせ部同士を順次接合する接合機と、上記前張力付与装置と上記接合機との間における上記両膜材の前部分を作業面上の所定高さに維持するようその下方から支持し、この支持状態を維持したまま上記接合機の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する支持装置とを備える。
【実施例1】
【0040】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1−8に従って説明する。
【0041】
図1−6において、符号1は、2枚の膜材2,3を互いに接合可能にする膜材同士の接合装置であり、矢印Frはその前方を示し、下記する左右とは、上記前方に向かっての横方向をいうものとする。
【0042】
上記両膜材2,3は、膜構造物に用いられるテント材などであって、熱可塑性樹脂製である。なお、上記膜材2,3は、熱可塑性のものでなくてもよい。
【0043】
上記両膜材2,3は、それぞれ前後方向に長く延び、かつ、全体として水平に延びる帯形状の長尺材とされる。これら膜材2,3は、水平な作業面4の上方域に設定される。上記両膜材2,3は、左右に並設され、これら両膜材2,3の互いに対向する対向縁部が上下方向で重ね合わされる。これら両膜材2,3の重ね合わせ部2a,3aは前後方向に延びて、これら重ね合わせ部2a,3a同士が上記膜材同士の接合装置1によって接合可能とされる。
【0044】
なお、上記両膜材2,3に、更に、単数もしくは複数の他の膜材を重ね合わせて、これらを上記膜材同士の接合装置1により一体的に接合させてもよい。また、図中の符号5は、膜材同士の接合装置1の左右方向における中心線である。
【0045】
上記両膜材2,3に対し前後方向(長手方向)に向かう張力を付与する前、後張力付与装置7,8が設けられる。これら前、後張力付与装置7,8は、上記両膜材2,3を前後から挟むよう配置されて、それぞれ作業面4側に固定されている。
【0046】
上記前張力付与装置7は、上記両膜材2,3の前方近傍で作業面4上に固定される架台9と、上記両膜材2,3の各前端部側を着脱可能に一体的に把持する把持部10と、上記架台9に取り付けられ、上記把持部10を前方に引っ張って上記両膜材2,3に張力を付与する電動式の引張駆動部11とを備えている。一方、上記後張力付与装置8は、上記両膜材2,3の後方近傍で作業面4上に固定される架台13と、上記両膜材2,3の各後端部側を着脱可能に一体的に把持する把持部14と、上記架台13に取り付けられ、上記把持部14を後方に引っ張って上記両膜材2,3に張力を付与する手動式の装置本体15とを備えている。また、上記膜材2,3に与えらる張力が所定値に維持されるよう上記引張駆動部11を電子的に制御する制御装置17が設けられている。
【0047】
なお、上記各把持部10,14が把持する両膜材2,3の端部側とは、端部そのものであってもよく、端部側における長手方向の中途部であってもよい。また、上記装置本体15も上記電動式の引張駆動部11と同じ構成にしてもよい。また、この引張駆動部11は、液圧式のシリンダであってもよい。
【0048】
図1−4において、上記前、後張力付与装置7,8の間に配置されて作業面4上を前、後方に自走可能とされ、その前方自走と共に上記両重ね合わせ部2a,3a同士を順次接合する接合機19が設けられる。この接合機19は、自走式の台車20と、この台車20に支持されて上記両重ね合わせ部2a,3a同士を接合する接合機本体21とを備えている。
【0049】
上記台車20は、平面視矩形の車台22と、この車台22の後部に支持され、左右に延びる軸心回りにのみ回転する左右車輪23,24と、上記車台22の前部に支持されるキャスター25と、上記各車輪23,24を個別に回転駆動させる回転速度(r.p.m)可変式の左右電動機26,27とを備えている。前記制御装置17は上記車台22上に支持されている。
【0050】
上記接合機本体21は電動ミシンであって、上記制御装置17に電気的に接続される。上記接合機本体21は、上記車台22に支持され、ボビンを内有する基台部30と、この基台部30から上方に突出する柱部31と、この柱部31に支持され、電動機で駆動するミシン針を有するアーム部32とを備えている。上記基台部30とアーム部32との間に外側方(右側方)に向かって開く空間33が形成され、この空間33を上記両膜材2,3が前後に通過させられている。そして、上記ボビンへのミシン針の係合により上記空間33内の両重ね合わせ部2a,3a同士が縫合により接合される。符号34は、この接合により生じた接合部(ミシン目)を示している。
【0051】
上記作業面4上には、前後方向に直線的に延びるよう磁気テープ37が貼着されている。一方、上記台車20には、上記磁気テープ37の磁気を検出する前、後磁気センサ38,39が取り付けられている。上記各電動機26,27と、上記各磁気センサ38,39とはそれぞれ上記制御装置17に電気的に接続されている。そして、上記各磁気センサ38,39からの検出信号に基づく上記制御装置17の制御により、上記各電動機26,27の回転速度(r.p.m)がそれぞれ個別に定められて、上記接合機19が所望の前後方向、つまり、平面視で、上記両重ね合わせ部2a,3aに平行な方向に向かって、所望の速度で直線的に自走させられる。
【0052】
なお、上記接合機19は、上記両重ね合わせ部2a,3a同士を、熱風、熱光線、もしくは磁力線で加熱された熱盤などにより熱溶融させて、熱溶着により接合させるものであってもよい。また、上記車輪23,24はステアリング式のものとしてもよい。また、上記磁気テープ37に代えて、交流電線を用いてもよい。また、上記作業面4上にレールを設置し、このレールに沿って上記接合機19を自走させるようにしてもよい。
【0053】
図1−6において、上記前張力付与装置7と上記接合機19との間における上記両膜材2,3の前部分2F,3Fを、作業面4上の所定高さに維持するようその下方から支持する支持装置42が設けられている。
【0054】
上記支持装置42は、前後方向における上記前張力付与装置7と接合機19との間、かつ、上記前張力付与装置7の近傍で、作業面4側に固定される前支持体43と、この前支持体43の後方に配置されると共に上記接合機19の前端に固着され、この接合機19と共に前後に移動する後支持体44と、これら前、後支持体43,44に架設され、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの下面に面接触してこれら両膜材2,3の前部分2F,3Fを支持する支持膜45と、上記接合機19の自走時に、上記支持膜45に生じようとする弛みを除去する弛み除去装置46とを備えている。上記支持膜45はテント材などであって、十分の強度と可撓性とを備えたものが用いられる。
【0055】
上記前支持体43は、特に、図5で示すように、上記作業面4上に固定された架台49と、左右に延びる軸心50回りに回転可能となるよう上記架台49の上端部に支持されるローラ51とを備えている。一方、上記後支持体44は、特に、図4で示すように、上記接合機19の台車20の前端部に固着された架台53と、左右に延びる軸心54回りに回転可能となるよう上記架台53の上端部に支持されるローラ55とを備えている。
【0056】
図1−3,6において、上記支持装置42は、上記前、後支持体43,44の間における作業面4上を、前後に個別に自由に移動可能とされる前後方向で複数の可動支持体58を備えている。これら各可動支持体58は、その正面視(図6)で、左右に長い長方形状の枠体59と、この枠体59の下面に取り付けられる左右一対の脚材60,60と、これら各脚材60にそれぞれ取り付けられる前後一対の車輪61,61と、左右に延びる軸心62回りに回転可能となるよう上記枠体59の上端部に支持されるローラ63とを備えている。
【0057】
そして、上記各ローラ51,55,63は、上記支持膜45を作業面4上の所定高さに維持するようその下方から支持している。
【0058】
図1,3において、上記各可動支持体58における左右脚材60,60は、それぞれ前方に進むに従い外側方に向かうよう傾斜している。図3で示すように、上記各可動支持体58を前後方向で互いに接近させたとき、これら各可動支持体58の脚材60,60同士が前後方向で互いに嵌合することとされる。これにより、上記各可動支持体58は、前後方向で全体的にコンパクトとなるよう集合可能とされている。
【0059】
また、上記支持装置42は、前後方向に延び、それぞれ所定長さ寸法の複数の可撓性長尺体65を備えている。これら各長尺体65は枢支ピンで互いに連結された複数の棒材(リンク機構)、ベルト、チェーン、もしくはロープなどで形成される。そして、上記各長尺体65により、上記各可動支持体58がそれぞれ互いに連結されると共に、前端の可動支持体58と上記前支持体43側とが互いに連結され、かつ、後端の可動支持体58と上記後支持体44側とが互いに連結されている。
【0060】
なお、上記長尺体65が連結される前支持体43側は、この前支持体43近傍の作業面4であってもよく、前張力付与装置7であってもよい。また、上記長尺体65が連結される後支持体44側は、接合機19であってもよい。
【0061】
上記接合機19が前方自走すると、この接合機19と共に上記支持装置42の後支持体44が前方移動して前支持体43に接近する。これにより、上記支持装置42は前後方向で収縮する。一方、上記接合機19が後方自走すると、この接合機19と共に上記支持装置42の後支持体44が後方移動して前支持体43から離反する。これにより、上記支持装置42は前後方向で伸長する。これら支持装置42の収縮、伸長についての具体的な作用については後述する。
【0062】
図1−5において、前記弛み除去装置46は、上記後支持体44のローラ55を構成部品としている。このローラ55は、その正、逆転により上記支持膜45の一端部側(後端部側)を巻き取りA、巻き戻しB可能とする。上記ローラ55を正、逆回転駆動させる電動式の回転駆動部68が設けられ、この回転駆動部68は上記制御装置17により電子的に制御される。具体的には、上記接合機19の前、後方自走に上記ローラ55が連動して、このローラ55が上記支持膜45を巻き取りA、もしくは巻き戻しBすることにより、この支持膜45に生じようとする弛みを除去するよう上記回転駆動部68が制御される。
【0063】
上記支持膜45の他端部側(前端部側)は、上記前支持体43の上面である上記ローラ51の上面に当接させられている。この場合、上記ローラ51が回転することにより、上記支持膜45の他端部側は、前後に円滑に移動可能とされている。
【0064】
上記支持膜45の他端部側は、上記ローラ51への当接部で下方に向けて屈曲させられた後、垂下させられている。上記弛み除去装置46は、上記支持膜45の他端部(垂下端部)に取り付けられ、この他端部に対し下方への負荷を付与する重りで例示される負荷付与手段71と、上記支持膜45の他端部が所定の高位置H、中位置M、および低位置Lのいずれに位置しているかを検出する高位置検出センサ72、中位置検出センサ73、および低位置検出センサ74とを備えている。これら各センサ72−74は上記制御装置17に電気的に接続されている。この場合、上記負荷付与手段71は磁性体の金属製とされ、上記各センサ72−74による上記負荷付与手段71の位置検出により、上記支持膜45の他端部の位置検出が間接的になされる。
【0065】
なお、上記負荷付与手段71は、上記支持膜45の他端部を下方に引張して負荷を与える金属、空気ばねであってもよく、空気圧シリンダであってもよい。また、上記前支持体43のローラ51により上記支持膜45の他端部側(前端部側)を巻き取りA、巻き戻しB可能とする一方、この支持膜45の一端部(後端部)に上記負荷付与手段71を取り付けてもよい。
【0066】
図2,3において、上記接合機19により互いの接合がなされた上記両膜材2,3の後部分2R,3Rを作業面4上の所定高さに維持するようその下方から支持し、この支持状態を維持したまま上記接合機19の前、後方自走に連動して前後方向で伸長、収縮可能とされる他の支持装置が設けられている。
【0067】
上記他の支持装置は、前記支持装置42と同構成であるが、その各構成部品である前、後支持体43,44、支持膜45、弛み除去装置46、可動支持体58、および長尺体65の配置関係が前後方向で逆になっている。そこで、上記他の支持装置と、その各構成部品については、上記支持装置42と共通する符号を付し、かつ、その符号に´を付加することにより、詳しい説明を省略する。
【0068】
図1−7において、上記膜材同士の接合装置1により上記両膜材2,3の互いの重ね合わせ部2a,3a同士を、上記制御装置17の制御に基づき接合させる接合作業につき説明する。なお、図7は制御装置17による制御についてのフローチャートを示し、図中のSは、プログラムの各ステップを示している。
【0069】
まず、上記両膜材2,3の各前、後端部側が上記前、後張力付与装置7,8により把持される。次に、上記制御装置17の制御による前張力付与装置7の引張駆動部11の駆動により、上記両膜材2,3に与えられる張力が所定値(例えば、20−30kgの範囲)に維持される。
【0070】
次に、上記制御装置17への接合作業のスタート操作をして(S1)、上記接合機19を上記後張力付与装置8近傍の初期位置から所定速度(m/min)で前方自走させる(S2)。すると、この接合機19の前方自走と共に上記両膜材2,3の前部分2F,3Fにおける互いの重ね合わせ部2a,3a同士が、上記接合機19の接合機本体21により順次接合され、接合作業が進行する。
【0071】
上記の場合、接合機19の前方自走と共に上記支持装置42の後支持体44も前方移動して、前支持体43接近し、上記支持装置42は前後方向で収縮させられる。この際、上記各可動支持体58は、前方移動する上記後支持体44に玉突き状に押されて、この後支持体44の前側に前記したようにコンパクトに集合させられ(図2,3)、この状態で上記支持膜45を支持する。つまり、上記各可動支持体58は、上記支持膜45を介し上記両膜材2,3の前部分2F,3Fを支持する。
【0072】
また、上記接合機19の前方自走に連動して、上記支持装置42の弛み除去装置46のローラ55が支持膜45の一端部側(後端部側)の巻き取りAをする(S3)。これにより、上記前、後支持体43,44に架設されている上記支持膜45に弛みの生じることが防止される。
【0073】
なお、上記したローラ55による支持膜45の巻き取りA時の外径寸法は、この支持膜45に厚みがあるため、上記接合機19の自走に伴い刻々と変化する。そこで、まず、上記前支持体43など、前後方向における、ある基準点からの上記接合機19の現在位置がロータリエンコーダなどのセンサ76により検出される。そして、この検出値に基づき、上記ローラ55に巻き取りAされている支持膜45の外径寸法が比例演算される。そして、この演算された外径寸法での上記ローラ55による巻き取りA時の支持膜45の速度(m/min)が上記接合機19の前方自走の速度(m/min)に相応するよう、上記ローラ55の回転速度N1(r.p.m)が一次的に演算され、このN1による巻き取りAが開始される(S3)。
【0074】
ここで、上記した接合機19の前方自走の開始時には、上記支持膜45の他端部(前端部)は、前記中位置Mの近傍に位置させられる。そして、前方自走の進行により、上記支持膜45の他端部が高位置Hにあることが高位置検出センサ72により検出されたとする(S4)。すると、このS4の検出は、上記ローラ55による支持膜45の巻き取りA速度が上記接合機19の前方自走の速度よりも速いことを意味する。このため、上記ローラ55の巻き取りAの回転速度(r.p.m)が過大であると判断されて、上記回転速度は前記N1からN1・(1−α)になるよう減速される(S5)。なお、αは0.1−0.2の範囲が好ましい。その後、上記支持膜45の他端部が中位置Mにあることが中位置検出センサ73により検出されたとする(S6)。すると、上記回転速度は前記N1・(1−α)から前記N1に戻される(S3)。
【0075】
一方、上記S3の実行後に、上記支持膜45の他端部が低位置Lにあることが低位置検出センサ74により検出されたとする(S7)。すると、このS7の検出は、上記ローラ55による支持膜45の巻き取りA速度が上記接合機19の前方自走の速度よりも遅いことを意味する。このため、上記ローラ55の巻き取りAの回転速度が過少であると判断されて、上記回転速度は前記N1からN1・(1+α)になるよう増速される(S8)。その後、上記支持膜45の他端部が中位置Mにあることが中位置検出センサ73により検出されたとする(S6)。すると、上記回転速度は前記N1・(1+α)から前記N1に戻される(S3)。
【0076】
即ち、上記係数αを考慮した制御装置17の制御により、上記ローラ55の回転速度が、上記接合機19の前方自走に伴い刻々と自動調整される。これにより、上記ローラ55による支持膜45の巻き取りA速度(m/min)が上記接合機19の前方自走の速度(m/min)に、より正確に相応することとされる。この結果、上記接合機19の前方自走時において、上記前、後支持体43,44に架設されている上記支持膜45に弛みの生じることが、より確実に防止される。
【0077】
そして、上記接合機19の前方自走により、上記両膜材2,3につき所望の接合作業が一旦終了したとする。この後、上記接合機19は、制御装置17へのスタート操作により(S1)、もしくは自動的に、前記初期位置にまで所定速度(m/min)で後方自走させられる(S9)。
【0078】
上記の場合、接合機19の後方自走と共に上記支持装置42の後支持体44も後方移動して、前支持体43から離間し、上記支持装置42は前後方向で伸長させられる。この際、上記各可動支持体58は、後方移動する上記後支持体44に、上記各長尺体65を介し順次引っ張られて後方移動する。そして、上記各可動支持体58は、上記前、後支持体43,44の間で、上記各長尺体65の長さに応じて所定のほぼ等ピッチで配置され、この状態で上記支持膜45を支持する。つまり、ほぼ等ピッチに配置された各可動支持体58が、上記支持膜45を介し上記両膜材2,3を支持する。
【0079】
また、上記接合機19の後方自走に連動して、上記支持装置42の弛み除去装置46のローラ55が支持膜45の一端部側(後端部側)の巻き戻しBをする(S10)。これにより、上記前、後支持体43,44に架設されている上記支持膜45に対し張力が無用に負荷されることが防止されると共に、弛みが生じることも防止される。
【0080】
なお、上記したローラ55による支持膜45の巻き戻しB時の外径寸法は、この支持膜45に厚みがあるため、上記接合機19の自走に伴い刻々と変化する。そこで、まず、上記前支持体43など、前後方向における、ある基準点からの上記接合機19の現在位置が上記センサ76により検出される。そして、この検出値に基づき、上記ローラ55に巻き取りAされている支持膜45の外径寸法が比例演算される。そして、この演算された外径寸法での上記ローラ55による巻き戻しB時の支持膜45の速度(m/min)が上記接合機19の後方自走の速度(m/min)に相応するよう、上記ローラ55の回転速度N2(r.p.m)が一次的に演算され、このN2による巻き戻しBが開始される(S10)。
【0081】
なお、接合機19の後方自走は、接合機19による接合作業を伴わないものであるため、通常、前方自走よりも速くされる。このため、これに応じてN1よりもN2の値が大きくされる。
【0082】
そして、上記した接合機19の後方自走時に、上記支持膜45の他端部(前端部)が高位置Hにあることが高位置検出センサ72により検出されたとする(S11)。すると、このS11の検出は、上記ローラ55による支持膜45の巻き戻しB速度が上記接合機19の後方自走の速度よりも遅いことを意味する。このため、上記ローラ55の巻き戻しBの回転速度(r.p.m)が過少であると判断されて、上記回転速度は前記N2からN2・(1+β)になるよう増速される(S12)。なお、βは0.1−0.2の範囲が好ましいが、N2>N1の場合は、β>αが好ましい。その後、上記支持膜45の他端部が中位置Mにあることが中位置検出センサ73により検出されたとする(S13)。すると、上記回転速度は前記N2・(1+β)から前記N2に戻される(S10)。
【0083】
一方、上記S10の実行後に、上記支持膜45の他端部が低位置Lにあることが低位置検出センサ74により検出されたとする(S14)。すると、このS14の検出は、上記ローラ55による支持膜45の巻き戻しB速度が上記接合機19の後方自走の速度よりも速いことを意味する。このため、上記ローラ55の巻き戻しBの回転速度が過大であると判断されて、上記回転速度は前記N2からN2・(1−β)になるよう減速される(S15)。その後、上記支持膜45の他端部が中位置Mにあることが中位置検出センサ73により検出されたとする(S13)。すると、上記回転速度は前記N2・(1−β)から前記N2に戻される(S10)。
【0084】
即ち、上記係数βを考慮した制御装置17の制御により、上記ローラ55の回転速度が、上記接合機19の後方自走に伴い刻々と自動調整される。これにより、上記ローラ55による支持膜45の巻き戻しB速度(m/min)が上記接合機19の後方自走の速度(m/min)に、より正確に相応することとされる。この結果、上記接合機19の後方自走時において、上記前、後支持体43,44に架設されている上記支持膜45に弛みの生じることが、より確実に防止される。
【0085】
なお、前記したように接合機19を前方自走させるとき、前記他の支持装置42´は上記接合機19が後方自走するときと同様の動作をする。また、前記したように接合機19を後方自走させるとき、上記他の支持装置42´は上記接合機19が前方自走するときと同様の動作をする。
【0086】
上記構成によれば、両膜材2,3を前、後から挟むよう作業面4側にそれぞれ固定され、上記両膜材2,3の各前端部側と、各後端部側とをそれぞれ一体的に把持してこれら両膜材2,3に前後方向に向かう張力を付与する前、後張力付与装置7,8と、これら前、後張力付与装置7,8の間に配置されて作業面4上を前、後方に自走可能とされ、その前方自走と共に上記両重ね合わせ部2a,3a同士を順次接合する接合機19と、上記前張力付与装置7と上記接合機19との間における上記両膜材2,3の前部分2F,3Fを作業面4上の所定高さに維持するようその下方から支持し、この支持状態を維持したまま上記接合機19の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する支持装置42とを備えている。
【0087】
このため、互いに接合させようとする上記両膜材2,3の前部分2F,3Fと、作業面4との間に空間75が形成される。よって、上記両膜材2,3の互いの重ね合わせ部2a,3a同士を接合させる接合作業において、上記接合機19を前方自走させるとき、この接合機19の一部である基台部30を、上記空間75に対し前方に向けて通過させることができる。この結果、上記接合機19は、前記のように張力が付与された上記両膜材2,3から大きい抵抗を与えられることなく、円滑に前方自走し、このため、上記接合作業が容易にできる。
【0088】
また、上記したように、両膜材2,3の前部分2F,3Fは作業面4上の所定高さに支持装置42により支持され、かつ、この支持装置42は、上記支持状態を維持したまま上記接合機19の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する。
【0089】
このため、上記接合機19がいずれの位置にまで自走したかにかかわらず、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの前後方向のほぼ全体が、上記のように接合機19に連動して収縮、伸長する支持装置42により支持されることから、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの前後方向における各部分につき、自重による下方への弛みの発生が防止される。
【0090】
よって、弛み防止のために上記両膜材2,3に対し大きい張力を付与することは不要であることから、これら両膜材2,3に大きい内部応力が生じることが防止され、無用な伸びの発生が防止される。この結果、上記両膜材2,3に所望の接合精度が得られる。
【0091】
また、前記したように、支持装置42が、上記前張力付与装置7と上記接合機19との間で、作業面4側に固定される前支持体43と、この前支持体43の後方に配置されて上記接合機19と共に移動する後支持体44と、これら前、後支持体43,44に架設され、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの下面に面接触してこれら両膜材2,3の前部分2F,3Fを支持する支持膜45と、上記接合機19の自走時に、上記支持膜45に生じようとする弛みを除去する弛み除去装置46とを備えている。
【0092】
このため、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの前後方向におけるほぼ全体が、上記のように弛みの発生が除去される支持膜45との面接触によって、より確実に均一に支持される。よって、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの前後方向における各部分についての弛みの発生が、より確実に防止される。この結果、上記両膜材2,3に所望の接合精度がより確実に得られる。
【0093】
また、前記したように、支持装置42が、前、後支持体43,44の間における作業面4上を前後に自由に移動可能とされ、支持膜45を作業面4上の所定高さに維持するようその下方からそれぞれ支持する前後複数の可動支持体58と、前後方向に延びてこれら可動支持体58をそれぞれ互いに連結すると共に、前端の可動支持体58と上記前支持体43側とを互いに連結し、かつ、後端の可動支持体58と上記後支持体44側とを互いに連結するそれぞれ所定長さ寸法の可撓性長尺体65とを備えている。
【0094】
このため、上記接合機19が後方自走したときには、この接合機19と共に後方移動する上記後支持体44に、上記各長尺体65を介し各可動支持体58が順次引っ張られて後方移動する。そして、これら各可動支持体58は、上記前、後支持体43,44の間で、上記各長尺体65の長さに応じて所定のほぼ等ピッチで配置され、この状態で上記支持膜45を支持する。
【0095】
よって、上記支持膜45の前後方向の各部につき、それぞれ弛みの発生が防止されることから、この支持膜45に支持される上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの前後方向における各部分についての弛みの発生が更に確実に防止される。この結果、上記両膜材2,3に所望の接合精度が更に確実に得られる。
【0096】
また、前記したように、弛み除去装置46が、前、後支持体43,44のうちのいずれか一方の支持体44に設けられ、正、逆回転して前後方向における上記支持膜45の一端部側を巻き取りA、もしくは巻き戻しB可能とするローラ55と、このローラ55を正、逆回転駆動させる回転駆動部68と、上記接合機19の前、後方自走に上記ローラ55が連動して、このローラ55が上記支持膜45を巻き取りA、もしくは巻き戻しBすることにより、この支持膜45に生じようとする弛みを除去するよう上記回転駆動部68を制御する制御装置17とを備えている。
【0097】
このため、上記したように支持装置42の支持膜45に生じようとする弛みは制御装置17の制御により除去される分、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fは上記支持膜45によって、更に精度よく均一に支持される。よって、上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの前後方向における各部分についての弛みの発生が更に確実に防止される。この結果、上記両膜材2,3に所望の接合精度が更に確実に得られる。
【0098】
また、前記したように、支持膜45の他端部側を前、後支持体43,44のうち、他方の支持体43の上面に対し前後に移動可能となるよう当接させ、かつ、この当接部で上記支持膜45の他端部側を下方に向け屈曲させ、上記弛み除去装置46が、上記支持膜45の他端部に対し下方への負荷を付与する負荷付与手段71を備え、上記接合機19の自走時に、上記支持膜45の他端部が所定高さに位置するよう上記制御装置17が上記回転駆動部68を制御するようにしている。
【0099】
このため、上記弛み除去装置46の負荷付与手段71の負荷が上記支持膜45の前後方向の全体にわたり張力として常に付与されることから、この支持膜45の前後方向における各部分につき、それぞれ弛み発生が確実に未然に防止される。よって、この支持膜45に支持される上記両膜材2,3の前部分2F,3Fの前後方向における各部分についての弛みの発生が更に確実に防止される。この結果、上記両膜材2,3に所望の接合精度が更に確実に得られる。
【0100】
また、前記したように、前、後張力付与装置7,8のうち、少なくともいずれか一方の張力付与装置7が張力付与のための引張駆動部11を備え、両膜材2,3に与えられる張力が所定値に維持されるよう上記引張駆動部11を制御する制御装置17を設けている。
【0101】
このため、上記両膜材2,3の前後方向の全体に対し、上記引張駆動部11により適度な所定値の張力が付与されることから、上記両膜材2,3における弛みの発生は、より直接的に確実に防止される。よって、上記両膜材2,3に所望の接合精度がより確実に得られる。
【0102】
図8は、上記両膜材2,3の重ね合わせ態様の変形例である。
【0103】
図8(a)では、両膜材2,3の各重ね合わせ部2a,3aはそれぞれU字形状に屈曲されている。そして、これら重ね合わせ部2a,3aが互いに噛合されて接合されている。
【0104】
図8(b)では、上記両膜材2,3のうち、一方の膜材2の左右方向での中途部に、他方の膜材3が重ね合わされている。そして、この他方の膜材3の左右各側縁部がそれぞれ重ね合わせ部3aとされて、上記一方の膜材2の各重ね合わせ部2aと接合されている。
【0105】
図8(c)では、上記図8(b)における他方の膜材3に補強用などのロープ77が縫合されている。
【0106】
以下の図9は、実施例2を示している。この実施例2は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0107】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図9に従って説明する。
【0108】
図9において、この実施例2の膜材同士の接合装置1では、前記実施例1における各支持装置42,42´の支持膜45,45´を互いに一体的にして、エンドレスな環形状の支持膜80としている。
【0109】
具体的には、上記支持膜80の上部における前後方向の中途部は、接合機19に設けられた前、後上部ローラ81,82によって、上記接合機本体21の下方を迂回させられている。そして、上記支持膜80の上部における前、後部が、上記両膜材2,3を、作業面4上の所定高さに維持するようその下方から支持している。
【0110】
上記接合機19に弛み除去装置46が設けられ、この弛み除去装置46の負荷付与手段71が上記支持膜80の下部の中途部に対し負荷を与えている。これにより、上記支持膜80に生じようとする弛みが機械的に除去される。
【0111】
図9中一点鎖線は、接合機19が実線位置から後方に自走した状態を示している。
【0112】
なお、この実施例2における膜材同士の接合装置1には、支持膜80の巻き取りA、巻き戻しBのための装置は存在しないため、この支持膜80の厚さはある程度大きくできる。このため、ベルトコンベアに用いられるようなベルトを用いてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 膜材同士の接合装置
2 膜材
2a 重ね合わせ部
2F 前部分
2R 後部分
3 膜材
3a 重ね合わせ部
3F 前部分
3R 後部分
4 作業面
5 中心線
7 張力付与装置
8 張力付与装置
11 引張駆動部
17 制御装置
19 接合機
20 台車
21 接合機本体
30 基台部
31 柱部
32 アーム部
33 空間
34 接合部
42 支持装置
43 支持体
44 支持体
45 支持膜
46 弛み除去装置
55 ローラ
58 可動支持体
65 長尺体
68 回転駆動部
71 負荷付与手段
72 高位置検出センサ
73 中位置検出センサ
74 低位置検出センサ
76 センサ
80 支持膜
A 巻き取り
B 巻き戻し
H 高位置
M 中位置
L 低位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ水平方向に延びると共に上下方向で重ね合わされた2枚の膜材を水平な作業面の上方域に設定し、上記両膜材において前後方向に延びる互いの重ね合わせ部同士を接合可能にする膜材同士の接合装置であって、
上記両膜材を前、後から挟むよう作業面側にそれぞれ固定され、上記両膜材の各前端部側と、各後端部側とをそれぞれ一体的に把持してこれら両膜材に前後方向に向かう張力を付与する前、後張力付与装置と、これら前、後張力付与装置の間に配置されて作業面上を前、後方に自走可能とされ、その前方自走と共に上記両重ね合わせ部同士を順次接合する接合機と、上記前張力付与装置と上記接合機との間における上記両膜材の前部分を作業面上の所定高さに維持するようその下方から支持し、この支持状態を維持したまま上記接合機の前、後方自走に連動して前後方向で収縮、伸長する支持装置とを備えたことを特徴とする膜材同士の接合装置。
【請求項2】
上記支持装置が、上記前張力付与装置と上記接合機との間で、作業面側に固定される前支持体と、この前支持体の後方に配置されて上記接合機と共に移動する後支持体と、これら前、後支持体に架設され、上記両膜材の前部分の下面に面接触してこれら両膜材の前部分を支持する支持膜と、上記接合機の自走時に、上記支持膜に生じようとする弛みを除去する弛み除去装置とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の膜材同士の接合装置。
【請求項3】
上記支持装置が、上記前、後支持体の間における作業面上を前後に自由に移動可能とされ、上記支持膜を作業面上の所定高さに維持するようその下方からそれぞれ支持する前後複数の可動支持体と、前後方向に延びてこれら可動支持体をそれぞれ互いに連結すると共に、前端の可動支持体と上記前支持体側とを互いに連結し、かつ、後端の可動支持体と上記後支持体側とを互いに連結するそれぞれ所定長さ寸法の可撓性長尺体とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の膜材同士の接合装置。
【請求項4】
上記弛み除去装置が、上記前、後支持体のうちのいずれか一方の支持体に設けられ、正、逆回転して前後方向における上記支持膜の一端部側を巻き取り、もしくは巻き戻し可能とするローラと、このローラを正、逆回転駆動させる回転駆動部と、上記接合機の前、後方自走に上記ローラが連動して、このローラが上記支持膜を巻き取り、もしくは巻き戻しすることにより、この支持膜に生じようとする弛みを除去するよう上記回転駆動部を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする請求項2、もしくは3に記載の膜材同士の接合装置。
【請求項5】
上記支持膜の他端部側を上記前、後支持体のうち、他方の支持体の上面に対し前後に移動可能となるよう当接させ、かつ、この当接部で上記支持膜の他端部側を下方に向け屈曲させ、上記弛み除去装置が、上記支持膜の他端部に対し下方への負荷を付与する負荷付与手段を備え、上記接合機の自走時に、上記支持膜の他端部が所定高さに位置するよう上記制御装置が上記回転駆動部を制御するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の膜材同士の接合装置。
【請求項6】
上記前、後張力付与装置のうち、少なくともいずれか一方の張力付与装置が張力付与のための引張駆動部を備え、上記両膜材に与えられる張力が所定値に維持されるよう上記引張駆動部を制御する制御装置を設けたことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1つに記載の膜材同士の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−98451(P2011−98451A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253178(P2009−253178)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】