説明

膜構造物の屋根部防水構造

【課題】簡易且つ簡単に施工することができる膜構造物の屋根部防水構造を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、複数の棟を並設することで構成される膜構造物における隣り合う棟の棟間部の屋根部防水構造であって、前記膜材は、棟端部架構材との接続手段が設けられる接続部と、膜材張設時において、前記接続部よりも内側から前記棟間まで前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、線材で構成され且つその両端を下方へ向けて引き下げることができる引き下げ部材が先端部に前記幅方向に沿って設けられる被覆部と、を前記棟間側端部に備え、前記棟間連結膜材は、前記長さ方向における、前記棟間部の対向する棟端部架構材の間隔よりも長く形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解体作業や掘削作業に伴って発生する粉塵が飛散するのを防止するための防塵用仮設テント等の屋根部や壁面部等を膜材で覆って形成される膜構造物における屋根部防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、膜構造物、特に、仮設の膜構造物のように、一箇所に長期間に設置せず、必要に応じて他の場所に移動・設置されるような膜構造物は、省コスト化を図るために設置目的や設置場所の広狭に応じて大きさを変更できる構成が好ましい。そのため、複数の同一若しくは略同一形状の棟を複数並設し、該棟の増減によって全体の大きさ(長さ)を変更することができる膜構造物が用いられている。
【0003】
上記膜構造物の棟は、膜構造物の幅方向に架設される一対の棟端部架構材にそれぞれハトメ等の接続手段を用いて接続することで、前記一対の棟端部架構材間に膜材(シート)を張設して構成され、該棟を長さ方向に複数並設することで膜構造物が構成されている。この時、隣り合う棟の棟間(屋根部間)には隙間が形成され、また、棟端部架構材と膜材との接続部にも隙間が形成されるため、かかる隙間から雨水等が膜構造物内に浸入しないように防水構造が採用されている。
【0004】
かかる防水構造としては、図8(イ)に示すように、隣り合う棟の棟間130を塞ぐよう、隣り合う棟の対向する棟端部架構材107a,107a間に連結膜材131を張設し、棟の屋根部を構成するシートS”と連結膜材131とが棟端部架構材107a,107aを両側から挟むように接続されている接続部分全体を上方から覆うように接続部防水膜材B,Bを被せ、該接続部防水膜材B,Bの両端部を、膜構造物における幅方向に沿って、それぞれ前記棟の屋根部を構成するシートS”と連結膜材131とに接合する防水構造が用いられている。
【0005】
また、図8(ロ)に示すように、上記のような隣り合う棟の棟間を塞ぐ連結膜材131を張設することなく、前記棟間103の間隔よりも長い棟間防水膜材B’を、前記間隔を上方から覆うように、隣り合う棟の一方の屋根部(シートS”)から他方の屋根部(シートS”)まで被せ、前記棟間防水膜材B’の両端部を、膜構造物における幅方向に沿って、それぞれ一方の屋根部を構成するシートS”と他方の屋根部とを構成するシートS”とに接合する防水構造も用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記接続部防水膜材B,B又は棟間防水膜材B’は、その両端部をそれぞれ異なる部材(シートS”と連結膜材131、又は隣り合う棟の一方のシートS”と他方のシートS”)に接合しなければならないことから、棟間103又は棟に、連結膜材131又はシートS”を張設した後に接合作業を行わなければならない。この場合、少なくとも一方の膜構造物の屋外側(外部側)から接合しなければならないため、架構材間に張設した軟らかい屋根部(シートS”)に作業者が乗って作業を行うことが必須となるが、作業者の足下が沈み込むために作業を行い難く、多大な労力が必要になると共に煩雑な作業となる。また、かかる作業は、作業者の墜落の危険が伴うといった問題も生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、屋内側(内部側)から簡易且つ簡単に施工することができる膜構造物の屋根部防水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る膜構造物の屋根部防水構造は、幅方向に架設される一対の棟端部架構材間に膜材を張設して棟を構成し、該棟を長さ方向に複数並設すると共に隣り合う棟の棟間を塞ぐように棟間連結膜材を取り付けることで構成される膜構造物における隣り合う棟の棟間部の屋根部防水構造であって、前記膜材は、棟端部架構材との接続手段が設けられる接続部と、膜材張設時において、前記接続部よりも内側から前記棟間まで前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、線材で構成され且つその両端を下方へ向けて引き下げることができる引き下げ部材が先端部に前記幅方向に沿って設けられる被覆部と、を前記棟間側端部に備え、前記棟間連結膜材は、前記長さ方向における、前記棟間部の対向する棟端部架構材の間隔よりも長く形成されることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、棟を構成する棟端部架構材間に膜材の接続部を接続することで膜材を張設し、棟間部における棟端部架構材間に棟間連結膜材を取り付けると、膜材の被覆部は、前記接続部よりも内側から棟間まで前記接続部を上方から覆った状態となり、被覆部の先端は、棟間の棟間連結膜材の上方に位置することとなる。
【0010】
そして、被覆部の先端部に設けられる引き下げ部材を引き下げることで、該先端部と共に、その下方に位置する棟間連結膜材の対応する部位も引き下げられる。この時、棟間連結膜材は、棟間部の対向する棟端部架構材間に取り付けられているため、両端が棟端部架構材の高さに位置し、中央部側が前記膜材の被覆部の引き下げ部材によって引き下げられた高さに位置することとなるために溝状となる。そのため、降雨時には、かかる溝状の棟間連結膜材がいわゆる樋の役目を果して膜構造物の屋根部、特に棟間部の屋根部の雨水を排水することができ、膜構造物の屋根部、特に、棟間部の屋根部の雨水等が留まることを防ぐことができる。
【0011】
また、棟間部を構成する棟端部架構材に、その両側から膜材及び棟間連結膜材がそれぞれ接続手段等によって接続されている部分は、棟の屋根部を構成する膜材の被覆部によって上方から覆われているため、前記接続されている部分が、雨水等に曝されることはない。従って、膜構造物における屋根部、特に、棟間部の屋根部からの雨水の浸入を強固に防ぐことができるようになる。
【0012】
また、前記被覆部における引き下げ部材の引き下げ作業において、棟間連結膜材の長さが棟間部の対向する棟端部架構材の間隔よりも長いことから、前記被覆部における引き下げ部材は引き下げ易い。
【0013】
さらに、前記接続部は、膜材とは別部材として形成され、膜材に接合しなければならない場合であっても、一方の端部だけを膜材に接合すればよいことから、膜材張設後に接合する必要はなく、張設後の膜材上での作業も行わなくてよい。即ち、張設前に接合作業を行い易い場所で該作業を行うことができるため、接合作業が行い易い。また、接続部ではなく、被覆部を膜材に接合する場合であっても、上記同様に、接合作業が行い易い。
【0014】
尚、本発明において、膜材における内側とは、張設時において、棟端部よりも棟の中心側をいう。また、長さとは、膜構造物を構成する棟の並設方向に沿った長さ方向の距離をいい、幅とは、前記長さ方向と直交する幅方向(棟端部架構材に沿った方向)の距離をいう。棟間とは、隣り合う棟と棟との間隙をいい、棟間部とは、前記棟間に加え、隣り合う棟と棟との対向する端部(棟端部架構材や膜材の接続部及び被覆部等)を含む部分をいう。
【0015】
また、前記棟間連結膜材は、両端を下方へ向けて引き下げることができる棟間中央部引き下げ部材が前記棟間連結膜材の中央部に前記幅方向に沿ってさらに設けられる構成であることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、上記同様に、棟間連結膜材を溝状に形成すると、棟間連結膜材に設けられた棟間中央部引き下げ部材が該溝状の底部中央部に位置することとなる。そして、前記溝状の底部中央部の棟間中央部引き下げ部材を引き下げることで、前記溝状の底部が横断面V字状となり、下端の屈曲部に前記溝状を流れる雨水等が集められ、該溝状に沿ってより排水し易くなる。
【0017】
また、幅方向に架設される一対の棟端部架構材間に膜材を張設して棟を構成し、該棟を長さ方向に複数並設することで構成される膜構造物における隣り合う棟の棟間部の屋根部防水構造であって、隣り合う棟の一方における前記膜材は、一方の棟端部架構材との接続手段が設けられる接続部と、膜材張設時において、前記接続部よりも内側から前記棟間まで前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、線材で構成され且つその両端を下方へ向けて引き下げることができる引き下げ部材が先端部に前記幅方向に沿って設けられる被覆部と、を棟間側端部に備え、前記隣り合う棟の他方における前記膜材は、他方の棟端部架構材との接続手段が設けられる接続部と、膜材張設時において、前記接続部よりも内側から前記一方の棟に向かって前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、その先端部に前記一方の棟端部架構材との接続手段が設けられる棟間被覆部と、を棟間側端部に備え、前記棟間被覆部は、前記長さ方向において、前記棟間部の対向する一方の棟端部架構材と他方の棟端部架構材との間隔よりも長く形成される構成であってもよい。
【0018】
かかる構成によれば、棟を構成する棟端部架構材間に膜材の接続部を接続することで膜材を張設し、隣り合う棟の棟間部における一方の棟端部架構材に、他方の膜材の棟間被覆部先端部の接続手段によって接続すると、他方の膜材の棟間被覆部は、他方の膜材の接続部よりも内側から一方の棟端部架構材まで他方の膜材の接続部及び棟間を上方から覆った状態となり、一方の膜材の被覆部は、一方の接続部よりも内側から棟間まで前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、その先端は、棟間を覆う他方の膜材の棟間被覆部の上方に位置することとなる。
【0019】
そして、一方の膜材の被覆部の先端部に設けられる引き下げ部材を引き下げることで、該先端部と共に、その下方に位置する他方の膜材の棟間被覆部の対応する部位も引き下げられる。この時、他方の膜材の棟間被覆部は、先端部が一方の棟端部架構材に接続され、その内側が他方の棟端部架構材の上方に乗った状態となっているため、棟間部における対向する棟端部架構材の位置の棟間被覆部は、前記対向する棟端部架構材の高さに位置し、中央部側が前記一方の膜材の被覆部の引き下げ部材によって引き下げられた高さに位置することとなるために溝状(引き下げ部材の位置が屈曲部となる断面V字状の溝状)となる。そのため、降雨時には、かかる溝状の他方の膜材の棟間被覆部がいわゆる樋の役目を果して屋根部、特に、棟間部の屋根部の雨水を排水することができ、膜構造物の屋根部、特に、棟間部の屋根部に雨水等が溜まることを防ぐことができる。
【0020】
また、棟間部を構成する一方の棟端部架構材に、その両側から一方の膜材及び他方の棟間被覆部がそれぞれ接続手段等によって接続されている部分は、一方の棟の屋根部を構成する膜材の被覆部によって上方から覆われ、他方の棟端部架構材に他方の膜材が接続手段によって接続されている部分は、他方の棟の屋根部を構成する膜材の棟間被覆部によって上方から覆われているため、前記一方及び他方の棟の接続されている部分が、雨水等に曝されることはない。従って、膜構造物における屋根部、特に、棟間部の屋根部からの雨水の浸入を強固に防ぐことができるようになる。
【0021】
また、前記一方の膜材の被覆部における引き下げ部材の引き下げ作業において、他方の膜材の棟間被覆部の長さが棟間部の対向する棟端部架構材の間隔よりも長いことから、前記一方の膜材の被覆部における引き下げ部材は引き下げ易い。
【0022】
さらに、前記一方及び他方の膜材の接続部は、それぞれ膜材とは別部材として形成され、膜材に接合しなければならない場合であっても、一方の端部だけを膜材に接合すればよいことから、膜材張設後に接合する必要はなく張設後の膜材上での作業も行わなくてよい。即ち、張設前に接合作業を行い易い場所で該作業を行うことができるため、接合作業が行い易い。そのため、膜構造物を設置する際に、簡易且つ簡単に施工することができる。尚、前記一方及び他方の膜材の接続部ではなく、一方の膜材の被覆部及び他方の膜材の棟間被覆部一方の膜材の被覆部及び他方の膜材の棟間被覆部を膜材に接合する場合であっても、同様に、接合作業が行い易い。
【発明の効果】
【0023】
以上より、本発明によれば、屋内側(内部側)から簡易且つ簡単に施工することができる膜構造物の屋根部防水構造を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態においては、膜構造物として、鋼材や軽量鋼材等で構成されるアーチ状の枠材が組み合わされる構造体と、該構造体を覆って屋根や壁となるシート(膜材)とで構成され、構造物の解体や掘削等によって発生する粉塵の外部への飛散を防止するためのテントであって、解体する構造物や仮設する敷地の広狭によって大きさを変更できる防塵仮設テント(以下、単に「テント」と称する場合がある。)について説明する。
【0026】
図1に示すように、防塵仮設テント(膜構造物)1は、複数の棟2,2,…を、隣り合う棟2と棟2とが所定の間隔(棟間)3を介して並設することで構成され、長さ方向における一方側端部中央には、入り口4が形成されている。テント1は、このように並設された複数の棟2,2,…の数を増減することで、テント1の長さ(大きさ)を変更することができる構成となっている。尚、本実施形態において、長さ方向とは、棟2,2,…が並設される方向をいい、幅方向とは、長さ方向と直交する方向(後述する枠材5(架構材7)に沿った方向)をいう。また、長さとは、長さ方向の距離をいい、幅とは、幅方向の距離をいう。
【0027】
図2にも示すように、棟2は、長さ方向へ等間隔に立設された複数のアーチ状の枠材5,5,…全体に膜材(シート)Sを覆うように張設することで構成されている。枠材5は、一対の立設された縦構材6,6間に、上方に向けて湾曲した架構材(梁部材)7を架設することで構成されている。縦構材6又は架構材7は、それぞれ二本の平行な棒状の鋼材の間を鋸歯状に繋いだ、いわゆるトラス材で構成されている。
【0028】
尚、複数立設された枠材5,5,…の内、棟2の両端部に立設された一対の枠材5,5を、特に棟端部枠材5a,5aと称し、また、棟端部枠材5aの架構材を棟端部架構材7aと称する。
【0029】
シートSは、図3乃至図5にも示すように、略矩形状の膜材であり、例えば、無機繊維、合成繊維、天然繊維の織物や編物の少なくとも一方の面に合成樹脂やゴムをコーティングしたシートや、合成樹脂シート、ゴムシート等を採用することができるが、本実施形態においては、合成繊維であるポリエステルの織物の両面に合成樹脂である塩化ビニルをコーティングしたものを採用している。また、シートSは、その長さ方向における棟間3側の端部には接続部10と被覆部11とを備える。接続部10は、シートSの長さ方向端部に設けられている。詳細には、接続部10は、棟端部枠材5aと接続するための接続手段として、先端側端縁に沿って等間隔にハトメ12,12,…が設けられている。そして、接続部10のハトメ12,12,…にロープやワイヤー等の線材rを挿通して棟端部枠材5aに該線材rを巻き付けてシートSに張力を導入することによって、該シートSが張設される。
【0030】
被覆部11は、シートSの接続部10よりも内側の上面に接合されており、上記のようにシートSを接続部10によって棟端部枠材5aに接続した際(張設時)において、接続部10よりも内側から棟間3まで前記接続部10を上方から覆うように伸びている。なお、シートSに対する被覆部11の接合は、縫製、接着剤による接着、熱による溶着等によって行うことができるが、本実施形態においては、熱による溶着により行っている。詳細には、被覆部11は、シートSの端部よりも先端側に突出するように形成されており、その先端部には引き下げ部材13が設けられている。本実施形態においては、シートSの先端部を折り返して筒状とし、引き下げ部材13として、該筒内に線材13を挿通させた構成としている。線材13は、ロープやゴム、ワイヤー等を採用することができるが、本実施形態においては、ロープ(いわゆる、エッジロープ)を採用している。
【0031】
尚、本実施形態において、シートSにおける内側とは、枠材5,5,…張設時において、棟端部よりも棟2の中心側をいう。また、棟間3とは、隣り合う棟2と棟2との間隙をいい、棟間部30とは、前記棟間3に加え、隣り合う棟2と棟2との対向する端部(棟端部架枠材5aやシートSの接続部10及び被覆部11等)を含む部分をいう。
【0032】
棟間3は、外部からの雨水等が前記隙間から内部に入らないよう、また、内部の粉塵等が外部に飛散しないよう、棟2と棟2との隙間に棟間連結膜材31が前記隙間を塞ぐように取り付けられている。この時、棟間連結膜材31は、棟端部枠材5aに張設されたシートSにおける被覆部11先端部の引き下げ部材13の下方に位置するように取り付けられている。棟間連結膜材31は、シートSと同じ素材で構成される広帯状のシート体であり、テント1の長さ方向における長さが、隣り合う棟2,2の棟間部30における対向する棟端部架構材5a,5aの間隔よりも長いシート体である。棟間連結膜材31の長さ方向両端部には、シートSの接続部10同様に、端縁に沿って接続手段としてハトメ(図示せず)が等間隔に設けられ、棟間部30における対向する棟端部架構材5a,5aに対し、それぞれ前記ハトメを挿通したロープ等の線材rを巻き付けることによって接続固定されている。また、棟間連結膜材31は、長さ方向中央に幅方向に沿って線材で構成された棟間中央部引き下げ部材32が設けられている。棟間中央部引き下げ部材32は、ロープやゴム、ワイヤー等を採用することができるが、本実施形態においては、ワイヤー32で構成されている。
【0033】
このように構成される棟間3は、棟2を構成する棟端部枠材5a,5a間にシートSの接続部10を接続することでシートSを張設し、棟間部30における棟端部架構材5a,5a間に棟間連結膜材31を取り付けると、シートSの被覆部11は、前記接続部10よりも内側から棟間3まで前記接続部10を上方から覆った状態となり、被覆部11の先端は、棟間3の棟間連結膜材31の上方に位置することとなる。
【0034】
そして、棟間部30の屋根部においては、被覆部11の先端部に設けられる引き下げ部材13の両端を引き下げることで、該先端部と共にその下方に位置する棟間連結膜材31の対応する部位も引き下げられる。この時、棟間連結膜材31は、棟間部30の対向する棟端部架構材7a,7a(棟端部枠材5a,5aの屋根部に対応する部分)間に取り付けられているため、両端が棟端部架構材7a,7aの高さに位置し、棟間部30の中央部側がシートSにおける被覆部11の引き下げ部材13によって引き下げられた高さに位置することとなるために溝状となる。
【0035】
尚、本実施形態においては、シートS及び棟間連結膜材31は、テント1を構成する両壁部と屋根部とがそれぞれ実質的に1枚に加工されたシートS及び棟間連結膜材31で構成されている。そのため、棟間部30の壁部においても上記同様に構成されており、引き下げ部13の地面側の両端を下方に引き下げつつ地面に沿ってテント1の内部側に引き込むことで、棟間部30の屋根部のみでなく、壁部においても、上記同様、棟間連結膜材31は溝状となる。
【0036】
さらに、前記溝状の底部中央部、即ち、棟間連結膜材31の中央には、幅方向に沿って棟間中央部引き下げ部材32設けられており、かかる棟間中央部引き下げ部材32の両端を下方に引き下げる(又は、地面側両端部を引き下げつつ、引き込む)ことで、前記溝状の底部中央部が長さ方向に沿った断面において略V字状となり、前記溝全体としては、同方向の断面が逆さまにした略五角形状に形成される(図5参照)。
【0037】
以上のように、少なくとも屋根部において、棟間部30が上記のように構成されることで、テント1の屋根部は、棟間部30において、かかる部位からの雨水等の浸入を防ぐ構造(防水構造)とすることができる。
【0038】
即ち、降雨時には、上記溝状の棟間連結膜材31がいわゆる樋の役目を果して、テント1における屋根部、特に、棟間部30の屋根部の雨水を効果的に排水することができ、テント1における棟間部30の屋根部に雨水等が溜まることを防ぐことができる。
【0039】
また、棟間部30を構成する棟端部架構材7a,7aに、その両側からシートS及び棟間連結膜材31がそれぞれ接続手段(ハトメ等)によって接続されている部分は、棟2の屋根部を構成するシートSの被覆部11によって上方から覆われているため、前記接続されている部分が、雨水等に曝されることはない。従って、テント1における屋根部、特に、棟間部30の屋根部からの雨水の浸入を強固に防ぐことができるようになる。
【0040】
また、棟間部30の被覆部11における引き下げ部材13の引き下げ(又は前記引き込み)作業において、棟間連結膜材31の長さが棟間部30の対向する棟端部架構材7a,7aの間隔よりも長いことから、棟間連結膜材31の長さが前記棟端部架構材7a,7aの間隔と同程度のものに比べ、前記被覆部における引き下げ部材13は引き下げ(又は引き込み)易く、棟間連結膜材31を溝状に形成し易い。
【0041】
さらに、前記被覆部11は、シートSとは別部材として形成され、シートSに接合しなければならないが、棟端部枠材5a(棟端部架構材7a)を跨いで両端側をそれぞれシートS及び棟間連結膜材31に接合する必要はなく、一方の端部だけをシートSに接合すればよいことから、シートS及び棟間連結膜材31を張設後に接合する必要はない。そのため、張設後のシートS又は棟間連結膜材31上での作業も行わなくてよい。即ち、張設前に接合作業の行い易い場所で該作業を行うことができるため、接合作業が極めて行い易い。そのため、テント1を設置する際に、簡易且つ簡単に施工することができる。また、本実施形態のように被覆部11ではなく、接続部10をシートSに接合する構成であっても、上記同様に、接合作業が行い易い。なお、この場合においても、縫製、接着剤による接着、熱による溶着等によって接続部10をシートSに接合すればよい。
【0042】
さらに、棟間連結膜材31は、棟間中央部引き下げ部材32の両端を下方に引き下げる(又は、地面側両端部を引き下げつつ、引き込む)ことで、前記溝状の底部中央部が長さ方向に沿った断面において略V字状となり、前記溝全体としては、同方向の断面が逆さまにした略五角形状の溝が形成されるため、下端側の屈曲部に前記溝状を流れる雨水等が集められ、該溝状に沿ってより排水し易くなる
【0043】
尚、本発明のテント(膜構造物)1の屋根部防水構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0044】
例えば、本実施形態においては、棟間連結膜材31は、棟間中央部引き下げ部材32が設けられ、該棟間中央部引き下げ部材32の両端を下方に引き下げることで、前記溝全体としては、断面が逆さまにした略五角形状の溝が形成されるが、これに限定される必要もなく、図6に示すように、棟間連結膜材31は、棟間中央部引き下げ部材32がなくてもよい。この場合、長さ方向に沿った断面は、逆向きの略台形状となるが、かかる断面形状であっても、樋の役目を果して、テント1における屋根部、特に、棟間部30における屋根部の雨水を排水することができ、テント1における屋根部、特に、棟間部30の屋根部に雨水が溜まることを防ぐことができる。
【0045】
さらに、図7に示すように、隣り合う棟の一方におけるシートSは、一方の棟端部架構材7a(棟端部枠材5a)との接続手段(ハトメ等)が設けられる接続部10と、シートS張設時において、前記接続部10よりも内側から前記棟間3まで接続部10を上方から覆うことができるように伸び、線材で構成され且つその両端を下方へ向けて引き下げることができる引き下げ部材13が先端部に前記幅方向に沿って設けられる被覆部11と、を棟間3側端部に備え、前記隣り合う棟の他方におけるシートS’は、他方の棟端部架構材7’a(棟端部枠材5’a)との接続手段(ハトメ等)が設けられる接続部10’と、シートS’張設時において、接続部10’よりも内側から前記一方の棟に向かって接続部10’を上方から覆うことができるように伸び、その先端部に前記一方の棟端部架構材7aとの接続手段が設けられる棟間被覆部11’と、を棟間3側端部に備え、前記棟間被覆部11’は、前記長さ方向において、前記棟間部30の対向する一方の棟端部架構材7aと他方の棟端部架構材7’aとの間隔よりも長く形成される構成であってもよい。
【0046】
かかる構成であっても、隣り合う棟の棟間部30’における一方の棟端部架構材7aに、他方のシートS’の棟間被覆部11’を、その先端の接続手段によって接続すると、他方のシートS’の棟間被覆部11’は、他方のシートS’の接続部10’よりも内側から一方の棟端部架構材7aまで他方のシートSの接続部10’及び棟間3を上方から覆った状態となり、一方のシートSの被覆部11の先端は、棟間3を覆う他方のシートS’の棟間被覆部11’の上方に位置することとなる。
【0047】
そして、一方のシートSの被覆部11の先端部に設けられる引き下げ部材13を引き下げることで、該先端部と共に、その下方に位置する他方のシートS’の棟間被覆部11’の対応する部位も引き下げられる。この時、他方のシートS’の棟間被覆部11’は、先端部が一方の棟端部架構材7aに接続され、その内側が他方の棟端部架構材7’aの上方に乗った状態となっているため、棟間部30’における対向する棟端部架構材7a,7’aの位置の棟間被覆部11’は、前記対向する棟端部架構材7a,7’aの高さに位置し、中央部側が前記一方のシートSの被覆部11の引き下げ部材13によって引き下げられた高さに位置することとなるために溝状(引き下げ部材13に対応する位置が屈曲部となる断面V字状の溝状)となる。そのため、降雨時には、かかる溝状の他方のシートS’の棟間被覆部11’がいわゆる樋の役目を果して屋根部、特に棟間部30’の屋根部の雨水を排水することができ、テント1の屋根部、特に、棟間部30’の屋根部に雨水等が溜まることを防ぐことができる。
【0048】
また、棟間部30’を構成する一方の棟端部架構材7aに、その両側から一方のシートS及び他方の棟間被覆部11’がそれぞれ接続手段等によって接続されている部分は、一方の棟の屋根部を構成するシートSの被覆部11によって上方から覆われ、他方の棟端部架構材7’aに他方のシートS’が接続手段によって接続されている接続部10’は、他方の棟の屋根部を構成するシートS’の棟間被覆部11’によって上方から覆われているため、前記一方及び他方の棟の接続されている部分が、それぞれ雨水等に曝されることはない。従って、テント1における屋根部、特に、棟間部30’の屋根部からの雨水の浸入を強固に防ぐことができるようになる。
【0049】
また、前記一方のシートSの被覆部11における引き下げ部材13の引き下げ作業において、他方のシートS’の棟間被覆部11’の長さが棟間部30’の対向する棟端部架構材7a,7’aの間隔よりも長いことから、前記一方のシートSの被覆部11における引き下げ部材13は、上記同様、引き下げ易い。
【0050】
さらに、前記一方のシートS及び他方のシートS’の接続部10,10’は、シートS,S’とは別部材として形成され、シートS,S’に接合しなければならない場合であっても、上記同様、一方の端部だけをシートS,S’に接合すればよいことから、シートS,S’張設後に接合する必要はなく、張設後のシートS,S’上での作業も行わなくてよいことから、張設前に接合作業を行うことができる。そのため、テント1を設置する際に、簡易且つ簡単に施工することができる。尚、それぞれの接続部10,10’ではなく、前記一方のシートSの被覆部11及び他方のシートS’の棟間被覆部11’をシートS,S’に接合する場合であっても、同様に、接合作業が行い易い。
【0051】
また、本実施形態において、テント1は、幅方向において、屋根部及び壁部がシートSで一体的に構成されているため、棟間部30の壁部においても上記防水構造が構成されているが、これに限定される必要もなく、少なくとも、棟間部30の屋根部において、上記防水構造が構成されていればよい。
【0052】
また、本実施形態において、テント1の屋根部は、上方に向かって湾曲した曲面で構成されているが、これに限定される必要もなく、方流れや切妻であってもよい。この場合、シートの被覆部先端の引き下げ部材は、ロープではなく、屋根部の形状に対応した剛性を有する線材で構成される。このようにすることで、引き下げ部材を下方に引き下げた際に、屋根部に形成された角部(例えば、方流れの上方側端部)におけるシートの被覆部のみが引き下げられることなく、屋根部の幅方向全体におけるシートの被覆部が引き下げられ、上記同様の防水構造を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る防塵架設テントの概略斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る棟を構成する枠材の配置の概略斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る防塵架設テントのシートであって、(イ)は、棟間側端部の一部拡大斜視図を示し、(ロ)は、接続部の一部拡大斜視図を示す。
【図4】同実施形態に係る防塵架設テントのシートであって、(イ)は、被覆部の裏面側からの一部拡大斜視図を示し、(ロ)は、そのA−A断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る防塵架設テントの棟間部の長さ方向に沿った断面図を示す。
【図6】棟間中央部引き下げ部材のない他実施形態に係る防塵架設テントの棟間部の長さ方向に沿った断面図を示す。
【図7】棟間連結膜材のない他実施形態に係る防塵架設テントの棟間部の長さ方向に沿った断面図を示す。
【図8】従来の棟間部の長さ方向に沿った断面図であって、(イ)は、棟端部架構材近傍のみを覆う接続部防水膜材を用いた防水構造の断面図を示し、(ロ)は、棟間部全体を覆う棟間防水膜材を用いた防水構造の断面図を示す。
【符号の説明】
【0054】
1…防塵架設テント(膜構造物)、2…棟、3…棟間、4…入り口、5…枠材、5a…棟端部枠材、6…縦構材、6a…棟端部縦構材、7…架構材(梁部材)、7a…棟端部架構材、10,10’…接続部、11…被覆部、11’…棟間被覆部、12…ハトメ(接続手段)、13…引き下げ部材(エッジロープ)、30…棟間部、31…棟間連結膜材、32…棟間中央部引き下げ部材(ワイヤー)、r…ロープ、S,S’…シート(膜材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に架設される一対の棟端部架構材間に膜材を張設して棟を構成し、該棟を長さ方向に複数並設すると共に隣り合う棟の棟間を塞ぐように棟間連結膜材を取り付けることで構成される膜構造物における隣り合う棟の棟間部の屋根部防水構造であって、
前記膜材は、棟端部架構材との接続手段が設けられる接続部と、膜材張設時において、前記接続部よりも内側から前記棟間まで前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、線材で構成され且つその両端を下方へ向けて引き下げることができる引き下げ部材が先端部に前記幅方向に沿って設けられる被覆部と、を前記棟間側端部に備え、
前記棟間連結膜材は、前記長さ方向における、前記棟間部の対向する棟端部架構材の間隔よりも長く形成されることを特徴とする膜構造物の屋根部防水構造。
【請求項2】
前記棟間連結膜材は、両端を下方へ向けて引き下げることができる棟間中央部引き下げ部材が前記棟間連結膜材の中央部に前記幅方向に沿ってさらに設けられることを特徴とする請求項1に記載の膜構造物の屋根部防水構造。
【請求項3】
幅方向に架設される一対の棟端部架構材間に膜材を張設して棟を構成し、該棟を長さ方向に複数並設することで構成される膜構造物における隣り合う棟の棟間部の屋根部防水構造であって、
隣り合う棟の一方における前記膜材は、一方の棟端部架構材との接続手段が設けられる接続部と、膜材張設時において、前記接続部よりも内側から前記棟間まで前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、線材で構成され且つその両端を下方へ向けて引き下げることができる引き下げ部材が先端部に前記幅方向に沿って設けられる被覆部と、を棟間側端部に備え、
前記隣り合う棟の他方における前記膜材は、他方の棟端部架構材との接続手段が設けられる接続部と、膜材張設時において、前記接続部よりも内側から前記一方の棟に向かって前記接続部を上方から覆うことができるように伸び、その先端部に前記一方の棟端部架構材との接続手段が設けられる棟間被覆部と、を棟間側端部に備え、
前記棟間被覆部は、前記長さ方向において、前記棟間部の対向する一方の棟端部架構材と他方の棟端部架構材との間隔よりも長く形成されることを特徴とする膜構造物の屋根部防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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