説明

膨張性接着剤、及び膨張性接着テープ

【課題】接着対象となる部材の形状に応じて形状を正確に整える必要がなく、使用時に高精度に位置決めの必要がなく、接着性と膨張性を併せ持つ膨張性接着剤及び膨張性接着テープを提供する。
【解決手段】光や熱などの刺激の付与により膨張することにより、部材間の隙間を埋め、かつ部材と部材とを接着する膨張性接着剤、並びに刺激の付与により膨張することにより、部材間の隙間を埋める膨張性樹脂組成物からなる膨張層を有し、かつ部材と部材とを接着する膨張性接着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材間の隙間において、自身が膨張しつつ接着も行う膨張性接着剤及び膨張性接着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯用画像表示装置では、画像表示パネルと画像表示パネル保護用透明前面板との間に空隙を設け、その空隙に衝撃吸収シートを配置している。上記衝撃吸収シートは、あらかじめ発泡されたゴム系発泡剤からなる。このような構造の一例が、例えば下記の特許文献1に開示されている。特許文献1では、上記衝撃吸収シートにより、外部衝撃力が画像表示パネルに直接作用することを防止している。また、塵が外部環境や内部部材から侵入したりまたは発生したりすることが防止され、それによって、視認性が低下することを防止することができるとされている。
【0003】
他方、特許文献2には、カメラのレンズユニットを発泡性のクッション材のような弾性体を介して前カバーに押圧させた構造が開示されている。すなわち、上記弾性体が、レンズユニットと前カバーとの間のシール部材として機能している。例えば、カメラの分野において、発泡性のクッション材のような弾性体を用いて、レンズユニットを前カバーに押圧させるとともに、シール部材として機能させることが、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−110773号公報
【特許文献2】特開2006−30419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される衝撃吸収シートは、予め発泡済みのゴム系発泡体からなるため、そのシール性を高くするためには、予め発泡体の形状を正確に整える必要がある。また、予め発泡済みのゴム系発泡体を用いた場合、各画像表示装置毎に必要な発泡体の形状が異なるため、多数の種類の発泡成形体を用意する必要がある。さらに、画像表示装置を製造するに際しては、発泡成形体を上記空隙に高精度に位置決め精度を高くする必要がある。
【0006】
また、特許文献1に記載される衝撃吸収シートの表面には粘着層が設けられている。従って、ゴム系発泡体を得た後に、ゴム系発泡体表面にさらに粘着層を設けなければならない。
【0007】
特許文献2に記載されている弾性体も、予め発泡済みのクッション材からなるので、特許文献1と同じく、弾性体の形状を正確に整えておかねばならない。また、製品毎に多種類の弾性体を用意しなければならない。さらに、カメラ製造時に正確に弾性体を位置決めしなければならない。
【0008】
本発明の目的は、接着対象となる部材の形状に応じて形状を正確に整える必要がなく、使用時には高精度の位置決めの必要がなく、接着性と膨張性を併せ持つ膨張性接着剤および膨張性接着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、刺激の付与により膨張することにより部材間の隙間を埋め、かつ部材と部材とを接着する膨張性接着剤が提供される。
【0010】
膨張とは、例えば、膨張性接着剤中で気体を発生させ、その気体が樹脂中に内包されることにより、同じ外気圧の下で膨張性接着剤の体積を増加させることをいう。
【0011】
膨張は、膨張性接着剤の凝集力が小さいまたは架橋が進行していない時点で、気体を発生させることにより行われる。
【0012】
気体は、例えば、ガス発生剤を膨張性接着剤中に含有させておいた、UVや熱等の刺激を加えることにより発生される。
【0013】
本発明では、好ましくは、膨張性接着剤は、膨張後の形状を固定しかつ部材と部材とを接着する。この場合には、膨張後の形状が固定されるので、部材と部材との接着を果たしかつ部材と部材との隙間をより確実に埋めることができる。
【0014】
本発明に係る膨張性接着剤のある特定の局面では、接着強度が、200〜600N/4cmの範囲である。接着強度が、200N/4cm以下であれば、接着力が不十分である。
【0015】
本明細書において、接着強度とは、被着体をSUS板として膨張性接着剤を貼り合わせ、剪断方向に300mm/分の速度で引き剥がした場合の剪断接着力である。
【0016】
本発明に係る膨張性接着剤の他の局面では、接着性樹脂100重量部と、刺激により気体を発生する膨張剤5〜50重量部とを含有する。刺激により気体を発生する膨張剤が、5重量部以下であれば、刺激の付与による膨張が不足し、部材間の隙間を埋めにくくなる。
【0017】
本発明に係る膨張性接着剤のさらに他の特定の局面では、膨張前の架橋度が、50%以下である。膨張前の架橋度が50%以下であることにより、膨張により膨張性接着剤の体積が充分大きくなる。従って、部材間の隙間をより確実にシールすることができる。
【0018】
本発明に係る膨張性接着剤のさらに別の特定の局面では、膨張及び硬化後のtanδが25℃において0.5以上、1.0以下である。この場合には、外力を受けたときに容易に変形し、衝撃吸収性能を高めることができる。
【0019】
本発明に係る膨張性接着テープは、刺激の付与により膨張することにより部材間の隙間を埋め、かつ部材と部材とを接着する膨張性接着テープである。
【0020】
好ましくは、前記膨張層が、膨張後の形状を固定しかつ部材と部材とを接着する。この場合には、膨張後の形状が固定されるので、部材と部材とを接着しつつ、部材と部材との隙間をより確実にシールすることができる。
【0021】
本発明に係る膨張性接着テープのある特定の局面では、粘着力が、2〜20N/25mmの範囲にある。粘着力がこの範囲内にあれば、部材同士をより確実に接着することができ、かつ部材間の隙間をより確実にシールすることができる。
【0022】
本発明に係る膨張性接着テープのある特定の局面では、前記膨張性樹脂組成物が、接着性樹脂100重量部と、刺激により気体を発生する膨張剤5〜50重量部とを含有する膨張性接着剤からなる。
【0023】
本発明に係る膨張性接着テープのさらに他の特定の局面では、上記膨張性接着剤の膨張前の架橋度が50%以下である。この場合には、膨張性接着剤の体積が膨張により充分大きくなる。従って、部材間の隙間をより確実にシールすることができる。
【0024】
本発明に係る膨張性接着テープのさらに別の特定の局面では、膨張性接着テープは、前記膨張層からなり、粘接着層を有しない。すなわち、本発明においては、膨張性接着テープは、それ自体が部材と部材とを接着する接着力を発現するものであってもよい。もっとも、本発明に係る膨張性接着テープは、上記膨張層の少なくとも片面に積層された粘接着層を備えていてもよい。膨張層の少なくとも片面に粘接着層が設けられている場合、粘接着層の粘接着力により適用対象部材に接合することができる。従って、膨張層の設計の自由度を高めることができる。
【0025】
上記粘接着層を備えた膨張性接着テープの場合には、膨張層を構成している膨張性樹脂組成物は、好ましくは、樹脂と膨張剤とを含む。粘接着層により、部材に対する粘接着力が発現するので、膨張性樹脂組成物自体において、部材に対する粘接着力を発現させる必要がない。従って、広範な樹脂材料や膨張剤から適宜選択して、膨張性樹脂組成物を構成することができる。
【0026】
本発明に係る膨張性接着テープのさらに別の特定の局面では、前記膨張層の少なくとも片面に積層された基材層がさらに備えられている。
【0027】
基材層を設けた場合には、膨張性接着テープの面法線に垂直な方向の膨張性が抑制され、膨張方向が面法線方向に集中する。従って、部材間の隙間から膨張性接着テープの膨張した部分がはみ出し難い。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る膨張性接着剤及び膨張性接着テープは、膨張することにより部材間の隙間を埋め、部材と部材を接着する機能を有する。膨張により体積変化を引き起こすものであるため、適用される部材間の隙間の寸法に応じて、正確に膨張性接着剤及び膨張性接着テープの形状を整える必要がない。加えて、部材間に適用するに際し、膨張性接着剤及び膨張性接着テープを高精度に位置決めする必要もない。さらに、様々な部材間の隙間に応じて多種多様な形状及び寸法の膨張性接着剤や膨張性接着テープを用意する必要もない。
【0029】
よって、本発明の膨張性接着剤及び膨張性接着テープを用いることにより、例えば携帯用画像装置の画像表示パネルと保護用透明板との間の空隙などの様々な部材間の隙間に容易に適用することができ、刺激を付与して膨張させるだけで、部材間の隙間を確実にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る膨張性接着剤の使用例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る膨張性接着テープを示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る膨張性接着テープにおいて、光照射量とテープ膨張性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0032】
本発明に係る膨張性接着剤及び膨張性接着テープは、刺激の付与により膨張し、部材間の隙間を埋め、かつ部材と部材とを接着する。本発明の膨張性接着テープは、刺激の付与により膨張する膨張層を有する。この膨張層は、本発明の膨張性接着剤により構成されてもよく、他の膨張性樹脂組成物により形成されてもよい。もっとも、好ましくは、膨張層は、本発明の膨張性接着剤からなる。以下においては、先ず、本発明の膨張性接着剤を説明し、次に本発明の膨張性接着テープの詳細を説明する。
【0033】
(膨張性接着剤)
本発明に係る膨張性接着剤は、刺激の付与により膨張することにより部材間の隙間を埋め、かつ部材と部材とを接着するものである。上記膨張性接着剤としては、刺激の付与により膨張し、かつ上記刺激と同種またと別種の刺激を加えることにより、接着性を発現する適宜の接着剤を用いることができる。好ましくは、刺激の付与により膨張し、膨張後の形状が固定化され、上記刺激と同種または別種の刺激を加えることにより接着性を発現する膨張性接着剤が望ましい。この場合には、膨張後の形状が固定化されるので、部材間の隙間をより確実にシールすることができる。
【0034】
上記膨張性接着剤は、接着性を発現する成分としての接着性樹脂と、膨張剤とを含む。また、好ましくは、膨張後の形状を固定化するために、接着性樹脂及び膨張剤に加えて、硬化剤を含むことが望ましい。
【0035】
1)接着性樹脂
上記接着性樹脂としては、公知の接着剤構成用樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリルニトリル系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0036】
好ましくは、上記接着性樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ブタジエン系樹脂またはスチレン系樹脂が用いられる。これらの好ましい樹脂は、硬化物の弾力性に優れている。従って、部材間の隙間を確実にシールすることができる。中でも、適用部材に対する接着性に優れ、かつ硬化物の弾力性を高めることが容易であるため、アクリル系樹脂として、アクリル酸エステル系樹脂が好適に用いられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを単独重合してなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル樹脂、二種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル樹脂、アクリル酸アルキルエステルモノマーとメタクリル酸アルキルエステルモノマーとの共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、これと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。中でも、組成の調整により粘接着力の設計が容易であり、かつ硬化物の弾力性に優れているので、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、これと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体が好ましい。(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜12の一級または二級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られるものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーは、得られる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の凝集力を高める目的で添加されるものであって、i)例えば、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を上昇させるもの、ii)(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の主鎖間に架橋構造を形成するのに寄与するものなどが用いられる。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を上昇させるビニルモノマーi)としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシ基含有モノマー;n−メチロールアクリルアミドなどの水酸基含有モノマー;無水マレイン酸、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。ビニルモノマーとしては、アクリル酸エステル系樹脂の分子量の制御に影響を及ぼしにくく、得られる樹脂の粘着性に優れていることから、アクリル酸が好ましい。
【0041】
ガラス転移温度を上昇させるビニルモノマー成分の総含有量は、少ないと、得られる樹脂のガラス転移温度が低くなり過ぎて樹脂の凝集力が低下することがあり、多いと、得られる樹脂の粘着力やタックが低下することがあるので、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂中、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の主鎖間に架橋構造を形成するのに寄与するビニルモノマーii)としては、特に限定されないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、またはカルボキシル基含有モノマーが好ましい。
【0043】
水酸基含有アクリル酸エステルモノマーまたは水酸基含有メタクリル酸エステルモノマーの何れか一方或いは双方と、イソシアネート系架橋剤とを用いることにより、樹脂のゲル分率を好ましい範囲である10〜50重量%に調整し易い。従って、膨張性に優れた樹脂を得ることができる。
【0044】
水酸基含有アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチルまたはアクリル酸−2−ヒドロキシプロピルにカプロラクトンを付加させたものなどが挙げられる。
【0045】
水酸基含有メタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピルまたはメタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチルまたはメタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルにカプロラクトンを付加させたものなどが挙げられる。
【0046】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー成分の含有量は、アクリル酸エステル系樹脂中、0.01〜0.5重量%が好ましく、0.05〜0.3重量%がより好ましい。
【0047】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー成分の含有量が少ないと、樹脂のゲル分率が上がりにくくなる。従って、樹脂のゲル分率を適正なゲル分率に調整するのに多量の架橋剤が必要となることがある。また、樹脂の架橋が時間の経過に従って進行し、樹脂の膨張性が不安定となるおそれがある。
【0048】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー成分の含有量が多いと、樹脂のゲル分率が上がり易くなり、樹脂のゲル分率を適正なゲル分率に調整するのに少量の架橋剤で行う必要があることがある。また、樹脂中における架橋剤量のバラツキによるゲル分率の変動が大きくなるため、均一な架橋構造を得ることができないことがある。
【0049】
カルボキシル基含有モノマーと、後述するエポキシ系架橋剤あるいはアジリジン系架橋剤とを用いることで、樹脂のゲル分率を好ましい範囲である10〜50重量%に調整し易く、膨張性に優れた樹脂を得ることができる。
【0050】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0051】
カルボキシル基含有モノマー成分の含有量は、アクリル酸エステル系樹脂中、0.1〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0052】
カルボキシル基含有モノマー成分の含有量が少ないと、樹脂のゲル分率が上がりにくくなり、樹脂のゲル分率を適正なゲル分率に調整するのに多量の架橋剤が必要となることがある。また、樹脂の架橋が時間の経過に従って進行し、樹脂の膨張性が不安定となることがある。
【0053】
カルボキシル基含有モノマー成分の含有量が多いと、樹脂のゲル分率が上がり易くなり、樹脂のゲル分率を適正なゲル分率に調整するのに少量の架橋剤で行う必要があることがある。また、樹脂中における架橋剤量のバラツキによるゲル分率の変動が大きくなるため、均一な架橋構造を得ることができないことがある。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のGPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によりポリスチレン換算分子量として測定された重量平均分子量が、小さいと、形成される樹脂層が、被着体の変形に伴って生じる剥離応力によって被着体から剥離し易くなるおそれがある。逆に、上記重量平均分子量が大きいと、樹脂の粘着力が低下し、更に、形成される樹脂層が、被着体の変形に伴って生じる剥離応力によって被着体から剥離し易くなるおそれがある。よって、重量平均分子量は、20万〜150万が好ましく、40万〜100万がより好ましい。
【0055】
なお、上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定された重量平均分子量は、アクリル酸エステル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液に基づいて、アクリル酸エステル系樹脂のポリスチレン換算分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフによって測定することにより得ることができる。上記ゲルパーミエーションクロマトグラフとしては、例えば、Water社から商品名「2690 Separations Model」で市販されているものなどを使用できる。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を得るには、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーと共に、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。なお、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合または塊状重合などが挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂では、架橋剤を添加して樹脂の主鎖間に架橋構造を形成するのが好ましい。架橋剤の種類や量を適宜調整することによって、樹脂のゲル分率を所望の範囲に調整することが容易になる。
【0058】
架橋剤としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤または金属キレート型架橋剤などが挙げられる。
【0059】
架橋剤の配合量は、少ないと、樹脂の架橋が不充分となることがあり、多いと、樹脂のの接着力やタックが低下することがある。従って、アクリル酸エステル系樹脂100重量部に対して架橋剤の配合量は、0.01〜10.0重量部が好ましく、0.1〜5.0重量部がより好ましい。
【0060】
すなわち、上記樹脂のゲル分率が、高すぎても、低すぎても、形成される樹脂層が被着体の変形に伴って生じる剥離応力によって被着体から剥離し易くなる。また、膨張性を高めるためにも、ゲル分率は10〜50重量%が好ましく、20〜40重量%がより好ましい。
【0061】
ここで、上記樹脂のゲル分率の測定方法では、先ず樹脂シートを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。この試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。次に、乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。
【0062】
ゲル分率(重量%)=100×W2/W1
(W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0063】
本発明の膨張性接着剤は、上記接着性樹脂は、好ましくは刺激の付与により接着性を発現する。この刺激は、接着性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。また、上記接着性樹脂の接着性を発現させる刺激は、後述の膨張剤による膨張作用を発現されるために付与する刺激と同種であってもよく、異種であってもよい。また、前述したように、好ましくは、本発明の膨張性接着剤は、刺激の付与により膨張し、該刺激と同種または異種の刺激により膨張後の形状を固定化し、さらに接着性を発現されるが、この場合、膨張作用を発現させるための刺激と膨張後の形状を固定化させるための刺激と、上記接着性を発現させるための刺激は同種であってもよく、異種であってもよい。
【0064】
例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の場合には、接着性を発現させるための刺激として、紫外線などの光を用いることができる。光の照射により、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を架橋し、硬化させ、接着力を発現させることができる。また、上記接着性樹脂が、例えばエポキシ樹脂などの場合には、光の照射の他、熱を加えることにより硬化する。刺激としては、熱を用いてもよく、紫外線(UV)のような光を用いてもよい。
【0065】
2)膨張剤
本発明に係る膨張性接着剤は、刺激の付与により膨張作用を発現する膨張剤を含む。このような膨張剤としては、熱または光などの刺激を与えることにより分解し、気体を発生させる膨張剤が用いられる。熱や光により分解し、気体を発生させる膨張剤としては、アゾ化合物やアジド化合物が好適に用いられる。
【0066】
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0067】
なかでも、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾアミド化合物が好ましい。
【0068】
アゾアミド化合物は、熱分解温度が高いことから、接着剤の塗工、乾燥等の高温処理が可能である。またアクリル酸エステル系樹脂等の粘着性を有するポリマーへの溶解性にも優れている。
【0069】
アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド等や、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、光や熱等による刺激により分解し、窒素ガスを発生する。
【0070】
3)好ましい形態
本発明に係る膨張性接着剤は、前述したように刺激の付与により膨張し、該刺激と同種または異なる種類の刺激の付与により硬化し、接着性を発現する。この場合、膨張剤を分解し、膨張性接着剤を膨張させる刺激と、接着性樹脂を硬化し、接着性を発現させるための刺激は同種であることが望ましい。それによって、刺激を付与する設備を省略化することができ、かつ工程を簡略化することができる。また、前述したように、好ましくは、刺激の付与により膨張し、膨張後の形状を固定化し、接着性を発現する膨張性接着剤が望ましい。この場合、膨張作用を発現させるための刺激と、膨張後の形状を固定化させるための刺激と、接着性を発現させるための刺激はすべて異なっていてもよい。もっとも、この第1〜第3の刺激のうち少なくとも2つの刺激が同種であることが望ましく、より好ましくは、第1〜第3の刺激のすべてが同種であることが望ましい。その場合には、刺激を付与する設備を簡略化することができ、かつ工程を簡略化することができる。
【0071】
以下、膨張性接着剤が、刺激の付与により膨張し、該刺激と同種の刺激の付与により膨張後の形状を固定化し、かつ接着性を発現する本発明の好ましい形態を説明する。この好ましい形態では、光の照射により膨張剤が分解し、膨張性接着剤が膨張し、他方、同じく接着成分が硬化し、膨張後の形状を固定化し接着性を発現させる。
【0072】
このような光の照射により硬化し、膨張後の形状を固定化し接着性を発現する膨張性接着剤に用いられる接着性樹脂としては、この場合、膨張後の形状を固定化し、接着性を発現させるために、上記イオン反応性基含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、後述のイオン重合触媒などからなる硬化剤とを含むことが望ましい。イオン反応性基を有するモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られるイオン反応性基含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が挙げられる。この場合には、上述した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を得るのに用いたモノマーの1種として、イオン反応性基を有するモノマーを共重合すればよい。
【0073】
あるいは、他の方法として、イオン反応性基を有していない前述した接着性樹脂に、後述のイオン反応性基含有化合物及びイオン重合触媒を配合してもよい。
【0074】
上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に上記イオン反応性基含有モノマーを共重合させる場合、上記イオン反応性基含有モノマーとしては、好ましくは、イオン反応性基含有(メタ)アクリル系モノマーが用いられる。
【0075】
この場合、光の照射によりイオン重合触媒を活性化させる波長と異なる波長で膨張剤を分解させることが望ましい。例えば、イオン重合触媒が、400nmより短い波長の光により活性化される場合、光膨張剤としては、400nmより長い波長光、例えば近紫外光に感光する化合物が用いられる。しかしながら、光膨張剤の分解波長とイオン重合触媒の励起波長が重なっていても、分解反応とイオン重合反応の反応速度に差があるので、膨張性と光後硬化性及び接着性とを両立することができる。
【0076】
ここで、イオン反応性基を含有する(メタ)アクリル系モノマーは、光の照射及び/または加熱された際にイオン重合触媒が活性化されると、発生したカチオンなどのイオンによりイオン重合する反応基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。すなわち、イオン重合性を有するため、硬化し、膨張した接着剤硬化物を固定化する。
【0077】
なお、イオン反応性基を含有する(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル基を有する。従って、イオン反応性基を含有する(メタ)アクリル系モノマーは、従来公知の重合方法、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などによって、アクリル酸アルキルエステルモノマー、メタクリル酸アルキルエステルモノマーまたはこれらと共重合可能な他のビニルモノマーと共重合することができる。
【0078】
光の照射及び/または加熱された際に硬化するイオン反応性基を有する(メタ)アクリル系モノマーにおけるイオン反応性基としては、アニオン系官能基とカチオン官能基とが存在する。
【0079】
カチオン反応基としては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニロキシ基、スチリル基、アルコキシシリル基などを挙げることができる。
【0080】
アニオン系官能基としては、エポキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基などを挙げることができる。
【0081】
上記イオン反応性基としては、エポキシ基、オキセタニリル基、ビニロキシ基、スチリル基、アルコキシシリル基などが、反応性が高く好ましい。
【0082】
イオン反応性基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、イオン反応性基を有するアクリル系モノマーである限り特に限定されず、例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとして、グリシジル(メタ)アクリレート、CYCLOMER M−100(ダイセル化学工業社製)を挙げることができる。
【0083】
上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に、上記イオン反応性基含有化合物を配合する方法では、好ましくは、2官能のイオン反応性基を含有する化合物が用いられる。
【0084】
ここで、2官能のイオン反応性基を有する化合物としては、光の照射及び/または加熱により硬化する化合物がある。
【0085】
このような2官能のイオン反応性基を有する化合物としては、エポキシ基、オキセタニリル基、ビニロキシ基、スチリル基、アルコキシシリル基などのイオン反応性官能基を一分子中に2個以上有する化合物を挙げることができる。より具体的には、光の照射及び/または加熱により、硬化される各種エポキシ化合物を挙げることができる。このようなエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化SBSなどを挙げることができる。
【0086】
上記イオン反応性基を有する化合物の配合量は、アクリル酸エステル系樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。
【0087】
上記イオン反応性基を有する化合物の配合量が少なすぎると、膨張性接着剤の硬化度が上がりにくくなり、膨張層の形状の固定が困難になることがある。
【0088】
上記イオン反応性基を有する化合物の配合量が多すぎると、膨張性接着剤の硬化度が高くなりすぎることがある。そのため、膨張層が硬くなりすぎて、衝撃吸収性が低下するおそれがある。
【0089】
次に、硬化剤について説明する。
【0090】
4)硬化剤
本発明に係る膨張性接着剤では、上記接着性樹脂及び膨張剤に加えて、硬化剤を含有させることが好ましい。同様に、本発明に係る膨張性接着テープにおいても、膨張層は、硬化剤を含むことが望ましい。
【0091】
硬化剤を含有させることにより、接着性樹脂の硬化後の形状保持性を高めることができ、膨張後の膨張性接着剤や膨張層の形状をより一層確実に固定化することができる。このような硬化剤としては、イオン重合触媒が好適に用いられる。
【0092】
ここで、イオン重合触媒は、光照射や加熱などにより活性化されて、イオンを発生し、イオン反応性基を含有する(メタ)アクリル系モノマー由来のイオン反応性基や上記イオン反応性基含有化合物のイオン反応性基をイオン重合もしくは架橋し、硬化させる化合物である。
【0093】
光照射を利用する場合、イオン重合触媒は、光イオン重合触媒である。光イオン重合触媒としては、例えば、感光性オニウム塩やフェロセン系化合物などの光の照射によりカチオンを発生させる化合物を挙げることができる。このカチオンを発生させる化合物としては、種々の光カチオン重合開始剤を用いることができる。上記光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の感光性オニウム塩類や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などのメタロセン塩またはピリジニウム塩等がある。
【0094】
芳香族ヨードニウム塩と芳香族スルホニウム塩は、紫外領域以外の光ではカチオンを生成しないが、芳香族アミンや多環芳香族炭化水素等の公知の増感剤であって可視光領域に励起吸収帯を有する増感剤を併用することにより、可視領域の光でもカチオンを生成することが出来る。またメタロセン塩を用いる場合には、ターシャリーアルコールのオキサレートエステルを反応促進剤として用いてもよい。
【0095】
より、具体的には、上記感光性オニウム塩としては、トリアリールスルフォニウム塩、ジアリールスルフォニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などのSbF6−、PF6−、BF4−、B(PhF5)4−を対アニオンとする化合物を挙げることができる。上記鉄−アレン錯体としては、例えば、Fe−フェロセン錯体を挙げることができる。
【0096】
市販の光カチオン重合開始剤は、イオン性光酸発生タイプと非イオン性光酸発生タイプに大別されており、イオン性光酸発生タイプの光カチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」(以上、旭電化工業社製)、商品名「UVE−1014」(ゼネラルエレクトロニクス社製)、商品名「CD−1012」(サートマー社製)等が挙げられる。
【0097】
非イオン性光酸発生タイプの光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスホナート等が挙げられる。
【0098】
上記光イオン重合触媒は、1種のみが単独で用いられてもよく、2種類以上が用いられても良い。
【0099】
上記光イオン重合触媒の配合割合については、イオン反応性基を含有する(メタ)アクリル系モノマーあるいはイオン反応性官能基を一分子中に2個以上有する化合物100重量部に対し、0.1〜50重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。0.1重量部未満では、光を照射しても、イオン重合の進行が遅かったり、最終的に硬度が不足したりするおそれがある。50重量部を越えると、得られる接着剤硬化物の物性が低下するおそれがある。
【0100】
なお、上記イオン重合触媒として光イオン重合触媒を用いる場合、熱硬化剤を併用してもよい。その場合には、光及び熱の双方を付与することにより、最終的に膨張性接着剤を硬化させることができる。
【0101】
上記イオン重合触媒は、熱により活性化される熱硬化剤であってもよい。この場合には、加熱により、膨張性接着剤を硬化させることができる。
【0102】
このような熱硬化剤としては適宜のアミン及び/またはチオール基を有する硬化剤を挙げることができる。1,3−ビス[ヒドラジノカルボノエチル−5−イソプロピルヒダントイン]等のヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、N,N’−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N’−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)−アジポアミド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、変性脂肪族ポリアミン、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールービス(アンヒドロトリメリテート)等の酸無水物、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
【0103】
上記熱硬化剤の配合割合については、イオン反応性基を含有する(メタ)アクリル系モノマーあるいはイオン反応性官能基を一分子中に2個以上有する化合物100重量部に対し、1〜100重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部の範囲である。1重量部未満では、光を照射しても、イオン重合の進行は遅かったり、最終的に硬度が不足したりするおそれがある。100重量部を越えると、得られる膨張性接着剤の物性が低下するおそれがある。
【0104】
5)硬化物の物性
本発明の膨張性接着剤の使用に際しては、架橋度が低い段階で、被接着部材表面、被接着部材同士の間に膨張性接着剤を充てんする。その後、光や熱などの刺激を付与することにより、膨張性接着剤を膨張させ、また、好ましくは、同種または異種の刺激を付与することにより、硬化させ、接着力を発現させる。より好ましくは、同種または異種の刺激を付与することにより、膨張した接着剤硬化物の形状を固定化し、また接着力を発現させる。また、膨張性接着剤の膨張、硬化後のtanδを適切な値にすることにより、膨張性接着剤層に衝撃吸収性能機能を持たせることができる。膨張性接着剤の硬化物のtanδは、25℃において0.5以上であると好ましい衝撃吸収性能となる。25℃におけるtanδが、0.5未満であれば、樹脂の粘性項が小さくなり、変形しにくい樹脂となる。その場合、外力を受けた時に、樹脂が変形しにくくなり、適切な衝撃吸収性能が得られなくなることがある。
【0105】
ここで、tanδとは、損失弾性率/貯蔵弾性率の比をいい、粘弾性スペクトロメーターにより、測定することができる。
【0106】
tanδは、例えば、膨張性接着剤の接着性樹脂の種類、樹脂組成、分子量及び/または架橋度等を調整することにより、0.5以上にすることができる。
【0107】
また、本発明で上記膨張性接着剤には、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料などの添加剤を添加してもよい。
【0108】
(膨張性接着テープ)
膨張性接着テープの詳細を説明する。
【0109】
本発明に係る膨張性接着テープは、刺激の付与により膨張し、部材間の隙間を埋める膨張性樹脂組成物からなる膨張層を有し、かつ部材と部材とを接着するものである。好ましくは、刺激の付与により膨張し、該刺激と同種または異種の刺激により膨張後の形状を固定化し部材間の隙間を埋める膨張性樹脂組成物からなる膨張層を有する。ここで、上記膨張層を構成している膨張性樹脂組成物としては、前述した本発明の膨張性接着剤を好適に用いることができる。もっとも、膨張層は、本発明の膨張性接着剤からなるものに限定されるものではない。
【0110】
すなわち、上記本発明の膨張性接着剤以外の膨張性樹脂組成物を用いてもよい。このような本発明の膨張性接着剤以外の膨張性樹脂組成物としては、樹脂と、刺激の付与により気体を発生する膨張剤とを含む組成物が挙げられる。好ましくは、さらに、膨張性樹脂組成物は、上記刺激と同種または異種の刺激により膨張後の形状を固定化する硬化剤を含む。このような硬化剤としては、前述した様々なイオン重合触媒を好適に用いることができる。
【0111】
また、上記膨張性接着剤以外の膨張性樹脂組成物に用いられる樹脂としては、膨張性テープの形態を保持し得る適宜の樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、上述したウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂に限らず、オレフィン系樹脂などの様々な樹脂を用いることができる。
【0112】
また、複数種の樹脂をブレンドしてなる樹脂成分を用いてもよい。
【0113】
上記刺激の付与により気体を発生する膨張剤については、前述した膨張性接着剤の説明において例示した膨張剤を同様に用いることができる。
【0114】
本発明に係る膨張性接着テープは、上記膨張層の少なくとも片面に粘接着層がさらに積層されていてもよい。このような粘接着層としては、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤またはアクリル系粘接着剤などを挙げることができる。
【0115】
上記粘接着層が膨張層の少なくとも片面に設けられている場合、粘接着層により部材と部材とを接着する機能が得られる。従って、膨張層は、膨張性機能、好ましくは膨張性機能と膨張後の形状固定化機能を重視して構成することができる。よって、様々な材料から膨張層を膨張層に最適なように構成することができる。
【0116】
本発明に係る膨張性接着テープにおける粘着力は、2〜20N/25mmの範囲にあることが好ましい。接着強度が好ましい範囲にある場合、部材と部材とをより一層確実に接着することができ、かつ部材間の隙間を確実にシールすることができる。また、本発明に係る膨張性接着テープにおいて、膨張層が膨張性接着剤からなる場合には、接着性樹脂100重量部に対して刺激により気体を発生する膨張剤を、5〜50重量部含有する組成が前述した理由により好ましい。この場合、膨張性接着剤の膨張前の架橋度は、50%以下であることが好ましい。架橋度すなわち前述したゲル分率が50%以下の場合、膨張剤の分解による膨張が無理なく進行する。従って、膨張性をさらに高めることができる。
【0117】
本発明に係る膨張性接着テープでは、上記膨張層の少なくとも片面に基材層が積層されていてもよい。基材層を構成する材料については、ポリオレフィンやポリエステルなどの様々な形成に優れた樹脂材料を用いることができる。基材層が備えられている場合、使用前の保形性が高められるので、取り扱いを容易とすることができる。なお、基材層は、部材と部材の隙間に適用するに際し、除去されることが望ましい。もっとも、用途によっては、部材と部材との隙間を埋める際に、部材層が膨張層に積層されたまま該隙間に適用されてもよい。
【0118】
(接着方法)
次に、本発明に係る膨張性接着剤または膨張性接着テープを用いた部材の接着方法について説明する。
【0119】
まず、被接着部材の片面または両面に膨張性接着剤を塗布する。膨張性接着テープの場合も、被接着部材の片面または両面に膨張性接着テープを貼付する。
【0120】
次に、膨張性接着剤または膨張性接着テープに刺激を付与し、膨張、及び接着させる。好ましくは、刺激の付与により、膨張後の形状を固定化し、接着させる。
【0121】
刺激としては、前述したようにUVなどの光または熱が挙げられる。刺激の付与は、被接着部材と共に加熱を行う、被接着部材間の隙間にUVを照射及び/または加熱することにより行われ得る。被接着部材がUVを透過する場合は、被接着部材を通してUVを照射してもよい。
【0122】
次に、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態の膨張性接着剤及び膨張性接着テープの使用方法を具体的に説明する。
【0123】
図1(a)及び(b)は、携帯電話機のケースにディスプレイパネルを固定する用途に用いる例を説明するための各断面図である。携帯電話機のケース1に、ディスプレイパネル2が配置される。この状態において、ディスプレイパネル2の外側面2aとケース1の内壁1aとの間に隙間Aが存在する。この隙間Aに、隙間Aの厚みよりも薄い本発明の一実施形態としての膨張性接着テープ3を配置する。膨張性接着テープ3の厚みが、上記隙間の厚みすなわちディスプレイパネル2の外側面2aと、ケース1の内壁1aとの間の距離よりも小さいため、膨張性接着テープ3を隙間Aに容易に配置することができる。従って、膨張性接着テープ3の適用に際し、高精度の位置決めを必要としない。
【0124】
次に、膨張性接着テープ3に光または熱などの刺激を付与する、その結果、膨張性接着テープ3が膨張する。従って、図1(b)に示すように、膨張後の膨張性接着テープ3Aは、隙間Aを埋め、さらにディスプレイパネル2の外側面2aと、ケース1の内壁1aとを接着する。よって、ディスプレイパネル2の外側面2aとケース1の内壁1aとの間を確実にシールすることができる。
【0125】
上記膨張性接着テープ及び膨張性接着剤は、膨張後に内部に気泡を有する。従って、弾力性に優れており、ディスプレイパネル2を外部からの衝撃から確実に保護することができる。
【0126】
この場合、好ましくは、膨張後の膨張性接着テープ3Aが、弾力性を有する場合、衝撃等に対し、ディスプレイパネル2をより一層確実に保護することができる。よって、好ましくは、膨張層が膨張後に弾力性を有することが望ましい。よって、膨張層を、本発明の膨張性接着剤で構成した場合には、硬化物の弾力性に優れている接着成分として、前述した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が好適に用いられる。また、シリコーン系樹脂などの硬化物に弾力性に優れた他の接着成分を用いてもよい。
【0127】
なお、図1(a),(b)では、膨張性接着テープ3につき説明したが、膨張性接着テープ3に代えて、膨張性接着剤を用いてもよい。その場合には、膨張性接着剤が保形性を有しない場合には、ディスプレイパネル2の外側面2aに膨張性接着剤を塗布する方法、ケース1の内壁1aに膨張性接着剤を塗布する方法、あるいはこれらの双方に膨張性接着剤を塗布する方法などを用いることができる。
【0128】
図2は、本発明の他の実施形態としての膨張性接着テープの構造を示す断面図である。本実施形態の膨張性接着テープ11は、膨張層12を有する。膨張層12の両面に、粘着剤層13,14が積層されている。すなわち、粘着剤層13−膨張層12−粘着剤層14からなる3層構造の積層体である。このように、本発明の膨張性接着テープは、膨張層の両面に粘着剤層が積層された構造であってもよい。この場合、両側の粘着剤層13,14により、適用される部材に対しての粘接着力を発現することができる。また、粘着剤層13,14の外側には、離型フィルム15,16が積層されている。離型フィルム15,16は、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの適宜の合成樹脂フィルムにより構成することができる。離型フィルム15,16は、使用に先立ち除去される。
【0129】
次に、具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。
【0130】
(実施例1)
下記のとおり、粘着剤層−膨張層−粘着剤層の三層構造の膨張性接着テープを作成し、評価した。
【0131】
膨張層を形成するための材料としては、アクリル系ポリマー(共重合比率:アクリル酸2−エチルヘキシル96.7重量部/アクリル酸3重量部/アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.3重量部、重量平均分子量:60万)100重量部と、膨張剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部と、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)2重量部を、酢酸エチル280重量部とを混合溶解してなるアクリル系ポリマー溶液を用意した。
【0132】
離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み50μm)上に、上記アクリル系ポリマー溶液を塗布し、110℃で5分間乾燥させて、乾燥後の厚みが50μmの膨張層を形成した。
【0133】
粘着剤層を形成するために、アクリル系ポリマー(共重合比率:アクリル酸ブチル51.9重量部/アクリル酸2−エチルヘキシル30重量部/アクリル酸エチル15重量部/アクリル酸3重量部/アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1重量部、平均重量分子量:80万)100重量部と、粘着付与剤としての重合ロジンエステル樹脂(水酸基価:46、軟化点:152℃、荒川化学社製)15重量部、水添ロジンエステル樹脂(水酸基価:40、軟化点:125℃、荒川化学社製)10重量部、テルペンフェノール樹脂(軟化点:150℃、ヤスハラケミカル社製10重量部と、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)1重量部を、酢酸エチル315重量部に混合溶解してなるアクリル系ポリマー溶液を用意した。離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み50μm)上に、上記粘着剤層形成用アクリル系ポリマー溶液を塗布し、110℃で5分間乾燥させて、乾燥後の厚みが30μmの粘着剤層を形成した。
【0134】
上記のようにして形成した膨張層上に、粘着剤層を積層し、次に膨張層の背面に積層されている上記PETフィルムを剥離した後、膨張層の露出した面にさらに上記粘着剤層を積層した。このようにして、粘着剤層−膨張層−粘着剤層の三層構造を有する膨張性接着テープを作製した。
【0135】
この膨張性接着テープに、超高圧水銀灯を用い、照度が100mW/cmとなるようにして、照射時間を変更し、照射光量を、900、3000、または6000mJ/cmとなるように紫外線を照射した。各光量を照射した場合の膨張性接着テープの厚みを求めた。結果を図3に示す。
【0136】
図3から明らかなように、光量が増加するにつれて、テープの厚みが増大し、膨張性に優れていることがわかる。
【0137】
また、上記膨張性接着テープについて、以下の要領で1)粘着力評価、2)ゲル分率の測定、3)膨張層の25℃におけるtanδ、4)衝撃吸収性評価及び5)シール性評価を行った。
【0138】
1)粘着力評価
粘着力評価は、上記のようにして得られた膨張性接着テープを、40℃で1日間養生後に、被着体としてのSUS板に膨張性接着テープのSUS板とは反対側の面上で2kgのゴムローラーを一往復させることにより貼り合わせた。貼り合わせ後、23℃で20分後の180°ピール力を剥離速度は300mm/分の条件で測定した。この180°ピール力を、粘着力とした。
【0139】
2)ゲル分率の測定
ゲル分率は、上記のようにして得られた膨張層を、40℃で1日間養生後に、50mm×100mmの平面長方形状に切り出して試験片を作製する。この試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。次に、乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。
【0140】
ゲル分率(重量%)=100×W2/W1
(W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0141】
3)膨張層の25℃におけるtanδの測定
上記のようにして得られた膨張層を、40℃で1日間養生後に、粘弾性スペクトロメーター(アイティ計測制御社製、品番DVA−200)を用いて、周波数10Hzにて温度分散測定を行い、25℃でのTanδを測定した。
【0142】
4)衝撃吸収性評価
衝撃吸収性評価は、振り子型試験機を用いて衝撃力を測定した。振り子型試験機は、直径19mm、重量0.27Nの鋼球からなる衝撃子に長さ350mmの支持棒を設けてなるものを用いた。上記のように得られた膨張性接着テープを40℃で1日間養生後に、20mm×20mmの形状に切り出しし、アルミニウム板に貼り合わせた。貼り合わされた膨張性接着テープ上に鋼球を衝突させた際の衝撃力を力センサーで感知して、Multi−Purpose FTT Analayzer(小野測器社製)にて測定した。
【0143】
5)シール性評価
シール性評価は、SUS板からなる一対の部材間の隙間200μmに上記のようにして得られた膨張性接着テープの一方を貼り合わせ、超高圧水銀灯(照度100mW/cm
)を用いて、照射光量5000mJ/cm紫外線を照射した。照射してから1時間後に、上記一対の部材間の隙間のシール具合を目視観察した。
【0144】
(実施例2)
膨張層形成用アクリル系ポリマー溶液を、アクリル系ポリマー(共重合比率:アクリル酸2−エチルヘキシル86.7重量部/イオン反応性基を有するモノマーとしてのメタクリル酸グリシジル10重量部/アクリル酸3重量部/アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.3重量部、重量平均分子量:60万)100重量部と、膨張剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部を、イオン重合触媒としての光カチオン重合開始剤(ADEKA社製、品番アデカオプトマーSP−170)2重量部と、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)2重量部を、酢酸エチル280重量部に混合溶解して得られたものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膨張性接着テープを作製した。
【0145】
(実施例3)
膨張層形成用アクリル系ポリマー溶液において、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)の配合量を1重量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、膨張性接着テープを作製した。
【0146】
(実施例4)
膨張層形成用アクリル系ポリマー溶液を、アクリル系ポリマー(共重合比率:アクリル酸2−エチルヘキシル56.7重量部/アクリル酸ブチル30重量部/イオン反応性基を有するモノマーとしてのメタクリル酸グリシジル10重量部/アクリル酸3重量部/アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.3重量部、重量平均分子量:60万)100重量部と、膨張剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部を、イオン重合触媒としての光カチオン重合開始剤(ADEKA社製、品番アデカオプトマーSP−170)2重量部と、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)2重量部を、酢酸エチル280重量部に混合溶解して得られたものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膨張性接着テープを作製した。
【0147】
(比較例1)
膨張層形成用アクリル系ポリマー溶液において、膨張剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、膨張性接着テープを作製した。
【0148】
(実施例5)
膨張性接着剤からなる膨張層のみを有し、粘着剤層や接着剤層を有しない一層構造の膨張性接着テープを作製した。膨張層形成用アクリル系ポリマー溶液を、アクリル系ポリマー(共重合比率;アクリル酸ブチル66.9重量部/メタクリル酸メチル30重量部、アクリル酸3重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.3重量部、重量平均分子量:60万)100重量部と、膨張剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部を、2官能のイオン反応性基を有する化合物としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、品番jER828、エポキシ当量186)10重量部と、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)1重量部を、酢酸エチル3000重量部に混合溶解して用意した。
【0149】
離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み50μm)上に、上記アクリル系ポリマー溶液を塗布し、110℃で5分間乾燥させて、乾燥後の厚みが50μmの膨張層を形成し、PETフィルムに支持された一層構造の膨張性接着テープを得た。
【0150】
(比較例2)
膨張層形成用アクリル系ポリマー溶液において、膨張剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部を配合しなかったこと以外は、実施例5と同様にして、膨張性接着テープを作製した。
【0151】
(評価結果)
実施例2〜4及び比較例1の膨張性接着テープについて、実施例1と同様にして評価した。
【0152】
また、実施例5及び比較例2の膨張性接着テープについても、実施例1と同様にして、ゲル分率の測定、膨張層の25℃におけるtenδの測定、衝撃吸収性評価及びシール性評価を行った。もっとも、接着性評価は、実施例5及び比較例2では以下のようにして行った。
【0153】
実施例5及び比較例2の接着性評価:被着体として、一対のSUS板を用意した。一方のSUS板上に、40℃で1日間養生した膨張性接着テープの膨張層を貼り合わせ、PETフィルムを剥離した後、他方のSUS板を膨張層上に積層した。次に、上方のSUS板の上面において、2kgのゴムローラーを一往復させ、一対のSUS板を上記膨張性接着樹脂からなる膨張層により貼り合わせた。次に、23℃で20分後に、剥離速度300mm/分の条件でSUS板の剪断引き剥がし力を測定した。この剪断引き剥がし力により接着性を評価した。
【0154】
実施例1〜5及び比較例1,2の評価結果を下記の表1に示す。
【0155】
【表1】

【符号の説明】
【0156】
1…ケース
1a…内壁
2…ディスプレイパネル
2a…外側面
3…膨張性接着テープ
3A…膨張後の膨張性接着テープ
11…膨張性接着テープ
12…膨張層
13,14…粘着剤層
15,16…離型フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激の付与により膨張することにより部材間の隙間を埋め、かつ部材と部材とを接着する膨張性接着剤。
【請求項2】
膨張後の形状を固定し、かつ部材と部材とを接着する請求項1に記載の膨張性接着剤。
【請求項3】
接着強度が200〜600N/4cmの範囲にある請求項1または2に記載の膨張性接着剤。
【請求項4】
接着性樹脂100重量部と、刺激により気体を発生する膨張剤5〜50重量部とを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の膨張性接着剤。
【請求項5】
膨張前の架橋度が、50%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の膨張性接着剤。
【請求項6】
膨張及び硬化後の25℃におけるtanδが0.5以上、1.0以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の膨張性接着剤。
【請求項7】
刺激の付与により膨張することにより部材間の隙間を埋める膨張性樹脂組成物からなる膨張層を有し、かつ部材と部材とを接着する膨張性接着テープ。
【請求項8】
前記膨張層が、膨張後の形状を固定しかつ部材と部材とを接着する請求項7に記載の膨張性接着テープ。
【請求項9】
粘着力が、2〜20N/25mmである請求項7または8に記載の膨張性接着テープ。
【請求項10】
前記膨張性樹脂組成物が、接着性樹脂100重量部と、刺激により気体を発生する膨張剤5〜50重量部とを含有する膨張性接着剤からなる請求項7〜9のいずれか1項に記載の膨張性接着テープ。
【請求項11】
前記膨張性接着剤の膨張前の架橋度が50%以下である、請求項10に記載の膨張性接着テープ。
【請求項12】
前記膨張層からなり、粘接着層を有しない、請求項7〜11のいずれか1項に記載の膨張性接着テープ。
【請求項13】
前記膨張層の少なくとも片面に積層された粘接着層をさらに備える、請求項7〜9のいずれか1項に記載の膨張性接着テープ。
【請求項14】
前記膨張層の少なくとも片面に積層された基材層をさらに備える、請求項7〜13のいずれか1項に記載の膨張性接着テープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−225668(P2011−225668A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95081(P2010−95081)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】