説明

膵臓癌の予防・治療剤及びそのスクリーニング方法、並びに診断剤

【課題】新規かつ有効な膵臓癌の予防・治療薬および診断薬を提供すること。
【解決手段】PCA-1の発現又は機能を抑制する物質を含有してなる膵臓癌の予防及び/又は治療剤。PCA-1の発現又は機能を抑制し得る物質を選択することを含む、膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質のスクリーニング方法。被験動物由来の試料中のPCA-1の発現量を指標とする、膵臓癌の診断方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質を含有してなる膵臓癌の予防・治療剤、並びに、膵臓癌細胞においてPCA-1の発現又は機能を抑制し得る物質を選択することを特徴とする、膵臓癌の予防・治療活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。本発明はまた、被験者におけるPCA-1の発現量を指標とする膵臓癌の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・脾臓などに囲まれた膵臓で発生する膵臓癌によりわが国では年間約21,000人が死亡している。膵臓癌は早い段階では特徴的な症状も示さないことが多いことから、臨床症状から早期発見するのは容易ではない。簡便且つ経済的な確たる早期診断法がないためがん検診の対象にもなっていない。従って他臓器癌よりも早期発見のケースが少なく、且つ予後も悪いため5年生存率はわずかに15%程度である。一方、膵臓癌治療において第一選択は外科切除であるが、発見時に既に進行している例が多いため、手術適応となる症例は相対的に多くない。手術不能膵臓癌に対する化学療法の第一選択は代謝拮抗剤である塩酸ゲムシタビンであるが、Burrisらの試験(局所進行例および遠隔転移例含む)によると生存期間中央値は5.7ヶ月(N=63)と予後は決してよくはない。現在までに塩酸ゲムシタビンと他の化学療法剤の併用療法が試されているが、例えばLouvetの2004年の報告ではゲムシタビンとオキサリプラチンの併用で生存期間中央値9.0ヶ月(N=157)という状況である。また、放射線と化学療法の併用療法も試されているが、塩酸ゲムシタビン併用化学放射線療法の場合で生存期間中央値14.5ヶ月(N<20)との報告があり、ゲムシタビン単剤よりも有効性を示したが、依然として他の固形癌に比べて治療成績は高くない。このような状況下、膵臓癌の早期発見方法、有効性の高い治療方法が求められている。
【0003】
本発明者らは、前立腺癌で特異的に高発現している遺伝子を同定し、PCA-1(prostate cancer antigen-1)と命名した(非特許文献1)。この遺伝子はDNA, RNAアルキル化損傷修復酵素である大腸菌蛋白質AlkBと高い相同性を有することから、ヒトAlkBホモローグ3(human AlkB homolog 3: hABH3)とも呼ばれ、近年、AlkB同様DNA, RNA脱メチル化を触媒することが確認され、癌の予防との関連が示唆されている(非特許文献2、3)。また、本発明者らは、アルキル化剤であるmethyl methanesulfonate処理した前立腺癌細胞株の生存率が、PCA-1発現ベクターの導入により上昇することを見出した(非特許文献4)。
【0004】
本発明者らは、抗PCA-1抗体を作成し、種々の癌病理組織標本を用いて免疫組織化学的解析を行い、PCA-1は蛋白質レベルでも前立腺癌で高発現することを確認するとともに、非癌部や良性腫瘍である前立腺肥大ならびに他の癌(脳腫瘍,肺癌,胃癌,肝臓癌,甲状腺癌,大腸癌,腎癌,膀胱癌)においては、発現上昇が検出されないことを明らかにした(特許文献1、非特許文献5)。さらに、前立腺癌細胞のPCA-1をsiRNAによりノックダウンした結果、Ras-MAPキナーゼ経路の活性化抑制による細胞増殖抑制とアポトーシス抑制分子であるFLIPの発現抑制によるアポトーシス誘導が認められ、また、PCA-1 mRNAをノックダウンさせたヒトホルモン抵抗性前立腺癌細胞をヌードマウスに移植した結果、腫瘍形成が顕著に抑制されることを明らかにした(特許文献2)。さらにその作用機構として,チロシンレセプターキナーゼであるdiscoidin domain receptor-1 (DDR-1)の発現抑制による癌細胞の足場非依存性増殖の喪失が関与していることを明らかにした(非特許文献6)。
【0005】
しかしながら、膵臓癌とPCA-1の関連についてはこれまで一切知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2005/080564
【特許文献2】WO 2007/015587
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】第123回日本薬学会年会要旨集4、p.15,2003
【非特許文献2】Nature、421, 859-863, 2003
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99(26), 16660-16665, 2002
【非特許文献4】第26回日本分子生物学会年会 プログラム・講演要旨集、p.525, 2003年
【非特許文献5】Clin. Cancer Res.11, 5090-5097, 2005
【非特許文献6】Cancer Sci., 99, 39-45, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、膵臓癌の早期発見を可能にする診断マーカー及び有望な治療ターゲットとなり得る分子を同定し、これを用いて膵臓癌の診断及び治療方法、並びに治療薬の探索手段等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、抗PCA-1抗体による膵臓癌検体の免疫組織染色を行った結果、膵臓癌では前癌病変部から癌化過程においてPCA-1が高発現していることを見出した。そこで、PCA-1が膵臓癌の治療標的分子となるかどうかを調べるため、膵臓癌細胞株においてPCA-1をsiRNAによりノックダウンさせたところ、膵臓癌細胞の増殖が抑制されることを明らかにした。本発明者らは、これらの知見に基づき、PCA-1が前立腺癌だけではなく膵臓癌においても重要な役割を担う分子であり、膵臓癌の治療や診断等へ利用できることを実証して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]PCA-1の発現又は機能を抑制する物質を含有してなる膵臓癌の予防及び/又は治療剤。
[2]前記物質が、以下の(i)又は(ii)である、上記[1]記載の剤。
(i) PCA-1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列又はその一部を含む核酸
(ii) PCA-1ポリペプチドを特異的に認識する抗体、又はPCA-1ポリペプチドのドミナントネガティブ変異体、或いはそれらをコードするヌクレオチド配列を有する核酸
[3]PCA-1の発現又は機能を抑制し得る物質を選択することを含む、膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質のスクリーニング方法。
[4]以下の(a)〜(c)の工程を含む、上記[3]の方法。
(a)膵臓癌細胞に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞におけるPCA-1の発現量を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、発現量を低下させる物質を膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質の候補として選択する工程
[5]以下の(a)〜(c)の工程を含む、上記[3]の方法。
(a)膵臓癌細胞に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞におけるPCA-1の活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、活性を低下させる物質を膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質の候補として選択する工程
[6]以下の(a)〜(c)の工程を含む、膵臓癌の診断方法。
(a)被験動物由来の試料中のPCA-1の発現量を測定する工程
(b)該発現量に基づいて、該被験動物における膵臓癌の発症もしくは発症リスクの有無又は程度を判定する工程
【発明の効果】
【0011】
PCA-1の発現又は機能を抑制する物質は、膵臓癌細胞の増殖抑制作用を示すので、膵臓癌の予防・治療剤として有用である。また、膵臓癌細胞を用いてPCA-1の発現又は機能を抑制し得る物質を選択することにより、膵臓癌の予防・治療活性を有する物質をスクリーニングすることができる。さらに、PCA-1の発現上昇を指標とすることにより、膵臓癌の早期診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】免疫組織染色による、正常膵管、膵上皮内腫瘍(PanIN)および膵臓癌におけるPCA-1の発現細胞の割合(A)および各ステージの代表的な染色像(B)を示す図である。
【図2】定量的RT-PCR解析により測定した、siRNAによるPCA-1遺伝子のノックダウン率を示す図である。NCはネガティブコントロールを表す。
【図3】膵臓癌細胞株(A: AsPC-1細胞株, B: PANC-1細胞株)の生存に及ぼすPCA-1遺伝子ノックダウンの効果を示す図である。Viability(生存率)はNCに対する相対値を算出した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.膵臓癌の予防・治療剤
後述の実施例等に示されるように、PCA-1は、膵臓癌において前癌病変から癌化過程で高発現しており、また、PCA-1の発現をsiRNAによりノックダウンすることにより、膵臓癌細胞の増殖が抑制される。このことから、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質は、膵臓癌を予防・治療し得ることが理解される。従って、第1の本発明は、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質を含有してなる膵臓癌の予防・治療剤を提供する。本発明者らは以前、種々の癌(前立腺癌、脳腫瘍、肺癌、胃癌、肝臓癌、甲状腺癌、大腸癌、腎臓癌、膀胱癌)においてPCA-1の発現を調べたが、この遺伝子(蛋白質)は前立腺癌でのみ高発現しており、他の癌では全くもしくはほとんど発現していないことを見出しており、膵臓癌において、前立腺癌と同様にPCA-1が高発現していることは全く予期せぬ新知見であった。
【0014】
PCA-1の発現とは、PCA-1の翻訳産物(即ち、ポリペプチド)が産生され且つ機能的な状態でその作用部位に局在することをいう。
PCA-1の機能とは、PCA-1の翻訳産物が有する生物学的機能(活性)をいう。このような生物学的機能(活性)としては、例えば、DNA, RNAアルキル化損傷修復機能(例えば、メチル化DNA脱メチル化活性)が挙げられるほか、例えば、FLIPのユビキチン化を阻害する機能(結果としてFLIPポリペプチド発現量を増大させる機能をも含む)、FLIP-Raf-1相互作用を増大させる機能、MAPキナーゼシグナリングを増強する機能、サイクリンD1発現を増大させる機能等を挙げることができる(WO 2007/015587)。
【0015】
本発明の膵臓癌の予防・治療剤(以下、「本発明の剤」と略記する場合がある)において、PCA-1の発現を抑制する物質は、PCA-1の転写、転写後調節、翻訳、翻訳後修飾、局在化及び蛋白質フォールディング等の、いかなる段階で作用するものであってもよい。
PCA-1の機能を抑制する物質は、PCA-1ポリペプチドに結合して基質DNA/RNAとの反応を拮抗的もしくは非拮抗的に阻害したり、PCA-1と基質DNA/RNAを競合したり、該ポリペプチドを修飾したり、或いは該ポリペプチドの安定性を低下させたりすること等により、上述のPCA-1の機能(例えば、FLIPのユビキチン化を阻害する機能、FLIP-Raf-1相互作用を増大させる機能、MAPキナーゼシグナリングを増強する機能、サイクリンD1発現を増大させる機能等)を抑制する作用を有する化合物をいう。
【0016】
PCA-1の発現又は機能を抑制する物質としては、例えば以下の(i)、(ii)等を挙げることが出来る。
(i) PCA-1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列又はその一部を有する核酸
(ii) PCA-1ポリペプチドを特異的に認識する抗体、又はPCA-1ポリペプチドのドミナントネガティブ変異体、或いはこれらをコードするヌクレオチド配列を有する核酸
【0017】
本発明において、PCA-1ポリペプチドは、任意の哺乳動物のPCA-1ポリペプチドであり得る。哺乳動物としては、ヒト及びヒトを除く哺乳動物を挙げることが出来る。ヒトを除く哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類を挙げることが出来る。哺乳動物は好ましくはヒトである。
哺乳動物のPCA-1ポリペプチドとしては野生型のポリペプチドが好ましく、例えばヒト野生型PCA-1ポリペプチド(例えば、配列番号:2)で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)等が挙げられる。
【0018】
また、野生型PCA-1ポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドも「PCA-1ポリペプチド」に包含される。「実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質」としては、野生型PCA-1ポリペプチドのアミノ酸配列と約90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、野生型PCA-1ポリペプチドと実質的に同質の機能を有するポリペプチドなどが挙げられる。ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はポリペプチドの表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247: 1306-1310 (1990)を参照)。
【0019】
アミノ酸配列の相同性を決定するためのアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられるが、それらに限定されない。アミノ酸配列の相同性は、上記プログラムにより、そのデフォルトパラメータを用いて適宜算出され得る。例えばアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST-2(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(マトリックス=BLOSUM62;ギャップオープン=11;ギャップエクステンション=1;x_ドロップオフ=50;期待値=10;フィルタリング=ON)にて計算することができる。
【0020】
「実質的に同質の機能」とは、例えば、PCA-1ポリペプチドの機能が性質的に野生型PCA-1ポリペプチドと同質であることを示す。したがって、PCA-1ポリペプチドの機能が野生型PCA-1ポリペプチドと同等(例えば約0.1〜10倍、好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、活性の程度や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。ここにいうPCA-1ポリペプチドの機能としては、上述の機能(DNA, RNAアルキル化損傷修復機能、FLIPのユビキチン化を阻害する機能、FLIP-Raf-1相互作用を増大させる機能、MAPキナーゼシグナリングを増強する機能、サイクリンD発現を増大させる機能)等を挙げることができる。DNA, RNAアルキル化損傷修復機能は、例えば、後述の基質DNAを用いたメチル化DNA脱メチル化活性測定法などにより評価することができる。また、他の方法については、例えばWO 2007/015587の「(2.PCA-1の発現又は機能を抑制し得る化合物を選択することを含むスクリーニング方法)」の項に記載された各種方法に基づいて、適宜改変した方法により評価することができる。
【0021】
PCA-1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列としては、PCA-1ポリペプチドをコードするcDNA、mRNA、初期転写産物(未成熟mRNA)、染色体DNAのヌクレオチド配列が含まれ、より具体的には、例えばヒト野生型PCA-1ポリペプチドをコードするcDNAのヌクレオチド配列(例えば、配列番号:1)、ヒト野生型PCA-1ポリペプチドをコードする染色体DNAのヌクレオチド配列(例えばGenBankアクセッション番号:NT_009237)等を挙げることが出来る。
【0022】
目的とする核酸の標的領域と相補的なヌクレオチド配列を有する核酸、即ち、目的とする核酸と生理的な条件(例えば細胞内等)でハイブリダイズすることができる核酸は、該目的とする核酸に対して「アンチセンス」であるということができる。ここで「相補的である」とは、ヌクレオチド配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上、最も好ましくは100%の相補性を有することをいう。本明細書におけるヌクレオチド配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(NationalCenter for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。ヌクレオチド配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
【0023】
具体的には、PCA-1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸として、以下の(a)〜(c)のいずれかのものが好ましく例示される。
(a) PCA-1のmRNAに対するアンチセンス核酸
(b) PCA-1のmRNAに対するリボザイム核酸
(c) PCA-1のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
【0024】
(a) PCA-1のmRNAに対するアンチセンス核酸
本発明における「PCA-1のmRNAに対するアンチセンス核酸」とは、該mRNAの塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、タンパク質合成を抑制する機能を有するものである。
アンチセンス核酸は、2-デオキシ-D-リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D-リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN-グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0025】
上記の通り、アンチセンス核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase Hに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こすことができる。したがって、RNase Hによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、PCA-1の初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。イントロン配列は、ゲノム配列と、PCA-1のcDNA塩基配列とをBLAST、FASTA等のホモロジー検索プログラムを用いて比較することにより、決定することができる。
【0026】
本発明のアンチセンス核酸の標的領域は、該アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてPCA-1への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、PCA-1をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAもしくは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題等を考慮すれば、約10〜約40塩基、特に約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、それに限定されない。具体的には、PCA-1の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンス核酸の好ましい標的領域として選択しうるが、それらに限定されない。
【0027】
さらに、本発明のアンチセンス核酸は、PCA-1のmRNAや初期転写産物とハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン)であってもよい。
【0028】
アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH3(2’-O-Me)、CH2CH2OCH3(2’-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
【0029】
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2’-endo(S型)とC3’-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的RNAに対して強い結合能を付与するために、2’酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA(LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
【0030】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、PCA-1のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、上記した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、いずれも自体公知の手法により、化学的に合成することができる。
【0031】
(b) PCA-1のmRNAに対するリボザイム核酸
PCA-1のmRNAの塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸の他の好ましい例としては、該mRNAをコード領域の内部で特異的に切断し得るリボザイム核酸が挙げられる。「リボザイム」とは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイム核酸として最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイム核酸は、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。PCA-1のmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
【0032】
(c) PCA-1のmRNAに対するsiRNA
本明細書においては、PCA-1のmRNAに相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆるsiRNAもまた、PCA-1のmRNAの塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として汎用されている。
【0033】
siRNAは、標的遺伝子のcDNA配列情報に基づいて、例えば、Elbashirら(Genes Dev., 15, 188-200 (2001))の提唱する規則に従って設計することができる。siRNAの標的配列としては、例えばAA+(N)19、AA+(N)21もしくはNA+(N)21(Nは任意の塩基)等が挙げられるが、それらに限定されない。標的配列の位置も特に制限されるわけではない。選択された標的配列の候補群について、標的以外のmRNAにおいて16-17塩基の連続した配列に相同性がないかどうかを、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)等のホモロジー検索ソフトを用いて調べ、選択した標的配列の特異性を確認する。例えば、AA+(N)19、AA+(N)21もしくはNA+(N)21(Nは任意の塩基)を標的配列とする場合、特異性の確認された標的配列について、AA(もしくはNA)以降の19-21塩基にTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するセンス鎖と、該19-21塩基に相補的な配列及びTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するアンチセンス鎖とからなる2本鎖RNAをsiRNAとして設計してもよい。また、siRNAの前駆体であるショートヘアピンRNA(shRNA)は、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5-25塩基程度)を適宜選択し、上記センス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより設計することができる。
【0034】
siRNA及び/又はshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、Ambionが提供するsiRNA Target Finder(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/siRNA_finder.html)及びpSilencerTM Expression Vector用インサートデザインツール(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/psilencer_converter.html)、RNAi Codexが提供するGeneSeer(http://codex.cshl.edu/scripts/newsearchhairpin.cgi)等があるが、これらに限定されない。
【0035】
siRNAを構成するリボヌクレオシド分子もまた、安定性、比活性などを向上させるために、上記のアンチセンス核酸の場合と同様の修飾を受けていてもよい。
【0036】
siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、siRNAの前駆体となるシングルヘアピンRNA(shRNA)を合成し、これをダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。
【0037】
本明細書においては、生体内でPCA-1のmRNAに対するsiRNAを生成し得るようにデザインされた核酸もまた、PCA-1のmRNAの塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。そのような核酸としては、上記したshRNAやsiRNAを発現するように構築された発現ベクターなどが挙げられる。shRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖を適当なループ構造を形成しうる長さ(例えば5〜25塩基程度)のスペーサー配列を間に挿入して連結した塩基配列を含むオリゴRNAをデザインし、これをDNA/RNA自動合成機で合成することにより調製することができる。shRNAを発現するベクターには、タンデムタイプとステムループ(ヘアピン)タイプとがある。前者はsiRNAのセンス鎖の発現カセットとアンチセンス鎖の発現カセットをタンデムに連結したもので、細胞内で各鎖が発現してアニーリングすることにより2本鎖のsiRNA(dsRNA)を形成するというものである。一方、後者はshRNAの発現カセットをベクターに挿入したもので、細胞内でshRNAが発現しdicerによるプロセシングを受けてdsRNAを形成するというものである。プロモーターとしては、polII系プロモーター(例えば、CMV前初期プロモーター)を使用することもできるが、短いRNAの転写を正確に行わせるために、polIII系プロモーターを使用するのが一般的である。polIII系プロモーターとしては、マウスおよびヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーターなどが挙げられる。また、転写終結シグナルとして4個以上Tが連続した配列が用いられる。
このようにして構築したsiRNAもしくはshRNA発現カセットを、次いでプラスミドベクターやウイルスベクターに挿入する。このようなベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクターや、動物細胞発現プラスミドなどが用いられる。
【0038】
PCA-1のmRNAの塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸は、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療に適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0039】
これらの核酸のPCA-1発現抑制活性は、PCA-1を導入した形質転換体、生体内や生体外のPCA-1発現系、または生体内や生体外のPCA-1翻訳系を用いて調べることができる。
【0040】
本発明におけるPCA-1の発現を抑制する物質は、上記のようなPCA-1のmRNAの塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に限定されず、PCA-1の産生を直接的または間接的に阻害する限り、低分子化合物などの他の物質であってもよい。そのような物質は、例えば、後述する本発明のスクリーニング方法により取得することができる。
【0041】
PCA-1の機能を抑制する物質として、具体的には、以下の(a)〜(c)のいずれかのものが好ましく例示される。
(a) PCA-1ポリペプチドを特異的に認識する抗体
(b) PCA-1のドミナントネガティブ変異体
(c) 上記(a)または(b)をコードする核酸
【0042】
PCA-1ポリペプチドを特異的に認識する抗体は、PCA-1ポリペプチドに特異的に結合することにより、PCA-1の機能を抑制し得る。該抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の免疫学的手法により作製できる。また、該抗体は、抗体の結合性フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2)、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
【0043】
例えば、ポリクローナル抗体は、PCA-1ポリペプチドあるいはそのフラグメント(必要に応じて、ウシ血清アルブミン、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)等のキャリア蛋白質に架橋した複合体とすることもできる)を抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
【0044】
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法(例えば、渡邊武、細胞融合法の原理とモノクローナル抗体の作成、谷内昭、高橋利忠編、「モノクローナル抗体とがん―基礎と臨床―」、第2-14頁、サイエンスフォーラム出版、1985年)により作成することができる。例えば、マウスにPCA-1ポリペプチドあるいはそのフラグメントを市販のアジュバントと共に2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS-1, P3X63Ag8など)を細胞融合してPCA-1ポリペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG法[J. Immunol. Methods,81(2): 223-228 (1985)]でも電圧パルス法[Hybridoma, 7(6): 627-633 (1988)]であってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清又は動物の腹水から取得できる。
【0045】
ヒトにおける治療効果と安全性を考慮すると、上記抗体は、キメラ抗体、ヒト化又はヒト型抗体であってもよい。キメラ抗体は、例えば「実験医学(臨時増刊号), Vol.6, No.10, 1988」、特公平3-73280号公報等を、ヒト化抗体は、例えば特表平4-506458号公報、特開昭62-296890号公報等を、ヒト抗体は、例えば「Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997」、「Nature Genetics, Vol.7, p.13-21, 1994」、特表平4-504365号公報、国際出願公開WO94/25585号公報、「日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年」、「Nature, Vol.368, p.856-859, 1994」、特表平6-500233号公報等を参考にそれぞれ作製することができる。
【0046】
PCA-1ポリペプチドを特異的に認識する抗体は、より効果的にPCA-1の機能を抑制するために、PCA-1ポリペプチドの機能性部位(DNA, RNAアルキル化損傷修復活性部位等)を特異的に認識し、当該部位が担う機能の低下をもたらすような抗体が選択され得る。DNA, RNAアルキル化損傷修復活性ドメインとして、PCA-1のC末側領域を挙げることができる。
【0047】
PCA-1ポリペプチドのドミナントネガティブ変異体とは、PCA-1ポリペプチドに対する変異の導入によりその機能(活性)が低減したものをいう。該ドミナントネガティブ変異体は、PCA-1ポリペプチドと競合することで間接的にその機能(活性)を阻害することができる。該ドミナントネガティブ変異体は、PCA-1ポリペプチドをコードする核酸に変異を導入することによって作製することができる。変異としては、例えば、機能性部位(DNA, RNAアルキル化損傷修復活性部位等)における、当該部位が担う機能の低下をもたらすようなアミノ酸の変異(例えば、1以上のアミノ酸の欠失、置換、付加)が挙げられる。ドミナントネガティブ変異体は、PCRや公知の変異導入試薬を用いる自体公知の方法により作製できる。
【0048】
上述のPCA-1ポリペプチドを特異的に認識する抗体や、PCA-1ポリペプチドのドミナントネガティブ変異体をコードするヌクレオチド配列を有する核酸も、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質として好ましい。該核酸は、適切な発現ベクター(例えば、適用対象である哺乳動物の細胞(膵臓癌細胞等)内で機能可能な発現ベクター)中の適切なプロモーター(例えば適用対象である哺乳動物の細胞(膵臓癌細胞等)でプロモーター活性を発揮し得るプロモーター(例、インスリンプロモーター等))の下流に機能的に連結された態様で提供され得る。
【0049】
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15);昆虫細胞発現プラスミド(例:pFast-Bac);動物細胞発現プラスミド(例:pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクター(例:BmNPV、AcNPV);レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。
【0050】
プロモーターとしては、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。また、宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0051】
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと略称する場合がある、メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子(以下、amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によって目的遺伝子を選択することもできる。
【0052】
本発明の剤は、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質に加え、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体を含むことができる。
医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0053】
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水のような希釈液に有効量の有効成分を溶解させた液剤、有効量の有効成分を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量の有効成分を懸濁させた懸濁液剤、有効量の有効成分を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容され得る担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
【0054】
PCA-1の発現又は機能を抑制する物質が核酸である場合、該核酸の細胞内への導入を促進するために、本発明の剤は更に核酸導入用試薬を含むことができる。該核酸がウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターに組み込まれている場合には、遺伝子導入試薬としてはレトロネクチン、ファイブロネクチン、ポリブレン等を用いることができる。また、該核酸がプラスミドベクターに組み込まれている場合は、リポフェクチン、リプフェクタミン(lipfectamine)、DOGS(トランスフェクタム;ジオクトアデシルアミドグリシルスペルミン)、DOPE(1,2-ジオールエオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOTAP(1,2-ジオールエオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DDAB(ジメチルジオクトアデシルアンモニウム臭化物)、DHDEAB(N,N-ジ-n-ヘキサアデシル-N,N-ジヒドロキシエチルアンモニウム臭化物)、HDEAB(N-n-ヘキサアデシル-N,N-ジヒドロキシエチルアンモニウム臭化物)、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質を用いることが出来る。
【0055】
また、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質がポリペプチド(抗体、ドミナントネガティブ変異体等)である場合、該ポリペプチドの細胞内への導入効率を高めるために、本発明の剤は更にポリペプチド導入用試薬を含むことができる。該試薬としては、プロフェクト(ナカライテスク社製)、プロベクチン(IMGENEX社製)等を用いることが出来る。あるいは、ショウジョウバエ由来のAntP、HIV由来のTAT、HSV由来のVP22等の蛋白質の細胞透過ドメイン又はそれらの誘導体(例、ポリアルギニン11R、9R等)を付加した融合蛋白質とすることもできる。
【0056】
本発明の剤は、膵臓癌を発症しているかそれが疑われる、あるいは前癌病変を有していたり、膵臓良性腫瘍を有しており、癌化が予測される、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。膵臓癌としては、PCA-1を高発現している限りその組織型に特に制限はなく、浸潤性膵管癌、膵内分泌腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、腺房細胞癌、未分化癌、転移性膵癌等のいずれに対しても適用できる。また、前癌病変としては、膵上皮内腫瘍(pancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN)ステージ1〜3)等が挙げられる。
【0057】
本発明の剤の適用量は、有効成分の活性や種類、病気の重篤度、適用対象となる動物種、適用対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に云えないが、通常、成人1回あたり有効成分量として約0.0001〜約5000mg/kgである。この量を、低分子化合物であれば1日1〜5回程度、核酸や蛋白質(抗体)であれば1日〜6ヶ月に1回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0058】
本発明の剤は、他の薬剤、例えばアルキル化剤(例、サイクロフォスファミド、イフォスファミド等)、代謝拮抗剤(例、ゲムシタビン、メソトレキセート、5−フルオロウラシル等)、抗癌性抗生物質(例、マイトマイシン、アドリアマイシン等)、植物由来抗癌剤(例、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール等)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポキシド、イリノテカンなどと併用してもよい。本発明の剤とこれらの薬剤とは、同時または異なった時間に、患者に投与すればよい。
【0059】
また、本発明の剤は、他の抗腫瘍療法、例えば放射線療法、癌免疫療法などと組み合わせて用いてもよい。
【0060】
必要に応じて、抗PCA-1抗体に上記併用薬を結合させて投与することができる。該抗体は、PCA-1が存在する膵臓癌部位またはその近傍に薬剤を運搬するとともに、PCA-1の機能を阻害し、一方、薬剤は、膵臓癌の症状を治療、軽減または改善する。
抗体と薬剤との結合は、好ましくはリンカーを介して行われる。リンカーは、例えば置換または未置換の脂肪族性アルキレン鎖を含み、その両末端に、抗体または薬剤の官能基と結合可能な基、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド基、エステル基、チオール基、イミドカルボネート基、アルデヒド基などを含むものである(抗体工学入門、地人書館、1994年)。
【0061】
2.膵臓癌の予防・治療活性を有する物質のスクリーニング方法
上述のように、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質は、膵臓癌細胞の増殖を抑制することにより、膵臓癌を予防・治療し得る。従って、第2の本発明は、PCA-1の発現又は機能を抑制する物質を選択することによる、膵臓癌の予防・治療活性を有する物質のスクリーニング方法を提供する。
【0062】
本発明のスクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
【0063】
例えば、PCA-1の発現を抑制する物質を選択する場合、被検物質とPCA-1の発現を測定可能な細胞とを接触させ、被検物質を接触させた細胞におけるPCA-1の発現量を測定し、該発現量を被検物質を接触させない対照細胞におけるPCA-1の発現量と比較する。
【0064】
PCA-1の発現を測定可能な細胞とは、PCA-1遺伝子の産物、例えば、転写産物、翻訳産物の発現レベルを直接的又は間接的に評価可能な細胞をいう。PCA-1遺伝子の産物の発現レベルを直接的に評価可能な細胞は、PCA-1を天然で発現可能な細胞であり得、一方、PCA-1遺伝子の産物の発現レベルを間接的に評価可能な細胞は、PCA-1遺伝子転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞であり得る。
【0065】
PCA-1を天然で発現可能な細胞は、PCA-1を潜在的に発現するものである限り特に限定されない。かかる細胞は、当業者であれば容易に同定でき、初代培養細胞、当該初代培養細胞から誘導された細胞株、市販の細胞株、セルバンクより入手可能な細胞株などを使用できる。好ましくは、PCA-1を天然で発現可能な細胞としては、前記哺乳動物の膵臓癌細胞を挙げることができる。膵臓癌細胞としては、膵臓癌を有する哺乳動物から切除した癌病変から調製される初代培養細胞であっても、株化された膵臓癌細胞(例、AsPC-1、PANC-1、PANAC、PK1、MIAPaCa-2等)であってもよい。
【0066】
PCA-1遺伝子転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞は、PCA-1遺伝子転写調節領域、及び当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含む細胞である。PCA-1遺伝子転写調節領域、レポーター遺伝子は、発現ベクター中に挿入され得る。PCA-1遺伝子転写調節領域は、PCA-1遺伝子の発現を制御し得る領域である限り特に限定されないが、例えば、転写開始点から上流約2kbpまでの領域、あるいは該領域の塩基配列において1以上の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、且つPCA-1遺伝子の転写を制御する能力を有する領域などが挙げられる。PCA-1遺伝子転写調節領域は、例えばヒト培養細胞からゲノムDNAを単離し、これを鋳型として、配列番号:1に示されるヒトPCA-1 cDNA配列の一部をプローブもしくは一方のプライマーとして用い、ハイブリダイゼーション法やPCR法により容易にクローニングすることができる。
レポーター遺伝子は、検出可能な蛋白質又は検出可能な物質を生成する酵素をコードする遺伝子であればよく、例えばGFP(緑色蛍光蛋白質)遺伝子、GUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子、LUC(ルシフェラーゼ)遺伝子、CAT(クロラムフェニコルアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子等が挙げられる。
【0067】
PCA-1遺伝子転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子が導入される細胞は、PCA-1遺伝子転写調節機能を評価できる限り、即ち、該レポーター遺伝子の発現量が定量的に解析可能である限り特に限定されない。しかしながら、PCA-1遺伝子に対する生理的な転写調節因子を発現し、PCA-1遺伝子の発現調節の評価により適切であると考えられることから、該導入される細胞としては、上述のPCA-1遺伝子を天然で発現可能な細胞を用いることが好ましい。特に好ましくは、PCA-1遺伝子転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子が導入される細胞は、PCA-1を高発現する膵臓癌細胞である。
【0068】
PCA-1の発現を測定可能な細胞に対する被検物質の接触は、適切な培養培地中で行われ得る。当該培養培地は、用いられる細胞の種類などに応じて適宜選択されるが、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地などである。培養条件もまた、用いられる細胞の種類などに応じて適宜決定されるが、例えば、培地のpHは約6〜約8であり、培養温度は通常約30〜約40℃であり、培養時間は約1〜約72時間である。
次に、被検物質を接触させた細胞におけるPCA-1の発現量が測定される。発現量の測定は、用いた細胞の種類などを考慮し、自体公知の方法により行われ得る。例えば、PCA-1の発現を測定可能な細胞として、PCA-1を天然で発現可能な細胞を用いた場合、発現量は、PCA-1遺伝子の産物、例えば、転写産物(mRNA)又は翻訳産物(ポリペプチド)を対象として自体公知の方法により測定できる。例えば、転写産物の発現量は、細胞からtotal RNAを調製し、RT-PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の発現量は、細胞から抽出液を調製し、免疫学的手法により測定され得る。免疫学的手法としては、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、蛍光抗体法、ウェスタンブロッティング法などが使用できる。一方、PCA-1の発現を測定可能な細胞として、PCA-1遺伝子転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞を用いた場合、発現量は、レポーターのシグナル強度に基づき測定され得る。
【0069】
次いで、被検化合物を接触させた細胞におけるPCA-1の発現量が、被検物質を接触させない対照細胞におけるPCA-1の発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被検物質を接触させない対照細胞におけるPCA-1の発現量は、被検物質を接触させた細胞におけるPCA-1の発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。
比較の結果、被検物質を接触させない対照細胞におけるよりもPCA-1の発現量を低下させた被検物質を、膵臓癌の予防・治療活性を有する物質として選択することが出来る。尚、細胞として膵臓癌細胞を使用する場合、PCA-1の発現量とともに細胞増殖を被検物質の存在下および非存在下で測定・比較して、PCA-1の発現量を低下させ、且つ膵臓癌細胞の増殖を抑制した被検物質を選択することにより、膵臓癌の予防・治療活性を有する物質をより効率よく取得することができる。細胞増殖抑制活性は、後記実施例やWO 2007/015587に記載される方法などに準じて生細胞数を測定することにより検定することができる。
【0070】
PCA-1の機能を抑制する物質を選択する場合、被検物質の存在下でPCA-1の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被検化合物の不在下におけるPCA-1の機能(活性)と比較する。
例えば、PCA-1の機能として、DNA, RNAアルキル化損傷修復機能を測定する場合、例えば、PCA-1および基質アルキル化DNAもしくはRNA(例、1-メチルアデニンもしくは3-メチルシトシン含有DNAもしくはRNA)と被検化合物とを接触させ、被検化合物を接触させた場合における脱アルキル化活性を測定し、これを被検化合物を接触させない場合における脱アルキル化活性と比較する。この活性を測定するには、例えば N-[3H]methyl-N-nitrosourea等によりDNAもしくはRNAを、放射線ラベルしたメチル基で修飾した後、該基質にPCA-1を反応させ、DNAもしくはRNAをエタノール等で沈殿させた後、液体シンチレションカウンターで放射線活性を測定するか、逆相カラムを用いて高速液体クロマトグラフィーにより分析することにより活性を定量することができる。さらに、メチルスルホン酸メチル(MMS)等のアルキル化剤で処理したDNAもしくはRNAを基質とし、これにPCA-1を反応させた後、反応したDNAおよびRNAを酸性下、90℃から180℃で熱処理し、1-メチルアデニンおよび3‐メチルシトシンを遊離させ、逆相カラムまたはイオン交換カラム等を用いて高速液体クロマトグラフィーにより分析することもできる。あるいは、酵素反応で消費される酸素を酸素電極により測定する方法や、生成するホルムアルデヒドをナッシュ試薬と反応させ、蛍光を測定する方法、RI標識した2-オキソグルタル酸とともにPCA-1を反応させ、生成するRI標識された二酸化炭素を液体シンチレションカウンターで測定する方法なども挙げられる。
好ましくは、バイサルファイトシーケンス法、メチル化特異的PCR法、DNAメチル化感受性制限酵素を用いる方法を用いることができる。
【0071】
別の好ましい実施態様においては、PCA-1の機能を抑制する物質を選択するスクリーニング方法は、以下の工程を含む。
(a)PCA-1発現細胞に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞におけるPCA-1の活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、活性を低下させる物質を膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質の候補として選択する工程
ここで、PCA-1の活性は、例えば、(i) FLIPのユビキチン化阻害、(ii) FLIP-Raf-1相互作用増強、(iii) MAPキナーゼシグナリング増強、(iv) サイクリンD発現増強を指標として測定されうる。これらの方法は、具体的には、WO 2007/015587の記載に従って実施され得る。
本発明において、PCA-1発現細胞として、好ましくは前記した膵臓癌細胞を用いることができる。
【0072】
3.膵臓癌の診断方法
上述のように、膵臓癌やその前癌病変を有する動物ではPCA-1の発現が上昇しているので、PCA-1の発現量を調べることにより、膵臓癌の発症もしくは発症リスクの有無又は程度を判定することができる。従って、第3の本発明は、被験動物由来の試料中のPCA-1の発現量を測定することによる、膵臓癌の診断方法を提供する。
【0073】
被験動物としては、ヒトもしくは他の哺乳動物が挙げられるが、好ましくはヒト、あるいは実験動物として汎用されるマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル等である。測定対象試料としては、血液、血漿、血清、リンパ液、膵液、唾液、粘液、尿、涙、精液、関節液などの体液、あるいは膵生検等が挙げられる。
【0074】
試料中のPCA-1の発現量は、該遺伝子(蛋白質)の発現量を指標とする上記スクリーニング法に記載されたのと同様の方法により測定することができる。即ち、例えば、PCA-1転写産物の発現量は、試料からtotal RNAを調製し、RT-PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、PCA-1翻訳産物の発現量は、免疫学的手法により測定され得る。免疫学的手法としては、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、蛍光抗体法、ウェスタンブロッティング法などが使用できる。免疫学的手法を用いる方法の詳細は、例えば、WO 2005/080564に記載されている。
【0075】
上記測定の結果、被験動物より採取した試料中のPCA-1の発現量が、正常動物より採取した試料中の発現量と比較して有意に高かった場合、該被験動物は、膵臓癌を発症しているか、将来発症するリスクが高いと判定することができる。あるいは、正常動物における発現量を予め同定しておき、例えば、その平均値+2SDをカットオフ値として規定し、被験動物より採取した試料中のPCA-1の発現量が、当該カットオフ値を超えた場合に、該被験動物は、膵臓癌を発症しているか、将来発症するリスクが高いと判定することもできる。
【0076】
PCA-1は前立腺癌においても高発現することから、上記測定の結果、PCA-1の発現上昇が認められた場合、他の膵臓腫瘍マーカー(例、CEA、CA19-9、DUPAN-2、SPAN-1、エラスターゼ、NCC-ST-439、SLX等)、血中ホルモン(例、インスリン、ガストリン、グルカゴン、VIP等)、画像検査(例、超音波検査、超音波内視鏡、CT、MRI、FDG-PET、ERCP等)と組み合わせて、診断を行うことが望ましい。あるいは、PSA等の前立腺腫瘍マーカーとの組み合わせにより、前立腺癌との区別を行うこともできる。
【0077】
別の実施態様においては、抗PCA-1抗体やPCA-1 mRNAと特異的にハイブリダイズし得る核酸を適当な標識剤で標識して被験動物に投与し、生体内での該抗体もしくは核酸の局在化を、該標識剤を直接検出(画像化)することにより調べることができる。このような標識剤としては、例えば、適当な半減期を有する放射性同位元素を用いることが好ましい。より好ましくは、放射性同位元素は、シンチグラフィや、単光子放射計算断層撮影(SPECT)およびポジトロン断層撮影(PET)などの各種断層撮影において通常使用される核種である。シンチグラフィやSPECTに用いられる核種としては、例えば、99mTc、201Ti、67Ga、111In、123I、131I、125I、169Yb、186Re、99Mo等が挙げられる。特に好ましくは、99mTcが挙げられる。PET核種としては、例えば、15O、13N、11C、18F等が挙げられる。
【0078】
放射性同位元素による抗体もしくは核酸の標識は、各放射性同位元素について自体公知の方法をそれぞれ用いて行うことができる。例えば、99mTcで抗体を標識する場合、例えばRADIOISOTOPES, 53: 155-178 (2004) に記載の手法に従って行うことができる。即ち、抗体に、必要に応じてリンカーを介して適当な配位子(例:DTPA、HMPAO、DMSA、MAAなど)を結合し、これをバイアルなどの容器に封入する。99Mo-99mTcジェネレータより溶出した過テクネチウム酸イオン(99mTcO4-)を適当な還元剤(例:塩化第一スズなど)を用いて+1、+3、+4もしくは+5価の酸化数の状態にまで還元し、これをトレーサー化合物を封入した容器中に注入して振とうすることにより、99mTc標識されたトレーサー化合物を得ることができる。99mTcは目的の配位子と直接反応させてもよいし、あるいは最初にグルコン酸や酒石酸などの配位能の弱い配位子と反応させて該配位子との錯体を生成させた後、配位能の強い配位子を作用させて配位子交換を行ってもよい。リンカーとしては、テクネチウム錯体の製造に通常用いられているものを適宜選択して用いることができる。
【0079】
SPECTやPETなどの放射性同位元素を用いる画像診断以外にも、抗PCA-1抗体もしくはアンチセンスPCA-1は、MRIやCTに使用される非放射性の造影剤、例えば、ガドリニウム、ヨード、フッ素などで標識することにより、MRIやCTなどの画像診断用の造影剤として調製することもできる。あるいは、緑色蛍光蛋白質(GFP)などの蛍光物質や化学発光物質を生成するレポーター(例、ルシフェラーゼなど)で抗PCA-1抗体もしくはアンチセンスPCA-1を標識することもできる。
【0080】
標識された抗PCA-1抗体もしくはアンチセンスPCA-1は、上記治療用抗体もしくは核酸の場合と同様に製剤化することができ、同様の投与経路で投与することができる。また、抗体が放射性同位元素で標識されている場合、単位用量あたり約0.0001〜約10mCi、好ましくは約0.01〜約0.1mCiの放射能強度を有する。単位用量の注射剤の容量としては、例えば、約0.01〜約10mlである。
【0081】
標識剤として放射性同位元素を用いた場合、被験動物体内での抗体もしくは核酸の局在化は、例えばシンチグラフィー、単光子放射計算断層撮影(SPECT)、ポジトロン断層撮影(PET)等、好ましくはSPECTもしくはPETにより検出・画像化される。シンチグラフィーの場合、標識した抗体もしくは核酸を投与した後、その体内分布をシンチカメラにより描出する。SPECTおよびPETの場合、それぞれ専用の断層撮像装置を用いて横断断層面を描画する。撮像開始時間は、標識剤の核種にもよるが、例えば、トレーサーの投与直後〜72時間後、好ましくは5分後〜24時間後、より好ましくは10分後〜4時間後が挙げられる。
【0082】
標識剤としてルシフェラーゼを用いた場合、標識した抗体もしくは核酸を投与した後、ルシフェリンをさらに投与し、超高感度冷却CCDカメラを搭載したリアルタイムin vivoイメージング装置(例えば、住商ファーマインターナショナル(株)のIVIS200など)を用いて、化学発光をデジタル画像として可視化することにより、抗体もしくは核酸を検出することができる。他の蛍光もしくは発光物質を標識剤として用いた場合も、自体公知の方法を用いて該標識を検出することにより、抗PCA-1抗体もしくはアンチセンスPCA-1の体内分布を描出することができる。
その結果、膵臓の付近に該抗体もしくは核酸の集積が認められた場合、被験動物は膵臓癌を発症しているか、あるいは将来発症する可能性が高いと診断することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0084】
実施例1 膵臓癌及び前癌病変におけるPCA-1免疫染色
ヒト正常膵管(32例)、前癌病変(膵管上皮内腫瘍(PanIN)ステージ1〜3;PanIN1:9例、PanIN2:10例、PanIN3:14例)および膵臓癌(58例)組織をホルマリン固定、パラフィン包埋し、5μmに切片化した。脱パラフィン後、Target Retrieval Solution, pH 9.0 (DAKO) に浸し、97℃で30分インキュベートして抗原賦活した。0.3%過酸化水素水加メタノールでペルオキシダーセをブロッキング(室温、10分)した後、PBSで洗浄した。次いで、抗ヒトPCA-1モノクローナル抗体をAntibody Diluent (DAKO) にて1/200に希釈し、4℃で一晩インキュベートした。PBSで洗浄後、EnVisionTM+, Mouse/HRPキット (DAKO)を使用して2次抗体反応(室温、30分)およびDAB発色(10分)を行い、ヘマトキシリンで対比染色して脱水した。正常膵管、PanIN1〜3および膵臓癌におけるPCA-1発現(ペルオキシダーゼ陽性)細胞の割合を図1Aに、各ステージでの代表的な染色像を図1Bにそれぞれ示す。膵臓癌では、前癌病変(PanIN2)から癌化過程においてPCA-1の高発現が認められた。
【0085】
実施例2 膵臓癌細胞株を用いたPCA-1のRNAi解析による抗腫瘍性効果の評価
本実施例では、膵臓癌検体において発現亢進が認められたPCA-1遺伝子について、膵臓癌細胞でPCA-1遺伝子の機能阻害時のがん細胞に与える影響をRNAi法により解析した。RNAi法による遺伝子ノックダウン率については、定量的RT-PCR解析により評価し、膵臓癌細胞に与える影響については、生細胞数測定解析により細胞の生存率を求め、評価した。
<RNAi解析>
細胞株はATCCより購入し、添付されていたプロトコールに従い培養を行った。siRNAとして以下の2種のsiRNAを用いた。
siRNA 1 : GAGAGAAGCUUCACUGAAAdTdT(配列番号:3)
siRNA 2 : GAAAGAAGCUGACUGGAUAdTdT(配列番号:4)
siRNAの培養細胞内への導入は、Lipofectamin RNAiMAX (Invitrogen) を使用し、10nMのsiRNAを添付されていたプロトコールに従い細胞に導入した。対照にはON-TARGET plus Non-Targeting Pool (Dharmacon) を使用した。
<定量的RT-PCR解析>
遺伝子ノックダウン率について評価するために、siRNAの効果をmRNAレベルで検証した。siRNA導入後24時間の細胞から、SV96 Total RNA Isolation System(Promega)を使用して、添付されていたプロトコールに従い、全RNAを抽出した。その後、SuperScript III First-Strand Synthesis System for RT-PCR(Invitrogen)を使用して、添付されていたプロトコールに従い、cDNAを合成した。
このcDNAを鋳型にして、定量的RT-PCRを実施した。定量的PCRは、Power SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems)を使用して、添付されていたプロトコールに従い、7500 Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて実施した。内在性コントロールとして、TATA binding protein (TBP) を用い、ネガティブコントロール (NC) との相対比を比較Ct法(ΔΔCt)により算出した。
<生細胞数測定解析>
siRNA導入後の生細胞数をAlamar Blue(Biosource)を用いて、添付されていたプロトコールに従い、Wallac 1420 Multilabel/Luminescence Counter ARVO(PerkinElmer)により測定した。
【0086】
<結果>
PCA-1遺伝子のsiRNAを導入後、24時間で回収したAsPC-1細胞を用いて行った定量的RT-PCR解析の結果を図2に示す。PCA-1の発現量はネガティブコントロール(NC)に対する相対量で示した。NCはどの遺伝子の転写産物もターゲットにしない配列のsiRNAを使用した。図2に示されるように、RNAレベルでのRNAi法による発現抑制効果を定量的RT-PCRで評価した結果、siRNAの導入によりNCに対して約70%の十分な発現抑制が認められた。
次に、AsPC-1細胞株とPANC-1細胞株に対してPCA-1遺伝子のRNAi解析を行った。siRNAを各細胞株にトランスフェクション後、8日目に生細胞数測定解析を行い、NCに対する相対値をViability(生存率)として算出した。結果を図3に示す。AsPC-1細胞株では、siRNA1, 2それぞれ約56%, 約70%と明らかな増殖抑制効果が認められた。さらに、PANC-1細胞株でも、siRNA1, 2それぞれ約86%, 約56%と明らかな増殖抑制効果が認められた。これにより、PCA-1遺伝子のノックダウンにより膵臓癌細胞株の増殖が抑制されることが示唆された。
以上のように、PCA-1遺伝子のsiRNAの膵臓癌細胞株への導入は、PCA-1遺伝子のmRNA減少を引き起こすことが確認された。また、PCA-1遺伝子のsiRNAの細胞内へ導入は、細胞の増殖を抑制した。これらのことから、膵臓癌細胞株の増殖においてPCA-1遺伝子は重要であり、該遺伝子の発現抑制により膵臓癌細胞の増殖を抑制することから、PCA-1の発現又は機能抑制剤は抗癌剤として有効である可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
PCA-1の発現又は機能を抑制する物質を含有する本発明の剤は、膵臓癌においてPCA-1の発現および機能を抑制して癌細胞の増殖を抑制しうるので、膵臓癌の予防・治療剤として有用である。また、PCA-1発現細胞、好ましくは膵臓癌細胞を使用した本発明のスクリーニング方法は、新規な膵臓癌治療薬を探索するためのツールとして有用である。さらに、PCA-1は前癌病変(PanIN2)から発現が上昇するので、PCA-1の発現量を指標とする診断は、早期発見が困難な膵臓癌の診断に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCA-1の発現又は機能を抑制する物質を含有してなる膵臓癌の予防及び/又は治療剤。
【請求項2】
前記物質が、以下の(i)又は(ii)である、請求項1記載の剤。
(i) PCA-1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列又はその一部を含む核酸
(ii) PCA-1ポリペプチドを特異的に認識する抗体、又はPCA-1ポリペプチドのドミナントネガティブ変異体、或いはそれらをコードするヌクレオチド配列を有する核酸
【請求項3】
PCA-1の発現又は機能を抑制し得る物質を選択することを含む、膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質のスクリーニング方法。
【請求項4】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、請求項3記載の方法。
(a)膵臓癌細胞に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞におけるPCA-1の発現量を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、発現量を低下させる物質を膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質の候補として選択する工程
【請求項5】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、請求項3記載の方法。
(a)膵臓癌細胞に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞におけるPCA-1の活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、活性を低下させる物質を膵臓癌の予防及び/又は治療活性を有する物質の候補として選択する工程
【請求項6】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、膵臓癌の診断方法。
(a)被験動物由来の試料中のPCA-1の発現量を測定する工程
(b)該発現量に基づいて、該被験動物における膵臓癌の発症もしくは発症リスクの有無又は程度を判定する工程

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−1286(P2011−1286A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144760(P2009−144760)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年3月27日 http://www.nibio.go.jp/shinko/kisoken/kiso21.htmlを通じて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人 医薬基盤研究所基礎研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(502019933)リンク・ジェノミクス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】