説明

自ら発する音声の自らの知覚の低減を伴う音響機器

【課題】 自らが発する音声を音響機器越しに聞くのと、直接知覚するのとでは異なって聞こえるため音響機器越しの音声の調子を自らの発声をもって容易に調整できないといった問題があった。また、ボイスチェンジャーなどにおいては、変調・変換した自らの音声と、直接知覚される自らが発する音声が同時に知覚されてしまうため、他の人物の音声を発しているような十分な擬似体験の効果は得られなかった。
これらの問題を解決することが課題である。
【解決手段】 直接知覚される自らの音声を検出し、これと逆位相となる音波を発生、送出して直接知覚される自らの音声を低減するとともに、変調・変換した自らの音声を発生させて聞かせるものである本発明により、この課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器に関するものであり、音響機器を介さずに直接知覚する自ら発する音声を低減するとともに、変調・変換された音響機器越しの自らの音声を聞こえるようにすることにより、自らの発声をもって音響機器越しの音声の調子を取りやすくするものであり、また他の人物の音声のように変調・変換した音声を聞こえるようにすることにより、他の人物の音声を発しているような擬似体験をさせるものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する、逆位相の音波により音を低減する技術を用いているものの例として、特許文献1に開示されている外部の雑音を低減するものや、特許文献2に開示されている自らの発する音声を他の人に聞かれないよう低減するものがある。また、従来から自ら発する音声を変換して他の人物のような音声を発生させるものとしてボイスチェンジャーがある。この例として、特許文献3に開示されているものがある。
【特許文献1】 特開平2−252398号公報
【特許文献2】 特開平10−20867号公報
【特許文献3】 特開平10−268875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自らが発する音声を音響機器越しに聞くのと、音響機器を介さずに直接知覚するのとでは、音の伝搬する経路の違い、音響機器による音の変調・変換のため異なって聞こえる。プレゼンテーションや歌を歌うといった音響機器を使用する場合において、音響機器を介さない直接知覚する自らの音声が邪魔をしてしまい、音響機器越しの音声の調子を自らの発声をもって容易に調整できないといった問題があった。
【0004】
また、カラオケ等で使用されている音声を変調・変換し、他の人物のような音声を発生させるボイスチェンジャーなどにおいては、音響機器を介さずに直接知覚される自らの音声と、ボイスチェンジャーなどによって変調・変換された自らの音声が同時に知覚されてしまい、他の人物の音声を発しているような擬似体験の十分な効果は得られなかった。
【0005】
本発明は、以上述べた問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するための請求項1の発明は、音響機器を介さず直接知覚される自らの音声を検出し、これと逆位相となる音波を発生、送出して音響機器を介さず直接知覚される自らの音声を打ち消し低減するとともに、変調・変換した自らの音声を発生させ、聞こえるようにしたものである。
【0007】
これにより変調・変換された音響機器越しの音声の比率が高まり、音響機器越しの音声を明瞭に聞き取れるようになることから、音響機器越しの音声の調子を自らの発声をもって調整が取り易くなるといった効果が発揮される。
【0008】
また、音響機器を介さずに直接知覚される自らの音声と、他の人物の音声のように変調・変換された自らの音声が同時に知覚されなくなるため、よりリアルに他の人物の音声を発しているような擬似体験ができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、音響機器を介さない直接知覚する自らの音声を低減させることから、音響機器を使用する場合において音響機器を介さない直接知覚する自らの音声が邪魔をしてしまい、音響機器越しの音声の調子を自らの発声をもって容易に調整できないといった問題は解消される。
【0010】
また、音響機器を介さずに直接知覚される自らの音声と、他の人物の音声のように変調・変換された自らの音声が同時に知覚されなくなり、これらが同時に知覚されてしまうことのために擬似体験の十分な効果が得られなかったという問題は解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明のシステムのブロック図である。以下図1に基づいて説明をする。これはDSPを用いたデジタル処理となっているが、アナログ処理で置き換えることもできる。
【0012】
1のマイク1は人体を直接伝搬する音声を検出するためのものであり、声道に近い首や顎などに取り付けられるものであり、2のマイク2は空気中を伝搬する音声を検出するためのものである。
【0013】
各々のマイクで検出した音声はデジタル処理を行うためA/D変換ユニットによりデジタル信号とする。この信号は音響機器を介さず直接知覚される自らの音声を低減するための逆位相の音波を作るラインと、音声の調子を変えたり、他の人物のような音声に変換するための変調・変換ラインの2つに分けられる。
【0014】
逆位相の音波を作るラインは位相を反転させ逆位相を作る位相反転ユニットと、信号を送出するタイミングを調整するためのタイミングユニット、信号の大きさを変えるための振幅調整ユニットから構成される。逆位相の音波を送出するタイミングとその振幅を変化させることにより、音響機器を介さず直接知覚される自らの音声が最も低減されるよう調整される。
【0015】
音声の調子を変えたり、他の人物のような音声に変換するための音声変調・変換ラインは、音声の調子を変える伝達特性をもつフィルタや、周波数を変換するサブユニットからなる音声変調・変換ユニットと、信号を送出するタイミングを調整するためのタイミングユニット、信号の大きさを変えるための振幅調整ユニットから構成される。また、外部の音響機器に信号出力ができるよう音声変調・変換ユニットの後段の信号は分岐され、片方はD/A変換ユニットを介してアナログ信号として外部へ提供される。
【0016】
逆位相の音波を作るラインの出口の位相を反転、調整された信号と、音声変調・変換ラインの出口の音声を変調・変換、調整された信号は足し合わされ、そしてD/A変換ユニットによりアナログ信号に変換される。この信号を増幅し、スピーカーから送出する。
【0017】
3のスピーカー1は人体を直接伝搬する音波を送出するものであり、音響機器を介さず直接人体内部を伝搬して知覚される自らの音声を打ち消し低減するためのものである。4のスピーカー2は空気中を伝搬する音波を送出するものであり、音響機器を介さず直接空気中を伝搬して知覚される自らの音声を打ち消し低減するためのものである。
【0018】
なお、1のマイク1からなるユニット群と、2のマイク2からなるユニット群の両方からなる図1の構成が最も発明の効果で記載した効果が得られるが、片方のユニット群のみの構成であってもよい。
【0019】
上述したシステムを構成することにより発明の効果で記載した効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係わる音響機器は工業的に量産することが可能であるため、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 本発明のシステムのブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
1 人体を直接伝搬する音声を検出するためのマイク
2 空気中を伝搬する音声を検出するためのマイク
3 人体を直接伝搬する音波を送出するためのスピーカー
4 空気中を伝搬する音波を送出するためのスピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接知覚される自ら発する音声を検出し、これと逆位相となる音波を発生、送出して直接知覚される自らの音声を低減するとともに、変調・変換した自らの音声を発生させて聞かせることを特徴とする音響機器。

【図1】
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【公開番号】特開2008−99220(P2008−99220A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300897(P2006−300897)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(506372209)
【Fターム(参考)】