説明

自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置

【課題】複数の検出エリアのうち装置から遠い位置の検出エリアであっても、検出エリアを正確に設定することができる自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置を提供する。
【解決手段】プリズム体4P、9Pは水平な稜線Rで区画される複数のプリズム片PSを有して、検出エリアA1〜A5を遠くに拡大するように設定され、各プリズム片PSのプリズム面の鉛直面内における傾斜角度θは、水平方向の両端部で最小に、中央部に向かい次第に大きくなって中央部で当該傾斜角度が最大に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の検出エリアに向けて物体検出用の検知線を送出して、物体で反射した検知線を受けたときに発生する受光信号が設定レベルを超えることにより人体のような物体を検出する自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の検出エリアに向けて投光器から赤外線や近赤外線などの人間の眼に見えない物体検出用の検知線を送出して、受光器により物体で反射した検知線を受けて受光信号を発生させ、この受光信号が設定レベルを超えることにより人体のような物体を検出する能動型物体検出装置が知られている。
【0003】
この能動型物体検出装置の一例として、検出装置に近い位置から遠い位置に向かって縦方向に複数列、および横方向に複数行の検出エリアが配置されて、複数の検出エリアを形成したものが挙げられる(特許文献1)。この能動型物体検出装置は、例えば自動開閉ドアの物体検出用として自動ドアセンサに用いられる。
【0004】
上記複数の検出エリアが、投光素子から送出された検知線を投射するレンズ体およびプリズム体の光学系により構成される場合、プリズム体は検出エリアを遠くに拡大するために使用される。
【0005】
また、能動型物体検出装置は、上記したように赤外線などの人間の眼に見えない光線を利用して物体を検出するものであり、上記光学系により形成される複数の検出エリアも人間の眼に見えないので、この検出エリアを具体的に認識することが難しく、その設定も困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−115792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、検出エリアを遠くに拡大するために、一定角度に設定されたプリズム体を使用した場合、複数の検出エリアのうち特に装置から遠い位置の検出エリアにおいて、歪曲収差と同様の現象が発生する場合があった。図4(B)は、この遠い位置の検出エリアにおける横方向に並んだ複数行のエリアに投光された光を実験装置によって撮像したものである。この図のように、横方向に一列に並んだ検出エリアは上記現象の影響を受けて、平面視で弓なり形状となっている。
【0008】
この場合、人間の眼に見えないため検出エリアの設定自体が困難なことに加えて、検出エリアにおける上記弓なり形状により、設計上の検出エリアと実際に設定された検出エリアとで差異が生じるため、検出エリアの設定が不正確になるという問題があった。
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決して、プリズム体を使用してエリアを遠くに拡大して複数の検出エリアが設定される場合に、装置から遠い位置の検出エリアであっても、検出エリアを正確に設定することができる自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置は、複数の検出エリアに向けて物体検出用の検知線を送出する投光素子および物体で反射した前記検知線を受光する受光素子と、単一の前記投光素子または受光素子の前方に配置されたレンズ体およびプリズム体を有し、複数の検出エリアを形成する光学系と、を備え、前記プリズム体は水平な稜線で区画される複数のプリズム片を有して、前記検出エリアを遠くに拡大するように設定され、前記各プリズム片のプリズム面の鉛直面内における傾斜角度は、水平方向の両端部で最小に、中央部に向かい次第に大きくなって中央部で当該傾斜角度が最大に設定されている。
【0011】
この構成によれば、プリズム体を構成する複数のプリズム片のプリズム面の鉛直面内における傾斜角度が、水平方向の両端部で最小に、中央部に向かい次第に大きくなって中央部で当該傾斜角度が最大に設定されているので、プリズム体に起因して検出エリアにおいて発生する歪曲収差と同様の現象による弓なり形状を、直線状に補正することができる。これにより、装置から遠い位置の検出エリアであっても、検出エリアを正確に設定することができる。
【0012】
好ましくは、前記プリズム体は、自動ドアセンサから遠い位置の検出エリアを形成するプリズム片にのみ、前記傾斜角度の変化が形成されている。したがって、特に上記現象の影響が大きい装置から遠い位置の検出エリアにおいてより効果的に補正することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、プリズム体を構成する複数のプリズム片のプリズム面の鉛直面内における傾斜角度が、水平方向の両端部で最小に、中央部に向かい次第に大きくなって中央部で当該傾斜角度が最大に設定されているので、プリズム体に起因して検出エリアにおいて発生する歪曲収差と同様の現象による弓なり形状を、直線状に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係る自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置を用いた自動開閉ドアのスライド方向側から見た検出エリアの説明図、(B)は検出エリアを示す平面図である。
【図2】図1の能動型物体検出装置のカバー、ウィンドウおよび上ケースを取り外した状態を示す正面図である。
【図3】(A)はプリズム体を示す側面図、(B)はその斜視図、(C)は素子、レンズ体およびプリズム体を示す平面図、(D)は(B)のD−D切断図である。
【図4】(A)は本発明にかかる能動型物体検出装置の動作、(B)は従来の能動型物体検出装置の動作を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、本発明の一実施形態に係る自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置の構成の説明に先立って、検出エリアについて説明する。この実施形態では、自動開閉ドアの開閉制御装置の起動用に適用した場合を例示してあり、図1(A)は、自動開閉ドア18のスライド方向から見た検出エリアの説明図、同図(B)は検出エリアを示す平面図である。同図(A)に示すように、前記能動型物体検出装置100は無目50に内蔵して設置され、検出エリアA1〜A5は設置された能動型物体検出装置100に近い位置から遠い位置に向かって5列に配置されており、各列の検出エリアA1〜A5は、同図(B)に示すように、それぞれ12個のエリアからなる。
【0016】
図2は、前記能動型物体検出装置100の装置本体29からカバー、その内側のウィンドウ(図示せず)および上ケースを取り外した状態を示す正面図である。図2に示すように、この能動型物体検出装置100は、例えばAIR(能動型赤外線方式)センサであり、投光器1に近い位置から遠い位置に向かって5列に設定される検出エリアに向けて物体検出用の検知線の一種である近赤外線を投光する投光器1と、物体で反射した検知線を受けて受光信号を発生する受光器2とを備えている。
【0017】
投光器1は、検知線として近赤外線を送出する赤外線発光ダイオードからなる第1〜第5列目投光素子3と、この投光素子3に対して、その前方に、各投光素子3から送出される近赤外線を、各列が12個の検出エリアを有するように、複数の例えば4つの所定パターンで投射する横方向Xに4分割されたレンズ体4Lと、水平な稜線で区画される複数のプリズム片を有し、第4、5列に対応して上下方向Yに5分割されて検出エリアを遠くに拡大するように設定されるプリズム体4P(図3(A))とが順次配置されてなる投光用光学系4とを有している。第1〜第3列に対してプリズム体4Pは設けられていない。
【0018】
受光器2は、前記5列の各検出エリアの列ごとに受光する相異なる第1〜第5列目受光素子8と、この受光素子8に対して、その前方に、各列の検出エリアから反射した近赤外線を各受光素子8に入射するよう集光する横方向Xに4分割されたレンズ体9Lと、水平な稜線で区画される複数のプリズム片を有し、第4、5列に対応して上下方向Yに5分割されたプリズム体9P(図3(A))とが順次配置されてなる受光用光学系9とを有している。第1〜第3列に対してプリズム体9Pは設けられていない。
【0019】
この能動型物体検出装置100は、装置本体29の下面側(図の下側)に、投光用光学系4を構成する第1および第2投光レンズ4LA、4LBとプリズム体4Pが装置本体29の無目50(図1(A))の取付面29aと平行な水平方向である横方向Xに離間して配置され、その間に、受光用光学系9を構成する第1および第2受光レンズ9LA、9LBとプリズム体9Pが配置されている。第1投光レンズ4LAおよび第1受光レンズ9LAは、図1の第1から第3の検出エリアA1〜A3を設定し、第2投光レンズ3LBおよび第2受光レンズ9LBと、プリズム体4Pおよび9Pは、図1の第4および第5の検出エリアA4、A5を設定する。
【0020】
図2の第1投光レンズ4LAに対応して各3個ずつが横方向Xに沿って一列に配列された第1〜第3列目投光素子3が装着され、第2投光レンズ4LBおよびプリズム体4Pに対応して各3個ずつが横方向Xに沿って一列に配列された第4および第5列目投光素子(図示せず)が装着され、第1受光レンズ9LAに対応して各3個ずつが横方向Xに沿って一列に配列された第1〜第3列目受光素子8が装着され、第2受光レンズ9LBおよびプリズム体9Pに対応して各3個ずつが横方向Xに沿って一列に配列された第4および第5列目受光素子8(第1〜第3列目受光素子8よりも若干上方に傾斜している)が装着されている。第1および第2投光レンズ(複数のレンズセグメント)4LA、4LB、第1および第2受光レンズ(複数のレンズセグメント)9LA、9LBはいずれも4分割されており、各1つの投光素子3および受光素子8に対して、4つの検出エリアを割り当てている。したがって、各列ごとに3個ずつ配列された第1〜第5列目の投光素子3および第1〜第5列目の受光素子8は、対応するレンズ4LA、4LB、9LA、9LBおよびプリズム体4P、9Pによって、各列に12(=3×4)個の検出エリアを含む5列の検出エリアA1〜A5を設定する。
【0021】
図3(B)のプリズム体4P、9Pは、各プリズム片のプリズム面のY方向の鉛直面内における傾斜角度は、水平方向Xの両端部で最小に、中央部に向かい次第に大きくなって中央部で当該傾斜角度が最大に設定されている。このプリズム片の両端部と中央部との傾斜角度の差は1°〜5°の範囲内、好ましくは2°〜4°の範囲内である。上記傾斜角度および傾斜角度の差はプリズム材質や検出エリアの拡大設定の程度などに応じて変動する。図3(C)のように、プリズム体4P、9P全体の稜線Rは、平面視でX方向に直交するZ方向に中央が凸の略山型の形状を有している。図3(D)は(B)のD−D切断図であり、上記傾斜角度θを示す。
【0022】
この例では、装置100から遠い位置のA4、A5の検出エリアを形成するために、プリズム面の傾斜角度θを変化させたプリズム体4P、9Pが配置されている。これにより、従来において装置100から遠い位置のA4、A5の検出エリアで発生する歪曲収差と同様の現象による弓なり形状(図5(B))を、図5(A)に示すように、直線状に補正することができる。その一方、装置100から近い位置のA1〜3の検出エリアを形成するのに、プリズム体4P、9Pは配置されていない。これは、近い位置の検出エリアでは遠くにエリアを拡大させる必要性が少なく、また、仮に従来のプリズム体を配置した場合に上記現象が生じる可能性はあるものの、その影響は小さいことによる。
【0023】
上記構成において、図1の自動開閉ドアは、各列の受光素子8ごとに個々に入力する受光信号が設定レベルを超えているか否かを判別して、設定レベルを超えていると判別したときに、自動開閉ドア18の開閉制御装置に対し物体検出信号を出力する。そして、この物体検出信号に基づき自動開閉ドア18が開閉される。
【0024】
例えば、図1(A)の自動開閉ドア18から2.4m離間している検出エリアA5において、図4(B)の従来の弓なり形状の中央で直線状の仮想線に対して120mmのずれ(凹み)がある場合に、本発明において、プリズム体4P、9Pが両端部で傾斜角度9°に設定され、中央部に向かい次第に傾斜角度が大きくなって、中央部で傾斜角度12°に設定されて、両端部と中央部との傾斜角度の差が3°に設定されることにより、図4(A)のように直線状に補正される。
【0025】
こうして、プリズム体を構成する複数のプリズム片のプリズム面の鉛直面内における傾斜角度が、水平方向の両端部で最小に、中央部に向かい次第に大きくなって中央部で当該傾斜角度が最大に設定されているので、プリズム体に起因して検出エリアにおいて発生する歪曲収差と同様の現象による弓なり形状を、直線状に補正することができる。これにより、装置から遠い位置の検出エリアであっても、検出エリアを正確に設定することができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、近い位置のA1〜3の検出エリアについて、プリズム面の傾斜角度を変化させたプリズム体を配置していないが、必要に応じて配置させてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1:投光器
2:受光器
3:投光素子
4:投光用光学系
4L:レンズ体
4P:プリズム体
8:受光素子
9:受光用光学系
9L:レンズ体
9P:プリズム体
18:自動開閉ドア(自動ドア)
100:能動型物体検出装置
A1〜A5:検出エリア
PS:プリズム片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出エリアに向けて物体検出用の検知線を送出する投光素子および物体で反射した前記検知線を受光する受光素子と、
単一の前記投光素子または受光素子の前方に配置されたレンズ体およびプリズム体を有し、複数の検出エリアを形成する光学系と、を備えた自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置であって、
前記プリズム体は水平な稜線で区画される複数のプリズム片を有して、前記検出エリアを遠くに拡大するように設定され、
前記各プリズム片のプリズム面の鉛直面内における傾斜角度、水平方向の両端部で最小に、中央部に向かい次第に大きくなって中央部で当該傾斜角度が最大に設定されている、自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記プリズム体は、自動ドアセンサから遠い位置の検出エリアを形成するプリズム片にのみ、前記傾斜角度の変化が形成されている、自動ドアセンサ用の能動型物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−145434(P2012−145434A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3844(P2011−3844)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】