説明

自動二輪車の連動ブレーキ装置

【課題】最適なブレーキ特性となるように前後輪のブレーキ力を容易に調整することができ、各構成部品の配置の自由度を向上することができる自動二輪車の連動ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】リヤアクスルを中心として回動するフローティング式のブレーキパネル40と、スイングアーム20に設けられる支持軸42に回動可能に支持されるトルクアーム43と、一端がブレーキパネル40に連結され他端がトルクアーム43に連結されるトルクリンク44と、トルクアーム43に設けられる支持軸46に回動可能に支持されるイコライザ47と、イコライザ47の一端と前輪WFにブレーキ力を作用させる前輪ブレーキ機構51とを連結する連動用コネクティングケーブル48と、イコライザ47の他端とブレーキペダル34とを連結するリターンロッド53と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の連動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の後輪ブレーキ作動に連動させて、前輪にもブレーキを作動させるようにした連動ブレーキ装置としては、車両の連動ブレーキ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の図12に記載の車両の連動ブレーキ装置は、一端がブレーキパネルに接続された第1リンク部材と、第1リンク部材の他端に連結される略L字型の第2リンク部材と、を備える。第2リンク部材は、ピボットプレートに回動自在に配設されており、その一端には、第2リンク部材を時計方向に付勢するディレイスプリングが装着されると共に、前輪ブレーキに繋がる連動用ブレーキケーブルのアウターケーブルが接続されている。また、この連動用ブレーキケーブルのインナーケーブルは、ブレーキペダルに連結されている。
【0003】
このように構成された連動ブレーキ装置において、ブレーキペダルが踏込み操作されて後輪にブレーキ力が作用したとき、ブレーキパネルに生じるブレーキ力の反力が、ディレイスプリングに設定されたばね力より大きくなると、連動用ブレーキケーブルを介して前輪にブレーキ力を作用させると共に、インナーケーブルがブレーキペダルを引き戻す方向に牽引して後輪のブレーキ力が高くなりすぎるのを回避し、これによって前後輪のブレーキ力のバランスを適性に保持するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−62559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の車両の連動ブレーキ装置では、第2リンク部材の一端で、連動用ブレーキケーブルのアウターケーブルを牽引して前輪にブレーキを作用させると共に、連動用ブレーキケーブルのインナーケーブルによって後輪のブレーキ力を低減させる2つの機能を同時に行っている。このため、連動ブレーキ装置の前後輪のブレーキ力を最適特性が得られるように調整し難いという問題があった。また、連動ブレーキ装置の各構成部品が、狭いピボットプレート上に配置されるので、各構成部品の配置の自由度が制約されていた。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、最適なブレーキ特性となるように前後輪のブレーキ力を容易に調整することができ、各構成部品の配置の自由度を向上することができる自動二輪車の連動ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、リヤアクスルを中心として回動するフローティング式のブレーキパネルと、スイングアームに設けられる支持軸に回動可能に支持されるトルクアームと、一端がブレーキパネルに連結され他端がトルクアームに連結されるトルクリンクと、を備える自動二輪車の連動ブレーキ装置において、トルクアームに設けられる支持軸に回動可能に支持されるイコライザと、イコライザの一端と前輪にブレーキ力を作用させる前輪ブレーキ機構とを連結する連動用コネクティングケーブルと、イコライザの他端とブレーキペダルとを連結するリターンロッドと、を更に備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、イコライザは、自動二輪車の側面視において、スイングアームと重なる位置に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、イコライザは、その長手方向が自動二輪車の上下方向に沿って配設され、イコライザの上端部に連動用コネクティングケーブルが連結されると共に、下端部にリターンロッドが連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の自動二輪車の連動ブレーキ装置によれば、トルクアームに回動可能に設けられるイコライザの一端に前輪ブレーキ機構に接続される連動用コネクティングケーブルが連結され、イコライザの他端にブレーキペダルと連結するリターンロッドが連結されるため、連動用コネクティングケーブルとリターンロッドとが独立して配置される。これにより、最適なブレーキ特性となるように前後輪のブレーキ力を容易に調整することができる。また、各構成部品の配置の自由度を向上することができる。
【0011】
請求項2に記載の自動二輪車の連動ブレーキ装置によれば、イコライザは、自動二輪車の側面視において、スイングアームと重なる位置に配置されるため、連動ブレーキ装置をグランドヒットなどから保護するためのガードが不要となり、装置をコンパクトにすることができる。また、上方への突出寸法を小さくすることができるので、悪路走行時などに車両(後輪)が上下方向に移動したときの他部品との干渉防止対策を最小限に抑制することができ、製造コストを低減することができる。
【0012】
請求項3に記載の自動二輪車の連動ブレーキ装置によれば、イコライザの長手方向が自動二輪車の上下方向に沿って配設され、イコライザの上端部に前輪ブレーキ機構に繋がる連動用コネクティングケーブルが連結されると共に、下端部にブレーキペダルに接続されるリターンロッドが連結されるため、連動用コネクティングケーブルと前輪ブレーキ機構との接続、及びリターンロッドとブレーキペダルとの接続を、それぞれ最短長さの連動用コネクティングケーブル及びリターンロッドによって無理なく行うことができる。これにより、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る自動二輪車の連動ブレーキ装置の一実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、運転者から見た方向に従い、車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0014】
まず、本実施形態の連動ブレーキ装置100が搭載される自動二輪車10について説明する。図1に示すように、本実施形態の自動二輪車10の車体フレームFは、フロントフォーク11を操向可能に支承するヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後ろ下がりに延びるメインフレーム13と、メインフレーム13の後端部に連設されるピボットプレート14と、メインフレーム13の後端部に前端が溶接されて後ろ上がりに延びる左右一対の後部フレーム15と、を備える。
【0015】
フロントフォーク11の下端には前輪WFが軸支され、フロントフォーク11の上部にはバー状の操向ハンドル17が連結されている。
【0016】
ピボットプレート14に固定されるピボット軸16には、スイングアーム20が揺動自在に支持されており、このスイングアーム20の後端部には、後輪WRが回動可能に軸支される。
【0017】
前輪WFには前輪ブレーキ30が装着され、後輪WRには後輪ブレーキ31が装着されている。前輪ブレーキ30及び後輪ブレーキ31は、いずれもドラムブレーキであり、ブレーキアーム32,33が回動したとき、内蔵された不図示のブレーキシューがブレーキドラムとの摩擦力によるブレーキ力を前輪WF及び後輪WRに付与する。
【0018】
ピボットプレート14の下部に設けられる支持軸36には、ブレーキペダル34が揺動自在に支持されている。また、操向ハンドル17の右側には、ブレーキレバー37が回動操作可能に取り付けられており、ブレーキレバー37を操作するとブレーキ操作力が前輪用ブレーキケーブル38を介してブレーキアーム32に伝達されて、前輪ブレーキ30が作動する。
【0019】
次に、連動ブレーキ装置100の構成について説明する。図2及び図3に示すように、ブレーキペダル34のアーム34aは、ブレーキロッド39を介して後輪ブレーキ31のブレーキアーム33に連結されており、ブレーキペダル34を踏み込み操作すると、ブレーキアーム33が図2の時計方向に回動し、後輪ブレーキ31が作動する。
【0020】
スイングアーム20の前後方向の略中間部には、下方に突出するスイングアームプレート41が固定される。スイングアームプレート41の下部に設けられる第1支持軸42には、略逆L字状のトルクアーム43の下部が回動可能に支持される。トルクアーム43の中間部は、トルクリンク44によって後輪ブレーキ31のブレーキパネル40の下部と連結される。
【0021】
また、スイングアームプレート41とブレーキペダル34のアーム34aとの間には、戻しばね45が配設されており、戻しばね45は、ブレーキペダル34を踏み込み操作方向と逆方向(図2の時計方向)に付勢している。
【0022】
また、トルクアーム43の上部に設けられる第2支持軸46には、イコライザ47の中間部が回動可能に支持される。このイコライザ47は、細長い板状部材であり、その長手方向が自動二輪車10の上下方向に沿って配設されると共に、車両側面視において、スイングアーム20と重なる位置に配置される。
【0023】
イコライザ47の上端部には、イコライザ47の長手方向に沿って2本のインナーケーブル連結ピン47aが設けられており、本実施形態では、下側のインナーケーブル連結ピン47aに連動用コネクティングケーブル48のインナーケーブル49が連結される。連動用コネクティングケーブル48は、アウターケーブル50内にインナーケーブル49が軸方向に移動可能に挿通されてなり、このアウターケーブル50の一端は、スイングアーム20のクロスメンバ20aの上面に設けられるケーブルステー52に支持される。また、連動用コネクティングケーブル48の他端側は、前輪ブレーキ30を作動させる前輪ブレーキ機構51に連結される(図1参照)。なお、本実施形態では、イコライザ47の下側のインナーケーブル連結ピン47aにインナーケーブル49が連結されているが、イコライザ47の上側のインナーケーブル連結ピン47aに連結されることによって、連動ブレーキ装置100の連動ブレーキ力を調節することが可能となる。
【0024】
イコライザ47の下端部は、リターンロッド53によってブレーキペダル34のアーム34aに連結される。スイングアーム20の上面には、ストッパボルトステー55が設けられており、このストッパボルトステー55には、スイングアーム20の長手方向に沿ってストッパボルト56が螺合される。このストッパボルト56は、回転させることにより突出長さが調節可能で、ナット57によってその位置が固定される。
【0025】
また、イコライザ47は、その上端部がストッパボルト56に当接することにより回動範囲(図2の時計方向)が制限される。
【0026】
また、トルクアーム43の上部後端には、後述するストッパピン64の前端部と当接するストッパ当接部43aが形成される。また、トルクアーム43の上部前端は、側面視略Lの字状に形成されており、スイングアーム20のクロスメンバ20aに固定されるゴムなどの弾性を有するクッション材59に当接すると共に、足部43bがクロスメンバ20aの後端面に当接する。これにより、トルクアーム43がクロスメンバ20aに当接するときの打音を抑制すると共に、クッション材59に過大な圧力を掛けることなく足部43bをクロスメンバ20aに接地させることが可能となる。
【0027】
また、スイングアーム20の内側面には、ボルトステー61が設けられており、このボルトステー61には、スイングアーム20の長手方向に沿ってばね力調整ボルト60が螺合される。このばね力調整ボルト60は、回転させることで突出長さが調節可能で、ナット63によってその位置が固定される。
【0028】
また、ばね力調整ボルト60の中心には、不図示の雌ねじが形成されており、この雌ねじには、スイングアーム20の長手方向に沿ってストッパピン64が螺合される。このストッパピン64は、回転させることで突出長さが調節可能で、ナット65によってその位置が固定される。そして、ストッパピン64は、トルクアーム43が図2の時計方向に回動したとき、その前端部がトルクアーム43のストッパ当接部43aと当接して、トルクアーム43の回動範囲を制限する。
【0029】
また、ばね力調整ボルト60の前端部に形成される鍔部60aとトルクアーム43のストッパ当接部43aとの間にはディレイスプリング62が装着されており、このディレイスプリング62は、自動二輪車10の前後方向に沿って配置されると共に、ばね力調整ボルト60の突出長さの調節により設定されたばね力によってトルクアーム43を図2の反時計方向に付勢している。
【0030】
前輪ブレーキ機構51は、図4に示すように、前輪ブレーキ30を作動する前輪用ブレーキケーブル38を備え、この前輪用ブレーキケーブル38は、上下に分割された一対のアウターケーブル70,71内にインナーケーブル72が軸方向に移動可能に挿通されている。そして、インナーケーブル72の一端は、ブレーキレバー37に連結され、インナーケーブル72の他端は、前輪ブレーキ30のブレーキアーム32に連結される。
【0031】
また、上方のアウターケーブル70の一端は、ブレーキレバー37の近傍において操向ハンドル17に支持される。また、下方のアウターケーブル71の一端は、車体フレームFに固定される支持ステー73の下部に設けられる第1円筒状支持部74に支持され、他端は、前輪ブレーキ30のブレーキパネル66に支持される(図1参照)。
【0032】
また、連動用コネクティングケーブル48は、アウターケーブル50の他端が、支持ステー73に上部に設けられる第2円筒状支持部75に支持される。また、インナーケーブル49の他端が、支持ステー73の中間部に設けられる支持軸77に回動可能に支持されるベルクランク76の一端に連結される。
【0033】
また、ベルクランク76の他端に設けられる第3円筒状支持部78には、前輪用ブレーキケーブル38の上方のアウターケーブル70の他端が支持される。また、支持ステー73には、ベルクランク76の回動を制限するストッパ79が設けられる。このように、連動用コネクティングケーブル48は、ブレーキレバー37と前輪ブレーキ30とを連結する前輪用ブレーキケーブル38の途中に前輪ブレーキ機構51のベルクランク76を介して接続される。
【0034】
そして、連動用コネクティングケーブル48のインナーケーブル49が、イコライザ47によって牽引されると、ベルクランク76が図4の反時計方向に回動して、上方のアウターケーブル70が圧縮され、その圧縮に伴う反力によってインナーケーブル72に牽引力が作用して、前輪ブレーキ30が作動する。
【0035】
次に、図5〜図9を参照して、本実施形態の連動ブレーキ装置100の作動について説明する。まず、図5に示すように、ブレーキペダル34の解放状態(ブレーキペダル34が踏み込まれていない状態)において、トルクアーム43は、ディレイスプリング62のばね力によって各図の時計方向に付勢されており、トルクアーム43の上部前端がクッション材59に当接し、トルクアーム43のストッパ当接部43aとストッパピン64の前端部との間には隙間がある。これは、図10のブレーキ特性グラフにおいてA点の状態に相当し、前後輪ブレーキ30,31のいずれも作動していない。
【0036】
次いで、ブレーキペダル34が踏み込み操作されると、図6に示すように、ブレーキロッド39が矢印a方向に牽引されてブレーキアーム33が反時計方向に回動する。これにより、後輪ブレーキ31が作動する。
【0037】
このとき、後輪WRに作用するブレーキ力の反力が、ブレーキパネル40を時計方向に回動させる力として発生する。この反力は、トルクリンク44を介してトルクアーム43に伝達され、トルクアーム43を反時計方向に回動させる力として作用する。しかし、トルクアーム43は、ディレイスプリング62のばね力によって時計方向に付勢されているので、ブレーキ力の反力がディレイスプリング62のばね力を上回る大きさになるまで、元の位置で静止している。
【0038】
また、ブレーキペダル34の踏み込み操作により、リターンロッド53を介してイコライザ47が反時計方向に僅かに回動する。このとき、この僅かな回動量は、連動用コネクティングケーブル48、前輪ブレーキ機構51、前輪用ブレーキケーブル38、及び前輪ブレーキ30などの遊びによって吸収されるので、前輪ブレーキ30はまだ作動しておらず、後輪ブレーキ31だけが作動している。これは、図10のブレーキ特性グラフにおいてB点の状態に相当し、ブレーキペダル34の踏み込み操作に応じて後輪ブレーキ31のブレーキ力は次第に大きくなるが、前輪ブレーキ30のブレーキ力はゼロである。
【0039】
次いで、ブレーキペダル34が更に踏み込み操作され、トルクリンク44を介してトルクアーム43に伝達されるブレーキ力の反力が、ディレイスプリング62のばね力を上回ると、図7に示すように、トルクアーム43が第1支持軸42を支点として反時計方向に回動を始め、トルクアーム43の上部前端がクッション材59から離間する。
【0040】
そして、このトルクアーム43の回動に伴ってイコライザ47が後方に移動すると、リターンロッド53を介してブレーキペダル34に反時計方向の力が作用し、後輪ブレーキ31のブレーキ力の特性カーブの立ち上がり勾配が小さくなる(図10参照)。即ち、後輪ブレーキ31のブレーキ力が緩和される。
【0041】
また同時に、イコライザ47の後方への移動によって、連動用コネクティングケーブル48のインナーケーブル49が牽引されるので、前輪ブレーキ機構51のベルクランク76が反時計方向に回動して(図4参照)、前輪ブレーキ30が作動し始める。
【0042】
これは、図10のブレーキ特性グラフにおいてC点の状態に相当し、前輪WFにブレーキ力が作用し始めると共に、後輪WRに作用するブレーキ力の特性カーブの立ち上り勾配が小さくなって、前後輪WF,WRにバランスの取れた適正な大きさのブレーキ力が付与され、効率的に自動二輪車10を停止させる。また、前輪ブレーキ30の作動開始時期及び後輪ブレーキ31の特性変化点(図10のC1点)は、ばね力調整ボルト60でディレイスプリング62のばね力を調整することによって任意に設定可能である。
【0043】
次いで、ブレーキペダル34が更に踏み込み操作されてブレーキ力が増大すると、図8に示すように、ブレーキ力の反力によってトルクアーム43が更に反時計方向に回動し、トルクアーム43のストッパ当接部43aがストッパピン64の前端部に当接して、トルクアーム43の回動が制限される。これは、図10のブレーキ特性グラフにおいてD点の状態に相当する。
【0044】
そして、この状態でブレーキペダル34が更に踏み込み操作されると、図9に示すように、トルクアーム43の状態はそのままで、イコライザ47が反時計方向に回動し、イコライザ47の上端部がストッパボルト56に当接して、イコライザ47の回動が制限される。このため、これ以上のブレーキペダル34の踏み込み操作は阻止される。これは、図10のブレーキ特性グラフにおいてE点の状態に相当する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の自動二輪車10の連動ブレーキ装置100によれば、トルクアーム43に回動可能に設けられるイコライザ47の一端に前輪ブレーキ機構51に接続される連動用コネクティングケーブル48が連結され、イコライザ47の他端にブレーキペダル34と連結するリターンロッド53が連結されるため、連動用コネクティングケーブル48とリターンロッド53とが独立して配置される。これにより、最適なブレーキ特性となるように前後輪WF,WRのブレーキ力を容易に調整することができる。また、各構成部品の配置の自由度を向上することができる。
【0046】
また、本実施形態の自動二輪車10の連動ブレーキ装置100によれば、イコライザ47は、自動二輪車10の側面視において、スイングアーム20と重なる位置に配置されるため、連動ブレーキ装置100をグランドヒットなどから保護するためのガードが不要となり、連動ブレーキ装置100をコンパクトにすることができる。また、上方への突出寸法を小さくすることができるので、悪路走行時などに車両10(後輪WR)が上下方向に移動したときの他部品との干渉防止対策を最小限に抑制することができ、製造コストを低減することができる。
【0047】
また、本実施形態の自動二輪車10の連動ブレーキ装置100によれば、イコライザ47の長手方向が自動二輪車10の上下方向に沿って配設され、イコライザ47の上端部に前輪ブレーキ機構51に繋がる連動用コネクティングケーブル48が連結されると共に、イコライザ47の下端部にブレーキペダル34に接続されるリターンロッド53が連結されるため、連動用コネクティングケーブル48と前輪ブレーキ機構51との接続、及びリターンロッド53とブレーキペダル34との接続を、それぞれ最短長さの連動用コネクティングケーブル48及びリターンロッド53によって無理なく行うことができる。これにより、製造コストを低減することができる。
【0048】
また、本実施形態の自動二輪車10の連動ブレーキ装置100によれば、ばね力調整ボルト60でディレイスプリング62のばね力を調整することによって、前輪ブレーキ30の作動開始時期及び後輪ブレーキ31の特性変化点を任意に設定可能で、また、ストッパピン64の突出長さを調節することによって、トルクアーム43の回動範囲を任意に設定可能で、さらに、ストッパボルト56の突出長さを調節することによって、イコライザ47の回動範囲が任意に設定可能であるため、ばね力調整ボルト60、ストッパピン64、及びストッパボルト56を調整するだけで、前輪ブレーキ30及び後輪ブレーキ31の最適な連動ブレーキ力を容易に調整することができる。
【0049】
また、本実施形態の自動二輪車10の連動ブレーキ装置100によれば、トルクアーム43及びイコライザ47の回動範囲は、ストッパピン64及びストッパボルト56によりそれぞれ制限されるため、ブレーキペダル34を大きく踏み込んだとしても、連動用コネクティングケーブル48に過大な力が作用することはない。これにより、連動用コネクティングケーブル48の伸びなどを防止するために、いたずらに連動用コネクティングケーブル48のサイズを大きくする必要がなくなるので、連動ブレーキ装置100の軽量化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態の自動二輪車10の連動ブレーキ装置100によれば、ばね力調整ボルト60及びストッパピン64は、ストッパピン64がばね力調整ボルト60の中心に長手方向に沿って形成される雌ねじに螺合される2重構造となっているため、連動ブレーキ装置100の構造をコンパクトにすることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、前輪ブレーキに機械式の前輪ブレーキを使用したが、これに代えて、油圧式の前輪ブレーキを使用してもよい。この場合、ブレーキレバーの操作によって油圧を発生させる油圧シリンダを操向ハンドルに設け、このブレーキレバーに、イコライザに一端が連結された連動用コネクティングケーブルの他端を連結する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る自動二輪車の連動ブレーキ装置の一実施形態が搭載された自動二輪車の右側面図である。
【図2】連動ブレーキ装置を説明するための左側面図である。
【図3】連動ブレーキ装置を説明するための左側面側の斜視図である。
【図4】前輪ブレーキ機構を説明するための要部拡大側面図である。
【図5】連動ブレーキ装置のブレーキペダルが踏み込み操作されていない状態を示す右側面図である。
【図6】連動ブレーキ装置のブレーキペダルの踏み込み操作が開始された状態を示す右側面図である。
【図7】連動ブレーキ装置の後輪ブレーキの反力によってトルクアームがディレイスプリングのばね力に抗して反時計方向に回動を開始した状態を示す右側面図である。
【図8】連動ブレーキ装置のトルクアームが更に回動してストッパピンに当接した状態を示す右側面図である。
【図9】連動ブレーキ装置のイコライザの上端部がストッパボルトに当接した状態を示す右側面図である。
【図10】連動ブレーキ装置の前輪ブレーキ及び後輪ブレーキのブレーキ特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
10 自動二輪車
20 スイングアーム
30 前輪ブレーキ
31 後輪ブレーキ
32 ブレーキアーム
33 ブレーキアーム
34 ブレーキペダル
38 前輪用ブレーキケーブル
39 ブレーキロッド
40 ブレーキパネル
41 スイングアームプレート
42 第1支持軸
43 トルクアーム
44 トルクリンク
45 戻しばね
46 第2支持軸
47 イコライザ
48 連動用コネクティングケーブル
51 前輪ブレーキ機構
52 ケーブルステー
53 リターンロッド
55 ストッパボルトステー
56 ストッパボルト
57 ナット
59 クッション材
60 ばね力調整ボルト
61 ボルトステー
62 ディレイスプリング
63 ナット
64 ストッパピン
65 ナット
100 連動ブレーキ装置
WF 前輪
WR 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤアクスルを中心として回動するフローティング式のブレーキパネルと、
スイングアームに設けられる支持軸に回動可能に支持されるトルクアームと、
一端が前記ブレーキパネルに連結され他端が前記トルクアームに連結されるトルクリンクと、を備える自動二輪車の連動ブレーキ装置において、
前記トルクアームに設けられる支持軸に回動可能に支持されるイコライザと、
前記イコライザの一端と前輪にブレーキ力を作用させる前輪ブレーキ機構とを連結する連動用コネクティングケーブルと、
前記イコライザの他端とブレーキペダルとを連結するリターンロッドと、を更に備えることを特徴とする自動二輪車の連動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記イコライザは、前記自動二輪車の側面視において、前記スイングアームと重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の連動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記イコライザは、その長手方向が前記自動二輪車の上下方向に沿って配設され、前記イコライザの上端部に前記連動用コネクティングケーブルが連結されると共に、下端部に前記リターンロッドが連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車の連動ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−179257(P2009−179257A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21738(P2008−21738)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】