説明

自動分析装置

【課題】検体ラックの搬送時間を短くし、ラック搬送を効率良く行うこと。
【解決手段】検体搬送部44のレーン数より多い数のレーンからなり、搬送方向と直交する方向にシフトする橋渡し用レーン46aを有するレーンシフト部46を備え、分析の優先度が高い検体を保有する後続の緊急用検体ラックを先に搬送したい場合に、レーンシフト部46のシフト動作によって、橋渡し用レーン46aに存在する先行の検体ラック41を搬送ラインから一時退避させて、後続の緊急用検体ラックを先に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学分析等の分析を自動で行う自動分析装置が広く知られている。自動分析装置は、検体供給部、分析部、データ処理部を有している。検体供給部は、検体容器を搭載した検体ラックを逐次供給するものである。この検体容器は、検体を収容している。分析部は、反応槽および試薬保冷庫を有している。反応槽は、内部にキュベットホイールと測定光学系を備え、試薬保冷庫には、検体と反応する試薬を収容した試薬ボトルが収納してある。また、キュベットホイールには、キュベット(反応容器)が収容してあり、試薬ボトルから試薬を分注する一方、検体容器から検体を分注する。そして、測定光学系を用いてキュベットにおいて反応させた検液(試薬と検体とからなる混合液)の吸光度を測定する。そして、測定した吸光度からデータ処理部が分析結果を取得する。そして、検体を分注する場合には、搬送ライン上に検体容器を搭載した検体ラックを停止させて、検体容器内の検体を分析部へ分注していた(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−26882号公報
【特許文献2】特開平11−316238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、搬送ライン上に検体ラックを停止させたまま検体の分注を行うので、たとえば後から緊急に分析を要する検体や再検査を要する検体が発生した場合、この緊急用の検体を搭載した検体ラック(緊急用検体ラック)や再検査の検体を搭載した検体ラック(再検用検体ラック)が、先行する検体ラックの分注作業が終了するまで搬送ライン上で待たされることがあった。
【0005】
そこで、分析部に分注処理エリアを設け、検体ラックを搬送ラインからこの分注処理エリアに引き込んで分注作業を行い、後続の検体ラックを搬送ラインで搬送して他の分析部で分注を行うものもあったが(たとえば特許文献2)、この場合には、検体ラックを全て分注エリアに引き込んで分注を行った後、再び搬送ラインに戻すので、検体ラックの搬送に時間がかかるという問題があった。
【0006】
また、搬送ラインを複数持たせ、緊急用検体ラックや再検用検体ラックを通常の検査用の検体ラックの搬送ラインとは別の搬送ラインで搬送して、ラック搬送の効率化を図るものもあるが、分析装置自体が大型化してしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分析の優先度が高い検体を保有する後続の緊急用検体ラックを先に搬送したい場合に、先行の検体ラックを搬送ラインから一時退避させて、後続の緊急用検体ラックを先に搬送することで、検体ラックの搬送時間を短くし、ラック搬送を効率良く行うことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、検体と試薬とを反応させた検液を分析する分析機を複数並設し、前記検体を保有する検体ラックを、主レーンを介して各分析機の吸引位置に搬送する自動分析装置において、前記主レーンの途中に設けられ、前記主レーンの搬送方向と直交する方向にシフトする少なくとも2本の橋渡し用レーンを有するレーンシフト部と、前記レーンシフト部を前記搬送方向と直交する方向にシフトし、前記橋渡し用レーンのうちの所望の橋渡し用レーンが前記主レーンと組み合わされて前記検体ラックの搬送ラインを形成するように駆動するレーン駆動部と、前記搬送ラインの橋渡し用レーンに検体ラックが存在し、かつ分析の優先度が高い検体を保有する緊急用検体ラックを前記搬送ラインに搬送する場合、前記橋渡し用レーンに存在する検体ラックを前記搬送ラインから退避し、また他方の橋渡し用レーンによって前記緊急用検体ラックを前記主レーンに橋渡すように、前記レーン駆動部を制御する移送制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2にかかる自動分析装置は、上記発明において、前記移送制御部は、前記緊急用検体ラックを前記主レーンに橋渡し後に、前記退避した他の検体ラックを前記搬送ラインに戻すように、前記レーン駆動部を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3にかかる自動分析装置は、上記発明において、前記レーンシフト部は、前記搬送ラインに設定される分析機の吸引位置に設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4にかかる自動分析装置は、上記発明において、前記レーンシフト部は、前記主レーンの本数に対して少なくとも1本多い橋渡し用レーンを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5にかかる自動分析装置は、検査されるべき検液を保持する検体ラックを、複数列設された分析機のうちの所定の分析機位置へ搬送レーンにより搬送する自動分析装置において、前記搬送レーンの途中に設けられ、前記搬送レーンの搬送方向と交差する方向にシフトする複数の橋渡し用レーンを有したレーンシフト部と、前記レーンシフト部を駆動し、前記複数の橋渡し用レーンのうちの所望の橋渡し用レーンを前記搬送レーンと組み合わせて前記検体ラックの搬送ラインを形成させるレーン駆動部と、分析の優先度が高い緊急用検体ラックを搬送する際には、先行して搬送されている前記検体ラックを前記橋渡し用レーンのシフトにより一時的に前記搬送ライン外へ退避させ、前記橋渡し用レーンとは異なる橋渡し用レーンを前記搬送ライン上に位置させるよう前記レーン駆動部を制御する移送制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6にかかる自動分析装置は、上記発明において、前記複数の橋渡し用レーンは、各々が前記搬送レーンと平行に並置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる自動分析装置は、検体ラックを搬送する主レーンの途中に、前記主レーンの搬送方向と直交する方向にシフトする少なくとも2本の橋渡し用レーンを有するレーンシフト部を設け、搬送ラインの橋渡し用レーンに検体ラックが存在し、かつ分析の優先度が高い検体を保有する緊急用検体ラックを前記搬送ラインに搬送する場合、前記橋渡し用レーンに存在する検体ラックを前記搬送ラインから退避し、また他方の橋渡し用レーンによって前記緊急用検体ラックを前記主レーンに橋渡すように、レーンシフト部をシフトすることで、後続の検体ラックを先に搬送することができ、これにより検体ラックの搬送時間を短くし、ラック搬送を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる自動分析装置、発注管理システムおよび発注管理方法を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
本発明にかかる自動分析装置は、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置に適用可能であるが、ここでは、臨床検査等に用いられる生化学分析装置を例に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1〜図6を参照し、実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を説明する。図1は本発明にかかる自動分析装置の概略構成を示す構成図、図2は本発明にかかる自動分析装置の構成を示す正面図、図3は図2に示す分析機の拡大平面図であり、図4は、図2に示す検体搬送部およびレーンシフト部の構成を示す拡大平面図である。
【0018】
自動分析装置1は、図1に示すように、複数の分析機1A〜1C、検体供給部である検体供給ユニット4、データ処理部7を有している。この実施の形態にかかる自動分析装置1は、図2に示すように3つの分析機1A〜1Cを並設したものである。各分析機1A〜1Cは、それぞれ試薬格納部2および反応部3を備えている。なお、図3では、代表して1つの分析機1Bを拡大して示している。
【0019】
図3に示すように、試薬格納部2は、円形状のテーブル21を有している。テーブル21は、中心21aの周りに回転可能に設けてあり、駆動手段(図示せず)によって回転される。このテーブル21には、試薬を収容された試薬容器22が周方向に複数保持してある。試薬容器22は、テーブル21の回転に伴って中心21aの周りに移動する。また、試薬格納部2は、テーブル21の周囲を覆うケース(図示せず)を有し、当該ケース内を所定の温度に冷却することで試薬容器22内の試薬を冷却保存する。この試薬格納部2は、第一試薬と第二試薬とをそれぞれ格納するため、第一試薬格納部2Aと第二試薬格納部2Bとを有している。第一試薬格納部2Aは後述する反応部3の容器保持部31内に配置してあり、第二試薬格納部2Bは反応部3の容器保持部31外に配置してある。なお、試薬容器22には、収納してある試薬の種類,量,ロット番号などの諸情報を有するバーコードラベルが貼付してある。一方、試薬格納部2(1A,2B)には、試薬容器22のバーコードを読み取るバーコードリーダ(図示せず)が設けてある。
【0020】
ここで、試薬容器22は、平面視で扇形状の外形を呈し、この扇形状を上下方向に連ねた合成樹脂製の容器であり、その上面に開口を有している。試薬容器22の開口は、未使用時に栓で封止してあり、試薬格納部2に収容する際には栓が外される。
【0021】
反応部3は、筒状の容器保持部(キュベットホイール)31を有している。容器保持部31は、中心31aの周りに回転可能に設けてあり、駆動手段(図示せず)によって回転される。容器保持部31は、その周方向に沿って複数の凹部(図示せず)を有している。各凹部には、試薬と検体とを混合する反応容器(キュベット)32がそれぞれ保持してある。容器保持部31は、周方向で隣接する各凹部の間に遮光部材(図示せず)を有し、隣接する反応容器32の間を遮光してある。さらに、容器保持部31は、径方向に貫通する開口(図示せず)を各凹部に設けてあり、当該開口を介して反応容器32を表出してある。この反応部3は、容器保持部31の周囲を覆うケース(図示せず)を有し、当該ケース内を恒温槽として所定の温度(例えば37℃)に保温することで反応容器32内の試薬と検体とが反応した反応液を保温する。
【0022】
ここで、反応容器32は、上部が開口した有底の四角筒状の容器であり、後述する分析光に含まれる光の80%以上を透過する素材(例えば耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレンなどの合成樹脂)で形成してある。そして、反応容器32は、その周壁下部が分析光を透過させる測光領域として用いられる。この測光領域は、周壁間によって反応液の光学的特性を測定する光が透過する方向における反応液の厚みを規定している。
【0023】
また、反応部3には、分析光学系33が設けてある。分析光学系33は、光源331と分光部332と測光センサ333とで構成してある。光源331は、反応容器32内の反応液を分析するための分析光(例えば340〜800nm)を出射する。この分析光は、反応部3において容器保持部31の開口を通過し、反応容器32の測光領域にある反応液を透過する。分光部332は、光源331からの出射光の光軸上に位置し、反応液を透過した分析光を測光センサ333に向けて分光する。測光センサ333は、分光部332で分光された分析光(平行光)を測光するものである。
【0024】
なお、図には明示しないが、反応部3には、攪拌部および反応容器用洗浄部が設けてある。攪拌部は、反応容器32内の試薬と検体とを混合させるためのものであり、反応容器32に攪拌棒を挿入するものや、超音波を用いた非接触のものがある。攪拌棒を用いる場合には、当該攪拌棒を洗浄する攪拌棒用洗浄部を要する。反応容器用洗浄部は、反応容器32内を洗浄するためのものであり、例えば反応容器32内の反応液を吸引して排出し、その後当該反応容器32に洗浄液を繰り返し注入して排出し、さらにその後当該反応容器32内を乾燥させて拭き取る。
【0025】
ところで、反応部3の近傍には、試薬分注部5が設けてある。ここでの試薬分注部5は、隣の分析機1C側の反応部3の近傍に設けた第一試薬分注部5Aと、第二試薬格納部2Bと反応部3との間に設けた第二試薬分注部5Bとがある。この試薬分注部5は、アーム51とプローブ52とを有している。アーム51は、垂直方向に立設した中心軸51aの上端に基端部が取り付けてあって水平方向に延在して設けてある。このアーム51は、駆動手段53の駆動による中心軸51aの回転によって当該中心軸51aの周りに回転する。アーム51は、回転によって先端部が試薬格納部2の所定位置や、反応部3の所定位置に移動する。また、アーム51は、駆動手段53の駆動による中心軸51aの上下移動によって上下方向に移動する。プローブ52は、試薬を分注するものであり、先端を下方に向けてアーム51の先端部に取り付けてある。すなわち、試薬分注部5は、アーム51の先端部の位置移動および上下移動によってプローブ52を移動させ、当該プローブ52によって試薬格納部2にある試薬容器22から試薬を吸引し、当該試薬を反応部3の反応容器32に注入する。
【0026】
なお、試薬格納部2の所定位置とは、図には明示しないが試薬格納部2のケースの上面に設けた開口孔の位置である。この試薬格納部2のケースの開口孔には、試薬格納部2のテーブル21の回転を止めた状態において試薬容器22の開口の位置が一致する。よって、アーム51の先端部が試薬格納部2の所定位置に移動した場合には、試薬格納部2のケースの開口孔を通して試薬容器22の開口の位置にプローブ52があり、当該プローブ52によって試薬容器22から試薬を吸引できる。また、反応部3の所定位置とは、図には明示しないが反応部3のケースの上面に設けた開口孔の位置である。この反応部3のケースの開口孔には、反応部3の容器保持部31の回転を止めた状態において反応容器32の開口の位置が一致する。よって、アーム51の先端部が反応部3の所定位置に移動した場合には、反応部3のケースの開口孔を通して反応容器32の開口の位置にプローブ52があり、当該プローブ52によって反応容器32に試薬を注入できる。さらに、試薬分注部5によってプローブ52が移動する別の所定位置として、洗浄位置がある。この洗浄位置には、図には明示しないがプローブ52を洗浄するために洗浄液の吸引と排出とを行う洗浄部が設けてある。
【0027】
また、反応部3と後述する検体供給ユニット4(検体搬送部44)との間には、検体分注部6が設けてある。この検体分注部6は、アーム61とプローブ62とを有している。アーム61は、垂直方向に立設した中心軸61aの上端に基端部が取り付けてあって水平方向に延在して設けてある。このアーム61は、駆動手段63の駆動による中心軸61aの回転によって当該中心軸61aの周りに回転する。アーム61は、回転によって先端部が反応部3の所定位置や、検体搬送部44の所定位置に移動する。また、アーム61は、駆動手段63の駆動による中心軸61aの上下移動によって上下方向に移動する。プローブ62は、検体を分注するものであり、先端を下方に向けてアーム61の先端部に取り付けてある。すなわち、検体分注部6は、アーム61の先端部の位置移動および上下移動によってプローブ62を移動させ、当該プローブ62によって検体搬送部44にある検体容器(たとえば、採血管)42から検体を吸引し、当該検体を反応部3の反応容器32に注入する。
【0028】
なお、検体搬送部44の所定位置とは、図には明示しないが検体搬送部44において検体ラック41の搬送を停止した状態で当該検体ラック41にある所定の検体容器42の開口の位置である。よって、アーム61の先端部が検体供給ユニット4の所定位置に移動した場合には、所定の検体容器42の開口の位置にプローブ62があり、当該プローブ62によって検体容器42から検体を吸引できる。また、反応部3の所定位置とは、上記と同様であって、アーム61の先端部が反応部3の所定位置に移動した場合に、反応部3のケースの開口孔を通して反応容器32の開口の位置にプローブ62があり、当該プローブ62によって反応容器32に検体を注入できる。さらに、検体分注部6によってプローブ62が移動する別の所定位置として、洗浄位置がある。この洗浄位置には、図には明示しないがプローブ62を洗浄するために洗浄液の吸引と排出とを行う洗浄部が設けてある。
【0029】
自動分析装置1は、各分析機1A〜1Cに対して検体容器42を搭載した検体ラック41を逐次供給する検体供給ユニット4を備えている。検体ラック41は、たとえば10本の検体容器42が搭載可能であり、その側面には、検体ラックを識別するバーコードラベル(図示せず)が貼付してある。このバーコードラベルは、検体ラック41が緊急に検査を要する緊急用の検体を搭載した緊急用検体ラックか、通常に検査を行う通常用の検体を搭載した通常検査用検体ラックかの表示や検体に関する情報を表示している。検体供給ユニット4は、検体載置部43と検体搬送部44と検体回収部45とを有している。検体載置部43は、例えば搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント43aを複数備えたベルトコンベアなどからなり、載置された検体ラック41を検体搬送部44に搬送するためのものである。この実施の形態では、複数並設した分析機1A〜1Cの並設方向の一端(分析機1A側の一端)に配置してある。検体載置部43は、複数の検体ラック41を載置しており、当該検体ラック41を1つずつ検体搬送部44に送り出す。また、検査終了後再検査が必要と判断され検体搬送部44から戻されてきた検体ラック41を受け取る。
【0030】
検体搬送部44は、各分析機1A〜1Cに対応して設けられた搬送レーンとしての主レーンである。この検体搬送部44は、各分析機1A〜1Cの並設方向に沿って連続して配置した、例えばベルトコンベア44aなどからなり、ベルトコンベア44a上に置いた検体ラック41を各分析機1A〜1Cの並設方向に搬送する。なお、検体ラック41は、複数の検体容器42が搬送方向に沿って並んだ状態で、検体搬送部44に置かれる。この検体搬送部44は、ベルトコンベア44aを2列設けて搬送ラインを構成し、一方が検体載置部43から検体ラック41を受け取って各分析機1A〜1Cに送って検体回収部45に収納し、他方が再検査が必要な検体ラック41を検体回収部45から検体載置部43に戻すものである。
【0031】
検体回収部45は、例えば搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント45aを複数備えたベルトコンベアなどからなり、載置された検体ラック41を一方の検体搬送部44から回収し、また回収した検体ラック41のうち、再検査が必要と判断されたラックを他方の検体搬送部44に搬送するためのものである。この実施の形態では、複数並設した分析機1A〜1Cの並設方向の一端(分析機1C側の一端)に配置してある。検体回収部45は、検体分注部6で分注の終了した検体ラック41を回収する。この過程で分析結果として再検査が必要と判断された検体ラックは検体搬送部44を経て検体載置部43へ送り返す。
【0032】
また、検体供給ユニット4は、レーンシフト部46とレーン駆動部47とを有している。レーンシフト部46は、検体搬送部44の途中に設けられ、レーンのシフトを行うためのものであり、検体搬送部44と組み合わされて検体ラック41の搬送ラインを形成している。この実施の形態では、レーンシフト部46は、この搬送ライン上における検体分注部6での分注位置とそれ以外の搬送ライン上とに複数設けられ、検体搬送部44によって搬送された検体ラック41をこの搬送ライン上から分析機1A〜1C方向に退避する機能を有する。レーンシフト部46は、図3、図4に示すように、たとえば検体搬送部44の途中に配設され、図中左右方向に回動可能な3本のベルトコンベアからなる橋渡し用レーン46aと、この橋渡し用レーン46a間および橋渡し用レーン46aの外側を仕切る仕切板46bとを有している。
【0033】
橋渡し用レーン46aは、たとえば検体ラック41よりも若干短く、すなわち搬送される検体ラック41が橋渡し用レーン46a上に位置する時に、この橋渡し用レーン46aの左右に配置する検体搬送部44のベルトコンベア44aに両端部が架かる長さに構成されている(図4参照)。そして、橋渡し用レーン46aをベルトコンベア44aと連動させて駆動および停止することで、検体ラック41を橋渡し用レーン46a上に搬送し、停止することが可能となる。また、レーンシフト部46は、図4の実線で示す初期状態、すなわち分析機の外側にシフトしている状態においては、分析機側および中央の橋渡し用レーン46aが検体搬送部44と組み合わされて駆動し、図4の点線で示す状態、すなわち分析機の内側にシフトしている状態においては、中央および分析機外側の橋渡し用レーン46aが検体搬送部44と組み合わされて駆動する。
【0034】
仕切板46bは、検体ラック41の倒伏などを防止するためのもので、橋渡し用レーン46aよりも長い、たとえば検体ラック41よりも若干長く構成され、検体ラック41の搬送方向に沿って立設している。
【0035】
レーン駆動部47は、たとえばエアシリンダ、ソレノイド、ラックオピニオンなどの駆動手段やガイドからなり、レーンシフト部46を図4中の矢印A,Bで示す分析機の内または外方向に移動させて、橋渡し用レーン46aのシフトを行うものである。したがって、上述した初期状態の時に、橋渡し用レーン46aの位置に検体ラック41が搬送されて停止し、レーン駆動部47の矢印A方向のシフト動作によって、レーンシフト部46が図4の実線位置から点線の分析機の内側に移動すると、中央および分析機外側の橋渡し用レーン46aが検体搬送部44と組み合わされて駆動する。また、分析機内側の橋渡し用レーン46aに位置する検体ラック41は、搬送ライン上から分析機内に退避することが可能となる。また、レーン駆動部47の矢印B方向のシフト動作によって、レーンシフト部46が図4の点線の分析機内から実線位置に移動すると、分析機側および中央の橋渡し用レーン46aが検体搬送部44と組み合わされて駆動し、分析機内側の橋渡し用レーン46aに位置する検体ラック41は、搬送ラインに戻り、この搬送ライン上での搬送が可能となる。
【0036】
また、検体供給ユニット4は、バーコードリーダ48とラック位置及び有無検出部49とを有している。バーコードリーダ48は、検体搬送部44の搬送方向手前側に配設してあり、検体供給位置に搬送する検体ラック41の情報を取得可能である。この検体ラック41の情報とは、上述したごとく検体ラックが緊急用検体ラックか通常検査用検体ラックかを識別するための情報である。
【0037】
ラック位置及び有無検出部49は、検体搬送部44の分析機側の所定位置に複数配設してあり、検体搬送部44によって搬送される各検体ラック41の位置を検出するとともに搬送ライン上の検体ラックの有無を検出している。この実施の形態では、たとえばラック位置及び有無検出部49をレーンシフト部46の近傍に配設して、レーンシフト部46に搬送される検体ラック41を検出可能にする。
【0038】
図5は、自動分析装置の制御系を示すブロック図である。図5に示すように、自動分析装置の制御系は、各分析機1A〜1Cの制御系と、検体供給ユニット4の制御系と、データ処理部7の制御系とから構成している。各分析機1A〜1Cの制御系においては、試薬格納部2、反応部3、試薬分注部5、試薬残量検出部12が分析制御部11に接続してあり、各部が分析制御部11によって統括的に制御される。また、試薬格納部2(2A,2B)に設けたバーコードリーダ(図示せず)で読み取った試薬容器22の諸情報は、分析制御部11内のメモリ(図示せず)に記憶される。また、分析制御部11に接続された試薬残量検出部12は、試薬格納部2に保持した各試薬容器22における試薬残量を検出する。試薬残量は、たとえば試薬容器22の諸情報と過去の試薬使用量とを比較して現在の試薬残量を算出することで検出できる。
【0039】
検体供給ユニット4の制御系では、検体載置部43、検体搬送部44、検体回収部45、レーンシフト部46、レーン駆動部47、バーコードリーダ48、ラック位置及び有無検出部49が移送制御部40に接続してあり、各部が移送制御部40によって統括的に制御される。すなわち、移送制御部40は、検体載置部43、検体搬送部44および検体回収部45の検体ラックの搬送制御において、検体載置部43が検体ラック41を1つずつ検体搬送部44に移送する制御を行い、検体搬送部44が検体ラック41を該当する分析機1A〜1Cの分注位置に搬送し、検体の分注後に検体回収部45に移送する制御を行い、検体回収部45が検体搬送部44から検体ラック41を回収する制御を行う。また、移送制御部40は、回収した検体ラック41を1つずつ検体搬送部44に移送する制御を行い、検体搬送部44が検体ラック41を検体載置部43に搬送する制御を行い、検体載置部43が検体搬送部44から検体ラック41を受け取る制御を行う。
【0040】
また、移送制御部40は、検体ラック41の搬送方向と直交する方向にレーンシフト部46をシフト可能に、レーン駆動部47を駆動制御する。すなわち、移送制御部40は、搬送ラインの橋渡し用レーン46aに検体ラック41が存在し、緊急の分析を要する検体を保有する緊急用ラックを搬送ラインに搬送する場合、分析機側の橋渡し用レーン46aに存在する検体ラック41を搬送ラインから退避し、また中央の橋渡し用レーン46aによって搬送ライン上の緊急用検体ラックを搬送方向後方の検体搬送部44に橋渡し可能にレーン駆動部47を駆動制御する。
【0041】
データ処理部7は、分析機1A〜1Cが取得した各種データを処理する部分である。データ処理部7は、入力部71と出力部72とを備えている。入力部71は、たとえばキーボードやマウスなどであり、検体数や分析項目などの各種情報を入力可能である。出力部72は、たとえばディスプレイパネルやプリンタなどであり、分析結果を含む分析内容や警報などの各種情報が出力可能である。たとえば、データ処理部7は、各分析機1A〜1Cで検出された試薬残量をもとに自動分析装置全体の試薬の残量を算出し、この算出結果を出力部72から出力することができる。
【0042】
次に、図6のフローチャートを参照して、自動分析装置の検体ラックの搬送動作を説明する。なお、検体の分析にあたっては、レーンシフト部46を図4の実線で示す初期状態の位置にセットしておくものとする。図6において、まず分析にあたって、移送制御部40の制御により、検体載置部43から検体ラック41を検体搬送部44に供給する(ステップS11)。この時に、バーコードリーダ48によって検体ラック41のバーコードを読み取り(ステップS12)、検体搬送部44がこの検体ラックをバーコード情報に応じてデータ処理部7の入力部71で特定された分析ユニットに搬送する(ステップS13)。
【0043】
次に、移送制御部40は、バーコードを読み込んだ検体ラック41が緊急用検体ラックか通常検査用検体ラックか判断する(ステップS14)。ここで、上記検体ラック41が通常検査用検体ラックの場合(ステップS14:No)、ラック位置及び有無検出部49で検体ラック41の位置及び有無検出を行い(ステップS16)、検体ラック41を特定の分析機の吸引位置、すなわち初期状態のレーンシフト部46の橋渡し用レーン46a上に停止させて(ステップS17)、検体分注部6による検体ラック41に搭載された検体の分注を可能にする。そして、上記検体の分注が終了すると(ステップS18:Yes)、上記検体ラック41を搬送ラインに搬送させ、検体回収部45に回収させる(ステップS19)。
【0044】
また、ステップS14において、バーコードを読み込んだ検体ラック41が緊急用検体ラックの場合(ステップS14:Yes)、ラック位置及び有無検出部49で検体ラック41の位置及び有無検出を行い(ステップS20)、搬送ラインのレーン上に他の検体ラックがあるかどうか判断する(ステップS21)。なお、ラック位置及び有無検出部49はレーンシフト部46の近傍に設けてあるので、ここではレーンシフト部46での検体ラック41の存在を判断することも可能である。
【0045】
ここで、搬送ラインのレーン上に他の検体ラックがない場合(ステップS21:No)、移送制御部40は、ステップS17で緊急用検体ラックを特定の分析機の吸引位置に停止させて、検体分注部6による分注動作を可能にする。また、搬送ラインのレーン上に他の検体ラックがある場合(ステップS21:Yes)、この他の検体ラックを近傍のレーンシフト部46の橋渡し用レーン46a上に停止させる(ステップS22)。そして、このレーンシフト部46を初期状態(図4の実線)の位置から分析機の内側にシフトしている状態(図4の点線)の位置にシフトさせる(ステップS23)。これにより、検体ラックを分析機内に退避することができ、中央および分析機外側の橋渡し用レーン46aが検体搬送部44と組み合わされて駆動可能となる。なお、自動分析装置による検体の分析においては、搬送ライン上に複数の検体ラックが存在することがあるので、緊急用検体を分注する特定の分析機の手前の搬送ラインに存在する全ての検体ラックに対して上記退避動作を行う。
【0046】
次に、緊急用検体ラックを特定の分析機の吸引位置、すなわちレーンシフト部46の橋渡し用レーン46a上に停止させて(ステップS24)、検体分注部6による緊急用検体ラックに搭載された検体の分注を可能にする。そして、上記検体の分注が終了すると(ステップS25:Yes)、上記緊急用検体ラックを搬送方向後方の検体搬送部44に橋渡して、搬送ラインに搬送させ、さらに検体回収部45に回収させる(ステップS26)。
【0047】
次に、移送制御部40は、搬送ライン上の全てのレーンシフト部46を初期状態にシフトし(ステップS27)、検体ラックの搬送ラインに搬送させて(ステップS28)、搬送中の検体ラックの位置及び有無をラック位置及び有無検出部49に検出させ(ステップS16)、特定の分析機における検体の分注および搬送を可能にする。
【0048】
このように、この実施の形態では、緊急に分析を行いたい検体を保有する緊急用検体ラックを搬送ラインに搬送する場合、レーンシフト部の橋渡しレーンに存在する検体ラックを搬送ラインから一時退避し、後続の緊急用検体ラックを先に搬送して、特定の分析機の吸引位置への停止、検体の分注を可能にするので、検体ラックの搬送時間を短くし、ラック搬送を効率良く行うことができる。
【0049】
また、この実施の形態では、レーンシフト部によって退避した検体ラックをシフトして迅速に搬送ラインに戻すように、レーン駆動部を制御するので、検体ラックを退避位置から直ちに特定の分析機の吸引位置へ搬送することができ、緊急用検体ラック以外の検体ラックに対しても、検体ラックの搬送時間を短くし、ラック搬送を効率良く行うことができる。
【0050】
なお、実施の形態では、検体搬送部(主レーン)を2本のレーンで構成したが、本発明はこれに限らず1本でも3本以上でも構わない。また、実施の形態では、橋渡し用レーンを主レーンの本数よりも1本多い、3本で構成したが、本発明はこれに限らず主レーンの本数よりも2本以上多い橋渡し用レーンを有するレーンシフト部を備える構成にすることも可能である。この場合には、一度にレーンシフト部で退避することができる検体ラックの数が増え、さらにラック搬送を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明にかかる自動分析装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明にかかる自動分析装置の構成を示す正面図である。
【図3】図2に示す分析機の拡大平面図である。
【図4】図2に示す検体搬送部およびレーンシフト部の構成を示す拡大平面図である。
【図5】本発明にかかる自動分析装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明にかかる自動分析装置の検体ラックの搬送動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 自動分析装置
1A〜1C 分析機
2 試薬格納部
3 反応部
4 検体供給ユニット
5 試薬分注部
6 検体分注部
7 データ処理部
31 容器保持部
32 反応容器
33 分析光学系
40 移送制御部
41 検体ラック
42 検体容器
43 検体載置部
44 検体搬送部
45 検体回収部
46 レーンシフト部
46a 橋渡し用レーン
47 レーン駆動部
48 バーコードリーダ
49 ラック位置及び有無検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを反応させた検液を分析する分析機を複数並設し、前記検体を保有する検体ラックを、主レーンを介して各分析機の吸引位置に搬送する自動分析装置において、
前記主レーンの途中に設けられ、前記主レーンの搬送方向と直交する方向にシフトする少なくとも2本の橋渡し用レーンを有するレーンシフト部と、
前記レーンシフト部を前記搬送方向と直交する方向にシフトし、前記橋渡し用レーンのうちの所望の橋渡し用レーンが前記主レーンと組み合わされて前記検体ラックの搬送ラインを形成するように駆動するレーン駆動部と、
前記搬送ラインの橋渡し用レーンに検体ラックが存在し、かつ分析の優先度が高い検体を保有する緊急用検体ラックを前記搬送ラインに搬送する場合、前記橋渡し用レーンに存在する検体ラックを前記搬送ラインから退避し、また他方の橋渡し用レーンによって前記緊急用検体ラックを前記主レーンに橋渡すように、前記レーン駆動部を制御する移送制御部と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記移送制御部は、前記緊急用検体ラックを前記主レーンに橋渡し後に、前記退避した他の検体ラックを前記搬送ラインに戻すように、前記レーン駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記レーンシフト部は、前記搬送ラインに設定される分析機の吸引位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記レーンシフト部は、前記主レーンの本数に対して少なくとも1本多い橋渡し用レーンを有することを特徴とする請求項1または3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
検査されるべき検液を保持する検体ラックを、複数列設された分析機のうちの所定の分析機位置へ搬送レーンにより搬送する自動分析装置において、
前記搬送レーンの途中に設けられ、前記搬送レーンの搬送方向と交差する方向にシフトする複数の橋渡し用レーンを有したレーンシフト部と、
前記レーンシフト部を駆動し、前記複数の橋渡し用レーンのうちの所望の橋渡し用レーンを前記搬送レーンと組み合わせて前記検体ラックの搬送ラインを形成させるレーン駆動部と、
分析の優先度が高い緊急用検体ラックを搬送する際には、先行して搬送されている前記検体ラックを前記橋渡し用レーンのシフトにより一時的に前記搬送ライン外へ退避させ、前記橋渡し用レーンとは異なる橋渡し用レーンを前記搬送ライン上に位置させるよう前記レーン駆動部を制御する移送制御部と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
前記複数の橋渡し用レーンは、各々が前記搬送レーンと平行に並置されていることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−322287(P2007−322287A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153919(P2006−153919)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】