説明

自動分注装置

【課題】 分析装置にサンプルを注入する分注装置において、サンプル間の相互汚染を防止し、自動的に分注することが可能でしかもコンパクトな機構により小型化し、正確でしかも信頼性が高く、生産性の良い分注装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 固定テーブルと移動テーブルを設け、分注手段を双方の上方に移動可能とし、固定テーブル上に振動、衝撃による相互汚染が起こる分析装置を搭載し、また移動テーブル上に分注に必要な部位を搭載することにより、分析装置を移動させることなくさらに、固定テーブル上で分注手段が動作している間に、移動テーブルを駆動させることにより分注時間を短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子解析やDNA分析装置に用いられる電気泳動槽へDNA等のサンプルを自動的に注入する分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手段を図6で説明する。電気泳動槽101は内部にゲル101aを有し、該ゲル101a上の複数の小穴101cに被分析体(例えばDNAサンプル)を注入し、電圧を印加することにより該被分析体をA方向へ泳動させ分析を行う周知の装置である。またゲル101aは、溶媒101bに浸されたサブマリン型と呼ばれるものである。オペレータ106は周知の吸入/吐出装置である先端にピペットチップ107が装着されたピペッタ105を用い、サンプルラック102に収納されたサンプル容器103内に充填されたサンプル104を吸入し、ゲル101aの複数の小穴101cへ注入する。その後電圧を印加し分析を開始する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の課題を図7により説明する。図7はピペッタ105により小穴101cへサンプル104を注入している状態の詳細図である。ピペットチップ107内のサンプル104をピペッタ105により小穴101cへ注入する際、既に小穴101cは溶媒101bで満たされており、サンプル104は該溶媒101bを押し出す様に充填される。この際、ピペッタ105の微細な動きや、電気泳動槽101が振動すると、溶媒101bがB方向へ流動し、小穴101cに充填されたサンプル104が隣接する小穴101dへ入り込む。その為小穴101cと小穴101dと同一のサンプルが注入されることとなり、正確な分析が行われることが妨げられる。その為オペレータ106は細心の注意を払わなければならず、多大な時間と注意力が必要で生産性が低下していた。本発明は上記した欠点を除き、正確なしかも信頼性の高い分注装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明の手段は装置上に固定テーブルと稼動テーブルの二つのテーブルを設け、さらに装置上方に設けた移動テーブルと直交する方向へ移動可能な分注手段を搭載した駆動手段を設け、該分注手段の稼動範囲を二つのテーブル上方へ移動可能とし、さらに固定テーブル上に電気泳動槽を設置することにより、該電気泳動槽を動かすこと無く分注を行う。
【0005】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1の分注装置であって駆動テーブル上に分注に必要なサンプル容器、チップラック、エジェクタを搭載することにより、固定テーブル上でポンプヘッドが電気泳動槽へ注入動作を行っている間に、独立して駆動テーブルを駆動させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は次のような効果を奏する。請求項1に記載された発明は、泳動槽は移動することが無いため、注入されたサンプルの小穴間での相互汚染が起こらず、さらに予め設定されたプログラムにより分注動作が行われ、オペーレータの手操作ミスや注入動作のバラツキが無くなると共に、自動的に分注が行われるため小穴間の相互汚染防止や、高精度な分注により高い生産性、信頼性向上など多大な効果をもたらすことが出来る。
【0007】
請求項2に記載された発明は、固定テーブル上でポンプヘッドが電気泳動槽への分注動作をしている間に駆動テーブルを稼動させることが可能となり、分注時間が短縮されると共に簡潔で小型、軽量化することが可能となり、安価な装置でしかも生産性の高い分注が可能であるという効果をもたらすことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
【実施例】
【0010】
図1は本発明における分注装置の構成を示したものであり、図2、図3、図4は動作を示した図である。
【0011】
図1は主要な分注装置1の構成を示す。分注装置1の上面2には駆動テーブル3、固定テーブル4が設けられている。駆動テーブル3はYモータ3b、ボールネジ3c及び案内手段3dによりY1及びY2方向に駆動可能な構成となっており、またその上にはサンプル8aが充填された複数のサンプル容器8と、複数のピペットチップ9aを搭載したチップラック9と、複数の櫛歯上の切り欠き穴10aを有するエジェクタ10及びエジェクタ10の直下に廃棄箱11が搭載されている。一方固定テーブル4上には溶媒液14の中に複数の小穴13aを有するゲル13が収納された電気泳動槽12が設置されている。さらに装置の上面2の上方にはXモータ5b、ボールネジ5C、案内手段6dによりX1、X2方向に摺動可能にXテーブル5aを係合する構成とされるX駆動装置5が設けられ、該Xテーブル5aにはZ1,Z2方向にZモータ6b、ボールネジ6c、案内手段6dにより摺動可能に係合されたZテーブル6aを有した構成をなすZ駆動装置6が設けられている。またZテーブル6aには下方にピペットチップ9aを装着するための複数のピペット継手7aを有し、特開2004−28968で示される周知の分注手段であるポンプヘッド7が設けられている。またXモータ5b、Yモータ3b、Zモータ6bは、予め設定されたプログラム15aが内蔵されたコントローラ15と接続されている。
【0012】
次に動作の説明を示す。図1は分注装置1の初期状態を示しポンプヘッド7はプログラム15aに基づくコントローラ15からの信号により、Z駆動装置6を介しZ2方向へ上昇され、さらにX駆動装置5によりX2方向へ移動せしめられ、その位置はチップ継手7aがエジェクタ10の切り欠き穴10aと合致したものとなっている。このときチップ継手7aにはピペットチップ9aが未装着の状態である。
【0013】
次の動作を図2で示す。プログラム15aに基づくコントローラ15からの信号により、駆動テーブル3はY2方向へ移動し、ポンプヘッド7のチップ継手7aとチップラック9に収納されたピペットチップ9aが合致した位置で停止する。その後コントローラ15からの信号によりポンプヘッド7はZ駆動装置6、Zテーブル6aを介しZ1方向へ下降しチップ継手7aにピペットチップ9aを挿入し装着し、さらにZ2方向へ上昇する。
【0014】
次の動作を図3で示す。前記説明した動作の後、コントローラ15からの信号により、移動テーブル3はさらにY2方向へ移動し、ポンプヘッド7のチップ継手7aに装着されたピペットチップ9aと、駆動テーブル3上のサンプル容器8が合致した位置で停止する。その後コントローラ15からの信号により、ポンプヘッド7はZ駆動装置6、Zテーブル6aによりZ1方向へ下降せしめられ、サンプル容器8内のサンプル8aを吸入可能な位置で停止する。その後ポンプヘッド7によりサンプル8aはピペットチップ9a内に吸入された後、ポンプヘッド7はZ2方向へ上昇する。
【0015】
次の動作を図4で示す。前記説明した動作の後、プログラム15aに基づくコントローラ15からの信号により、ポンプヘッド7はX駆動装置5、Xテーブル5aによりX1方向へ移動し、固定テーブル4上の電気泳動槽12内のゲル13にあけられた小穴13aと、ポンプヘッド7に装着されたピペットチップ9aの相対位置が合致した位置で停止する。その後ポンプヘッド7はZ駆動装置6、Zテーブル6aを介しZ1方向へ下降しピペットチップ9aが小穴13a内に挿入された位置で停止する。その後ポンプヘッド7は既にピペットチップ9a内に吸入されていたサンプル8aを吐出し、Z2方向へ上昇する。その際駆動テーブル3はY1方向へ移動し、図1で示した位置に停止する。
【0016】
次の動作を図1で示す。前記説明した動作の後、コントローラ15からの信号によりポンプヘッド7は,X駆動装置5、Xテーブル5aによりX2方向へ移動せしめられ、エジェクタ7の上方で停止する。その後ポンプヘッド7はZ駆動装置6、Zテーブル6aによりZ1方向に下降し、装着していたピペットチップ9aをエジェクタ10の切り欠き穴10aに引っ掛ける。その後ポンプヘッド7はZ2方向へ上昇することにより、ピペットチップ9aをピペット継手7aより脱却させ廃棄箱10内に落下させ、初期位置に復帰し一連の分注動作は図5のフロー図で示されるプログラム15aに基づき、動作を終了する。
【0017】
以上実施例として複数のピペットヘッドを有するポンプヘッドにて説明したが、吸入及び吐出手段として単一ピペットを有するポンプヘッドを用いても同様の効果を得られる。
【0018】
また実施例として駆動テーブル上にサンプル容器、チップラック、エジェクタの順番で配置して説明したが、順不動に配置し動作させても同様の効果を得られる。
【0019】
また実施例として相互汚染を防止する目的として電気泳動槽を用いて説明したが、同様の小穴を有する容器を用いても同様の効果を得られる。
【0020】
本実施の形態に係わる分注装置によれば、電気泳動槽内のゲルにあけられた小穴が、移動による衝撃や振動により隣接する小穴へサンプルの流入が無く、相互汚染の無い分析が可能となる。
【0021】
さらにこのような分注装置は、固定テーブル上でポンプヘッドが動作している間に、駆動テーブルを動作させ重複動作をさせることが可能で、分注時間が短縮でき、生産性を向上させるという利点がある。
【0022】
さらにこのような分注装置は、固定テーブルと移動テーブル上に必要部位を分散させ搭載させることにより、装置全体を簡易化及び小型化することが出来、装置の軽量化や駆動動力の節減すなわち、省エネとなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本発明における分注装置の機構構成を示す要部斜視図である。
【図2】 本発明における分注装置の動作を示す要部斜視図である。
【図3】 本発明における分注装置の動作を示す要部斜視図である。
【図4】 本発明における分注装置の動作を示すフロー図である。
【図5】 本発明における分注装置の動作を示す要部斜視図である。
【図6】 従来の技術を示す要部斜視図である。
【図7】 従来の技術を示す要部詳細斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 分注装置
2 上面
3 駆動テーブル
3b Yモータ
3c ボールネジ
3d 案内手段
4 固定テーブル
5 X駆動装置
5a Xテーブル
5b Xモータ
5c ボールネジ
5d 案内手段
6 Z駆動装置
6a Zテーブル
6b Xモータ
6c ボールネジ
6d 案内手段
7 ポンプヘッド
7a チップ継手
8 サンプル容器
8a サンプル
9 チップラック
9a ピペットチップ
10 エジェクタ
10a 切り欠き穴
11 廃棄箱
12 電気泳動槽
13 ゲル
13a 小穴
14 溶媒液
15 コントローラ
15a プログラム
101 電気泳動槽
101a ゲル
101b 溶媒液
101c 小穴
101d 小穴
102 サンプルラック
103 サンプル容器
104 サンプル
105 ピペッタ
106 オペレータ
107 ピペットチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非分析体を分析機に注入する自動分注装置において、固定テーブルと移動テーブルを設け、双方の上方に該移動テーブルと直交方向へ移動可能な分注手段を搭載した駆動手段を設け、該固定テーブル上に分析機を設置し、分注に必要な部位を該移動テーブル上に設置すると共に、予め設定した所定のプログラムにより自動で分注させる分注装置。
【請求項2】
請求項1の分注装置であって、固定テーブル上で分注手段を動作させている間に、移動テーブルを重複動作させる分注装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−201144(P2006−201144A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38353(P2005−38353)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(505032137)インプロバイズ有限会社 (2)
【出願人】(000002244)蛇の目ミシン工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】