自動制動装置
【課題】運転者が操作入力を怠った場合でも自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることのできる自動制動装置を低コストで実現する。
【解決手段】自動制動装置に、自車両の障害物への衝突の可能性を判断する衝突可能性判断手段と、運転者の操作入力を検出する操作入力検出手段4と、障害物と自車両の左右方向の位置関係を検出する位置関係検出手段2と、位置関係検出手段2の検出結果に基づいて自車両の回避可能方向を判断する回避可能方向判断手段と、衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断され、かつ操作入力検出手段4により運転者の操作入力が検出されていない場合に、回避可能方向への自車両の回頭性が高まるように、各車輪のブレーキ力に差を生じさせてブレーキ20を自動作動させるブレーキ力制御手段と、を備える。
【解決手段】自動制動装置に、自車両の障害物への衝突の可能性を判断する衝突可能性判断手段と、運転者の操作入力を検出する操作入力検出手段4と、障害物と自車両の左右方向の位置関係を検出する位置関係検出手段2と、位置関係検出手段2の検出結果に基づいて自車両の回避可能方向を判断する回避可能方向判断手段と、衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断され、かつ操作入力検出手段4により運転者の操作入力が検出されていない場合に、回避可能方向への自車両の回頭性が高まるように、各車輪のブレーキ力に差を生じさせてブレーキ20を自動作動させるブレーキ力制御手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキを自動作動させる自動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、運転者のステアリング操作を検知し、その操作方向への車両の回頭性が高まるように車輪毎にブレーキ圧を制御して、車両の制動性を維持しつつ、衝突回避のためのステアリング操作に対する車両の回頭性を高めることができるように構成された自動ブレーキ制御装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、障害物との衝突を回避する自動制動装置に加えて自動操舵装置を備え、障害物との衝突可能性が生じたときに自動操舵装置を作動させて自車の進行方向を変更し、障害物との衝突を回避する可能性を高めることができるように構成された車両の接触防止装置が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−21500号公報(図6及び段落番号「0009」参照)
【特許文献2】特開平5−58319号公報(図7及び段落番号「0030」参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動ブレーキ制御装置では、運転者によってステアリングが操作された場合に、そのステアリングの操作方向への車両の回頭性が高まるように車輪毎のブレーキ圧の制御を行うように構成されている。そのため、運転者がわき見運転や居眠り等をしてステアリング操作を怠った場合には、車輪毎のブレーキ圧の制御による自車と障害物との衝突の回避を行うことができない。
【0006】
また、特許文献2の車両の接触防止装置では、運転者がわき見運転や居眠り等をして、ステアリング操作を怠った場合であっても、自動操舵装置を作動させることによって自車と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができるが、自動操舵シリンダ(特許文献2の図7の56)、切換バルブ(特許文献2の図7の60)、自動操舵バルブ(特許文献2の図7の61)等を装備して自動操舵装置を構成する必要があり、自動操舵装置が高額で、自車と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができる反面、接触防止装置の製造コストが高騰するといった問題がある。
本発明は、運転者が操作入力を怠った場合でも自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることのできる自動制動装置を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、自動制動装置を次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突の可能性を判断する衝突可能性判断手段と、運転者の操作入力を検出する操作入力検出手段と、障害物と自車両の左右方向の位置関係を検出する位置関係検出手段と、前記位置関係検出手段の検出結果に基づいて自車両の回避可能方向を判断する回避可能方向判断手段と、前記衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断され、かつ前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出されていない場合に、前記回避可能方向への自車両の回頭性が高まるように、各車輪のブレーキ力に差を生じさせてブレーキを自動作動させるブレーキ力制御手段と、を備えて自動制動装置を構成する。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、障害物に衝突する可能性があると判断されると、運転者の操作入力がされていない場合であっても、ブレーキ力制御手段により回避可能方向へ自車両の回頭性を高めて、自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができる。その結果、例えば運転者がわき見運転や居眠り等をして操作入力を怠った場合であっても、自動的に自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができる。また、自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができるだけでなく、運転者に操舵による回避を促すことができ、運転者の操舵による回避方向への自車両の回避を補助できる。
【0009】
本発明の第1特徴によると、ブレーキ力制御手段によりブレーキ力に差を生じさせることにより比較的簡素な構造で自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができる。その結果、例えば自動操舵装置等によって自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができるように構成する場合に比べ、自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることのできる自動制動装置の構造を簡素化することができる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、運転者が操作入力を怠った場合でも自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることのできる自動制動装置を低コストで実現できる。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
前記操作入力検出手段の検出結果に基づいてブレーキ力の制御を行うことにより、車両の姿勢制御を行う車両安定化制御装置を備え、
前記ブレーキ力制御手段よりも前記車両安定化制御装置が優先して作動するように、前記ブレーキ力制御手段を構成する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、ブレーキ力制御手段と車両安定化制御装置が重複して作動することを防止することができ、重複して作動する状況になった場合(例えばブレーキ力制御手段が作動している状態で車両安定化制御装置が作動する条件になった場合や車両安定化制御装置が作動している状態でブレーキ力制御手段が作動する条件になった場合)に、車両安定化制御装置の作動を優先することで、ブレーキ力制御手段を作動させて回頭性を高めることにより車両が却って不安定になることを防止でき、車両安定化制御装置によって車両の姿勢を安定させることができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、車両安定化制御装置の性能の低下を防止できる。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴又は第2特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段と、自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離よりも短くかつ前記制動回避距離よりも短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、を備え、
前記制動回避距離が前記操舵回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなると、前記ブレーキ力制御手段が作動しないように、前記ブレーキ力制御手段を構成する。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、自車両の障害物への衝突の制動による回避よりも自車両の障害物への衝突の操舵による回避が優位な相対速度で、ブレーキ力制御手段を作動させることができ、自車両と障害物との衝突を回避する可能性を更に高めることができる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、ブレーキ力制御手段を適切な時期に作動させることができる。
【0017】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第3特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
前記自動ブレーキ作動手段によりブレーキが自動作動している状態で、前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出された場合に、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動を解除するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0018】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、運転者の操作入力を尊重して、自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動を解除することができ、運転者の意思に反してブレーキが自動作動することを防止できる。
【0019】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、運転者の運転意思を尊重して運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔車両の制御装置の構成〕
図1に、本発明に係る自動制動装置を備えた車両のブロック図を示す。図1に示すように、車両に、カメラ1、レーダ2、ヨーレートセンサ3、操舵角センサ4、車速センサ5、横加速度センサ6、圧力センサ7等の検出機器類が実装され、これらの検出機器類がECU8に接続されている。
【0021】
カメラ1は、例えば車室内のルームミラーのステー等(図示せず)に配設されており、車両前方を撮影できるように構成されている。カメラ1によって撮影された映像は画像処理装置(図示せず)によって処理されて、ECU8において車両前方の障害物、車両が走行する走行レーンを区画する白線、ガードレール等を検出できるように構成されている。
【0022】
レーダ2は、車両前部の複数箇所に左右に並設されており、このレーダ2によって車両前方にレーザ光を投光し先行車等の障害物に当たって反射したレーザ光を受信して、自車両と障害物との実距離(以下車間距離Lと称す)、障害物の左右方向の位置及び障害物に対する自車両の相対速度を検出する。
【0023】
ヨーレートセンサ3は、車両の重心位置近傍に配設されており、車両に作用するヨーレートを検出する。操舵角センサ4は、ステアリングハンドルの操舵軸(図示せず)に組み付けられており、基準位置からの操舵軸の回転角を測定することにより左右の前輪の操舵角を算出して、運転者のステアリングハンドルの操作量(操舵操作量)及びステアリングハンドルの操作速度(操舵操作速度)を検出する。
【0024】
車速センサ5及び横方向加速度センサ6は、車両に組み付けられており、車速及び車両の横方向に作用する加速度をそれぞれ検出する。
【0025】
ECU8には、表示ユニット9、警報装置10、ブレーキ制御ユニット11、ストップランプが接続されている。表示ユニット9及び警報装置10は、車室内に装備されており、ECU8からの出力に基づいて運転者に視覚的及び聴覚的な情報を提供する。
【0026】
ブレーキ制御ユニット11は、ECU8からの出力に基づいて後述する各車輪のブレーキ装置13を構成する切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29に電力を供給し、圧力センサ7からの検出圧力をフィードバックしながら各車輪のブレーキ圧の増減を行って、各車輪にブレーキ20を作動させる。ブレーキ制御ユニット11によってブレーキ20が作動すると車両の後部に設けたストップランプ12が点灯する。
【0027】
上述した各検出機器類はECU8に接続されており、各検出機器類からの検出結果に基づいてECU8から警報装置10、ブレーキ制御ユニット11等に出力を行うことで、後述する自動ブレーキ作動手段及びブレーキ力制御手段を実現できる。
【0028】
〔ブレーキ装置の構成〕
図2に基づいてこの車両に装備されたブレーキ装置13について説明する。図2に示すように、ブレーキ装置13は、マスタシリンダ21、油圧ポンプ24、アキュムレータ26、オイルタンク25、切換バルブ27、増圧バルブ28、減圧バルブ29等を備えて構成されている。マスタシリンダ21は、マスタバック22を介してブレーキペダル23に連動連結されており、ブレーキペダル23の踏込力に応じたブレーキ圧をマスタバック22により増大させて発生させる。
【0029】
油圧ポンプ24は、モータ駆動式に構成されており、増圧バルブ28に接続されている。油圧ポンプ24の吸込側及び吐出側には、オイルタンク25及びアキュムレータ26がそれぞれ接続されており、オイルタンク25から吸い込んで昇圧した圧油をアキュムレータ26に貯留して一定圧力に保持できるように構成されている。
【0030】
切換バルブ27は、マスタシリンダ21と各ブレーキ20を連通する油路に接続されており、切換バルブ27を開位置に操作するとブレーキペダル23の踏込力に応じたブレーキ圧を発生させることができ、切換バルブ27を閉位置に操作すると上述した増圧バルブ28及び減圧バルブ29の操作に従って電気的にブレーキ圧の増減ができる。
【0031】
増圧バルブ28は、油圧ポンプ24と各ブレーキ20を連通する油路に接続されており、この増圧バルブ28を切り替えることによりアキュムレータ21からの圧油がブレーキ20に供給されて、電気的にブレーキ13のブレーキ圧を増圧できる。
【0032】
減圧バルブ29は、ブレーキ20と増圧バルブ28を連通する油路からバイパスされた油路に接続されており、この減圧バルブ29を切り替えることによりブレーキ20からの圧油の一部をオイルタンク25に逃がして、電気的にブレーキ圧を減圧できる。
【0033】
切換バルブ27を迂回するように逆止弁が接続されており、切換バルブ27を閉位置に操作した状態においても、ブレーキペダル23を踏み込むことによってブレーキ圧を増加させることができるように構成されている。
【0034】
マスタシリンダ21と各ブレーキ20を連通する油路には圧力センサ7が接続されており、この圧力センサ7によって測定した各車輪のブレーキ圧をフィードバックして、後述するブレーキ力制御手段による各車輪のブレーキ圧に差圧を発生させることができるように構成されている。
【0035】
図1に示すように、ブレーキ装置13を構成する切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29は、それぞれブレーキ制御ユニット11に接続されており、ECU8からの出力に基づいて、各ブレーキ20に異なるブレーキ圧を作用させることができるように構成されている。
【0036】
[偏心量の算出]
図3に基づいて、位置関係検出手段としてのレーダ2による偏心量の算出について説明する。図3に示すように、レーダ2は車両前部の左右に亘る複数箇所に装備されている。それぞれのレーダ2による検出結果がECU8に入力されており、複数のレーダ2よってそれぞれの位置における自車両の進行方向での自車両と障害物との距離が常時監視されている。
【0037】
偏心量を算出する具体例を図3に基づいて説明する。例えば図3(イ)に示すように、レーダ2A,2B,2C,2Dによって検出した自車両と障害物との距離が略同じ距離である場合には、自車両と障害物との偏心量を0%と算出し、例えば図3(ロ)に示すように、レーダ2A,2Bによって検出した自車両と障害物との距離が略同じ距離で、かつ、レーダ2C,2Dによって検出した自車両と障害物との距離がレーダ2A,2Bによって検出した自車両と障害物との距離より長い場合(又はレーダ2C,2Dによって自車両と障害物との距離が検出されない場合)には、自車両と障害物との偏心量を50%と算出し、例えば、図3(ハ)に示すように、レーダ2B,2C,2Dによって検出した自車両と障害物との距離がレーダ2Aによって検出した自車両と障害物との距離より長い場合(又はレーダ2B,2C,2Dによって自車両と障害物との距離が検出されない場合)には、自車両と障害物との偏心量を75%と算出する。
【0038】
図3においては、自車両が障害物(先行車)に対して進行方向の右側にオフセットした例を示したが、自車両が障害物に対して進行方向の左側にオフセットした場合も同様に偏心量が算出され、その場合には偏心量の値(%)がマイナスの値になる。
【0039】
なお、図3においては、車両の前部4箇所にレーダ2を装着した例を示したが、レーダ2の数は異なる数(複数又は一つ)であってもよく、例えばレーダ2の数を増やすことにより偏心量の検出精度を向上させることができる。また、例えば複数のレーザ光を車両前方に投光及び受信可能なレーダ2を、車両前部に一つ装着して、障害物の左右方向の位置関係を検出するように構成してもよい。さらに、車両に搭載したカメラ1によって撮影した映像を画像処理することによって自車両と障害物との偏心量を検出するように構成してもよく、また、レーダ2とカメラ1を併用する構成を採用することにより更に偏心量の検出精度を向上させることができる。
【0040】
[回避可能方向判断手段]
レーダ2によって検出した検出値に基づいて算出した自車両と障害物との偏心量、及びカメラ1によって検出した情報に基づいて、自車両の回避可能方向が回避可能方向判断手段によって判断される。具体的には、レーダ2によって検出した検出結果に基づいて算出した自車両と障害物の偏心量がプラスの値の場合には、回避可能方向が右方向と判断され、偏心量がマイナスの値の場合には、回避可能方向が左方向と判断される。
【0041】
ただし、例えばカメラ1によって検出した情報に基づいて自車両の左方向にガードレール等が検出される場合には、左回避不能と判断され上述した回避可能方向に修正が加えられ、たとえ偏心量がマイナスの値であっても回避可能方向が右方向と判断される。また、例えばカメラ1によって検出した情報に基づいて自車両の右方向に対向車や並走車等が検出される場合には、右回避不能と判断され上述した回避可能方向に修正が加えられ、たとえ偏心量がプラスの値であっても回避可能方向が左方向と判断される。
【0042】
なお、例えば偏心量が0%で、カメラ1によって検出した情報に基づいて左右両方向の回避が可能と判断された場合には、右方向又は左方向が優先的に回避可能方向と判断され、カメラ1によって検出した情報に基づいて左右両方向に回避不能と判断された場合には、いずれの方向にも回避できず回避不能と判断されるように構成されている。
【0043】
[ブレーキ圧の算出]
図4に基づいて後述するブレーキ力制御手段を実施する場合に用いるブレーキ圧の算出方法について説明する。レーダ2によって検出した検出値に基づいて算出した自車両と障害物との偏心量、相対速度、車速等に基づいて、後述するブレーキ力制御手段を実施する場合のブレーキ圧が算出されている。具体的には、例えば自車両と障害物との偏心量が大きく、車両の回頭性を高めるための自車両に作用させる回頭モーメントが比較的小さい場合には、ブレーキ圧は低く設定され、逆に、自車両と障害物との偏心量が小さく、車両の回頭性を高めるための自車両に作用させる回頭モーメントが比較的大きい場合には、ブレーキ圧は高く設定される。
【0044】
なお、後述するブレーキ力制御手段によって自車両の回頭性を高めるために作用させる車輪毎のブレーキ圧は、上述した偏心量のみによって設定されるものではなく、例えば障害物との相対速度、車速等の要素を複合的に判断して決定される。
【0045】
図4に基づいて、偏心量毎のブレーキ係数の一例について説明する。図4に示すように、例えば偏心量が+50%の場合(図3(ロ)の状態の場合)には、左後のブレーキ20RLのブレーキ圧に対して左前及び右後のブレーキ20FL,20RRに3倍のブレーキ圧を作用させ、左後のブレーキ20RLのブレーキ圧に対して右前のブレーキ20FRに6倍のブレーキ圧を作用させるようにブレーキ係数を設定する。
【0046】
ブレーキ係数は、偏心量が小さくなると大きくなるように設定されている。例えば偏心量がプラスの場合の右前のブレーキ20FRのブレーキ圧は、左後のブレーキ20RLのブレーキ圧に対して偏心量が小さくなるのに比例して大きくなるように設定されており(3倍→6倍→9倍)、偏心量が大きいほど左後のブレーキ20RLと右前のブレーキFRのブレーキ圧との差圧を大きく生じさせて、自車両の回頭性を高める回頭モーメントが大きくなるように構成されている。なお、ブレーキ係数はその一例と示したものであり異なる数値を採用してもよい。
【0047】
後述するブレーキ力制御手段によってECU8からブレーキ制御ユニット11に出力することにより、切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29を操作すると、圧力センサ7によって検出した各ブレーキ20のブレーキ圧をフィードバックしながら、各ブレーキ20のブレーキ圧をブレーキ係数に基づいた所定圧力に増減することで、各車輪のブレーキ20に上述した方法で算出したブレーキ係数に基づいたブレーキ圧を作用させることができる。
【0048】
[車両安定化制御措置]
この車両においては、車両安定化制御装置の一例としての周知の横すべり防止装置(以下VSCと称す)が装備されている。このVSCの詳細については説明を省略するが、概略を説明すると、操舵角センサ4の検出結果に基づいて運転者のステアリングハンドルの操舵角を算出し、この操舵角から運転者が進もうとしている進路を読み取り、その進路に対して車速センサ5により検出した車速が大きすぎる場合に、運転者がブレーキペダル23を踏まなくても自動的に減速するための制御がなされ、さらに進路から外れないように左右のブレーキ圧を分配する等の制御を行う装置である。
【0049】
すなわち、車両の走行中に運転者が操舵を行うと、車両の向きが変化し車両にロールが生じ、旋回内輪のタイヤが路面のグリップ限界を超えて車両が横すべりをはじめる。そこで、操舵の大きさと速さ、車両の速度、車両の横移動の速さ、車両の向きの変化の速さを検出し演算することで、車輪が横すべりする時期を予測して、横すべりが始まる前に車輪のブレーキ圧を制御して車輪の横すべりを回避するものである。
【0050】
[制動回避距離と操舵回避距離との関係]
図5に基づいて、後述する自動ブレーキ作動手段及びブレーキ力制御手段に用いる制動回避距離と操舵回避距離との関係について説明する。図5は、車両前方に障害物が存在するとして、車両がその障害物との衝突を制動により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下制動回避距離と称す)と、車両がその障害物との衝突を操舵により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下操舵回避距離と称す)の関係を示したグラフである。なお、図5の横軸は自車両と障害物との相対速度であり、縦軸は制動開始位置又は操舵開始位置からの距離である。
【0051】
図5に示すように、制動回避距離は、車両の運動性能から相対速度の増加に伴って略二次曲線的増加し、操舵回避距離は、車両と障害物との幾何学的な関係から相対速度の増加に伴って略直線的に増加する。相対速度が所定値よりも小さい領域においては、操舵回避距離が制動回避距離より長くなり、相対速度が所定値より大きい領域においては、操舵回避距離が制動回避距離より短くなる。
【0052】
図5に示す相対速度と制動回避距離及び操舵回避距離との関係を示すグラフは、後述する偏心量が一定の場合の関係を示すものであり、例えば偏心量が小さい値になると、図5に示す曲線及び直線は図5の紙面の上方へ移動し制動回避距離及び操舵回避距離が長くなる。逆に偏心量が大きい値になると、図5に示す曲線及び直線は図5の紙面の下方へ移動し制動回避距離及び操舵回避距離が短くなる。
【0053】
図5に示す衝突可能性ライン(物理的回避限界ライン)は、後述する自動制動装置において自車両と障害物との衝突の可能性の判断に用いる直線及び曲線であり、図5の斜線で示す領域は、運転者の制動及び操舵のいずれによっても衝突を回避できない領域を示し、その領域の上限に位置する制動回避距離及び操舵回避距離の曲線及び直線が衝突限界ラインを示す。また、図5中の点線、1点鎖線及び2点鎖線で示した曲線及び直線、並びにL1〜L4の表示は、後述する自動ブレーキ作動手段又はブレーキ力制御手段を実施する場合に警告装置10の自動作動、ブレーキ20の自動作動及び解除、並びにブレーキ差圧作動及び解除の判断に用いるしきい値を示す。なお、以下の説明において、制動回避距離が操舵回避距離より短くなる相対速度が比較的小さい領域を制動優位領域と称し、操舵回避距離が制動回避距離より短くなる相対速度が比較的大きい領域を操舵優位領域と称す。
【0054】
[自動制動装置]
図6〜図9に基づいて、自動制動装置のフローチャートについて説明する。図6は、自動制動装置のメインルーチンを示し、図7は、自動ブレーキ作動手段に移行した場合の自動制動装置のサブルーチンを示し、図8及び図9は、ブレーキ力制御手段に移行した場合の自動制動装置のサブルーチンを示す。
【0055】
図6に基づいて、本実施例における自動制動装置のメインルーチンについて説明する。図6に示すように、図1に示した検出機器類によって検出されてECU8に入力されたデータが常時監視されている(ステップ#11)。レーダ2によって検出した検出結果に基づいて、車間距離L及び自車両と障害物との相対速度が算出される(ステップ#12)。
【0056】
次に、算出された車間距離L及び相対速度に基づいて、衝突可能性判断手段によって自車両が障害物に衝突する可能性があるか否か判断される(ステップ#13)。衝突可能性判断手段による自車両と障害物との衝突可能性は、上述した図5に基づいて判断され、算出した相対速度における車間距離Lが図5の衝突可能性ラインを下回った場合に、自車両が障害物に衝突する可能性があると判断される。
【0057】
自車両が障害物に衝突する可能性があると判断された場合には(ステップ#13・Yes)、VSCが作動する不安定な姿勢に車両がなっていないか否か判別される(ステップ#14)。VSCが作動していない場合には(ステップ#14・No)、運転者による緊急回避操作が行われていないか否か判断される(ステップ#15)。この運転者が緊急回避操作を行ったか否かは、操作入力検出手段としての操舵角センサ4の検出結果に基づいて、ステアリングハンドルの操舵操作量又は操舵操作速度が予め設定された基準値より大きいか否かで判断され、基準値より大きい場合には運転者が緊急回避操作を行ったと判断される。運転者が緊急回避操作したと判断される場合には(ステップ#15・Yes)、後述するブレーキ力制御手段に移行する(ステップ#18)。
【0058】
運転者が緊急回避操作していない場合には(ステップ#15・No)、算出した相対速度及び図5に基づいて、操舵優位領域か否か判別される(ステップ#16)。自車両が操舵優位領域にある場合には(ステップ#16・Yes)、後述するブレーキ力制御手段に移行する(ステップ#18)。このように、衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断されると、運転者が操舵操作を行っていない場合であっても、後述するブレーキ力作動手段に移行し、一定の条件のもとブレーキ20が差圧作動する。
【0059】
自車両が操舵優位領域にない場合には(ステップ#16・No)、後述する自動ブレーキ作動手段に移行する(ステップ#17)。なお、自車両が障害物に衝突する可能性がないと判断された場合(ステップ#13・No)、及びVSCが作動している場合には(ステップ#14・Yes)、後述する自動ブレーキ作動手段及びブレーキ力制御手段には移行しない。なお、自車両が操舵優位領域ではなくても(ステップ#16・No)、後述するブレーキ力制御手段に移行するように構成してもよい(ステップ#18)。このように構成することにより、緊急回避操作していない場合に、操舵優位領域であるか制動優位領域であるかに関わらずブレーキ力制御手段に移行させることができる。
【0060】
[自動ブレーキ作動手段]
図7に基づいて、自動ブレーキ作動手段について説明する。図7のフローチャートに示すように、自動ブレーキ作動手段に突入すると、しきい値L1,L2が算出される(ステップ#21)。しきい値L1,L2は、上述した図5に基づいて算出されており、警報装置10の自動作動によりブレーキ20の自動作動に先立って運転者に注意を促した後、ブレーキ20を自動作動させ、例えば運転者が制動操作等を行い車間距離Lが衝突の可能性が低い距離になれば、ブレーキ20の自動作動が解除されるように構成されている。なお、図7においては、障害物が先行車等の移動物の場合を想定して自動ブレーキ作動手段を構成しており、障害物が静止物の場合には、異なる手段を採用する必要がある。
【0061】
車間距離Lがしきい値L1より短いか否か判別され(ステップ#22)、車間距離Lがしきい値L1より短い場合には、警報装置10が自動作動する(ステップ#23)。なお、警報装置10としては、ブザー(図示せず)や表示パネル(図示せず)等よって視覚的又は聴覚的に運転者に注意を促す以外に、例えばブレーキ20を一時的に自動作動させて運転者に注意を促すように構成してもよい。
【0062】
次に、車間距離Lがしきい値L2より短いか否か判別され(ステップ#24)、車間距離Lがしきい値L2より短い場合には(ステップ#24・Yes)、ブレーキ20が自動作動する(ステップ#25)。ブレーキ20を自動作動させる場合のブレーキ圧は、通常の運転者のブレーキ20の操作と同様に、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧がすべて同じ値になるように、ECU8からブレーキ制御ユニット11を介して切換バルブ27及び増圧バルブ28に出力されるように構成されている。
【0063】
ブレーキ20が自動作動すると、車間距離Lがしきい値L1より長いか否か判別され(ステップ#27)、車間距離Lがしきい値L1より長い場合には(ステップ#27・Yes)、切換バルブ27が切り替えられてブレーキ20の自動作動が解除されるように構成されている(ステップ#28)。
【0064】
車間距離Lがしきい値L1より短い場合には(ステップ#27・No)、ブレーキ20の自動作動が継続する。このブレーキ20が自動作動している間における運転者による回避操作の状況が監視されており(ステップ#26)、操舵角センサ4の検出結果に基づいて運転者が操舵による回避操作を行ったと判断される場合、又は、圧力センサ7の検出結果に基づいて運転者が制動による回避操作を行ったと判断される場合には(ステップ#26・Yes)、ブレーキ20の自動作動が解除されるように構成されている(ステップ#28)。
【0065】
なお、図示しないが、運転者による操舵による回避が行われた場合に(ステップ#26・Yes)、後述するブレーキ力制御手段に移行し、ブレーキ20を差圧作動させるように構成してもよい。このように構成することにより、ブレーキ20の差圧作動により運転者の操舵による回避を補助することができる。
【0066】
図示しないが、しきい値L1,L2は、自車両の車速と、自車両と障害物との相対速度とに基づいて算出されており、例えば相対速度が同じ場合には、自車両の車速が速くなるに従って、しきい値L1,L2がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。また、図5に示したように、例えば自車両の車速が同じ場合には、相対速度が速くなるに従って、しきい値L1,L2がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。
【0067】
[ブレーキ力制御手段]
図8及び図9に基づいて、ブレーキ力制御手段について説明する。図8及び図9のフローチャートに示すように、ブレーキ力制御手段に突入すると、レーダ2からの検出結果に基づいて自車両と障害物との偏心量が算出される(ステップ#31)。次に、上述した回避可能方向判断手段により、偏心量及びカメラ1によって検出した情報に基づいて回避可能方向が判断され(ステップ#32)、上述したブレーキ圧の算出方法により、偏心量、相対速度、車速等に基づいて各車輪に作用させるブレーキ圧が算出される(ステップ#33)。なお、図示しないが回避可能方向判断手段により回避不能と判断された場合には、ブレーキ20の差圧作動は行われない。また、図8及び図9においては、障害物が先行車等の移動物の場合を想定して自動ブレーキ作動手段を構成しており、障害物が静止物の場合には、異なる手段を採用する必要がある。
【0068】
次に、しきい値L3,L4が算出される(ステップ#34)。しきい値L3,L4は、上述した図5に基づいて算出されており、警報装置10の自動作動によりブレーキ20の差圧作動に先立って運転者に注意を促した後、ブレーキ20を差圧作動させることができるように構成されている。
【0069】
車間距離Lがしきい値L3より短いか否か判別され(ステップ#35)、車間距離Lがしきい値L3より短い場合には(ステップ#35・Yes)、警報装置10が自動作動する(ステップ#36)。なお、警報装置10としては、ブザー(図示せず)や表示ランプ(図示せず)等よって視覚的又は聴覚的に運転者に注意を促す以外に、例えばブレーキ20を一時的に自動作動又は差圧作動させて運転者に注意を促すように構成してもよい。
【0070】
次に、車間距離Lがしきい値L4より短いか否か判別され(ステップ#37)、車間距離Lがしきい値L4より短い場合には(ステップ#37・Yes)、算出した各車輪のブレーキ20のブレーキ圧に基づいて、ブレーキ20の切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29にECU8からブレーキ制御ユニット11を介して出力されて、ブレーキ20を差圧作動させる(ステップ#38)。
【0071】
ブレーキ20が差圧作動すると、車速センサ5の検出結果に基づいて車両が停止したか否か、及び車間距離Lがしきい値L3より長いか否か判断され(ステップ#39)、車両が停止したと判断される場合、又は、車間距離Lがしきい値L3より長いと判断される場合には(ステップ#39・Yes)、切換バルブ27が切り替えられてブレーキ20の差圧作動が解除されるように構成されている(ステップ#40)。具体的には、例えば運転者が制動操作等を行い車間距離Lが衝突の可能性が低い距離になれば、ブレーキ20の差圧作動が解除される。
【0072】
車間距離Lがしきい値L3より短く、かつ車両が停止していないと判断される場合には(ステップ#39・No)、ブレーキ20の差圧作動が継続する。このブレーキ20が差圧作動している間に、カメラ1、レーダ2、ヨーレートセンサ3等の検出結果に基づいて、自車両の進行方向が変化した直後(ヨーレートセンサ3の検出値がブレーキ力制御手段によって変化した直後)に、自車両の前方に新たな障害物が出現した場合には(ステップ#41・Yes)、直ちにブレーキ20の差圧作動が解除される(ステップ#40)。そのため、先の障害物に対するブレーキ20の差圧作動が新たな障害物への対応に悪影響を及ぼすことを防止でき、新たな障害物への対応を適切に行うことができる。
【0073】
また、ブレーキ20が差圧作動している間に、操舵角センサ4の検出結果に基づいて、運転者がブレーキ20を差圧作動させた回避可能方向と逆方向にステアリングハンドルを操舵操作したと判断された場合にも(ステップ#42・Yes)、直ちにブレーキ20の差圧作動が解除される(ステップ#40)。そのため、運転者の操舵操作の方向とブレーキ20の差圧作動による回頭モーメントの発生方向とが干渉することを防止できる。
【0074】
また、ブレーキ20が差圧作動している間に、VSCが作動する車両が不安定な姿勢になったと場合にも(ステップ#43・Yes)、直ちにブレーキ20の差圧作動が解除される(ステップ#40)。そのため、ブレーキ20を差圧作動させて回頭モーメントを発生させることにより車両が却って不安定になることを防止でき、VSCによって車両の姿勢を安定させることができる。
【0075】
図示しないが、しきい値L3,L4は、自車両の車速と、自車両と障害物との相対速度に基づいて算出されており、例えば相対速度が同じ場合には、自車両の車速が速くなるに従って、しきい値L3,L4がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。また、図5に示したように、例えば自車両の車速が同じ場合には、相対速度が速くなるに従って、しきい値L3,L4がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。
【0076】
例えば、自動操舵装置(図示せず)によって自車両の障害物への衝突の回避を行う場合には、自動操舵装置の作動に伴うステアリングハンドルの回転と運転者の操舵操作とが干渉するおそれがある。しかし、以上のようにブレーキ力制御手段を構成することにより、ブレーキ20の差圧作動により運転者が自車両の障害物への衝突の回避を認知して操舵操作を行ったとしても、ブレーキ力制御手段によるブレーキ20の差圧作動と運転者の操舵操作が干渉することがない。すなわち、ステアリングハンドルそのものを操作することにより自車両の障害物への衝突の回避を行う自動操舵装置とは異なり、ブレーキ力制御手段では操舵操作とは別の操作入力であるブレーキ20の差圧作動によって自車両の障害物への衝突の回避を行うことができる。そのため、運転者の運転意思を尊重して運転フィーリングを良好に維持することのできる自動制動装置を実現できる。
【0077】
[ブレーキ力制御手段によるブレーキの作動状況]
図10に基づいてブレーキ力制御手段によるブレーキ20の作動状況について説明する。図10は、車速、相対速度、車間距離L、偏心量(+50%)等が同じ条件で、操舵回避領域における同じタイミングで運転者が操舵による緊急回避をして、ブレーキ力作制御手段によってブレーキ20を差圧作動させた場合(図10(イ))と、自動ブレーキ作動手段によってすべての車輪のブレーキ20に同じブレーキ圧を作用させた場合(図10(ロ))とをそれぞれ示す。なお、図10に示す斜線矢印は各車輪のブレーキ20のブレーキ圧の大きさの概略を示し、図10に示す白抜きの矢印は車両に作用する回頭モーメントの方向を示す。
【0078】
図10(イ)及び(ロ)に示すように、ブレーキ力作動手段によって車両に回頭モーメントを発生させることにより、ブレーキ力制御手段を備えていない場合に比べ回頭モーメントによって右方向に大きく回避することができ、障害物との衝突を小さくすることができる。なお、図示しないが、偏心量が大きい場合には、障害物との衝突を免れることも可能である。
【0079】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、ブレーキ力制御手段を図8及び図9のフローチャートのように構成した例を示したが、図8に代えて図11のフローチャートを採用してもよい。
【0080】
図11に示すように、ブレーキ力制御手段に突入すると、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、自車両と障害物との偏心量、回避可能方向、ブレーキ圧、しきい値L3,L4が算出及び判断される(ステップ#51〜54)。
【0081】
次に、算出した偏心量の絶対値が予め設定された所定値以上(例えば75%以上)か否か判別され(ステップ#55)、偏心量の絶対値が所定値以上の場合には(ステップ#55・Yes)、車速、相対速度、車間距離Lに基づいて障害物と衝突しないで回避可能方向に車両を横回避可能か否か判断される(ステップ#56)。横回避可能と判断される場合には、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、車間距離Lがしきい値L3より短くなると警報装置10が作動し(ステップ#57、#58)、しきい値L4より短くなると、一定の条件のもとブレーキ20が差圧作動する(ステップ#59、#38)。
【0082】
このように、偏心量の絶対値が所定値以上での横回避可能性が高い自車両と障害物との位置関係で、横回避可能と判断される場合にのみ、ブレーキ力制御手段によりブレーキ20を差圧作動させるように構成することにより、衝突を免れるためのブレーキ力制御手段を実現できる。
【0083】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧を所定の圧力に増減することで、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧に差圧を生じさせるように構成した例を示したが、図12に示すように、ブレーキ係数を設定し、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧に差圧を生じさせるように構成してもよい。
【0084】
図12に基づいて、この実施例における偏心量毎のブレーキ係数の一例について説明する。図12(イ)に示すように、例えば偏心量が+50%の場合には、左後、左前及び右後のブレーキ20RL,20FL,20RRのブレーキ圧に対して右前のブレーキ20FRのブレーキ係数のみを6倍のブレーキ圧を作用させるようにブレーキ係数を設定する。このように、左前及び右前のブレーキ20FL,20FR(前輪のブレーキ20)のみにブレーキ圧の差圧を生じさせるように構成することで、後輪のスタビリティーを確保しながら、ECU8を簡素化することができる。
【0085】
図12(ロ)に示すように、例えば偏心量が+50%の場合には、左後、左前及び右後のブレーキ20RL,20FL,20RRのブレーキ圧を作用させず、右前のブレーキ20FRのみにブレーキ圧を作用させるようにブレーキ係数を設定してもよい。このように、右前のブレーキ20FRのみにブレーキ圧を生じさせるように構成することで、ECU8を簡素化することができる。
【0086】
図13に基づいて、衝突を免れるようにブレーキ力作動手段を構成し、図12(イ)に示した左前及び右前のブレーキ20FL,20FRのみにブレーキ圧の差圧を生じさせるように構成したときのブレーキ20の作動状況について説明する。
【0087】
図13は、車速、相対速度、車間距離L、偏心量(+75%)等が同じ条件で、操舵回避領域において操舵回避を怠って、ブレーキ力制御手段が作動しブレーキ20を差圧作動させた場合(図13(イ))と、自動ブレーキ作動手段が作動してすべての車輪のブレーキ20に同じブレーキ圧を作用させた場合(図13(ロ))とをそれぞれ示す。なお、図13に示す斜線矢印は各車輪のブレーキ20のブレーキ圧の大きさの概略を示し、図13に示す白抜きの矢印は車両に作用する回頭モーメントの方向を示す。
【0088】
図13(イ)及び(ロ)に示すように、ブレーキ力制御手段を備えていない場合に比べ、ブレーキ力制御手段によって車両に回頭モーメントを発生させることにより、この回頭モーメントによって右方向に回避することができ、障害物との衝突を免れることができる。
【0089】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、図5のグラフに基づいて自車両の障害物への衝突の可能性を判断した例を示したが、衝突可能性の判断を異なる手法で判断してもよい。また、衝突の可能性があると判断されてから、車間距離Lがしきい値L3,L4より短くなったときに警報装置10及びブレーキ20がそれぞれ自動作動及び差圧作動するように構成した例を示したが、例えば衝突の可能性があると判断されてから予め設定された所定時間経過後に警報装置10及びブレーキ20がそれぞれ自動作動及び差圧作動するように構成してもよい。
【0090】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、運転者が回避操作していないことを操舵角センサ4の検出結果に基づいて判断した例を示したが、操作入力検出手段として異なる検出機器(図示せず)を採用してもよく、例えばフットブレーキの踏み込み操作を検出するフットブレーキセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて運転者が回避操作していないことを判断する構成を採用してもよい。
【0091】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、レーダ2の検出結果に基づいて偏心量を算出し回避可能方向を判断した例を示したが、位置関係検出手段として異なる検出機器(図示せず)を採用してもよく、例えばレーダ2やカメラ1に限らず、ナビゲーションシステム(図示せず)、車々間通信(車両が相互に通信するシステム,図示せず)等によって回避可能方向を判断するように構成してもよい。
【0092】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、ブレーキ20のブレーキ圧に差圧を生じさせることにより、ブレーキ力に差を生じさせてブレーキ力制御手段を構成した例を示したが、ブレーキ力に差を生じさせる構成として異なる構成を採用してもよく、例えば電動ブレーキ(図示せず)の場合においては、電動ブレーキを作動する電動アクチュエータ(図示せず)等に供給する電力量を調節することにより、ブレーキ力に差を生じさせるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】車両のブロック図
【図2】ブレーキ装置の油圧回路図
【図3】偏心量の一例を説明する概略図
【図4】ブレーキ係数の一例を示すマップ
【図5】制動回避距離と操舵回避距離との関係を示すグラフ
【図6】自動制動装置の作動状態を示すフローチャート
【図7】自動ブレーキ作動手段のフローチャート
【図8】ブレーキ力制御手段のフローチャート
【図9】ブレーキ力制御手段のフローチャート
【図10】ブレーキの作動状況を説明する概略図
【図11】発明の実施の第1別形態におけるブレーキ力制御手段のフローチャート
【図12】発明の実施の第1別形態におけるブレーキ係数の一例を示すマップ
【図13】発明の実施の第1別形態におけるブレーキの作動状況を説明する概略図
【符号の説明】
【0094】
2 レーダ(位置関係検出手段)
2A レーダ(位置関係検出手段)
2B レーダ(位置関係検出手段)
2C レーダ(位置関係検出手段)
2D レーダ(位置関係検出手段)
4 操舵角センサ(操作入力検出手段)
20 ブレーキ
20FL ブレーキ(左前)
20FR ブレーキ(右前)
20RL ブレーキ(左後)
20RR ブレーキ(右後)
VSC 車両安定化制御装置
L 車間距離(実距離)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキを自動作動させる自動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、運転者のステアリング操作を検知し、その操作方向への車両の回頭性が高まるように車輪毎にブレーキ圧を制御して、車両の制動性を維持しつつ、衝突回避のためのステアリング操作に対する車両の回頭性を高めることができるように構成された自動ブレーキ制御装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、障害物との衝突を回避する自動制動装置に加えて自動操舵装置を備え、障害物との衝突可能性が生じたときに自動操舵装置を作動させて自車の進行方向を変更し、障害物との衝突を回避する可能性を高めることができるように構成された車両の接触防止装置が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−21500号公報(図6及び段落番号「0009」参照)
【特許文献2】特開平5−58319号公報(図7及び段落番号「0030」参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動ブレーキ制御装置では、運転者によってステアリングが操作された場合に、そのステアリングの操作方向への車両の回頭性が高まるように車輪毎のブレーキ圧の制御を行うように構成されている。そのため、運転者がわき見運転や居眠り等をしてステアリング操作を怠った場合には、車輪毎のブレーキ圧の制御による自車と障害物との衝突の回避を行うことができない。
【0006】
また、特許文献2の車両の接触防止装置では、運転者がわき見運転や居眠り等をして、ステアリング操作を怠った場合であっても、自動操舵装置を作動させることによって自車と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができるが、自動操舵シリンダ(特許文献2の図7の56)、切換バルブ(特許文献2の図7の60)、自動操舵バルブ(特許文献2の図7の61)等を装備して自動操舵装置を構成する必要があり、自動操舵装置が高額で、自車と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができる反面、接触防止装置の製造コストが高騰するといった問題がある。
本発明は、運転者が操作入力を怠った場合でも自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることのできる自動制動装置を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、自動制動装置を次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突の可能性を判断する衝突可能性判断手段と、運転者の操作入力を検出する操作入力検出手段と、障害物と自車両の左右方向の位置関係を検出する位置関係検出手段と、前記位置関係検出手段の検出結果に基づいて自車両の回避可能方向を判断する回避可能方向判断手段と、前記衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断され、かつ前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出されていない場合に、前記回避可能方向への自車両の回頭性が高まるように、各車輪のブレーキ力に差を生じさせてブレーキを自動作動させるブレーキ力制御手段と、を備えて自動制動装置を構成する。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、障害物に衝突する可能性があると判断されると、運転者の操作入力がされていない場合であっても、ブレーキ力制御手段により回避可能方向へ自車両の回頭性を高めて、自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができる。その結果、例えば運転者がわき見運転や居眠り等をして操作入力を怠った場合であっても、自動的に自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができる。また、自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができるだけでなく、運転者に操舵による回避を促すことができ、運転者の操舵による回避方向への自車両の回避を補助できる。
【0009】
本発明の第1特徴によると、ブレーキ力制御手段によりブレーキ力に差を生じさせることにより比較的簡素な構造で自車両の障害物への衝突の回避の可能性を高めることができる。その結果、例えば自動操舵装置等によって自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができるように構成する場合に比べ、自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることのできる自動制動装置の構造を簡素化することができる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、運転者が操作入力を怠った場合でも自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることのできる自動制動装置を低コストで実現できる。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
前記操作入力検出手段の検出結果に基づいてブレーキ力の制御を行うことにより、車両の姿勢制御を行う車両安定化制御装置を備え、
前記ブレーキ力制御手段よりも前記車両安定化制御装置が優先して作動するように、前記ブレーキ力制御手段を構成する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、ブレーキ力制御手段と車両安定化制御装置が重複して作動することを防止することができ、重複して作動する状況になった場合(例えばブレーキ力制御手段が作動している状態で車両安定化制御装置が作動する条件になった場合や車両安定化制御装置が作動している状態でブレーキ力制御手段が作動する条件になった場合)に、車両安定化制御装置の作動を優先することで、ブレーキ力制御手段を作動させて回頭性を高めることにより車両が却って不安定になることを防止でき、車両安定化制御装置によって車両の姿勢を安定させることができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、車両安定化制御装置の性能の低下を防止できる。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴又は第2特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段と、自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離よりも短くかつ前記制動回避距離よりも短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、を備え、
前記制動回避距離が前記操舵回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなると、前記ブレーキ力制御手段が作動しないように、前記ブレーキ力制御手段を構成する。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、自車両の障害物への衝突の制動による回避よりも自車両の障害物への衝突の操舵による回避が優位な相対速度で、ブレーキ力制御手段を作動させることができ、自車両と障害物との衝突を回避する可能性を更に高めることができる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、ブレーキ力制御手段を適切な時期に作動させることができる。
【0017】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第3特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
前記自動ブレーキ作動手段によりブレーキが自動作動している状態で、前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出された場合に、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動を解除するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0018】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、運転者の操作入力を尊重して、自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動を解除することができ、運転者の意思に反してブレーキが自動作動することを防止できる。
【0019】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、運転者の運転意思を尊重して運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突を回避する可能性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔車両の制御装置の構成〕
図1に、本発明に係る自動制動装置を備えた車両のブロック図を示す。図1に示すように、車両に、カメラ1、レーダ2、ヨーレートセンサ3、操舵角センサ4、車速センサ5、横加速度センサ6、圧力センサ7等の検出機器類が実装され、これらの検出機器類がECU8に接続されている。
【0021】
カメラ1は、例えば車室内のルームミラーのステー等(図示せず)に配設されており、車両前方を撮影できるように構成されている。カメラ1によって撮影された映像は画像処理装置(図示せず)によって処理されて、ECU8において車両前方の障害物、車両が走行する走行レーンを区画する白線、ガードレール等を検出できるように構成されている。
【0022】
レーダ2は、車両前部の複数箇所に左右に並設されており、このレーダ2によって車両前方にレーザ光を投光し先行車等の障害物に当たって反射したレーザ光を受信して、自車両と障害物との実距離(以下車間距離Lと称す)、障害物の左右方向の位置及び障害物に対する自車両の相対速度を検出する。
【0023】
ヨーレートセンサ3は、車両の重心位置近傍に配設されており、車両に作用するヨーレートを検出する。操舵角センサ4は、ステアリングハンドルの操舵軸(図示せず)に組み付けられており、基準位置からの操舵軸の回転角を測定することにより左右の前輪の操舵角を算出して、運転者のステアリングハンドルの操作量(操舵操作量)及びステアリングハンドルの操作速度(操舵操作速度)を検出する。
【0024】
車速センサ5及び横方向加速度センサ6は、車両に組み付けられており、車速及び車両の横方向に作用する加速度をそれぞれ検出する。
【0025】
ECU8には、表示ユニット9、警報装置10、ブレーキ制御ユニット11、ストップランプが接続されている。表示ユニット9及び警報装置10は、車室内に装備されており、ECU8からの出力に基づいて運転者に視覚的及び聴覚的な情報を提供する。
【0026】
ブレーキ制御ユニット11は、ECU8からの出力に基づいて後述する各車輪のブレーキ装置13を構成する切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29に電力を供給し、圧力センサ7からの検出圧力をフィードバックしながら各車輪のブレーキ圧の増減を行って、各車輪にブレーキ20を作動させる。ブレーキ制御ユニット11によってブレーキ20が作動すると車両の後部に設けたストップランプ12が点灯する。
【0027】
上述した各検出機器類はECU8に接続されており、各検出機器類からの検出結果に基づいてECU8から警報装置10、ブレーキ制御ユニット11等に出力を行うことで、後述する自動ブレーキ作動手段及びブレーキ力制御手段を実現できる。
【0028】
〔ブレーキ装置の構成〕
図2に基づいてこの車両に装備されたブレーキ装置13について説明する。図2に示すように、ブレーキ装置13は、マスタシリンダ21、油圧ポンプ24、アキュムレータ26、オイルタンク25、切換バルブ27、増圧バルブ28、減圧バルブ29等を備えて構成されている。マスタシリンダ21は、マスタバック22を介してブレーキペダル23に連動連結されており、ブレーキペダル23の踏込力に応じたブレーキ圧をマスタバック22により増大させて発生させる。
【0029】
油圧ポンプ24は、モータ駆動式に構成されており、増圧バルブ28に接続されている。油圧ポンプ24の吸込側及び吐出側には、オイルタンク25及びアキュムレータ26がそれぞれ接続されており、オイルタンク25から吸い込んで昇圧した圧油をアキュムレータ26に貯留して一定圧力に保持できるように構成されている。
【0030】
切換バルブ27は、マスタシリンダ21と各ブレーキ20を連通する油路に接続されており、切換バルブ27を開位置に操作するとブレーキペダル23の踏込力に応じたブレーキ圧を発生させることができ、切換バルブ27を閉位置に操作すると上述した増圧バルブ28及び減圧バルブ29の操作に従って電気的にブレーキ圧の増減ができる。
【0031】
増圧バルブ28は、油圧ポンプ24と各ブレーキ20を連通する油路に接続されており、この増圧バルブ28を切り替えることによりアキュムレータ21からの圧油がブレーキ20に供給されて、電気的にブレーキ13のブレーキ圧を増圧できる。
【0032】
減圧バルブ29は、ブレーキ20と増圧バルブ28を連通する油路からバイパスされた油路に接続されており、この減圧バルブ29を切り替えることによりブレーキ20からの圧油の一部をオイルタンク25に逃がして、電気的にブレーキ圧を減圧できる。
【0033】
切換バルブ27を迂回するように逆止弁が接続されており、切換バルブ27を閉位置に操作した状態においても、ブレーキペダル23を踏み込むことによってブレーキ圧を増加させることができるように構成されている。
【0034】
マスタシリンダ21と各ブレーキ20を連通する油路には圧力センサ7が接続されており、この圧力センサ7によって測定した各車輪のブレーキ圧をフィードバックして、後述するブレーキ力制御手段による各車輪のブレーキ圧に差圧を発生させることができるように構成されている。
【0035】
図1に示すように、ブレーキ装置13を構成する切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29は、それぞれブレーキ制御ユニット11に接続されており、ECU8からの出力に基づいて、各ブレーキ20に異なるブレーキ圧を作用させることができるように構成されている。
【0036】
[偏心量の算出]
図3に基づいて、位置関係検出手段としてのレーダ2による偏心量の算出について説明する。図3に示すように、レーダ2は車両前部の左右に亘る複数箇所に装備されている。それぞれのレーダ2による検出結果がECU8に入力されており、複数のレーダ2よってそれぞれの位置における自車両の進行方向での自車両と障害物との距離が常時監視されている。
【0037】
偏心量を算出する具体例を図3に基づいて説明する。例えば図3(イ)に示すように、レーダ2A,2B,2C,2Dによって検出した自車両と障害物との距離が略同じ距離である場合には、自車両と障害物との偏心量を0%と算出し、例えば図3(ロ)に示すように、レーダ2A,2Bによって検出した自車両と障害物との距離が略同じ距離で、かつ、レーダ2C,2Dによって検出した自車両と障害物との距離がレーダ2A,2Bによって検出した自車両と障害物との距離より長い場合(又はレーダ2C,2Dによって自車両と障害物との距離が検出されない場合)には、自車両と障害物との偏心量を50%と算出し、例えば、図3(ハ)に示すように、レーダ2B,2C,2Dによって検出した自車両と障害物との距離がレーダ2Aによって検出した自車両と障害物との距離より長い場合(又はレーダ2B,2C,2Dによって自車両と障害物との距離が検出されない場合)には、自車両と障害物との偏心量を75%と算出する。
【0038】
図3においては、自車両が障害物(先行車)に対して進行方向の右側にオフセットした例を示したが、自車両が障害物に対して進行方向の左側にオフセットした場合も同様に偏心量が算出され、その場合には偏心量の値(%)がマイナスの値になる。
【0039】
なお、図3においては、車両の前部4箇所にレーダ2を装着した例を示したが、レーダ2の数は異なる数(複数又は一つ)であってもよく、例えばレーダ2の数を増やすことにより偏心量の検出精度を向上させることができる。また、例えば複数のレーザ光を車両前方に投光及び受信可能なレーダ2を、車両前部に一つ装着して、障害物の左右方向の位置関係を検出するように構成してもよい。さらに、車両に搭載したカメラ1によって撮影した映像を画像処理することによって自車両と障害物との偏心量を検出するように構成してもよく、また、レーダ2とカメラ1を併用する構成を採用することにより更に偏心量の検出精度を向上させることができる。
【0040】
[回避可能方向判断手段]
レーダ2によって検出した検出値に基づいて算出した自車両と障害物との偏心量、及びカメラ1によって検出した情報に基づいて、自車両の回避可能方向が回避可能方向判断手段によって判断される。具体的には、レーダ2によって検出した検出結果に基づいて算出した自車両と障害物の偏心量がプラスの値の場合には、回避可能方向が右方向と判断され、偏心量がマイナスの値の場合には、回避可能方向が左方向と判断される。
【0041】
ただし、例えばカメラ1によって検出した情報に基づいて自車両の左方向にガードレール等が検出される場合には、左回避不能と判断され上述した回避可能方向に修正が加えられ、たとえ偏心量がマイナスの値であっても回避可能方向が右方向と判断される。また、例えばカメラ1によって検出した情報に基づいて自車両の右方向に対向車や並走車等が検出される場合には、右回避不能と判断され上述した回避可能方向に修正が加えられ、たとえ偏心量がプラスの値であっても回避可能方向が左方向と判断される。
【0042】
なお、例えば偏心量が0%で、カメラ1によって検出した情報に基づいて左右両方向の回避が可能と判断された場合には、右方向又は左方向が優先的に回避可能方向と判断され、カメラ1によって検出した情報に基づいて左右両方向に回避不能と判断された場合には、いずれの方向にも回避できず回避不能と判断されるように構成されている。
【0043】
[ブレーキ圧の算出]
図4に基づいて後述するブレーキ力制御手段を実施する場合に用いるブレーキ圧の算出方法について説明する。レーダ2によって検出した検出値に基づいて算出した自車両と障害物との偏心量、相対速度、車速等に基づいて、後述するブレーキ力制御手段を実施する場合のブレーキ圧が算出されている。具体的には、例えば自車両と障害物との偏心量が大きく、車両の回頭性を高めるための自車両に作用させる回頭モーメントが比較的小さい場合には、ブレーキ圧は低く設定され、逆に、自車両と障害物との偏心量が小さく、車両の回頭性を高めるための自車両に作用させる回頭モーメントが比較的大きい場合には、ブレーキ圧は高く設定される。
【0044】
なお、後述するブレーキ力制御手段によって自車両の回頭性を高めるために作用させる車輪毎のブレーキ圧は、上述した偏心量のみによって設定されるものではなく、例えば障害物との相対速度、車速等の要素を複合的に判断して決定される。
【0045】
図4に基づいて、偏心量毎のブレーキ係数の一例について説明する。図4に示すように、例えば偏心量が+50%の場合(図3(ロ)の状態の場合)には、左後のブレーキ20RLのブレーキ圧に対して左前及び右後のブレーキ20FL,20RRに3倍のブレーキ圧を作用させ、左後のブレーキ20RLのブレーキ圧に対して右前のブレーキ20FRに6倍のブレーキ圧を作用させるようにブレーキ係数を設定する。
【0046】
ブレーキ係数は、偏心量が小さくなると大きくなるように設定されている。例えば偏心量がプラスの場合の右前のブレーキ20FRのブレーキ圧は、左後のブレーキ20RLのブレーキ圧に対して偏心量が小さくなるのに比例して大きくなるように設定されており(3倍→6倍→9倍)、偏心量が大きいほど左後のブレーキ20RLと右前のブレーキFRのブレーキ圧との差圧を大きく生じさせて、自車両の回頭性を高める回頭モーメントが大きくなるように構成されている。なお、ブレーキ係数はその一例と示したものであり異なる数値を採用してもよい。
【0047】
後述するブレーキ力制御手段によってECU8からブレーキ制御ユニット11に出力することにより、切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29を操作すると、圧力センサ7によって検出した各ブレーキ20のブレーキ圧をフィードバックしながら、各ブレーキ20のブレーキ圧をブレーキ係数に基づいた所定圧力に増減することで、各車輪のブレーキ20に上述した方法で算出したブレーキ係数に基づいたブレーキ圧を作用させることができる。
【0048】
[車両安定化制御措置]
この車両においては、車両安定化制御装置の一例としての周知の横すべり防止装置(以下VSCと称す)が装備されている。このVSCの詳細については説明を省略するが、概略を説明すると、操舵角センサ4の検出結果に基づいて運転者のステアリングハンドルの操舵角を算出し、この操舵角から運転者が進もうとしている進路を読み取り、その進路に対して車速センサ5により検出した車速が大きすぎる場合に、運転者がブレーキペダル23を踏まなくても自動的に減速するための制御がなされ、さらに進路から外れないように左右のブレーキ圧を分配する等の制御を行う装置である。
【0049】
すなわち、車両の走行中に運転者が操舵を行うと、車両の向きが変化し車両にロールが生じ、旋回内輪のタイヤが路面のグリップ限界を超えて車両が横すべりをはじめる。そこで、操舵の大きさと速さ、車両の速度、車両の横移動の速さ、車両の向きの変化の速さを検出し演算することで、車輪が横すべりする時期を予測して、横すべりが始まる前に車輪のブレーキ圧を制御して車輪の横すべりを回避するものである。
【0050】
[制動回避距離と操舵回避距離との関係]
図5に基づいて、後述する自動ブレーキ作動手段及びブレーキ力制御手段に用いる制動回避距離と操舵回避距離との関係について説明する。図5は、車両前方に障害物が存在するとして、車両がその障害物との衝突を制動により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下制動回避距離と称す)と、車両がその障害物との衝突を操舵により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下操舵回避距離と称す)の関係を示したグラフである。なお、図5の横軸は自車両と障害物との相対速度であり、縦軸は制動開始位置又は操舵開始位置からの距離である。
【0051】
図5に示すように、制動回避距離は、車両の運動性能から相対速度の増加に伴って略二次曲線的増加し、操舵回避距離は、車両と障害物との幾何学的な関係から相対速度の増加に伴って略直線的に増加する。相対速度が所定値よりも小さい領域においては、操舵回避距離が制動回避距離より長くなり、相対速度が所定値より大きい領域においては、操舵回避距離が制動回避距離より短くなる。
【0052】
図5に示す相対速度と制動回避距離及び操舵回避距離との関係を示すグラフは、後述する偏心量が一定の場合の関係を示すものであり、例えば偏心量が小さい値になると、図5に示す曲線及び直線は図5の紙面の上方へ移動し制動回避距離及び操舵回避距離が長くなる。逆に偏心量が大きい値になると、図5に示す曲線及び直線は図5の紙面の下方へ移動し制動回避距離及び操舵回避距離が短くなる。
【0053】
図5に示す衝突可能性ライン(物理的回避限界ライン)は、後述する自動制動装置において自車両と障害物との衝突の可能性の判断に用いる直線及び曲線であり、図5の斜線で示す領域は、運転者の制動及び操舵のいずれによっても衝突を回避できない領域を示し、その領域の上限に位置する制動回避距離及び操舵回避距離の曲線及び直線が衝突限界ラインを示す。また、図5中の点線、1点鎖線及び2点鎖線で示した曲線及び直線、並びにL1〜L4の表示は、後述する自動ブレーキ作動手段又はブレーキ力制御手段を実施する場合に警告装置10の自動作動、ブレーキ20の自動作動及び解除、並びにブレーキ差圧作動及び解除の判断に用いるしきい値を示す。なお、以下の説明において、制動回避距離が操舵回避距離より短くなる相対速度が比較的小さい領域を制動優位領域と称し、操舵回避距離が制動回避距離より短くなる相対速度が比較的大きい領域を操舵優位領域と称す。
【0054】
[自動制動装置]
図6〜図9に基づいて、自動制動装置のフローチャートについて説明する。図6は、自動制動装置のメインルーチンを示し、図7は、自動ブレーキ作動手段に移行した場合の自動制動装置のサブルーチンを示し、図8及び図9は、ブレーキ力制御手段に移行した場合の自動制動装置のサブルーチンを示す。
【0055】
図6に基づいて、本実施例における自動制動装置のメインルーチンについて説明する。図6に示すように、図1に示した検出機器類によって検出されてECU8に入力されたデータが常時監視されている(ステップ#11)。レーダ2によって検出した検出結果に基づいて、車間距離L及び自車両と障害物との相対速度が算出される(ステップ#12)。
【0056】
次に、算出された車間距離L及び相対速度に基づいて、衝突可能性判断手段によって自車両が障害物に衝突する可能性があるか否か判断される(ステップ#13)。衝突可能性判断手段による自車両と障害物との衝突可能性は、上述した図5に基づいて判断され、算出した相対速度における車間距離Lが図5の衝突可能性ラインを下回った場合に、自車両が障害物に衝突する可能性があると判断される。
【0057】
自車両が障害物に衝突する可能性があると判断された場合には(ステップ#13・Yes)、VSCが作動する不安定な姿勢に車両がなっていないか否か判別される(ステップ#14)。VSCが作動していない場合には(ステップ#14・No)、運転者による緊急回避操作が行われていないか否か判断される(ステップ#15)。この運転者が緊急回避操作を行ったか否かは、操作入力検出手段としての操舵角センサ4の検出結果に基づいて、ステアリングハンドルの操舵操作量又は操舵操作速度が予め設定された基準値より大きいか否かで判断され、基準値より大きい場合には運転者が緊急回避操作を行ったと判断される。運転者が緊急回避操作したと判断される場合には(ステップ#15・Yes)、後述するブレーキ力制御手段に移行する(ステップ#18)。
【0058】
運転者が緊急回避操作していない場合には(ステップ#15・No)、算出した相対速度及び図5に基づいて、操舵優位領域か否か判別される(ステップ#16)。自車両が操舵優位領域にある場合には(ステップ#16・Yes)、後述するブレーキ力制御手段に移行する(ステップ#18)。このように、衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断されると、運転者が操舵操作を行っていない場合であっても、後述するブレーキ力作動手段に移行し、一定の条件のもとブレーキ20が差圧作動する。
【0059】
自車両が操舵優位領域にない場合には(ステップ#16・No)、後述する自動ブレーキ作動手段に移行する(ステップ#17)。なお、自車両が障害物に衝突する可能性がないと判断された場合(ステップ#13・No)、及びVSCが作動している場合には(ステップ#14・Yes)、後述する自動ブレーキ作動手段及びブレーキ力制御手段には移行しない。なお、自車両が操舵優位領域ではなくても(ステップ#16・No)、後述するブレーキ力制御手段に移行するように構成してもよい(ステップ#18)。このように構成することにより、緊急回避操作していない場合に、操舵優位領域であるか制動優位領域であるかに関わらずブレーキ力制御手段に移行させることができる。
【0060】
[自動ブレーキ作動手段]
図7に基づいて、自動ブレーキ作動手段について説明する。図7のフローチャートに示すように、自動ブレーキ作動手段に突入すると、しきい値L1,L2が算出される(ステップ#21)。しきい値L1,L2は、上述した図5に基づいて算出されており、警報装置10の自動作動によりブレーキ20の自動作動に先立って運転者に注意を促した後、ブレーキ20を自動作動させ、例えば運転者が制動操作等を行い車間距離Lが衝突の可能性が低い距離になれば、ブレーキ20の自動作動が解除されるように構成されている。なお、図7においては、障害物が先行車等の移動物の場合を想定して自動ブレーキ作動手段を構成しており、障害物が静止物の場合には、異なる手段を採用する必要がある。
【0061】
車間距離Lがしきい値L1より短いか否か判別され(ステップ#22)、車間距離Lがしきい値L1より短い場合には、警報装置10が自動作動する(ステップ#23)。なお、警報装置10としては、ブザー(図示せず)や表示パネル(図示せず)等よって視覚的又は聴覚的に運転者に注意を促す以外に、例えばブレーキ20を一時的に自動作動させて運転者に注意を促すように構成してもよい。
【0062】
次に、車間距離Lがしきい値L2より短いか否か判別され(ステップ#24)、車間距離Lがしきい値L2より短い場合には(ステップ#24・Yes)、ブレーキ20が自動作動する(ステップ#25)。ブレーキ20を自動作動させる場合のブレーキ圧は、通常の運転者のブレーキ20の操作と同様に、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧がすべて同じ値になるように、ECU8からブレーキ制御ユニット11を介して切換バルブ27及び増圧バルブ28に出力されるように構成されている。
【0063】
ブレーキ20が自動作動すると、車間距離Lがしきい値L1より長いか否か判別され(ステップ#27)、車間距離Lがしきい値L1より長い場合には(ステップ#27・Yes)、切換バルブ27が切り替えられてブレーキ20の自動作動が解除されるように構成されている(ステップ#28)。
【0064】
車間距離Lがしきい値L1より短い場合には(ステップ#27・No)、ブレーキ20の自動作動が継続する。このブレーキ20が自動作動している間における運転者による回避操作の状況が監視されており(ステップ#26)、操舵角センサ4の検出結果に基づいて運転者が操舵による回避操作を行ったと判断される場合、又は、圧力センサ7の検出結果に基づいて運転者が制動による回避操作を行ったと判断される場合には(ステップ#26・Yes)、ブレーキ20の自動作動が解除されるように構成されている(ステップ#28)。
【0065】
なお、図示しないが、運転者による操舵による回避が行われた場合に(ステップ#26・Yes)、後述するブレーキ力制御手段に移行し、ブレーキ20を差圧作動させるように構成してもよい。このように構成することにより、ブレーキ20の差圧作動により運転者の操舵による回避を補助することができる。
【0066】
図示しないが、しきい値L1,L2は、自車両の車速と、自車両と障害物との相対速度とに基づいて算出されており、例えば相対速度が同じ場合には、自車両の車速が速くなるに従って、しきい値L1,L2がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。また、図5に示したように、例えば自車両の車速が同じ場合には、相対速度が速くなるに従って、しきい値L1,L2がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。
【0067】
[ブレーキ力制御手段]
図8及び図9に基づいて、ブレーキ力制御手段について説明する。図8及び図9のフローチャートに示すように、ブレーキ力制御手段に突入すると、レーダ2からの検出結果に基づいて自車両と障害物との偏心量が算出される(ステップ#31)。次に、上述した回避可能方向判断手段により、偏心量及びカメラ1によって検出した情報に基づいて回避可能方向が判断され(ステップ#32)、上述したブレーキ圧の算出方法により、偏心量、相対速度、車速等に基づいて各車輪に作用させるブレーキ圧が算出される(ステップ#33)。なお、図示しないが回避可能方向判断手段により回避不能と判断された場合には、ブレーキ20の差圧作動は行われない。また、図8及び図9においては、障害物が先行車等の移動物の場合を想定して自動ブレーキ作動手段を構成しており、障害物が静止物の場合には、異なる手段を採用する必要がある。
【0068】
次に、しきい値L3,L4が算出される(ステップ#34)。しきい値L3,L4は、上述した図5に基づいて算出されており、警報装置10の自動作動によりブレーキ20の差圧作動に先立って運転者に注意を促した後、ブレーキ20を差圧作動させることができるように構成されている。
【0069】
車間距離Lがしきい値L3より短いか否か判別され(ステップ#35)、車間距離Lがしきい値L3より短い場合には(ステップ#35・Yes)、警報装置10が自動作動する(ステップ#36)。なお、警報装置10としては、ブザー(図示せず)や表示ランプ(図示せず)等よって視覚的又は聴覚的に運転者に注意を促す以外に、例えばブレーキ20を一時的に自動作動又は差圧作動させて運転者に注意を促すように構成してもよい。
【0070】
次に、車間距離Lがしきい値L4より短いか否か判別され(ステップ#37)、車間距離Lがしきい値L4より短い場合には(ステップ#37・Yes)、算出した各車輪のブレーキ20のブレーキ圧に基づいて、ブレーキ20の切換バルブ27、増圧バルブ28及び減圧バルブ29にECU8からブレーキ制御ユニット11を介して出力されて、ブレーキ20を差圧作動させる(ステップ#38)。
【0071】
ブレーキ20が差圧作動すると、車速センサ5の検出結果に基づいて車両が停止したか否か、及び車間距離Lがしきい値L3より長いか否か判断され(ステップ#39)、車両が停止したと判断される場合、又は、車間距離Lがしきい値L3より長いと判断される場合には(ステップ#39・Yes)、切換バルブ27が切り替えられてブレーキ20の差圧作動が解除されるように構成されている(ステップ#40)。具体的には、例えば運転者が制動操作等を行い車間距離Lが衝突の可能性が低い距離になれば、ブレーキ20の差圧作動が解除される。
【0072】
車間距離Lがしきい値L3より短く、かつ車両が停止していないと判断される場合には(ステップ#39・No)、ブレーキ20の差圧作動が継続する。このブレーキ20が差圧作動している間に、カメラ1、レーダ2、ヨーレートセンサ3等の検出結果に基づいて、自車両の進行方向が変化した直後(ヨーレートセンサ3の検出値がブレーキ力制御手段によって変化した直後)に、自車両の前方に新たな障害物が出現した場合には(ステップ#41・Yes)、直ちにブレーキ20の差圧作動が解除される(ステップ#40)。そのため、先の障害物に対するブレーキ20の差圧作動が新たな障害物への対応に悪影響を及ぼすことを防止でき、新たな障害物への対応を適切に行うことができる。
【0073】
また、ブレーキ20が差圧作動している間に、操舵角センサ4の検出結果に基づいて、運転者がブレーキ20を差圧作動させた回避可能方向と逆方向にステアリングハンドルを操舵操作したと判断された場合にも(ステップ#42・Yes)、直ちにブレーキ20の差圧作動が解除される(ステップ#40)。そのため、運転者の操舵操作の方向とブレーキ20の差圧作動による回頭モーメントの発生方向とが干渉することを防止できる。
【0074】
また、ブレーキ20が差圧作動している間に、VSCが作動する車両が不安定な姿勢になったと場合にも(ステップ#43・Yes)、直ちにブレーキ20の差圧作動が解除される(ステップ#40)。そのため、ブレーキ20を差圧作動させて回頭モーメントを発生させることにより車両が却って不安定になることを防止でき、VSCによって車両の姿勢を安定させることができる。
【0075】
図示しないが、しきい値L3,L4は、自車両の車速と、自車両と障害物との相対速度に基づいて算出されており、例えば相対速度が同じ場合には、自車両の車速が速くなるに従って、しきい値L3,L4がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。また、図5に示したように、例えば自車両の車速が同じ場合には、相対速度が速くなるに従って、しきい値L3,L4がそれぞれ大きな値になり、車間距離Lが長い距離でブレーキ20及び警報装置10が自動作動するように構成されている。
【0076】
例えば、自動操舵装置(図示せず)によって自車両の障害物への衝突の回避を行う場合には、自動操舵装置の作動に伴うステアリングハンドルの回転と運転者の操舵操作とが干渉するおそれがある。しかし、以上のようにブレーキ力制御手段を構成することにより、ブレーキ20の差圧作動により運転者が自車両の障害物への衝突の回避を認知して操舵操作を行ったとしても、ブレーキ力制御手段によるブレーキ20の差圧作動と運転者の操舵操作が干渉することがない。すなわち、ステアリングハンドルそのものを操作することにより自車両の障害物への衝突の回避を行う自動操舵装置とは異なり、ブレーキ力制御手段では操舵操作とは別の操作入力であるブレーキ20の差圧作動によって自車両の障害物への衝突の回避を行うことができる。そのため、運転者の運転意思を尊重して運転フィーリングを良好に維持することのできる自動制動装置を実現できる。
【0077】
[ブレーキ力制御手段によるブレーキの作動状況]
図10に基づいてブレーキ力制御手段によるブレーキ20の作動状況について説明する。図10は、車速、相対速度、車間距離L、偏心量(+50%)等が同じ条件で、操舵回避領域における同じタイミングで運転者が操舵による緊急回避をして、ブレーキ力作制御手段によってブレーキ20を差圧作動させた場合(図10(イ))と、自動ブレーキ作動手段によってすべての車輪のブレーキ20に同じブレーキ圧を作用させた場合(図10(ロ))とをそれぞれ示す。なお、図10に示す斜線矢印は各車輪のブレーキ20のブレーキ圧の大きさの概略を示し、図10に示す白抜きの矢印は車両に作用する回頭モーメントの方向を示す。
【0078】
図10(イ)及び(ロ)に示すように、ブレーキ力作動手段によって車両に回頭モーメントを発生させることにより、ブレーキ力制御手段を備えていない場合に比べ回頭モーメントによって右方向に大きく回避することができ、障害物との衝突を小さくすることができる。なお、図示しないが、偏心量が大きい場合には、障害物との衝突を免れることも可能である。
【0079】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、ブレーキ力制御手段を図8及び図9のフローチャートのように構成した例を示したが、図8に代えて図11のフローチャートを採用してもよい。
【0080】
図11に示すように、ブレーキ力制御手段に突入すると、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、自車両と障害物との偏心量、回避可能方向、ブレーキ圧、しきい値L3,L4が算出及び判断される(ステップ#51〜54)。
【0081】
次に、算出した偏心量の絶対値が予め設定された所定値以上(例えば75%以上)か否か判別され(ステップ#55)、偏心量の絶対値が所定値以上の場合には(ステップ#55・Yes)、車速、相対速度、車間距離Lに基づいて障害物と衝突しないで回避可能方向に車両を横回避可能か否か判断される(ステップ#56)。横回避可能と判断される場合には、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、車間距離Lがしきい値L3より短くなると警報装置10が作動し(ステップ#57、#58)、しきい値L4より短くなると、一定の条件のもとブレーキ20が差圧作動する(ステップ#59、#38)。
【0082】
このように、偏心量の絶対値が所定値以上での横回避可能性が高い自車両と障害物との位置関係で、横回避可能と判断される場合にのみ、ブレーキ力制御手段によりブレーキ20を差圧作動させるように構成することにより、衝突を免れるためのブレーキ力制御手段を実現できる。
【0083】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧を所定の圧力に増減することで、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧に差圧を生じさせるように構成した例を示したが、図12に示すように、ブレーキ係数を設定し、各車輪のブレーキ20のブレーキ圧に差圧を生じさせるように構成してもよい。
【0084】
図12に基づいて、この実施例における偏心量毎のブレーキ係数の一例について説明する。図12(イ)に示すように、例えば偏心量が+50%の場合には、左後、左前及び右後のブレーキ20RL,20FL,20RRのブレーキ圧に対して右前のブレーキ20FRのブレーキ係数のみを6倍のブレーキ圧を作用させるようにブレーキ係数を設定する。このように、左前及び右前のブレーキ20FL,20FR(前輪のブレーキ20)のみにブレーキ圧の差圧を生じさせるように構成することで、後輪のスタビリティーを確保しながら、ECU8を簡素化することができる。
【0085】
図12(ロ)に示すように、例えば偏心量が+50%の場合には、左後、左前及び右後のブレーキ20RL,20FL,20RRのブレーキ圧を作用させず、右前のブレーキ20FRのみにブレーキ圧を作用させるようにブレーキ係数を設定してもよい。このように、右前のブレーキ20FRのみにブレーキ圧を生じさせるように構成することで、ECU8を簡素化することができる。
【0086】
図13に基づいて、衝突を免れるようにブレーキ力作動手段を構成し、図12(イ)に示した左前及び右前のブレーキ20FL,20FRのみにブレーキ圧の差圧を生じさせるように構成したときのブレーキ20の作動状況について説明する。
【0087】
図13は、車速、相対速度、車間距離L、偏心量(+75%)等が同じ条件で、操舵回避領域において操舵回避を怠って、ブレーキ力制御手段が作動しブレーキ20を差圧作動させた場合(図13(イ))と、自動ブレーキ作動手段が作動してすべての車輪のブレーキ20に同じブレーキ圧を作用させた場合(図13(ロ))とをそれぞれ示す。なお、図13に示す斜線矢印は各車輪のブレーキ20のブレーキ圧の大きさの概略を示し、図13に示す白抜きの矢印は車両に作用する回頭モーメントの方向を示す。
【0088】
図13(イ)及び(ロ)に示すように、ブレーキ力制御手段を備えていない場合に比べ、ブレーキ力制御手段によって車両に回頭モーメントを発生させることにより、この回頭モーメントによって右方向に回避することができ、障害物との衝突を免れることができる。
【0089】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、図5のグラフに基づいて自車両の障害物への衝突の可能性を判断した例を示したが、衝突可能性の判断を異なる手法で判断してもよい。また、衝突の可能性があると判断されてから、車間距離Lがしきい値L3,L4より短くなったときに警報装置10及びブレーキ20がそれぞれ自動作動及び差圧作動するように構成した例を示したが、例えば衝突の可能性があると判断されてから予め設定された所定時間経過後に警報装置10及びブレーキ20がそれぞれ自動作動及び差圧作動するように構成してもよい。
【0090】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、運転者が回避操作していないことを操舵角センサ4の検出結果に基づいて判断した例を示したが、操作入力検出手段として異なる検出機器(図示せず)を採用してもよく、例えばフットブレーキの踏み込み操作を検出するフットブレーキセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて運転者が回避操作していないことを判断する構成を採用してもよい。
【0091】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、レーダ2の検出結果に基づいて偏心量を算出し回避可能方向を判断した例を示したが、位置関係検出手段として異なる検出機器(図示せず)を採用してもよく、例えばレーダ2やカメラ1に限らず、ナビゲーションシステム(図示せず)、車々間通信(車両が相互に通信するシステム,図示せず)等によって回避可能方向を判断するように構成してもよい。
【0092】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、ブレーキ20のブレーキ圧に差圧を生じさせることにより、ブレーキ力に差を生じさせてブレーキ力制御手段を構成した例を示したが、ブレーキ力に差を生じさせる構成として異なる構成を採用してもよく、例えば電動ブレーキ(図示せず)の場合においては、電動ブレーキを作動する電動アクチュエータ(図示せず)等に供給する電力量を調節することにより、ブレーキ力に差を生じさせるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】車両のブロック図
【図2】ブレーキ装置の油圧回路図
【図3】偏心量の一例を説明する概略図
【図4】ブレーキ係数の一例を示すマップ
【図5】制動回避距離と操舵回避距離との関係を示すグラフ
【図6】自動制動装置の作動状態を示すフローチャート
【図7】自動ブレーキ作動手段のフローチャート
【図8】ブレーキ力制御手段のフローチャート
【図9】ブレーキ力制御手段のフローチャート
【図10】ブレーキの作動状況を説明する概略図
【図11】発明の実施の第1別形態におけるブレーキ力制御手段のフローチャート
【図12】発明の実施の第1別形態におけるブレーキ係数の一例を示すマップ
【図13】発明の実施の第1別形態におけるブレーキの作動状況を説明する概略図
【符号の説明】
【0094】
2 レーダ(位置関係検出手段)
2A レーダ(位置関係検出手段)
2B レーダ(位置関係検出手段)
2C レーダ(位置関係検出手段)
2D レーダ(位置関係検出手段)
4 操舵角センサ(操作入力検出手段)
20 ブレーキ
20FL ブレーキ(左前)
20FR ブレーキ(右前)
20RL ブレーキ(左後)
20RR ブレーキ(右後)
VSC 車両安定化制御装置
L 車間距離(実距離)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の障害物への衝突の可能性を判断する衝突可能性判断手段と、運転者の操作入力を検出する操作入力検出手段と、障害物と自車両の左右方向の位置関係を検出する位置関係検出手段と、前記位置関係検出手段の検出結果に基づいて自車両の回避可能方向を判断する回避可能方向判断手段と、
前記衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断され、かつ前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出されていない場合に、前記回避可能方向への自車両の回頭性が高まるように、各車輪のブレーキ力に差を生じさせてブレーキを自動作動させるブレーキ力制御手段と、を備えた自動制動装置。
【請求項2】
前記操作入力検出手段の検出結果に基づいてブレーキ力の制御を行うことにより、車両の姿勢制御を行う車両安定化制御装置を備え、
前記ブレーキ力制御手段よりも前記車両安定化制御装置が優先して作動するように、前記ブレーキ力制御手段を構成してある請求項1記載の自動制動装置。
【請求項3】
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段と、自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離よりも短くかつ前記制動回避距離よりも短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、を備え、
前記制動回避距離が前記操舵回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなると、前記ブレーキ力制御手段が作動しないように、前記ブレーキ力制御手段を構成してある請求項1又は2記載の自動制動装置。
【請求項4】
前記自動ブレーキ作動手段によりブレーキが自動作動している状態で、前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出された場合に、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動を解除するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある請求項3記載の自動制動装置。
【請求項1】
自車両の障害物への衝突の可能性を判断する衝突可能性判断手段と、運転者の操作入力を検出する操作入力検出手段と、障害物と自車両の左右方向の位置関係を検出する位置関係検出手段と、前記位置関係検出手段の検出結果に基づいて自車両の回避可能方向を判断する回避可能方向判断手段と、
前記衝突可能性判断手段により障害物に衝突する可能性があると判断され、かつ前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出されていない場合に、前記回避可能方向への自車両の回頭性が高まるように、各車輪のブレーキ力に差を生じさせてブレーキを自動作動させるブレーキ力制御手段と、を備えた自動制動装置。
【請求項2】
前記操作入力検出手段の検出結果に基づいてブレーキ力の制御を行うことにより、車両の姿勢制御を行う車両安定化制御装置を備え、
前記ブレーキ力制御手段よりも前記車両安定化制御装置が優先して作動するように、前記ブレーキ力制御手段を構成してある請求項1記載の自動制動装置。
【請求項3】
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段と、自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離よりも短くかつ前記制動回避距離よりも短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、を備え、
前記制動回避距離が前記操舵回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなると、前記ブレーキ力制御手段が作動しないように、前記ブレーキ力制御手段を構成してある請求項1又は2記載の自動制動装置。
【請求項4】
前記自動ブレーキ作動手段によりブレーキが自動作動している状態で、前記操作入力検出手段により運転者の操作入力が検出された場合に、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動を解除するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある請求項3記載の自動制動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−162456(P2008−162456A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355289(P2006−355289)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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