自動変速機
【課題】車載性を向上できるとともに、共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図った自動変速機を提供すること。
【解決手段】ラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素を用い、5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する。この自動変速機であって、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側に、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第5ブレーキR/Bを配置し、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側に、第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bを配置する。そして、内周側に第2クラッチ234/Cが配置されるとともに、外周側に第5ブレーキR/Bが配置され、共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート27に連結する第1ドラム部材41を備える。
【解決手段】ラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素を用い、5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する。この自動変速機であって、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側に、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第5ブレーキR/Bを配置し、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側に、第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bを配置する。そして、内周側に第2クラッチ234/Cが配置されるとともに、外周側に第5ブレーキR/Bが配置され、共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート27に連結する第1ドラム部材41を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビニオ式遊星歯車を用いて、5個の摩擦締結要素の締結・解放の組み合わせにより前進4速後退1速を達成する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラビニオ式遊星歯車(2列の遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車)を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより前進4速及び後退1速を達成する自動変速機が知られている(例えば、特許文献1の図9(a),(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラビニオ式遊星歯車を用いて4速を達成する特許文献1の図9(b)に示された自動変速機のレイアウトでは、下記の2点の問題がある。
(1) 車載性が劣る。
自動変速機の後端側には車体フレームがあるため、自動変速機の後端側の径が小さいほうが車載性は優れる。しかし、特許文献1の図9(b)に記載のレイアウトでは、出力部材の後方側(駆動源より遠い側)に摩擦締結要素を4個(C-1,C-2,B-2,B-3)配置しているため、自動変速機ケースの後端側のケース径が大きくならざるを得ない。
(2) 共通キャリアが大型化し、コストが高い。
共通キャリアからクラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアの間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部にセンターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、車載性を向上できるとともに、共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機は、
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成するものを前提とする。
この自動変速機であって、
前記出力部材より前記駆動源に近い前方側に、前記第1摩擦締結要素と前記第2摩擦締結要素と前記第5摩擦締結要素を配置した。
前記出力部材より前記駆動源から遠い後方側に、前記第3摩擦締結要素と前記第4摩擦締結要素を配置した。
内周側に前記第2摩擦締結要素が配置されるとともに、外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記前方側端部のフロントキャリアプレートに連結する第1ドラム部材を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記のように、出力部材より駆動源に近い前方側に、第1摩擦締結要素と第2摩擦締結要素と第5摩擦締結要素を配置し、出力部材より駆動源から遠い後方側に、第3摩擦締結要素と第4摩擦締結要素を配置するレイアウトを採用した。
すなわち、出力部材の後方側に2個の摩擦締結要素を配置するレイアウトである。このため、例えば、出力部材の後方側に4個の摩擦締結要素を配置する場合に比べ、自動変速機ケースの後端側のケース径を小さくできる。このように、自動変速機ケースの後端側のケース径を小さくできることで、自動変速機ケースの後端側に存在する車体フレームとの干渉が防止され、車載性が優れる。
さらに、共通キャリアの前方側端部のフロントキャリアプレートに第1ドラム部材を連結し、この第1ドラム部材の内周側に第2摩擦締結要素を配置し、外周側に第5摩擦締結要素を配置するレイアウトを採用した。
すなわち、共通キャリアから第2摩擦締結要素までの回転メンバが、共通キャリアの前方側端部に連結されたフロントキャリアプレート及び第1ドラム部材による構成である。このため、共通キャリアの中央部であって、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。このように、共通キャリアから第2摩擦締結要素までの回転メンバとして、ロングピニオンを支持する既存のフロントキャリアプレートを用いることで、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
この結果、車載性を向上できるとともに、共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図3】実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速の締結作動を示す締結作動表図である。
【図4】実施例1の自動変速機において出力ギアより駆動源から遠い後方側を示す詳細断面図である。
【図5】実施例1の自動変速機において出力ギアより駆動源に近い前方側を示す詳細断面図である。
【図6】比較例の自動変速機においてラビニオ式遊星歯車の2つのサンギアの間に配置されたセンターキャリアプレートを示す課題説明図である。
【図7】実施例1の自動変速機における第1速(1st)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図8】実施例1の自動変速機における第2速(2nd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図9】実施例1の自動変速機における第3速(3rd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図10】実施例1の自動変速機における第4速(4th)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図11】実施例1の自動変速機における後退速(Rev)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図12】実施例1の自動変速機において各変速段における各摩擦締結要素のトルク分担比を示すトルク分担比表図である。
【図13】実施例1の自動変速機において出力ギアより駆動源に近い前方側での潤滑油経路を示す潤滑油経路説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動変速機を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の自動変速機の構成を、「全体構成」、「変速構成」、「後方側配置の摩擦締結要素構成」、「前方側配置の摩擦締結要素構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図であり、図2は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦締結要素構成を説明する。
【0012】
実施例1の自動変速機は、図1及び図2に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGUと、入力軸IN(入力部材)と、出力ギアOUT(出力部材)と、第1クラッチ13R/C(第1摩擦締結要素)と、第2クラッチ234/C(第2摩擦締結要素)と、第3ブレーキ12/B(第3摩擦締結要素)と、第4ブレーキ4/B(第4摩擦締結要素)と、第5ブレーキR/B(第5摩擦締結要素)と、自動変速機ケースATCと、を備えている。
【0013】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、2列の遊星歯車であるシングルピニオン式遊星歯車とダブルピニオン式遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車である。このラビニオ式遊星歯車PGUは、図1及び図2に示すように、フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、フロントサンギアSsとリングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、リアサンギアSdとロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、ロングピニオンPLとショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有する。
【0014】
前記入力軸INは、図外のエンジン(駆動源)からの回転駆動トルクが、図1に示すように、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータT/Cを介して入力される軸である。この入力軸INに対し同軸配置によりフロントサンギア軸FSが設けられ、このフロントサンギア軸FSに、ラビニオ式遊星歯車PGUのフロントサンギアSsがスプライン嵌合されている。
【0015】
前記出力ギアOUTは、図1に示すように、リングギアRに常時連結する。この出力ギアOUTの出力回転は、カウンターギア1→カウンターシャフト2→終減速ギア3→ドライブギア4→デファレンシャルギアケース5へと伝達される。そして、デファレンシャルギアケース5に伝達された出力回転は、デファレンシャルギアケース5と一体に回転するピニオンメートシャフト6→ピニオン7,7を経過し、ピニオン7,7に噛み合う一対のサイドギア8,9から図外の左右のドライブシャフト及び左右の駆動輪へ伝達される。
【0016】
前記第1クラッチ13R/Cは、第1速(1st)と第3速(3rd)と後退速(Rev)において入力軸INとフロントサンギアSs(=フロントサンギア軸FS)を選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0017】
前記第2クラッチ234/Cは、第2速(2nd)と第3速(3rd)と第4速(4th)において入力軸INと共通キャリアCを選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0018】
前記第3ブレーキ12/Bは、第1速(1st)と第2速(2nd)においてリアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0019】
前記第4ブレーキ4/Bは、第4速(4th)においてフロントサンギアSs(=フロントサンギア軸FS)を選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0020】
前記第5ブレーキR/Bは、後退速(Rev)において共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0021】
前記自動変速機ケースATCは、図1に示すように、ケース内部空間にラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/B等を収納している。この自動変速機ケースATCの駆動源側には、コンバータハウジング10が連結され、コンバータハウジング10内にトルクコンバータT/Cが配置される。また、自動変速機ケースATCとコンバータハウジング10の連結部には、エンジン(駆動源)により回転駆動されるオイルポンプO/Pが配置されている。なお、図1において、20は車体フレームである。
【0022】
[変速構成]
図3は、実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速を達成する締結作動表を示す。以下、図3に基づいて、実施例1の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
【0023】
第1速(1st)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0024】
第2速(2nd)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0025】
第3速(3rd)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsと共通キャリアCを互いに連結することで達成する。
【0026】
第4速(4th)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、フロントサンギアSsをケース固定することで達成する。
【0027】
後退速(Rev)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、共通キャリアCをケース固定することで達成する。
【0028】
そして、図3の締結作動表から明らかなように、第1速(1st)から第4速(4th)までの隣接変速段でのアップ変速及びダウン変速は、所謂、2つの摩擦締結要素の掛け替え変速により行われる。ここで、掛け替え変速とは、変速前の変速段において同時締結されている2つの摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を締結状態のまま維持し、他の1つの摩擦締結要素を解放し、新たに1つの摩擦締結要素を締結して変速後の変速段に移行することをいう。例えば、第1速(1st)から第2速(2nd)へのアップ変速は、第3ブレーキ12/Bを締結状態のまま維持し、第1クラッチ13R/Cを解放し、第2クラッチ234/Cを締結することで行われる。
【0029】
[後方側配置の摩擦締結要素構成]
5つの摩擦締結要素は、図1及び図2に示すように、出力ギアOUTを境とし、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域と、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域に分けて配置している。以下、図4に基づいて、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域に配置された摩擦締結要素の構成を説明する。
【0030】
前記出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域には、図4に示すように、自動変速機ケースATCの内部空間に、ラビニオ式遊星歯車PGUと第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bの2つの摩擦締結要素を配置している。
【0031】
前記出力ギアOUTは、中間壁21の円筒部21bにベアリング22を介して支持されている。中間壁21は、出力ギアOUTの前方側に配置されるとともに、自動変速機ケースATCに連結され、径方向に伸びる壁部21aと、該壁部21aから軸方向の前記後方側に伸びる円筒部21bと、からなる。なお、出力ギアOUTは、後方側がリングギアRに常時連結され、前方側がパーキングギア23に常時連結される。このパーキングギア23には、パーキングポール24が噛み合い可能に配置される。
【0032】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、出力ギアOUTの後方側に隣接した位置であって、フロントサンギア軸FSの外周位置に配置される。ラビニオ式遊星歯車PGUの外径寸法は、リングギアRの外径により規定され、ラビニオ式遊星歯車PGUの軸方向寸法は、共通キャリアCの軸方向長さにより規定される。フロントサンギア軸FSの外周位置には、フロントサンギアSsがスプライン結合され、リアサンギアSdが回転可能に支持される。共通キャリアCは、ロングピニオンPLを支持するロングピニオン軸25と、ショートピニオンPSを支持するショートピニオン軸26(図1参照)と、両ピニオン軸25,26を両端位置にて支持するフロントキャリアプレート27及びリアキャリアプレート28と、により構成される。
【0033】
前記第3ブレーキ12/Bは、ラビニオ式遊星歯車PGUより径方向外周位置であって、ラビニオ式遊星歯車PGUと径方向に重なる位置に配置される。第3ブレーキ12/Bの4枚の摩擦板36は、共通キャリアCの後方側を通ってリアサンギアSdにスプライン結合された第2ハブ部材29の外周側にスプライン嵌合される。第3ブレーキ12/Bの4枚の摩擦相手板37は、自動変速機ケースATCにスプライン嵌合される。第3ブレーキ12/Bの第3ブレーキピストン30は、交互に配置された摩擦板36と摩擦相手板37による第3ブレーキ12/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCと、その内側の軸方向突出ケース部31と、により形成した大円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第3ブレーキピストン30の間には、第3ブレーキリターンスプリング32が介装される。
【0034】
前記第4ブレーキ4/Bは、第3ブレーキ12/Bの径方向内側位置であって、第3ブレーキピストン30と径方向に重なる位置に配置される。第4ブレーキ4/Bの2枚の摩擦板38は、第2ハブ部材29の後方側及びリアサンギアSdの内周側を通るフロントサンギア軸FSにスプライン結合された第3ハブ部材33の外周側にスプライン嵌合される。第4ブレーキ4/Bの2枚の摩擦相手板39は、軸方向突出ケース部31にスプライン嵌合される。第4ブレーキ4/Bの第4ブレーキピストン34は、第4ブレーキ4/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCにより形成した小円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第4ブレーキピストン34の間には、第4ブレーキリターンスプリング35が介装される。
【0035】
前記自動変速機ケースATCは、上記のように、出力ギアOUTとラビニオ式遊星歯車PGUと第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bをレイアウトしたことに対応した形状としている。すなわち、図4に示すように、出力ギアOUTの位置のケース径Dfから第3ブレーキ12/Bの位置へ向かってケース径を徐々に小さく絞り込み、第3ブレーキピストン30と第4ブレーキ4/Bが配置される後端側のケース径Dr(<Df)を小径にする形状設定としている。このように、自動変速機ケースATCの形状は、自動変速機の後端側に近接して配置される車体フレーム20と干渉しない設定としている。
【0036】
[前方側配置の摩擦締結要素構成]
5つの摩擦締結要素は、図1及び図2に示すように、出力ギアOUTを境とし、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域と、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域に分けて配置している。以下、図5に基づいて、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域に配置された摩擦締結要素の構成を説明する。
【0037】
前記出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域には、図5に示すように、自動変速機ケースATCの内部空間に、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第5ブレーキR/Bの3つの摩擦締結要素を配置している。これら3つの摩擦締結要素の径方向の配置関係は、径方向外側に第5ブレーキR/Bを配置し、第5ブレーキR/Bより径方向内側に第2クラッチ234/Cを配置し、第2クラッチ234/Cより径方向内側に第1クラッチ13R/Cを配置している。
【0038】
前記第5ブレーキR/Bは、図5に示すように、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域に配置される3つの摩擦締結要素のうち、最外周位置に配置される。第5ブレーキR/Bの3枚の摩擦板60は、共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート27に対し円筒状連結プレート40を介して連結する第1ドラム部材41の外周側にスプライン嵌合される。第5ブレーキR/Bの3枚の摩擦相手板61及びリテーニングプレート62は、中間壁21の壁部21aに固定された第5ブレーキ用ドラム42にスプライン嵌合される。第5ブレーキR/Bの第5ブレーキピストン43は、第5ブレーキR/Bの前方側であって、自動変速機ケースATCに固定した隔壁44に形成した環状溝によるピストンシリンダに配置される。第5ブレーキ用ドラム42と第5ブレーキピストン43の間には、第5ブレーキリターンスプリング45が介装される。
【0039】
前記第2クラッチ234/Cは、図5に示すように、第5ブレーキR/Bより径方向内側位置であって、かつ、第5ブレーキR/Bとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。第2クラッチ234/Cの3枚の摩擦板63は、入力軸INにスプライン結合により連結固定された第2ドラム部材46の外周側にスプライン嵌合される。第2クラッチ234/Cの3枚の摩擦相手板64及びリテーニングプレート65は、第1ドラム部材41の内周側にスプライン嵌合される。第2クラッチ234/Cの第2クラッチピストン47は、第2クラッチ234/Cの後方側であって、第1ドラム部材41に形成したピストンシリンダに配置される。第1ドラム部材41と第2クラッチピストン47の間には、第2クラッチリターンスプリング48が介装される。つまり、第1ドラム部材41は、内周側に第2クラッチ234/Cが配置されるとともに、外周側に第5ブレーキR/Bが配置される兼用ドラム部材である。
【0040】
前記第1クラッチ13R/Cは、図5に示すように、第2クラッチ234/Cより径方向内側位置であって、かつ、第2クラッチ234/Cとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。第1クラッチ13R/Cの3枚の摩擦板66は、第1ドラム部材41の内周側を通ってフロントサンギア軸FSを介してフロントサンギアSsに連結する第1ハブ部材49の外周側にスプライン嵌合される。第1クラッチ13R/Cの3枚の摩擦相手板67及びリテーニングプレート68は、入力軸INにスプライン結合により連結固定された第2ドラム部材46の内周側にスプライン嵌合される。第1クラッチ13R/Cの第1クラッチピストン50は、第1クラッチ13R/Cの前方側であって、第2ドラム部材46に形成したピストンシリンダに配置される。第2ドラム部材46と第1クラッチピストン50の間には、第1クラッチリターンスプリング51が介装される。つまり、第2ドラム部材46は、内周側に第1クラッチ13R/Cが配置されるとともに、外周側に第2クラッチ234/Cが配置される兼用ドラム部材である。
【0041】
上記のように、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域に配置された3つの摩擦締結要素は、次のような関係に設定している。第1クラッチ13R/Cの摩擦板66及び摩擦相手板67の外径を、第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の内径より小さくしている。第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の外径を、第5ブレーキR/Bの摩擦板60及び摩擦相手板61の内径より小さくしている。そして、第1クラッチ13R/Cの摩擦板66、第2クラッチ234/Cの摩擦板63、第5ブレーキR/Bの摩擦板60、を同じ枚数である3枚に設定している。同様に、第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板67、第2クラッチ234/Cの摩擦相手板64、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61、を同じ枚数である3枚に設定している。
【0042】
なお、本明細書において、「摩擦板」とは、ドラム部材又はハブ部材の外周に設けられたスプラインと嵌合するクラッチ用プレート又はブレーキ用プレートをいう。この「摩擦板」は、両面に摩擦材が貼り付けられていても、片面にのみ摩擦材が貼り付けられていてもよい。また、「摩擦相手板」とは、ドラム部材又はハブ部材の内周に設けられたスプラインと嵌合するクラッチ用プレート又はブレーキ用プレートをいう。この「摩擦相手板」は、摩擦材が貼り付けられていなくても良いし、摩擦材が貼り付けられていても良い。
【0043】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「車載性向上とキャリアの大型化抑制作用」、「前方側配置の摩擦締結要素レイアウト作用」、「前方側配置の摩擦締結要素潤滑作用」、「第5ブレーキのドラム保持作用」に分けて説明する。
【0044】
[比較例の課題]
ラビニオ式遊星歯車を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより4速を達成する特開平10−169730号公報の図9に記載された自動変速機を比較例とする。
【0045】
上記公報に記載されているように、近年、自動変速機においては、コンパクト化や低コスト化について厳しい要求が課されている。しかし、比較例に示されたレイアウトでは、下記2点の問題がある。
【0046】
(1) 車載性が劣る。
自動変速機の後端側には車体フレームがあるため、自動変速機の後端側の径が小さいほうが車載性は優れる。しかし、比較例は、出力ギアの前方側(駆動源に近い側)に第1ブレーキB-1を配置し、出力ギアの後方側(駆動源より遠い側)に第1クラッチC-1,第2クラッチC-2,第2ブレーキB-2,第3ブレーキB-3を配置している。すなわち、出力ギアの前方側に1個の摩擦締結要素を配置し、後方側に4個の摩擦締結要素を配置するレイアウトであるため、4個の摩擦締結要素を収容する自動変速機ケースの後端側のケース径が大きくならざるを得ない。
したがって、自動変速機を車両に搭載するに際し、自動変速機の後端側に存在する車体フレームとの干渉を避けるように、自動変速機の搭載位置を決める必要があり、自動変速機の搭載自由度が制限される。
【0047】
(2) 共通キャリアが大型化し、コストが高い。
比較例の場合、共通キャリアから第2クラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアS1,S2の間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部に、キャリアプレートとして、センターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。この詳しい理由を、図6を用いながら説明する。
【0048】
ドーナツ形状のセンターキャリアプレートには、図6(a),(b)に示すように、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設ける必要があり(例えば、3箇所)、このロングピニオン穴の設定によって、下記の制約条件が課される。
1) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート外周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの外径が大きくなる。
2) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート内周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの内径が小さくなり、サンギアを組み付けられなくなる。
3) ロングピニオンが通るロングピニオン穴が開くため、センターキャリアプレートの強度を確保するために、プレート板厚を厚くしなければならない。
したがって、1枚追加されたセンターキャリアプレートは、1),2),3)の制約条件をクリアした外径が大きな分厚いプレートとなり、共通キャリアが径方向にも軸方向にも大型化する。センターキャリアプレートは、新たに追加を要する追加部品であることでコストが高くなる。
【0049】
なお、上記1),2),3)の制約条件を受けないためにセンターキャリアプレートに、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設けない構成にすると、ロングピニオンを2分割する必要がある。つまり、3個のロングピニオンを用いたラビニオ式遊星歯車の場合、ロングピニオン数が6個となり、部品点数増によりコストアップする。
【0050】
[各変速段での変速作用]
実施例1のラビニオ式遊星歯車PGUは、速度線図上で回転速度関係が直線上に並ぶ4つの回転要素として、フロントサンギアSsとリアサンギアSdとリングギアRと共通キャリアCを備えている。以下、図7〜図11に基づいて、4つの回転要素の回転速度関係を異ならせることにより得られる各変速段での変速作用を説明する。
【0051】
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図7(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図7(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、共通キャリアCの回転数がフロントサンギアSsより減速され、リングギアRの回転数が共通キャリアCよりさらに減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第1速の変速段(ファーストアンダードライブ変速段)が達成される。
【0052】
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図8(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図8(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCより減速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第2速の変速段(セカンドアンダードライブ変速段)が達成される。
【0053】
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図9(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが同時締結される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsと共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図9(b)に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGU2の三つの回転要素であるフロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRが一体となって回転する。このように、フロントサンギアSsと共通キャリアCへの入力回転数と同じリングギアRの回転数(=入力回転数)が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第3速の変速段(ダイレクトドライブ変速段)が達成される。
【0054】
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図10(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bが同時締結され、第4ブレーキ4/Bの締結によりフロントサンギアSsが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図10(b)に示すように、フロントサンギアSsの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCの回転数(=入力回転数)より増速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を増速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第4速の変速段(オーバードライブ変速段)が達成される。
【0055】
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図11(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bが同時締結され、第5ブレーキR/Bの締結により共通キャリアCが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図11(b)に示すように、共通キャリアCの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転が、フロントサンギアSsの入力回転方向と逆回転方向で、かつ、減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を逆転減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、後退速の変速段(リバース変速段)が達成される。
【0056】
[車載性向上とキャリアの大型化抑制作用]
小型・廉価をコンセプトとする自動変速機の実用化を目指すには、比較例において未解決である「車載性が劣る。」、「共通キャリアが大型化し、コストが高い。」という課題を解決する必要がある。以下、これを反映する車載性向上とキャリアの大型化抑制作用を説明する。
【0057】
実施例1では、第1ドラム部材41,第2ドラム部材46及び第1ハブ部材49を取り回すことによって、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第5ブレーキR/Bの3個の摩擦締結要素を出力ギアOUTの前方側に配置するレイアウト構成を採用した。
このため、出力ギアOUTの後方側に配置される摩擦締結要素は、第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bの2個となる。したがって、例えば、出力部材の後方側に4個の摩擦締結要素が配置される比較例に比べ、自動変速機ケースATCの後端側のケース径Drを小さくできる。このように、自動変速機ケースATCの後端側のケース径Drを小さくできることで、図1及び図4に示すように、自動変速機ケースATCの後端側に存在する車体フレーム20との干渉が防止され、車載性が優れる。
【0058】
さらに、実施例1では、共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート27に第1ドラム部材41を連結し、この第1ドラム部材41の内周側に第2クラッチ234/Cを配置し、外周側に第5ブレーキR/Bを配置するレイアウトを採用した。
すなわち、共通キャリアCから第2クラッチ234/Cまでの回転メンバが、ロングピニオンPLを支持するために共通キャリアCの前方側端部に連結された既存のフロントキャリアプレート27を用いる構成である。このため、比較例のように、共通キャリアの中央部であって、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。このように、共通キャリアCから第2クラッチ234/Cまでの回転メンバとして、既存のフロントキャリアプレート27を用いることで、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアCの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
【0059】
[前方側配置の摩擦締結要素レイアウト作用]
実施例1において、3個の摩擦締結要素を出力ギアOUTの前方側に配置するレイアウト構成を採用したことに伴い、3個の摩擦締結要素を如何にしてコンパクトに収容するかを考える必要がある。以下、これを反映する前方側配置の摩擦締結要素レイアウト作用を説明する。
【0060】
実施例1では、第5ブレーキR/Bの径方向内側位置に第2クラッチ234/Cを配置し、第2クラッチ234/Cの径方向内側位置に第1クラッチ13R/Cを配置するレイアウト構成を採用した。
この結果、出力ギアOUTの前方側に配置される3個の摩擦締結要素をコンパクトに配置することができる。以下、その理由を述べる。
【0061】
まず、自動変速機の軸長が長くなるのを防止するために、これら3個の摩擦締結要素を径方向に重ねて配置するとき、径方向外側の摩擦締結要素ほど、摩擦締結要素の摩擦プレート1枚あたりの面積が大きくなるため、摩擦締結要素の伝達トルクを大きくしやすい。
【0062】
実施例1のスケルトンにおいては、各変速段における各摩擦締結要素のトルク分担比は、図12に示す表のとおりである。なお、図12において、
αfは、フロント側(シングルピニオン側)の歯数比(αf=Zss/Zr)である。
ただし、Zss:フロントサンギアSsの歯数、Zr:リングギアRの歯数
αrはリア側(ダブルピニオン側)の歯数比(αr=Zsd/Zr)である。
ただし、Zsd:リアサンギアSdの歯数、Zr:リングギアR歯数
通常、サンギアの歯数<リングギアの歯数であるため歯数比αf・αrは1より小さい値となるため、各クラッチの最大トルク分担比は、下記のとおりとなる。
第5ブレーキR/Bの最大トルク分担比:(1+αf)/αf
第2クラッチ234/Cの最大トルク分担比:αf+1
第1クラッチ13R/Cの最大トルク分担比:1
第3ブレーキ12/Bの最大トルク分担比:(αr(1+αf))/(αf(1-αr))
第4ブレーキ4/Bの最大トルク分担比:αf/(1+αf)
上記トルク分担比から明らかなとおり、第5ブレーキR/Bの最大トルク分担比>第2クラッチ234/Cの最大トルク分担比>第1クラッチ13R/Cの最大トルク分担比、の関係が成立する。このとき、最大のトルク分担比が大きい摩擦締結要素を径方向内側に配置する場合は、径方向外側に配置する場合に比べて、例えばクラッチプレートの枚数を増やす必要がある。
【0063】
これに対し、実施例1では、第5ブレーキR/Bの径方向内側位置に第2クラッチ234/Cを配置し、第2クラッチ234/Cの径方向内側位置に第1クラッチ13R/Cを配置した。
つまり、これら出力ギアOUTの前方側に配置される3個の摩擦締結要素について、最大のトルク分担比が大きくなるにしたがって径方向外側に配置している。このため、これら3個の摩擦締結要素を、コンパクトにすることができる。
【0064】
尚、クラッチの伝達トルクを上げるためには、押圧力を上げる、摩擦係数μを上げる、なども考えられる。しかし、押圧力を上げるためにはピストンの受圧面積を大きくしなければならず、また、摩擦係数μを上げるとピストンへの油圧に対するクラッチトルクのゲインが大きくなり制御性が劣ってしまう、という問題が生じる。
【0065】
実施例1では、第1クラッチ13R/Cの摩擦板66及び摩擦相手板67の外径を、第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の内径より小さくしている。第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の外径を、第5ブレーキR/Bの摩擦板60及び摩擦相手板61の内径より小さくしている。そして、第1クラッチ13R/Cの摩擦板66、第2クラッチ234/Cの摩擦板63、第2クラッチ234/Cの摩擦板60、を同じ枚数である3枚に設定している。同様に、第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板67、第2クラッチ234/Cの摩擦相手板64、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61、を同じ枚数である3枚に設定している。
【0066】
したがって、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cの摩擦板66,63,60を3段重ねで親子どり(一枚のプレート材から径違いのプレートを打ち抜くこと)することが可能になる。同様に、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cの摩擦相手板67,64,61を3段重ねで親子どりすることが可能になる。このように、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cの摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61を、それぞれ3段重ねで親子どりにより製造をすることができる。この結果、摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)の製造コストを廉価にすることができる。
【0067】
しかも、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cは、上記のように、最大トルク分担比が異なるのに対して径方向位置を異ならせることで、必要とする摩擦係合部材が全て同じ3枚となるようにしている。この結果、摩擦板と摩擦相手板のプレート材をそれぞれ3枚用意し、それぞれのプレート材について3段重ねで親子どりすることで、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cに必要とされる摩擦係合部材の枚数揃えることができる。
【0068】
[前方側配置の摩擦締結要素潤滑作用]
実施例1において、出力ギアOUTの前方側に径方向位置を異ならせて3個の摩擦締結要素を配置するレイアウト構成を採用したことに伴い、3個の摩擦締結要素を如何に潤滑するかの工夫が必要である。以下、図13に基づき、これを反映する前方側配置の摩擦締結要素潤滑作用を説明する。
【0069】
まず、第1速と第2速間の変速時は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cとの掛け替え制御が行われる。第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの掛け替え制御中は、両クラッチ13R/C,234/Cがスリップ状態になる。したがって、第1速と第2速間の変速時には、両クラッチ13R/C,234/Cの潤滑・冷却が必要になる。
【0070】
これに対し、実施例1では、第1クラッチ13R/Cの径方向に重なる位置の外周側に第2クラッチ234/Cを配置する構成を採用したことで、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの潤滑が効率的に行える。
【0071】
例えば、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが離れて配置されていたり、あるいは、軸方向に並んで配置されていたりすると、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した油は、オイル溜りに戻されるだけであり、潤滑効率が悪くなる。
【0072】
これに対し、実施例1では、フロントサンギア軸FSに形成された油路から第1ハブ部材49の前方側に供給された潤滑油が、図13の矢印Eに示すように径方向に流れ、第1ハブ部材49に形成された穴を経過して第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却する。なお、潤滑経路については、ドラム(及びハブ)には図示してしない穴が開いており、そこから潤滑油は外周側に流れる。
【0073】
一方、フロントサンギア軸FSに形成された油路から第1ハブ部材49の後方側に供給された潤滑油が、図13の矢印Fに示すように径方向に流れ、第2ドラム部材46に形成された穴を経過して第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却する。加えて、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油が、図13の矢印Gに示すように径方向に流れ、第2ドラム部材46に形成された穴を経過して第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却する。
【0074】
そして、第1クラッチ13R/C及び第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油は、図13の矢印Hに示すように径方向に流れ、第1ドラム部材41に形成された穴を経過して第5ブレーキR/Bを潤滑・冷却する。
【0075】
このように、第1クラッチ13R/Cの摩擦プレートを潤滑・冷却した油が、第2クラッチ234/Cをも潤滑・冷却することで、第1クラッチ13R/C及び第2クラッチ234/Cを効率的に潤滑することができる。したがって、第1速と第2速間の変速時、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cに対する高い潤滑・冷却要求に対して応えることができる。
【0076】
[第5ブレーキのドラム保持作用]
実施例1では、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61の保持を、自動変速機ケースATCではなく、第5ブレーキ用ドラム42により行うようにしている。以下、図5に基づいて、第5ブレーキR/Bのドラム保持作用を説明する。
【0077】
第5ブレーキ用ドラム42の内周側には、図1及び図5に示すように、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61が噛合い保持されるスプラインを全周にわたって設ける構成を採用している。
すなわち、第5ブレーキの摩擦相手板を自動変速機ケースで保持しようとしても、第5ブレーキの全周にわたってケース側にスプラインを形成できるとは限らないので、摩擦相手板の一部のスプラインは、自動変速機ケースとスプライン嵌合することができない場合がある。この場合、第5ブレーキの係合時における摩擦相手板の保持が不十分となり大きなトルクを伝達できない可能性がある。
また、第5ブレーキの摩擦相手板を自動変速機ケースで保持しようとすると、第5ブレーキの外径が不要に大きくなり、そのためにハブ等の部材も大きくなり、重量が増加し、コストアップしてしまう。
これに対し、第5ブレーキ用ドラム42を設けることによって、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61と噛み合うスプラインを、第5ブレーキ用ドラム42の全周にわたって設けることができる。つまり、自動変速機ケースにより第5ブレーキの摩擦相手板を保持する場合に比べ、第5ブレーキR/Bの係合時における摩擦相手板61の保持を十分に確保することができる。加えて、自動変速機ケースにより第5ブレーキの摩擦相手板を保持する場合に比べ、第5ブレーキR/Bの外径が小さく抑えられることで、重量増加・コストアップを抑制することができる。
【0078】
第5ブレーキ用ドラム42は、図5に示すように、中間壁21にスプライン嵌合して設けられ、後方側のドラム底部が中間壁21に当接している。そして、第5ブレーキ用ドラム42には、摩擦板60及び摩擦相手板61よりも後方側にスナップリング69が設けられるとともに、前方側にスナップリング70が設けられている。このスナップリング70は、第5ブレーキピストン43を戻すためのリターンスプリング45の反力を受ける。
したがって、第5ブレーキピストン43から押圧されることにより、摩擦板60と摩擦相手板61との間で動力が伝達する。この第5ブレーキピストン43に油圧が作用して後方側に移動する際に、リターンスプリング45及びスナップリング70を介して、第5ブレーキ用ドラム42は後方側への付勢力が働く。この付勢力により、第5ブレーキ用ドラム42の抜けを防止することができる。すなわち、第5ブレーキ用ドラム42の抜け防止のために、例えば、第5ブレーキ用ドラム42を中間壁21にボルトで固定するものに比べて部品点数が減少し、コストアップを抑制することができる。
【0079】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0080】
(1) フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、前記フロントサンギアSsと前記リングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、前記リアサンギアSdと前記ロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、前記ロングピニオンPLと前記ショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有するラビニオ式遊星歯車PGUと、
駆動源の回転を入力する入力部材(入力軸IN)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記フロントサンギアSsを選択的に連結する第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記共通キャリアCを選択的に連結する第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と、
前記リアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)と、
前記フロントサンギアSsを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)と、
前記共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)と、
前記リングギアRに常時連結する出力部材(出力ギアOUT)と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記出力部材(出力ギアOUT)より前記駆動源に近い前方側に、前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)を配置し、
前記出力部材(出力ギアOUT)より前記駆動源から遠い後方側に、前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)と前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)を配置し、
内周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置されるとともに、外周側に前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)が配置され、前記共通キャリアCの前記前方側端部のフロントキャリアプレート27に連結する第1ドラム部材41を備える。
このため、車載性を向上できるとともに、共通キャリアCの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【0081】
(2) 前記出力部材(出力ギアOUT)より前記駆動源に近い前方側には、径方向外側に前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)を配置し、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)より径方向内側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)を配置し、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)より径方向内側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)を配置した。
このため、上記(1)の効果に加え、出力部材(出力ギアOUT)より駆動源に近い前方側に配置される3個の摩擦締結要素のそれぞれで必要な摩擦プレート枚数を少なく抑え、3個の摩擦締結要素をコンパクトにすることができる。
【0082】
(3) 前記出力部材(出力ギアOUT)の前記前方側に配置されるとともに、自動変速機ケースATCに連結され、径方向に伸びる壁部21aと、該壁部21aから軸方向の前記後方側に伸びる円筒部21bと、からなる中間壁21を備え、
前記出力部材(出力ギアOUT)は、前記中間壁21の円筒部21bに支持され、
前記第1ドラム部材41は、前記中間壁21の内周側を通って前記フロントキャリアプレート27に連結され、
内周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置されるとともに、該第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と径方向に重なる位置の外周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置され、前記入力部材(入力軸IN)に連結する第2ドラム部材46と、
外周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置され、前記第1ドラム部材41の内周側を通って前記フロントサンギアSsに連結する第1ハブ部材49と、
外周側に前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)が配置され、前記共通キャリアCの前記後方側を通って前記リアサンギアSdに連結する第2ハブ部材29と、
外周側に前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)が配置され、前記第2ハブ部材29の前記後方側及び前記リアサンギアSdの内周側を通って前記フロントサンギアSsに連結する第3ハブ部材33と、を備える。
このため、上記(1)又は(2)の効果に加え、ドラム部材41,46とハブ部材49,29,33を取り回すことによって、出力部材(出力ギアOUT)より駆動源に近い前方側と、出力部材(出力ギアOUT)より駆動源から遠い後方側に、それぞれ3個の摩擦締結要素と2個の摩擦締結要素を配置することができる。さらに、径方向に重なる配置とした第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の潤滑を効率的に行うことができる。
【0083】
(4) 前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)の摩擦板66及び摩擦相手板67の外径を、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦板63及び摩擦相手板64の内径より小さくし、
前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦板63及び摩擦相手板64の外径を、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦板60及び摩擦相手板61の内径より小さくし、
前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)の摩擦板66、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦板63、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦板60、を同じ枚数にする、及び/又は、前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)の摩擦相手板67、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦相手板64、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦相手板61、を同じ枚数にする。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、前方側に配置された3個の摩擦締結要素の摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)を親子どりにより製造をすることで、摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)の製造コストを廉価にすることができる。さらに、摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)を同じ枚数とした場合、プレート材の無駄を最小に抑えた親子どりにより、3個の摩擦締結要素で必要とする枚数を揃えることができる。
【0084】
以上、本発明の自動変速機を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0085】
実施例1では、第1クラッチ13R/C、第2クラッチ234/C、第5ブレーキR/Bのそれぞれの摩擦板66,63,60及び摩擦相手板の枚数67,64,61を同数(3枚)にするものを示した。しかし、第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦板と摩擦相手板は、いずれか一方の枚数を同数にするものであってもよい。
【0086】
実施例1では、ドラム部材41,46及びハブ部材49,29,33の外周のスプラインに噛合う側の摩擦板36,38,66,63,60のそれぞれに摩擦材を貼り付けるものを示した。しかし、ドラム部材や自動変速機ケースの内周のスプラインに噛合う側の摩擦相手板にのみ摩擦材を設け、ドラム部材及びハブ部材の外周のスプラインに噛合う側の摩擦板にピストンを当接させるものなどであってもよい。
【0087】
実施例1では、入出力軸を平行配置とするFFエンジン車に搭載される自動変速機の例を示した。しかし、FFエンジン車に限らず、FRエンジン車、エンジンとモータの少なくとも一方を駆動源とするハイブリッド車、モータを駆動源とする電気自動車や燃料電池車、等の様々な車両の自動変速機としても適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
PGU ラビニオ式遊星歯車
Ss フロントサンギア
Sd リアサンギア
R リングギア
PL ロングピニオン
PS ショートピニオン
C 共通キャリア
IN 入力軸(入力部材)
OUT 出力ギア(出力部材)
ATC 自動変速機ケース
13R/C 第1クラッチ(第1摩擦締結要素)
234/C 第2クラッチ(第2摩擦締結要素)
12/B 第3ブレーキ(第3摩擦締結要素)
4/B 第4ブレーキ(第4摩擦締結要素)
R/B 第5ブレーキ(第5摩擦締結要素)
21 中間壁
21a 壁部
21b 円筒部
27 フロントキャリアプレート
29 第2ハブ部材
33 第3ハブ部材
41 第1ドラム部材
46 第2ドラム部材
49 第1ハブ部材
60 第5ブレーキR/Bの摩擦板
61 第5ブレーキR/Bの摩擦相手板
63 第2クラッチ234/Cの摩擦板
64 第2クラッチ234/Cの摩擦相手板
66 第1クラッチ13R/Cの摩擦板
67 第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビニオ式遊星歯車を用いて、5個の摩擦締結要素の締結・解放の組み合わせにより前進4速後退1速を達成する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラビニオ式遊星歯車(2列の遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車)を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより前進4速及び後退1速を達成する自動変速機が知られている(例えば、特許文献1の図9(a),(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラビニオ式遊星歯車を用いて4速を達成する特許文献1の図9(b)に示された自動変速機のレイアウトでは、下記の2点の問題がある。
(1) 車載性が劣る。
自動変速機の後端側には車体フレームがあるため、自動変速機の後端側の径が小さいほうが車載性は優れる。しかし、特許文献1の図9(b)に記載のレイアウトでは、出力部材の後方側(駆動源より遠い側)に摩擦締結要素を4個(C-1,C-2,B-2,B-3)配置しているため、自動変速機ケースの後端側のケース径が大きくならざるを得ない。
(2) 共通キャリアが大型化し、コストが高い。
共通キャリアからクラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアの間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部にセンターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、車載性を向上できるとともに、共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機は、
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成するものを前提とする。
この自動変速機であって、
前記出力部材より前記駆動源に近い前方側に、前記第1摩擦締結要素と前記第2摩擦締結要素と前記第5摩擦締結要素を配置した。
前記出力部材より前記駆動源から遠い後方側に、前記第3摩擦締結要素と前記第4摩擦締結要素を配置した。
内周側に前記第2摩擦締結要素が配置されるとともに、外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記前方側端部のフロントキャリアプレートに連結する第1ドラム部材を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記のように、出力部材より駆動源に近い前方側に、第1摩擦締結要素と第2摩擦締結要素と第5摩擦締結要素を配置し、出力部材より駆動源から遠い後方側に、第3摩擦締結要素と第4摩擦締結要素を配置するレイアウトを採用した。
すなわち、出力部材の後方側に2個の摩擦締結要素を配置するレイアウトである。このため、例えば、出力部材の後方側に4個の摩擦締結要素を配置する場合に比べ、自動変速機ケースの後端側のケース径を小さくできる。このように、自動変速機ケースの後端側のケース径を小さくできることで、自動変速機ケースの後端側に存在する車体フレームとの干渉が防止され、車載性が優れる。
さらに、共通キャリアの前方側端部のフロントキャリアプレートに第1ドラム部材を連結し、この第1ドラム部材の内周側に第2摩擦締結要素を配置し、外周側に第5摩擦締結要素を配置するレイアウトを採用した。
すなわち、共通キャリアから第2摩擦締結要素までの回転メンバが、共通キャリアの前方側端部に連結されたフロントキャリアプレート及び第1ドラム部材による構成である。このため、共通キャリアの中央部であって、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。このように、共通キャリアから第2摩擦締結要素までの回転メンバとして、ロングピニオンを支持する既存のフロントキャリアプレートを用いることで、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
この結果、車載性を向上できるとともに、共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図3】実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速の締結作動を示す締結作動表図である。
【図4】実施例1の自動変速機において出力ギアより駆動源から遠い後方側を示す詳細断面図である。
【図5】実施例1の自動変速機において出力ギアより駆動源に近い前方側を示す詳細断面図である。
【図6】比較例の自動変速機においてラビニオ式遊星歯車の2つのサンギアの間に配置されたセンターキャリアプレートを示す課題説明図である。
【図7】実施例1の自動変速機における第1速(1st)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図8】実施例1の自動変速機における第2速(2nd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図9】実施例1の自動変速機における第3速(3rd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図10】実施例1の自動変速機における第4速(4th)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図11】実施例1の自動変速機における後退速(Rev)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図12】実施例1の自動変速機において各変速段における各摩擦締結要素のトルク分担比を示すトルク分担比表図である。
【図13】実施例1の自動変速機において出力ギアより駆動源に近い前方側での潤滑油経路を示す潤滑油経路説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動変速機を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の自動変速機の構成を、「全体構成」、「変速構成」、「後方側配置の摩擦締結要素構成」、「前方側配置の摩擦締結要素構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図であり、図2は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦締結要素構成を説明する。
【0012】
実施例1の自動変速機は、図1及び図2に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGUと、入力軸IN(入力部材)と、出力ギアOUT(出力部材)と、第1クラッチ13R/C(第1摩擦締結要素)と、第2クラッチ234/C(第2摩擦締結要素)と、第3ブレーキ12/B(第3摩擦締結要素)と、第4ブレーキ4/B(第4摩擦締結要素)と、第5ブレーキR/B(第5摩擦締結要素)と、自動変速機ケースATCと、を備えている。
【0013】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、2列の遊星歯車であるシングルピニオン式遊星歯車とダブルピニオン式遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車である。このラビニオ式遊星歯車PGUは、図1及び図2に示すように、フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、フロントサンギアSsとリングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、リアサンギアSdとロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、ロングピニオンPLとショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有する。
【0014】
前記入力軸INは、図外のエンジン(駆動源)からの回転駆動トルクが、図1に示すように、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータT/Cを介して入力される軸である。この入力軸INに対し同軸配置によりフロントサンギア軸FSが設けられ、このフロントサンギア軸FSに、ラビニオ式遊星歯車PGUのフロントサンギアSsがスプライン嵌合されている。
【0015】
前記出力ギアOUTは、図1に示すように、リングギアRに常時連結する。この出力ギアOUTの出力回転は、カウンターギア1→カウンターシャフト2→終減速ギア3→ドライブギア4→デファレンシャルギアケース5へと伝達される。そして、デファレンシャルギアケース5に伝達された出力回転は、デファレンシャルギアケース5と一体に回転するピニオンメートシャフト6→ピニオン7,7を経過し、ピニオン7,7に噛み合う一対のサイドギア8,9から図外の左右のドライブシャフト及び左右の駆動輪へ伝達される。
【0016】
前記第1クラッチ13R/Cは、第1速(1st)と第3速(3rd)と後退速(Rev)において入力軸INとフロントサンギアSs(=フロントサンギア軸FS)を選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0017】
前記第2クラッチ234/Cは、第2速(2nd)と第3速(3rd)と第4速(4th)において入力軸INと共通キャリアCを選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0018】
前記第3ブレーキ12/Bは、第1速(1st)と第2速(2nd)においてリアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0019】
前記第4ブレーキ4/Bは、第4速(4th)においてフロントサンギアSs(=フロントサンギア軸FS)を選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0020】
前記第5ブレーキR/Bは、後退速(Rev)において共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0021】
前記自動変速機ケースATCは、図1に示すように、ケース内部空間にラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/B等を収納している。この自動変速機ケースATCの駆動源側には、コンバータハウジング10が連結され、コンバータハウジング10内にトルクコンバータT/Cが配置される。また、自動変速機ケースATCとコンバータハウジング10の連結部には、エンジン(駆動源)により回転駆動されるオイルポンプO/Pが配置されている。なお、図1において、20は車体フレームである。
【0022】
[変速構成]
図3は、実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速を達成する締結作動表を示す。以下、図3に基づいて、実施例1の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
【0023】
第1速(1st)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0024】
第2速(2nd)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0025】
第3速(3rd)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsと共通キャリアCを互いに連結することで達成する。
【0026】
第4速(4th)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、フロントサンギアSsをケース固定することで達成する。
【0027】
後退速(Rev)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、共通キャリアCをケース固定することで達成する。
【0028】
そして、図3の締結作動表から明らかなように、第1速(1st)から第4速(4th)までの隣接変速段でのアップ変速及びダウン変速は、所謂、2つの摩擦締結要素の掛け替え変速により行われる。ここで、掛け替え変速とは、変速前の変速段において同時締結されている2つの摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を締結状態のまま維持し、他の1つの摩擦締結要素を解放し、新たに1つの摩擦締結要素を締結して変速後の変速段に移行することをいう。例えば、第1速(1st)から第2速(2nd)へのアップ変速は、第3ブレーキ12/Bを締結状態のまま維持し、第1クラッチ13R/Cを解放し、第2クラッチ234/Cを締結することで行われる。
【0029】
[後方側配置の摩擦締結要素構成]
5つの摩擦締結要素は、図1及び図2に示すように、出力ギアOUTを境とし、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域と、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域に分けて配置している。以下、図4に基づいて、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域に配置された摩擦締結要素の構成を説明する。
【0030】
前記出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域には、図4に示すように、自動変速機ケースATCの内部空間に、ラビニオ式遊星歯車PGUと第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bの2つの摩擦締結要素を配置している。
【0031】
前記出力ギアOUTは、中間壁21の円筒部21bにベアリング22を介して支持されている。中間壁21は、出力ギアOUTの前方側に配置されるとともに、自動変速機ケースATCに連結され、径方向に伸びる壁部21aと、該壁部21aから軸方向の前記後方側に伸びる円筒部21bと、からなる。なお、出力ギアOUTは、後方側がリングギアRに常時連結され、前方側がパーキングギア23に常時連結される。このパーキングギア23には、パーキングポール24が噛み合い可能に配置される。
【0032】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、出力ギアOUTの後方側に隣接した位置であって、フロントサンギア軸FSの外周位置に配置される。ラビニオ式遊星歯車PGUの外径寸法は、リングギアRの外径により規定され、ラビニオ式遊星歯車PGUの軸方向寸法は、共通キャリアCの軸方向長さにより規定される。フロントサンギア軸FSの外周位置には、フロントサンギアSsがスプライン結合され、リアサンギアSdが回転可能に支持される。共通キャリアCは、ロングピニオンPLを支持するロングピニオン軸25と、ショートピニオンPSを支持するショートピニオン軸26(図1参照)と、両ピニオン軸25,26を両端位置にて支持するフロントキャリアプレート27及びリアキャリアプレート28と、により構成される。
【0033】
前記第3ブレーキ12/Bは、ラビニオ式遊星歯車PGUより径方向外周位置であって、ラビニオ式遊星歯車PGUと径方向に重なる位置に配置される。第3ブレーキ12/Bの4枚の摩擦板36は、共通キャリアCの後方側を通ってリアサンギアSdにスプライン結合された第2ハブ部材29の外周側にスプライン嵌合される。第3ブレーキ12/Bの4枚の摩擦相手板37は、自動変速機ケースATCにスプライン嵌合される。第3ブレーキ12/Bの第3ブレーキピストン30は、交互に配置された摩擦板36と摩擦相手板37による第3ブレーキ12/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCと、その内側の軸方向突出ケース部31と、により形成した大円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第3ブレーキピストン30の間には、第3ブレーキリターンスプリング32が介装される。
【0034】
前記第4ブレーキ4/Bは、第3ブレーキ12/Bの径方向内側位置であって、第3ブレーキピストン30と径方向に重なる位置に配置される。第4ブレーキ4/Bの2枚の摩擦板38は、第2ハブ部材29の後方側及びリアサンギアSdの内周側を通るフロントサンギア軸FSにスプライン結合された第3ハブ部材33の外周側にスプライン嵌合される。第4ブレーキ4/Bの2枚の摩擦相手板39は、軸方向突出ケース部31にスプライン嵌合される。第4ブレーキ4/Bの第4ブレーキピストン34は、第4ブレーキ4/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCにより形成した小円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第4ブレーキピストン34の間には、第4ブレーキリターンスプリング35が介装される。
【0035】
前記自動変速機ケースATCは、上記のように、出力ギアOUTとラビニオ式遊星歯車PGUと第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bをレイアウトしたことに対応した形状としている。すなわち、図4に示すように、出力ギアOUTの位置のケース径Dfから第3ブレーキ12/Bの位置へ向かってケース径を徐々に小さく絞り込み、第3ブレーキピストン30と第4ブレーキ4/Bが配置される後端側のケース径Dr(<Df)を小径にする形状設定としている。このように、自動変速機ケースATCの形状は、自動変速機の後端側に近接して配置される車体フレーム20と干渉しない設定としている。
【0036】
[前方側配置の摩擦締結要素構成]
5つの摩擦締結要素は、図1及び図2に示すように、出力ギアOUTを境とし、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域と、出力ギアOUTより駆動源から遠い後方側の領域に分けて配置している。以下、図5に基づいて、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域に配置された摩擦締結要素の構成を説明する。
【0037】
前記出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域には、図5に示すように、自動変速機ケースATCの内部空間に、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第5ブレーキR/Bの3つの摩擦締結要素を配置している。これら3つの摩擦締結要素の径方向の配置関係は、径方向外側に第5ブレーキR/Bを配置し、第5ブレーキR/Bより径方向内側に第2クラッチ234/Cを配置し、第2クラッチ234/Cより径方向内側に第1クラッチ13R/Cを配置している。
【0038】
前記第5ブレーキR/Bは、図5に示すように、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域に配置される3つの摩擦締結要素のうち、最外周位置に配置される。第5ブレーキR/Bの3枚の摩擦板60は、共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート27に対し円筒状連結プレート40を介して連結する第1ドラム部材41の外周側にスプライン嵌合される。第5ブレーキR/Bの3枚の摩擦相手板61及びリテーニングプレート62は、中間壁21の壁部21aに固定された第5ブレーキ用ドラム42にスプライン嵌合される。第5ブレーキR/Bの第5ブレーキピストン43は、第5ブレーキR/Bの前方側であって、自動変速機ケースATCに固定した隔壁44に形成した環状溝によるピストンシリンダに配置される。第5ブレーキ用ドラム42と第5ブレーキピストン43の間には、第5ブレーキリターンスプリング45が介装される。
【0039】
前記第2クラッチ234/Cは、図5に示すように、第5ブレーキR/Bより径方向内側位置であって、かつ、第5ブレーキR/Bとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。第2クラッチ234/Cの3枚の摩擦板63は、入力軸INにスプライン結合により連結固定された第2ドラム部材46の外周側にスプライン嵌合される。第2クラッチ234/Cの3枚の摩擦相手板64及びリテーニングプレート65は、第1ドラム部材41の内周側にスプライン嵌合される。第2クラッチ234/Cの第2クラッチピストン47は、第2クラッチ234/Cの後方側であって、第1ドラム部材41に形成したピストンシリンダに配置される。第1ドラム部材41と第2クラッチピストン47の間には、第2クラッチリターンスプリング48が介装される。つまり、第1ドラム部材41は、内周側に第2クラッチ234/Cが配置されるとともに、外周側に第5ブレーキR/Bが配置される兼用ドラム部材である。
【0040】
前記第1クラッチ13R/Cは、図5に示すように、第2クラッチ234/Cより径方向内側位置であって、かつ、第2クラッチ234/Cとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。第1クラッチ13R/Cの3枚の摩擦板66は、第1ドラム部材41の内周側を通ってフロントサンギア軸FSを介してフロントサンギアSsに連結する第1ハブ部材49の外周側にスプライン嵌合される。第1クラッチ13R/Cの3枚の摩擦相手板67及びリテーニングプレート68は、入力軸INにスプライン結合により連結固定された第2ドラム部材46の内周側にスプライン嵌合される。第1クラッチ13R/Cの第1クラッチピストン50は、第1クラッチ13R/Cの前方側であって、第2ドラム部材46に形成したピストンシリンダに配置される。第2ドラム部材46と第1クラッチピストン50の間には、第1クラッチリターンスプリング51が介装される。つまり、第2ドラム部材46は、内周側に第1クラッチ13R/Cが配置されるとともに、外周側に第2クラッチ234/Cが配置される兼用ドラム部材である。
【0041】
上記のように、出力ギアOUTより駆動源に近い前方側の領域に配置された3つの摩擦締結要素は、次のような関係に設定している。第1クラッチ13R/Cの摩擦板66及び摩擦相手板67の外径を、第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の内径より小さくしている。第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の外径を、第5ブレーキR/Bの摩擦板60及び摩擦相手板61の内径より小さくしている。そして、第1クラッチ13R/Cの摩擦板66、第2クラッチ234/Cの摩擦板63、第5ブレーキR/Bの摩擦板60、を同じ枚数である3枚に設定している。同様に、第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板67、第2クラッチ234/Cの摩擦相手板64、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61、を同じ枚数である3枚に設定している。
【0042】
なお、本明細書において、「摩擦板」とは、ドラム部材又はハブ部材の外周に設けられたスプラインと嵌合するクラッチ用プレート又はブレーキ用プレートをいう。この「摩擦板」は、両面に摩擦材が貼り付けられていても、片面にのみ摩擦材が貼り付けられていてもよい。また、「摩擦相手板」とは、ドラム部材又はハブ部材の内周に設けられたスプラインと嵌合するクラッチ用プレート又はブレーキ用プレートをいう。この「摩擦相手板」は、摩擦材が貼り付けられていなくても良いし、摩擦材が貼り付けられていても良い。
【0043】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「車載性向上とキャリアの大型化抑制作用」、「前方側配置の摩擦締結要素レイアウト作用」、「前方側配置の摩擦締結要素潤滑作用」、「第5ブレーキのドラム保持作用」に分けて説明する。
【0044】
[比較例の課題]
ラビニオ式遊星歯車を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより4速を達成する特開平10−169730号公報の図9に記載された自動変速機を比較例とする。
【0045】
上記公報に記載されているように、近年、自動変速機においては、コンパクト化や低コスト化について厳しい要求が課されている。しかし、比較例に示されたレイアウトでは、下記2点の問題がある。
【0046】
(1) 車載性が劣る。
自動変速機の後端側には車体フレームがあるため、自動変速機の後端側の径が小さいほうが車載性は優れる。しかし、比較例は、出力ギアの前方側(駆動源に近い側)に第1ブレーキB-1を配置し、出力ギアの後方側(駆動源より遠い側)に第1クラッチC-1,第2クラッチC-2,第2ブレーキB-2,第3ブレーキB-3を配置している。すなわち、出力ギアの前方側に1個の摩擦締結要素を配置し、後方側に4個の摩擦締結要素を配置するレイアウトであるため、4個の摩擦締結要素を収容する自動変速機ケースの後端側のケース径が大きくならざるを得ない。
したがって、自動変速機を車両に搭載するに際し、自動変速機の後端側に存在する車体フレームとの干渉を避けるように、自動変速機の搭載位置を決める必要があり、自動変速機の搭載自由度が制限される。
【0047】
(2) 共通キャリアが大型化し、コストが高い。
比較例の場合、共通キャリアから第2クラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアS1,S2の間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部に、キャリアプレートとして、センターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。この詳しい理由を、図6を用いながら説明する。
【0048】
ドーナツ形状のセンターキャリアプレートには、図6(a),(b)に示すように、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設ける必要があり(例えば、3箇所)、このロングピニオン穴の設定によって、下記の制約条件が課される。
1) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート外周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの外径が大きくなる。
2) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート内周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの内径が小さくなり、サンギアを組み付けられなくなる。
3) ロングピニオンが通るロングピニオン穴が開くため、センターキャリアプレートの強度を確保するために、プレート板厚を厚くしなければならない。
したがって、1枚追加されたセンターキャリアプレートは、1),2),3)の制約条件をクリアした外径が大きな分厚いプレートとなり、共通キャリアが径方向にも軸方向にも大型化する。センターキャリアプレートは、新たに追加を要する追加部品であることでコストが高くなる。
【0049】
なお、上記1),2),3)の制約条件を受けないためにセンターキャリアプレートに、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設けない構成にすると、ロングピニオンを2分割する必要がある。つまり、3個のロングピニオンを用いたラビニオ式遊星歯車の場合、ロングピニオン数が6個となり、部品点数増によりコストアップする。
【0050】
[各変速段での変速作用]
実施例1のラビニオ式遊星歯車PGUは、速度線図上で回転速度関係が直線上に並ぶ4つの回転要素として、フロントサンギアSsとリアサンギアSdとリングギアRと共通キャリアCを備えている。以下、図7〜図11に基づいて、4つの回転要素の回転速度関係を異ならせることにより得られる各変速段での変速作用を説明する。
【0051】
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図7(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図7(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、共通キャリアCの回転数がフロントサンギアSsより減速され、リングギアRの回転数が共通キャリアCよりさらに減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第1速の変速段(ファーストアンダードライブ変速段)が達成される。
【0052】
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図8(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図8(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCより減速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第2速の変速段(セカンドアンダードライブ変速段)が達成される。
【0053】
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図9(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが同時締結される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsと共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図9(b)に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGU2の三つの回転要素であるフロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRが一体となって回転する。このように、フロントサンギアSsと共通キャリアCへの入力回転数と同じリングギアRの回転数(=入力回転数)が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第3速の変速段(ダイレクトドライブ変速段)が達成される。
【0054】
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図10(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bが同時締結され、第4ブレーキ4/Bの締結によりフロントサンギアSsが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図10(b)に示すように、フロントサンギアSsの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCの回転数(=入力回転数)より増速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を増速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第4速の変速段(オーバードライブ変速段)が達成される。
【0055】
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図11(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bが同時締結され、第5ブレーキR/Bの締結により共通キャリアCが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図11(b)に示すように、共通キャリアCの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転が、フロントサンギアSsの入力回転方向と逆回転方向で、かつ、減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を逆転減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、後退速の変速段(リバース変速段)が達成される。
【0056】
[車載性向上とキャリアの大型化抑制作用]
小型・廉価をコンセプトとする自動変速機の実用化を目指すには、比較例において未解決である「車載性が劣る。」、「共通キャリアが大型化し、コストが高い。」という課題を解決する必要がある。以下、これを反映する車載性向上とキャリアの大型化抑制作用を説明する。
【0057】
実施例1では、第1ドラム部材41,第2ドラム部材46及び第1ハブ部材49を取り回すことによって、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第5ブレーキR/Bの3個の摩擦締結要素を出力ギアOUTの前方側に配置するレイアウト構成を採用した。
このため、出力ギアOUTの後方側に配置される摩擦締結要素は、第3ブレーキ12/Bと第4ブレーキ4/Bの2個となる。したがって、例えば、出力部材の後方側に4個の摩擦締結要素が配置される比較例に比べ、自動変速機ケースATCの後端側のケース径Drを小さくできる。このように、自動変速機ケースATCの後端側のケース径Drを小さくできることで、図1及び図4に示すように、自動変速機ケースATCの後端側に存在する車体フレーム20との干渉が防止され、車載性が優れる。
【0058】
さらに、実施例1では、共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート27に第1ドラム部材41を連結し、この第1ドラム部材41の内周側に第2クラッチ234/Cを配置し、外周側に第5ブレーキR/Bを配置するレイアウトを採用した。
すなわち、共通キャリアCから第2クラッチ234/Cまでの回転メンバが、ロングピニオンPLを支持するために共通キャリアCの前方側端部に連結された既存のフロントキャリアプレート27を用いる構成である。このため、比較例のように、共通キャリアの中央部であって、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。このように、共通キャリアCから第2クラッチ234/Cまでの回転メンバとして、既存のフロントキャリアプレート27を用いることで、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアCの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
【0059】
[前方側配置の摩擦締結要素レイアウト作用]
実施例1において、3個の摩擦締結要素を出力ギアOUTの前方側に配置するレイアウト構成を採用したことに伴い、3個の摩擦締結要素を如何にしてコンパクトに収容するかを考える必要がある。以下、これを反映する前方側配置の摩擦締結要素レイアウト作用を説明する。
【0060】
実施例1では、第5ブレーキR/Bの径方向内側位置に第2クラッチ234/Cを配置し、第2クラッチ234/Cの径方向内側位置に第1クラッチ13R/Cを配置するレイアウト構成を採用した。
この結果、出力ギアOUTの前方側に配置される3個の摩擦締結要素をコンパクトに配置することができる。以下、その理由を述べる。
【0061】
まず、自動変速機の軸長が長くなるのを防止するために、これら3個の摩擦締結要素を径方向に重ねて配置するとき、径方向外側の摩擦締結要素ほど、摩擦締結要素の摩擦プレート1枚あたりの面積が大きくなるため、摩擦締結要素の伝達トルクを大きくしやすい。
【0062】
実施例1のスケルトンにおいては、各変速段における各摩擦締結要素のトルク分担比は、図12に示す表のとおりである。なお、図12において、
αfは、フロント側(シングルピニオン側)の歯数比(αf=Zss/Zr)である。
ただし、Zss:フロントサンギアSsの歯数、Zr:リングギアRの歯数
αrはリア側(ダブルピニオン側)の歯数比(αr=Zsd/Zr)である。
ただし、Zsd:リアサンギアSdの歯数、Zr:リングギアR歯数
通常、サンギアの歯数<リングギアの歯数であるため歯数比αf・αrは1より小さい値となるため、各クラッチの最大トルク分担比は、下記のとおりとなる。
第5ブレーキR/Bの最大トルク分担比:(1+αf)/αf
第2クラッチ234/Cの最大トルク分担比:αf+1
第1クラッチ13R/Cの最大トルク分担比:1
第3ブレーキ12/Bの最大トルク分担比:(αr(1+αf))/(αf(1-αr))
第4ブレーキ4/Bの最大トルク分担比:αf/(1+αf)
上記トルク分担比から明らかなとおり、第5ブレーキR/Bの最大トルク分担比>第2クラッチ234/Cの最大トルク分担比>第1クラッチ13R/Cの最大トルク分担比、の関係が成立する。このとき、最大のトルク分担比が大きい摩擦締結要素を径方向内側に配置する場合は、径方向外側に配置する場合に比べて、例えばクラッチプレートの枚数を増やす必要がある。
【0063】
これに対し、実施例1では、第5ブレーキR/Bの径方向内側位置に第2クラッチ234/Cを配置し、第2クラッチ234/Cの径方向内側位置に第1クラッチ13R/Cを配置した。
つまり、これら出力ギアOUTの前方側に配置される3個の摩擦締結要素について、最大のトルク分担比が大きくなるにしたがって径方向外側に配置している。このため、これら3個の摩擦締結要素を、コンパクトにすることができる。
【0064】
尚、クラッチの伝達トルクを上げるためには、押圧力を上げる、摩擦係数μを上げる、なども考えられる。しかし、押圧力を上げるためにはピストンの受圧面積を大きくしなければならず、また、摩擦係数μを上げるとピストンへの油圧に対するクラッチトルクのゲインが大きくなり制御性が劣ってしまう、という問題が生じる。
【0065】
実施例1では、第1クラッチ13R/Cの摩擦板66及び摩擦相手板67の外径を、第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の内径より小さくしている。第2クラッチ234/Cの摩擦板63及び摩擦相手板64の外径を、第5ブレーキR/Bの摩擦板60及び摩擦相手板61の内径より小さくしている。そして、第1クラッチ13R/Cの摩擦板66、第2クラッチ234/Cの摩擦板63、第2クラッチ234/Cの摩擦板60、を同じ枚数である3枚に設定している。同様に、第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板67、第2クラッチ234/Cの摩擦相手板64、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61、を同じ枚数である3枚に設定している。
【0066】
したがって、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cの摩擦板66,63,60を3段重ねで親子どり(一枚のプレート材から径違いのプレートを打ち抜くこと)することが可能になる。同様に、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cの摩擦相手板67,64,61を3段重ねで親子どりすることが可能になる。このように、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cの摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61を、それぞれ3段重ねで親子どりにより製造をすることができる。この結果、摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)の製造コストを廉価にすることができる。
【0067】
しかも、前方側に配置された第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cは、上記のように、最大トルク分担比が異なるのに対して径方向位置を異ならせることで、必要とする摩擦係合部材が全て同じ3枚となるようにしている。この結果、摩擦板と摩擦相手板のプレート材をそれぞれ3枚用意し、それぞれのプレート材について3段重ねで親子どりすることで、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第2クラッチ234/Cに必要とされる摩擦係合部材の枚数揃えることができる。
【0068】
[前方側配置の摩擦締結要素潤滑作用]
実施例1において、出力ギアOUTの前方側に径方向位置を異ならせて3個の摩擦締結要素を配置するレイアウト構成を採用したことに伴い、3個の摩擦締結要素を如何に潤滑するかの工夫が必要である。以下、図13に基づき、これを反映する前方側配置の摩擦締結要素潤滑作用を説明する。
【0069】
まず、第1速と第2速間の変速時は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cとの掛け替え制御が行われる。第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの掛け替え制御中は、両クラッチ13R/C,234/Cがスリップ状態になる。したがって、第1速と第2速間の変速時には、両クラッチ13R/C,234/Cの潤滑・冷却が必要になる。
【0070】
これに対し、実施例1では、第1クラッチ13R/Cの径方向に重なる位置の外周側に第2クラッチ234/Cを配置する構成を採用したことで、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの潤滑が効率的に行える。
【0071】
例えば、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが離れて配置されていたり、あるいは、軸方向に並んで配置されていたりすると、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した油は、オイル溜りに戻されるだけであり、潤滑効率が悪くなる。
【0072】
これに対し、実施例1では、フロントサンギア軸FSに形成された油路から第1ハブ部材49の前方側に供給された潤滑油が、図13の矢印Eに示すように径方向に流れ、第1ハブ部材49に形成された穴を経過して第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却する。なお、潤滑経路については、ドラム(及びハブ)には図示してしない穴が開いており、そこから潤滑油は外周側に流れる。
【0073】
一方、フロントサンギア軸FSに形成された油路から第1ハブ部材49の後方側に供給された潤滑油が、図13の矢印Fに示すように径方向に流れ、第2ドラム部材46に形成された穴を経過して第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却する。加えて、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油が、図13の矢印Gに示すように径方向に流れ、第2ドラム部材46に形成された穴を経過して第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却する。
【0074】
そして、第1クラッチ13R/C及び第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油は、図13の矢印Hに示すように径方向に流れ、第1ドラム部材41に形成された穴を経過して第5ブレーキR/Bを潤滑・冷却する。
【0075】
このように、第1クラッチ13R/Cの摩擦プレートを潤滑・冷却した油が、第2クラッチ234/Cをも潤滑・冷却することで、第1クラッチ13R/C及び第2クラッチ234/Cを効率的に潤滑することができる。したがって、第1速と第2速間の変速時、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cに対する高い潤滑・冷却要求に対して応えることができる。
【0076】
[第5ブレーキのドラム保持作用]
実施例1では、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61の保持を、自動変速機ケースATCではなく、第5ブレーキ用ドラム42により行うようにしている。以下、図5に基づいて、第5ブレーキR/Bのドラム保持作用を説明する。
【0077】
第5ブレーキ用ドラム42の内周側には、図1及び図5に示すように、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61が噛合い保持されるスプラインを全周にわたって設ける構成を採用している。
すなわち、第5ブレーキの摩擦相手板を自動変速機ケースで保持しようとしても、第5ブレーキの全周にわたってケース側にスプラインを形成できるとは限らないので、摩擦相手板の一部のスプラインは、自動変速機ケースとスプライン嵌合することができない場合がある。この場合、第5ブレーキの係合時における摩擦相手板の保持が不十分となり大きなトルクを伝達できない可能性がある。
また、第5ブレーキの摩擦相手板を自動変速機ケースで保持しようとすると、第5ブレーキの外径が不要に大きくなり、そのためにハブ等の部材も大きくなり、重量が増加し、コストアップしてしまう。
これに対し、第5ブレーキ用ドラム42を設けることによって、第5ブレーキR/Bの摩擦相手板61と噛み合うスプラインを、第5ブレーキ用ドラム42の全周にわたって設けることができる。つまり、自動変速機ケースにより第5ブレーキの摩擦相手板を保持する場合に比べ、第5ブレーキR/Bの係合時における摩擦相手板61の保持を十分に確保することができる。加えて、自動変速機ケースにより第5ブレーキの摩擦相手板を保持する場合に比べ、第5ブレーキR/Bの外径が小さく抑えられることで、重量増加・コストアップを抑制することができる。
【0078】
第5ブレーキ用ドラム42は、図5に示すように、中間壁21にスプライン嵌合して設けられ、後方側のドラム底部が中間壁21に当接している。そして、第5ブレーキ用ドラム42には、摩擦板60及び摩擦相手板61よりも後方側にスナップリング69が設けられるとともに、前方側にスナップリング70が設けられている。このスナップリング70は、第5ブレーキピストン43を戻すためのリターンスプリング45の反力を受ける。
したがって、第5ブレーキピストン43から押圧されることにより、摩擦板60と摩擦相手板61との間で動力が伝達する。この第5ブレーキピストン43に油圧が作用して後方側に移動する際に、リターンスプリング45及びスナップリング70を介して、第5ブレーキ用ドラム42は後方側への付勢力が働く。この付勢力により、第5ブレーキ用ドラム42の抜けを防止することができる。すなわち、第5ブレーキ用ドラム42の抜け防止のために、例えば、第5ブレーキ用ドラム42を中間壁21にボルトで固定するものに比べて部品点数が減少し、コストアップを抑制することができる。
【0079】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0080】
(1) フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、前記フロントサンギアSsと前記リングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、前記リアサンギアSdと前記ロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、前記ロングピニオンPLと前記ショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有するラビニオ式遊星歯車PGUと、
駆動源の回転を入力する入力部材(入力軸IN)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記フロントサンギアSsを選択的に連結する第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記共通キャリアCを選択的に連結する第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と、
前記リアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)と、
前記フロントサンギアSsを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)と、
前記共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)と、
前記リングギアRに常時連結する出力部材(出力ギアOUT)と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記出力部材(出力ギアOUT)より前記駆動源に近い前方側に、前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)を配置し、
前記出力部材(出力ギアOUT)より前記駆動源から遠い後方側に、前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)と前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)を配置し、
内周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置されるとともに、外周側に前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)が配置され、前記共通キャリアCの前記前方側端部のフロントキャリアプレート27に連結する第1ドラム部材41を備える。
このため、車載性を向上できるとともに、共通キャリアCの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【0081】
(2) 前記出力部材(出力ギアOUT)より前記駆動源に近い前方側には、径方向外側に前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)を配置し、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)より径方向内側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)を配置し、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)より径方向内側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)を配置した。
このため、上記(1)の効果に加え、出力部材(出力ギアOUT)より駆動源に近い前方側に配置される3個の摩擦締結要素のそれぞれで必要な摩擦プレート枚数を少なく抑え、3個の摩擦締結要素をコンパクトにすることができる。
【0082】
(3) 前記出力部材(出力ギアOUT)の前記前方側に配置されるとともに、自動変速機ケースATCに連結され、径方向に伸びる壁部21aと、該壁部21aから軸方向の前記後方側に伸びる円筒部21bと、からなる中間壁21を備え、
前記出力部材(出力ギアOUT)は、前記中間壁21の円筒部21bに支持され、
前記第1ドラム部材41は、前記中間壁21の内周側を通って前記フロントキャリアプレート27に連結され、
内周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置されるとともに、該第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と径方向に重なる位置の外周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置され、前記入力部材(入力軸IN)に連結する第2ドラム部材46と、
外周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置され、前記第1ドラム部材41の内周側を通って前記フロントサンギアSsに連結する第1ハブ部材49と、
外周側に前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)が配置され、前記共通キャリアCの前記後方側を通って前記リアサンギアSdに連結する第2ハブ部材29と、
外周側に前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)が配置され、前記第2ハブ部材29の前記後方側及び前記リアサンギアSdの内周側を通って前記フロントサンギアSsに連結する第3ハブ部材33と、を備える。
このため、上記(1)又は(2)の効果に加え、ドラム部材41,46とハブ部材49,29,33を取り回すことによって、出力部材(出力ギアOUT)より駆動源に近い前方側と、出力部材(出力ギアOUT)より駆動源から遠い後方側に、それぞれ3個の摩擦締結要素と2個の摩擦締結要素を配置することができる。さらに、径方向に重なる配置とした第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の潤滑を効率的に行うことができる。
【0083】
(4) 前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)の摩擦板66及び摩擦相手板67の外径を、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦板63及び摩擦相手板64の内径より小さくし、
前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦板63及び摩擦相手板64の外径を、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦板60及び摩擦相手板61の内径より小さくし、
前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)の摩擦板66、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦板63、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦板60、を同じ枚数にする、及び/又は、前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)の摩擦相手板67、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の摩擦相手板64、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦相手板61、を同じ枚数にする。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、前方側に配置された3個の摩擦締結要素の摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)を親子どりにより製造をすることで、摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)の製造コストを廉価にすることができる。さらに、摩擦係合部材(摩擦板66,63,60と摩擦相手板67,64,61)を同じ枚数とした場合、プレート材の無駄を最小に抑えた親子どりにより、3個の摩擦締結要素で必要とする枚数を揃えることができる。
【0084】
以上、本発明の自動変速機を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0085】
実施例1では、第1クラッチ13R/C、第2クラッチ234/C、第5ブレーキR/Bのそれぞれの摩擦板66,63,60及び摩擦相手板の枚数67,64,61を同数(3枚)にするものを示した。しかし、第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)の摩擦板と摩擦相手板は、いずれか一方の枚数を同数にするものであってもよい。
【0086】
実施例1では、ドラム部材41,46及びハブ部材49,29,33の外周のスプラインに噛合う側の摩擦板36,38,66,63,60のそれぞれに摩擦材を貼り付けるものを示した。しかし、ドラム部材や自動変速機ケースの内周のスプラインに噛合う側の摩擦相手板にのみ摩擦材を設け、ドラム部材及びハブ部材の外周のスプラインに噛合う側の摩擦板にピストンを当接させるものなどであってもよい。
【0087】
実施例1では、入出力軸を平行配置とするFFエンジン車に搭載される自動変速機の例を示した。しかし、FFエンジン車に限らず、FRエンジン車、エンジンとモータの少なくとも一方を駆動源とするハイブリッド車、モータを駆動源とする電気自動車や燃料電池車、等の様々な車両の自動変速機としても適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
PGU ラビニオ式遊星歯車
Ss フロントサンギア
Sd リアサンギア
R リングギア
PL ロングピニオン
PS ショートピニオン
C 共通キャリア
IN 入力軸(入力部材)
OUT 出力ギア(出力部材)
ATC 自動変速機ケース
13R/C 第1クラッチ(第1摩擦締結要素)
234/C 第2クラッチ(第2摩擦締結要素)
12/B 第3ブレーキ(第3摩擦締結要素)
4/B 第4ブレーキ(第4摩擦締結要素)
R/B 第5ブレーキ(第5摩擦締結要素)
21 中間壁
21a 壁部
21b 円筒部
27 フロントキャリアプレート
29 第2ハブ部材
33 第3ハブ部材
41 第1ドラム部材
46 第2ドラム部材
49 第1ハブ部材
60 第5ブレーキR/Bの摩擦板
61 第5ブレーキR/Bの摩擦相手板
63 第2クラッチ234/Cの摩擦板
64 第2クラッチ234/Cの摩擦相手板
66 第1クラッチ13R/Cの摩擦板
67 第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記出力部材より前記駆動源に近い前方側に、前記第1摩擦締結要素と前記第2摩擦締結要素と前記第5摩擦締結要素を配置し、
前記出力部材より前記駆動源から遠い後方側に、前記第3摩擦締結要素と前記第4摩擦締結要素を配置し、
内周側に前記第2摩擦締結要素が配置されるとともに、外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記前方側端部のフロントキャリアプレートに連結する第1ドラム部材を備える
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機において、
前記出力部材より前記駆動源に近い前方側には、径方向外側に前記第5摩擦締結要素を配置し、前記第5摩擦締結要素より径方向内側に前記第2摩擦締結要素を配置し、前記第2摩擦締結要素より径方向内側に前記第1摩擦締結要素を配置した
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された自動変速機において、
前記出力部材の前記前方側に配置されるとともに、自動変速機ケースに連結され、径方向に伸びる壁部と、該壁部から軸方向の前記後方側に伸びる円筒部と、からなる中間壁を備え、
前記出力部材は、前記中間壁の円筒部に支持され、
前記第1ドラム部材は、前記中間壁の内周側を通って前記フロントキャリアプレートに連結され、
内周側に前記第1摩擦締結要素が配置されるとともに、該第1摩擦締結要素と径方向に重なる位置の外周側に前記第2摩擦締結要素が配置され、前記入力部材に連結する第2ドラム部材と、
外周側に前記第1摩擦締結要素が配置され、前記第1ドラム部材の内周側を通って前記フロントサンギアに連結する第1ハブ部材と、
外周側に前記第3摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記後方側を通って前記リアサンギアに連結する第2ハブ部材と、
外周側に前記第4摩擦締結要素が配置され、前記第2ハブ部材の前記後方側及び前記リアサンギアの内周側を通って前記フロントサンギアに連結する第3ハブ部材と、を備える
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載された自動変速機において、
前記第1摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の外径を、前記第2摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の内径より小さくし、
前記第2摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の外径を、前記第5摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の内径より小さくし、
前記第1摩擦締結要素の摩擦板、前記第2摩擦締結要素の摩擦板、前記第5摩擦締結要素の摩擦板、を同じ枚数にする、及び/又は、前記第1摩擦締結要素の摩擦相手板、前記第2摩擦締結要素の摩擦相手板、前記第5摩擦締結要素の摩擦相手板、を同じ枚数にする
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項1】
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記出力部材より前記駆動源に近い前方側に、前記第1摩擦締結要素と前記第2摩擦締結要素と前記第5摩擦締結要素を配置し、
前記出力部材より前記駆動源から遠い後方側に、前記第3摩擦締結要素と前記第4摩擦締結要素を配置し、
内周側に前記第2摩擦締結要素が配置されるとともに、外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記前方側端部のフロントキャリアプレートに連結する第1ドラム部材を備える
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機において、
前記出力部材より前記駆動源に近い前方側には、径方向外側に前記第5摩擦締結要素を配置し、前記第5摩擦締結要素より径方向内側に前記第2摩擦締結要素を配置し、前記第2摩擦締結要素より径方向内側に前記第1摩擦締結要素を配置した
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された自動変速機において、
前記出力部材の前記前方側に配置されるとともに、自動変速機ケースに連結され、径方向に伸びる壁部と、該壁部から軸方向の前記後方側に伸びる円筒部と、からなる中間壁を備え、
前記出力部材は、前記中間壁の円筒部に支持され、
前記第1ドラム部材は、前記中間壁の内周側を通って前記フロントキャリアプレートに連結され、
内周側に前記第1摩擦締結要素が配置されるとともに、該第1摩擦締結要素と径方向に重なる位置の外周側に前記第2摩擦締結要素が配置され、前記入力部材に連結する第2ドラム部材と、
外周側に前記第1摩擦締結要素が配置され、前記第1ドラム部材の内周側を通って前記フロントサンギアに連結する第1ハブ部材と、
外周側に前記第3摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記後方側を通って前記リアサンギアに連結する第2ハブ部材と、
外周側に前記第4摩擦締結要素が配置され、前記第2ハブ部材の前記後方側及び前記リアサンギアの内周側を通って前記フロントサンギアに連結する第3ハブ部材と、を備える
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載された自動変速機において、
前記第1摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の外径を、前記第2摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の内径より小さくし、
前記第2摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の外径を、前記第5摩擦締結要素の摩擦板及び摩擦相手板の内径より小さくし、
前記第1摩擦締結要素の摩擦板、前記第2摩擦締結要素の摩擦板、前記第5摩擦締結要素の摩擦板、を同じ枚数にする、及び/又は、前記第1摩擦締結要素の摩擦相手板、前記第2摩擦締結要素の摩擦相手板、前記第5摩擦締結要素の摩擦相手板、を同じ枚数にする
ことを特徴とする自動変速機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−251645(P2012−251645A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126823(P2011−126823)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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