説明

自動平板載荷試験装置

【課題】沈下する試験地盤に対して柔軟な荷重制御が可能であり、試験員の労力を減らし、かつ、試験員の能力や個人差による試験結果の誤差を極力抑えることが可能な自動平板載荷試験装置の提供。
【解決手段】自動平板載荷試験装置1に、試験条件のデータ、ロードセル14で検出されたデータ、および、変位センサ15〜18で検出されたデータを取得するPC制御手段32と、このPC制御手段32で取得したデータを保持するPC記憶手段33と、油圧ジャッキ13を制御して試験地盤Gに加える荷重を制御する荷重制御機構部70と、PC記憶手段33で保持されているデータに基づき導き出される演算情報に応じて荷重制御機構部70を制御するCPU61と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の自動平板載荷試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤の平板載荷試験は、構造物基礎基盤に設置した載荷板に荷重を加え、それによって沈下する地盤の沈下量を計測し、加えた荷重と沈下量との関係から、その地盤の変形特性および支持力特性を求めることを目的としている。地盤の平板載荷試験方法として、地盤工学会基準(JGS1521−2003)が知られている。
地盤工学会基準の地盤の平板載荷試験(JGS1521−2003)を行う場合は、特許文献1に記載のような平板載荷試験装置を用いることが一般的である。
すなわち、試験地盤に配置される載荷板と、反力装置と組み合わされて載荷板に荷重を加えるための載荷装置と、載荷板の沈下量を測定する沈下量測定装置とを設置する。載荷装置は、荷重を加えるための油圧ジャッキと、この油圧ジャッキが載荷板に加える荷重を計測する荷重計とを備えており、油圧ジャッキは手動式油圧ポンプと配管接続されている。
試験員は、荷重計の指示、または、荷重計から出力された電気信号に基づく値を示す表示手段にしたがい手動式油圧ポンプを操作して載荷板に加えられる荷重を調整しつつ、決められた載荷荷重段階で地盤の沈下量を沈下量計測装置で計測する。試験後、計測したデータを元に解析ソフトウェアなどを使用して試験地盤の変形特性や支持力特性を求める。
【0003】
一方、荷重の発生を目的とした油圧ジャッキ制御方法としては、特許文献2に記載の油圧ジャッキ制御システムのような方法が従来から存在する。
すなわち、複動式油圧ジャッキの発生荷重をロードセルにて検出し、目標荷重とロードセルによる検出荷重との偏差から、高圧用サーボ弁を用いて複動式油圧ジャッキに供給する油の方向および流量を制御する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−296159号公報
【特許文献2】特開平6−345392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の平板載荷試験装置のように、手動式油圧ポンプによる油圧ジャッキの荷重制御では、油圧ポンプの操作に相応の能力を持った試験員が必要である。また、沈下量の計測自体は自動でも、目標荷重に到達してから沈下量の計測を開始する操作は手動のため、計測開始時間について試験員の個人差が生じる欠点がある。
【0006】
特許文献2のような油圧ジャッキ制御システムでは、油圧ジャッキの制御手段として高圧サーボ弁を用いているが、目標荷重と検出荷重との偏差のみの情報による制御では、地盤の沈下により発生する検出荷重の変化に対してすぐに目標荷重に戻そうとする動作が遅くなる。したがって、地盤の平板載荷試験で使用する場合は、計測結果に悪影響を及ぼすおそれがある。また、高圧サーボ弁は、一般的に高価であり、また重量物であるため、地盤の平板載荷試験を行うような野外での取り扱いには不向きであるという欠点がある。
【0007】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、地盤の平板載荷試験において、沈下する試験地盤に対して柔軟な荷重制御が可能であり、試験員の労力を減らし、かつ、試験員の能力や個人差による試験結果の誤差を極力抑えることが可能な自動平板載荷試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動平板載荷試験装置は、試験地盤上に設置された載荷板と、この載荷板上に設置された油圧ジャッキと、この油圧ジャッキのピストン上に取り付けられたロードセルと、このロードセルに当接する載荷部材と、前記載荷板に連結された複数の変位センサと、前記油圧ジャッキと前記載荷部材との組み合わせで発生する荷重を制御する荷重制御装置と、を備え、前記試験地盤に荷重を加えてこの試験地盤の変形特性および支持力特性のうちの少なくともいずれか一方を求める試験を行う地盤の自動平板載荷試験装置であって、前記荷重制御装置は、試験条件のデータ、前記ロードセルで検出されたデータ、および、前記変位センサで検出されたデータを保持するデータ保持手段と、前記油圧ジャッキを制御して試験地盤に加える荷重を制御する荷重制御機構部と、前記データ保持手段で保持されているデータに基づき導き出される演算情報に応じて前記荷重制御機構部を制御する荷重制御手段と、具備することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、自動平板載荷試験装置は、試験条件のデータ、ロードセルで検出されたデータ、および、変位センサで検出されたデータをデータ保持手段で保持する。そして、荷重制御手段は、データ保持手段で保持されたデータに基づく演算情報に応じて荷重制御機構部を制御して、試験地盤に加える荷重を制御する。
このため、油圧ジャッキを用いた地盤の平板載荷試験における荷重調整において、試験条件のデータ、ロードセルで検出されたデータ、および、変位センサで検出されたデータに基づいて試験地盤に加える荷重を制御するので、試験地盤の沈下に伴う発生荷重の変動による影響を極力抑えることができる。しかも、その制御が自動で行われるため、試験員の能力に依存することなく、また、労力も軽減できる。さらに、計測データの取得も試験を通して自動であり、試験員の個人差により発生する試験結果の誤差をなくすことができる。
【0010】
本発明の自動平板載荷試験装置では、前記荷重制御機構部は、油圧源と、この油圧源から前記油圧ジャッキに供給される油の量を制御する載荷用ニードルバルブと、前記油圧ジャッキから戻る油の量を制御する除荷用ニードルバルブと、を具備し、前記荷重制御機構部は、前記荷重制御手段の制御により、前記荷重が前記試験条件で入力された目標荷重に達するまで前記載荷用ニードルバルブまたは前記除荷用ニードルバルブのうちのいずれか一方である開度調整バルブの開度を0から大きくして所定の載荷速度または除荷速度に達した時点の開度を維持する第1工程と、この第1工程の後に、前記荷重が前記目標荷重未満の第一基準値に達した時点で前記開度調整バルブの開度を0にする第2工程と、この第2工程の後に、前記開度調整バルブの開度を大きくして、前記目標荷重に達した時点で開度を0にする第3工程と、この第3工程の後に、前記試験地盤の沈下により発生する荷重の変動に応じて、前記目標荷重に達するまで前記開度調整バルブの開度を大きくして前記目標荷重に達した時点で開度を0にする動作を繰り返す第4工程と、を実施する構成が好ましい。
【0011】
この発明によれば、荷重制御手段により、開度調整バルブの開度を大きくして所定の載荷速度または除荷速度に達した時点の開度を維持し、荷重が目標荷重未満の第一基準値に達した時点で開度調整バルブの開度を0にするため、発生荷重が目標荷重を超えることを確実に防止できる。また、この後に、荷重制御手段により、開度調整バルブの開度を大きくして目標荷重に達した時点で開度を0にし、試験地盤の沈下により発生する荷重の変動に応じて、目標荷重に達するまで開度調整バルブの開度を大きくして目標荷重に達した時点で開度を0にする動作を繰り返すため、発生荷重が変動する条件においても、確実に目標荷重での試験結果を得ることができる。
【0012】
本発明の自動平板載荷試験装置では、前記荷重制御手段は、前記第3工程および前記第4工程のうちの少なくともいずれか一方の工程において、前記目標荷重に達した時点での開度を前記データ保持手段で保持させ、前記荷重制御機構部は、前記荷重制御手段の制御により、前記開度調整バルブの開度を再度大きくする際に、前記データ保持手段で保持させた開度の60%〜80%の開度まで一気に開いた後に徐々に開度を大きくする構成が好ましい。
【0013】
ここで、第3工程および第4工程のうちの少なくともいずれか一方の工程の後に開度調整バルブの開度を再度大きくする際に、徐々に大きくすると目標荷重に達するまでの時間が長くなってしまう。また、荷重制御手段により、目標荷重に達した時点での開度をデータ保持手段で保持させ、開度調整バルブの開度を再度大きくする構成にしても、前記保持させた開度の60%未満の開度まで一気に開いた後に徐々に開度を大きくすると、発生荷重が目標荷重に達するまでの時間が長くなってしまい、前記保持させた開度の80%を超える開度まで一気に開いた後に徐々に開度を大きくすると、発生荷重が目標荷重を超えてしまう。
本発明では、前記保持させた開度の60%〜80%の開度まで一気に開いた後に徐々に開度を大きくするため、発生荷重が目標荷重に達するまでの時間の短縮化を図りつつ、発生荷重が目標荷重を超えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る自動平板載荷試験装置のブロック図。
【図2】自動平板載荷試験装置の設置状態の一例を示す概略斜視図。
【図3】荷重制御装置の制御に関する概略のフローチャート。
【図4】PC制御手段の制御に関する概略を示すフローチャートとディスプレイに表示される画面内容を示す図。
【図5】荷重制御における時間と荷重の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自動平板載荷試験装置のブロック図である。
【0016】
[自動平板載荷試験装置の構成]
図1に示すように、自動平板載荷試験装置1は、載荷板11と、載荷部材としての反力装置12と、油圧ジャッキ13と、ロードセル14と、変位センサ15,16,17,18と、PC(パーソナルコンピュータ)30と、荷重制御装置40と、を備えている。
【0017】
油圧ジャッキ13は、一般的に地盤の平板載荷試験に用いられるものであり、上下方向に移動するピストン13Aを備えている。この油圧ジャッキ13は、油圧ホース13Bを介して荷重制御装置40に接続されている。この油圧ジャッキ13は、荷重制御装置40から油の供給を受けることにより、あるいは、回収されることにより反力装置12との組み合わせで、載荷板11に対して荷重を作用させる。
【0018】
ロードセル14は、地盤に加わる荷重を計測するものであり、電気信号ケーブル14Aを介して荷重制御装置40に接続されている。このロードセル14は、油圧ジャッキ13のピストン13A上に設けられ、油圧ジャッキ13が載荷板11に作用させている荷重を計測し、アナログの電気信号に変換して荷重制御装置40に出力する。
【0019】
変位センサ15〜18は、地盤の沈下量を計測するものであり、電気信号ケーブル15A〜18Aを介して荷重制御装置40に接続されている。この変位センサ15〜18は、油圧ジャッキ13が載荷板11に作用させた荷重により沈下した試験地盤Gの沈下量を計測し、アナログの電気信号に変換して荷重制御装置40に出力する。なお、変位センサ15〜18の合計個数は、地盤工学会基準(JGS1521−2003)により4個である。
【0020】
PC30は、シリアルケーブル31を介して荷重制御装置40に制御信号を出力する。このPC30は、荷重制御装置40から入力される荷重と沈下量の計測データを管理するPC制御手段32と、このPC制御手段32を動作させるためのプログラムや計測データを記憶するPC記憶手段33と、PC制御手段32の制御により各種情報を表示するディスプレイ34と、を備えている。
PC制御手段32は、試験を行う前に立ち上げられ、試験の初期設定として、予備載荷数と、予備載荷時間と、サイクル設定と、試験最大荷重となどが図示しない入力手段の操作で試験員により入力されると、載荷計画を自動作成する。この載荷計画は、試験員より変更することが可能である。そして、PC制御手段32は、この載荷計画に基づいて、シリアルケーブル31を介して荷重制御装置40に制御信号を出力する。また、PC制御手段32は、荷重制御装置40から入力される荷重と沈下量の計測データをディスプレイ34に表示させたり、PC記憶手段33に記憶させる。
【0021】
荷重制御装置40は、PC30から入力される制御信号と計測した荷重から油圧ジャッキ13への油の供給量を制御したり、荷重と沈下量の計測データをPC30へ出力する。この荷重制御装置40は、A/D変換部50と、CPUボード60と、荷重制御機構部70と、を備えている。
【0022】
A/D変換部50は、5個のアンプ51と、A/Dボード52と、を備えている。
各アンプ51は、電子信号ケーブル14A,15A〜18Aを介して、ロードセル14、変位センサ15〜18にそれぞれ接続され、入力されるアナログの電気信号を増幅させてA/Dボード52へ出力する。
A/Dボード52は、アンプ51で増幅されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換して、CPUボード60へ出力する。
【0023】
CPUボード60は、荷重制御手段としてのCPU61と、データ保持手段としてのCPU記憶手段62と、を備えている。
CPU61は、CPU記憶手段62に格納されているプログラムにより動作し、入力されるデータの解析や演算処理、荷重制御装置40内部のハードウェアやソフトウェアの動作制御などを行う。具体的には、CPU61は、A/D変換部50から入力されたデジタルの電気信号を演算処理し、ロードセル14からの電気信号と、変位センサ15〜18からの電気信号と、後述するポンプ用圧力センサ77とジャッキ用圧力センサ78からの電気信号と、をそれぞれ数値化する。また、CPU61は、これらの値あるいはPC30から入力される制御信号を解析して、必要な制御信号を荷重制御機構部70へ出力する。さらに、試験中は、荷重と沈下量の計測データを定期的に、例えば5秒ごとにPC30へ出力する。
CPU記憶手段62は、CPU61を動作させるためのプログラムを格納するほか、CPU61の動作過程で一時的に保持が必要になるデータを記憶する。
【0024】
荷重制御機構部70は、油タンク71と、油圧源としての油圧ポンプ72と、載荷用ニードルバルブ73と、除荷用ニードルバルブ74と、載荷用ステッピングモータ75と、除荷用ステッピングモータ76と、ポンプ用圧力センサ77と、ジャッキ用圧力センサ78と、圧力計79と、電磁弁80と、手動開放バルブ81と、を備えている。
【0025】
油タンク71は、油圧ジャッキ13に供給する油、あるいは、油圧ジャッキ13から回収する油の貯留に用いられる。油圧ポンプ72は、油圧ジャッキ13に油を供給する。
【0026】
載荷用ニードルバルブ73は、油圧ポンプ72から油圧ジャッキ13に供給される油の流量を調整することで、載荷する荷重の調整を行う。除荷用ニードルバルブ74は、油圧ジャッキ13から油タンク71に戻る油の量を調整することで除荷する荷重の調整を行う。各ニードルバルブ73,74の開閉は、これらにそれぞれ連結された各ステッピングモータ75,76を回転させることで行う。
【0027】
ポンプ用圧力センサ77は、油圧ポンプ72が発生させている油圧を計測し、アナログの電気信号に変換してA/D変換部50へ出力する。
ジャッキ用圧力センサ78は、油圧ジャッキ13内部の油圧を計測し、アナログの電気信号に変換してA/D変換部50へ出力する。このジャッキ用圧力センサ78で計測された油圧データが、荷重制御装置40で発生させることができる油圧よりも大きい場合、油圧ジャッキ13に外的な要因による力が加わっていることが考えられるため、荷重制御装置40は運転を停止する。
圧力計79は、油圧ジャッキ13内部の油圧を試験員が目視で確認するためのものである。この圧力計79の計測値に基づいて、荷重制御中に荷重制御装置40への給電が停止したり、この荷重制御装置40が異常で停止したりした際にも油圧ジャッキ13の油圧の状態を試験員が把握できる。
電磁弁80は、荷重制御装置40が荷重制御中に運転を停止させた場合、油圧ジャッキ13の油圧が急激に下がることによる事故を防止するため、閉じられて油圧ジャッキ13との接続が遮断される。この遮断した状態の時に、手動開放バルブ81により安全に油圧ジャッキ13の油圧を開放することができる。
【0028】
[自動平板載荷試験装置の設置方法]
次に、図2に基づいて、地盤の自動平板載荷試験装置1の設置方法について説明する。図2は、地盤の自動平板載荷試験装置1の設置状態の一例を示す概略斜視図である。なお、この設置方法は、地盤工学会基準(JGS1521−2003)に則っている。
【0029】
図2に示すように、試験地盤Gに載荷板11を設置する。試験地盤Gは、載荷板11の中心から1.0m以上の範囲を水平に整地し、載荷板11を試験地盤Gに水平で一様に密着するように設置する。
【0030】
次に、載荷板11の上方に反力装置12を設置する。図2では、他の装置を見やすくするために反力装置12を想像線(一点鎖線)で表現しているが、実際の試験では、載荷板11の中心から1.5m以上離れた位置に受け台を設置し、その上に載荷梁を載せ、さらに載荷梁の上に実荷重を載せる。実荷重は、試験の計画最大荷重の1.2倍以上とする。試験現場によっては、反力装置12として自走式重機を用いると便利である。
【0031】
この後、油圧ジャッキ13を載荷板11の上に載せて載荷板11の中心に設置し、その油圧ジャッキ13の上にロードセル14を固定する。なお、ロードセル14の上部と反力装置12の下部との隙間が大きい場合は、十分な剛性を持ち端面が材軸に対して直角に下降された支柱をロードセル14の上部に設置してもよい。
【0032】
次に、載荷板11の外縁から1.0m以上離れた試験地盤Gに基準支持脚201A〜201Dを設置する。そして、基準支持脚201A,201Bの上に基準梁202Aを設置し、基準支持脚201C,201Dの上に基準梁202Bを基準梁202Aと略平行となるように設置する。基準梁202A,202Bの設置後、マグネットスタンド203A,203B,203C,203Dを載荷板11の上に載せ、中心角間隔90°で載荷板11の外周近くに設置する。そして、このマグネットスタンド203A〜203Dに、変位センサ15〜18の検出部を基準梁202A,202Bの上部に直角に接触させた状態で変位センサ15〜18を支持させる。
【0033】
この後、油圧ジャッキ13に油圧ホース13Bの一端を接続し、他端を荷重制御装置40に接続する。また、ロードセル14、変位センサ15〜18に電気信号ケーブル14A〜18Aの一端を接続し、他端を荷重制御装置40に接続する。また、PC30にシリアルケーブル31の一端を接続し、他端を荷重制御装置40に接続する。
PC30および荷重制御装置40には、商用電源あるいは試験現場の発電機から給電される。
【0034】
前記の設置方法で設置が完了する。その後試験を行う場合は、PC30および荷重制御装置40の電源スイッチを入れ、PC30が立ち上がったらPC記憶手段33に格納されているプログラムに基づいてPC制御手段32を動作させる。
【0035】
[自動平板載荷試験装置を用いた試験]
次に、図3および図4に基づいて、自動平板載荷試験装置1を用いた試験の過程を説明する。図3は、荷重制御装置の制御に関する概略のフローチャートである。図4は、PC制御手段の制御に関する概略を示すフローチャートとディスプレイに表示される画面内容を示す図である。
【0036】
荷重制御装置40は、図3に示すように、給電されると内部のソフトウェアおよびハードウェアの初期化を行う(ステップFJ1)。初期化が完了すると、荷重制御装置40は、PC制御手段32から試験開始信号が入力されるまで待機する(ステップFJ2)。
【0037】
一方、PC制御手段32は、立ち上がると、図4に示すように、ディスプレイ34に初期設定画面D1を表示させる(ステップFS1)。この初期設定画面D1には、予備載荷数、予備載荷時間、サイクル設定、試験最大荷重の入力欄D11が設けられている。
試験員により入力欄D11に各種設定値が入力されて初期設定画面D1のOKボタンD12がクリックされると、PC制御手段32は、試験員が入力した初期設定の内容にしたがって載荷計画を自動的に作成し(ステップFS2)、試験画面D2を表示させる(ステップFS3)。この試験画面D2には、載荷計画に基づく載荷計画表D21が表示される。この時点では、載荷計画表D21は、試験員により変更することができる。
載荷計画表D21の表示後、試験画面D2にある試験開始ボタンD22が試験員によりクリックされると(ステップFS4)、PC制御手段32は、荷重制御装置40に試験開始信号を出力し(ステップFS5)、試験が開始される。
【0038】
荷重制御装置40のCPU61は、PC制御手段32から試験開始信号が入力されると、図3に示すように、目標荷重を0kN(キロニュートン)に設定し(ステップFJ3)、定期時間カウントを0秒にする(ステップFJ4)。その後、ロードセル14により油圧ジャッキ13が試験地盤Gに加えている現在の荷重を計測し、変位センサ15〜18により試験地盤Gの沈下量を計測し(ステップFJ5)、CPU61は、現在の荷重と目標荷重の偏差が許容できる範囲内か否かを判断する(ステップFJ6)。このステップFJ6において、許容範囲外であると判断した場合、後述する荷重制御処理を行う(ステップFJ7)。
ここで、定期時間カウントが規定値(例えば5秒)になった場合(ステップFJ8)、CPU61は、ステップFJ5で計測した荷重と沈下量のデータをCPU記憶手段62に記憶させるとともにPC制御手段32に出力し(ステップFJ9)、定期時間カウントを0秒に戻す(ステップFJ10)。そして、この時点でPC制御手段32から目標荷重更新信号が入力されていたと判断した場合(ステップFJ11)、目標荷重更新信号に含まれている荷重データを新しい目標荷重に設定する(ステップFJ12)。この後、PC制御手段32から試験終了信号が入力されると判断するまで(ステップFJ13)、ステップFJ5〜FJ12の処理を繰り返す。
なお、ステップFJ6において許容範囲内であると判断すると、ステップFJ8の処理をする。また、ステップFJ8において定期時間カウントが規定値になっていない場合、ステップFJ11の処理をする。さらに、ステップFJ11において目標荷重更新信号が入力されていないと判断すると、ステップFJ13の処理をする。
【0039】
PC制御手段32は、図4に示すように、荷重制御装置40に試験開始信号を出力した(ステップFS5)後、まず載荷計画の最初の目標荷重を目標更新信号として荷重制御装置40へ出力する(ステップFS6)。その後、荷重制御装置40から荷重と沈下量の計測データが入力され(ステップFS7)、その計測データが載荷計画の中で取得すべきデータであった場合、その計測データをPC記憶手段33に記録するとともに、載荷計画表D21の所定の場所に表示させる(ステップFS8)。そして、PC制御手段32は、現在の目標荷重に対して必要なデータを取り終えると(ステップFS9)、載荷計画の中で必要なデータを全て取り終えたか否かを判断する(ステップFS10)。このステップFS10において、取り終えていないと判断すると、目標荷重更新信号を荷重制御装置40へ出力して(ステップFS11)、ステップFS7の処理をする。また、ステップFS9において、取り終えていないと判断すると、ステップFS7の処理をする。以後、PC制御手段32は、ステップFS10において全て取り終えたと判断するまで、ステップFS7〜FS11の処理を繰り返す。
【0040】
PC制御手段32は、ステップFS10において取り終えたと判断すると、荷重制御装置40へ試験終了信号を出力して(ステップFS12)、制御を終了させる。
荷重制御装置40は、図3に示すように、ステップFJ13においてPC制御手段32から試験終了信号が入力されたと判断すると、荷重制御を終了する。
【0041】
[荷重制御装置による荷重制御方法]
次に、図5および図1に基づいて、荷重制御装置40による荷重制御方法について説明する。図5は、荷重制御における時間と荷重の関係を示すグラフであり、油圧ジャッキ13が載荷板11に加える荷重の状態をイメージ的にとらえた一例を表す。
【0042】
荷重制御装置40のCPU61は、図5に示すように、PC制御手段32から時間T1の時点で目標荷重更新信号が入力されると、一旦、載荷用ニードルバルブ73および除荷用ニードルバルブ74の開度を0にして、荷重L1を維持する。そして、目標荷重更新信号により新たに設定された目標荷重L2が現在の荷重L1よりも大きい場合は載荷用ニードルバルブ73を徐々に開いていき、小さい場合は除荷用ニードルバルブ74を徐々に開いていき、単位時間ΔTあたりの荷重の変化量ΔLtが所定の変化量ΔLvに達したとき、つまり所定の載荷速度または除荷速度に達したとき、その開度を維持する(第1工程)。試験地盤Gの沈下によりΔLtも変化するので、定期的にΔLtの値を確認し、所定の変化量ΔLvよりも小さくなった場合は、再度、載荷用ニードルバルブ73または除荷用ニードルバルブ74(以下、目標荷重L2が現在の荷重L1よりも大きい場合の開度調整対象である載荷用ニードルバルブ73、小さい場合の開度調整対象である除荷用ニードルバルブ74を、開度調整バルブと称す)の開度を徐々に大きくするようにして、常にΔLtがΔLvになるようにする。地盤工学会基準(JGS1521−2003)では、載荷および除荷する速度を1分間あたり200kN/m程度以下を標準と定めているので、それにしたがってΔLvを事前に定めておく。
【0043】
地盤の変化量ΔLvを維持しながら、CPU61は、定期的に発生している荷重と目標荷重L2の偏差を演算処理して求め、偏差が所定の値L3になった時間T2において、開いている開度調整バルブの開度を一旦0にする(第2工程)。例えば、最初の荷重L1が10.0kNで、目標荷重L2が20.0kNで、L3が3.5kNとした場合、目標荷重L2より値L3分低い16.5kNに到達したとき、開度調整バルブの開度を一旦0にする。
これは、目標荷重L2を通り過ぎないようにするためである。値L3は、載荷および除荷する速度をLvとしたとき、開度調整バルブの開度が最大のときから0になるまでの所要時間に対する荷重の変化量とする。
【0044】
そして、CPU61は、開度を一旦0にした開度調整バルブを徐々に開いていき、発生荷重が目標荷重L2に達した時間T3で開度調整バルブの開度を0にする(第3工程)。このとき、開度を0にする前の開度をCPU記憶手段62に記録しておく。
【0045】
目標荷重L2に達しても試験地盤Gが沈下し続けている場合、それに伴って発生荷重も変化してしまう。よって、CPU61は、発生荷重と目標荷重L2との偏差が所定の値L4、例えば0.1kNよりも大きかったら、再度開度調整バルブを徐々に開いていく。ただし、CPU記憶手段62に以前の開度が記録されていれば、その開度の一定の割合分、例えば60%分一気に開いた後、徐々に開いていくようにする。こうすることで、すばやく発生荷重を目標荷重L2に戻すことができる。
CPU61は、発生荷重が目標荷重L2に到達したら、前記と同様にしてその時点での開度調整バルブの開度を記録してから開度を0にし、この後、目標荷重L2に到達したら開度を0にする処理を繰り返す(第4工程)。前記の以前記憶した開度の一定割合分、開度調整バルブを一気に開くという操作が可能なのは、微調整時の荷重に変化を与える開度調整バルブの開度はある程度一定であるため、その開度の60〜80%程度は経験上一気に開けても発生荷重に影響を与えないためである。割合の値は、荷重制御装置40の荷重発生精度等を考慮し、事前に定めておく。
【0046】
前記荷重制御装置40の荷重制御方法は、主に載荷の場合を例に挙げて説明しているが、除荷の場合も同様に荷重の制御が可能である。また、試験地盤Gの状態によっては、目標荷重L2を通り過ぎる可能性もあるが、開度調整対象を載荷用ニードルバルブ73と除荷用ニードルバルブ74との間で切り替えることにより、目標荷重L2を維持することが可能である。
【0047】
[自動平板載荷試験装置の作用効果]
上記自動平板載荷試験装置1によれば、油圧ジャッキ13を用いた地盤の平板載荷試験における荷重調整において、試験条件のデータ、ロードセル14および変位センサ15〜18で検出されたデータに基づいて試験地盤Gに加える荷重を制御するので、試験地盤Gの沈下に伴う発生荷重の変動による影響を極力抑えることができ、しかもその制御が自動で行われるため、試験員の能力に依存することなく、また、労力も軽減できる。さらに、計測データの取得も試験を通して自動であり、試験員の個人差により発生する試験結果の誤差をなくすことができる。
【0048】
さらに、荷重制御装置40により、開度調整バルブの開度を大きくして所定の載荷速度または除荷速度に達した時点の開度を維持し、発生荷重が目標荷重L2より所定の値L3だけ低い値(第一基準値)に達した時点で開度調整バルブの開度を0にするため、発生荷重が目標荷重L2を超えることを確実に防止できる。また、この後に、開度調整バルブの開度を大きくして目標荷重L2に達した時点で開度を0にし、発生荷重と目標荷重L2との偏差が所定の値L4よりも大きいときに、目標荷重L2に達するまで開度調整バルブの開度を大きくして目標荷重L2に達した時点で開度を0にする動作を繰り返すため、発生荷重が変動する条件においても、確実に目標荷重L2での試験結果を得ることができる。
【0049】
そして、荷重制御装置40により、第3工程および第4工程において、目標荷重L2に達した時点での開度をCPU記憶手段62に記憶させ、この後に開度調整バルブの開度を再度大きくする際に、CPU記憶手段62に記憶させた開度の60%〜80%の開度まで一気に開いた後に徐々に開度を大きくするため、発生荷重が目標荷重L2に達するまでの時間の短縮化を図りつつ、発生荷重が目標荷重L2を超えることを防止できる。
【0050】
[実施形態の変形]
なお、本発明について好適な実施例を挙げて説明したが、本発明は前記実施例(実施形態)に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施例(実施形態)では、PC制御手段32は地盤工学会基準(JGS1521−2003)に準拠した載荷計画やデータの記録を行っているが、荷重制御装置40への命令信号出力や計測データ入力が可能であれば、必ずしもこの基準に準拠した形でなくてもよい。
また、第3工程および第4工程のうちの少なくとも一方において、目標荷重L2に達した時点での開度をCPU記憶手段62に記憶させずに、この後に開度調整バルブの開度を再度大きくする際に、CPU記憶手段62に記憶させた開度の60%〜80%の開度まで一気に開いた後に徐々に開度を大きくする処理を実施しなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…自動平板載荷試験装置
11…載荷板
12…載荷部材としての反力装置
13…油圧ジャッキ
13A…ピストン
14…ロードセル
15〜18…変位センサ
33…データ保持手段としてのPC記憶手段
40…荷重制御装置
61…荷重制御手段としてのCPU
62…データ保持手段としてのCPU記憶手段
70…荷重制御機構部
72…油圧源としての油圧ポンプ
73…載荷用ニードルバルブ
74…除荷用ニードルバルブ
G…試験地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験地盤上に設置された載荷板と、
この載荷板上に設置された油圧ジャッキと、
この油圧ジャッキのピストン上に取り付けられたロードセルと、
このロードセルに当接する載荷部材と、
前記載荷板に連結された複数の変位センサと、
前記油圧ジャッキと前記載荷部材との組み合わせで発生する荷重を制御する荷重制御装置と、を備え、前記試験地盤に荷重を加えてこの試験地盤の変形特性および支持力特性のうちの少なくともいずれか一方を求める試験を行う地盤の自動平板載荷試験装置であって、
前記荷重制御装置は、
試験条件のデータ、前記ロードセルで検出されたデータ、および、前記変位センサで検出されたデータを保持するデータ保持手段と、
前記油圧ジャッキを制御して試験地盤に加える荷重を制御する荷重制御機構部と、
前記データ保持手段で保持されているデータに基づき導き出される演算情報に応じて前記荷重制御機構部を制御する荷重制御手段と、
を具備することを特徴とする自動平板載荷試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動平板載荷試験装置であって、
前記荷重制御機構部は、油圧源と、この油圧源から前記油圧ジャッキに供給される油の量を制御する載荷用ニードルバルブと、前記油圧ジャッキから戻る油の量を制御する除荷用ニードルバルブと、を具備し、
前記荷重制御機構部は、前記荷重制御手段の制御により、
前記荷重が前記試験条件で入力された目標荷重に達するまで前記載荷用ニードルバルブまたは前記除荷用ニードルバルブのうちのいずれか一方である開度調整バルブの開度を0から大きくして所定の載荷速度または除荷速度に達した時点の開度を維持する第1工程と、
この第1工程の後に、前記荷重が前記目標荷重未満の第一基準値に達した時点で前記開度調整バルブの開度を0にする第2工程と、
この第2工程の後に、前記開度調整バルブの開度を大きくして、前記目標荷重に達した時点で開度を0にする第3工程と、
この第3工程の後に、前記試験地盤の沈下により発生する荷重の変動に応じて、前記目標荷重に達するまで前記開度調整バルブの開度を大きくして前記目標荷重に達した時点で開度を0にする動作を繰り返す第4工程と、を実施する
ことを特徴とする自動平板載荷試験装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動平板載荷試験装置において、
前記荷重制御手段は、前記第3工程および前記第4工程のうちの少なくともいずれか一方の工程において、前記目標荷重に達した時点での開度を前記データ保持手段で保持させ、
前記荷重制御機構部は、前記荷重制御手段の制御により、
前記開度調整バルブの開度を再度大きくする際に、前記データ保持手段で保持させた開度の60%〜80%の開度まで一気に開いた後に徐々に開度を大きくする
ことを特徴とする自動平板載荷試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−210559(P2010−210559A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59224(P2009−59224)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000150707)長野計器株式会社 (62)
【出願人】(509072803)株式会社土木管理総合試験所 (2)
【Fターム(参考)】