説明

自動搬送システム

【課題】一旦決定された搬送経路上に何らかの異常が発生しても、その異常を取り除くことなく被搬送物の搬送を継続することができる自動搬送システムを提供する。
【解決手段】搬送制御コントローラ8がストッカ11からコンベヤ52へのワークの出庫の指示をストッカコントローラ21に送信した後、ストッカコントローラ21により監視されるコンベヤ52の出庫要求信号が所定時間を超えてもオンしない場合には、ストッカコントローラ21は搬送制御コントローラ8に新たな搬送経路の生成し直しの依頼を送信し、搬送制御コントローラ8は、搬送することができないコンベヤ52を経由しないでストッカ11から処理装置に至る新たな搬送経路を生成し直し、新たに生成し直された搬送経路に基づくストッカ11からコンベヤ54への出庫指示をストッカコントローラ21に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動搬送システムに係り、特に柔軟な経路生成機能を有する自動搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産設備等において、被搬送物の保管場所であるストッカと被搬送物に製造加工等の処理を施す処理装置との間に搬送装置を配置し、搬送装置でストッカから処理装置へ、また処理装置からストッカへ被搬送物を搬送する自動搬送システムが知られている。
このような自動搬送システムにおいて、複数の搬送装置の組み合わせにより、搬送しようとする被搬送物の出発点から到着点までに至る搬送経路が複数存在する場合には、搬送効率が優れた搬送経路を選択することが望まれる。
そこで、例えば、特許文献1には、各搬送経路上に設定された複数の地点の位置情報に基づいて最適な搬送経路が選定されるようにした自動搬送システムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−310733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最適な搬送経路を選択しても、一旦搬送経路が決定されると、その搬送経路上に搬送装置の故障や被搬送物の停滞等、何らかの異常が発生した場合に搬送経路を自動的に変更することはできず、その異常を取り除かないと被搬送物の搬送を継続することができなくなるおそれがあった。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、一旦決定された搬送経路上に何らかの異常が発生しても、その異常を取り除くことなく被搬送物の搬送を継続することができる自動搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る自動搬送システムは、それぞれ被搬送物を搬送するための複数の搬送装置と、被搬送物ごとに複数の搬送装置のうち少なくとも1つの搬送装置を介して出発点から到着点に至る最適な搬送経路を生成し、その搬送経路上の搬送装置に搬送指示を送信する搬送制御コントローラとを備えている。そして、搬送経路上の搬送装置は、搬送制御コントローラから搬送指示を受信してから所定時間内に被搬送物を搬送することができない場合に搬送制御コントローラに新たな搬送経路の生成し直しを依頼し、この依頼を受信した制御コントローラは、搬送することができない搬送装置を経由しないで到着点に至る新たな搬送経路を生成し直し、新たな搬送経路上の搬送装置に搬送指示を送信する。
【0006】
なお、搬送経路上の搬送装置は、故障により被搬送物を搬送することができない場合、あるいは被搬送物が停滞したことにより所定時間内に被搬送物を搬送することができない場合に、搬送制御コントローラに新たな搬送経路の生成し直しを依頼することができる。
また、搬送制御コントローラは、搬送指示を送信する搬送装置の数が最小となるように、あるいは、出発点から到着点までの搬送時間が最短となるように、あるいは、搬送経路上の搬送装置のうち最も多くの搬送指示を受信する搬送装置における搬送指示の受信件数がより少なくなるように、搬送経路を生成することが好ましい。
複数の搬送装置としては、被搬送物を保管すると共に被搬送物の入出庫搬送を行うストッカ、予め形成された走行ルートに沿って被搬送物を搬送する無人搬送車、及びコンベヤのうち少なくとも1つを用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、一旦決定された搬送経路上に何らかの異常が発生してその搬送経路による搬送が困難になった場合でも、搬送することができない搬送装置を経由しないで到着点に至る新たな搬送経路が生成し直されるため、その異常を取り除くことなく被搬送物の搬送を継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に実施の形態に係る自動搬送システムの全体構成を示す。それぞれ複数のワーク(被搬送物)を保管すると共にワークの入出庫搬送を行う3つのストッカ11〜13が互いに間隔を隔てて配置されており、これらのストッカ11〜13にそれぞれ対応してストッカ11〜13による入出庫搬送を制御するストッカコントローラ21〜23が接続されている。3つのストッカ11〜13のすべてに沿うように無人搬送車走行ルート31が形成されており、また、ストッカ11とストッカ12の間に無人搬送車走行ルート32が形成され、ストッカ12とストッカ13の間に無人搬送車走行ルート33が形成されている。無人搬送車走行ルート31〜33には、それぞれそのルートに沿ってワークを搬送する無人搬送車34が配置されると共に、無人搬送車走行ルート31〜33にそれぞれ対応して無人搬送車34による搬送を制御する無人搬送車コントローラ41〜43が配設されている。
【0009】
また、ストッカ11には無人搬送車走行ルート31との間にコンベヤ51及び52が、無人搬送車走行ルート32との間にコンベヤ53及び54がそれぞれ連結されている。同様に、ストッカ12には無人搬送車走行ルート31との間にコンベヤ55及び56が、無人搬送車走行ルート32との間にコンベヤ57及び58が、無人搬送車走行ルート33との間にコンベヤ59及び60がそれぞれ連結されている。ストッカ13には無人搬送車走行ルート31との間にコンベヤ61及び62が、無人搬送車走行ルート33との間にコンベヤ63及び64がそれぞれ連結されている。
【0010】
無人搬送車走行ルート33に近接してワークに製造加工等の処理を施す処理装置7が配置されている。
また、ワークごとに出発点から到着点に至る最適な搬送経路を生成してストッカコントローラ21〜23及び無人搬送車コントローラ41〜43に搬送指示を送信する搬送制御コントローラ8が配置されている。さらに、処理装置7の状態(ワーク要求/ワーク処理中/ワーク処理終了)を管理して搬送制御コントローラ8に作業の指令を送信する生産管理コントローラ9が搬送制御コントローラ8に接続されている。
【0011】
次に、この実施の形態に係る自動搬送システムの動作について説明する。
まず、生産管理コントローラ9から搬送制御コントローラ8にストッカ11に格納されているワークWを処理装置7まで搬送する旨の指令が入力されたものとする。生産管理コントローラ9から指令を受けた搬送制御コントローラ8は、例えば、搬送指示を送信する搬送装置の数が最小となるような搬送経路として、ストッカ11→コンベヤ52→無人搬送車走行ルート31→コンベヤ55→ストッカ12→コンベヤ60→無人搬送車走行ルート33→処理装置7の経路を生成する。
【0012】
そして、搬送制御コントローラ8は、ストッカ11からコンベヤ52への出庫の指示をストッカコントローラ21に送信する。ストッカコントローラ21は、出庫先であるコンベヤ52の出庫要求信号を監視し、この出庫要求信号がオンすると、コンベヤ52への出庫が可能な状態であると判断してストッカ11によるワークWの出庫を開始する。次に、搬送制御コントローラ8は、コンベヤ52からコンベヤ55までのワークWの搬送の指示を無人搬送車コントローラ41に送信し、無人搬送車コントローラ41は無人搬送車34によりワークWを搬送させる。
【0013】
同様にして、搬送制御コントローラ8は、コンベヤ55からストッカ12への入庫の指示をストッカコントローラ22に送信し、ストッカ12からコンベヤ60への出庫の指示をストッカコントローラ22に送信し、さらにコンベヤ60から処理装置7までのワークWの搬送の指示を無人搬送車コントローラ43に送信する。
このようにして、搬送制御コントローラ8により生成された搬送経路に沿ってストッカ11から処理装置7までワークWが搬送される。
【0014】
ここで、図2に示されるように、例えば、搬送制御コントローラ8がストッカ11からコンベヤ52への出庫の指示をストッカコントローラ21に送信した後、ストッカコントローラ21により監視されるコンベヤ52の出庫要求信号が所定時間を超えてもオンしない場合には、ストッカコントローラ21はコンベヤ52の故障等の何らかの異常によりコンベヤ52への出庫ができない状態であると判断し、搬送制御コントローラ8に新たな搬送経路の生成し直しの依頼を送信する。
【0015】
ストッカコントローラ21から新たな搬送経路の生成し直しの依頼を受信した搬送制御コントローラ8は、搬送することができないコンベヤ52を経由しないでストッカ11から処理装置7に至る新たな搬送経路を生成し直す。例えば、ストッカ11→コンベヤ54→無人搬送車走行ルート32→コンベヤ57→ストッカ12→コンベヤ60→無人搬送車走行ルート33→処理装置7の経路を生成する。
【0016】
搬送制御コントローラ8は、元の搬送経路に基づくストッカ11からコンベヤ52への出庫キャンセルをストッカコントローラ21に指示した後、新たに生成し直された搬送経路に基づくストッカ11からコンベヤ54への出庫指示をストッカコントローラ21に送信する。
ストッカコントローラ21は、新たな出庫先であるコンベヤ54の出庫要求信号を監視し、この出庫要求信号がオンすると、コンベヤ54への出庫が可能な状態であると判断してストッカ11によるワークWの出庫を開始する。
【0017】
このように、搬送経路が一旦決定された後でも、その搬送経路上に何らかの異常が発生してその搬送経路による搬送が困難になった場合に、搬送することができない搬送装置を経由しないで到着点に至る新たな搬送経路が生成し直されるため、搬送装置の故障等の異常を取り除くことなくワークWの搬送を継続することが可能となる。
【0018】
なお、搬送制御コントローラ8が搬送経路を生成する際及び生成し直す際には、上述のように、(A)搬送指示を送信する搬送装置の数が最小となるような搬送経路を生成する方法の他、(B)出発点から到着点までの搬送時間が最短となるような搬送経路を生成する方法、あるいは、(C)搬送経路上の搬送装置のうち最も多くの搬送指示を受信する搬送装置における搬送指示の受信件数がより少ない搬送経路を生成する方法を採用してもよい。
上記の(A)の方法を採れば、ワークWの搬送に係る自動搬送システムの負担が小さくなると共に搬送効率が向上することが見込まれ、(B)の方法を採れば、搬送効率が向上し、より多量のワークWを搬送することが可能となる。また、(C)の方法を採れば、特定の搬送装置に搬送が集中することが回避され、自動搬送システム全体の搬送効率が向上する。
【0019】
例えば、上記の実施の形態に記載したように、ストッカ11に格納されているワークWを処理装置7まで搬送する場合、ストッカ11→コンベヤ52→無人搬送車走行ルート31→コンベヤ55→ストッカ12→コンベヤ60→無人搬送車走行ルート33→処理装置7の第1の搬送経路と、ストッカ11→コンベヤ54→無人搬送車走行ルート32→コンベヤ57→ストッカ12→コンベヤ60→無人搬送車走行ルート33→処理装置7の第2の搬送経路とを比較するものとする。ここで、第1の搬送経路において搬送を完了するまでの搬送時間が300秒、経路上で最も多くの搬送指示を受信する無人搬送車走行ルート31の無人搬送車コントローラ41の受信件数が5件とし、一方、第2の搬送経路において搬送を完了するまでの搬送時間が200秒、経路上で最も多くの搬送指示を受信する無人搬送車走行ルート32の無人搬送車コントローラ42の受信件数が10件とすると、搬送時間に基づく(B)の方法によれば第2の搬送経路が選択され、指示件数に基づく(C)の方法によれば第1の搬送経路が選択されることとなる。
【0020】
さらに、(A)の方法と(B)の方法を組み合わせて、搬送指示を送信する搬送装置の数と搬送時間を総合的に評価し、搬送指示を送信する搬送装置の数が少なく且つ搬送時間が短い搬送経路を生成することもできる。同様にして、(A)〜(C)の方法のうち2つあるいは3つの方法を組み合わせて搬送経路を生成してもよい。
【0021】
また、自動搬送システム全体に対して(A)〜(C)のいずれかの方法を一律に採用してもよいが、特定の搬送装置が使用される場合には(A)〜(C)のうち特定の方法を採用する等、柔軟性を持たせることもできる。
さらに、時間帯に応じて採用する方法を選択するようにしてもよい。
このように、搬送経路生成の方法に柔軟性を持たせることにより、自動搬送システム全体としてバランスの優れた搬送制御を実現することが可能となる。
【0022】
なお、上記の実施の形態では、ストッカコントローラ21がコンベヤ52の出庫要求信号を監視したが、コンベヤ51〜64が自ら出庫要求信号を監視し、所定時間を超えてもオンしない場合に、搬送制御コントローラ8に新たな搬送経路の生成し直しの依頼を送信するように構成することもできる。
このように、コンベヤ51〜64が自らの信号を監視した方が、より正確なデータを得ることができる。
【0023】
また、コンベヤ51〜64が、出庫要求信号の代わりにコンベヤ51〜64上のワークWの停滞状況を把握して停滞信号を出力するようにし、所定時間を超えても停滞し続けている場合に、搬送制御コントローラ8に新たな搬送経路の生成し直しの依頼を送信するように構成することもできる。
さらに、生産管理コントローラ9、搬送制御コントローラ8、ストッカコントローラ21〜23、無人搬送車コントローラ41〜43は、1つのコントローラにまとめることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態に係る自動搬送システムの全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態において搬送制御コントローラが新たな搬送経路の生成し直しを依頼されたときの処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0025】
11〜13 ストッカ、21〜23 ストッカコントローラ、31〜33 無人搬送車走行ルート、34 無人搬送車、41〜43 無人搬送車コントローラ、51〜64 コンベヤ、7 処理装置、8 搬送制御コントローラ、9 生産管理コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ被搬送物を搬送するための複数の搬送装置と、
被搬送物ごとに複数の搬送装置のうち少なくとも1つの搬送装置を介して出発点から到着点に至る搬送経路を生成し、その搬送経路上の搬送装置に搬送指示を送信する搬送制御コントローラと
を備え、前記搬送経路上の搬送装置は、前記搬送制御コントローラから搬送指示を受信してから所定時間内に被搬送物を搬送することができない場合に前記搬送制御コントローラに新たな搬送経路の生成し直しを依頼し、
前記搬送制御コントローラは、前記搬送経路上の搬送装置から新たな搬送経路の生成し直しの依頼を受信すると、搬送することができない搬送装置を経由しないで到着点に至る新たな搬送経路を生成し直し、新たな搬送経路上の搬送装置に搬送指示を送信する
ことを特徴とする自動搬送システム。
【請求項2】
前記搬送経路上の搬送装置は、故障により被搬送物を搬送することができない場合に前記搬送制御コントローラに新たな搬送経路の生成し直しを依頼する請求項1に記載の自動搬送システム。
【請求項3】
前記搬送経路上の搬送装置は、被搬送物が停滞したことにより所定時間内に被搬送物を搬送することができない場合に前記搬送制御コントローラに新たな搬送経路の生成し直しを依頼する請求項1に記載の自動搬送システム。
【請求項4】
前記搬送制御コントローラは、搬送指示を送信する搬送装置の数が最小となるように、あるいは、出発点から到着点までの搬送時間が最短となるように、あるいは、搬送経路上の搬送装置のうち最も多くの搬送指示を受信する搬送装置における搬送指示の受信件数がより少なくなるように、搬送経路を生成する請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動搬送システム。
【請求項5】
複数の搬送装置は、被搬送物を保管すると共に被搬送物の入出庫搬送を行うストッカ、予め形成された走行ルートに沿って被搬送物を搬送する無人搬送車、及びコンベヤのうち少なくとも1つを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−204155(P2007−204155A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21297(P2006−21297)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】