説明

自動搬送システム

【課題】本発明は、確実な自動連結と連結状態検出,連結部材の収納,重量搬送のための頑強な連結部の実現を可能とする自動搬送システムを提供する。
【解決手段】自動搬送車は後部に回転部を設け、回転部に回転部材を設ける。台車は、前部に固定部材を設ける。回転部材の自重もしくは回転部の駆動により、回転部材から固定部材へ接触力を加える。回転部材と固定部材の備える凹凸形状により、回転部材と固定部材の相対可動領域が制限された連結状態1と、連結状態1よりも相対可動領域が制限された連結状態2を作る。回転部材と固定部材の備える凹凸形状は、前記の接触力が加えられた状態で、回転部材もしくは固定部材を移動させることにより、連結状態1から連結状態2へと誘導し、回転部材もしくは固定部材を接触力の方向へ移動することによって連結状態1から連結状態2へと遷移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生産工場や物流センタにおいて、物品搬送のための台車を自動搬送車と連結し、運搬する自動搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産工場や物流センタにおいては、部品や製品などの物品を搬送する方法として台車に物品を載せ、台車を人手で押して搬送することが一般的に行われている。そして、人件費削減,搬送効率向上のため、自動搬送車に台車を連結して牽引搬送する方法も実現されている。自動搬送車と台車の連結を安価に実現する方法としては、台車にピンを設け、自動搬送車に引掛金具を設け、自動搬送車の引掛金具を台車のピンに引っ掛ける方法が一般的に行われている。
【0003】
例えば、〔特許文献1〕には、自動搬送車の下部にV字状の部材を設け、台車にピンを設け、台車を自動搬送車の下部に潜り込ませて台車のピンを自動搬送車のV字状部材の開放部側からV字状部材の内側に進入させて連結する方法が開示されている。
【0004】
また、〔特許文献2〕では、走行中に自動搬送車と台車の連結が外れないように、開口部の無いリング状の部材をピンに引っ掛ける方法が開示されている。
【0005】
〔特許文献3〕では、台車を連結しないときに引掛金具を自動搬送車から突出しない形式で収納可能で、かつ、ピンの回りを側板で囲って引掛金具の可動範囲を制限することで引掛金具とピンの衝撃力の大きな接触を防止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−239080号公報
【特許文献2】特開平8−290711号公報
【特許文献3】特開2000−1171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年増加しているセル生産方式の工場で作業台の間の狭い通路を走行したり、人などの障害物を避けたりする場合、自動搬送車と台車の連結角度が大きくなり、加減速も生じて、〔特許文献1〕の方法ではV字状の部材からピンが外れる危険性があった。
【0008】
〔特許文献2〕の方法では、ピンに引っ掛ける部材を開口部の無いリング状にすることでその問題を解決している。しかしながら、リング状部材は自動搬送車から突出した形状をしており、台車を連結しない状態のときに周囲の作業員がつまずいて怪我をする危険性があった。また、リング状部材のリング内径に対してピンが小さいため、自動搬送車の加減速により台車と自動搬送車の相対距離が変わりピンがリング内側から離れて再度リングに接触する現象が発生するときに、ピンがリングから離れる距離が長くなり、ピンがリングから離れる距離が長いほど再接触時の衝撃力が大きくなる可能性が高まり、重量物の搬送時には特に衝撃力が大きくなるので危険であった。
【0009】
それに対して〔特許文献3〕の方法では、引掛金具を自動搬送車から突出しない形式で収納可能な構成とし、引掛金具の可動範囲を制限することで衝撃力を防止して問題を解決している。しかしながら、本方式では、連結の際にピンと側板の間の狭い空間に引掛金具のリングを通す必要があった。そのため、台車に対して自動搬送車を高精度に停止させる必要があった。また、省力化のため連結を自動化する場合、本構成では引掛金具を下ろす動作と、ピンを下ろす動作が必要なため、自動搬送車及び台車の両方に駆動機構を設ける必要があり、システムが高価になる。また、人手で連結をする場合は、連結されたかどうかを目で確認するが、自動化する場合は、自動的な連結検出手段も必要である。しかし、上記文献では連結検出手段が実現されていない。
【0010】
本発明は、これらの問題を解決して多様化する物流現場に適用することを目指し、レイアウト変更が多く、多様な搬送重量がある物流現場で安全で効率的に牽引型物品搬送を行う自動搬送システムを実現することを目的としている。
【0011】
すなわち、複雑なレイアウトの通路の走行や障害物を回避する走行を行っても連結が外れず、走行中にピンと引掛金具が強く衝突することを抑え、非連結時に周囲の作業員の怪我を防止する。また、その連結の自動化を確実に行うために、高精度な位置決めが不要で、台車側の駆動機構が不要で、連結状態の自動検出を可能とする、これらを満たす自動台車連結機能を持つ自動搬送システムを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、上記課題は、次の手段により解決される。
【0013】
(1)自動搬送車と搬送台車は、それぞれ凹凸部を有する連結部材1と連結部材2を具備し、前記連結部材1もしくは前記連結部材2の自重、もしくは駆動手段により、前記連結部材1と前記連結部材2との接触力が加えられ、前記連結の状態は、前記連結部材1と前記連結部材2の前記凹凸部の接触により、前記連結部材1と前記連結部材2との相対可動領域が制限された領域1を有する連結状態1と、前記連結部材1と前記連結部材2との相対可動領域が前記領域1より小さい領域2を有する連結状態2を有し、前記接触力が加えられた状態で、前記連結部材1もしくは前記連結部材2を移動させることにより前記連結状態1から前記連結状態2へと誘導し、前記連結部材1もしくは前記連結部材2が前記接触力の方向へ移動することで前記連結状態1から前記連結状態2へと遷移するガイド手段を有することを特徴とする。
【0014】
これにより、領域1を大きく設定することで高精度な位置決めが不要な連結機構が実現できる。また、ガイド手段により容易に領域2へ移行し、領域2は領域1より可動領域が小さいため、重量物品の搬送時の衝撃力を抑制することができる。さらに、これらは簡単な形状の部材で構成できるため、部材の厚みや幅を大きくするだけで容易に頑強な連結部が実現でき重量搬送物の搬送が実現可能となる。
(2)更に、前記連結部材1もしくは前記連結部材2の前記接触力方向の位置を検出する位置検出手段を具備することを特徴とする。
【0015】
本発明の構成は、連結がされた状態とされていない状態では連結部材の接触方向の位置が異なるため、この位置検出手段によって、連結されている否かを自動検出することができる。これにより、搬送を失敗したことを認識しないまま走行して、搬送計画を乱し、搬送効率を低下させるということを防止することができる。
(3)更に、前記駆動手段は、前記連結部材1もしくは前記連結部材2に回転力を付与する回転手段と、前記回転の位置を検出する前記位置検出手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、連結部材を回転することにより自動連結を実現し、逆方向に回転することにより自動連結解除を実現し、回転後の連結部材の位置を垂直にすることで、自動搬送車から突出することなく収納できるので、非連結時の安全性を確保できる。そして、一方の連結部材に回転手段と位置検出手段の両方を備えることにより、他方の連結部材には回転手段も位置検出手段も設ける必要が無いため、他方の連結部材に関する構成を簡易にすることができる。
(4)更に、前記ガイド手段の前記凹凸部の凹形状は、円弧および/または直線状に先端部へ向かって狭くなる空間を持ち、前記空間により誘導される前記凹凸部の凸形状は、円柱状の連結ピンを備えることを特徴とする。
【0017】
この構成は、ピンが円柱状なのでガイドの形状に滑らかに沿って移動しやすく、ガイドが先端部へ向かって狭くなる空間を持つので、ピンをガイドの先端へ誘導し易く、連結状態1からより小さい領域2を有する連結状態2へ、滑らかに遷移させることが可能である。しかも、円柱状のピンと、円弧および/または直線状に先端部へ向かって狭くなる空間を持つガイドは製作しやすい簡易な形状で実現することが可能である。
(5)更に、前記凹形状は、先端に向かって直線的に狭くなり先端が前記連結ピンの外形と一致して同心円状に丸めた形状とすることを特徴とする。
【0018】
これにより、前記領域2を小さくかつ前記自動搬送車と搬送台車が成す連結角度を任意の角度に制限できるので、走行中の連結部材1と連結部材2の接触衝撃力を小さくすることができ、特に重量物搬送時の危険性を減少させることができる。
(6)更に、前記連結部材2は前記搬送台車の外周から突出しない位置に配置することを特徴とする。
【0019】
これにより、周囲の作業員が部材につまずく危険性が減少し安全性を向上できる。
(7)更に、前記連結部材2の前記凹凸部は、少なくとも前記連結ピンを有することを特徴とする。
【0020】
連結ピンは、搬送時に負荷が集中するため、特に重量物搬送では頑強な部材、形状で実現する必要がある。前記連結部材2に連結ピンを設けることにより、自動搬送車側の連結部材1は連結ピンほど頑強に構成する必要が無いため重量軽減することができる。
(8)更に、前記連結状態1から前記連結状態2への前記誘導は、前記自動搬送車の移動によって実施することを特徴とする。これにより、新たに駆動手段を設けることなく、自動連結が可能となる。
(9)更に、前記回転手段により前記接触力とは反対方向に回転力を付与すると同時に、前記自動搬送車が移動することで、連結を解除することを特徴とする。
【0021】
これにより、自動搬送車が移動することで前記凹凸部の凹形状部と凸形状部が非接触状態となり、その状態で連結部材2を回転させるために部材同士が擦れることなく容易に連結解除することができる。
(10)更に、前記自動搬送車が前記搬送台車を連結した状態で牽引走行をする際に、前記駆動手段は、前記接触力を付与することを特徴とする。これにより、路面の凹凸や傾斜などで生じる外力によって連結が外れることを防げる。
(11)更に、前記位置検出手段により、すくなくとも前記連結状態1、前記連結状態2、前記連結の解除、前記収納のいずれかの状態を検出し、予定外の位置であった場合に、少なくとも、前記自動搬送車が連結および/または移動動作の再試行または中断、もしくは前記自動搬送車から前記自動搬送車の外部に設けられた管理システムへの異常の報告および前記自動搬送車が前記管理システムから次の指示を受け取る。これにより、異常時に、動作の再実施や作業者による早急な対応、適切なメンテナンスが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、凹凸部を有する連結部材1と連結部材2という簡単な構成でありながら、高精度な位置決めが不要な自動連結が実現できる。それらの部材は簡単な形状のため安価で、また、容易に強固に製作することができるので重量物の搬送も可能である。さらに、高精度な位置決めを不要とする連結状態1から、可動領域を制限して搬送時に受ける衝撃力を抑えるための連結状態2への移行は、自動搬送車の移動によって行う場合、従来のような新たな駆動手段を設ける必要がなく安価である。加えて、位置検出手段を設けた場合は、この位置検出手段の動作させることで連結がされているかどうかを自動検出でき、連結失敗時は再度連結動作を実施して確実に連結をすることができるという、従来にない効果が得られる。また、連結部材2は前記搬送台車の外周から突出しない位置に配置することが可能なので、安全性が高まり、接触力を付与しながら走行した場合、連結が外れにくく搬送の確実性が高まる。
【0023】
これらにより、加減速が生じる複雑なレイアウトの現場でも搬送物に与える衝撃力が少なく安全で、非連結時も周囲の人に対して安全で、また、強固で重量物搬送も実現して、確実に自動的に連結を行える効率的な、物品の自動搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の自動搬送車と搬送台車との連結状態を説明する側面図である。
【図2】本発明の一実施形態の自動搬送車と搬送台車との連結状態を説明する平面図である。
【図3】本発明の一実施形態の連結機構を拡大した図である。
【図4】本発明の一実施形態の連結から連結解除までの動作を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の2つの連結状態を拡大した図である。
【図6】本発明の一実施形態の連結に失敗した場合を説明する側面図である。
【図7】本発明の一実施形態の連結部材の一例を拡大した図である。
【図8】本発明の一実施形態の連結部材の別の形態を説明した図である。
【図9】本発明の一実施形態の連結部材のさらに別の形態を説明した図である。
【図10】本発明の一実施形態のガイド手段の別の形態を説明した図である。
【図11】本発明の凹凸部の別の実施形態例を説明する図である。
【図12】本発明の搬送システム全体の実施形態例の構成を説明する図である。
【図13】本発明の一実施形態の自動搬送車の動作環境における、台車の搬送の概要を説明する図である。
【図14】本発明の一実施形態の自動搬送車による台車の連結動作を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態の自動搬送車による台車の連結解除動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施形態の一例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1,図2を用いて、本発明の一実施形態の連結装置を備えた自動搬送車と被牽引台車(搬送台車)の概要を説明する。
【0027】
自動搬送車100にはその下部に4つの駆動車輪102を取り付けるとともに、自動搬送車100の後部には、回転部(駆動部)104を設ける。回転部104は、例えば回転機構としてギア付きモータ等を備えることにより自動搬送車からの制御を可能とし、駆動装置としてモータドライバを備える。また、回転部104は、回転角検知(位置検出)機能としてロータリーエンコーダやポテンショメータやスイッチを備えるのが望ましい。前述した回転機構,駆動装置,回転角検知機能を持たずに、人の手で回転部を操作することも可能であるが実現できる自動機能が限定される。なお、以降の説明ではこれらすべてを回転部104が備えるものとする。回転部104には本発明の連結装置を構成する連結部材である回転部材106を備えている。回転部材106の先端部には先端へ向かって狭くなる空間を持つ円形リング状のガイド108を備えている。自動搬送車100は、制御コンピュータ,バッテリー,走行機構とその駆動装置,外界センサ,回転部104として回転機構とその駆動装置を備えた制御装置110を有し、自己位置推定方式により自動的な経路走行が可能となっている。回転部104は回転部材106を立てた状態から倒す状態への回転を可能とし、これにより自動搬送車100と被牽引台車200の連結を行う。
【0028】
自動搬送車100に連結される被牽引台車200は、円柱状の4つの支柱202と荷台204によって構成され、前部の下面には左右1対の水平方向の回転が自由な従輪206と、後部の下面には左右1対の水平方向の回転が固定された従輪208を備えることにより移動が可能な一般的に販売される台車である。被牽引台車200の前部2つの支柱202には、本発明の連結装置を構成する連結部材である、高さの調整をして取り付け外しが可能な固定部材210を設ける。固定部材210には、2つの支柱202の間に円柱形状をした上向きのピン212を設ける。ピン212の先端部はガイド108との連結をし易くするために、テーパを設けても良い。ピン212の周囲には、回転部材106が固定部材210に2段階の高さで噛み合うための凹凸部214を備えている。なお、本実施形態では、役割を説明するために回転部材106と固定部材210の備える凹凸形状について、ガイド108と、ピン212と凹凸部214として、名称を明確に分けているが、後述するようにその配置や形状は様々な実施形態を採用することが可能である。
【0029】
図3を用いて、図1,図2における連結のための部材の役割の詳細を拡大図により説明する。図3の(A)(C)は側面図、図3の(B)(D)は平面図である。ガイド108の内側形状は、自動搬送車100の被牽引台車200に対する停止位置誤差の想定値の2倍とピン212の外径を合わせたよりも大きくするのが良い。凹凸部214は、ガイド108とピン212が浅い高さで連結するために、ピン212をよりも低くガイド108の内側の横幅よりも左右に広い幅で凸形状を持つ。また、凹凸部214は、ガイド108とピン212が深い高さで連結するために、ピン212の周囲にガイド108の部材厚さ形状より深い深さの凹形状を持つ。これにより、ガイド108がピン212に被さりガイド108が凹凸部214の上に乗る1段目の連結状態と、ガイド108がピン212と凹凸部214の間に噛み合う2段目の連結状態が作られる。
【0030】
図4,図5を用いて、自動搬送車による被牽引台車の連結から連結解除までの動作を説明する。図4(A)は連結前の状態であり、回転部材106は立てた状態にあり、自動搬送車100は外界センサを含む制御装置110により被牽引台車200の前方に後ろ向きで接岸位置決めを行う。
【0031】
図4(B)は1段目の連結状態を示しており、回転部材106を倒すことで、ガイド108の内側にピン212が位置することとなり、凹凸部214は、ガイド108とピン212が浅い高さで連結するために、ピン212よりも低くガイド108の内側の開いたリング空間の横幅よりも左右に広い幅で凸形状を持つので、凹凸部214の上部に回転部材106が乗る状態になり、ガイド108とピン212は浅い高さで連結する。
【0032】
図4(C)は2段目の連結状態であり、自動搬送車100が前進することで、ガイド108に沿ってピン212がガイド108の先端へ誘導される。その際に部材の自重を利用しても良いが、回転部材106に下向きの力を加えておくことで、ガイド108がピン212と凹凸部214の間へ深い高さで連結し、少なくとも前後方向の動きが制限される連結状態へと遷移する。
【0033】
図4(D)は連結解除の状態であり、回転部材106を立てることで連結が解除される。図5は2つの連結状態について連結装置を拡大した側面図であり、図5(A)は図4(B)に対応し、図5(B)は図4(C)に対応する。
【0034】
図6を用いて、連結に失敗した場合の様子を説明する。連結が前述に示したように実施されなかった場合に、回転部材106は連結がされた時よりも深く倒れた角度まで回転する。自動搬送車100は回転部104の備える回転角検知機能により、回転部材106を立てて収納している状態,浅い連結の状態,深い連結の状態,連結の失敗を判定する。
【0035】
図7を用いて、図3と異なる配置の実施形態例を説明する。図3に対して、凹凸部214を固定部材210に備える代わりに回転部材106に備える実施形態例である。凹凸部214として、ガイド108を全体が切り抜かれた形状では無く、ピン212がガイド108の先端へ誘導された位置に切り抜きを備えることで、ガイド108がピン212に被さり凹凸部214がピン212の上に乗る浅い連結状態と、ピン212が凹凸部214の切り抜きに刺さる深い連結状態が作られる。この場合でも、図3の実施形態と本質的に同様な仕組みになる。
【0036】
図8を用いて、図3と異なる配置の実施形態例を説明する。図3に対して、回転部材106に備えるガイド108と固定部材210に備えるピン212を入れ替えた実施形態例である。凹凸部214の形態は図7でガイド108が備えたものと同様な機能を果たす。この場合でも、図3の実施形態と本質的に同様な仕組みになる。
【0037】
図9を用いて、図3と異なる配置の実施形態例を説明する。図3に対して、回転部材106に備えるガイド108と固定部材210に備えるピン212を入れ替えて、凹凸部214を回転部材106に備える実施形態例である。凹凸部214の形態は図3でピン212の周囲に備えたものと同様な機能を果たし、固定部材210の上に凹凸部214が載って浅い高さでピン212は浅い高さでガイド108と連結し、その後、自動搬送車100が前進することで、ピン212は深い高さでガイド108と連結する。この場合でも、図3の実施形態と本質的に同様な仕組みになる。凹凸部214とピン212の間の距離は、固定部材210の辺とガイド108との間の距離よりも広くする。
【0038】
図10を用いて、図3と異なるガイド108の実施形態例を説明する。図10に示すように、ガイド108の形状は円形に限る必要はない。ガイド108とピン212の浅い連結状態から、自動搬送車100が前進することでガイド108の先端へピン212が誘導されれば良いため、図10のように、ガイド108が直線状で先端へ向かって狭くなる形状でも良い。ただし、ガイド108の先端形状は、ピン212との水平方向の回転を可能とするように、ピン212の外形と一致して同心円状に丸める構成とする。図3に示すガイドが円形状の構造では、自動搬送車と被牽引台車の旋回走行における相対角を広くできるのに対し、図10に示す例では、相対角を制限できる構造となる。これらは、用途に応じて設計を選択することができる。
【0039】
図11を用いて、図3と異なる凹凸部214の実施形態例を説明する。図11に示すように、凹凸部214は必ずしも図3に示すようなピン212の後方から左右に伸びる凸形状に限られることはない。上記で示した2段階の連結状態を実現するために、凹凸部214は、ガイド108の幅だけピン212から離れた位置にピン212より低い凸形状による垂直面を持つ。また凸形状は、回転部材106を倒してガイド108をピン212に被せた際に、自動搬送車100の停止位置に誤差があった場合にも、凸形状の全体がガイド108の内側に含まれないだけの大きさを持つ。また凹凸部214は、少なくともピン212の周囲にガイド108の形状が収まる大きさの凹形状を持つ構成とする。このため、すべてを記載しきれないが、例えば図11の(A)〜(C)に示すように、図3に対して左右の片側のみの凹凸部214や、被牽引台車200の後方へ伸びる凸形状からなる凹凸部214や、矩形状に限らず円形や分割された形状からなる凹凸部214であっても、本質的に同様の機能を果たすことが可能である。
【0040】
図12を用いて、自動搬送システムの構成を説明する。システムは大きく2種類から構成される。一つ目は、自動搬送車100の搭載装置として、制御コンピュータ304,バッテリー306,走行機構308とその駆動装置310、外界センサとして自己位置認識と台車位置認識のための走査型レーザ距離センサ312、回転部104として回転機構314とその駆動装置316を最低限の装置として持つ。
【0041】
二つ目は、自動搬送車100の外部に設置される管理システム300からなる。管理システム300は、自動搬送車100の制御用コンピュータ304と無線通信302により接続される。管理システム300のモニタには、自動搬送車100の位置,被牽引台車200の位置,走行予定の経路が表示される。
【0042】
図13を用いて、自動搬送車100による被牽引台車200の搬送動作の流れを説明する。まず、管理システム300から自動搬送車100へ、これから搬送する台車の現在位置,搬送の経路,搬送の目的位置,被牽引台車200の形状と重量が送信される。次に、自動搬送車100は搬送の指示をされた被牽引台車200の前へ移動し、連結する。次に、自動搬送車100は指示された経路を移動し、搬送の目的位置へ到着する。次に、自動搬送車100は被牽引台車200の連結解除を行い、作業の成功を管理システム300へ報告した後は、次の作業へと移行する。搬送作業の途中で異常を検知し、搬送が正常に続行できない場合には、動作を停止し、作業の失敗を管理システム300へ報告して次の指示を待つ。なお、搬送路の段差や傾斜,凹凸から生じる振動等により、連結状態の解除を防止するために、回転部104は回転部材106がより深く倒れる方向へ回転する力を加えておいても良い。この場合、連結が外れた状況になると、予定外に回転部材106が下方に移動するため、その回転状態がある所定状態より下方にあることを回転角検知機能で検出することで連結状態の検出が可能となる。
【0043】
図14を用いて、自動搬送車100による被牽引台車200の連結動作の詳細な制御をフローチャートで説明する。まず、ステップ1(以下、S1と称す)で自動搬送車100は管理システム300からの指示を受ける。次に、S2で搬送前の台車置き場へ移動する。次に、S3で搬送を指示された任意の被牽引台車200の前方に、後ろ向きで停止する。次に、S4で外界センサ312により被牽引台車200を検知しながら接岸位置決めの動作を行い、自動搬送車100と被牽引台車200が連結可能な位置へ移動する。次に、S5で回転部材106を倒してガイド108をピン212に被せ、1段目の浅い連結状態を作る。ここで、S6として回転部104の備える回転角検知機能により、ガイド108の高さが1段目もしくは2段目の連結状態では無い場合を異常として判断し、S10として動作を停止した後に、S11として管理システム300に異常を報告する。異常ではない場合には、S7で自動搬送車100は前方へ少し移動し、その際に回転部材106に下向きの力を加えておくことで、ガイド108とピン212が深い高さで連結し、2段目の連結状態を作る。ここで、S8として回転部104の備える回転角検知機能により、ガイド108の高さが2段目の連結状態では無い場合を異常として判断し、S12として動作を停止した後に、S13として管理システム300に異常を報告する。異常ではない場合には、S9として管理システム300に連結の成功を報告する。
【0044】
次に、図15を用いて、自動搬送車100による被牽引台車200の牽引から連結解除動作までの詳細な制御をフローチャートで説明する。まず、S14で管理システム300から指示された経路を移動し、搬送後の台車置き場へ移動する。S15で自動搬送車100は被牽引台車200が搬送目的位置となる地点へ停止し、回転部材106に上向きの力を加えた状態とすることで連結の解除を試みる。ここで、S16として回転部104の備える回転角検知機能により、回転部材106が立った状態では無いと判定した場合には、S18として自動搬送車100は後ろへ少し移動することで連結解除の補助をする。ここでも同様に、S19として回転部材106が立った状態では無いと判定した場合には、S20として自動搬送車100は左右へ少し回転することで連結解除の補助をする。S16,S19,S21の判定において、回転部材106が立った状態と判定した場合には、S17で自動搬送車100は次の作業へと移行する。あるいはS21で、回転部材106が立った状態とならない場合は異常として判断し、S22として動作を停止した後に、S23として管理システム300に異常を報告する。異常時には、動作の再実施や作業者による早急な対応、適切なメンテナンスが可能となる。
【0045】
以上の搬送動作において、自動搬送車100は被牽引台車200を牽引していない時は走査型レーザ距離センサ312による危険検知領域は自動搬送車100の周囲のみとするが、牽引時には危険検知領域に被牽引台車200の周囲も含むことによって、牽引走行中の安全性を高める。
【符号の説明】
【0046】
100 自動搬送車
102 駆動車輪
104 回転部(回転機構とその駆動装置,回転角検知機能を備えても良い)
106 回転部材
108 ガイド
110 自動搬送車の制御装置
200 被牽引台車
202 支柱
204 荷台
206 前部の従輪(水平方向の回転が自由)
208 後部の従輪(水平方向の回転が固定)
210 固定部材
212 ピン
214 凹凸部
300 搬送全体の管理用コンピュータ(管理システム)
302 管理システムと自動搬送車との無線通信
304 自動搬送車の制御コンピュータ
306 自動搬送車のバッテリー
308 自動搬送車の走行機構
310 自動搬送車の走行機構の駆動装置
312 自動搬送車の外界センサ(走査型レーザ距離センサ)
314 自動搬送車の回転部に備えた回転機構
316 自動搬送車の回転部に備えた回転機構の駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送台車を自動搬送車と連結し、牽引する自動搬送システムにおいて、
前記自動搬送車と前記搬送台車は、それぞれ凹凸部を有する連結部材1と連結部材2を具備し、
前記連結部材1もしくは前記連結部材2の自重、もしくは駆動手段により、前記連結部材1と前記連結部材2との接触力が加えられ、
前記連結の状態は、前記連結部材1と前記連結部材2の前記凹凸部の接触により、前記連結部材1と前記連結部材2との相対可動領域が制限された領域1を有する連結状態1と、
前記連結部材1と前記連結部材2との相対可動領域が前記領域1より小さい領域2を有する連結状態2とを有し、
前記接触力が加えられた状態で、前記連結部材1もしくは前記連結部材2を移動させることにより前記連結状態1から前記連結状態2へと誘導し、前記連結部材1もしくは前記連結部材2が前記接触力の方向へ移動することで前記連結状態1から前記連結状態2へと遷移するガイド手段を有することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項2】
請求項1の自動搬送システムにおいて、
前記連結部材1もしくは前記連結部材2の前記接触力方向の位置を検出する位置検出手段を具備し、前記連結状態1もしくは前記連結状態2の状態を検出することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項3】
請求項2の自動搬送システムにおいて、
前記駆動手段は、前記連結部材1もしくは前記連結部材2に回転力を付与する回転手段と、前記回転の位置を検出する前記位置検出手段とを備え、自動連結もしくは連結の解除もしくは、前記連結部材1もしくは前記連結部材2の収納、を行うことを特徴とする自動搬送システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの1つの自動搬送システムにおいて、
前記ガイド手段の前記凹凸部の凹形状は、円弧および/または直線状に先端部へ向かって狭くなる空間を持ち、前記空間により誘導される前記凹凸部の凸形状は、円柱状の連結ピンからなることを特徴とする自動搬送システム。
【請求項5】
請求項4の自動搬送システムにおいて、
前記凹形状は、先端に向かって直線的に狭くなり先端が前記連結ピンの外形と一致して同心円状に丸めた形状であることを特徴とする自動搬送システム。
【請求項6】
請求項1〜5うちの1つの自動搬送システムにおいて、
前記連結部材2は前記搬送台車の外周から突出しない位置に配置することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項7】
請求項1〜6うちの1つの自動搬送システムにおいて、
前記連結部材2の前記凹凸部は、少なくとも前記連結ピンを有することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項8】
請求項1〜7のうちの1つの自動搬送システムにおいて、
前記連結状態1から前記連結状態2への前記誘導は、前記自動搬送車の移動によって実施することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項9】
請求項3〜8の内の1つの自動搬送システムにおいて、
前記回転手段により前記接触力とは反対方向に回転力を付与すると同時に、前記自動搬送車が移動することで、連結を解除することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項10】
請求項1〜9のうちの1つの自動搬送システムにおいて、
前記自動搬送車が前記搬送台車を連結した状態で牽引走行をする際に、前記駆動手段は、前記接触力を付与することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項11】
請求項2〜10のうちの1つの自動搬送システムにおいて、
前記位置検出手段により、すくなくとも前記連結状態1,前記連結状態2,前記連結の解除,前記収納のいずれかの状態を検出し、予定外の位置であった場合に、少なくとも、前記自動搬送車が連結および/または移動動作の再試行または中断、もしくは前記自動搬送車から前記自動搬送車の外部に設けられた管理システムへの異常の報告および前記自動搬送車が前記管理システムから次の指示を受け取ることを特徴とする自動搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−189769(P2011−189769A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55232(P2010−55232)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】