説明

自動腹膜透析装置

【課題】 患者に対して、安全且つ確実に透析液を注入し、排出でき、かつ患者の負担を軽減した自動腹膜透析装置を提供する。
【解決手段】腹膜透析液あるいは患者の腹腔からの排液を輸送するための導管開閉装置として、導管開閉手段19が、連動カムおよび押し子の組み合わせからなり、かつ開閉対象の導管2,9,12,15,17の数と同じである。1本の回転軸25に3個以内で、かつ回転軸25の回転によって1個のみの導管を独立して開放することが可能なように前記回転軸に位相差をもって装着されている。前記回転軸25の数は複数本で前記導管開閉手段の数より少ないこと、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動的に患者の腹腔内に透析液を注入し、所定時間後に排出を行う自動的腹膜透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析療法は治療費が安いことや透析患者が頻繁に通院しなくても良く、社会復帰し易いこと等の利点があり、日本国内でも徐々に実施する施設が増加してきている。連続的携行腹膜透析(以下、CAPDと略す)は患者が自宅等で透析液の交換を簡便に行え、安価であるために多くの腹膜透析患者がこの方法を採用している。しかし、簡便とはいえ、1日に数回もバッグの交換、コネクターの脱着及びクランプ(開閉手段)の開閉を繰り返すため、患者の負担は決して少なくない。更に患者の中には眼や手の不自由な人もおり、それらの患者の誤操作のために汚染されたり、注入・排出ミスを起こしたりすることもある。
【0003】
そのため、上記の操作を自動的に行う腹膜透析装置が考案され、改良を重ねられてきた。より簡単な自動腹膜透析装置では、落差によって透析液が患者腹腔内に注入され、そして腹腔から排出される。このタイプのものは比較的構造が簡易であり、重力によって注入・排出を行うために生体にとって無理がなく、安全である。一方、注入・排出を行うために必要な落差を設けなくてはならず処置時における患者の姿勢を強要したり、また装置が大型化するという問題があった。自動腹膜透析装置の液の注入・排出にローラーポンプを使用すると、落差を設ける必要はないが、ローラーが注液量や排液量に無関係に回転するので、過剰に注液したり、また腹腔内に滞留液が少ないにも拘らず、強制的に吸引して腹膜を傷つける恐れがある。
【0004】
以上、述べたように従来の装置には一長一短があり、また上記以外にも以下に述べるような共通の欠点を有していた。まず、第1に注液量や排液量をロードセルによって重量として測定しているため、大型化し、且つ高価になっていた。第2に透析液バッグ、排液バッグ、患者の腹膜カテーテル、加温手段等の間は導管によって連結され、これらの各導管にはそれぞれ開閉手段が装着されていた。そして、1本の導管に対して一連の1つの開閉手段を別々に作動させていたため、制御装置が複雑になり、コストアップの原因になっていた。
【特許文献1】特開平5−131027
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題はまず第1に患者に対して、安全且つ確実に透析液を注入し、排出できる自動腹膜透析装置を提供することにある。即ち、汚染や誤操作等がなく、予め決められた通りの順に作動し、また正確な量の透析液の注入や滞留液の排出を行う装置を提供する。第2に自動腹膜透析装置によって処置時における患者の負担を軽減することにある。即ち、透析液交換時の手動操作を減少し、また液交換時の患者の姿勢を強制しないでも良い装置を提供する。第3に構造の比較的簡易で安価な自動腹膜透析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、前記課題を解決するために、腹膜透析液あるいは患者の腹腔からの排液を輸送するための導管開閉装置として、
(1)導管開閉手段が、連動カムおよび押し子の組み合わせからなり、かつ開閉対象の導管の数と同じであること、
(2)1本の回転軸に3個以内で、かつ回転軸の回転によって1個のみの導管を独立して開放することが可能なように前記回転軸に位相差をもって配置されていること、
(3)前記回転軸の数は複数本で前記導管開閉手段の数より少ないこと、
を特徴とする導管開閉装置を有する自動腹膜透析装置の提供にある。
【0007】
本発明の第2は、前記課題を解決するために、腹膜透析液あるいは患者の腹腔からの排液を吸引あるいは送液および該吸引あるいは送液による輸送量を計量する手段として、シリンダーおよび該シリンダー内を軸方向に往復移動して前記各液を前記シリンダー内に吸引ならびに送液および計量することが可能なピストンを備えたものを有することを特徴とする自動腹膜透析装置を提供することにある。本発明の自動腹膜透析装置においては、前記腹膜透析液と患者の腹腔からの排液を吸引ならびに送液および計量する手段として、前記手段に代えて可撓性のバッグやダイアフラム(隔膜)を有するチャンバー等も用いることができる。
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
発明の実施の形態
1.シリンダーおよび該シリンダー内を軸方向に往復移動して腹膜透析液と患者の腹腔からの排液をシリンダー内に吸引ならびに送液および計量することが可能なピストンを備えたものを用いる実施の形態
導管2のみを開放し、軸方向に移動して腹膜透析液の吸引および排出と計量が可能なピストン5を備えた所定容量のシリンダー4内に、前記ピストン5により透析液を流入させる(A段階)。次に導管2を閉止して、貯留容器13に連なる第2導管12のみを開放し、ピストン5を押圧して前記A段階でシリンダー4内に吸引した透析液を貯留容器13に流出させる。この操作を繰り返して必要な量の透析液を貯留容器13に貯留させる(B段階)。例えば100mlのシリンダーを使用する場合、1000mlを送液するために上記の操作を10回繰り返せば良い。
【0009】
図1の自動腹膜透析装置においては、導管2の上流側端部に複数の透析液容器が結合させたものであるが、1個の透析液容器に収納される透析液の量で注入量として十分である場合、例えば1日の注入量が3000ml程度で済む場合には、前記透析液容器は1個でも良い。
【0010】
図1の自動腹膜透析装置においては、上記操作に追加して、第1の透析液容器1が導管2によって連結されたマニホールド11の1端と貯留容器13が導管12によって連結されたマニホールド11の1端の間のマニホールドの1端に第2の透析液容器10を連結し、上記操作と同様にして、前記第2の透析液容器10に連結した導管9のみを開放してピストン5を吸引して該第2の透析液容器10から濃度の異なる所定量の透析液をシリンダー4内に流入させることもできる。そして、第2の透析液容器10が連結された導管9を閉止し、貯留容器13に連なる第2導管12のみを開放し、前記のようにしてシリンダー4内に吸引し、濃度の異なる透析液を貯留容器13内に流出させ、透析液を貯留容器13内に流入することができる。この第2の透析液容器10に連なるラインは、第1の透析液容器からの透析液を貯留した際、透析液不足等が認められたときに異なる濃度の透析液を貯留するために使用される。また、貯留容器13としては該貯留容器内の透析液を加温することのできる加熱手段14を付属して設けたものが好ましい。また、前記自動腹膜透析装置は、透析液を患者体内に注入する前に加温する必要が生じる場合があるので、前記貯留容器に接して加温手段を有することが好ましい。
【0011】
前記貯留容器13内で加温された透析液を患者16の腹腔内に注入するため、導管12のみを開放し、シリンダー4に所定量の透析液を吸引する。次に導管12を閉止し、また患者腹腔内に連なる第3導管15のみを開放し、ピストン5を押圧して吸引した前記所定量の透析液を患者16の腹腔内に流出させる。上記の操作を繰り返して必要な量の透析液を患者16の腹腔内に注入する(C段階)。
【0012】
前記患者16の腹腔内に滞留された液を前記と同じ操作によって導管15のみを開放し、シリンダー4内に患者16の腹腔内に滞留されていた液(滞留液)を吸引する。次に導管15を閉止して、排液容器18に連なる導管17のみを開放して、ピストン5を押圧してシリンダー4内に吸引した滞留液を排液容器18内に排出する。上記の操作を繰り返して、患者16の腹腔内が生体にとってダメージを与える程の陰圧にならないように滞留液を排液容器18内に排出する(D段階)。
【0013】
前記D段階で患者16の腹腔内が極度の陰圧にならないように滞留液を排液容器18内に排出するため、前記患者の腹腔内に挿入された腹膜カテーテル、或いはそれに連なる延長チューブに連結される導管は、例えば110mmHg以上の陰圧によって閉塞し、140mmHg以上の陽圧によって膨張できるものが、患者の腹腔に圧力が直接かかるのを防止でき、圧力を緩和できるので好ましい。そのために、前記導管の少なくとも一部を可撓性の薄膜で形成したものが好ましい。また、前記ピストン5の後端部に過負荷センサ(歪みゲージ)を設けて荷重を測定し、シリンダー4内の圧力を測定することができる。
【0014】
本発明の自動腹膜透析装置においては、導管の内の1つの導管のみを開放し、他の導管を閉止する管の開閉手段としては、回転軸を回転することによって各々の連動カムを作動させ、その連動カムの位置によって押し子の1個のみを導管から開放させ、他の導管を閉止できるものが好ましい。
【0015】
例えば、図1のように導管が5本の場合には、前記押し子と連動カムよりなる導管開閉手段としては、図2に示すように1本の回転軸に装着する連動カムの数は、3個までにするのが好ましい。その理由は、3個までであれば、或る導管、仮にこの導管をA導管とした場合に、該導管Aを開放している状態から、回転軸を正転、あるいは負転のいずれかに回転することによって、前記導管Aを閉止し、かつ他の導管1個のみを独立して開放することが容易にできるからである。ところが、1本の回転軸に4本以上の前記導管開閉手段を設けると、1本の導管のみを開放することが物理的に困難となる。すなわち、連動カムの位相が2つ以上ずれている導管を開放しようとすれば、必ず位相の1つずれている導管を開放する状態を作り出すことになり、好ましくない。逆に、1本の回転軸に1個の前記導管開閉手段を装着しないのでは回転軸が多くなり装置が複雑になり、かつ制御も複雑になる。
【0016】
前記5組の開閉手段は、前記回転軸18および25の回転によって導管2、9、12、15および17のうちの1組のみを開放できるようにそれぞれ回転軸の位置に配置される。本導管開閉手段の場合、第1本目の前記導管開閉手段19の3組が120°の位相差をもってそれぞれ装着され、第2本目の回転軸の前記導管開閉手段19の2組が120〜180°の位相差をもってそれぞれ装着されたものが好ましい。
【0017】
また、図1において、第2の透析液容器を使用せず、前記導管が4本の場合には、前記図2において、第1本目の回転軸に前記導管開閉手段19が2個が装着され、第2本目の回転軸に導管開閉手段19の2個が装着されたものが挙げられる。また、この場合に第1本目の回転軸に前記導管開閉手段19の2個が120〜180°の位相差をもって装着され、第2本目の回転軸に導管開閉手段19の2個が120〜180°の位相差をもって装着されたものが好ましいが、1本の回転軸に導管開閉手段19の3個を装着し、他の1本の回転軸に導管開閉手段19の1個を装着したものでも良い。
【0018】
前記連動カムと該連動カムの回転によって前記導管を開閉する導管開閉手段としては、例えば図3に示すような連動カム26と押し子27より成るものが挙げられる。図3の(A)は、導管28を開放した状態を示す。また、図3の(B)は、回転軸25を回転させることにより連動カム26を回転させ、押し子27と受け溝29により導管28を閉止した場合の導管の開閉状態を示す。前記導管28を閉止する際に用いる前記受け溝29としては、図3に示すように押し子27の頂部に対応するRと同程度のRを有する凹部を有するものが好ましい。
【0019】
前記連動カムの位置および/または移動方向を決めるために、前記連動カムの近傍に光センサを設けるのが好ましい。この光センサによって、連動カムの位置を確認し、次にクランプすべき導管の押し子を移動させるために、連動カムをどちら側に回転するかの回転方向を決定することができる。
【0020】
前記患者の腹腔内に挿入された腹膜カテーテル、或いはそれに連なる延長チューブに連結された導管以外の各導管から液を排出、または該各導管に液を注入させる際のピストンの移動速度は、吸入および排出時間を短縮するため、腹膜カテーテルやそれに連なる延長チューブに連結された導管の液を送液する際のピストンの移動速度より大きい方が好ましい。患者の腹腔内に挿入された腹膜カテーテル、或いはそれに連なる延長チューブに連結された導管のから液を排出、または該導管に液を注入させる際のピストンの移動速度は、腹腔にダメージを与えないように所定の範囲にあるのが好ましい。例えば、前者のピストンの移動速度が通常400〜600ml/min程度、例えば600ml/minであるのに対して、後者のピストンの移動速度10〜300ml/min程度、例えば300ml/minである。
【0021】
シリンダーの容量は、通常30〜200ml、好ましくは50〜100mlである。また、該シリンダーの外筒部近傍に位置検出センサ、例えば光センサ(フォトインタラプタ)やスライダ抵抗器(ポテンショメーター)等を設けたものが好ましい。この位置検出センサを設けることにより、透析液あるいは患者の腹腔内からの排液の吸引あるいは排出量検出し、この検出結果に基づいて、前記の液体の吸引あるいは排出量を自動制御することが好ましい。
【0022】
また、前記シリンダーのピストン部分は、無菌構造とするのが好ましい。この無菌構造としては、例えば、図6のシリンダー外筒の後端部フランジ6とピストン後端部側フランジ7の間を可撓性の蛇腹状の無菌カバー33で覆う、あるいは図4に示すようにシリンダー4の全体を伸縮性のあるカバー、例えばゴム製のカバー30で覆う手段が挙げられる。
【0023】
さらに図1の自動腹膜透析装置においては、腹膜透析液、あるいは患者16の腹腔からの排液を吸引および排出を行うためにシリンダー4およびピストン5の組み合わせの1組を使用しているが、複数の組例えば図7に示すように2組を使用しても良い。シリンダー4およびピストン5の2組を用いることにより、腹膜透析液あるいは患者16の腹腔からの排液を吸引および排出の待ち時間を無くし、間欠輸送の影響を少なくすることが出来る。例えば、一方が吸引している時に、他方が排出するというように実施することができる。
【0024】
2.可撓性のバッグを用いる場合
前記図1のシリンダー4およびピストン5に代えて図5の密閉容器31に収納した所定容量の可撓性のバッグ32を利用して同様にして、腹膜透析液、あるいは患者16の腹腔からの排液を吸引および排出を行うことができた。前記密閉容器31内を加圧することにより前記バッグ32が圧縮されるので、前記バッグ32内の腹膜透析液、あるいは患者16の腹腔からの排液を送液することができ、また、前記チャンバー31内を減圧することにより前記バッグ32に陰圧がかかるので腹膜透析液、あるいは患者16の腹腔からの排液をバッグ32内に吸引することができる。
【0025】
例えば導管開閉手段1Kのみを開放し、密閉容器31内を減圧し前記可撓性バッグ内に透析液容器1より透析液を引き込む。また、導管開閉手段3Kのみを開き、チャンバー31内を加圧し、可撓性バッグ32内の液を収納容器13に送液し、加温手段14で加温する。また、導管開閉手段3Kのみを開放し、前記と同様にして可撓性バッグ32内に透析液を引き込む。次に導管開閉手段4Kのみを開放し、可撓性バッグ32内の透析液を患者16の腹腔に送液する。前記チャンバー31内の加圧あるいは減圧は、例えば該チャンバー31内に気体を注入あるいは排出することによって、行うことができる。
【0026】
また、透析液あるいは患者の腹腔内からの排液の吸引あるいは排出する手段としては、前記シリンダーおよびピストンあるいは可撓性バッグを利用する手段以外に、可撓性のダイアフラム(隔膜)を設けて仕切られた2室を有し、該2室の1室(以下、A室と言う。)内には気体を導入することが可能であり、かつもう一方の室(以下、B室と言う。)内には透析液あるいは患者の腹腔内からの排液を注入が可能なチャンバーが挙げられる。
【0027】
前記チャンバーのダイアフラム(隔膜)は前記のA室に気体を導入することによって壁面方向延伸して反転し、B室内に収納されていた透析液あるいは患者の腹腔内からの排液を排出し、また、前記A室に導入した気体を排出し、さらに該A室をさらに減圧することによって、前記B室の壁面方向に延伸して反転していた前記ダイアフラム(隔膜)をA室の壁面方向に延伸して逆転させることにより、B室内に透析液あるいは患者の腹腔内からの排液を導入することが可能なものである。
【0028】
以下、本発明の実施の態様を示す。
1.腹膜透析液あるいは患者の腹腔からの排液を輸送するための導管開閉装置として、
(1)導管開閉手段が、連動カムおよび押し子の組み合わせからなり、かつ開閉対象の導管の数と同じであること、
(2)1本の回転軸に3個以内で、かつ回転軸の回転によって1個のみの導管を独立して開放することが可能なように前記回転軸に位相差をもって装着されていること
(3)前記回転軸の数は複数本で前記導管開閉手段の数より少ないこと、
を特徴とする導管開閉装置を有する自動腹膜透析装置。
【0029】
2.導管開閉装置が2本の回転軸を有し、かつ1個の回転軸に前記導管開閉手段の3個が装着され、他の1個の回転軸に前記導管開閉手段の2個が装着されたものである前記1の自動腹膜透析装置。
3.3個の導管開閉手段が120°の位相差をもって装着され、2個の導管開閉手段が120〜180°の位相差をもって回転軸に装着された前記3の自動腹膜透析装置。
【0030】
4.腹膜透析液と患者の腹腔からの排液を吸引ならびに送液および計量する手段として、シリンダーおよび該シリンダー内を軸方向に往復移動して前記各液を前記シリンダー内に吸引ならびに送液および計量することが可能なピストンを備えたものを有することを特徴とする自動腹膜透析装置。
5.腹膜透析液と患者の腹腔からの排液を吸引ならびに送液および計量する手段が、無菌構造のものである前記4の自動腹膜透析装置。
6.シリンダー後部フランジ部とピストン後端部を可撓性の蛇腹構造の無菌カバーで結合し、無菌構造としたものである前記7の自動腹膜透析装置。
7.シリンダーおよびピストン全体を覆い、無菌構造としたものである前記5の自動腹膜透析装置。
8.シリンダー外部近傍にピストンの位置検出センサを設けたものである前記4〜7の自動腹膜透析装置。
【0031】
9.シリンダー後端に圧力センサを設けたものである前記4〜8の自動腹膜透析装置。
10.圧力センサが患者の腹腔からの排液を吸引する際に、患者の腹腔が過負荷になるのを防止するものである前記10の自動腹膜透析装置。
11.腹膜透析液と患者の腹腔からの排液を吸引ならびに送液および計量する手段として、密閉容器中に収納した可撓性バッグを備えたものであることを特徴とする自動腹膜透析装置。
12.導管の開閉装置として、前記1〜4の導管の開閉装置を有する前記4〜11の自動腹膜透析装置。
【0032】
13.少なくとも第1の透析液容器(1個あるいは複数個の透析容器で構成さ)(A)、患者の腹腔の腹腔内に挿入された腹膜カテーテルあるいはそれに連なる延長チューブ(B)、患者の腹腔からの排液収納容器(C)および腹膜透析液と患者の腹腔からの排液を吸引ならびに送液および計量する手段(D)が、多分岐導管(マニホールド)によって連結されたものである前記1〜12の自動腹膜透析装置。
14.多分岐導管(マニホールド)に、さらに患者に注入する前の透析液を貯留するための貯留容器が連結されたものである前記13の自動腹膜透析装置。
15.貯留容器に接して加温手段を有することを特徴とする13〜14の自動腹膜透析装置。
16.第1の透析液容器の他に、第1の透析液容器中の透析液とは異なる濃度の透析液が貯留された第2の透析液容器が多分岐導管(マニホールド)に連結されたものである前記13〜115の自動腹膜透析装置。
16.患者の腹腔内に挿入された腹膜カテーテル、或いはそれに連なる延長チューブに連結された導管の少なくとも一部を可撓性の薄膜で形成したものである前記12〜15の自動腹膜透析装置。
【発明の効果】
【0033】
1.第1に液の注入および排出がシリンダーとピストンによるストロークによって定量的に行われるため、透析液や滞留液を定量しながら注入・排出を行うことができ、生体に対して負荷となる過剰な注入や排出(吸引)を防止しつつ、正確な量の液を移送することができる。そのため、生体に対して安全であるのは勿論、シリンダーとピストンによるストロークによって液の注入および排出が定量的に行われるために、落差を取れない場合でも送液は可能である。
2.第2に事前に自動腹膜透析装置に必要最小限のセットアップをしておくことで、後はこの装置が自動的に流路の選択や閉止・開放を行い、液の計量、加温、注入、排出、そしてプライミング(導管内を液で充填すること)までも自動的に行ってくれる装置が液交換に伴うほとんど全ての操作を自動的に行ってくれるので、眼や手の不自由な患者でも汚染や誤操作による事故から救済され、手技操作の負担が軽減される。
3.第3に定量ポンプであるために、送液した透析液や排出した滞留液の重量を計量しなくても、送液した回数をカウントし、さらに位置検出センサによりピストンの位置を測定することによって送液量を定量できる。そのため、重量測定用の高価なロードセルを装備する必要がない。
4.第4に装置内の流路を選択するときに各導管に装着された開閉手段を開閉して行うが、回転軸のみを回転することによって、回転軸に装着された複数の連動カムと押し子が作動し、複数の導管を開閉することができる。そのため、導管に装着された開閉手段を制御している装置が個別の場合よりも、より簡易なものとすることができる。その結果、自動腹膜透析装置全体の構造が比較的簡易なものとなり、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の自動腹膜透析装置の1実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の自動腹膜透析装置の回転軸に配置した導管の開閉手段の1実施例を示す図である。
【図3】回転軸に装着された連動カムと押し子よりなる導管の開閉手段と該開閉手段による導管の開放状態と閉止状態を示す。(A)導管の開放状態を示す。(B)導管の閉止状態を示す。
【図4】図1の自動腹膜透析装置のシリンダー全体を無菌構造としたものを示す図である。
【図5】図1の自動腹膜透析装置において、可撓性バッグを使用する構成を示す図である。
【図6】シリンダー後端部に薄膜ジャバラ構造を設け、シリンダーを無菌構造としたものを示す図である。
【図7】本発明の自動腹膜透析装置の他の実施例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 第1透析液容器
2 1導管
4 シリンダー
5 ピストン
6 シリンダー後端部フランジ
7 ピストン後端部側フランジ
8 位置検出センサー
9 導管
10 第2透析液容器
11 マニホールド
12 導管
13 貯留容器
14 加熱手段
15 導管
16 患者
17 導管
18 排液容器
19 導管開閉手段(連動カム+押し子)
25 回転軸
26 連動カム
27 押し子
28 導管
29 押し子の受け溝
30 ゴム製のカバー
31 密閉容器
32 可撓性バッグ
33 薄膜ジャバラ
1K 導管開閉手段
2K 導管開閉手段
3K 導管開閉手段
4K 導管開閉手段
5K 導管開閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析液あるいは患者の腹腔からの排液を輸送するための導管開閉装置として、
(1)導管開閉手段が、連動カムおよび押し子の組み合わせからなり、かつ開閉対象の導管の数と同じであること、
(2)1本の回転軸に3個以内で、かつ回転軸の回転によって1個のみの導管を独立して開放することが可能なように前記回転軸に位相差をもって装着されていること
(3)前記回転軸の数は複数本で前記導管開閉手段の数より少ないこと、
を特徴とする導管開閉装置を有する自動腹膜透析装置。
【請求項2】
1個の回転軸に前記導管開閉手段の3個が120度の位相差を設けて装着され、他の1個の回転軸に前記導管開閉手段の2個が120〜180度の位相差を設けて装着されたものである請求項1記載の自動腹膜透析装置。
【請求項3】
少なくとも透析液容器(1個あるいは複数個の透析容器で構成される。以下、第1の透析液容器と言う。)(A)、患者の腹腔の腹腔内に挿入された腹膜カテーテル或いはそれに連なる延長チューブ(B)、患者の腹腔からの排液収納容器(C)および腹膜透析液と患者の腹腔からの排液を吸引ならびに送液および計量する手段(D)が、多分岐導管(マニホールド)によって連結されたものである請求項請求項1または2記載の自動腹膜透析装置。
【請求項4】
第1の透析液容器中の透析液とは異なる濃度の透析液が貯留された透析液容器(以下、第2の透析液容器と言う。)が連結されたものである請求項3記載の自動腹膜透析装置。
【請求項5】
患者の腹腔内に挿入された腹膜カテーテル、或いはそれに連なる延長チューブに連結された導管の少なくとも一部を可撓性の薄膜で形成したものである請求項3または4記載の自動腹膜透析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−314826(P2006−314826A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201320(P2006−201320)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【分割の表示】特願平8−353205の分割
【原出願日】平成8年12月16日(1996.12.16)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】