説明

自動車、特に実用車両(NKW)及びジョイント装置

本発明はジョイント装置(1)に関する。このジョイント装置(1)はピン状の保持体(5)を有しており、該保持体(5)の軸方向のヘッド側端部に、単数又は複数の部分より成る支持装置(2,3)が設けられていて、前記保持体(5)のベース領域(5a:5b)が、特に商用車(NKW)のアクスルハウジング(10)に結合可能である形式のものにおいて、前記ジョイント装置(1)は、ピン状に延在する保持体(5)に隣接して別個のフランジ体(8)を有しており、該フランジ体(8)によって、前記保持体(5)がアクスルハウジング(10)に向かう方向に負荷され得るようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した、少なくとも1つのアクスルハウジングと、該アクスルハウジングのための支持部とを備えた自動車、並びに請求項8の上位概念部に記載したピン状の保持体を備えたジョイント装置に関する。
【0002】
特に実用車両(NKW)のためには、本来の支持作用を有するアクスルハウジング(垂直方向に作用する軸の重力を支持する)の隣に、付加的な支持部が設けられており、該支持部は、例えば斜めに延在する複数のリンク又は三角アームを有しており、該三角アームは、その先端部(一方の端部)が、ピン状の保持体によって支持されたジョイントヘッドに係合し、他方の端部がシャーシの長手方向フレーム部に保持されている。このような三角アームは、例えばアクスルハウジングの側方ガイドも行う。
【0003】
複数の部分より成る三角アームの構成は、例えばドイツ連邦共和国特公開許10219708第号明細書により公知である。
【0004】
このような形式又は類似の形式のリンクをアクスルハウジングに可動に支持するために、ピン状の保持体が公知である。このピン状の保持体は、組み立てた状態で、例えばその拡大されたディファレンシャルハウジングの領域において、アクスルハウジングから上方に延在していて、ジョイントヘッドを支持しており、該ジョイントヘッドに単数又は複数のリンクが係合するようになっている。この保持体は、多くの場合、鍛造部品として構成されていて、そのベース領域がフランジ状に広がっており、それによって、アクスルハウジングと結合できるようになっている(大抵の場合、ねじ結合を介して)。このような、ピンフランジとも称呼されている鍛造部品は、車両運転中に強い負荷にさらされる。しかしながら、ピン軸線に対してほぼ直角に延在するフランジ状のフット拡大部によって、保持体は複雑な形状を有することになる。従って、鍛造プロセス中に、材料内の繊維配向が構成部分を完全に貫通し、途中で外へ流れ出すことがないようにすることは、非常に困難である。それ故、このような構成部材の耐用年数及び十分な安全性の余裕は、繊維配向に応じて非常に異なっている。このような構成部分の、繊維配向を考慮した非破壊材料検査は、不可能であるので、これによって構成部分の早期の故障に関連した不確実性が生じる。
【0005】
本発明の課題は、以上のような欠点を改善することである。
【0006】
この課題は本発明によれば、自動車、特に請求項1の特徴を有する実用車両、並びに請求項8の特徴を有するジョイント装置によって解決された。本発明の有利な構成及び実施態様は、従属請求項2乃至7及び9乃至11に記載されている。
【0007】
本発明によれば、少なくとも2つの個別の構成ユニットに分けて幾何学的に簡単な構造にしたことによって、フランジ状の拡張部を有する一体的な保持体の複雑さが避けられた。より簡略化された保持体内において、繊維はほぼ互いに平行に配向され、主負荷方向に対して横方向に配向されることはない。
【0008】
保持体は、最大形状安定性を得るために、有利には鍛造部品であって、より簡略化された保持体の幾何学形状によって、繊維配向に関連した不確実性は最小限にされ、故障に対する安全性及び耐用年数が著しく改善された。
【0009】
本願発明によれば、フランジ体は別個に構成されているので、このような別個に個性されたフランジ体に課せられる機械的要求は、比較的小さい。従って、フランジ体は、別の、鍛造されていない材料より形成することができる。
【0010】
特に有利には、鍛造部品としての保持体が、軸方向の延在寸法に比較して小さい、半径方向の延在寸法を有しているので、繊維がほぼ互いに並んで、及びほぼ互いに平行に延在する、ほぼ円筒形の形状が得られる。
【0011】
保持体は、狭いフランジ領域を必要するのではなく、有利には、シャフト領域に対して拡大されたベース領域を有していて、該ベース領域に(例えばベース領域の段部又は傾斜面に)フランジ体が押し付けられ、かつ被せ嵌められるようになっている。次いで、フランジ体は、製造技術的に簡単にほぼプレート状に構成することができ、保持体とアクスルハウジングとの間の良好な結合を得るために、保持体のための中央の貫通開口、並びに該貫通開口を包囲する、段付けされかつ/またはテーパ状に広げられた、保持体のベース領域に押し被せ嵌めるための支持部を有している。鍛造部品におけるように、フランジ体の後加工は不必要である。
【0012】
特に、本発明に従って、複数部分より成る構成(一方では保持体、他方ではフランジ体より成る)において、アクスルハウジングの幾何学形状及び/又は係合する支持部の幾何学形状に応じて、互いに組み合わせ可能な保持体及びフランジ体の複数の組み合わせが得られる。例えば、同じフランジ体によって、異なる大きさのピンを保持することができる。又は、同じピン状の保持体によって、種々異なる孔寸法又は孔形状を有するフランジ体を、アクスルハウジングに応じて、使用することができる。
【0013】
付加的に、保持体は、軸方向の通路を有しており、該軸方向の通路を通して、(例えば三角アームを係合させるための)上側のジョイントとピンとを緊締するためのねじ体をねじ込むことができる。
【0014】
複数部分より成っているにも拘わらず、本発明によれば、簡単に、ピン状に延在する保持体及びフランジ体を、組み立て可能な1つの共通の構成ユニットに予め構成し、それによって共通に組み立てることができる。これによる組み立て費用な安価である。
【0015】
本発明のその他の利点及び特徴は、図面に示されていて、以下に詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】商用車の、ディファレンシャル領域において拡大された(図示の実施例では後車軸の)アクスルハウジングをさらに支持する支持部(アクスルハウジングの上側に前記支持部に接続するための保持体が設けられている)としてのV字形に延在する2つのリンクに結合するためのジョイント装置の領域における概略的な斜視図である。
【図2】保持体及びフランジ体並びに、該保持体及びフランジ体とリンクとの結合部の詳細を示す、一部破断した部分的な斜視図である。
【図3】図2に示した構成部分の組み立て前の分解図である。
【図4】それぞれ長手方向で破断した保持体及びフランジ体の組み立て前の拡大した分解図である。
【図5】保持体及びフランジ体を互いに押し込んで規格化されたユニットを形成した状態を示す図4に対応する、長手方向で破断した斜視図である。
【図6】保持体と、ほぼ長方形のフランジ体とを押し込み結合する前及び後の、保持体及びフランジ体の斜視図である。
【図7】図6に示した保持体と、ほぼ三角形のフランジ体とを押し込み結合する前及び後の、保持体及びフランジ体の斜視図である。
【図8】それぞれ長手方向で断面した保持体及びフランジ体の、組み立て前の状態を示す第2実施例の拡大断面図である。
【図9】互いに規格化されたユニットを形成するための構成部分を押し込み結合した後の、図8と同様の拡大断面図である。
【0017】
図1に全体が示されたジョイント装置1は、特に三角アーム状の配置形式で鋭角に、かつ平面図で見て互いにV字形に延在する2つのリンク2,3と、三角形の先端部においてこの先端部によって覆われている1つのジョイントヘッド4と、1つのフランジ体8とを有している。前記ジョイントヘッド4は、ピン状の保持体5の軸方向の上端部が、保持体の軸方向の通路6に貫通係合するねじ7によって位置固定されており、また前記フランジ体8は、アクスルハウジング10の拡大された領域9において、例えばねじ結合部11又はその他の保持部を介して固定されている。このジョイント装置1の詳細は、図2及び図3に示されている。
【0018】
ほぼプレート状のフランジ体8は、図1に示した組み立てた状態で、ピン状の保持体5の拡大したベース領域5a(若しくは図8に示した第2実施例ではベース領域5b)に、下方に向けられた、アクスルハウジング10を押圧する力を加える。
【0019】
フランジ体8は、保持体5のための中央の貫通開口12と、該貫通開口12を包囲する、段付けされた(選択的に、図8及び図9に示した実施例では下方に向かったテーパ状に拡大する開口でもよい)支持部13とを有しており、該支持部13は、保持体5のベース領域5aの相補的な支持部14を押圧するためのものである。1段又は複数段に段付けされた支持部13,14の協働作用は、例えば、段付けされた支持部13,14を備えた第1実施例のための図2の断面図又は図5に示されている。
【0020】
図8には、選択的な実施例が示されており、この選択的な実施例では、フランジ8の中央の貫通開口12の縁部が支持部13aとして、下方に向かってテーパ状に広がって延在していて、支持部5の選択的に構成されたベース領域5bの、相補的なつまり対応するテーパ状に形成された支持部14aに押し被し嵌められるようになっている。このような選択的な実施例の構成部分5,8は、図9に、摩擦結合(摩擦による束縛)により組み立てられた状態が示されている。この選択的な実施例においても、上に載せられたフランジ8によって、保持体5を軸方向で下方に押し付け、かつ環状に保持する力が得られる。
【0021】
段付けされた支持部13,14とテーパ状(円錐形状)の支持部13,14との組み合わせ、並びにその他の摩擦結合式及び/又は形状結合式の支持部の組み合わせも可能である。必ずしも回転対称的な構成でなくてもよい。
【0022】
2つの実施例において、別個のフランジ体8に課せられた要求は比較的低い。フランジ体8は例えば鋳造体として構成されていてもよいし、或いは保持体5とは異なる材料より成っていてもよい。例えば簡単な鋼又は繊維強化されたプラスチックも考えられる。
【0023】
図6及び図7に示した第1実施例によれば、構成部材5(保持体)及び構成部材8(フランジ体)は、組み立てる前に、相対回動不能なプレス嵌めによって互いに保持されていてよい。これによって、ねじ結合部11をアクスルハウジング10に取り付けるだけによって、従来技術による一体的なジョイントピンのような規格化された構成ユニットが形成される。
【0024】
アクスルハウジング10とは、図1に示されているように、シャーシのアクスルを包囲する何らかの外側部分又はハウジング部のことである。ここでは、車両横方向を基準にして、アクスルハウジング10の中央の領域が、ディファレンシャルを収容するための拡大されている。この拡大された領域は、ジョイント装置1を固定するために用いられるので、支持作用を有する2つのリンク2,3自体は、例えば支持作用を有する長手方向フレーム部の上部領域に結合することができる。このような支持部は、特にアクスルの側方ガイドのための補助手段として用いられる。
【0025】
保持体5のベース領域5a(第2実施例では5b)は、アクスルハウジング10に接触し、別個のフラット体によって、アクスルハウジング10に向かって下方に、ねじ結合部11を介して負荷されている。図6及び図7に示した実施例では、保持体5は同じであるが、フランジ体8が異なって構成されていて、例えば4つの貫通孔を備えた三角形又は四角形の形状を有している。
【0026】
フランジ体8の構成とは無関係に、保持体5は鍛造品であってよく、簡単な形状を有しているので、高価な費用をかけることなしに、真っ直ぐに延びる繊維配向が得られ、繊維が流れ出すことはなく、保持体5を弱めることはない。
【0027】
本発明による、フランジ領域を除く鍛造部は、その軸方向の延在長さと比較して、半径方向の延在長さが短くて済むので、むしろ円筒形の形状に近いことによって、繊維が側方に流れ出すことは阻止される。このような構成部分の鍛造は、一体的に成形されたフランジ領域を有する従来のピンに対して、著しく簡略化されている。従って、本発明による保持体5は、特別なノウハウなしで鍛造によって高い品質で製造することができる。
【0028】
シャフト領域に対して拡大されたベース領域5a若しくは5bは、その直径が比較的僅かに拡大しているだけであり、例えば保持作用を有するねじのための孔が貫通係合できる程度の幅寸法を有する必要はない。支持部14として、フランジ体8被せ嵌め、かつ力を導入することができるようにするために、例えば1段又は2段の構成で十分である。この支持部14は、特にピンの軸を環状に包囲するように構成されている。
【0029】
同じ構成の保持体5のための、前述のような異なる形状のフランジ体8以外に、例えば異なるシャフト長さを有する選択的に異なる保持体5を、同じフランジ体8によって保持するようにしてもよい。これによって、アクスルハウジング及び/又は係合する支持部の幾何学形状に応じて、かつ高い適応性のための要求に応じて使用することができる、互いに組み合わせ可能な保持体及びフランジ体の複数の組み合わせが得られる。
【符号の説明】
【0030】
1 ジョイント装置、 2,3 リンク、 4 ジョイントヘッド、 5 保持体、 5a,5b ベース領域、 6 通路、 7 ねじ、 8 フランジ体、 9 拡大された領域、 10 アクスルハウジング、 11 ねじ結合部、 12 貫通開口、 13,13a;14,14a 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、特に実用車両(NKW)であって、少なくとも1つのアクスルハウジング(10)を有しており、該アクスルハウジング(10)に、単数又は複数の部分より成る支持装置が、アクスルハウジングに接続された、ピン状に延在する保持体(5)を介して係合する形式のものにおいて、
ピン状に延在する前記保持体(5)に隣接して別個のフランジ体(8)が形成されており、該フランジ体(8)によって、前記保持体(5)がアクスルハウジング(10)に向かう方向に負荷され得るようになっていることを特徴とする、自動車。
【請求項2】
ピン状に延在する前記保持体(5)が鍛造部品である、請求項1記載の自動車。
【請求項3】
鍛造部品としての前記保持体(5)の半径方向の延在寸法が、軸方向の延在寸法に比較して小さい、請求項2記載の自動車。
【請求項4】
前記保持体(5)が、シャフト領域に対して拡大されたベース領域(5a;5b)を有していて、該ベース領域にフランジ体(8)が押し付けられ、かつ被せ嵌められるようになっている、請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項5】
前記フランジ体(8)が、ほぼプレート状に構成されていて、保持体(5)のための中央の貫通開口(12)と、該貫通開口(12)を包囲する、段付けされかつ/またはテーパ状に広げられた、保持体(5)のベース領域(5a;5b)に押し被せ嵌めるための支持部(13;13a)を有している、請求項4記載の自動車。
【請求項6】
互いに組み合わせ可能な保持体(5)及びフランジ体(8)の複数の組み合わせが設けられていて、これらの組み合わせを、アクスルハウジング(10)及び/又は係合する支持装置の幾何学形状に応じて使用することができる、請求項1から5までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項7】
前記支持装置(2;3)が三角アーム装置によって形成されていて、該三角アーム装置の三角形の先端部が、保持体(5)に緊締可能なジョイント(4)を介して保持体(5)に係合するようになっている、請求項1から6までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項8】
ピン状の保持体(5)を備えたジョイント装置(1)であって、前記ピン状の保持体(5)の、ヘッド側の軸方向の端部に、単数又は複数の部分より成る支持装置(2;3)に係合するジョイントヘッド(4)が設けられており、前記保持体(5)の、ベース領域(5a;5b)が、特に実用車両(NKW)のアクスルハウジング(10)に接続可能である形式のものにおいて、
前記ジョイント装置(1)が、ピン状に延在する保持体(5)に隣接して別個のフランジ体(8)を有しており、該フランジ体(8)によって保持体(5)が、該保持体(5)をアクスルハウジング(10)に接続するために、該保持体(5)のベース領域(5a;5b)に向かう方向に負荷され得るようになっていることを特徴とする、ジョイント装置(1)。
【請求項9】
前記フランジ体(8)がほぼプレート状に構成されていて、保持体(5)のための中央の貫通開口(12)と、該貫通開口(12)を包囲する、段付けされた、又はテーパ状に広げられた支持部(13;13a)とを有しており、該支持部(13;13a)が、保持体(5)のベース領域(5a;5b)の支持部(14;14a)に押し被せ嵌められるようになっている、請求項8記載のジョイント装置(1)。
【請求項10】
前記保持体(5)とフランジ体(8)とが、組み立て可能な1つの共通の既製の構成ユニットを形成している、請求項8又は9記載のジョイント装置(1)。
【請求項11】
前記フランジ体(8)が保持体(5)に相対回動不能に圧着されている、請求項10記載のジョイント装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−526226(P2011−526226A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515105(P2011−515105)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/DE2009/050034
【国際公開番号】WO2010/000257
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(506054589)ツェットエフ フリードリヒスハーフェン アクチエンゲゼルシャフト (151)
【氏名又は名称原語表記】ZF Friedrichshafen AG
【住所又は居所原語表記】D−88038 Friedrichshafen,Germany
【Fターム(参考)】