説明

自動車のカウル構造

【課題】自動車のカウル構造において、フロントウインドの支持剛性を十分に確保しながら、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合におけるその衝撃エネルギーを確実に吸収する。
【解決手段】カウルパネル5のうちフロントウインド支持部5aの車両後方に位置する部分とその下方に位置する車体パネル10とを連結する補強パネル23を設けている。カウルパネル5には、フロントウインド支持部5aと補強パネル接続部5bとの間の部分に屈曲部26cを複数形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のカウル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルの上端部から車両前方かつ上方に延びてフロントウインドを支持するカウルパネルを備えた自動車のカウル構造がある。この構造の1つとして、上方に開口を有するいわゆるオープンカウル構造というものが知られている。これによれば、例えば自動車の前部に衝突した障害物が前側上方からフロントウインドに当たることにより、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0003】
しかしながら、このオープンカウル構造は開断面の構造であるため、フロントウインドの支持剛性が低くなる。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1に示すものでは、カウルパネルのフロントウインド支持部と下端部とを連結する補強部材を設けている。このように、カウルパネルのフロントウインド支持部の近傍に補強部材を設けているので、フロントウインドの支持剛性を十分に確保することができる。
【特許文献1】特開2006−206004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
だがしかし、特許文献1のものでは、カウルパネルと補強部材との間に閉断面が、しかもカウルパネルのフロントウインド支持部の近傍に形成されるため、上述のように、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、その衝撃エネルギー、特にその初期のものを十分に吸収することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動車のカウル構造において、フロントウインドの支持剛性を十分に確保しながら、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合におけるその衝撃エネルギーを確実に吸収することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルの上端部から車両前方かつ上方に延びてフロントウインドを支持するとともに前端部が車体に支持されていないカウルパネルを備えた自動車のカウル構造であって、上記カウルパネルのうちフロントウインド支持部の車両後方に位置する部分とその下方に位置する車体パネルとを連結する補強パネルをさらに備えており、上記カウルパネルには、フロントウインド支持部と補強パネル接続部との間の部分に屈曲部が複数形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、カウルパネルのうちフロントウインド支持部の車両後方に位置する部分とその下方に位置する車体パネルとを連結する補強パネルをさらに設けているので、フロントウインドの支持剛性を十分に確保することができる。
【0009】
また、カウルパネルにおけるフロントウインド支持部と補強パネル接続部との間の部分に屈曲部を複数形成しているので、例えば自動車の前部に衝突した障害物が前側上方からフロントウインドに当たることにより、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、その屈曲部が変形して、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記補強パネルは、上記カウルパネルのうち車幅方向両端部以外の部分に設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
これにより、補強パネルをカウルパネルのうち車幅方向両端部以外の部分に設けているので、カウルパネルの車幅方向両端部の剛性が高くなり過ぎるのを抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記補強パネルの車両後方に位置する車体パネルには、空調装置の外気導入部が接続される外気導入用の接続開口部が形成されており、上記補強パネルには外気導入用の開口部が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、補強パネルに外気導入用の開口部を形成しているので、フロントウインドの支持剛性が低くなるのを抑制しながら、外気導入用の開口部を設けることができる。
【0014】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記カウルパネルの前端部には、上記接続開口部と対応する部分から車両前方に延出する延出部が形成されており、上記カウルパネルのうちフロントウインド支持部と補強パネル接続部との間の部分と上記延出部の後端部とを連結し、上記カウルパネルとの間に閉断面を形成する第2補強パネルをさらに備えており、上記開口部は、上記補強パネルの上端部のうち上記接続開口部と対応する部分に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
これにより、カウルパネルのうちフロントウインド支持部と補強パネル接続部との間の部分と、カウルパネルの前端部から車両前方に延出する延出部の後端部とを連結する第2補強パネルをさらに設けているので、カウルパネルの延出部の剛性を補強することができる。
【0016】
また、外気導入用の開口部を、第2補強パネルとカウルパネルとにより構成された閉断面部分の近傍の、補強パネルの上端部に形成しているので、そのような閉断面を形成しているにも拘わらず、フロントウインドの支持剛性が高くなり過ぎるのを抑制することができる。
【0017】
さらに、開口部を補強パネルの上端部に形成しているので、開口部を補強パネルのうち空調装置の外気導入部が接続される外気導入用の接続開口部と対応する部分に形成しているにも拘わらず、水が開口部から接続開口部を介して空調装置内に流入するのを抑制することができる。
【0018】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記延出部には、その前端部から上方に延びるとともに車体番号が刻印された突部が形成されており、上記第2補強パネルは、その延出部接続部から上記延出部の下面に沿ってその前端近傍まで延びていることを特徴とするものである。
【0019】
これにより、第2補強パネルを、その延出部接続部から延出部の下面に沿ってその前端近傍まで延ばしているので、前端部に突部を設けている、カウルパネルの延出部の剛性を確実に補強することができる。
【0020】
第6の発明は、上記第4又は5の発明において、上記第2補強パネルには、カウルパネル接続部と延出部接続部との間の部分に屈曲部が形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
これにより、第2補強パネルにおけるカウルパネル接続部と延出部接続部との間の部分に屈曲部を形成しているので、例えば自動車の前部に衝突した障害物が前側上方からフロントウインドに当たることにより、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、その屈曲部、ひいては第2補強パネルとカウルパネルとにより構成された閉断面部分が変形する。このため、そのような閉断面を形成しているにも拘わらず、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、カウルパネルのうちフロントウインド支持部の車両後方に位置する部分とその下方に位置する車体パネルとを連結する補強パネルをさらに設けているので、フロントウインドの支持剛性を十分に確保することができ、また、カウルパネルにおけるフロントウインド支持部と補強パネル接続部との間の部分に屈曲部を複数形成しているので、例えば自動車の前部に衝突した障害物が前側上方からフロントウインドに当たることにより、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、その屈曲部が変形して、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
−自動車の前部構造−
まず、本発明の実施形態に係る自動車の前部構造を説明する。
【0025】
図1に示すように、自動車の前部には、図示しないボンネットフードにより開閉可能なエンジンルーム1が設けられ、このエンジンルーム1にはエンジンEが配設されているとともに、エンジンルーム1の車両後方(以下、単に後方という)にはダッシュパネル3を挟んで車室2(図5等参照)が設けられている。
【0026】
ダッシュパネル3の左右の側縁部には、それぞれ、上下方向に延びて左右のフロントサイドドアの前端部を支持する閉断面のヒンジピラー50,50が接合されている。左右のヒンジピラー50,50の上端部からはそれぞれフロントピラー51,51が後側上方に大きく傾斜して延び、その下端部からはそれぞれサイドシル52,52が後方に延びている。
【0027】
左右のヒンジピラー50,50の上端前方には、それぞれ、サイドエプロン53,53が設けられている。このサイドエプロン53は、ヒンジピラー50の上端よりも若干低い位置から車両前方(以下、単に前方という)に延びるエプロンレインフォースメント54を有している。
【0028】
左右のフロントサイドフレーム55,55が、それぞれ、左右のヒンジピラー50,50よりも車幅方向内側でかつエプロンレインフォースメント54,54よりも下方において、ダッシュパネル3のダッシュロア8から前方に延びている。
【0029】
左右のフロントサイドフレーム55,55のうちダッシュロア8との接続部同士をエンジンルーム1において連結するダッシュクロスメンバ56が設けられている。このダッシュクロスメンバ56は、車幅方向に延びる断面ハット状のもので、上下のフランジ部がダッシュロア8にそれぞれ接合されているとともに、左右の端部がフロントサイドフレーム55,55に接合され、ダッシュパネル3との間に閉断面を形成している。
【0030】
ダッシュパネル3の左右の側部前方には、それぞれ、フロントサイドフレーム55よりも車幅方向外側でかつエプロンレインフォースメント54よりも車幅方向内側に、サスペンションタワー57,57が設けられている。
【0031】
−自動車のカウル構造−
次に、本実施形態に係る自動車のカウル構造を説明する。
【0032】
図2〜図8に示すように、自動車の前部車体には、エンジンルーム1と車室2とを区画するダッシュパネル3が設けられているとともに、その上端部には、フロントウインドシールド4の下端部を支持するカウルパネル5が左右のヒンジピラー50,50(図1参照)の間に亘って車幅方向に延びるように設置されている。このカウルパネル5の上方には、外気の取入口を有する合成樹脂製のカウルグリル6が設置され、かつカウルパネル5の下方には、車幅方向に延びるカウルクロスメンバ7が着脱可能に配設されている。
【0033】
上記ダッシュパネル3は、フロアパネル(図示せず)の前端部から上方に起立するとともに車幅方向に延びるように設置されたダッシュロア8と、このダッシュロア8の上端部から上方に延びる第1ダッシュアッパ9と、この第1ダッシュアッパ9の前面から前方に延びる第2ダッシュアッパ10とを有している。
【0034】
上記第1ダッシュアッパ9は、ダッシュロア8の上端部に設けられた上部フランジ11に接合された下部フランジ12と、この下部フランジ12の後端部から後方かつ上方に向けて延びる縦壁部13(請求項3の「補強パネルの後方に位置する車体パネル」に相当)と、この縦壁部13の上端部から後方に延びる上部フランジ14とにより構成され、上記縦壁部13の車幅方向略中央部には、空調装置のブロアユニット15(外気導入部に相当)が接続されてこのブロアユニット15に外気を導入するための外気導入用の接続開口部16が形成されている(図6、図7参照)。
【0035】
上記第2ダッシュアッパ10は、第1ダッシュアッパ9の縦壁部13の前面に接合された後部フランジ17と、この後部フランジ17の下端部から前方に延びる横壁部18とを有している。これらの後部フランジ17及び横壁部18の車幅方向中央部、つまり第1ダッシュアッパ9の接続開口部16に対応する位置には、切欠き部19が形成されていることにより(図7参照)、ブロアユニット15に外気を導入するための外気導入口が、第1ダッシュアッパ9の縦壁部13及び第2ダッシュアッパ10の横壁部18に跨るように形成されている。なお、図7は、図6に示すブロアユニット15及び接続部材20を取り外した状態を示している。
【0036】
また、第1ダッシュアッパ9の接続開口部16と、第2ダッシュアッパ10の切欠き部19との間には、これらの底面部を接続する接続部材20が設けられている(図6参照)。この接続部材20は、上記第1ダッシュアッパ9の接続開口部16と、第2ダッシュアッパ10の切欠き部19との間を覆う底壁部20aと、その前辺部及び左右両側辺部に設けられた上部フランジ21とを有し、この上部フランジ21の上方部が第2ダッシュアッパ10の横壁部18よりも上方に突出した状態で設置されている。上記第2ダッシュアッパ9の横壁部18は、その車幅方向左右部位が外下がりに形成されることにより、上記切欠き部19に対応する車幅方向中央部分18aが、他の部位よりも上方に位置するように構成されている(図4参照)。
【0037】
上記カウルパネル5は、第1ダッシュアッパ9の上端部から前方かつ上方に延びていて、その前端部は車体に支持されていない(図5参照)。カウルパネル5は、第1ダッシュアッパ9の上部フランジ14に接合された後部フランジ24と、この後部フランジ24の前端部から前側上方に向けて斜めに延びる上壁部25と、この上壁部25の前端部から上方に膨出する膨出部26とを有している。この膨出部26は、上壁部25の前端部から前方かつ上方に延びて上記フロントウインドシールド4の下端部に接着剤27で接着されることによりこれを支持するとともに、このフロントウインド支持部5aから前方かつ下方に延びている。そして、膨出部26の前端部は車体に支持されていない。
【0038】
カウルパネル5の上壁部25には、その前端部、つまりフロントウインド支持部5aの後方に位置する部分から下方に延びて下端が第2ダッシュアッパ10(請求項1の「その下方に位置する車体パネル」に相当)の前端部に接合された補強パネル23が設置されている。すなわち、この補強パネル23は、上壁部25の前端部と第2ダッシュアッパ10の前端部とを連結している。
【0039】
補強パネル23は、カウルパネル5のうち車幅方向両端部以外の部分に設けられている(図3、図4参照)。補強パネル23は、カウルパネル5の下面に接合された上部フランジ33と、この上部フランジ33の後端部から下方に延びる前壁部34と、この前壁部34の下端部に設けられた下部フランジ35とを有している(図5、図6参照)。この下部フランジ35が第2ダッシュアッパ10の前端部に接合されているとともに、この第2ダッシュアッパ10の前端部と下部フランジ35との接合部の上面にカウルクロスメンバ7の後端部が着脱可能に取り付けられるように構成されている。そして、補強パネル23は、ダッシュパネル3の第1ダッシュアッパ9、第2ダッシュアッパ10、及びカウルパネル5の上壁部25との間に閉断面を形成している。一方、カウルパネル5のうち補強パネル接続部5bの前方に位置する部分、つまり膨出部26は一枚ものとなっている。この膨出部26には、フロントウインド支持部5aと補強パネル接続部5bとの間の部分に、上下方向、詳しくは上壁部25の延びる方向と直交する方向に屈曲して車幅方向に延びる屈曲部26cが複数形成されている。
【0040】
上記補強パネル23の前壁部34には、ブロアユニット15に外気を導入するための外気導入用の複数の開口部36〜40が形成されている(図3参照)。具体的には、前壁部34の上下方向略全域に亘って延びる左右一対の開口部36,37が補強パネル23の右側方部に設けられているとともに(図5参照)、第1ダッシュアッパ9に形成された接続開口部16の前方に位置する部位、つまり前壁部34の車幅方向中央部には、その上端部が切り欠かれてなる中央開口部38(請求項3の開口部に相当)が形成されている(図6参照)。この中央開口部38の右端部下方及び補強パネル23の左側方部には、車幅方向に延びる所定幅の横長開口部39,40が形成されている(図3参照)。
【0041】
上記カウルパネル5の膨出部26の前端部には、補強パネル23に形成された中央開口部38の上方に位置する部分(車幅方向中央部)、つまり第1ダッシュアッパ9の接続開口部16に対応する位置から所定幅に亘って前方かつ下方に延出する延出部28が形成されているとともに、その前端部から斜め上方に向けて延びる突部29が形成され、この突部29に車体番号が刻印されるように構成されている(図6参照)。延出部28の下方には、その後端部と、上記膨出部26の後端部、つまりカウルパネル5のうちフロントウインド支持部5aと補強パネル接続部5bとの間の部分とを連結して膨出部26との間に閉断面を形成するレインフォースメント30(請求項4の第2補強パネルに相当)が車両前後方向に延びるように配設され、このレインフォースメント30は、その左側端部がその延出部接続部30aから延出部28の下面に沿ってその前端近傍まで延びている(図6、図8参照)。レインフォースメント30の右側端部には、前側下方に延びる支持ブラケット部31が一体に形成され、この支持ブラケット部31に図示しないワイパー装置が支持されるようになっている。レインフォースメント30には、延出部接続部30aとカウルパネル接続部30bとの間の部分に上下方向に屈曲して車幅方向に延びる屈曲部30cが複数形成されている。
【0042】
−カウル構造の動き−
以下、図9を参照しながら、カウルパネル5に荷重が作用した場合におけるカウル構造の動きの一例を説明する。例えば自動車の前部に衝突した障害物が前側上方からフロントウインドシールド4に当たることにより(図9の矢印参照)、カウルパネル5に斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、ダッシュパネル3の第1ダッシュアッパ9、第2ダッシュアッパ10、補強パネル23、及びカウルパネル5の上壁部25により構成された閉断面部分はほとんど変形しないが、カウルパネル5のうち補強パネル23の前方に位置する膨出部26は、屈曲部26cが変形しながら前方に倒れていく(二点鎖線参照)。また、同じく補強パネル23の前方に位置するレインフォースメント30は、図示しないが、屈曲部30cが変形し、これにより、カウルパネル5とレインフォースメント30とにより構成された閉断面部分が変形する。これらのことから、その衝撃エネルギーが吸収される。
【0043】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、カウルパネル5のうちフロントウインド支持部5aの車両後方に位置する部分とその下方に位置する、ダッシュパネル3の第2ダッシュアッパ10とを連結する補強パネル23をさらに設けているので、フロントウインドシールド4の支持剛性を十分に確保することができる。
【0044】
また、カウルパネル5におけるフロントウインド支持部5aと補強パネル接続部5bとの間の部分に屈曲部26cを複数形成しているので、例えば自動車の前部に衝突した障害物が前側上方からフロントウインドシールド4に当たることにより、カウルパネル5に斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、その屈曲部26cが変形して、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0045】
また、補強パネル23をカウルパネル5のうち車幅方向両端部以外の部分に設けているので、カウルパネル5の車幅方向両端部の剛性が高くなり過ぎるのを抑制することができる。さらに、車体の軽量化を図ることができる。
【0046】
また、補強パネル23に外気導入用の中央開口部38を形成しているので、フロントウインドシールド4の支持剛性が低くなるのを抑制しながら、外気導入用の開口部を設けることができる。
【0047】
また、カウルパネル5のうちフロントウインド支持部5aと補強パネル接続部5bとの間の部分と、カウルパネル5の前端部から車両前方に延出する延出部28の後端部とを連結するレインフォースメント30をさらに設けているので、カウルパネル5の延出部28の剛性を補強することができる。
【0048】
また、外気導入用の中央開口部38を、カウルパネル5とレインフォースメント30とにより構成された閉断面部分の近傍の、補強パネル23の上端部に形成しているので、そのような閉断面を形成しているにも拘わらず、フロントウインドシールド4の支持剛性が高くなり過ぎるのを抑制することができる。
【0049】
さらに、中央開口部38を補強パネル23の上端部に形成しているので、中央開口部38を補強パネル23のうち空調装置のブロアユニット15が接続される外気導入用の接続開口部16と対応する部分に形成しているにも拘わらず、カウルグリル6から、カウルパネル5とカウルクロスメンバ7とにより構成されたカウル部内に導入された水が、中央開口部38から接続開口部16を介して空調装置内に流入するのを抑制することができる。
【0050】
また、レインフォースメント30を、その延出部接続部30aから延出部28の下面に沿ってその前端近傍まで延ばしているので、前端部にさらに突部29を設けている、カウルパネル5の延出部28の剛性を確実に補強することができる。
【0051】
また、レインフォースメント30における延出部接続部30aとカウルパネル接続部30bとの間の部分に屈曲部30cを形成しているので、例えば自動車の前部に衝突した障害物が前側上方からフロントウインドシールド4に当たることにより、カウルパネル5に斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合、その屈曲部30c、ひいてはカウルパネル5とレインフォースメント30とにより構成された閉断面部分が変形する。このため、そのような閉断面を形成しているにも拘わらず、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0052】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、補強パネル23をカウルパネル5のうち車幅方向両端部以外の部分に設けているが、これに限らず、例えば、車幅方向全体に亘って設けてもよい。但し、カウルパネル5の車幅方向両端部の剛性が高くなり過ぎるのを抑制するには、前者が望ましい。
【0053】
上記実施形態では、レインフォースメント30の左側端部をその延出部接続部30aから延出部28の下面に沿ってその前端近傍まで延ばしているが、延ばさなくてもよい。但し、カウルパネル5の延出部28の剛性を補強するには、前者が望ましい。また、レインフォースメント30のうち左側端部のみ延出部28の前端近傍まで延ばしているが、これに限らず、例えば、車幅方向全体に亘って延出部28の前端近傍まで延ばしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、レインフォースメント30に屈曲部30cを形成しているが、形成しなくてもよい。但し、衝撃エネルギーを確実に吸収するには、前者が望ましい。
【0055】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0056】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明にかかる自動車のカウル構造は、フロントウインドの支持剛性を十分に確保しながら、カウルパネルに斜め下向きの衝撃荷重が作用した場合におけるその衝撃エネルギーを確実に吸収する用途等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の前部構造を示す斜視図である。
【図2】自動車の前部車体構造を示す斜視図である。
【図3】自動車の前部車体構造を示す分解斜視図である。
【図4】自動車の前部車体構造を示す正面図である。
【図5】図4のV−V線矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】接続部材及びブロアユニットを取り外した状態を示す図6相当図である。
【図8】カウルパネルの構成を示す底面図である。
【図9】カウルパネルに荷重が作用した場合におけるカウル構造の動きの一例を示す図5相当図である。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジンルーム
2 車室
3 ダッシュパネル
4 フロントウインドシールド
5 カウルパネル
5a フロントウインド支持部
5b 補強パネル接続部
10 第2ダッシュアッパ(その下方に位置する車体パネル)
13 縦壁部(補強パネルの後方に位置する車体パネル)
15 空調装置のブロアユニット(外気導入部)
16 接続開口部
23 補強パネル
26 膨出部
26c 屈曲部
28 延出部
29 突部
30 レインフォースメント(第2補強パネル)
30a 延出部接続部
30b カウルパネル接続部
30c 屈曲部
38 中央開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルの上端部から車両前方かつ上方に延びてフロントウインドを支持するとともに前端部が車体に支持されていないカウルパネルを備えた自動車のカウル構造であって、
上記カウルパネルのうちフロントウインド支持部の車両後方に位置する部分とその下方に位置する車体パネルとを連結する補強パネルをさらに備えており、
上記カウルパネルには、フロントウインド支持部と補強パネル接続部との間の部分に屈曲部が複数形成されていることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車のカウル構造において、
上記補強パネルは、上記カウルパネルのうち車幅方向両端部以外の部分に設けられていることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動車のカウル構造において、
上記補強パネルの車両後方に位置する車体パネルには、空調装置の外気導入部が接続される外気導入用の接続開口部が形成されており、
上記補強パネルには外気導入用の開口部が形成されていることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項4】
請求項3記載の自動車のカウル構造において、
上記カウルパネルの前端部には、上記接続開口部と対応する部分から車両前方に延出する延出部が形成されており、
上記カウルパネルのうちフロントウインド支持部と補強パネル接続部との間の部分と上記延出部の後端部とを連結し、上記カウルパネルとの間に閉断面を形成する第2補強パネルをさらに備えており、
上記開口部は、上記補強パネルの上端部のうち上記接続開口部と対応する部分に形成されていることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項5】
請求項4記載の自動車のカウル構造において、
上記延出部には、その前端部から上方に延びるとともに車体番号が刻印された突部が形成されており、
上記第2補強パネルは、その延出部接続部から上記延出部の下面に沿ってその前端近傍まで延びていることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項6】
請求項4又は5記載の自動車のカウル構造において、
上記第2補強パネルには、カウルパネル接続部と延出部接続部との間の部分に屈曲部が形成されていることを特徴とする自動車のカウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−101956(P2009−101956A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277551(P2007−277551)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】