自動車のフロントサブフレーム
【課題】 過剰な捩れや歪みを抑制して、車両の走行安定性を向上させる自動車のフロントサブフレームを提供する。
【解決手段】 フロントサブフレーム1は、車幅方向にのびる前部クロスメンバーと2、この前部クロスメンバー2の車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバー3と、各サイドメンバー3の後端部を両端部の第1連結部41で互いに連結する後部クロスメンバー4とを備えている。そして、左右一対のサイドメンバー3の後端部が、後部クロスメンバー3両端部の第1連結部41と、後部クロスメンバー3に近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー5両端部の第2連結部51との二重構造で互いに連結する。
【解決手段】 フロントサブフレーム1は、車幅方向にのびる前部クロスメンバーと2、この前部クロスメンバー2の車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバー3と、各サイドメンバー3の後端部を両端部の第1連結部41で互いに連結する後部クロスメンバー4とを備えている。そして、左右一対のサイドメンバー3の後端部が、後部クロスメンバー3両端部の第1連結部41と、後部クロスメンバー3に近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー5両端部の第2連結部51との二重構造で互いに連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントサブフレームに係り、詳しくは、車両の走行安定性を向上させる自動車のフロントサブフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は、自動車のフロントサブフレーム100の一例を示し、このフロントサブフレーム100は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
前記フロントサブフレーム100には、ピットマンアームを備えたタイプのステアリング装置ではリレーロッドが支持され、ラック&ピニオンタイプのステアリング装置ではラックハウジングが支持されるとともに、フロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結される。
【0004】
フロントサブフレーム100は、左右一対のサイドメンバー101と、これらサイドメンバー101の先端部を互いに連結する前部クロスメンバー102と、後部クロスメンバー103とを備え、各サイドメンバー101の前端部と後端部に設けた合計4個の取付孔104を利用して車両のメインフレーム(図示省略)に取付けられる。
【0005】
フロントサブフレーム100における左右一対のサイドメンバー101は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって成形され、前後部のクロスメンバー102,103は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出材により成形されるとともに、鋳造時に前後のクロスメンバー102,103の両端部を左右一対のサイドメンバー101に鋳ぐるむことによって製造される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−222152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1に記載の自動車のフロントサブフレーム100は、車体のメインフレームまたは該メインフレームに含まれるフロントサイドフレームよりも剛性を低く設定することで、正面衝突や前部側面衝突などの一次衝突の衝撃エネルギーを軸方向圧縮や曲げ変形などによって吸収して、メインフレームまたは該メインフレームに含まれるフロントサイドフレームの変形および車室内での車室内構造物と乗員の衝突(二次衝突)を緩和するエネルギ−吸収機能を発揮できるように設計されている。
【0008】
ところが、前記メインフレームまたはメインサイドフレームよりも構造的に強度の弱いフロントサブフレーム100では、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて、図示されていないフロントサスペンション装置のサスペンションアームを介して負荷される様々な外力および図示していないステアリングホイールを操舵した場合の操舵反力などが荷重として負荷されることで過剰な捩れや歪みが発生する。
【0009】
このように、自動車の運転中にフロントサブフレーム100に過剰な捩れや歪みが発生すると、左右のフロントタイヤの接地が不安定になり、車両の走行安定性が低下する。そのため、車両の挙動と運転者の運転感覚に微妙な「ズレ」が生じて、適正な運転に悪影響をおよぼすことが懸念される。
【0010】
また、前記特許文献1に記載の自動車のフロントサブフレーム100のように、左右一対のサイドメンバー101の後端部が後部クロスメンバー103よりも後方に大きく突出しているオーバハング構造では、当該オーバハング部分の剛性が他の部分よりも低くなって過剰な捩れや歪が発生する原因になる。
【0011】
そこで、図12に示すように、車幅方向にのびる前部クロスメンバー102と、この前部クロスメンバー102の車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバー101と、各サイドメンバー101の後端部を互いに連結する後部クロスメンバー103とを備えて、左右一対のサイドメンバー101の後端部が後部クロスメンバー103よりも後方に大きく突出するオーバハング構造を解消した自動車のフロントサブフレーム100が考えられる。
【0012】
しかし、図12に示すフロントサブフレーム100であっても、高剛性化を後部クロスメンバー103のみに委ねている構造では、各サイドメンバー101の後端部に所望の高剛性を期待することが事実上困難であった。そのため、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて、図示されていないフロントサスペンション装置のサスペンションアームを介して負荷される様々な外力および図示していないステアリングホイールを操舵した場合の操舵反力などが荷重として負荷されることで過剰な捩れや歪みが発生する。
【0013】
すなわち、図11および図12に示す従来のフロントサブフレーム100では、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて、サスペンションアームを介して負荷される様々な外力およびステアリングホイール操舵時の操舵反力などによって、過剰な捩れや歪みが発生して、左右のフロントタイヤの接地が不安定になり、車両の走行安定性が低下する問題点を有している。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、過剰な捩れや歪みを抑制して、車両の走行安定性を向上させる自動車のフロントサブフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明に係る自動車のフロントサブフレームは、ステアリング装置のリレーロッドあるいはラックハウジングを支持するとともに、フロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結され、かつ、複数の取付部によって車両のメインフレームに取付けられるとともに、車幅方向にのびる前部クロスメンバーと、この前部クロスメンバーの車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバーと、各サイドメンバーの後端部を両端部の第1連結部で互いに連結する後部クロスメンバーとを備えた自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記左右一対のサイドメンバーの後端部が、前記後部クロスメンバー両端部の第1連結部と、後部クロスメンバーに近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー両端部の第2連結部との二重構造で互いに連結されていることを特徴としている。
【0016】
このように、左右一対のサイドメンバーの後端部が、前記後部クロスメンバー両端部の第1連結部と、後部クロスメンバーに近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー両端部の第2連結部との二重構造で互いに連結されていることにより、各サイドメンバーの後端部は、後部クロスメンバーと補強メンバーの両者によって補強される。これにより、後部クロスメンバーのみに委ねていた補強では不足していた各サイドメンバー後端部の剛性を補償して大幅に向上させることができる。その結果、フロントサブフレーム全体の捩れや歪みに対する剛性が高められ、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいてサスペンションアームを介して様々な外力が荷重としてフロントサブフレームに負荷されたり、ステアリングホイール操舵時の操舵反力などが荷重としてフロントサブフレームに負荷されても、フロントサブフレームの過剰な捩れや歪みが抑制される。したがって、左右のフロントタイヤの接地安定性を高めて、車両の走行安定性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る自動車のフロントサブフレームでは、前記補強メンバーは、車幅方向にのびる本体部と、この本体部の両端部に固着された左右一対の第2連結部とを備え、当該第2連結部は、本体部の前面に固着されて車両前方に延出する連結板と、当該連結板と本体部の車幅方向両端面に固着されて上方に延出する基部と該基部から車幅方向外側に延出する取付部を有する連結具とを備えており、前記各連結板が各サイドメンバーの後端部下面と後部クロスメンバーの各第1連結部の上面との間に介在して複数のボルト・ナットによって各サイドメンバーの後端部に締結されているとともに、前記各連結具の取付部がメインフレーム取付ボルトによって車両のメインフレームに締結されていることを特徴としている。
【0018】
これによると、補強メンバーの各第2連結部における連結板が、各サイドメンバーの後端部下面と後部クロスメンバーの各第1連結部の上面との間に介在して複数のボルト・ナットによって各サイドメンバーの後端部に締結されることで、各サイドメンバーの後端部が堅牢な二重構造で互いに連結されることになるので、各サイドメンバー後端部の剛性を確実に高めることができる。
【0019】
また、前記各連結具の取付部がボルトによってフロントサブフレームよりも高剛性の車両のメインフレームにも締結されることで、補強メンバーの補強力が一層高められて、フロントサブフレームの捩れや歪みに対する剛性をさらに高めることができる。
【0020】
本発明に係る自動車のフロントサブフレームにおける前記補強メンバーの本体部は高剛性中空鋼材からなり、前記各連結板および各連結具は高剛性鋼板からなることを特徴としている。
【0021】
このように、補強メンバーを構成する本体部と、各連結板および各連結具において、占有体積の最も大きい本体部が高剛性中空鋼材によって構成されていることで、補強メンバーは高い剛性を有するものでありながら軽量化を実現して車体重量の軽減に寄与することができる。また、各連結板および各連結具が高剛性鋼板からなることによって、各サイドメンバー後端部および車両のメインフレームなどの他部材への連結強さを高めて、補強メンバーによる各サイドメンバー後端部の剛性向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自動車のフロントサブフレームの過剰な捩れや歪みを抑制して、車両の走行安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る自動車のフロントサブフレームの後部クロスメンバーと補強メンバーとを分解した一実施形態を前側から見た斜視図、図2は、後部クロスメンバーの左側端部の拡大下面図、図3は、補強メンバーの左側端部の拡大下面図、図4は、図3のVI−VI矢視図である。なお、図1〜図4に示す矢印「前後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、運転者から見た方向を指し、この方向に従って各図の説明を行う。
【0024】
図1〜図4において、自動車のフロントサブフレーム1は、車幅方向にのびる前部クロスメンバー2と、この前部クロスメンバー2の車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバー3と、各サイドメンバー3の後端部を両端部を互いに連結するための後部クロスメンバー4と、車幅方向にのびる補強メンバー5とを備える。
【0025】
フロントサブフレーム1には、図示されていないステアリング装置がピットマンアームを備えたタイプではリレーロッドが支持され、ラック&ピニオンタイプではラックハウジングが支持されるとともに、図示されていないフロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結され、かつ、各サイドメンバー3に設けた複数のボルト挿通孔(複数の取付部)6a,6b,6cに下からメインフレーム取付ボルト7a,7b,7cを挿通し、これらの先端部を後述する車両のメインフレームに設けたねじ孔に螺着することで、フロントサブフレーム1が車両のメインフレームにおける床面の下側に取付けられる。
【0026】
後部クロスメンバー4は、車幅方向にのびる本体部40と、この本体部40の両端部に溶接によって固着された左右一対の第1連結部41とからなり、本体部40は断面円形の鋼管またはステンレス鋼管によって構成され、各第1連結部41は、図2に示すように(ただし、一対の第1連結部41は左右対称のものであるので、図2には左側の第1連結部41を示し、右側の第1連結部41の図示は省略している)、プレス加工された略L字形で下向き椀状の鋼板またはステンレス鋼板からなり、その外周縁部には斜め下向きに折曲した補強リブ41aが形成され、本体部40との近接位置に第1ボルト挿通孔41bが、それよりも若干後方に偏り、かつ本体部40から車幅方向外側に離間した位置に第2ボルト挿通孔41cがそれぞれ貫通形成されているとともに、第2ボルト挿通孔41cから前方に離間した位置に第3ボルト挿通孔41dが貫通形成されている。
【0027】
補強メンバー5は、車幅方向にのびる本体部50と、この本体部50の両端部に溶接によって固着された左右一対の第2連結部51とを備え、本体部50は断面角形の鋼管またはステンレス鋼管によって構成され、各第2連結部51は、図3に示すように(ただし、一対の第2連結部51は左右対称のものであるので、図3には左側の第2連結部51を示し、右側の第2連結部51の図示は省略している)、本体部50の前面50aに溶接によって固着されて車両前方に延出する略山形の連結板52と、連結板52と本体部50の車幅方向両端面に溶接によって固着された連結具53とを備えており、連結板52はプレス加工された平坦な鋼板またはステンレス鋼板からなり、連結具53は、連結板52と本体部50の車幅方向両端面に溶接によって固着されて上方に延出する基部53aと、この基部53aから車幅方向外側に延出する取付部53bを有し、プレス加工またはプレスと溶接との複合加工された鋼板またはステンレス鋼板によって構成されている。
【0028】
図2に示す第1連結部41の第1ボルト挿通孔41bに対応して、図3に示すように、第2連結部51の連結板52に第1ボルト挿通孔52aが貫通形成されているとともに、図2に示す第1連結部41の第2ボルト挿通孔41cに対応して、図3に示すように、第2連結部51の連結板52に第2ボルト挿通孔52bが貫通形成されており、連結具53における取付部53bに第3ボルト挿通孔53cが貫通形成されている。また、図1,図3,図4,図5に示すように、各連結板51には、プレスによる剪断と曲げの複合加工によって下側から上側に向かって内径が漸次縮小されるテーパ状で大径の抜き孔52cが設けられる。このようなテーパ状で大径の抜き孔52cを設けることで、各連結板51は、剛性を低下させることなく軽量を図れる。これにより、補強メンバー5は、所定の剛性を保持して軽量化されて車体重量の軽減に寄与する。
【0029】
つぎに、フロントサブフレーム1における各サイドメンバー3の後端部への後部クロスメンバー4と補強メンバー5の連結手順を説明する。
【0030】
まず、図5のように、後部クロスメンバー4の左右一対の第1連結部41(ただし、図5には左側の第1連結部41を示し、右側の第1連結部41の図示は省略している)の上に補強メンバー5の左右一対の第2連結部51(ただし、図5には左側の第2連結部51を示し、右側の第2連結部51の図示は省略している)における連結板52を重ね合わせて、後部クロスメンバー4の本体部40の後側に補強メンバー5の本体部50を近接平行させるとともに、第1連結部41の第1ボルト挿通孔41bと第2連結部51の第1ボルト挿通孔52aとを連通させ、第1連結部41の第2ボルト挿通孔41cと第2連結部51の第2ボルト挿通孔52bとを連通させる。また、第2連結部51の連結具53は第1連結部41よりも車幅方向の外側に露出させる。
【0031】
図6に示すように、各サイドメンバー3には、その下面に、たとえばアプセット溶接によってずんぎりボルト8がウエルディングボルトとして予め接合垂設されており、このずんぎりボルト8を第2連結部51の第1ボルト挿通孔52aと第1連結部41の第1ボルト挿通孔41bとに挿通し、その先端部にナット9を螺着して各サイドメンバー3に第2連結部51と第1連結部41を締結する。
【0032】
また、図7に示すように、第1連結部41の第2ボルト挿通孔41cと第2連結部51における連結板52の第2ボルト挿通孔52bとを、各サイドメンバー3に設けたボルト挿通6eの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔41c,52b,6eに下側から締結ボルト10を挿通して、その先端部を各サイドメンバー3の上方に少し露出させ、ここにナット11を螺着して各サイドメンバー3に第2連結部51と第1連結部41を締結するとともに、第1連結部41の上面に第2連結部51における連結板52の肉厚と等しい肉厚を有してスペーサとして機能するワッシャ12を載置してその中心孔12aを第1連結部41の第3ボルト挿通孔41dに連通させ、さらにワッシャ12の中心孔12aと第3ボルト挿通孔41dを各サイドメンバー3に設けたボルト挿通6fの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔41d,中心孔12a,ボルト挿通6fに下側から締結ボルト13を挿通して、その先端部を各サイドメンバー3の上方に少し露出させ、ここにナット11を螺着して各サイドメンバー3にワッシャ12と第1連結部41を締結する。
【0033】
さらに、図8に示すように、第2連結部51における連結具53の取付部53bに形成されている第3ボルト挿通孔53cを各サイドメンバー3に設けたボルト挿通6cの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔53c,6cに下側からメインフレーム取付ボルト7cを挿通して、その先端の雄ねじ部を車両のメインフレーム15に設けたねじ孔15cに螺着して連結具53を車両のメインフレーム15に締結する。これによって、図9に示すように、フロントサブフレーム1における左右一対のサイドメンバー3の後端部が、後部クロスメンバー4の車幅方向両端部と、後部クロスメンバー4に近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー5の車幅方向両端部との二重構造で互いに連結される。
【0034】
なお、図1,図10に示すように、各サイドメンバー3に設けたボルト挿通孔6aを車両のメインフレーム15に設けたねじ孔15aの下側で連通させ、かつ、各サイドメンバー3に設けたボルト挿通孔6bを車両のメインフレーム15に設けたねじ孔15bの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔6aとねじ孔15aに下側からメインフレーム取付ボルト7aを挿通して、その先端の雄ねじ部をねじ孔15aに螺着するとともに、連通したボルト挿通孔6bとねじ孔15bに下側からメインフレーム取付ボルト7bを挿通して、その先端の雄ねじ部をねじ孔15bに螺着することで、フロントサブフレーム1が車両のメインフレーム15における床面の下側に取付けられる。
【0035】
前記構成のように、フロントサブフレーム1における左右一対のサイドメンバー3の後端部が、後部クロスメンバー4の車幅方向両端部の第1連結部41と、後部クロスメンバー4に近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー5車幅方向両端部の第2連結部51との二重構造で互いに連結されていることにより、各サイドメンバー3の後端部は、後部クロスメンバー4と補強メンバー5の両者によって補強されることになる。したがって、後部クロスメンバー4のみによる補強では不足していた各サイドメンバー3後端部の剛性を補償して大幅に向上させることができる。その結果、フロントサブフレーム1全体の捩れや歪みに対する剛性が高められ、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて図示されていないサスペンションアームを介して様々な外力が荷重としてフロントサブフレーム1に負荷されたり、図示されていないステアリングホイール操舵時の操舵反力などが荷重としてフロントサブフレーム1に負荷されても、フロントサブフレーム1の過剰な捩れや歪みが抑制される。そのため、左右のフロントタイヤの接地安定性を高めて、車両の走行安定性を向上させることができる。
【0036】
また、補強メンバー5の各第2連結部51における連結板52が、各サイドメンバー3の後端部下面と後部クロスメンバー4の各第1連結部41の上面との間に介在して複数のボルト・ナット10,11、13,14によって各サイドメンバー3の後端部に締結されることで、各サイドメンバー3の後端部が堅牢な二重構造で互いに連結されることになるので、各サイドメンバー3後端部の剛性を確実に高めることができる。
【0037】
さらに、各第2連結部51における各連結具53の取付部53bがメインフレーム取付ボルト7cによってフロントサブフレーム1よりも高剛性の車両のメインフレーム15のねじ孔15cにも螺着締結されることで、補強メンバー5の補強力が一層高められて、フロントサブフレーム1の捩れや歪みに対する剛性をさらに高めることができる。
【0038】
また、補強メンバー5を構成する本体部50と、各連結板52および各連結具53において、占有体積の最も大きい本体部50が断面角形の鋼管またはステンレス鋼管からなる高剛性中空鋼材によって構成されていることで、補強メンバー5は高い剛性を有するものでありながら軽量化を実現して車体重量の軽減に寄与することができる。そして、各連結板52はプレス加工された平坦な鋼板またはステンレス鋼板からなる高剛性鋼板によって構成され、かつ、各連結具53はプレス加工またはプレスと溶接との複合加工された鋼板またはステンレス鋼板からなる高剛性鋼板によって構成されていることにより、各サイドメンバー3後端部および車両のメインフレーム15などの他部材への連結強さを高めて、補強メンバー5による各サイドメンバー3後端部の剛性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る自動車のフロントサブフレームの後部クロスメンバーと補強メンバーとを分解した一実施形態を前側から見た斜視図である。
【図2】後部クロスメンバーの左側端部の拡大下面図である。
【図3】補強メンバーの左側端部の拡大下面図である。
【図4】図3のVI−VI矢視図である。
【図5】後部クロスメンバーの左側端部の上側に補強メンバーの左側端部を重ね合わせた状態の拡大下面図である。
【図6】第1ボルト挿通孔を利用して第1連結部と第2連結部をサイドメンバーに締結した状態の拡大縦断面図である。
【図7】第2ボルト挿通孔を利用して第1連結部と第2連結部をサイドメンバーに締結し、かつ、第3ボルト挿通孔とワッシャを利用して第1連結部をサイドメンバーに締結した状態の拡大縦断面図である。
【図8】第2連結部における連結具をメインフレームに締結した状態の拡大縦断面図である。
【図9】本発明に係る自動車のフロントサブフレームの組立状態の一実施形態を前側から見た斜視図である。
【図10】フロントサブフレームをメインフレームにボルト締結した状態の拡大縦断面図である。
【図11】第1従来例の斜視図である。
【図12】第2従来例の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 フロントサブフレーム
2 前部クロスメンバー
3 左右一対のサイドメンバー
4 後部クロスメンバー
41 第1連結部
5 補強メンバー
50 本体部
51 第2連結部
52 連結板
53 連結具
53a 連結具の基部
53b 連結具の取付部
6a〜6c ボルト挿通孔(複数の取付部)
7a〜7c メインフレーム取付ボルト
8 ずんぎりボルト(締結用ウエルディングボルト)
9 ナット
10 締結ボルト
11 ナット
12 ワッシャ
13 締結ボルト
14 ナット
15 車両のメインフレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントサブフレームに係り、詳しくは、車両の走行安定性を向上させる自動車のフロントサブフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は、自動車のフロントサブフレーム100の一例を示し、このフロントサブフレーム100は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
前記フロントサブフレーム100には、ピットマンアームを備えたタイプのステアリング装置ではリレーロッドが支持され、ラック&ピニオンタイプのステアリング装置ではラックハウジングが支持されるとともに、フロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結される。
【0004】
フロントサブフレーム100は、左右一対のサイドメンバー101と、これらサイドメンバー101の先端部を互いに連結する前部クロスメンバー102と、後部クロスメンバー103とを備え、各サイドメンバー101の前端部と後端部に設けた合計4個の取付孔104を利用して車両のメインフレーム(図示省略)に取付けられる。
【0005】
フロントサブフレーム100における左右一対のサイドメンバー101は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって成形され、前後部のクロスメンバー102,103は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出材により成形されるとともに、鋳造時に前後のクロスメンバー102,103の両端部を左右一対のサイドメンバー101に鋳ぐるむことによって製造される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−222152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1に記載の自動車のフロントサブフレーム100は、車体のメインフレームまたは該メインフレームに含まれるフロントサイドフレームよりも剛性を低く設定することで、正面衝突や前部側面衝突などの一次衝突の衝撃エネルギーを軸方向圧縮や曲げ変形などによって吸収して、メインフレームまたは該メインフレームに含まれるフロントサイドフレームの変形および車室内での車室内構造物と乗員の衝突(二次衝突)を緩和するエネルギ−吸収機能を発揮できるように設計されている。
【0008】
ところが、前記メインフレームまたはメインサイドフレームよりも構造的に強度の弱いフロントサブフレーム100では、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて、図示されていないフロントサスペンション装置のサスペンションアームを介して負荷される様々な外力および図示していないステアリングホイールを操舵した場合の操舵反力などが荷重として負荷されることで過剰な捩れや歪みが発生する。
【0009】
このように、自動車の運転中にフロントサブフレーム100に過剰な捩れや歪みが発生すると、左右のフロントタイヤの接地が不安定になり、車両の走行安定性が低下する。そのため、車両の挙動と運転者の運転感覚に微妙な「ズレ」が生じて、適正な運転に悪影響をおよぼすことが懸念される。
【0010】
また、前記特許文献1に記載の自動車のフロントサブフレーム100のように、左右一対のサイドメンバー101の後端部が後部クロスメンバー103よりも後方に大きく突出しているオーバハング構造では、当該オーバハング部分の剛性が他の部分よりも低くなって過剰な捩れや歪が発生する原因になる。
【0011】
そこで、図12に示すように、車幅方向にのびる前部クロスメンバー102と、この前部クロスメンバー102の車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバー101と、各サイドメンバー101の後端部を互いに連結する後部クロスメンバー103とを備えて、左右一対のサイドメンバー101の後端部が後部クロスメンバー103よりも後方に大きく突出するオーバハング構造を解消した自動車のフロントサブフレーム100が考えられる。
【0012】
しかし、図12に示すフロントサブフレーム100であっても、高剛性化を後部クロスメンバー103のみに委ねている構造では、各サイドメンバー101の後端部に所望の高剛性を期待することが事実上困難であった。そのため、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて、図示されていないフロントサスペンション装置のサスペンションアームを介して負荷される様々な外力および図示していないステアリングホイールを操舵した場合の操舵反力などが荷重として負荷されることで過剰な捩れや歪みが発生する。
【0013】
すなわち、図11および図12に示す従来のフロントサブフレーム100では、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて、サスペンションアームを介して負荷される様々な外力およびステアリングホイール操舵時の操舵反力などによって、過剰な捩れや歪みが発生して、左右のフロントタイヤの接地が不安定になり、車両の走行安定性が低下する問題点を有している。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、過剰な捩れや歪みを抑制して、車両の走行安定性を向上させる自動車のフロントサブフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明に係る自動車のフロントサブフレームは、ステアリング装置のリレーロッドあるいはラックハウジングを支持するとともに、フロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結され、かつ、複数の取付部によって車両のメインフレームに取付けられるとともに、車幅方向にのびる前部クロスメンバーと、この前部クロスメンバーの車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバーと、各サイドメンバーの後端部を両端部の第1連結部で互いに連結する後部クロスメンバーとを備えた自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記左右一対のサイドメンバーの後端部が、前記後部クロスメンバー両端部の第1連結部と、後部クロスメンバーに近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー両端部の第2連結部との二重構造で互いに連結されていることを特徴としている。
【0016】
このように、左右一対のサイドメンバーの後端部が、前記後部クロスメンバー両端部の第1連結部と、後部クロスメンバーに近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー両端部の第2連結部との二重構造で互いに連結されていることにより、各サイドメンバーの後端部は、後部クロスメンバーと補強メンバーの両者によって補強される。これにより、後部クロスメンバーのみに委ねていた補強では不足していた各サイドメンバー後端部の剛性を補償して大幅に向上させることができる。その結果、フロントサブフレーム全体の捩れや歪みに対する剛性が高められ、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいてサスペンションアームを介して様々な外力が荷重としてフロントサブフレームに負荷されたり、ステアリングホイール操舵時の操舵反力などが荷重としてフロントサブフレームに負荷されても、フロントサブフレームの過剰な捩れや歪みが抑制される。したがって、左右のフロントタイヤの接地安定性を高めて、車両の走行安定性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る自動車のフロントサブフレームでは、前記補強メンバーは、車幅方向にのびる本体部と、この本体部の両端部に固着された左右一対の第2連結部とを備え、当該第2連結部は、本体部の前面に固着されて車両前方に延出する連結板と、当該連結板と本体部の車幅方向両端面に固着されて上方に延出する基部と該基部から車幅方向外側に延出する取付部を有する連結具とを備えており、前記各連結板が各サイドメンバーの後端部下面と後部クロスメンバーの各第1連結部の上面との間に介在して複数のボルト・ナットによって各サイドメンバーの後端部に締結されているとともに、前記各連結具の取付部がメインフレーム取付ボルトによって車両のメインフレームに締結されていることを特徴としている。
【0018】
これによると、補強メンバーの各第2連結部における連結板が、各サイドメンバーの後端部下面と後部クロスメンバーの各第1連結部の上面との間に介在して複数のボルト・ナットによって各サイドメンバーの後端部に締結されることで、各サイドメンバーの後端部が堅牢な二重構造で互いに連結されることになるので、各サイドメンバー後端部の剛性を確実に高めることができる。
【0019】
また、前記各連結具の取付部がボルトによってフロントサブフレームよりも高剛性の車両のメインフレームにも締結されることで、補強メンバーの補強力が一層高められて、フロントサブフレームの捩れや歪みに対する剛性をさらに高めることができる。
【0020】
本発明に係る自動車のフロントサブフレームにおける前記補強メンバーの本体部は高剛性中空鋼材からなり、前記各連結板および各連結具は高剛性鋼板からなることを特徴としている。
【0021】
このように、補強メンバーを構成する本体部と、各連結板および各連結具において、占有体積の最も大きい本体部が高剛性中空鋼材によって構成されていることで、補強メンバーは高い剛性を有するものでありながら軽量化を実現して車体重量の軽減に寄与することができる。また、各連結板および各連結具が高剛性鋼板からなることによって、各サイドメンバー後端部および車両のメインフレームなどの他部材への連結強さを高めて、補強メンバーによる各サイドメンバー後端部の剛性向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自動車のフロントサブフレームの過剰な捩れや歪みを抑制して、車両の走行安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る自動車のフロントサブフレームの後部クロスメンバーと補強メンバーとを分解した一実施形態を前側から見た斜視図、図2は、後部クロスメンバーの左側端部の拡大下面図、図3は、補強メンバーの左側端部の拡大下面図、図4は、図3のVI−VI矢視図である。なお、図1〜図4に示す矢印「前後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、運転者から見た方向を指し、この方向に従って各図の説明を行う。
【0024】
図1〜図4において、自動車のフロントサブフレーム1は、車幅方向にのびる前部クロスメンバー2と、この前部クロスメンバー2の車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバー3と、各サイドメンバー3の後端部を両端部を互いに連結するための後部クロスメンバー4と、車幅方向にのびる補強メンバー5とを備える。
【0025】
フロントサブフレーム1には、図示されていないステアリング装置がピットマンアームを備えたタイプではリレーロッドが支持され、ラック&ピニオンタイプではラックハウジングが支持されるとともに、図示されていないフロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結され、かつ、各サイドメンバー3に設けた複数のボルト挿通孔(複数の取付部)6a,6b,6cに下からメインフレーム取付ボルト7a,7b,7cを挿通し、これらの先端部を後述する車両のメインフレームに設けたねじ孔に螺着することで、フロントサブフレーム1が車両のメインフレームにおける床面の下側に取付けられる。
【0026】
後部クロスメンバー4は、車幅方向にのびる本体部40と、この本体部40の両端部に溶接によって固着された左右一対の第1連結部41とからなり、本体部40は断面円形の鋼管またはステンレス鋼管によって構成され、各第1連結部41は、図2に示すように(ただし、一対の第1連結部41は左右対称のものであるので、図2には左側の第1連結部41を示し、右側の第1連結部41の図示は省略している)、プレス加工された略L字形で下向き椀状の鋼板またはステンレス鋼板からなり、その外周縁部には斜め下向きに折曲した補強リブ41aが形成され、本体部40との近接位置に第1ボルト挿通孔41bが、それよりも若干後方に偏り、かつ本体部40から車幅方向外側に離間した位置に第2ボルト挿通孔41cがそれぞれ貫通形成されているとともに、第2ボルト挿通孔41cから前方に離間した位置に第3ボルト挿通孔41dが貫通形成されている。
【0027】
補強メンバー5は、車幅方向にのびる本体部50と、この本体部50の両端部に溶接によって固着された左右一対の第2連結部51とを備え、本体部50は断面角形の鋼管またはステンレス鋼管によって構成され、各第2連結部51は、図3に示すように(ただし、一対の第2連結部51は左右対称のものであるので、図3には左側の第2連結部51を示し、右側の第2連結部51の図示は省略している)、本体部50の前面50aに溶接によって固着されて車両前方に延出する略山形の連結板52と、連結板52と本体部50の車幅方向両端面に溶接によって固着された連結具53とを備えており、連結板52はプレス加工された平坦な鋼板またはステンレス鋼板からなり、連結具53は、連結板52と本体部50の車幅方向両端面に溶接によって固着されて上方に延出する基部53aと、この基部53aから車幅方向外側に延出する取付部53bを有し、プレス加工またはプレスと溶接との複合加工された鋼板またはステンレス鋼板によって構成されている。
【0028】
図2に示す第1連結部41の第1ボルト挿通孔41bに対応して、図3に示すように、第2連結部51の連結板52に第1ボルト挿通孔52aが貫通形成されているとともに、図2に示す第1連結部41の第2ボルト挿通孔41cに対応して、図3に示すように、第2連結部51の連結板52に第2ボルト挿通孔52bが貫通形成されており、連結具53における取付部53bに第3ボルト挿通孔53cが貫通形成されている。また、図1,図3,図4,図5に示すように、各連結板51には、プレスによる剪断と曲げの複合加工によって下側から上側に向かって内径が漸次縮小されるテーパ状で大径の抜き孔52cが設けられる。このようなテーパ状で大径の抜き孔52cを設けることで、各連結板51は、剛性を低下させることなく軽量を図れる。これにより、補強メンバー5は、所定の剛性を保持して軽量化されて車体重量の軽減に寄与する。
【0029】
つぎに、フロントサブフレーム1における各サイドメンバー3の後端部への後部クロスメンバー4と補強メンバー5の連結手順を説明する。
【0030】
まず、図5のように、後部クロスメンバー4の左右一対の第1連結部41(ただし、図5には左側の第1連結部41を示し、右側の第1連結部41の図示は省略している)の上に補強メンバー5の左右一対の第2連結部51(ただし、図5には左側の第2連結部51を示し、右側の第2連結部51の図示は省略している)における連結板52を重ね合わせて、後部クロスメンバー4の本体部40の後側に補強メンバー5の本体部50を近接平行させるとともに、第1連結部41の第1ボルト挿通孔41bと第2連結部51の第1ボルト挿通孔52aとを連通させ、第1連結部41の第2ボルト挿通孔41cと第2連結部51の第2ボルト挿通孔52bとを連通させる。また、第2連結部51の連結具53は第1連結部41よりも車幅方向の外側に露出させる。
【0031】
図6に示すように、各サイドメンバー3には、その下面に、たとえばアプセット溶接によってずんぎりボルト8がウエルディングボルトとして予め接合垂設されており、このずんぎりボルト8を第2連結部51の第1ボルト挿通孔52aと第1連結部41の第1ボルト挿通孔41bとに挿通し、その先端部にナット9を螺着して各サイドメンバー3に第2連結部51と第1連結部41を締結する。
【0032】
また、図7に示すように、第1連結部41の第2ボルト挿通孔41cと第2連結部51における連結板52の第2ボルト挿通孔52bとを、各サイドメンバー3に設けたボルト挿通6eの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔41c,52b,6eに下側から締結ボルト10を挿通して、その先端部を各サイドメンバー3の上方に少し露出させ、ここにナット11を螺着して各サイドメンバー3に第2連結部51と第1連結部41を締結するとともに、第1連結部41の上面に第2連結部51における連結板52の肉厚と等しい肉厚を有してスペーサとして機能するワッシャ12を載置してその中心孔12aを第1連結部41の第3ボルト挿通孔41dに連通させ、さらにワッシャ12の中心孔12aと第3ボルト挿通孔41dを各サイドメンバー3に設けたボルト挿通6fの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔41d,中心孔12a,ボルト挿通6fに下側から締結ボルト13を挿通して、その先端部を各サイドメンバー3の上方に少し露出させ、ここにナット11を螺着して各サイドメンバー3にワッシャ12と第1連結部41を締結する。
【0033】
さらに、図8に示すように、第2連結部51における連結具53の取付部53bに形成されている第3ボルト挿通孔53cを各サイドメンバー3に設けたボルト挿通6cの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔53c,6cに下側からメインフレーム取付ボルト7cを挿通して、その先端の雄ねじ部を車両のメインフレーム15に設けたねじ孔15cに螺着して連結具53を車両のメインフレーム15に締結する。これによって、図9に示すように、フロントサブフレーム1における左右一対のサイドメンバー3の後端部が、後部クロスメンバー4の車幅方向両端部と、後部クロスメンバー4に近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー5の車幅方向両端部との二重構造で互いに連結される。
【0034】
なお、図1,図10に示すように、各サイドメンバー3に設けたボルト挿通孔6aを車両のメインフレーム15に設けたねじ孔15aの下側で連通させ、かつ、各サイドメンバー3に設けたボルト挿通孔6bを車両のメインフレーム15に設けたねじ孔15bの下側で連通させ、連通したボルト挿通孔6aとねじ孔15aに下側からメインフレーム取付ボルト7aを挿通して、その先端の雄ねじ部をねじ孔15aに螺着するとともに、連通したボルト挿通孔6bとねじ孔15bに下側からメインフレーム取付ボルト7bを挿通して、その先端の雄ねじ部をねじ孔15bに螺着することで、フロントサブフレーム1が車両のメインフレーム15における床面の下側に取付けられる。
【0035】
前記構成のように、フロントサブフレーム1における左右一対のサイドメンバー3の後端部が、後部クロスメンバー4の車幅方向両端部の第1連結部41と、後部クロスメンバー4に近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー5車幅方向両端部の第2連結部51との二重構造で互いに連結されていることにより、各サイドメンバー3の後端部は、後部クロスメンバー4と補強メンバー5の両者によって補強されることになる。したがって、後部クロスメンバー4のみによる補強では不足していた各サイドメンバー3後端部の剛性を補償して大幅に向上させることができる。その結果、フロントサブフレーム1全体の捩れや歪みに対する剛性が高められ、車両のコーナリング時やブレーキング時あるいは加速時などにおいて図示されていないサスペンションアームを介して様々な外力が荷重としてフロントサブフレーム1に負荷されたり、図示されていないステアリングホイール操舵時の操舵反力などが荷重としてフロントサブフレーム1に負荷されても、フロントサブフレーム1の過剰な捩れや歪みが抑制される。そのため、左右のフロントタイヤの接地安定性を高めて、車両の走行安定性を向上させることができる。
【0036】
また、補強メンバー5の各第2連結部51における連結板52が、各サイドメンバー3の後端部下面と後部クロスメンバー4の各第1連結部41の上面との間に介在して複数のボルト・ナット10,11、13,14によって各サイドメンバー3の後端部に締結されることで、各サイドメンバー3の後端部が堅牢な二重構造で互いに連結されることになるので、各サイドメンバー3後端部の剛性を確実に高めることができる。
【0037】
さらに、各第2連結部51における各連結具53の取付部53bがメインフレーム取付ボルト7cによってフロントサブフレーム1よりも高剛性の車両のメインフレーム15のねじ孔15cにも螺着締結されることで、補強メンバー5の補強力が一層高められて、フロントサブフレーム1の捩れや歪みに対する剛性をさらに高めることができる。
【0038】
また、補強メンバー5を構成する本体部50と、各連結板52および各連結具53において、占有体積の最も大きい本体部50が断面角形の鋼管またはステンレス鋼管からなる高剛性中空鋼材によって構成されていることで、補強メンバー5は高い剛性を有するものでありながら軽量化を実現して車体重量の軽減に寄与することができる。そして、各連結板52はプレス加工された平坦な鋼板またはステンレス鋼板からなる高剛性鋼板によって構成され、かつ、各連結具53はプレス加工またはプレスと溶接との複合加工された鋼板またはステンレス鋼板からなる高剛性鋼板によって構成されていることにより、各サイドメンバー3後端部および車両のメインフレーム15などの他部材への連結強さを高めて、補強メンバー5による各サイドメンバー3後端部の剛性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る自動車のフロントサブフレームの後部クロスメンバーと補強メンバーとを分解した一実施形態を前側から見た斜視図である。
【図2】後部クロスメンバーの左側端部の拡大下面図である。
【図3】補強メンバーの左側端部の拡大下面図である。
【図4】図3のVI−VI矢視図である。
【図5】後部クロスメンバーの左側端部の上側に補強メンバーの左側端部を重ね合わせた状態の拡大下面図である。
【図6】第1ボルト挿通孔を利用して第1連結部と第2連結部をサイドメンバーに締結した状態の拡大縦断面図である。
【図7】第2ボルト挿通孔を利用して第1連結部と第2連結部をサイドメンバーに締結し、かつ、第3ボルト挿通孔とワッシャを利用して第1連結部をサイドメンバーに締結した状態の拡大縦断面図である。
【図8】第2連結部における連結具をメインフレームに締結した状態の拡大縦断面図である。
【図9】本発明に係る自動車のフロントサブフレームの組立状態の一実施形態を前側から見た斜視図である。
【図10】フロントサブフレームをメインフレームにボルト締結した状態の拡大縦断面図である。
【図11】第1従来例の斜視図である。
【図12】第2従来例の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 フロントサブフレーム
2 前部クロスメンバー
3 左右一対のサイドメンバー
4 後部クロスメンバー
41 第1連結部
5 補強メンバー
50 本体部
51 第2連結部
52 連結板
53 連結具
53a 連結具の基部
53b 連結具の取付部
6a〜6c ボルト挿通孔(複数の取付部)
7a〜7c メインフレーム取付ボルト
8 ずんぎりボルト(締結用ウエルディングボルト)
9 ナット
10 締結ボルト
11 ナット
12 ワッシャ
13 締結ボルト
14 ナット
15 車両のメインフレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング装置のリレーロッドあるいはラックハウジングを支持するとともに、フロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結され、かつ、複数の取付部によって車両のメインフレームに取付けられるとともに、車幅方向にのびる前部クロスメンバーと、この前部クロスメンバーの車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバーと、各サイドメンバーの後端部を両端部の第1連結部で互いに連結する後部クロスメンバーとを備えた自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記左右一対のサイドメンバーの後端部が、前記後部クロスメンバー両端部の第1連結部と、後部クロスメンバーに近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー両端部の第2連結部との二重構造で互いに連結されていることを特徴とする自動車のフロントサブフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記補強メンバーは、車幅方向にのびる本体部と、この本体部の両端部に固着された左右一対の第2連結部とを備え、当該第2連結部は、本体部の前面に固着されて車両前方に延出する連結板と、当該連結板と本体部の車幅方向両端面に固着されて上方に延出する基部と該基部から車幅方向外側に延出する取付部を有する連結具とを備えており、前記各連結板が各サイドメンバーの後端部下面と後部クロスメンバーの各第1連結部の上面との間に介在して複数のボルト・ナットによって各サイドメンバーの後端部に締結されているとともに、前記各連結具の取付部がメインフレーム取付ボルトによって車両のメインフレームに締結されていることを特徴とする自動車のフロントサブフレーム。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記補強メンバーの本体部は高剛性中空鋼材からなり、前記各連結板および各連結具は高剛性鋼板からなることを特徴とする自動車のフロントサブフレーム。
【請求項1】
ステアリング装置のリレーロッドあるいはラックハウジングを支持するとともに、フロントサスペンションアームの基端部が回動自在に連結され、かつ、複数の取付部によって車両のメインフレームに取付けられるとともに、車幅方向にのびる前部クロスメンバーと、この前部クロスメンバーの車幅方向両端部から車両後方にのびる左右一対のサイドメンバーと、各サイドメンバーの後端部を両端部の第1連結部で互いに連結する後部クロスメンバーとを備えた自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記左右一対のサイドメンバーの後端部が、前記後部クロスメンバー両端部の第1連結部と、後部クロスメンバーに近接平行して配設された車幅方向にのびる補強メンバー両端部の第2連結部との二重構造で互いに連結されていることを特徴とする自動車のフロントサブフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記補強メンバーは、車幅方向にのびる本体部と、この本体部の両端部に固着された左右一対の第2連結部とを備え、当該第2連結部は、本体部の前面に固着されて車両前方に延出する連結板と、当該連結板と本体部の車幅方向両端面に固着されて上方に延出する基部と該基部から車幅方向外側に延出する取付部を有する連結具とを備えており、前記各連結板が各サイドメンバーの後端部下面と後部クロスメンバーの各第1連結部の上面との間に介在して複数のボルト・ナットによって各サイドメンバーの後端部に締結されているとともに、前記各連結具の取付部がメインフレーム取付ボルトによって車両のメインフレームに締結されていることを特徴とする自動車のフロントサブフレーム。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車のフロントサブフレームにおいて、
前記補強メンバーの本体部は高剛性中空鋼材からなり、前記各連結板および各連結具は高剛性鋼板からなることを特徴とする自動車のフロントサブフレーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−196613(P2009−196613A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43406(P2008−43406)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000128603)株式会社オートバックスセブン (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000128603)株式会社オートバックスセブン (6)
【Fターム(参考)】
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