説明

自動車のルーフラック取付け構造

【課題】意匠上の制約や見栄えの問題を生じることなく、かつルーフアウタパネルの歪みを生じることなく、必要な取付け強度を確保できる自動車のルーフラック取付け構造を提供する。
【解決手段】ルーフレール3内に、ルーフリインホース8を、上記閉断面を概ね上A1,下A2に分割するよう配置するとともにルーフアウタパネル6とルーフインナパネル7との結合部3a,3bに結合し、ルーフラック10を、バー部材11と、該バー部材11を支持するベース部12と、該ベース部12から車両下方に延びる脚部12cとを有するものとし、上記ルーフアウタパネル6に、上記ベース部12を該ルーフアウタパネル6との間に所定の隙間Cを設けて配置するとともに、上記脚部12cが挿通される挿通孔6bを形成し、上記ルーフリインホース8に上記脚部12cが固定される取付け座8cを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のルーフ部にルーフラックを取付けるようにした取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、スキー,サーフボード等を積載するためのルーフラックを備える場合がある。このようなルーフラックをルーフ部に取付ける場合、例えば、特許文献1では、ルーフレールとルーフパネルとを溶接接合するために形成された溝部内にルーフラックのベース部をボルト締め固定した構造を採用している。また、特許文献2では、ルーフアウタパネルにルーフレールのベース部を補強用リテーナを介在させてボルト締め固定した構造を採用している。
【特許文献1】実開平5−64068号公報
【特許文献2】特開2000−95152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のルーフ部の溝部内にルーフラックを取付ける構造では、取付け強度は確保できるものの、ルーフラックの車幅方向における取付け位置が溝部に固定されることから意匠上の制約を受けるという問題がある。またベース部の車幅方向における取付け代を確保するために、溝幅を大きくする必要がある。このため溝部を覆うルーフモールが幅広となり、特にルーフラックを取り付けない車種の場合には、見栄えが悪化するという問題がある。
【0004】
一方、上記従来のルーフアウタパネルにルーフラックを取付ける構造では、ルーフラックの車幅方向取付け位置に対する意匠上の制約を緩和できるとともに、溝幅の拡大による見栄えの悪化を回避できる。しかしながら、必要な取付け強度を確保しにくく、しかもベース部とリテーナとでルーフアウタパネルを挟みつけてボルト締めする際に、ルーフアウタパネルに歪みが生じるおそれがあり、外観上の品質が損なわれるという懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、意匠上の制約や見栄えの悪化を生じることなく、かつルーフアウタパネルの歪みを生じることなく、必要な取付け強度を確保できる自動車のルーフラック取付け構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとを閉断面をなすように結合してなるルーフレールにルーフラックを取付けるようにした自動車のルーフラック取付け構造において、上記ルーフレール内に、ルーフリインホースを、上記閉断面を概ね上,下に分割するよう配置するとともに上記ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの結合部に結合し、上記ルーフラックを、バー部材と、該バー部材を支持するベース部と、該ベース部から車両下方に延びる脚部とを有するものとし、上記ルーフアウタパネルに、上記ベース部を該ルーフアウタパネルとの間に所定の隙間を設けて配置するとともに、上記脚部が挿通される挿通孔を形成し、上記ルーフリインホースに上記脚部が固定される取付け座を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のルーフラック取付け構造によれば、ルーフラックを、ベース部から下方に延びる脚部を有するものとし、ベース部をルーフアウタパネルに該アウタパネルとの間に隙間を設けて配置するとともに、脚部をルーフアウタパネルを挿通させてルーフリインホースの取付け座に固定したので、ルーフラックに加わる荷重を強度の高いルーフリインホースで負担することができ、ルーフラックの取付け強度を高めることができる。
【0008】
本発明では、ルーフアウタパネルとベース部との間に隙間を設けた状態で脚部をルーフリインホースに固定したので、上記脚部をルーフリインホースに固定する際の固定力や上記荷重がルーフアウタパネルに伝わることはなく、ルーフアウタパネルの歪みを防止でき、外観上の品質を確保できる。
【0009】
また本発明では、ルーフラックをルーフアウタパネルに取付けたので、従来の溝部内に取付ける場合のルーフラックの車幅方向取付け位置における意匠上の制約を緩和できるとともに、溝幅の拡大による見栄えの悪化を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1ないし図3は、本発明の一実施形態による自動車のルーフラック取付け構造を説明するための図であり、図1はルーフラックの断面正面図(図2のI-I線断面図)、図2はルーフラックの要部断面側面図、図3はルーフラックが配置された自動車のルーフ部の概略図である。
【0012】
図において、1は自動車のルーフ部を示しており、該ルーフ部1を構成するルーフパネル2の左,右側部には車両前後方向に延びる左,右のルーフレール3,3が接続されている。詳細には、上記ルーフ部1は、上記ルーフパネル2の左,右縁部に段落ち形成された段落ち部2aと、左,右のレーフレール3の内側縁部に段落ち形成された段落ち部3aとを重ね合わせて溝部4を形成し、該溝部4をスポット溶接により結合した構造となっている。上記溝部4は、該溝部4に装着されたルーフモール5により覆われている。
【0013】
上記左,右のルーフレール3は、ルーフアウタパネル6とルーフインナパネル7との間にルーフリインホース8を配置し、上記段落ち部3aを構成する該ルーフリインホース8,ルーフアウタパネル6及びルーフインナパネル7の内側フランジ部3c同士及び外側フランジ部3b同士を3枚重ねてスポット溶接により結合した構造となっている。上記内側フランジ部3cは上記溝部4の底面に接続されている。また上記ルーフリインホース8はルーフレール3の略全長に渡って配設されている。なお、本発明のルーフリインホース8は、ルーフレール3のルーフラック取付け部分にのみ配置してもよい。
【0014】
上記ルーフリインホース8は、上記内側フランジ部3cからルーフアウタパネル6とルーフインナパネル7との間の上下方向略中央部に位置するように略水平に延びる横辺部8aと、該横辺部8aの外端から外側フランジ部3bに向かって下方に屈曲して延びる縦辺部8bとを有している。該ルーフリインホース8により上記ルーフレール3内は上閉断面A1と下閉断面A2とに分割されている。
【0015】
上記左,右のルーフレール3にはルーフラック10,10が配設されている。このルーフラック10は、主として、車両前後方向に延びる横断面大略ロ字状のバー部材11と、該バー部材11の前,後端部11a,11bを支持する前,後のベース部12,12と、該ベース部12及びバー部材11の前,後端部11a,11bを覆うカバー13,13とを有している。この前,後ベース部12は略同様の構造であるので、前ベース部12について以下詳細に説明する。
【0016】
上記前ベース部12は、アルミ合金又は板金製のものであり、ルーフアウタパネル6の上壁面6aに沿って前後方向に延びる帯板状のベース本体12aと、該ベース本体12aの後端部に該ベース本体12aから上方に屈曲形成された支持部12bと、上記ベース本体12aから下方に延びるように形成された前,後一対の脚部12c,12cとを有している。
【0017】
上記支持部12bの端部はバー部材11内に挿入され、該バー部材11は、上記支持部12bに下方から螺挿されたボルト14,14により締結固定されている。
【0018】
上記ベース本体12aの下面には、該ベース本体12aより面積の大きいゴム等からなるクッション部材15が装着されている。該クッション部材15は、これに一体形成された複数の突起部15aを上記ベース本体12aの係合孔12dに挿入することにより該ベース部12に位置決め固定されている。
【0019】
上記クッション部材15の外周縁には、ルーフアウタパネル6に当接して該アウタパネル6とベース部12との間をシールするリップ部15bが形成されている。
【0020】
上記ルーフアウタパネル6の上壁面6aの前,後脚部12c,12cに対応する部分には該脚部12cが挿通される挿通孔6b,6bが形成されている。
【0021】
上記ルーフリインホース8の横辺部8aの上記前,後脚部12cに対応する部分には平坦面をなす取付け座8c,8cが形成されている。この取付け座8cにはボルト孔8dが形成され、該取付け座8cの下面のボルト孔8dに臨む部位にはナット16が溶接等により固着されている。
【0022】
上記前,後脚部12cには、ボルト挿通孔12e,12eが軸方向に貫通させて形成されており、該各ボルト挿通孔12e内にはボルト20,20が挿入されている。
【0023】
上記ベース部12は、ルーフアウタパネル6の上壁面6aに該上壁面6aとの間に若干の隙間Cを設けて配置されている。前,後脚部12cをルーフアウタパネル6の挿通孔6bを挿通させ、該脚部12cの下端面12fが上記取付け座8cに当接したときに、上記隙間Cが形成されるよう脚部12cの軸長さが設定されている。
【0024】
上記ベース本体12aと上壁面6aとの間には、前,後脚部12cに装着された弾性変形可能なシール部材18,18が配置されている。このシール部材18は、上記ボルト20を締め付けることにより弾性変形して上記隙間Cを閉塞しており、これにより脚部12cと挿通孔6bとの間がシールされている。
【0025】
そして上記ベース部12は、前,後脚部12cに挿入された上記ボルト20をナット16に締め付けることにより上記ルーフリインホース8の取付け座8cに固定されている。
【0026】
本実施形態によれば、ベース部12に該ベース部12の下面から下方に延びる前,後一対の脚部12cを形成し、上記ベース部12をルーフアウタパネル6の上壁面6aに該上壁面6aとの間に若干の隙間Cを設けて配置するとともに、前,後脚部12cをルーフアウタパネル6の挿通孔6bを挿通させてルーフリインホース8の取付け座8cに当接させ、上記前,後脚部12cをボルト20により上記取付け座8cに締結固定したので、ルーフラック10に加わる荷重を強度,剛性の高いルーフリインホース8で負担することができ、ルーフラック10の取付け強度を高めることができる。
【0027】
またルーフレール3に配設された既存の補強用ルーフリインホース8を有効利用してベース部12を固定したので、部品点数を増やすことなくルーフラック10を取付けることができる。
【0028】
本実施形態では、上記ルーフアウタパネル6の上壁面6aとベース部12との間に隙間Cを設けて脚部12cをルーフリインホース8に固定したので、上記脚部12cをボルト20でルーフリインホース8に固定する際の締結力や上記荷重がルーフアウタパネル6に伝わることはなく、ルーフアウタパネル6の歪みを防止でき、外観上の品質を確保できる。
【0029】
また本実施形態では、上記ルーフラック10をルーフアウタパネル6の上壁面6aに取付けたので、従来の溝部内に取付ける場合のルーフラックの車幅方向取付け位置における意匠上の制約を緩和できるとともに、溝幅の拡大による見栄えの悪化を回避できる。
【0030】
上記ベース部12に前,後脚部12cを形成したので、ベース部12をルーフアウタパネル6に装着する際に前,後脚部12cが挿通孔6bに係合し、これによりベース部12を仮保持することができ、取付け作業を容易に行なうことができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、ベース部12に前後一対の脚部を形成した場合を説明したが、本発明の脚部は1つでもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、脚部12cをルーフリインホース8の取付け座8cに直接固定したが、本発明では、ルーフリインホース8の取付け座8cの下面に補強用リテーナを配置し、該リテーナを介在させて脚部を固定してもよい。この場合には、脚部の取付け強度をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による自動車のルーフラック取付け構造を説明するためのルーフラックの断面正面図(図2のI-I 線断面図) である。
【図2】上記ルーフラックの要部断面側面図である。
【図3】上記ルーフラックが配置された自動車のルーフ部の概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1 自動車のルーフ部
3 ルーフレール
3a,3b フランジ部(結合部)
6 ルーフアウタパネル
6b 挿通孔
7 ルーフインナパネル
8 ルーフリインホース
8c 取付け座
10 ルーフラック
11 バー部材
12 ベース部
12c 脚部
A1,A2 閉断面
C 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとを閉断面をなすように結合してなるルーフレールにルーフラックを取付けるようにした自動車のルーフラック取付け構造において、上記ルーフレール内に、ルーフリインホースを、上記閉断面を概ね上,下に分割するよう配置するとともに上記ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの結合部に結合し、上記ルーフラックを、バー部材と、該バー部材を支持するベース部と、該ベース部から車両下方に延びる脚部とを有するものとし、上記ルーフアウタパネルに、上記ベース部を該ルーフアウタパネルとの間に所定の隙間を設けて配置するとともに、上記脚部が挿通される挿通孔を形成し、上記ルーフリインホースに上記脚部が固定される取付け座を形成したことを特徴とする自動車のルーフラック取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−145102(P2007−145102A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339659(P2005−339659)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】