説明

自動車の外気導入構造

【課題】 吸気ユニットと接続するための連通口を車室内前方の車体構造に求めない自動車の外気導入構造を提供する。
【解決手段】 ステアリングメンバ3の開放状態の端部10aから車体側壁2付近の外気Aをステアリングメンバ3内に導入し、その導入した外気Aを連通口16から吸気ユニット27の外気導入口28へ吸入することができるため、ステアリングメンバ3を吸気ダクトとして利用することができ、車室内前方の車体構造に連通口16を形成する必要がない。そのため、車室内前方の車体構造は左右対称となり、その部分に関しては、国内向け車種と国外向け車種とで共用でき、部品管理及び組立作業管理の面で有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングメンバを利用した自動車の外気導入構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルの内部には、両端部が車体側壁に結合された状態のステアリングメンバが、車幅方向に沿って配されている。このステアリングメンバは、ステアリングコラムや、空調装置、エアバッグ等を支持するために使用される。そのため、ステアリングメンバには剛性が求められ、一般的に金属製の閉断面構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ステアリングメンバの下方には、助手席側に空調装置の吸気ユニットが配置されている。吸気ユニットが配置された助手席側における車室内前方のカウル部には、その部分だけを車室内へ突出させた連通口が形成され、その連通口に対して吸気ユニットの外気導入口を接続している。外気はカウル部から連通口を通過して吸気ユニットの外気導入口へ導入され、吸気ユニットから車幅方向中央に設置された空調装置へ送風される。
【特許文献1】特開2001−18841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、車室内前方の車体構造(カウル部)において、助手席側の吸気ユニットに対応する部分だけを車幅方向側へ突出させて、そこに連通口を形成していたため、車室内前方の車体構造(カウル部)の形状が左右非対称となり、国内向け車種と国外向け車種とで、異なった構造となり、部品管理及び組立作業管理の面で不利であった。
【0005】
また、吸気ユニットは予め空調装置と一体化された状態で、車体側に形成された連通口へ、後から組み付けられるため、連通口と外気導入口との接続部において組付誤差が生じやすい。そのため、車体側の連通口と、吸気ユニット側の外気導入口との接続部には、誤差を吸収するために、大きめのフランジや、厚めのシール部材を用いる必要があり、コストの増加を招いていた。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、吸気ユニットと接続するための連通口を車室内前方の車体構造に求めない自動車の外気導入構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、インストルメントパネルの内部に、両端部を車体側壁に結合した状態で閉断面構造のステアリングメンバを車幅方向に沿って配置し、且つステアリングメンバの少なくとも一方の端部は開放状態で車体側壁の貫通口に結合した状態にすると共に、該ステアリングメンバの一部に形成された連通口に、空調用吸気ユニットの外気導入口を接続したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、連通口がステアリングメンバの底面部に形成され、外気導入口が吸気ユニットの上面部に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、ステアリングメンバが、金属製で開断面形状を有するメンバ本体の開口に金属板を結合した閉断面構造であることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、金属板の内面側に基板部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、ステアリングメンバ内における開放端部と連通口との間の基板部に、通電により発熱する電子ユニットを取付けことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ステアリングメンバの開放状態の端部から車体側壁付近の外気をステアリングメンバ内に導入し、その導入した外気を連通口から吸気ユニットの外気導入口へ吸入することができるため、ステアリングメンバを吸気ダクトとして利用することができ、車室内前方の車体構造に連通口を形成する必要がない。そのため、車室内前方の車体構造は左右対称となり、その部分に関しては、国内向け車種と国外向け車種とで共用でき、部品管理及び組立作業管理の面で有利である。また、連通口を有するステアリングメンバと、外気導入口を有する吸気ユニットとは、車体への組付け前に一体化されるため、連通口と外気導入口との接続部には誤差が生じにくい。従って、誤差を吸収するための構造を設ける必要がなく、コストの面で有利である。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、ステアリングメンバに対して下側から吸気ユニットを組付けるだけで、連通口と外気導入口とを接続できるため、ステアリングメンバの下方スペースを有効に利用して吸気ユニットを設置することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、ステアリングメンバがメンバ本体と金属板の2部品から構成されているため、メンバ本体と金属板とを結合する前に、ステアリングメンバ内部への加工(連通口形成、基板部形成など)を容易に行うことができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、金属板の内面側に基板部を設けたため、基板部をハーネスとして利用することができ、ステアリングメンバ内部へのハーネスの配策が不要となる。また、基板部が発熱しても、ステアリングメンバを流れる外気により冷却することができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、インバータなど通電により発熱する電子ユニットも、専用の冷却ファンを設けたりして特別に冷却する必要はなく、ステアリングメンバ内部の外気の流れる部分に設置するだけで、確実に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
吸気ユニットと接続するための連通口を車室内前方の車体構造に求めない、という目的を、インストルメントパネルの内部に、両端部を車体側壁に結合した状態で閉断面構造のステアリングメンバを車幅方向に沿って配置し、且つステアリングメンバの少なくとも一方の端部は開放状態で車体側壁の貫通口に結合した状態にすると共に、該ステアリングメンバの一部に形成された連通口に、空調用吸気ユニットの外気導入口を接続した、ということで実現した。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
図1〜図7は、本発明の一実施例を示す図である。尚、図1において、R方向が運転席側であり、L方向が助手席側を示している。
【0019】
車室内の前方にはインストルメントパネル1が取付けられる。インストルメントパネル1の内部には、車幅方向両側の車体側壁としてのダッシュサイド2間に、車幅方向に沿うステアリングメンバ3が架設されている。ステアリングメンバ3の運転席側には図示せぬステアリングコラムを支持するステアリングサポート4が溶接により固定されている。また、ステアリングメンバ3の車幅方向中央部には一対のステー5が溶接により固定され、フロアトンネル6と結合されている。
【0020】
車室内の前方には、エンジンルームと区画するダッシュパネル7が形成されている。ダッシュパネル7の上部にはフロントウインドパネル8よりも前方へ延びるカウル部9が形成されている。この実施例のカウル部9は助手席側に外気取入用の構造が形成されておらず、左右対称の構造になっている。
【0021】
ステアリングメンバ3は、金属製のメンバ本体10と金属板11とから構成されている。メンバ本体10は、プレス成形品で、上部に開口12を有する断面逆ハット形の開断面形状をしている。金属板11は、長方形の板形状をしている。メンバ本体10の両端部10aは開放状態で、周囲には取付ブラケット13が溶接されている。
【0022】
また、メンバ本体10における端部10a付近には、前面側にそれぞれ切欠14が一カ所づつ形成されている。更に、メンバ本体10の開口12の前後端部からはフランジ15が形成されている。更に、メンバ本体10における助手席側の底面部には長方形の連通口16が形成されている。
【0023】
金属板11の下面には、周辺部を残して基板部17が形成されている。基板部17は金属板11の下面に絶縁コーティングを介して通電回路を形成したもので、複数の配線を束ねたハーネスと同様に、複数の異なった電流を同時に通電可能である。金属板11は、メンバ本体10の金属材料と同種か、メンバ本体10の金属材料よりも電位差の低い金属を選定することが望ましい。
【0024】
基板部17の車幅方向両端部には、前記メンバ本体10の切欠14に対応する位置に、それぞれハーネス18が直接形成されている。また、基板部17の運転席寄り位置には、インバータなど通電により発熱する電子ユニット19が取付けられている。そして、金属板11の上面には、3カ所にコネクタ20が設定されている。このコネクタ20には、それぞれサブハーネス21用のコネクタ22を接続することができる。
【0025】
ステアリングメンバ3が、メンバ本体10と金属板11の2部品から構成されているため、メンバ本体10と金属板11とを結合する前に、ステアリングメンバ3の内部への加工(連通口16の形成や基板部17の形成など)を容易に行うことができる。
【0026】
金属板11は前後両縁部を、メンバ本体10のフランジ15上に載せ、フランジ15の余っている部分を、折り返して金属板11の前後両縁部を包むように加締めることにより、金属板11とメンバ本体10とは結合され、閉断面構造となる。ステアリングメンバ3が閉断面構造になることにより、ステアリングメンバ3に必要な剛性が確保される。
【0027】
メンバ本体10と金属板11を結合する際に、基板部17の車幅方向両端部に結線されているハーネス18は、それぞれメンバ本体10に形成された切欠14から外部へ取り出され、エンジンルームやドア側の各種電装機器に接続される。
【0028】
ステアリングメンバ3の上部には3カ所にコネクタ20が形成されているため、これらのコネクタ20に接続したサブハーネス18により、運転席側、中央側、助手席側の各コンポーネントへ給電することができる。
【0029】
このようにして閉断面構造にされたステアリングメンバ3の両端部10aは開放状態で、該両端部10aに溶接された取付ブラケット13が、中空構造をしたダッシュサイド2の貫通口23の周囲に対してボルト・ナット手段24(図7参照)で結合される。結合されたステアリングメンバ3の両端部10aと貫通口23とは合致した状態となり、ステアリングメンバ3の内部空間が、ダッシュサイド2とアウタパネル25との間の空間Sと連通状態となる。
【0030】
ステアリングメンバ3における連通口16が形成された助手席寄り位置には、空調装置26と一体に組付けられた吸気ユニット27が下側から取付けられている。吸気ユニット27は上面部に外気導入口28を有し、ステアリングメンバ3の底面部に形成された連通口16と密着した状態で接続されている。また、吸気ユニット27の後面には、ドア29により開閉自在な内気導入口30も形成されている。
【0031】
吸気ユニット27は、車体に取付けられる前に、予め空調装置26と共にステアリングメンバ3に対して組付けられてモジュール化されるため、ステアリングメンバ3の連通口16と、吸気ユニット27の外気導入口28との接続部には誤差が生じにくい。従って、接続部に誤差を吸収するための構造を設ける必要がなく、コストの面で有利である。
【0032】
また、ステアリングメンバ3に対して下側から吸気ユニット27を組付けるだけで、連通口16と外気導入口28とを接続できるため、モジュール化された空調装置26(吸気ユニット27含む)とステアリングメンバ3を、一緒に車体に組み付けることにより、吸気ユニット27はステアリングメンバ3の下方スペースに設置された状態となり、同スペースの有効利用を図ることができる。
【0033】
吸気ユニット27の内部には、図示せぬブロアが内蔵されており、該ブロアにより吸引すると、ダッシュサイド2とアウタパネル25の間の空間Sの外気Aが、ダッシュサイド2の貫通口23を介して、ステアリングメンバ3の両端部10aより内部へ導入される。ステアリングメンバ3の内部に導入された外気Aは、連通口16から、外気導入口28を経て、吸気ユニット27の内部へ導かれ、そこから空調装置26へ送風される。空調装置26へ送風された外気Aは空調装置26で温度調整されて車室内へ吹き出される。外気Aに代えて、内気導入口30から内気Bが導入される場合もあり、外気Aと内気Bがミックスされて導入される場合もある。
【0034】
このように、ステアリングメンバ3を吸気ダクトとして利用することができるため、従来のように車室内前方のカウル部9に車室内側へ突出した連通口16を形成する必要がない。そのため、車室内前方の車体構造は左右対称となり、その部分に関しては、国内向け車種と国外向け車種とで共用でき、部品管理及び組立作業管理の面で有利である。
【0035】
また、このステアリングメンバ3は、金属板11の下面に基板部17を設けたため、基板部17をハーネスとして利用することができ、ステアリングメンバ3内部へのハーネスの配策が不要となる。また、基板部17が発熱しても、ステアリングメンバ3を流れる外気Aにより冷却することができる。
【0036】
更に、通電により発熱する電子ユニット19も、積極的にステアリングメンバ3の内部へ設置することにより、内部を流れる外気Aにより確実に冷却することができる。従って、発熱する電子ユニット19のために、専用の冷却ファンを設けたりする必要がなく、電子ユニット19周辺の構造を簡略化できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
尚、以上の実施例では、外気Aをステアリングメンバ3の両端部10aから導入する構造を示したが、片方の端部10aからだけも良い。その場合、電子ユニット19は外気Aの流れがある方に設置する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例に係る自動車の外気導入構造を示す車室内前方の分解斜視図。
【図2】図1のステアリングメンバ及び吸気ユニットを示す正面図。
【図3】図2中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図4】図3に示す部分のステアリングメンバを示す斜視図。
【図5】図4のステアリングメンバを示す分解斜視図。
【図6】図4中矢示SB−SB線に沿う断面図。
【図7】図4中矢示SC−SC線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0039】
1 インストルメントパネル
2 ダッシュサイド(車体側壁)
3 ステアリングメンバ
10 メンバ本体
11 金属板
12 開口
16 連通口
17 基板部
19 電子ユニット
23 貫通口
26 空調装置
27 吸気ユニット
28 外気導入口
R 運転席側
L 助手席側
A 外気
B 内気
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネル(1)の内部に、両端部を車体側壁(2)に結合した状態で閉断面構造のステアリングメンバ(3)を車幅方向に沿って配置し、且つステアリングメンバ(3)の少なくとも一方の端部(10a)は開放状態で車体側壁(2)の貫通口(23)に結合した状態にすると共に、該ステアリングメンバ(3)の一部に形成された連通口(16)に、空調用吸気ユニット(27)の外気導入口(28)を接続したことを特徴とする自動車の外気導入構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の外気導入構造であって、
連通口(16)がステアリングメンバ(3)の底面部に形成され、外気導入口(28)が吸気ユニット(27)の上面部に形成されていることを特徴とする自動車の外気導入構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の自動車の外気導入構造であって、
ステアリングメンバ(3)が、金属製で開断面形状を有するメンバ本体(10)の開口(12)に金属板(11)を結合した閉断面構造であることを特徴とする自動車の外気導入構造。
【請求項4】
請求項3記載の自動車の外気導入構造であって、
金属板(11)の内面側に基板部(17)が設けられていることを特徴とする自動車の外気導入構造。
【請求項5】
請求項4記載の自動車の外気導入構造であって、
ステアリングメンバ(3)内における開放端部(10a)と連通口(16)との間の基板部(17)に、通電により発熱する電子ユニット(19)を取付けことを特徴とする自動車の外気導入構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−69480(P2006−69480A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258529(P2004−258529)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】