説明

自動車の天井照明装置

【課題】エアコンの吹き出しを損なうことなく、良好な見栄えを呈すると共に、車室天井の両側縁に配置される自動車の天井照明装置を提供する。
【解決手段】車室天井の側縁の長手方向に沿って、ルーフヘッドライニング17の開口部17bの上側に配設した扁平形状のハウジング11と、ハウジング内の車両内側に配設した点灯回路12と、ハウジング内で点灯回路の車両外側に隣接して、長手方向に並んで配設した複数個の発光手段13と、ハウジング下面の車両外側寄りに設けた開口部11dを閉じるように配設したレンズ部14とを備え、レンズ部14が車室天井の側縁に設けたエアコンダクト19の吹き出し口19aに隣接して上方に凹状に湾曲していて、エアコンダクト19からの空気を吹き出し口19aから車室内へ送風するようにガイドしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の天井照明装置に係り、特に車室天井の両側に沿って配置される天井照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に自動車の天井照明装置は、所謂ルームランプとして車室天井の中央付近に設けられている。この種の天井照明装置では、出射する光が車室全体に亘って広がり車室全体を照明するようになっている。
【0003】
そして、従来の天井照明装置においては、光源として電球バルブ或いは蛍光灯を使用したものが広く採用されている。このため、このような光源を収容するためのハウジングはその断面が高さ方向に関して比較的大型になると、車室天井から下方に突出して限りある車室空間を狭めてしまう。この場合、ヘッドクリアランスを十分に確保することが困難になることもあり好ましくない。また、車室天井の中央付近から車室全体を照明するようになっていることから、例えば乗降時に乗員の胸元付近にて十分な照度を確保することは困難である。
【0004】
一方、近年では光源として発光ダイオード(LED)を使用した照明装置が普及してきており、LED自体が小さいことから照明装置全体も薄型に構成することができて、特に車室天井に埋め込まれるタイプの天井照明装置として好ましい。また、LED自体の消費電力は極めて小さいことから、自動車全体の消費電力の低減に大きく寄与することも期待できる。
【0005】
さらに、光源としてLEDを使用した照明装置は、LEDの大出力化に伴って比較的明るい照明が得られるようになってきており、多数のLEDを使用した大型で低消費電力の照明装置が容易に構成され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、LEDを光源として使用した照明装置はその発光面形状が比較的任意に設定され得ることになり、例えば車室天井の中央を前後方向に延びるような大型の天井照明装置も既に実用化されている。ここで、車室全体をより一層明るく照明するために、あるいはヘッドクリアランスを十分に確保するために、例えば車室天井の両側縁に沿って前後方向に延びるような天井照明装置を設ける場合、車室天井の両側縁に沿ってエアコンダクトの吹き出しベゼルが配置されていると、このような吹き出しベゼルとの干渉を避けるために車室天井の両側縁よりやや内側に天井照明装置を設けなければならない。
【0007】
しかしながら、このような天井照明装置の配置は、煩雑な見栄えを与えることになり、車室天井のデザイン性が損なわれてしまうことになると共に、天井照明装置が車室天井の両側縁からやや内側に配置されることから、十分なヘッドクリアランスを確保することができない場合もある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創作されたものであり、エアコンの吹き出しを損なうことなく良好な見栄えを呈すると共に、車室天井の両側縁に配置され得るようにした、自動車の天井照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の自動車の天井照明装置は、自動車の車室天井の側縁の長手方向に沿って、ルーフヘッドライニングの開口部の上側に配設された扁平形状のハウジングと、ハウジング内の車両内側に配設された点灯回路と、ハウジング内で点灯回路の車両外側に隣接して、長手方向に並んで配設された複数個の発光手段と、ハウジング下面の車両外側寄りに設けた開口部を閉じるように配設されたレンズ部と、を備えており、レンズ部が、車室天井の側縁に設けられたエアコンダクトの吹き出し口に隣接して上方に凹状に湾曲していて、エアコンダクトからの空気を上記吹き出し口から車室内へ送風されるようにガイドしていることを特徴としている。
【0010】
本発明の自動車の天井照明装置において、好ましくは、ハウジングの内面は、少なくとも発光手段より車両外側領域にて白色拡散面として処理されている。また、好ましくは、レンズ部は半透明白色の材料から構成され、さらに、レンズ部がアクリル板の表面に和紙を貼り付けることにより構成される。例えば、アクリル板の表面にコーティング剤を含浸させた和紙を載置して加熱圧着することにより、アクリル板の表面に和紙を貼り付けることができる。
本発明の自動車の天井照明装置において、好ましくは、前記点灯回路は各発光手段の発光強度を調整し得るように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、点灯回路により各LEDが駆動され、各LEDから出射した光はハウジングの内面で反射された後、ハウジングの開口部を閉じるレンズ部を介して車室内に出射することになる。その際、LEDから出射した光はハウジングの開口が車両外側寄りに設けられていることから直接に車室内に照射されないので、車室内は、各LEDからの反射光による比較的軟らかい光による間接照明が行なわれると共に、車室内から当該天井照明装置を見たとき個々のLEDは視認され得ないので、全体としてほぼ均一な発光状態となる。
【0012】
さらに、車室天井の両側縁から照明光が車室内に出射することになるため、車室の両側縁にまで光が十分に到達することになり、例えば乗降時における乗員の胸元付近が明るくなり乗降が容易に行なわれ得る。また、ハウジング内で、点灯回路を備えた基板がLEDにより車両内側にて水平に配置されていることで、全体として扁平に、即ち薄型に構成され、車室天井に取り付けた際の天井から下方への突出量が大幅に低減されて、車室内でのヘッドクリアランスが十分に確保される。
【0013】
さらに、車室天井の両側縁のエアコンダクトからの暖気または冷気は、レンズ部の湾曲形状にガイドされてエアコンダクトの吹き出し口から車室へ送られる。この場合、レンズ部は湾曲形成されていることから、エアコンダクトからの空気の整流効果を発揮することができる。従って、車室天井の両側縁にて天井照明装置とエアコンダクトの吹き出し口とが一体となって配設されることになる。これにより、車室天井の両側縁において天井照明装置及びエアコンダクトの吹き出し口による構成が簡略化され、吹き出しベゼルを廃止することができて、見栄えが向上する。
【0014】
ハウジングの内面が少なくともLEDより車両外側領域にて白色拡散面として処理されている場合には、LEDから出射した光がハウジング内面で反射されるときこの白色拡散面により拡散されることになり、より均一な照明光が得られる。
【0015】
レンズ部が半透明白色の材料から構成されている場合には、LEDから出射してハウジング内面で反射された光がレンズ部を透過する際に、半透明白色の材料により拡散されることでより一層均一な照明光が得られる。
【0016】
レンズ部がアクリル板の表面に和紙を貼り付けることにより構成されている場合には、天井照明装置の発光面として作用するレンズ部の表面が和紙の持つ風合いによって高級感を呈する。
【0017】
レンズ部が、アクリル板の表面にコーティング剤を含浸させた和紙を載置して加熱圧着することにより貼り付けられている場合には、和紙がアクリル板の表面に対して容易に、そして確実に固定保持される。
【0018】
点灯回路が各LEDの発光強度を調整し得るように構成されている場合には、例えば停車時あるいは乗員の乗降時には各LEDの発光強度を高めて乗員の胸元付近を明るく照明することが可能であり、また走行中には各LEDの発光強度を低くして、必要最低限の軟らかい照明を行なうことができる。
【0019】
このようにして、本発明によれば、エアコンの吹き出しを損なうことなく良好な見栄えを呈すると共に、車室天井の両側縁に配置され得るようにした自動車の天井照明装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明による自動車の天井照明装置の一実施形態の構成を示している。これらの図において、天井照明装置10は、ハウジング11と、このハウジング11内に設けた点灯回路12及びLED13と、ハウジング11の開口部11dを閉鎖するレンズ部14と、から構成されている。
【0021】
ハウジング11は、長手方向に細長く延びた扁平なほぼ直方体形状を有しており、自動車の車室天井の両側縁の長手方向に沿って僅かに湾曲した状態で、ルーフヘッドライニング17(後述)の開口部17bの上側に配設される。ここで、開口部17bとは、図2に示すように、ルーフヘッドライニング17の外縁17aとレールサイドガーニッシュ20の車両内側の内縁20aとで挟まれた空隙スペース、即ち開口を意味する。
【0022】
ハウジング11は、図2に詳細に示すように、車両外側(図2にて右側)及び内側にそれぞれ突出した複数個、図示の場合、車両外側と車両内側にそれぞれ3個の締結部11aを備えており、各締結部11aが自動車のルーフパネル15の内側に位置するルーフパネルリインフォースメント15aに対して、取付ボルト16により締結されるようになっている。
【0023】
さらに、ハウジング11は、図2に示すように、車両内側(図2にて左側)にそれぞれ突出した複数個、図示の場合、5個の嵌合部11bを備えており、各締結部11bに自動車のルーフヘッドライニング17の内面に取り付けられたクリップ18が嵌合することにより、ルーフヘッドライニング17の両側縁部が自動車のルーフパネルリインフォースメント15aに対してハウジング11を介して固定保持されるようになっている。ここで、ルーフヘッドライニング17は、その外縁17aがハウジング11内のLED13よりさらに車両外側にまで延びており、LED13からの直接光が車室内に進入しないようになっている。
【0024】
上記ハウジング11は、その車両内側の端部付近が隔壁11cにより仕切られており、その内部空間に点灯回路12が配設されている。この点灯回路12は、天井とほぼ平行に配置される基板12a上に構成されており、この基板12aの片面または両面に点灯回路を構成する電子部品等(図示せず)が実装されている。
【0025】
上記ハウジング11は、その隔壁11cより車両外側の内面(図2にて上面及び右側面)が拡散反射面として構成されている。この拡散反射面は、例えば白色拡散塗料を塗布することにより構成され得る。また、ハウジング11はその下面の車両外側寄りに長手方向に沿って延びる開口部11dを備えている。ここで、この開口部11dは各LED13からの出射光を車室内に放射させるためのものである。
【0026】
LED13は隔壁11cの車両外側に隣接して、例えば天井に対してほぼ垂直な基板13a上にて車両外側を向くように、複数個が長手方向に並んで配設されている。そして、各LED13は点灯回路12によって駆動されて発光する。その際、各LED13は点灯回路12によりその発光強度が調整され得るようになっている。
【0027】
レンズ部14は透光性部材から構成されており、ハウジング11の開口部11dを閉鎖するようにハウジング11に対して取り付けられている。レンズ部14は、具体的には、半透明白色の材料、例えばアクリル樹脂板14aから構成されており、その表面(下面)に和紙14bが貼り付けられている。
【0028】
さらに、レンズ部14は、図2に示すように、その車両外側の最外縁付近にて上方に凹状に湾曲した湾曲部14dを備えている。この湾曲部14dは、具体的には、図2に示すように天井照明装置10が自動車の車室天井の両側縁に取り付けられたとき、車両側に設けられたエアコンダクト19の吹き出し口19aに隣接することにより、エアコンダクト19の吹き出し口19aからの空気を車室内へガイドするように湾曲形成されている。なお、吹き出し口19aは、車両側のレールサイドガーニッシュ20の裏側に開口することになるため、車室内の乗員からは直接には視認されない。
【0029】
上述のレンズ部14は以下のようにして作製される。
先ず図3に示すように、アクリル樹脂板14aに和紙14bを当接させ、さらに和紙14bの下方にコーティング剤14cを配置する。この状態から、図4に示すように、オートクレーブ等の炉21内にて、成形型22上に載置すると共に、アクリル樹脂板14aの上にシリコンシート23を載置した状態で密閉袋24内に封入し、この密閉袋24内を真空引きした後、炉21内に圧力と熱を加える。なお、シリコンシート23はアクリル樹脂板14の密閉袋24の内面への付着を防止するためのものである。
【0030】
これにより、コーティング剤14cが和紙14b内に溶け込んで、和紙14bがアクリル樹脂板14aに密着する。従って、和紙14bをアクリル樹脂板14aに貼り付けるための接着剤が不要になる。その際、成形型22の形状に基づいてアクリル樹脂板14aが三次元成形され、所定形状を備えることになる。
【0031】
本発明の実施形態による自動車の天井照明装置10は以上のように構成されており、点灯回路12が各LED13を駆動することで各LED13から光が出射する。そして、各LED13からの光はハウジング11の隔壁11cより車両外側の内面にて反射して拡散し、レンズ部14を介して車室内に照射される。この場合、レンズ部14は、ルーフヘッドライニング17の外縁17a及びレールサイドガーニッシュ20の上縁により画成された長手方向に延びる発光面を呈する。
【0032】
そして、各LED13からの出射光は直接には車室内に照射されず、ハウジング11の内面で拡散反射されて車室内に照射されるので、車室内では天井の両側縁に沿って延びる細長い間接照明が行なわれる。これにより比較的斬新なデザインの天井照明が得られると共に、特に車両両側において高い照度が得られる。
【0033】
さらに、乗員の乗降時には、点灯回路12が各LED13を比較的高い発光強度となるように駆動することで乗降時における乗員の胸元付近が比較的明るく照明され、夜間等の暗い環境であっても容易に乗降することが可能になる。また、自動車の走行中には、点灯回路12が各LED13を比較的低い発光強度となるように駆動して、走行中の車室内が弱い間接照明で照明され、所謂イルミネーションとして使用することができる。
【0034】
この場合、ハウジング11内にて、点灯回路12を構成する基板12aがLED13の車両内側にて水平に配置されているので、ハウジング11そして天井照明装置10全体が薄型に構成でき、ルーフヘッドライニング17の裏側に配設され得るので車室内において十分なヘッドクリアランスが確保される。さらに、本天井照明装置10が、そのレンズ部14の一部がエアコンダクト19からの空気の送風を整流するようにガイドするので従来のエアコンダクトの吹き出しベゼルが不要となり、単純な構成で見栄えを向上させることができる。
【0035】
このように、本実施形態の天井照明装置10によれば、エアコンの吹き出しを損なうことなく良好な見栄えを呈すると共に、車室天井の両側縁に配置され得るようにした斬新な間接照明を実現できる。
【0036】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば、天井照明装置10は、単に車室天井の両側縁にて長手方向に延びるように備えられる他に、その長手方向における設置範囲は任意に設定され、車室の両側縁にて天井の全長に亘って配置されていてもよく、また天井の全長の一部、例えば後席の範囲のみに配置されていてもよい。また、上述した実施形態においては、点灯回路12は各LEDの発光強度を任意に調整するようになっているが、これに限らず、例えば乗降時及び走行中の二段階の発光強度を切換え制御するようにしてもよいことは明らかである。また、発光手段としてLEDを用いた場合を例示したが、LEDの代わりに電球バルブなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による自動車の天井照明装置の一実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1の天井照明装置の横方向の拡大断面図である。
【図3】図1の天井照明装置におけるレンズ部の作製途中の一工程を示す部分断面図である。
【図4】図1の天井照明装置におけるレンズ部の作製途中の他の工程を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 自動車の天井照明装置
11 ハウジング
11a 締結部
11b 嵌合部
11c 隔壁
11d 開口部
12 点灯回路
12a 基板
13 LED
13a 基板
14 レンズ部
14a アクリル樹脂板
14b 和紙
14c コーティング剤
15 ルーフパネル
15a ルーフパネルリインフォースメント
16 取付ボルト
17 ルーフヘッドライニング
17a 外縁
17b 開口
18 クリップ
19 エアコンダクト
19a 吹き出し口
20 レールサイドガーニッシュ
20a 内縁
21 炉
22 成形型
23 シリコンシート
24 密閉袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室天井の側縁の長手方向に沿って、ルーフヘッドライニングの開口部の上側に配設された扁平形状のハウジングと、
上記ハウジング内の車両内側に配設された点灯回路と、
上記ハウジング内で上記点灯回路の車両外側に隣接して、長手方向に並んで配設された複数個の発光手段と、
ハウジング下面の車両外側寄りに設けた開口部を閉じるように配設されたレンズ部と、を備えており、
上記レンズ部が、車室天井の側縁に設けられたエアコンダクトの吹き出し口に隣接して上方に凹状に湾曲していて、上記エアコンダクトからの空気を上記吹き出し口から車室内へ送風されるようにガイドしていることを特徴とする、自動車の天井照明装置。
【請求項2】
前記ハウジングの内面が、少なくとも発光手段より車両外側領域にて、白色拡散面として処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の天井照明装置。
【請求項3】
前記レンズ部が半透明白色の材料から構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車の天井照明装置。
【請求項4】
前記レンズ部がアクリル板の表面に和紙を貼り付けることにより構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の自動車の天井照明装置。
【請求項5】
前記アクリル板の表面にコーティング剤を含浸させた和紙を載置して加熱圧着することにより、前記アクリル板の表面に前記和紙が貼り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載の自動車の天井照明装置。
【請求項6】
前記点灯回路が各発光手段の発光強度を調整し得るように構成されていることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の自動車の天井照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−12937(P2008−12937A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182771(P2006−182771)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】