説明

自動車の車体構造

【課題】補強部材を追加することなく、側面衝突時における車幅方向内側へのロッカの侵入量を低減することができる。
【解決手段】本車体構造では、車体10のフロアパネル18及びロッカ12に結合されたシート取付ブラケット32に車両用シートが取り付けられる。ここで、自動車の側面衝突時には、一般にロッカ12が捩れてロッカ12の上部(稜線L1)が車幅方向内側へ侵入してくるが、この車体構造では、シート取付ブラケット32の結合片35がロッカ12の上面に結合されているため、シート取付ブラケット32によってロッカ12の上部を直接的に支持することができる。しかも、シート取付ブラケット32の上壁34は、車体前後方向視で真直状に形成されてロッカ12の上面から車幅方向内側(ロッカ12の上部が侵入してくる側)へ向けて直線的に延出されているため、ロッカ12の上部から入力される荷重に対して高い剛性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関し、特に、車体のフロアパネル及びロッカに結合され、車両用シートが取り付けられるシート取付ブラケットを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体構造では、シート取付ブラケットの下位置でフロアパネルの下面に補強部材を配設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この補強部材はロッカとサイドメンバを連結しており、これにより、側面衝突時における車室内側(車幅方向内側)へのロッカの侵入量などを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−63620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車体構造では、新たに補強部材を追加して車体を補強する構成であるため、補強部材の追加によって車体のコストや重量が増加する等の問題がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、補強部材を追加することなく、側面衝突時における車幅方向内側へのロッカの侵入量を低減可能な自動車の車体構造を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る自動車の車体構造は、車体のフロアパネル及びロッカに結合されたシート取付ブラケットを有する自動車の車体構造であって、前記シート取付ブラケットは、車体前後方向視で真直状に形成され、前記ロッカの上面側から車幅方向内側へ向けて直線的に延出されると共に、車両用シートが連結される上壁と、前記上壁の車幅方向外側端部に設けられ、前記ロッカの上面側に結合された結合片と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の自動車の車体構造では、車体のフロアパネル及びロッカに結合されたシート取付ブラケットに車両用シートが取り付けられる。ここで、自動車の側面衝突時には、一般にロッカが捩れてロッカの上部が車幅方向内側へ侵入してくるが、この車体構造では、シート取付ブラケットの上壁の車幅方向外側端部に設けられた結合片がロッカの上面側に結合されているため、シート取付ブラケットによってロッカの上部を直接的に支持することができる。しかも、シート取付ブラケットの上壁は、車体前後方向視で真直状(直線状)に形成されてロッカの上面側から車幅方向内側(ロッカの上部が侵入してくる側)へ向けて直線的に延出されているため、ロッカの上部から入力される荷重に対して高い剛性を発揮する。これにより、ロッカの変形を抑制することができるため、補強部材を追加することなく、ロッカの侵入量を低減することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る自動車の車体構造は、請求項1に記載の自動車の車体構造において、前記上壁は、前記ロッカの上面側から斜め下向きに延出されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の自動車の車体構造では、シート取付ブラケットの上壁が、ロッカの上面側から車幅方向内側へ向けて斜め下向き(すなわち側面衝突によってロッカが捩れる際のロッカ上部の変位方向)に延出されている。これにより、ロッカ上部の変位を上壁によって良好に抑えることができるため、ロッカの侵入量を効果的に低減することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る自動車の車体構造は、請求項2に記載の自動車の車体構造において、前記上壁は、前記ロッカの図心を中心とし、前記ロッカの上面側と前記結合片との結合部を通る仮想円における前記結合部での接線に沿って延在していることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の自動車の車体構造では、シート取付ブラケットの上壁が、上述の接線(すなわちロッカが図心周りに捩れる際にロッカから上壁に入力される荷重の入力方向)に沿って延在している。これにより、当該荷重を上壁によって良好に支持することができるため、ロッカの侵入量を一層効果的に低減することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る自動車の車体構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の自動車の車体構造において、前記シート取付ブラケットは、上端が前記上壁に一体的に接続され、下端部が前記フロアパネルに結合された第1側壁と、上端が前記上壁に一体的に接続され、下端部が前記フロアパネルに結合されると共に、前記第1側壁に隣接する第2側壁と、前記第1側壁及び前記第2側壁を、機械的な干渉により連結する連結手段と、を有することを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の自動車の車体構造では、シート取付ブラケットの第1側壁と第2側壁とが機械的な干渉により連結されている。これにより、車両用シートから入力される荷重などに対するシート取付ブラケットの剛性を向上させることができる。また、シート取付ブラケットが板金の曲げ加工によって形成される場合に、第1側壁及び第2側壁と上壁との各接続部(屈曲部)に所謂スプリングバックが生じることを防止できる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る自動車の車体構造は、請求項4に記載の自動車の車体構造において、前記連結手段は、前記第1側壁及び前記第2側壁の一方から延出され、前記第1側壁及び前記第2側壁の他方の表面に当接する当接片を有し、前記他方は、前記一方が前記上壁との接続部を中心として前記他方から離間するときの前記当接片の移動軌跡内に一部が配置されるように前記接続部に対して傾斜していることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の自動車の車体構造では、シート取付ブラケットの第1側壁及び第2側壁の一方から延出された当接片が、第1側壁及び第2側壁の他方の表面に当接している。この他方の側壁は、一方の側壁が上壁との接続部を中心として他方の壁から離間するときの当接片の移動軌跡内に一部が配置されるように上記接続部に対して傾斜している。このため、当接片が上記一部に引っ掛かることで上記離間が阻止される。これにより、第1側壁及び第2側壁を連結することができるため、連結手段を簡単な構成にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る自動車の車体構造では、補強部材を追加することなく、側面衝突時における車幅方向内側へのロッカの侵入量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車の車体構造が適用されて構成された車体の部分的な構成を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1に示されるシート取付ブラケットの斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の比較例に係る車体の部分的な構成を示す図2に対応する断面図である。
【図5】側面衝突のCAE解析結果であり、車体側部の変形状態を示す縦断面図である。
【図6】側面衝突時のCAE解析結果であり、(A)は比較例に係る車体の変形状態を示す斜視図であり、(B)は本第1実施形態に係る車体の変形状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る自動車の車体構造の構成部材であるシート取付ブラケットの斜視図である。
【図8】図7に示されるシート取付ブラケットを車幅方向から見た側面図である。
【図9】図7に示されるシート取付ブラケットを車体前後方向から見た側面図である。
【図10】図7に示されるシート取付ブラケットの部分的な構成を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、図1〜図6を参照して本発明の第1実施形態に係る自動車の車体構造について説明する。なお、図中矢印Frは車体前方向を示し、矢印Upは車体上方向を示し、矢印Rhは車体右方向を示している。
【0019】
図1に示されるように、本第1実施形態に係る車体10では、車幅方向両端下部にロッカ12が配設されている(なお、図1では車体左側のロッカ12の図示を省略してある)。ロッカ12は、車体前後方向に沿って延在しており、ロッカインナパネル14とロッカアウタパネル15とを備えている。図2に示されるように、ロッカインナパネル14とロッカアウタパネル15は、共に断面ハット形に形成されており、上下のフランジ部が結合されることで閉断面を構成している。
【0020】
また、図2に示されるように、ロッカアウタパネル15の車幅方向外側には、車体10のBピラー16を構成するBピラーアウタパネル17が配置されている(図1では図示省略)。Bピラーアウタパネル17は、ロッカ12の車体前後方向中央部付近に配置されており、図示しないBピラーインナパネルと共に閉断面を構成している。このBピラーアウタパネル17は、下端部がロッカアウタパネル15の下端部に結合されている。
【0021】
ロッカインナパネル14の車幅方向内側には、車室の床部を構成するフロントフロアパネル18が設けられている。フロントフロアパネル18の車幅方向中央部にはフロアトンネル部18Aが設けられており、フロアトンネル部18Aの車幅方向両側には平坦なフロア一般部18Bが設けられている。フロア一般部18Bの車幅方向外側端部にはフランジ部20が設けられており、このフランジ部20はロッカインナパネル14の縦壁14Aの下端側に結合されている。
【0022】
また、図1に示されるように、フロア一般部18Bの前端側には、フロントフロア第1クロスメンバ22が設けられている。フロントフロア第1クロスメンバ22は、下端部がフロア一般部18Bの上面に結合され、車幅方向外側端部がロッカインナパネル14に結合され、車幅方向内側端部がフロアトンネル部18Aに結合されている。これにより、フロントフロア第1クロスメンバ22によってロッカ12とフロアトンネル部18Aとが連結されている。なお、本実施形態に係る車体10は、フロントフロア第2クロスメンバが省略された構成になっている。
【0023】
さらに、フロア一般部18Bの上方には、図示しない車両用シートを構成する左右一対のシートレール24、26が車体前後方向に沿って配置されている。車幅方向内側のシートレール24は、前端部がフロントフロア第1クロスメンバ22の上壁に固定されており、後端部がブラケット28を介してフロアパネル18に固定されている。
【0024】
また、車幅方向外側に配置されたシートレール26は、前端部がフロントフロア第1クロスメンバ22の上壁に固定されており、後端部がシートレール付けブラケット30に固定されている。このシートレール付けブラケット30は、図2に示されるように、シートレール26の後端部から車幅方向外側へ向けて延出されており、車幅方向外側端部がシート取付ブラケット32に連結されている。
【0025】
シート取付ブラケット32は、板金材料が折り曲げ加工されることで形成されたものであり、図3に示されるように、上壁34、内方壁36、前壁38及び後壁40を備えている。上壁34の車幅方向外側端部には、平板状の結合片35が一体的に設けられている。この結合片35は、図2に示されるように、ロッカインナパネル14の上壁14Bの上面に板厚方向に重合しており、スポット溶接によって上壁14Bに結合されている。
【0026】
また、シート取付ブラケット32の上壁34は、平板状に形成されており、ロッカインナパネル14の上壁14Bに対して略平行な状態で結合片35から車幅方向内側へ延出されている。なお、本第1実施形態では、結合片35と上壁34との間には屈曲部が設けられておらず、結合片35と上壁34とが同一平面上に配置されているが、その他の実施形態では結合片35と上壁34との間に屈曲部が設けられた構成にしてもよい。
【0027】
上壁34の上面の中央部には、シートレール付けブラケット30の車幅方向外側端部が当接しており、上壁34の中央部には、シートレール付けブラケット30を取り付けるための円形のボルト孔42(貫通孔)が形成されている。このボルト孔42には、シートレール付けブラケット30の車幅方向外側端部を貫通したボルト44が貫通しており、このボルト44は上壁34の下面に溶着されたナット46に螺合している。これにより、シートレール付けブラケット30が上壁34(シート取付ブラケット32)に締結されている。
【0028】
一方、内方壁36は、上端が上壁34の車幅方向内側端部に一体的に接続されており、下端部に設けられたフランジ部36Aがフロア一般部18Bの上面にスポット溶接により結合されている。また、前壁38は、上端が上壁34の車体前方側端部に一体的に接続されており、下端部に設けられたフランジ部38Aがフロア一般部18Bの上面にスポット溶接により結合されている。また、後壁40は、上端が上壁34の車体後方側端部に一体的に接続されており、下端部に設けられたフランジ部40Aがフロア一般部18Bの上面にスポット溶接により結合されている。
【0029】
前壁38及び後壁40の車幅方向外側端部には、それぞれフランジ部38B、40Bが設けられている。これらのフランジ部38B、40Bは、ロッカインナパネル14の縦壁14Aにスポット溶接により結合されている。
【0030】
また、前壁38及び後壁40の車幅方向内側端部には、それぞれフランジ部38C、40Cが設けられている。これらのフランジ部38C、40Cは、内方壁36の車幅方向外側表面にスポット溶接により結合されている。なお、図3において×印が付されている部分がスポット溶接の打点である。
【0031】
ここで、本第1実施形態では、図2に示されるように、シート取付ブラケット32の上壁34は、車体前後方向視で真直状(直線状)に形成されており、結合片35(ロッカ12の上面)から車幅方向内側へ向けて斜め下向きに直線的に延出されている。また、本第1実施形態では、上壁34は、ロッカ12の図心Xを中心とし、ロッカインナパネル14の上面と結合片35との結合部Sを通る仮想円C1における結合部Sでの接線に沿うように延在している。
【0032】
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
本第1実施形態では、車体10が側面衝突をすることで、Bピラー16に車幅方向内側(車室内側)へ向いた荷重F1(図2参照)が入力されると、ロッカ12の上部側にはBピラーアウタパネル17及び図示しないBピラーインナパネル等を介して車室内側へ向いた荷重F2が入力される。このため、ロッカ12が捩れてロッカ12の上部が車幅方向内側へ侵入してくる。この場合、一般にロッカインナパネル14の上部の稜線L1が最も大きく変形し、この稜線L1の車室内側への侵入量が最も大きくなるが、本第1実施形態では、シート取付ブラケット32の結合片35がロッカインナパネル14の上壁14Bの上面に結合されているため、ロッカ12の上部がシート取付ブラケット32によって直接的に支持される。
【0034】
しかも、上壁34は、車体前後方向視で真直状に形成されており、結合片35から車幅方向内側(ロッカ12の上部が侵入してくる側)へ向けて直線的に延出されているため、ロッカ12の上部から入力される荷重に対して高い剛性を発揮する。これにより、稜線L1の車室内側への侵入量を低減することができるため、ロッカ12の捩れ(転び)を抑制することができ、結果としてBピラー16の車室内側への侵入量を低減することができる。これにより、ロッカ12の車室内側への侵入量を低減することができる。
【0035】
すなわち、図4に示されるシート取付ブラケット100(比較例)のように、上壁102がロッカ12の上面側から直線的に延出されていない場合には、シート取付ブラケット100によって稜線L1を良好に支持することができない。このため、図4に二点鎖線で示されるように、ロッカ12の捩れ(転び)が発生することで、Bピラー16の車室内側への侵入量が増加し、結果としてロッカ12の車室内側への侵入量が増加する。
【0036】
なお、図5には、側面衝突時の車体の変形状態がCAE解析(Computer Aided Engineering)による縦断面図にて示されている。この図5では、本第1実施形態に係る車体10の変形状態が実線で示されており、上記比較例に係る車体106の変形状態が二点鎖線で示されている。この図5から、本第1実施形態に係る車体10では、比較例に係る車体106に比べて、Bピラーの侵入量及びロッカの侵入量が共に減少していることが分かる。
【0037】
また、図6には、側面衝突後50ms時の車体側部の変形量(歪み量)がCAE解析結果による斜視図にて示されている。この図6では(A)が上記比較例に係る車体106であり、(B)が本第1実施形態に係る車体10である。この図6から、本第1実施形態に係る車体10では、比較例に係る車体106に比べてロッカ12の変形量(歪み量)が大幅に低減されることが分かる(図6(B)の一点鎖線で囲まれた領域参照)。
【0038】
このように、本第1実施形態では、フロントフロア第2クロスメンバが省略された車体10であっても、シート取付ブラケット32によってロッカ12の上部(稜線L1)を直接的に支持することにより、側面衝突時におけるロッカ12の変形量を大幅に減少させることができる(ロッカ12の転びを防止することができる)。これにより、補強部材を追加することなく、Bピラー16及びロッカ12の車室内側への侵入量を大幅に低減することができる。したがって、車体の部品点数、コスト、及び重量を増加させることなく、車体の衝突性能を向上させることができる。
【0039】
しかも、本第1実施形態では、シート取付ブラケット32の上壁34が、結合片35から車幅方向内側へ向けて斜め下向き(すなわち側面衝突によってロッカ12が捩れる際の稜線L1の変位方向)に延出されている。これにより、稜線L1の変位を上壁34によって良好に抑えることができる。しかも、上壁34は、ロッカ12の図心Xを中心とし、ロッカ12の上面と結合片35との結合部Sを通る仮想円C1における結合部Sでの接線に沿うように延在しており、ロッカ12が図心X周りに捩れる際に上壁34に入力される荷重に対して高い剛性を発揮する。これにより、当該荷重を上壁34によって良好に支持することができるため、ロッカ12の侵入量を一層効果的に低減することができる。
【0040】
なお、ロッカ12の捩れ中心の位置は、必ずしもロッカ12の図心Xの位置になるとは限らず、側面衝突の態様や車体の特性等によって様々に変化する。したがって、上壁34の延出方向は上記実施形態の構成に限られるものではなく、適宜設定変更することが好ましいが、ロッカ12の上部の稜線L1は車幅方向内側へ向けて斜め下向きに侵入してくる場合が多いため、上壁34をロッカ12の上面側から車幅方向内側へ向けて斜め下向きに延出させることが好ましい。
<第2の実施形態>
次に、図7〜図10を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0041】
図7には、本第2実施形態に係るシート取付ブラケット50が斜視図にて示されている。このシート取付ブラケット50は、前記第1の実施形態に係るシート取付ブラケット32と基本的に同様の構成とされている。但し、このシート取付ブラケット50では、前壁38及び後壁40が車体下方側へ向かうに従い互いに離間するように傾斜している。このため、内方壁36(第1側壁)と上壁34との接続部(屈曲部)に形成された稜線L2と、後壁40(第2側壁)の表面(車両後方側の面)とのなす角θが90度以上に設定されている。なお、この実施形態では、稜線L2と前壁38の表面(車両前方側の面)とのなす角もθと同じ角度に設定されている。
【0042】
また、図7に示されるように、内方壁36は、車幅方向視で台形状に形成されており、内方壁36の車体前方側端部は前壁38の傾斜に沿うように傾斜している。また、内方壁36の車体後方側端部は後壁40の傾斜に沿うように傾斜しており、内方壁36の車体後方側端部の下端側には、板状の当接片36Bが設けられている。この当接片36Bは、基端部が屈曲されて車幅方向外側へ延出されており、後壁40の表面(車体後方側の面)に板厚方向に当接している。この当接片36Bの先端は、図9に示されるように、稜線L2よりも車幅方向外側(図9では右側)に配置されており、当接片36Bの先端には上下に角部が設けられている。なお、以下の説明では、当接片36Bの先端の上側の角部を「頂点E」という。
【0043】
ここで、上記構成のシート取付ブラケット50では、内方壁36が稜線L2(上壁34との接続部)を回転中心として後壁40から離間しようとすると、当接片36Bの頂点Eが稜線L2を回転中心として回転する(図9の回転軌跡C2参照)。この場合、頂点Eは、図9に矢印Dで示されるように一旦下向きに回転するようになっている。
【0044】
次に、本第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
本第2実施形態では、シート取付ブラケット50の上壁34に対して図示しない車両用シートから荷重が入力されると(図10の矢印F3参照)、内方壁36が稜線L2を回転中心として図10の矢印A方向へ変形しようとする(内方壁36が前壁38及び後壁40から離間しようとする)。この場合、当接片36Bの頂点Eは、稜線L2を回転中心として下向きに回転しようとするが(図9の矢印D参照)、このシート取付ブラケット50では、稜線L2と後壁40の表面とのなす角θが90度以上に設定されているため、頂点Eの回転方向には後壁40の一部が存在している。このため、頂点Eが後壁40の表面と干渉し(表面に引っ掛かり)、内方壁36の上記離間が阻止される。これにより、内方壁36の変形が抑制され、内方壁36と上壁34との断面の開き(図10に示される角度δの増加)が抑制される。これにより、車両用シートからの入力に対するシート取付ブラケット50の剛性を向上させることができる。
【0046】
なお、内方壁36の変形を抑制するものとしては、内方壁36とフランジ部38C、40Cとのスポット溶接の打点(図7において×印が付されている部分)があるが、これらの打点には剥離方向の荷重が入力されるため、内方壁36の変形を充分に防止することが困難である。この点、本実施形態では、上述の如き後壁40と当接片36Bとの機械的な干渉により、内方壁36の変形を抑制できるため、シート取付ブラケット50の剛性を充分に向上させることができる。そして、このようにシート取付ブラケット50の剛性を向上させることができるため、側面衝突に対する車体の衝突性能も同時に向上させることができる。
【0047】
また、このシート取付ブラケット50では、後壁40と当接片36Bとの機械的な干渉により、内方壁36と後壁40との離間が阻止されるため、前壁38及び後壁40の各フランジ部38C、40Cと内方壁36とをスポット溶接する際の作業性を向上させることができる。つまり、シート取付ブラケット50が板金材料の折り曲げ加工によって生産される場合、内方壁36は稜線L2におけるスプリングバックの発生により前壁38及び後壁40から離間しようとするが、このシート取付ブラケット50では、当接片36Bと後壁40との機械的な干渉によって当該離間を阻止することができる。したがって、フランジ部38C、40Cと内方壁36とをスポット溶接する際に、上記離間を阻止するための形状保持用の治具などを用いる必要がなく、これにより溶接作業を容易なものにすることができる。また、上述の如き形状保持用の治具を廃止することができるため、生産コストを低減することができる。
【0048】
なお、上記第2実施形態では、当接片36Bが内方壁36の車体後方側端部に1つだけ設けられた構成にしたが、本発明はこれに限らず、図11に示されるように、内方壁36の車体前方側端部にも当接片36Cを設け、当該当接片36Cを第3側壁としての前壁38の表面(車体前方側の面)に当接させる構成にしてもよい。この場合、当接片36Cと前壁38との機械的な干渉により、内方壁36と前壁38とを連結させることができるため、シート取付ブラケットの剛性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 車体
12 ロッカ
18 フロアパネル
32 シート取付ブラケット
34 上壁
35 結合片
36 内方壁(第1側壁)
36B 当接片
40 後壁(第2側壁)
X ロッカの図心
S ロッカの上面側と結合片との結合部
C1 仮想円
L2 稜線(上壁と一方の側壁との接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアパネル及びロッカに結合されたシート取付ブラケットを有する自動車の車体構造であって、
前記シート取付ブラケットは、
車体前後方向視で真直状に形成され、前記ロッカの上面側から車幅方向内側へ向けて直線的に延出されると共に、車両用シートが連結される上壁と、
前記上壁の車幅方向外側端部に設けられ、前記ロッカの上面側に結合された結合片と、
を有することを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
前記上壁は、前記ロッカの上面側から斜め下向きに延出されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体構造。
【請求項3】
前記上壁は、前記ロッカの図心を中心とし、前記ロッカの上面側と前記結合片との結合部を通る仮想円における前記結合部での接線に沿って延在していることを特徴とする請求項2に記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記シート取付ブラケットは、上端が前記上壁に一体的に接続され、下端部が前記フロアパネルに結合された第1側壁と、上端が前記上壁に一体的に接続され、下端部が前記フロアパネルに結合されると共に、前記第1側壁に隣接する第2側壁と、前記第1側壁及び前記第2側壁を、機械的な干渉により連結する連結手段と、を有することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項5】
前記連結手段は、前記第1側壁及び前記第2側壁の一方から延出され、前記第1側壁及び前記第2側壁の他方の表面に当接する当接片を有し、前記他方は、前記一方が前記上壁との接続部を中心として前記他方から離間するときの前記当接片の移動軌跡内に一部が配置されるように前記接続部に対して傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−202118(P2010−202118A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52076(P2009−52076)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】