説明

自動車ドアのシール構造

【課題】サッシュドアを使用した自動車のドア部の厚さを薄くして室内スペースを大きくすることが可能なドアのシール構造を提供する。
【解決手段】ドアはサッシュ部71とドア本体部72とからなるサッシュドア70であり、サッシュ部71は外面板部14とフレーム部15とからなり、フレーム部15には、中空シール部20と取付部22とを有するドア側ウェザーストリップ26が配設されており、ボデー11は、段差とフランジ12とを備えており、段差を構成する段差底面13bには外面板部14の先端部と弾接してシールする中空シール部36と取付部38とを有する外面側ウェザーストリップ40が配設されており、フランジ12にはフレーム部15に弾接してシールする中空シール部30と取付部32とを有する内面側ウェザーストリップ34が配設されている自動車ドアのシール構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアのシール構造に関するものであり、より具体的にはサッシュドアを使用した自動車ドアのシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアとしては、プレス成形により形成されたプレスドアと1枚の鋼板を折り畳んで形成したサッシュ部を有するサッシュドアとが一般的に使用されている。
【0003】
サッシュドアを使用した自動車ドアの構造を図2〜図5により示した。サッシュドア70は、ドア本体部72とウィンドガラス73の上部周囲に形成され、ウィンド閉鎖時にはウィンドガラス73の上端部と当接すると同時にドア閉鎖時にはウェザーストリップを介してボデーと当接するサッシュ部71とから構成されており、サッシュ部71は、一般的にはドア本体部72に溶接により固定されている。
【0004】
図4には、従来のシール構造を図2のドア部上部位置のA−A断面にて示した。サッシュ部71は、1枚の鋼板が所定形状に折り重ねられて形成されており、自動車の外面を構成する外面板部14と該外面板部から車内方向に立設されたフレーム部15とから構成されている。外面板部14は、ボデー11側に延出した第1リブとフレーム部15に対して第1リブと反対側に延出した第2リブ18にて所定の外面を構成するように形成されている。フレーム部15の車内側端部は中空部16を形成し、該中空部16、フレーム部15及び第2リブ18とで形成される凹部がサッシュ部71においてウィンドガラス73の端部を収容可能に構成されている。
【0005】
ボデー11は、ドア部においてサッシュ部14の第1リブに対向する段差壁面69と段差底面68とからなる段差を有し、さらにサッシュ部のフレーム部の車内側端部に形成された中空部16の室内側端部に対向するフランジ12を備えている。
【0006】
サッシュドアを使用した場合の従来のドアのシール構造は、特許文献1において公知であり、図4には特許文献1の図3と同様な構造のシール構造を示した。即ち、サッシュ部のフレーム部15の外面板部14の車内面近傍に取付部64にて取り付けられ、取付部64、ボデー11に設けられた段差底面68に弾接する中空シール部66、中空シール部とは別に取付部64から中空シール部66と同方向に立設され、上記段差の壁面69に弾接するシールリップ60、及びシールリップの側部に立設され、第1リブの裏面に弾接する小リップ62とを有するドア側ウェザーストリップ67、並びにボデー11のドア部の車内側のフランジ12に取付部32にて装着され、中空シール部30を有するボデー内面側ウェザーストリップ34の2種のウェザーストリップを使用してドア部のシールが行われている。特許文献1のシールリップは、図4に例示した構成のウェザーストリップの中空シール部に設けられたリブにより支持された構造を有するものである。
【0007】
上記の従来のサッシュドアを使用した場合のドア部のシール構造におけるドア本体部72の周囲のシール構造を、図2のB−B断面にて図5に示した。この部分においては、ドア27には段差壁面28aを有するドア端面28bが形成されており、ボデー11には段差底面68を有する段差とリブ12が形成されている。ドア本体部の周囲は直接降雨の水滴が当たらず、ドア上部と比較して接触する水量も少ないので比較的簡便なシールで足りる。即ちドア本体部の周囲においては、ドア27にはドア端面28bの段差壁面28a近傍に取付部22、中空シール部20及び中空シール部20の側面部に形成された小リップ24を有するドア側ウェザーストリップが装着され、リブ12には、図4の内面側ウェザーストリップ34と同じ断面形状のボデー内面側ウェザーストリップ34が装着され、これらの2種のウェザーストリップにてドア部のシールが行われている。
【0008】
このような従来のドア側ウェザーストリップは、サッシュ部とドア本体部とで断面形状が異なるために、図3に示したように2箇所の型成形部を形成することにより、環状に形成されていた。即ち、図4のサッシュ部のシールに使用される断面形状を有するドア側ウェザーストリップ50(リアドアでは55)と図5に示したドア本体部のシールに使用されるドア側ウェザーストリップ52(リアドアでは56)とが型成形部53、54(リアドアでは57、58)にて接続されて環状に形成されている。
【特許文献1】特開平10−305729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1並びに特許文献1と同様な構成の図4に示したシール構造によれば、サッシュ部のシールに使用するドア側ウェザーストリップ67は、ルーフ部から多量の雨水が流れ落ちた場合であってもこれをシールし、さらには車両走行時の風圧、強い風を伴う降雨時においても十分なシール効果が得られることが求められるために、中空シール部66だけでは十分ではなく、中空シール部66とは別に取付部64より立設したシールリップ60によるシールを欠かすことができないものであった。即ち、ドア側ウェザーストリップは、中空シール部に加えて取付部からシールリップを立設する必要が有り、このためウェザーストリップの取付部方向の幅xが大きなものとなり、ドアシール部の幅W1を小さくして室内スペースを大きくすることを求める要請に対応するには限界があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、サッシュドアを使用した自動車のドア部の厚さを薄くして室内スペースを大きくすることが可能なドアのシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、自動車のドアとボデーの間にウェザーストリップを配設した自動車ドアのシール構造であって、
前記ドアはサッシュ部とドア本体部とからなるサッシュドアであり、
前記サッシュ部は外面板部と前記外面板部の車内方向に立設されたフレーム部とからなり、
前記サッシュドアの前記フレーム部には、中空シール部と取付部とを有するドア側ウェザーストリップが配設されており、
前記ボデーは、サッシュ部の前記外面板部との対向部に段差を、サッシュ部の前記フレーム部の車内側端部との対向部にフランジを、それぞれ備えており、
前記段差を構成する段差底面には前記外面板部の先端部と弾接してシールする中空シール部と取付部とを有する外面側ウェザーストリップが配設されており、
前記フランジには前記フレーム部に弾接してシールする中空シール部と取付部とを有する内面側ウェザーストリップが配設されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成のドアのシール構造は、ドアの厚さを薄くして室内スペースを大きくすることが可能な自動車ドアのシール構造である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1には、本発明のドアシール構造の好適な態様を図2のA−A部に相当する部位の断面図にて示した。ボデー11のドア部の開口端面部は、車外側に段差壁面13aと段差底面13bにて構成される段差と車内側のフランジ12を有しており、サッシュドアのサッシュ部71は、従来のサッシュ部と同様に1枚の鋼板が折り重ねられた構造を有し、自動車の外面形状を構成する外面板部14と該外面板部から車内方向に立設されたフレーム部15とから構成されている。外面板部14は、ボデー11側に延出した第1リブ14aとフレーム部15に対して第1リブと反対側に延出した第2リブ18にて所定形状の外面を構成するように形成されている。またサッシュ部71のフレーム部15の車内側端部は中空部16を形成し、該中空部16、フレーム部15及び第2リブ18とで形成される凹部がウィンドガラス73の端部を収容可能に構成されている。サッシュ部の第1リブ14aはボデー11の段差底面13bに対向し、中空部16の車内側端部は、ボデー11のリブ12に対向するように形成されている。
【0014】
本発明の自動車ドアのシール構造においては、サッシュ部に装着されたドア側ウェザーストリップ、ボデーに装着された外面側ウェザーストリップ及び内面側ウェザーストリップの3種のウェザーストリップを使用する。
【0015】
サッシュ部のフレーム部15の外面板部14の車内側近傍には、取付部22、中空シール部20及び該中空シール部の側面位置に小リップ24が形成された断面形状を有するドア側ウェザーストリップ26が、フレーム部15に装着されている。ドア側ウェザーストリップ26の中空シール部は、ドア閉鎖時にはボデー11のドア部の段差底部13bに、小リップ22はサッシュ部の外面板部14の車内面に、それぞれ弾接してシール作用を行うように構成されている。
【0016】
ボデー11には、ドア部に形成された段差の段差底面13bの段差壁面13a側に取付部38と中空シール部36とを備えた外面側ウェザーストリップ40、及びボデー11のドア部の車内側に形成されたリブ12には、凹状取付部32と中空シール部30とを備え、凹状取付部をリブ12に嵌着することによって装着された内面側ウェザーストリップ34とが設けられており、外面側ウェザーストリップ40の中空シール部36は、サッシュ部の外面板部14の第1リブ14aの先端部と弾接してシール作用を奏し、内面側ウェザーストリップ34の中空シール部30は、サッシュ部のフレーム部に形成された中空部の車内側端部16bと弾接してシール作用を奏する。
【0017】
本発明のドアのシール構造に使用する上記ドア側ウェザーストリップ26は、シールリップが不要である。取付部から中空シール部と別に立設するシールリップをなくすることによって、ウェザーストリップの取付部方向の幅を狭くすることができ、その結果ドア部の厚さを低減することによって車内空間を大きくすることができる。
【0018】
ドア側ウェザーストリップ26は、サッシュ部のフレーム部15に固定されるものであり、フレーム部15の反対面は、ウィンドガラス(図示せず)を受け入れる凹部であるため、クリップを使用して固定することはできず、接着剤にて固定される。サッシュ部を構成する鋼板の端部を図のように折り曲げてドア側ウェザーストリップの取付部を収容する取付金具部を形成することは好適な態様である。
【0019】
ボデー11に装着される外面側ウェザーストリップ40は、サッシュ部の第1リブ14の先端部と弾接してシール効果を奏するものであり、簡便な形状でよい。図1に示した外面側ウェザーストリップ40は、単純に取付部38と中空シール部36のみで構成されている。外面側ウェザーストリップ40はボデー11に装着されるものであり、図1に例示のようにクリップで装着することが工程的にも簡便であり、好ましい。
【0020】
外面側ウェザーストリップ40は、ドア部の全周に配設する必要はなく、ルーフ部から多量の雨水が流れ落ちた場合であってもこれをシールし、さらには車両走行時の風圧、強い風を伴う降雨時においても十分なシール効果が得られればよいので、図2に破線Cにて示したドアの上部位置に配設することが好ましい。
【0021】
本発明のシール構造においては、サッシュドアのサッシュ部71を構成する第1リブは、外面側ウェザーストリップを装着する必要が有り、図4に示された例より長く形成される。
【0022】
本発明のドアのシール構造においては、ドア本体部の周囲のシール構造は、従来と同じであればよく、図5に例示した構成を使用することができる。即ち、ドア27には段差壁面28aを有するドア端面28bが形成されており、ボデー11には段差底面68を有する段差とリブ12が形成されている。ドア本体部の周囲においては、ドア27にはドア端面28bの段差壁面28a近傍に取付部22、中空シール部20及び中空シール部20の側面部に形成された小リップ24を有するドア側ウェザーストリップとリブ12には、図4と同じ断面形状の内面側ウェザーストリップ34が装着されている。
【0023】
本発明の自動車ドアのシール構造においては、ドア側ウェザーストリップ26は、図5に示したドア側ウェザーストリップと同じ断面形状を有するものであることが好ましい。ドアの全周にわたって同一断面形状とすることにより、コーナー部1箇所にて型成形部により接合して環状のウェザーストリップとすることができ、従来技術と比較して型成形部の数、即ち型成形部形成工程の工数を低減することができ、低コストにてウェザーストリップを製造することができる。型成形部の数の低減は、ドア本体部のドア側ウェザーストリップ52とサッシュ部におけるドア側ウェザーストリップの断面形状を同一とすることにより、図3に示したように型成形部54を省略することができ、1箇所の型成形部53のみで環状のウェザーストリップとすることができる。ドア側ウェザーストリップは、サッシュ部においてはクリップによる装着はできないが、ドア本体部においては図5に示したようにクリップを使用して装着することが好ましい。即ち、ドア側ウェザーストリップは、サッシュ部においては接着剤により取り付けられ、ドア本体部においてはクリップにて装着される構成となる。
【0024】
上述の発明においては、図3に示した環状に形成されたウェザーストリップにおけるコーナー部は、コーナー部53(リアドアでは57)は上述のように型成形部とするが、他の部分は、くせ付け加工により形成することが工程上簡便であり、好ましい。
【0025】
ボデー側リブ(図4、図5)に装着するボデー内部側ウェザーストリップも、図3に示したのと同様に型成形部1箇所を設け、その他のコーナー部はくせ付け加工することによって環状に形成することが好ましい。
【0026】
本発明の自動車ドアのシール構造に使用するウェザーストリップを形成する材料は、公知の材料を使用することができる。具体的には、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)等の加硫ゴム、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが使用可能である。加硫ゴムは、原料ゴム、カーボンブラック、プロセスオイル、加工助剤等に加えて発泡剤、加硫剤、加硫促進剤を含む未加硫ゴム組成物を押出機を使用して所定形状に押し出した後に加熱して発泡、加硫させてウェザーストリップが形成される。
【0027】
熱可塑性エラストマーは、炭酸ガス、水などの非反応性化合物を送入可能な熱可塑性樹脂の押出機を使用し、ホッパーより供給した熱可塑性エラストマーをスクリュー部において加熱溶融し、溶融状態の樹脂に炭酸ガス、水等の発泡剤を加圧供給して混練し、ダイスより押し出すと同時に発泡体とすることによってウェザーストリップが形成される。
【0028】
例えば、図1における外面側ウェザーストリップ40のような簡単な形状で、型成形部を設ける必要がないものは、熱可塑性エラストマーを使用して製造することが好ましい。
【0029】
本発明の自動車ドアのシール構造に使用するウェザーストリップの取付部には、必要に応じて金具を埋設することが好ましく、とりわけ図5に示した内面側ウェザーストリップの取付部にはU字状の金具を埋設することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のドアシール構造の好適な態様を示した断面図
【図2】自動車ドア部の断面位置を示す概略図
【図3】ウェザーストリップの型成形部の位置を示した図
【図4】従来のサッシュドアのサッシュ部のシール構造を示した断面図
【図5】ドア本体部のシール構造を示した断面図
【符号の説明】
【0031】
11 ボデー
12 フランジ
14 外面板部
13b 段差底面
15 フレーム部
20 中空シール部
22 取付部
26 ドア側ウェザーストリップ
30 中空シール部
32 取付部
34 内面側ウェザーストリップ
36 中空シール部
38 取付部
40 外面側ウェザーストリップ
70 サッシュドア
71 サッシュ部
72 ドア本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアとボデーの間にウェザーストリップを配設した自動車ドアのシール構造であって、
前記ドアはサッシュ部とドア本体部とからなるサッシュドアであり、
前記サッシュ部は外面板部と前記外面板部の車内方向に立設されたフレーム部とからなり、
前記サッシュ部の前記フレーム部には、中空シール部と取付部とを有するドア側ウェザーストリップが配設されており、
前記ボデーは、サッシュ部の前記外面板部との対向部に段差を、サッシュ部の前記フレーム部の車内側端部との対向部にフランジを、それぞれ備えており、
前記段差を構成する段差底面には前記外面板部の先端部と弾接してシールする中空シール部と取付部とを有する外面側ウェザーストリップが配設されており、
前記フランジには前記フレーム部に弾接してシールする中空シール部と取付部とを有する内面側ウェザーストリップが配設されていることを特徴とする自動車ドアのシール構造。
【請求項2】
前記ドア側ウェザーストリップは、ドアの全周にわたって同一断面形状を有し、コーナー部1箇所にて型成形部により接合されているものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車ドアのシール構造。
【請求項3】
前記ドア側ウェザーストリップ及び前記外面側ウェザーストリップは、いずれも前記取付部から立設されたシールリップを有しないものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車ドアのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−21613(P2006−21613A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200812(P2004−200812)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】