説明

自動車ドア板にヒンジを取付けるためのシステム

本発明に従い、自動車のドア板にヒンジを取付けるためのシステムは、ヒンジとドア板を締付け固定するための、リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドア板にヒンジを固定するためのシステムと、その取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ヒンジはねじ込みタイプの固定手段又は溶接によってドア板に固定される。
【0003】
例えば、特許文献1では、二つのヒンジがねじ/ナットタイプの固定手段によってトランクリッドに取付けられている。この固定手段はトランクリッドに穴を形成する必要があり、トランクリッド組み立て方法に一つの工程を付加し、かつ腐食に弱いことによってトランクリッドを脆弱化する。更に、トランクリッドに取付けられたヒンジの目に見える部品の外観が満足できるものではない。更に、これらの連結部の機械的強度が制限される。従って、この解決策は製造ラインでの組み立て回数及びコストの制限との関連において満足のゆくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1347135号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自動車のドア板にヒンジを取付けるためのシステムを改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明においては、ヒンジとドア板を締付け固定するリベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部を備えた、自動車のドア板にヒンジを固定するためのシステムが提供される。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、ドア板はトランクリッドである。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、リベット止め及び自己押抜きされた連結部が、積層された三つの要素、すなわちヒンジの旋回支持体、トランクリッドのライナー及びトランクリッドの補強片を締付け固定する。
【0009】
更に、本発明において、ヒンジが旋回支持体を有し、ドア板が少なくとも二つの要素を有する、自動車のドア板にヒンジを取付けるための方法において、旋回支持体、ドア板の第1要素及び第2要素が、その順序で、予成形された支持構造体上に積層され、リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部が、旋回支持体と二つの要素を締付け固定するように、第2要素上に形成されることを特徴とする方法が提供される。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、方法は、ドア板がライナーと補強片を有するトランクリッドであり、ヒンジ、ライナー及び補強片が、その順序で、予成形された支持構造体上に積層され、リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部が、旋回支持体、ライナー及び補強片を締付け固定するように、補強片上に形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、方法は、整列していないリベット止め及び自己押抜きされた三つの連結部が形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の特徴、目的及び効果は、添付図面に照らして非限定的な例として次に述べる詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るトランクリッドに取付けられる二つのヒンジの斜視図である。
【図2】本発明に係る方法を実施するための器具を示す図である。
【図3】本発明に係るリベット止め及び自己押抜きされた連結部(link)の半分の軸方向断面図である。
【図4】本発明に係るリベット止め及び自己押抜きされた連結部を有するヒンジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従って自動車のドア板8にヒンジ4を取付けるためのシステムを製造するために、ヒンジ4とドア板8の少なくとも二つの要素1、2とが積層されて、自己押抜きリベットによって固定される。
【0015】
図1に示すように、トランクリッド8は少なくとも1つの補強片1とライナー2を備えている。二つのヒンジ4はそれぞれ、トランクリッド8に固定するのに適した旋回支持体3を備えている。
【0016】
リベット止めを実施するために、この作業に特に適応した、図2に示すような器具100及び支持構造体20が使用される。
【0017】
この器具100は、リベット止めすべき領域へのアクセス性を改善するために、湾曲し、Cの字を形成している。器具は特に、底部分120と上側部分111を備えている。
【0018】
上側部分はリベット10を配置するためのアクチュエータ111である。このアクチュエータ111は液圧式であってもよいし、電気式であってもよい。アクチュエータ111とリベット10は円形断面を有する円筒形を有していてもよい。リベット10は回転軸線14を有する。
【0019】
底部分120はその自由端に、圧痕(imprint)又はスナップ(snap)120を有する。この圧痕又はスナップは例えば円形断面を有し、アクチュエータ111の延長線上に位置している。
【0020】
リベット止め中、アクチュエータ111の軸線とスナップ122の軸線は、リベット止めすべき部品1、2、3の両側で、リベット10の軸線14と同軸に配置されている。
【0021】
支持構造体20は方法の実施中にいろいろな部品1、2、3を幾何学的に保持するために載せ部(図示せず)を備えている。
【0022】
支持構造体20の底部(図示せず)は、リベット止めされた連結部の自己センタリングを可能にするために底部分120と協働できるように採寸可能である。例えば、底部分は空隙を有することができ、この空隙は、ヒンジ及びトランクリッド8に対して器具100を幾何学的に配置できるように、底部分120の装着を可能にする。従って、リベット止めされた連結部を形成するために器具100の位置決めが簡単化される。
【0023】
支持構造体20の上部(図示せず)は、ヒンジ4とトランクリッド8の異なる要素1、2、3の相対的な幾何学的位置決めのために、このヒンジと要素を受けることができるように採寸可能である。
【0024】
ヒンジ4をトランクリッド8に固定する方法では、旋回支持体3の底面3bと、ライナー2の底面2bと、補強片1の底面1bが、その順序で、予め成形された支持構造体20上に積層される。これらの部品1、2、3の積層は、それらをほぼ平行にするように行われる。そして、ヒンジ4及びドア板8、特に旋回支持体3、ライナー2及び補強片1を締付け固定するように、リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部が補強片1上に形成される。
【0025】
リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部が形成されるが、本発明を理解するために、リベット止め及び自己押抜きされた1個の連結部を、図3と共に説明する。
【0026】
図3に示すように、旋回支持体3とライナー2と補強片1は自己押抜きリベット10によって締付け固定される。このリベット10は中空円筒形の脚部11と頭部12を有する。頭部12は脚部11の方に向いた底壁13を有し、この底壁は補強片1の上面1a及び旋回支持体3の底面3bに対してほぼ平行である。
【0027】
リベット止めの後で、リベット10はまだ、軸線14に関してほぼ回転対称の形を有している。
【0028】
図3に示した実施の形態の場合、補強片1を有するリベット止めされる連結部において、リベット10の頭部12の底壁13と上面1aとの間には、空隙領域6が設けられている。しかし、リベット10の寸法と組み立てるべき部品1、2、3の厚さ次第で、空隙領域6は大きくてもよいし、小さくてもよいし、又は全く存在しなくてもよい。
【0029】
リベット10の頭部12は、その外面が上面1aの延長線上に位置して、補強片1の上壁1aと共にほぼ平らな面を形成するように、補強片1内に押し込まれる。自己押抜きリベット10が設置されるときに、リベットは組み立てるべき部品1、2、3の上部に配置れた部品、すなわち図2、3の補強片1に突き刺さる。リベット10の脚部11は変形すると同時に、側方へ押しつぶされ、組み立てるべき部品1、2、3の変形、特に旋回支持体3の底面3aの変形を生じる。更に、自己押抜きリベット10変形はビードの成形を生じる。脚部11は組み立てるべき部品1、2、3の積層体の下方に位置する部品、すなわち図2、3において旋回支持体3内にフレア加工される。従って、連結部は車両の内部7の方に向いた突出部5を生じる。この突出部5は、特にリベット止めされた連結部を形成するために用いられる上述の自己押抜き技術のおかげで、良好な外観を有する。
【0030】
更に、このような自己押抜き技術は、耐久性が高く、完全防水の組み立て体が得られるという主たる効果を奏する。更に、異なる材料からなりかつ異なる厚さを有する部品を組み立てることができ一方、部品の高い組み立て耐久性を保証し、部品の質の低下を生じない。このような自己押抜き技術は、組み立ての簡単な視覚検査を可能にし、再生可能で信頼性のある組み立て品質を生じる。
【0031】
図4はリベット止めされた連結部の配置を示している。この連結部は応力を分散させて、機械的強度の改善に寄与するために使用可能である。選択されたヒンジ4に依存して、リベット止めされた連結部の数が調節される。例えば、図4ではリベット止め及び自己押抜きされた三つの連結部が形成された。リベット10によって形成された突出部5は一直線上に整列されていない。
【0032】
使用される材料は例えば鋼又はアルミニウムである。部品1、2、3は例えばすべてがアルミニウム製であるかあるいはアルミニウム製又は鋼製のどちらかである。異なる部品1、2、3の材料は同じにする必要はない。
【0033】
従って、選択された配置構造は、ヒンジ4とトランクリッド8の間の良好な機械的強度(引き剥がし、引き裂き及びせん断)を保証することができる。これらの結果を保証するために、リベット止めされた少なくとも二つの連結部が形成される。
【0034】
本発明の方法は実施がきわめて簡単であり、かつ作業時間を低減するやり方を提供する。
【0035】
このような方法の実施の簡単さ及び速度に関連する利点は、アタッチメントの作業による、コストを低減するやり方と、連結部の良好な耐食性を保証するやり方を提供する。
【0036】
更に、この方法は安全であり、ヒンジ4のアタッチメントの落下の危険をかなり制限する。
【0037】
本発明の教えが、ドア、ボンネットのようなドア板の開閉を行う多くのヒンジ及び他のヒンジの各々に適用であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドア板(8)にヒンジ(4)を固定するためのシステムであって、ヒンジ(4)とドア板(8)を締付け固定する、リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
ドア板がトランクリッド(8)である、請求項1記載の固定システム。
【請求項3】
リベット止め及び自己押抜きされた連結部が、積層された三つの要素、すなわちヒンジ(4)の旋回支持体(3)、トランクリッド(8)のライナー(2)及びトランクリッド(8)の補強片(1)を締付け固定する、請求項2記載の固定システム。
【請求項4】
自動車の、少なくとも二つの要素(1、2)を有するドア板(8)に、旋回支持体(3)を有するヒンジ(4)を取付ける方法であって、
−旋回支持体(3)、ドア板(8)の第1要素(2)及び第2要素(1)を、その順序で、予成形された支持構造体(20)上に積層し、
−リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部を、旋回支持体(3)と二つの要素(1、2)を締付け固定するように、第2要素(1)上に導入する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
ドア板(8)が、ライナー(2)と補強片(1)とを有するトランクリッド(8)であること、及び
−ヒンジ(4)、ライナー(2)及び補強片(1)を、その順序で、予成形された支持構造体(20)上に積層し、
−リベット止め及び自己押抜きされた少なくとも二つの連結部を、旋回支持体(3)、ライナー(2)及び補強片(1)を締付け固定するように、補強片(1)上に導入する
ことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
整列していない、リベット止め及び自己押抜きされた三つの連結部を導入することを特徴とする、請求項5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520116(P2010−520116A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552256(P2009−552256)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050365
【国際公開番号】WO2008/125769
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】