説明

自動車ボディ搬送装置

【課題】省スペース化、搬送精度の向上、作業性の向上、装置の小型化・簡素化・軽量化を実現する自動車ボディ搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送経路に沿って平行に敷設された二本のパワーレール130とパワーレール130上を対峙して自走し自動車ボディBを積み込みステーション110から降ろしステーション140に向けて搬送する自動搬送電車180とを備えた自動車ボディ搬送装置において、降ろしステーション140で空になった自動搬送電車180を積み込みステーション110に戻す返送レール190が、パワーレール130の真上に敷設されていることよって前記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車製造ラインなどにおいて自動車ボディを搬送するための装置に関し、さらに詳しくは、装置の小型化、構造の簡素化、軽量化、組立・据付作業の容易化、搬送品質の向上を可能とした自動車ボディ搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車ボディ搬送装置としては、ハンガー式のアームで自動車ボディを支持した吊り下げ搬送機が所定の搬送経路に沿って走行移動する、いわゆるオーバーヘッドタイプ(例えば、特許文献1参照)や、自動車ボディを搭載した搬送パレットが所定の搬送経路に沿って走行移動する、いわゆるフロアタイプ(例えば、特許文献2参照)などがある。さらに搬送方式によりトロリータイプ、自走台車タイプに大別でき、さまざまな搬送条件に対応できるように工夫されている(図1参照)。
【0003】
なかでも、トロリータイプのオーバーヘッドコンベヤは、
(1)頭上の空間を利用することにより、自由なフロアレイアウトが可能になる。
(2)作業者も自由に動き回れるため、作業効率が大幅にアップする。
というような利点を有するため、自動車工場で多用され、日本の自動車産業発展の原動力ともなってきた。
【0004】
トロリータイプのオーバーヘッドコンベヤで自動車ボディを搬送する場合は、所定の積み込みステーションにおいて自動車ボディを吊り下げ搬送機で支持し、この吊り下げ搬送機が自動車ボディを支持したまま、水平循環しているパワーチェーンの直線軌道部によって牽引されて搬送経路に沿って走行移動し、降ろしステーションでワークを降ろすという一連の搬送作業を行っている。
【0005】
吊り下げ搬送機には、図10に示すように、パワーチェーン54により駆動されると共に、パワーレール51に支持案内されるパワートロリ52、53に取り付けられた駆動ドッグ57を、フリーレール55に支持案内されるフリートロリ56に前後に対向して設けた被駆動ドッグ58、58aに係合させることにより、フリートロリ56を搬送経路に沿って移動させることによって、所定の場所でパワーチェーン54に対して脱着可能に支持される、いわゆるパワーアンドフリートロリコンベヤ50がしばしば適用される(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
ここで、図8及び図9は、トロリータイプのオーバーヘッドコンベヤを用いた従来の自動車ボディ搬送装置を示しており、図8が上面図であり、図9が図8の矢視IXにおける正面図である。
【0007】
従来の自動車ボディ搬送装置500は、図8及び図9に示すように、前工程のラインからボディ搬送台車550に載置されて搬送されてきた自動車ボディBが、積み込みステーション510でリフター560によって持ち上げられて吊り下げ搬送機520に支持される。そして、この吊り下げ搬送機520が自動車ボディBを支持したまま、パワーレール530に沿って水平循環しているパワーチェーン(図示はされていない)によって牽引されてパワーレール530の搬送ライン530Aに沿って走行移動し、降ろしステーション540でリフター570によって自動車ボディBを降ろすという一連の搬送作業を行っている。
【0008】
自動車ボディBを降ろした吊り下げ搬送機520は、パワーレール530の戻りライン530Bを通って積み込みステーション510に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−229666号公報
【特許文献2】特開2006−21618号公報
【特許文献3】特開2004−315171号公報(第2頁第2段落、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、従来のトロリータイプのオーバーヘッドコンベヤを用いた自動車ボディ搬送装置500は、前述したような利点を有するものの、次のような課題が指摘されていた。
【0011】
(1)パワーチェーンが水平循環しているため、自動車生産ラインの作業ブースの外に戻りラインを設置するためのスペースを取らなければならないという、省スペース化面での課題があった。
【0012】
(2)オーバーヘッド搬送のため、ボディ下面の作業個所が吊り下げ搬送機の吊り点より一番遠いため、ボディの横揺れが大きく、精度が要求される作業が難しいという、搬送精度面での課題があった。
【0013】
一方で、トロリータイプのオーバーヘッドコンベヤの課題を回避するため搬送方式を自走台車タイプとした場合、搬送経路を挟むように敷設された走行レールを跨ぐように台車を構成するフレームが配設されるため、フレームが作業の邪魔になるという、作業面での課題や、台車を用いることによる装置の大型化・複雑化・重量化という、ハード面での課題があった。
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、省スペース化、搬送精度の向上、作業性の向上、装置の小型化・簡素化・軽量化を実現する自動車ボディ搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、(1)自動車ボディを搬送する自動搬送電車を垂直循環させる、(2)対峙して自走する自動搬送電車を互いに独立させセンサー機構で同期させる、(3)自動車ボディを支持するアームを開閉自在とする、という手法を組み合わせることによって、自動車ボディ搬送装置の省スペース化、搬送精度、装置の小型化・簡素化・軽量化が飛躍的に向上するということを見出し、かかる新規な知見に基づき本発明を完成するに到った。
【0016】
すなわち、本請求項1に係る発明は、搬送経路に沿って平行に敷設された二本のパワーレールと該パワーレール上を対峙して自走し自動車ボディを積み込みステーションから降ろしステーションに向けて搬送する自動搬送電車とを備えた自動車ボディ搬送装置において、前記降ろしステーションで空になった自動搬送電車を積み込みステーションに戻す返送レールが、前記パワーレールの真上に敷設されていることによって、前記課題を解決したものである。
【0017】
また、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る自動車ボディ搬送装置において、前記対峙して自走する自動搬送電車が、互いに独立していると共に同期して走行するための左右同期機構を備えていることによって、前記課題をさらに解決したものである。ここで、「互いに独立している」とは、対峙している一対の自動搬送電車が、フレームなどで固定されておらず、別体であることを意味している。
【0018】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る自動車ボディ搬送装置において、前記自動搬送電車が、自動車ボディを支持する開閉自在のボディ受けアームを備えていることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【0019】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る自動車ボディ搬送装置において、前記自動車ボディがボディ搬送台車に載置されて積み込みステーションまで搬送されてくると共に、前記積み込みステーションで空になったボディ搬送台車が高床式に構築されている作業ブースの下を通って降ろしステーションまで搬送されることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【0020】
そして、本請求項5に係る発明は、請求項4に係る自動車ボディ搬送装置において、前記ボディ搬送台車の搬送機構が、パワーアンドフリートロリコンベヤであることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【0021】
なお、本発明の自動車ボディ搬送装置が適用される「自動車製造ライン」とは、自動車工場などの組み立て工程、溶接工程、塗装工程、乾燥工程などで自動車ボディを搬送するための搬送ラインのことであり、また、「自動車ボディ」とは、自動車ボディの全体もしくはそのシャーシー等の車台ユニットのことである。
【発明の効果】
【0022】
本請求項1に係る発明によれば、搬送経路に沿って平行に敷設された二本のパワーレールとパワーレール上を対峙して自走し自動車ボディを積み込みステーションから降ろしステーションに向けて搬送する自動搬送電車とを備えた自動車ボディ搬送装置において、降ろしステーションで空になった自動搬送電車を積み込みステーションに戻す返送レールが、パワーレールの真上に敷設されていることによって、自動搬送電車が水平循環でなく垂直循環するので、省スペース化が実現できる。
【0023】
また、垂直循環にしたことにより、自動車ボディ搬送装置そのものをユニット化して、自動車工場内に持ち込めるため、据付工事の工期、コストの大幅な削減が実現できる。
【0024】
さらに、自動車ボディがパワーレール上を搬送されるので、横揺れすることなく精度の高い生産工程が実現できる。その結果、これまで人手に頼らざるを得なかった作業をロボットに置き換えることができるので、生産ラインの無人化が実現できる。
加えて、返送レールを降ろしステーションから積み込みステーションに向けて降下するように傾斜を付けることにより、空になった自動搬送電車を電力を使用せずに自重により降ろしステーションから積み込みステーションに戻すことが可能になる。
【0025】
また、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る自動車ボディ搬送装置において、対峙して自走する自動搬送電車が、互いに独立していると共に同期して走行するための左右同期機構を備えていることによって、左右の自動搬送電車を接続するフレームなどが必要ないので、装置の小型化・簡素化・軽量化が実現できると共に空の自動搬送電車の搬送時における作業空間の拡大が実現できる。
【0026】
そして、本請求項3に係る発明によれば、請求項1又は請求項2に係る自動車ボディ搬送装置において、自動搬送電車が、自動車ボディを支持する開閉自在のボディ受けアームを備えていることによって、自動車ボディを搬送していないときにはボディ受けアームを折り畳むことができるので、空の自動搬送電車の搬送時における作業空間の一層の拡大が実現できる。
【0027】
そして、本請求項4に係る発明によれば、請求項1乃至請求項3いずれかに係る自動車ボディ搬送装置において、自動車ボディがボディ搬送台車に載置されて積み込みステーションまで搬送されてくると共に、積み込みステーションで空になったボディ搬送台車が高床式に構築されている作業ブースの下を通って降ろしステーションまで搬送されることによって、段取り時間の削減が図られるので、搬送時間の短縮、すなわち生産ラインの高速化が実現できる。
【0028】
そして、本請求項5に係る発明によれば、請求項4に係る自動車ボディ搬送装置において、ボディ搬送台車の搬送機構が、パワーアンドフリートロリコンベヤであることによって、前後の台車が衝突することがないので、生産ラインの安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】自動車ボディ搬送装置の分類を示す図。
【図2】本実施例の自動車ボディ搬送装置の平面図。
【図3】図2の矢視IIIにおける正面図。
【図4】本実施例の自動車ボディ搬送装置の自動搬送電車の正面図。
【図5】図4に示した自動搬送電車に搭載されるボディ受けアームの正面図。
【図6】図4に示した自動搬送電車に搭載される左右同期機構の構造を示すブロック図。
【図7】図4に示した自動搬送電車に搭載される左右同期機構の別の構造を示す図。
【図8】従来の自動車ボディ搬送装置の上面図。
【図9】図8の矢視IXにおける正面図。
【図10】パワーアンドフリートロリコンベヤの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の自動車ボディ搬送装置は、搬送経路に沿って平行に敷設された二本のパワーレールとパワーレール上を対峙して自走し自動車ボディを積み込みステーションから降ろしステーションに向けて搬送する自動搬送電車とを備えた自動車ボディ搬送装置において、降ろしステーションで空になった自動搬送電車を積み込みステーションに戻す返送レールが、パワーレールの真上に敷設されているものであって、省スペース化、搬送精度の向上、作業性の向上、装置の小型化・簡素化・軽量化を実現するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0031】
例えば、本発明の自動車ボディ搬送装置が設置される場所は、自動車工場内の組立ラインであっても塗装ラインであっても溶接ラインであっても何ら構わない。
【0032】
また、本発明の自動車ボディ搬送装置によって搬送される自動車の車種は、スポーツタイプ車両やバンタイプ車両など、どんな車種であっても何ら構わない。さらに、複数タイプの車両を生産可能な混合生産ラインに適用することも可能である。
【実施例】
【0033】
本発明の一実施例を図2乃至図7に基づいて説明する。
【0034】
ここで、図2は、本実施例の自動車ボディ搬送装置が、2工程のシール作業を行う自動車製造ラインに適用した状態を示す平面図であり、図3は、図2の矢視IIIにおける正面図であり、図4は、本実施例の自動車ボディ搬送装置の自動搬送電車の正面図であり、図5は、図4に示した自動搬送電車に搭載されるボディ受けアームの正面図であり、図6は、図4に示した自動搬送電車に搭載される左右同期機構のブロック図であり、図7は、図4に示した自動搬送電車に搭載される左右同期機構の別の構造を示す図である。
【0035】
(自動車ボディ搬送装置の全体構造)
本実施例の自動車ボディ搬送装置100は、図2及び図3に示すように、自動車工場の自動車生産ラインの搬送経路に沿って平行に敷設された二本のパワーレール130とパワーレール130上を対峙して自走し自動車ボディBを積み込みステーション110から降ろしステーション140に向けて搬送する複数の自動搬送電車180とを備えている。
【0036】
そして、降ろしステーション140で空になった自動搬送電車180を積み込みステーション110に戻す返送レール190が、パワーレール130の真上に敷設されている。
【0037】
自動車ボディ搬送装置100は、前工程のラインからボディ搬送台車150に載置されて搬送されてきた自動車ボディBが、積み込みステーション110で自動搬送電車180に移載され、リフター162によって自動搬送電車180と共に持ち上げられる。そして、所定の高さに敷設されたパワーレール130上に載置され、高床式に構築されている作業ブース170に搬入される。一方、積み込みステーション110で空になったボディ搬送台車150は、作業ブース170の床下を通って降ろしステーション140まで搬送される。
【0038】
自動搬送電車180に載置され作業ブース170のパワーレール130上を搬送されていく自動車ボディBには、作業ブース170の床面に固設されたシール作業をおこなうロボットRにより所定のシール作業が施される。2工程のシール作業が施された自動車ボディBが載置された自動搬送電車180は、降ろしステーション140でリフター164によって降下され、作業ブース170の床下を通って搬送されてきたボディ搬送台車150上に自動車ボディBを移載する。
【0039】
空になった自動搬送電車180は、リフター164で返送レール190まで持ち上げられ、返送レール190上を自走して積み込みステーション110まで戻される。そして、リフター162によって、降下され、再び、前工程のラインからボディ搬送台車150に載置され搬送されてきた自動車ボディBが載置される。
【0040】
ここで、ボディ搬送台車150の搬送機構としては、前述したパワーアンドフリートロリコンベヤを用いることによって、ボディ搬送台車150の停止、走行を円滑に制御できると共に前後のボディ搬送台車150の衝突を防止できる。
【0041】
以上のように、自動搬送電車180を垂直循環させることによって、自動車ボディBを搬送するため、自動車ボディ搬送装置が小型化・ユニット化できる。また、小型化できることによって装置の設置レイアウトの自由度が向上する。さらに、ユニット化できることによって装置の据付工事の工期、コストの大幅な削減が実現できる。
【0042】
(自動搬送電車の構造)
次に、「オートラン」とよばれる自動搬送電車180の構造について図3及び図4に基づき説明する。
【0043】
本実施例の自動搬送電車180は、図3に示すように互いに独立して対峙して自走する一対の自動搬送電車180R、180L(以下、単に「自動搬送電車180」という)によって構成されている。自動搬送電車180は、図4に示すように、従動輪181と駆動輪182と駆動輪182を駆動する走行モーター183とパワーレール130から電力を得るための集電子186と駆動輪182と従動輪181との間隔を保持する連結杆185と図3に示した自動車ボディBを支持する後述する開閉機構により開閉自在に軸支されたボディ受けアーム187と、ボディ受けアーム187を回動するアーム回動用モーター184とを有している。そして、一対の自動搬送電車180は、後述するセンサー機構によって同期してパワーレール130上を走行する。
【0044】
(ボディ受けアームの開閉機構の構造)
次に、自動車ボディを支持するボディ受けアーム187の開閉機構の構造について図5に基づき説明する。
【0045】
ボディ受けアーム187は、自動搬送電車180の連結杆185の両端に軸支される。そして、ボディ受けアーム187の基端部に図5に示すようにボディ受けアーム187に対して、それぞれ所定の角度を付けて原動体189が固定されている。さらに、2つの原動体189の先端同士を従動体188で連結している。このような構造にしたことによって、片側のボディ受けアーム187をアーム回動用モーター184を用いて90度回転させることによって、他方のボディ受けアーム187も連動して回転する。その結果、1台のアーム回動用モーター184で2つのボディ受けアーム187を回動することができるので、装置の小型化・軽量化が実現できる。また、空の自動搬送電車180を走行させる際にボディ受けアーム187を閉じることによって、ボディ受けアーム187が搬送ラインを横切ることがないので、作業性が向上する。
【0046】
(自動搬送電車の左右同期機構の構造)
次に左右の自動搬送電車180を同期させて走行させるための左右同期機構の構造について図6に基づき説明する。
【0047】
自動搬送電車180の駆動輪182を駆動する走行モーター183に走行モーター183の回転速度を計測するエンコーダー208が接続される。そして、エンコーダー208の出力は速度制御回路204に入力され、フィードバック制御される。また、速度制御回路204から、現在の速度が送信機206に出力される。一方、対峙する自動搬送電車180において送信機206から出力された速度信号を受信機205により受信し、速度制御回路204に出力し走行モーター183を駆動して駆動輪182を回転させる。さらに、エンコーダー208の出力が速度制御回路204に入力され、フィードバック制御される。このようにして左右の自動搬送電車180の速度が同じになるように制御される。
【0048】
また、一方の自動搬送電車180には、発光素子201が設置されており、他方の自動搬送電車180には、受光素子アレイ202が設置されている、そして、受光素子アレイ202の出力が、位置変位検出回路203に入力され、左右の自動搬送電車180の位置のずれが検出される。位置変位検出回路203の出力は速度制御回路204に入力され、左右の自動搬送電車180の位置のずれを補償するように速度が制御される。
【0049】
さらに左右の自動搬送電車180を同期させて走行させるための左右同期機構の別の構造について図7に基づき説明する。
【0050】
片側の自動搬送電車180の駆動輪182を駆動する走行モーター183に速度制御回路307が接続されている。この速度制御回路307には、3つのレーザーセンサ301、302、303が接続されている。他方の自動搬送電車180には、3つのレーザーセンサ301、302、303と対峙するように反射板304、305、306が設置されている。一番前の反射板304は、レーザーセンサ301の光軸に対して後方に偏在して設置され、真ん中の反射板305は、レーザセンサ302の光軸に対して前方に偏在して設置され、一番後の反射板306は、レーザセンサ303の光軸に対して中央に設置されるとともに、反射板304、305よりも幅が長い。
【0051】
その結果、図7において、右側の自動搬送電車180の速度が速くなり、左側の自動搬送電車180より進むとレーザーセンサ301に反射板304からの光が届かなくなりOFFとなる。これにより、速度制御回路307において走行モーター183の回転速度を落とす。反対に、右側の自動搬送電車180の速度が遅くなり、左側の自動搬送電車180より遅れるとレーザーセンサ302に反射板305からの光が届かなくなりOFFとなる。これにより、速度制御回路307において走行モーター183の回転速度を上げる。さらに、レーザーセンサ303に反射板306からの光が届かなくなると、左右の自動搬送電車180の位置のずれが大きすぎて、同期不可能と判断して、自動搬送電車180を停止させる。
【0052】
以上のような左右同期機構を搭載している結果、本発明の対峙して自走する自動搬送電車180は、互いに独立しているにもかかわらず、同期して走行する。なお、自動搬送電車180が返送レール190上を走行する際には、自動車ボディが搭載されていないので、左右の自動搬送電車180の同期を取る必要はない。
【0053】
以上のように、本発明の自動車ボディ搬送装置によれば、(1)自動車ボディを搬送する自動搬送電車を垂直循環させる、(2)対峙して自走する自動搬送電車を互いに独立させセンサー機構で同期させる、(3)自動車ボディを支持するアームを開閉自在とする、という手法を組み合わせることによって、自動車ボディ搬送装置の省スペース化、搬送精度の工場、装置の小型化・簡素化・軽量化を実現するものであって、その効果は絶大である。
【符号の説明】
【0054】
50 ・・・ パワーアンドフリートロリコンベヤ
51 ・・・ パワーレール
52、53 ・・・ パワートロリ
54 ・・・ パワーチェーン
55 ・・・ フリーレール
56 ・・・ フリートロリ
57 ・・・ 駆動ドッグ
58、58a ・・・ 被駆動ドッグ
100、500 ・・・ 自動車ボディ搬送装置
110、510 ・・・ 積み込みステーション
520 ・・・ 吊り下げ搬送機
130、530 ・・・ パワーレール
530A ・・・ 搬送ライン
530B ・・・ 戻りライン
140、540 ・・・ 降ろしステーション
150、550 ・・・ ボディ搬送台車
162、164、560、570 ・・・ リフター
170 ・・・ 作業ブース
180 ・・・ 自動搬送電車
181 ・・・ 従動輪
182 ・・・ 駆動輪
183 ・・・ 走行モーター
184 ・・・ アーム回転用モーター
185 ・・・ 連結杆
186 ・・・ 集電子
187 ・・・ ボディ受けアーム
188 ・・・ 従動体
189 ・・・ 原動体
190 ・・・ 返送レール
201 ・・・ 発光素子
202 ・・・ 受光素子アレイ
203 ・・・ 位置変位検出回路
204 ・・・ 速度制御回路
205 ・・・ 受信機
206 ・・・ 送信機
208 ・・・ エンコーダー
301、302、303 ・・・ レーザーセンサ
304、305、306 ・・・ 反射板
307 ・・・ 速度制御回路
B ・・・ 自動車ボディ
R ・・・ ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って平行に敷設された二本のパワーレールと該パワーレール上を対峙して自走し自動車ボディを積み込みステーションから降ろしステーションに向けて搬送する自動搬送電車とを備えた自動車ボディ搬送装置において、
前記降ろしステーションで空になった自動搬送電車を積み込みステーションに戻す返送レールが、前記パワーレールの真上に敷設されていることを特徴とする自動車ボディ搬送装置。
【請求項2】
前記対峙して自走する自動搬送電車が、互いに独立していると共に同期して走行するための左右同期機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の自動車ボディ搬送装置。
【請求項3】
前記自動搬送電車が、自動車ボディを支持する開閉自在のボディ受けアームを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車ボディ搬送装置。
【請求項4】
前記自動車ボディがボディ搬送台車に載置されて積み込みステーションまで搬送されてくると共に、前記積み込みステーションで空になったボディ搬送台車が高床式に構築されている作業ブースの床下を通って降ろしステーションまで搬送されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動車ボディ搬送装置。
【請求項5】
前記ボディ搬送台車の搬送機構が、パワーアンドフリートロリコンベヤであることを特徴とする請求項4に記載の自動車ボディ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−20809(P2011−20809A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167985(P2009−167985)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】