説明

自動車両用の速度調整システム

本発明は、設定可能な目標・速度に依存して駆動モーメント又は制動モーメントを計算するための手段を備えた自動車両用の速度調整システムに関し、この際、目標・速度は操作可能な操作要素の単一操作により設定される。本発明に従い、操作要素を継続操作する場合には目標・速度に代わり目標・加速度が設定され、この目標・加速度から駆動モーメント又は制動モーメントが計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前提部に記載した自動車両(モータビークル)用の速度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在では自動車両内の様々な速度調整システムが知られていて、これらの速度調整システムは操作要素の操作により制御される。自動速度調整システムは、例えばスピード・コントロール・システムとして又は所謂「アダブティブ・クルーズ・コントロール・システム」として構成され得る。
【0003】
特許文献1から例えば自動車両内の速度調整装置用の操作レバーが知られていて、この操作レバーは通常のターンシグナルと同じようにステアリングホイールの範囲内に装着されている。目標・速度の調節と、保存されている目標・速度の呼び出しと、速度調整装置のスイッチオフとを特に含んでいる様々な機能を制御するために、前記の操作レバーは互いに垂直な方向においてタッチ式で動かすことができる。
【0004】
特許文献2からは駆動モータと制動装置を用いた自動車両の速度調整方法が知られていて、この際、この速度調整機能は、車両の走行速度を設定された目標・速度に維持するために運転者により活動化される。
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許発明第4338098号明細書
【特許文献2】ドイツ特許発明第19961720号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、改善された速度調整システムを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題は、本発明に従い、特許請求項1に記載した速度調整システムにより解決される。有利な他の構成は従属請求項の対象である。
【0008】
本発明に従う自動車両用の速度調整システムは、設定(プリセット)可能な目標・速度に依存して駆動モーメント又は制動モーメントを計算するための手段を備え、この際、その目標・速度は操作可能な操作要素の単一操作により設定されるもので、この自動車両用の速度調整システムは、操作要素を継続操作する場合には目標・速度に代わり目標・加速度が設定され、この目標・加速度から駆動モーメント又は制動モーメントが計算されることにより傑出する。
【0009】
本発明に従う速度調整システムは、運転者が目標・速度設定又は目標・加速度設定を選択できるという長所を提供する。運転者が現在の速度を新たな速度値へと増加又は減少したい場合、対応する目標・速度を設定するために運転者は操作要素を一回或いは数回に渡って操作する。正の方向における一回の単一操作により、例えば現在の速度に対して1km/hだけ増加又は減少されている目標・速度が設定される。数回の単一操作では、単一操作の回数に応じ現在の速度に対して1km/hが掛けられて増加又は減少されている目標・速度が設定される。
【0010】
それに対し、運転者が加速又は減速を意図する場合、運転者は、本発明に従い、操作要素の継続操作により目標・加速度を設定することができる。運転者による目標・加速度の設定は、車両が現在の負荷抵抗に依存せず再現可能に同じ加速度又は減速度を達成するという長所を提供する。運転者は、例えば下り坂走行において、加速度を用いない制動設定或いは駆動設定の場合にはそうであるが、より高い加速度により驚かされることはない。目標・加速度設定の場合、車両には定義された目標・加速度が直接的に取り入れられ、この際、それに対し、目標・速度設定の場合、加速度は目標・速度と実際・速度(即ち現在の速度)の間のずれから間接的に得られる。目標・加速度設定の場合、目標・速度は設定されず、つまり運転者は、車両を加速或いは減速させたい限り、操作要素を操作する。運転者には、先を見越して交通の流れと「共に流れてゆくこと(Mitschwimmen)」が可能とされ、この際、車両反応は把握可能で且つ直接的に運転者により制御され得て、その理由は、運転者がアクティブで且つダイレクトに車両の制御に組み込まれているためである。
【0011】
操作要素は、例えばステアリングホイールにおける操作レバーとして形成され得る。単一操作は、例えば操作要素における短い時点の間の一回だけの押し操作又は引き操作により得られる。それに対して継続操作は、例えば予め設定された時間間隔の間の押し操作又は引き操作により得られる。操作の方向に依存し、操作要素の単一操作の場合、現在の速度に対して増加又は減少された目標・速度が設定される。同様に操作の方向に依存し、操作要素の継続操作の場合、正の又は負の目標・加速度が設定される。操作レバーの代わりに操作要素は例えばロッカーキーとしても形成され得る。
【0012】
継続操作から操作要素を放した後、目標・速度であってこの目標・速度に依存して駆動モーメント又は制動モーメントの計算を行なうことのできる適切な目標・速度は存在しないので、好ましくは、操作要素を放した場合には、現在の速度、又は現在の速度に対して予め設定された値だけずれている速度が目標・速度として設定される。現在の速度からのずれは、絶対値として現在の速度からごく僅かにだけずれているべきで、方向としては、車両の加速度が先行した場合には現在の速度よりも大きく、車両の減速度が先行した場合には現在の速度よりも小さいように設定されるべきである。そのずれは、加速度或いは減速度が運転者にとって快適に漸次的な移行をもって一定走行へと緩和されるという長所を提供する。
【0013】
目標・加速度は、予め設定された固定値であり得る。好ましくは、目標・加速度は少なくとも1つのパラメータに依存して設定される。例えば目標・加速度は、現在の車両速度又は車両の別の稼動パラメータに依存して設定され得る。現在の車両速度が高いほど、目標・加速度は絶対値としてより小さくなるべきである。また、目標・加速度を中でも運転者の走行方式に依存して設定することも想定可能である。目標・加速度は特性曲線或いは特性マップから設定され得る。
【0014】
好ましくは、駆動モーメント又は制動モーメントの計算時、目標・速度をできるだけ正確に調節可能とするために、例えば上り走行又は下り走行又は車両の空気力学のような負荷抵抗が考慮される。
【0015】
好ましくは、操作要素は複数の操作レベル内で操作可能であり、この際、操作要素の単一操作の場合には操作レベル特有の目標・速度が設定され、継続操作の場合には操作レベル特有の目標・加速度が設定される。
【0016】
複数の操作レベルを有する操作要素は既に自動速度調整機能の範囲で使用される。この際、例えば、第1操作レベル内で操作要素を操作する場合には目標・速度が1km/hだけ増加又は減少される。それに対し、第2操作レベル内で操作要素を操作する場合には目標・速度が例えば5km/h又は10m/hだけ増加又は減少される。それに対応し、本発明に従う他の構成では、様々な操作レベル内で操作要素の継続操作時に様々な目標・加速度を設定することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面には、特許請求項1に従う、本発明に従う速度調整システムの実施例が示されている。
【実施例1】
【0018】
唯一の図面は自動車両(モータビークル)F用の速度調整システム10を示していて、この速度調整システム10は、設定可能な目標・速度vsに依存して駆動モーメントMa又は制動モーメントMbを計算するための手段1、S、2、3を備えていて、この際、目標・速度vsは操作可能な操作要素BEの単一操作ebにより設定される。操作要素BEの単一操作ebの場合、スイッチSは位置aにある。例えば運転者が80km/hの現在の速度vaにおいて操作要素BEを一回操作すると、81km/hの目標・速度vsが設定される。第1ユニット1内では、車両の現在の速度vaと設定された目標・速度vsとに依存し、間接的に加速度asが計算され、この加速度asは、所望の目標・速度vsを得るために目標・加速度asとして設定される。この場合に計算された目標・加速度asから、手段2及び3を用いた既に周知の加速度調整20により駆動モーメントMa及び制動モーメントMbが計算される。目標・加速度asと現在の加速度aaの差からユニット2内で要求・モーメントMが計算され、この要求・モーメントMからユニット3内で駆動モーメント及び/又は制動モーメントが計算される。駆動モーメントMa又は制動モーメントMbの計算時、有利には車両Fの負荷抵抗Lが考慮される。計算された駆動モーメントMa又は制動モーメントMbを用い、車両Fが駆動され、設定された目標・速度vsに対応する現在の速度vaが獲得される。
【0019】
操作要素BEの継続操作dbの場合、本発明に従い、目標・速度vsに代わり、目標・加速度asが設定され、この目標・加速度asから駆動モーメントMa又は制動モーメントMbが計算される。スイッチSは、継続操作dbの場合、位置bに位置する。目標・加速度asは、好ましくは現在の速度vaに依存して設定される。目標・加速度asは特性曲線a-KLにより設定される。加速度調整20は目標・速度設定の場合の加速度調整20と同一に行なわれる。
【0020】
継続操作dbから操作要素BEを放した場合、好ましくは、現在の速度vaに対して予め設定された値Kだけずれている速度va-kが目標・速度vsとして設定される。操作要素BEが複数の操作レベル内で操作可能である場合、好ましくは継続操作dbの場合には操作レベル特有の目標・加速度asが設定される。
【0021】
また、特許請求項の内容を逸脱することなく、多数の他の詳細が上記の説明とは異なって構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従う速度調整システムを示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1、S、2、3 手段
10 速度調整システム
20 加速度調整
BE 操作要素
eb 単一操作
db 継続操作
F 自動車両
K 設定値
L 負荷抵抗
M 要求・モーメント
Ma 駆動モーメント
Mb 制動モーメント
a-KL 特性曲線
aa 現在の加速度
as 加速度
as 目標・加速度
va 現在の速度
va-k 速度
vs 目標・速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定可能な目標・速度に依存して駆動モーメント又は制動モーメントを計算するための手段を備えた自動車両用の速度調整システムであって、目標・速度が操作可能な操作要素の単一操作により設定される、前記速度調整システムにおいて、
操作要素(BE)を継続操作(db)する場合には目標・速度(vs)に代わり目標・加速度(as)が設定され、この目標・加速度(as)から駆動モーメント(Ma)又は制動モーメント(Mb)が計算されることを特徴とする速度調整システム。
【請求項2】
継続操作(db)から操作要素(BE)を放した場合、現在の速度(va)、又は現在の速度(va)に対して予め設定された値(K)だけずれている速度(va-k)が目標・速度(vs)として設定されることを特徴とする、請求項1に記載の速度調整システム。
【請求項3】
目標・加速度(as)が少なくとも1つのパラメータ(va)に依存して設定されることを特徴とする、請求項1に記載の速度調整システム。
【請求項4】
駆動モーメント(Ma)又は制動モーメント(Mb)の計算時、車両(F)の負荷抵抗(L)が考慮されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の速度調整システム。
【請求項5】
操作要素(BE)が複数の操作レベル内で操作可能であること、及び継続操作(db)の場合には操作レベル特有の目標・加速度(as)が設定されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれ一項に記載の速度調整システム。

【図1】
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【公表番号】特表2007−531655(P2007−531655A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505510(P2007−505510)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003453
【国際公開番号】WO2005/095143
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】