説明

自動車及びトランスミッションユニット

【課題】オイル供給の欠乏の危険を軽減する。
【解決手段】トランスミッションユニット2を備え、トランスミッションユニットのケーシング3が、トランスミッションコンポーネントを収容するためのトランスミッション室4とクラッチコンポーネントを収容するためのクラッチ室5との間に配置される中間壁6を備え、クラッチ室が車両1の前進時に車両長手方向で見てトランスミッション室の前にあるように、トランスミッションユニット2が自動車1内に配置されており、中間壁がオイル通流開口8を備え、オイル通流開口を通してトランスミッションオイルがクラッチ室からトランスミッション室に到達するようになっており、中間壁に、オイル通流開口を制御するためのフラップ弁9が設けられており、フラップ弁が、クラッチ室からトランスミッション室へのオイル流動を可能にし、逆方向のオイル流動を妨害又は遮断するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に乗用車に関する。さらに本発明は、自動車のためのトランスミッションユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
US5176039において公知のトランスミッションユニットのケーシング内には、前側の溜め及び後側の溜めが形成されている。両溜め間に位置するトランスミッション区分には、トランスミッションオイルが後側の溜めから前側の溜めへ流動可能なオイル通流開口が配置されており、前側の溜めから後側の溜めへの逆流を防止するフラップ弁が設けられている。こうして、車両の強い加速行程時に、オイルポンプが空気を吸引してしまうほど、前側の溜め内の油面が低下する事態は回避されるべきである。
【0003】
EP0124771A1において公知のトランスミッションでは、油溜め室とサイドギヤ室との間に、オイルレベルを油温に基づいて制御可能なフラップ弁が配置されている。
【0004】
EP1602861A1において公知の別のトランスミッションでは、隔壁に開口が形成されており、フラップ弁を備える。フラップ弁は、フラップ弁のフラップがトランスミッションの運転中開口を閉鎖する一方、それ以外の状態では開口を開放するように、コイルばねによって位置決めあるいは構成されている。
【0005】
複雑なトランスミッションユニットは、複数の構成群あるいは要素を有している場合がある。例えば、この種のトランスミッションユニットは、トランスミッションに加えて、少なくとも1つのクラッチを有している。さらにツインクラッチ式トランスミッションが公知であって、ツインクラッチ式トランスミッションは、例えば2つの別個の被動軸を個別に制御することができるように、本来のトランスミッションに加えて、2つのクラッチを有する。これにより、この種のトランスミッションユニットは、そのケーシング内に、トランスミッションコンポーネントを収容するためのトランスミッション室と、クラッチコンポーネントを収容するためのクラッチ室とを有している場合がある。種々の理由から、ケーシング内には、トランスミッション室とクラッチ室との間に中間壁が配置されている場合がある。中間壁としては、両室間のオイル交換を可能にするために、少なくとも1つのオイル通流開口を有しているものがある。つまり、有利には、それぞれのクラッチを制御するためにトランスミッションオイルが使用される。
【0006】
所定の車両構成において、クラッチ室が車両の前進時に車両長手方向で見てトランスミッション室の前にあるように、トランスミッションユニットを車両内に配置することが所望されるか、又は必要である場合がある。この種の配置形態では、車両の制動時、トランスミッションオイルがトランスミッション室からオイル通流開口を通ってクラッチ室に浸入する場合がある。比較的長い制動行程直後に加速行程が実施されると、トランスミッションあるいはクラッチのオイル過少供給が起こって、トランスミッションユニットの機能が危険に曝される恐れがある。さらに、トランスミッションユニットが損傷する危険が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US5176039
【特許文献2】EP0124771A1
【特許文献3】EP1602861A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、自動車あるいはトランスミッションユニットのために、特にトランスミッションユニットにおけるオイル供給の欠乏の危険が軽減されていることを特徴とする、改良された発明を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動車、特に乗用車では、トランスミッションユニットを備え、該トランスミッションユニットのケーシングが、トランスミッションコンポーネントを収容するためのトランスミッション室、クラッチコンポーネントを収容するためのクラッチ室、及び前記トランスミッション室と前記クラッチ室との間に配置される中間壁を備え、前記クラッチ室が車両の前進時に車両長手方向で見て前記トランスミッション室の前にあるように、前記トランスミッションユニットが自動車内に配置されており、前記中間壁がオイル通流開口を備え、該オイル通流開口を通してトランスミッションオイルが前記クラッチ室から前記トランスミッション室に到達するようになっており、前記中間壁に、前記オイル通流開口を制御するためのフラップ弁が設けられており、該フラップ弁が、前記クラッチ室から前記トランスミッション室へのオイル流動を可能にし、前記トランスミッション室から前記クラッチ室へのオイル流動を妨害又は遮断するようにした。
【0010】
有利な形態は、従属請求項に係る発明である。
【0011】
好ましくは、前記フラップ弁のフラップが旋回軸線を中心として旋回可能に前記中間壁に支承されており、該旋回軸線が略水平に延びている。
【0012】
好ましくは、前記オイル通流開口が、実質的に鉛直にかつ/又は前記車両長手方向に対して横方向で延びる平面内にある。
【0013】
好ましくは、前記中間壁がストッパを備え、該ストッパに前記フラップ弁のフラップが、前記オイル通流開口を閉鎖する際に当接する。
【0014】
好ましくは、前記中間壁が凹部を備え、該凹部内に前記フラップ弁のフラップが、オイル通流開口を閉鎖したときに沈め配置されている。
【0015】
好ましくは、前記フラップ弁が、前記中間壁にねじ止めされている取付け部材と、該取付け部材に旋回軸線を中心に旋回調節可能に支承されているフラップとを有する。
【0016】
好ましくは、前記フラップ弁が付加的に軸を有しており、該軸が前記旋回軸線に対して同軸的に延び、前記取付け部材又は前記フラップに固定されている一方、該フラップ又は該取付け部材が回転可能に前記軸に係合されている。
【0017】
好ましくは、前記軸が円筒ピンにより形成されており、該円筒ピンが、前記取付け部材に形成された嵌合孔内に力結合式に挿入されている。
【0018】
好ましくは、前記フラップ又は前記取付け部材に一体的に軸区分が形成されており、該軸区分が前記旋回軸線に対して同軸的に延び、回転可能に前記取付け部材又は前記フラップに係合する。
【0019】
好ましくは、前記取付け部材が、一片材から成形される金属薄板成形部品であり、前記中間壁に当接する下面と、該下面から間隔を置いた上面と、前記フラップとは反対側の背面と、前記フラップ側の前面とを備え、該前面が、前記軸区分を回転可能に収容する軸収容部を形成し、前記背面又は前記前面に前記旋回軸線に対して平行にスリットが形成されており、ねじ締めにより当接するまで圧縮されている。
【0020】
好ましくは、前記フラップが平坦なフラップ本体を備え、該フラップ本体が、屈曲したウェブ区分を介して前記軸区分に結合されており、前記フラップ及び前記取付け部材が、前記フラップ弁の閉鎖位置で前記フラップ本体と前記取付け部材の下面とが一平面内にあるように互いに調整されている。
【0021】
好ましくは、前記取付け部材が前記オイル通流開口を完全に取り巻くか、又は埋め、前記フラップ弁の閉鎖位置で前記フラップを完全に包囲する。
【0022】
好ましくは、前記フラップ弁の前記取付け部材又は前記中間壁が弁チャンバを有しており、該弁チャンバが、前記トランスミッション室に向かって開放されており、かつ前記クラッチ室に向かって前記オイル通流開口を有しており、かつ該弁チャンバ内に前記フラップ弁の前記フラップが旋回可能に配置されている。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動車のためのトランスミッションユニットでは、ケーシングを備え、該ケーシングが、トランスミッションコンポーネントを収容するためのトランスミッション室、クラッチコンポーネントを収容するためのクラッチ室、及び前記トランスミッション室と前記クラッチ室との間に配置される中間壁を備え、前記中間壁がオイル通流開口を備え、該オイル通流開口を通してトランスミッションオイルが前記クラッチ室から前記トランスミッション室に到達するようになっており、前記中間壁に、前記オイル通流開口を制御するためのフラップ弁が設けられており、該フラップ弁が、前記クラッチ室から前記トランスミッション室へのオイル流動を可能にし、前記トランスミッション室から前記クラッチ室へのオイル流動を妨害又は遮断するようにした。
【0024】
有利な形態は、従属請求項に係る発明である。
【0025】
好ましくは、本発明に係るトランスミッションは、本発明に係る自動車の上記好ましい特徴を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、トランスミッション室とクラッチ室との間に配置される中間壁に設けられる少なくとも1つのオイル通流開口をフラップ弁により制御する、より詳細には、トランスミッション室からクラッチ室へのオイル流動を妨害あるいは阻止する一方で、クラッチ室からトランスミッション室へのオイル流動を実質的に妨害しないあるいは許可するように制御するという普遍思想に基づく。こうして、クラッチ室内の過剰なオイル滞留は、より強く、より長い制動行程時においても回避される。結果として、トランスミッションユニットの油溜め内の油位の低下は、軽減される。これにより、潤滑不足の危険は回避されるか、又は少なくともかなり軽減される。
【0027】
有利な形態では、フラップ弁が、中間壁にねじ止めされている取付け部材と、取付け部材に旋回軸線を中心に旋回調節可能に支承されているフラップとを有する。これにより、フラップ弁の著しく簡単かつ安価な構造が得られる。特に、フラップ弁は完全に受動的に、つまり外的なエネルギなし及び外的な駆動なしに作動する。組付け状況次第で、フラップあるいはフラップ弁を開放又は閉鎖するためのばねが省略されてもよい。これにより、フラップ弁は比較的安価に実現可能である。
【0028】
特別な形態では、フラップ弁が付加的に軸を有しており、軸が旋回軸線に対して同軸的に延び、取付け部材(又はフラップ)に固定されている一方、フラップ(又は取付け部材)が回転可能に軸に係合する。この種の、フラップ及び取付け部材に対して付加的に設けられる軸によって、取付け部材及びフラップの製造が容易になると同時に、高い機能信頼性が保証されている。さらに、これにより、特に、取付け部材を安価な鋳造部品として製造することが可能である。フラップは例えば、簡単に構成される金属薄板成形部品として構成されていてよい。
【0029】
択一的な形態では、フラップ(又は取付け部材)に一体的に少なくとも1つの軸区分が形成されており、軸区分が旋回軸線に対して同軸的に延び、回転可能に取付け部材(又はフラップ)に係合する。インテグラル構造によって、別体の軸が省略可能であり、このことは、部品多様性を低下させ、製造を容易にする。これにより、全体として、フラップ弁は特に安価に実現可能である。例えば、取付け部材はこの場合、金属薄板成形部品として構成可能である。フラップは、選択的に軸区分と一緒に、鋳造部品、焼結部品又は金属薄板成形部品として構成可能である。
【0030】
別の形態では、取付け部材が、中間壁のオイル通流開口を完全に取り巻くか、又は埋め、これにより自ら、フラップにより制御されるオイル通流開口を形成するように構成されている。さらに、取付け部材は、フラップ弁の閉鎖位置でフラップを完全に包囲可能である。これにより、完全に前組立て可能であって、特に簡単に中間壁に取付け可能な構造上のユニットが形成される。
【0031】
別の形態では、中間壁又はフラップ弁の取付け部材に形成することができる弁チャンバが設けられている。弁チャンバは、トランスミッション室に向かって開放されている一方、クラッチ室に向かっては中間底のオイル通流開口を有する。フラップ弁のフラップは、弁チャンバ内にオイル通流開口を制御するために配置されている。この種の弁チャンバを直接中間壁又は取付け部材に設けること、つまりフラップ弁の構成部分として提供することは、特にフラップと、フラップ弁に隣接する、クラッチ室内のクラッチコンポーネントあるいはトランスミッション室内のトランスミッションコンポーネントとの間の不都合な相互作用が回避され得るので、フラップ弁のための高められた機能信頼性を保証する。
【0032】
本発明のその他の重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面を参照しながら説明する、発明を実施するための形態から看取される。
【0033】
前述した特徴及び後述する特徴は、それぞれ提示した組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、別の組み合わせ又は単独でも使用可能であることは自明である。
【0034】
本発明の有利な実施の形態を図面に示し、以下に詳細に説明する。同じ符号は、同一、類似又は機能同一の部材を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】フラップ弁の領域におけるトランスミッションユニットの概略断面図である。
【図2】図1に示したフラップ弁の概略斜視図である。
【図3】別の実施の形態のフラップ弁の概略側面図である。
【図4】別の実施の形態のフラップ弁のフラップの概略斜視図である。
【図5】図1と同様の、ただし別の実施の形態のフラップ弁の概略断面図である。
【図6】図5に示したVI方向で見たフラップ弁の領域の中間壁の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1及び図5に示すように、その他の部分は図示しない、有利には乗用車であってよい自動車1は、部分的にのみ示したトランスミッションユニット2を有する。このトランスミッションユニット2は、例えばツインクラッチ式トランスミッションであってよい。ツインクラッチ式トランスミッションは、2つの別個の被動軸を制御するための2つのクラッチを有する。トランスミッションユニット2は、トランスミッション室4及びクラッチ室5を含むケーシング3を有する。トランスミッション室4は、詳細には図示しない、部分的にのみ概略的に示したトランスミッションコンポーネントを収容するために役立つ。トランスミッション室4と同様に、クラッチ室5は、詳細には図示しない、部分的にのみ示したクラッチコンポーネントを収容するために役立つ。さらにケーシング3は、トランスミッション室4とクラッチ室5との間に配置されている中間壁6を有する。中間壁6は、ケーシング3を補強するためにも、トランスミッションコンポーネント及び/又はクラッチコンポーネントを支承するためにも役立つことができる。図示しないオイルポンプの吸込み側は、トランスミッション室4内に形成される油溜めに接続可能である。
【0037】
トランスミッションユニット2の有利な使用に応じて、トランスミッションユニット2は自動車1内に、実質的に、クラッチ室5が車両1の前進時に車両長手方向で見てトランスミッション室4の前に位置するように配置されている。図1及び図5に記入された矢印7は、車両長手方向に対して平行に延び、車両1の前進方向を示す。
【0038】
中間壁6には、少なくとも1つのオイル通流開口8が形成されている。オイル通流開口8を介してトランスミッションオイルが、クラッチ室5からトランスミッション室4に到達する。さらに、図示したトランスミッションユニット2は、中間壁6に配置され、オイル通流開口8を制御するために役立つフラップ弁9を有する。このためにフラップ弁9は、クラッチ室5からトランスミッション室4へのオイル流動を可能にする一方で、トランスミッション室4からクラッチ室5へのオイル流動、つまり逆方向のオイル流動を遮断又は少なくとも妨害するように構成かつ/又は配置されている。このためにフラップ弁9は、フラップ弁9のフラップ11を旋回可能に中間壁6に支承する旋回軸線10を有する。この旋回軸線10は、有利には略水平に延びている。図1及び図5に示した実施の形態では、旋回軸線10は、車両長手方向に対して横方向で延びている。オイル通流開口8は、ここでは詳細には図示しない、略鉛直に延びる平面内に位置する。本実施の形態では、オイル通流開口8の平面は、車両長手方向に対して横方向で延びている。
【0039】
中間壁6は、軸方向でトランスミッション室4とクラッチ室5との間に配置されており、トランスミッションユニット2の軸方向は、それぞれの上記被動軸の回転軸線により規定されている。中間壁6は、実質的に、トランスミッションユニット2の軸方向に対して横方向で延びる平面内にある。オイル通流開口8の前述の開口平面は、有利には壁平面に対して平行に延びている。
【0040】
中間壁6は、フラップ弁9の閉鎖位置を形成するために、フラップ弁9のフラップ11が当接するストッパ12を有していてよい。図5は、フラップ弁9の閉鎖位置を示す。閉鎖位置において、フラップ11あるいはフラップ弁9は、オイル通流開口8を閉鎖する。図5に対して図1は、フラップ弁9の開放位置を示す。
【0041】
さらに中間底6は、凹部13を有していてよい。凹部13は、少なくともフラップ弁9がオイル通流開口8を閉鎖したとき、凹部13内にフラップ11が沈み込むように寸法設定されていてよい。この凹部13は、図1に示した実施の形態では、中間壁6に設けられた凹部13によって弁チャンバ14が形成されるように寸法設定されている。この弁チャンバ14は、トランスミッション室4に向かって開放されている一方、クラッチ室5に向かっては中間壁6のオイル通流開口8を有するように構成されている。さらに弁チャンバ14内には、フラップ11が旋回可能に配置されている。本実施の形態では、フラップ弁9全体が弁チャンバ14内に配置されている。さらに弁チャンバ14は、フラップ11が、トランスミッション室4内に配置されるコンポーネントと衝突することなく、任意の範囲で開放方向で旋回可能であるように寸法設定されている。
【0042】
フラップ弁9は、図1〜図6に示した実施の形態では、取付け部材15及びフラップ11を有する。取付け部材15は、中間壁6に螺設されている。この螺設を実現するための適当なねじには、符号16が付されており、直接中間壁6に螺入可能である。フラップ11は、取付け部材15に旋回軸線10を中心として旋回調節可能に支承されている。このために、図1及び図2に示すように、付加的に、必然的に旋回軸線10に対して同軸的に延びる軸17が設けられていてよい。軸17は、ここに示した実施の形態では、取付け部材15に固定されており、フラップ11に回転可能に係合する。原理的には逆の構造形態も可能であって、軸17がフラップ11に固定されており、取付け部材15に回転可能に係合するようになっていてもよい。図1及び図2に示した実施の形態では、軸17が一例として円筒ピンにより形成されている。円筒ピンは特に中空であってよい。取付け部材15には、円筒ピンあるいはそれぞれの軸17が力結合(kraftschluessig:力による束縛)式、特に摩擦力結合(reibschluessig:摩擦力による束縛)式に挿入されている嵌合孔が形成されていてよい。これにより、取付け部材15への軸17の固定は、プレスばめにより実現される。取付け部材15は、この構造形態では、特に簡単に鋳造部品として製造可能である。さらにこの構造形態は、金属薄板成形部品としてのフラップ11の製造を可能にする。
【0043】
図2に示すように、軸17は、取付け部材15の3つの孔区分を通って延在する。取付け部材15の対応する区分18間には、フラップ11のヒンジ区分20が対応して係合する間隙19が形成されている。ヒンジ区分20はそれぞれ内部に軸17を包囲する。ヒンジ区分20は、有利には一体的にフラップ11のフラップ本体21に成形、特に変形加工により成形されている。
【0044】
図3及び図4に詳細に示した別の実施の形態では、別体の軸17が省略可能である。このためにフラップ11に、少なくとも1つの軸区分22がインテグラルに形成、つまりそれぞれのフラップ11と一体的に製造されている。前記軸区分22は、旋回軸線10に対して同軸的に延び、図3に示すように、対応して形成された取付け部材15に回転可能に係合する。原理的には逆の構造形態も可能であって、それぞれの軸区分22がインテグラルに取付け部材15に形成されており、それに応じて、それぞれのフラップ11に回転可能に係合するようになっていてもよいことは自明である。
【0045】
図3に示した実施の形態では、それぞれの軸区分22が円柱状に、中実体として形成されている。フラップ11は、特に鋳造部品又は焼結部品として構成されている。図4は、フラップ11のための択一的な実施の形態を示しており、フラップ11は金属薄板成形部品として構成されている。図面からも認識できるように、軸区分22は、金属薄板ボディの、適当に巻かれた区分によって形成されている。それぞれの軸区分22は、図3及び図4に示した両実施の形態では、ウェブ区分23を介してフラップ本体21に結合されている。ウェブ区分23は、図示の実施の形態ではフラップ本体21に対して屈曲されている。
【0046】
図3に示すように、取付け部材15は、有利には金属薄板成形部品として製造可能である。取付け部材15は、それに応じて、一枚の金属薄板片から変形加工によって製造されている。取付け部材15は、取付け状態で中間壁6に当接する下面区分あるいは下面24を有する。さらに取付け部材15は、中間壁6とは反対側に、下面24から間隔を置いた上面区分あるいは上面25を有する。対応する間隔は、図3に符号26で示されている。間隔26は、取付け部材15が製造される金属薄板ボディの壁厚さ27の約2倍である。さらに取付け部材15は、フラップ11とは反対側の背面区分あるいは背面33、及びフラップ11側の前面区分あるいは前面28を有する。さらに前面28は、軸区分22を回転可能に収容するための軸収容部29を形成する。軸収容部29は、軸区分22をウェブ23の両側で包囲するように構成されている。
【0047】
図示の実施の形態では、前面28に、旋回軸線10に対して平行にスリットが形成されている。相応のスリットは、図3に符号30で示されている。変形例として、取付け部材15の背面33にスリットが形成されていてもよい。スリット30の領域で、前面28、又は択一的には背面33は、取り付けられた状態で、それぞれのねじ16によるねじ締めによって当接するまで圧縮される。前面28の形状付与は、当接するまでねじ締め(Blockverschraubung)しても、軸収容部29内での軸区分22の旋回可能性が保証されているように選択されている。
【0048】
図3に示すように、フラップ11及び取付け部材15は、有利には、フラップ弁9が図3に示した閉鎖位置にあるとき、フラップ本体21と、取付け部材15の下面24とが、ここには図示しない一平面内にあるように互いに調整されている。このことは、平坦なフラップ本体21に対して屈曲されているウェブ区分23によって達成される。これにより、簡単な手段で、フラップ弁9のための規定通りの機能が実現可能である。
【0049】
図5及び図6は、別の実施の形態を示しており、取付け部材15が、図1〜図4に示した実施の形態に比べて明らかに大きく構成されている。取付け部材15は、図5及び図6に示した実施の形態では、取付け部材15がオイル通流開口8に充填されるように、中間壁6のオイル通流開口8内に挿入されている。択一的には、取付け部材15は、中間壁6のオイル通流開口8を完全に取り巻くように寸法設定されていてもよい。これらの実施の形態では、取付け部材15はさらに、フラップ11を完全に取り巻くように寸法設定されている。このことは、特に図6に示されている。図5及び図6に示すように、取付け部材15は、支障なく、図1に示した実施の形態と同様に、やはり凹部13′を備えるように構成されていてよい。凹部13′により、フラップ弁9がそれぞれのオイル通流開口8を閉鎖しているときに、フラップ11の沈め配置が可能である。取付け部材15が本実施の形態のように中間壁6のオイル通流開口8内に挿入されている場合、取付け部材15自体が、中間壁6のオイル通流開口8を形成する開口31を有する(以下、オイル通流開口8′と呼ぶ)。その際、凹部13′はやはり、再び弁チャンバ14が形成されるように寸法設定可能である。しかし、弁チャンバ14は、図5及び図6に示した実施の形態では、取付け部材15内に配置されており、これにより、フラップ弁9の構成部分を形成する。この実施の形態でも、弁チャンバ14は、トランスミッション室4に向かって開放されている一方、クラッチ室5に向かってはオイル通流開口8′を有する。さらにこの弁チャンバ14内には、フラップ11が旋回可能に支承されている。
【0050】
図5及び図6に示した実施の形態は、やはり、弁チャンバ14を貫通し、取付け部材15の、弁チャンバ14の側方の境界を形成する側壁内に係入する軸17と協働する。有利には再び金属薄板成形部品として製造可能なフラップ11は、やはり、軸17を包囲するヒンジ区分20を有する。本実施の形態では、ヒンジ区分20が軸17を固定可能であるので、軸17は取付け部材15内に回転可能に支承されている。やはり逆の配置も可能であって、軸17が取付け部材15に固定されている一方、フラップ11がそのヒンジ区分20を介して回転可能に軸17に支承されているようになっていてもよい。
【0051】
図6には、取付け部材15と中間壁6との間のねじ16を用いたねじ止めが実現可能なねじ開口32が概略的に示されている。取付け部材15は、本実施の形態では、有利には鋳造部品として構想されている。図5及び図6に示した実施の形態の、図1に示した実施の形態に対する利点は、弁チャンバ14を実現するために、中間壁6の形態に手を入れる必要が僅かで済む点にある。
【符号の説明】
【0052】
1 自動車、 2 トランスミッションユニット、 3 ケーシング、 4 トランスミッション室、 5 クラッチ室、 6 中間壁、 7 車両長手方向あるいは前進方向、 8,8′ オイル通流開口、 9 フラップ弁、 10 旋回軸線、 11 フラップ、 12 ストッパ、 13,13′ 凹部、 14 弁チャンバ、 15 取付け部材、 16 ねじ、 17 軸、 18 区分、 19 間隙、 20 ヒンジ区分、 21 フラップ本体、 22 軸区分、 23 ウェブ区分、 24 下面区分あるいは下面、 25 上面区分あるいは上面、 26 間隔、 27 壁厚さ、 28 前面区分あるいは前面、 29 軸収容部、 30 スリット、 31 開口、 32 ねじ開口、 27 背面区分あるいは背面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、特に乗用車において、
トランスミッションユニット(2)を備え、該トランスミッションユニット(2)のケーシング(3)が、トランスミッションコンポーネントを収容するためのトランスミッション室(4)、クラッチコンポーネントを収容するためのクラッチ室(5)、及び前記トランスミッション室(4)と前記クラッチ室(5)との間に配置される中間壁(6)を備え、
前記クラッチ室(5)が車両(1)の前進時に車両長手方向で見て前記トランスミッション室(4)の前にあるように、前記トランスミッションユニット(2)が自動車(1)内に配置されており、
前記中間壁(6)がオイル通流開口(8)を備え、該オイル通流開口(8)を通してトランスミッションオイルが前記クラッチ室(5)から前記トランスミッション室(4)に到達するようになっており、
前記中間壁(6)に、前記オイル通流開口(8)を制御するためのフラップ弁(9)が設けられており、該フラップ弁(9)が、前記クラッチ室(5)から前記トランスミッション室(4)へのオイル流動を可能にし、前記トランスミッション室(4)から前記クラッチ室(5)へのオイル流動を妨害又は遮断する
ことを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記フラップ弁(9)のフラップ(11)が旋回軸線(10)を中心として旋回可能に前記中間壁(6)に支承されており、該旋回軸線(10)が略水平に延びていることを特徴とする、請求項1記載の自動車。
【請求項3】
前記オイル通流開口(8)が、実質的に鉛直にかつ/又は前記車両長手方向に対して横方向で延びる平面内にあることを特徴とする、請求項1又は2記載の自動車。
【請求項4】
前記中間壁(6)がストッパ(12)を備え、該ストッパ(12)に前記フラップ弁(9)のフラップ(11)が、前記オイル通流開口(8)を閉鎖する際に当接することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項5】
前記中間壁(6)が凹部(13)を備え、該凹部(13)内に前記フラップ弁(9)のフラップ(11)が、オイル通流開口(8)を閉鎖したときに沈め配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項6】
前記フラップ弁(9)が、前記中間壁(6)にねじ止めされている取付け部材(15)と、該取付け部材(15)に旋回軸線(10)を中心に旋回調節可能に支承されているフラップ(11)とを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項7】
前記フラップ弁(9)が付加的に軸(17)を有しており、該軸(17)が前記旋回軸線(10)に対して同軸的に延び、前記取付け部材(15)又は前記フラップ(11)に固定されている一方、該フラップ(11)又は該取付け部材(15)が回転可能に前記軸(17)に係合されていることを特徴とする、請求項6記載の自動車。
【請求項8】
前記軸(17)が円筒ピンにより形成されており、該円筒ピンが、前記取付け部材(15)に形成された嵌合孔内に力結合式に挿入されていることを特徴とする、請求項7記載の自動車。
【請求項9】
前記フラップ(11)又は前記取付け部材(15)に一体的に軸区分(22)が形成されており、該軸区分(22)が前記旋回軸線(10)に対して同軸的に延び、回転可能に前記取付け部材(15)又は前記フラップ(11)に係合することを特徴とする、請求項6記載の自動車。
【請求項10】
前記取付け部材(15)が、一片から成形される金属薄板成形部品であり、前記中間壁(6)に当接する下面(24)と、該下面(24)から間隔を置いた上面(25)と、前記フラップ(11)とは反対側の背面(33)と、前記フラップ(11)側の前面(28)とを備え、該前面(28)が、前記軸区分(22)を回転可能に収容する軸収容部(29)を形成し、前記背面(33)又は前記前面(28)に前記旋回軸線(10)に対して平行にスリットが形成されており、ねじ締めにより当接するまで圧縮されていることを特徴とする、請求項9記載の自動車。
【請求項11】
前記フラップ(11)が平坦なフラップ本体(21)を備え、該フラップ本体(21)が、屈曲したウェブ区分(22)を介して前記軸区分(22)に結合されており、前記フラップ(11)及び前記取付け部材(15)が、前記フラップ弁(9)の閉鎖位置で前記フラップ本体(21)と前記取付け部材(15)の下面(24)とが一平面内にあるように互いに調整されていることを特徴とする、請求項10記載の自動車。
【請求項12】
前記取付け部材(15)が前記オイル通流開口(8)を完全に取り巻くか、又は埋め、前記フラップ弁(9)の閉鎖位置で前記フラップ(11)を完全に包囲することを特徴とする、請求項6から11までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項13】
前記フラップ弁(9)の前記取付け部材(15)又は前記中間壁(6)が弁チャンバ(14)を有しており、該弁チャンバ(14)が、前記トランスミッション室(4)に向かって開放されており、かつ前記クラッチ室(5)に向かって前記オイル通流開口(8,8′)を有しており、かつ該弁チャンバ(14)内に前記フラップ弁(9)の前記フラップ(11)が旋回可能に配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の自動車。
【請求項14】
自動車のためのトランスミッションユニットにおいて、
ケーシング(3)を備え、該ケーシング(3)が、トランスミッションコンポーネントを収容するためのトランスミッション室(4)、クラッチコンポーネントを収容するためのクラッチ室(5)、及び前記トランスミッション室(4)と前記クラッチ室(5)との間に配置される中間壁(6)を備え、
前記中間壁(6)がオイル通流開口(8)を備え、該オイル通流開口(8)を通してトランスミッションオイルが前記クラッチ室(5)から前記トランスミッション室(4)に到達するようになっており、
前記中間壁(6)に、前記オイル通流開口(8)を制御するためのフラップ弁(9)が設けられており、該フラップ弁(9)が、前記クラッチ室(5)から前記トランスミッション室(4)へのオイル流動を可能にし、前記トランスミッション室(4)から前記クラッチ室(5)へのオイル流動を妨害又は遮断する
ことを特徴とするトランスミッションユニット。
【請求項15】
請求項2から13までのいずれか1項記載の特徴を備えることを特徴とする、請求項14記載のトランスミッションユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190425(P2010−190425A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34259(P2010−34259)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】