説明

自動車塗装ラインにおける塗装方法

【課題】 意図しない部位に付着した耐チッピング塗料を焼き付け工程を増やすことなく容易に除去することができ、その後に続く他の塗料の塗布工程をウェット状態で行うことを可能な自動車塗装ラインにおける塗装方法を提供する。
【解決手段】 自動車の車体の所定の部位に、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、反応性アクリレートオリゴマー15〜150質量部を含有する紫外線硬化樹脂組成物をスプレーにより塗布し、前記紫外線硬化樹脂組成物を紫外線を照射して硬化させた後、前記所定の部位以外に付着した前記紫外線硬化樹脂組成物を除去し、前記紫外線硬化樹脂組成物が塗布された部位と前記紫外線硬化樹脂組成物が除去された部位の両方の部位に対して、他の塗料をウエット状態で塗り重ねて、前記他の塗料を前記紫外線硬化樹脂とともに焼き付けて硬化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のロッカーパネル、ドア下部、フェンダー等に車体保護用として塗布される紫外線硬化樹脂組成物の上に、塗料を重ねて塗布する自動車製造ラインにおける塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の耐チッピングを目的として塗布される組成物として、塩化ビニル系樹脂を主剤としたものや、その代替えとして使用されはじめているアクリル系樹脂を主剤としたものがある。
これらの耐チッピング材は、通常、自動車ボディーを構成する電着板に直接スプレーにより塗布された後、その上から中塗り塗料、ベース塗料、クリアー塗料等を積層して塗布して、焼き付けて硬化させる。
上記工程において、耐チッピング材のスプレーダストが意図しない部位に付着すると、その部位に後に塗布される塗料に対して、突起となったり、後から塗布される塗料をはじいてしまう結果、下地が露出する等の塗装外観不良が非常に大きい問題となる。
【0003】
このため、従来の自動車塗装ラインでは、耐チッピング材をスプレー塗布した後に、意図しない部位に付着してしまった耐チッピング塗料を拭き取り、その上から中塗り塗料を塗布するようにしている。
しかしながら、従来の耐チッピング塗料は、未乾燥状態で拭き取っていたために、被着面において引き延ばされた状態で拭き残しが生じるという問題があった。
また、耐チッピング塗料の拭き残しが生じた状態で、その上から中塗り塗料を塗布した後、これらを焼き付け・硬化後、塗装面上に生じた突起をサンドペーパにより削ったり、或いは、下地が露出したために他の中塗り塗装部位に対して凹んだ部位をサンドペーパにより平滑にして、その上から上塗り塗料を塗装していたため、塗装ラインにおける塗装効率が非常に悪いという問題があった。
【0004】
一方、最近、自動車の塗装ラインの工程を短縮し、オーブンの燃料やCOを削減することを目的として、耐チッピング塗装が部分的に施された被着面に、中塗り塗料、ベース塗料及びクリアー塗料を順にウエット状態で積層して塗布した後に、1度だけ焼き付けを行う3WETラインが増加傾向にある(例えば、特許文献1参照)。
このような3WETラインの場合には、従来の中塗り塗料を塗装した後に行っていた焼付け及びその後の平滑仕上げができなくなる為、耐チッピング塗料をダストワイプのみで完全に除去する必要がある。
しかしながら、スプレーにより生じたダストは、滴径が小さいために、目視で判別する際に見逃しやすく、また、拭き取りの仕方によっては、逆に、ゾル状の耐チッピング塗料を引き伸ばして筋状にしてしまい、上から塗布される塗料をはじく領域をかえって広くしてしまい、3WETラインを導入する際の問題となっていた。
【0005】
この3WETラインを導入する上での問題を解決するために、耐チッピング塗料の上に別の塗料を塗布する前に、仮焼き炉により硬化させる方法が考えられるが、これでは、3WETラインを導入するための本来の目的である、塗装ライン短縮やオーブン燃料等の削減という目的を達することができない。
また、耐チッピング塗料を高い焼付け温度で焼き付けると、拭き取りの必要があるダストが被着面で密着してしまい、布等では十分に拭き取ることはできないという問題がある。また、耐チッピング塗料を低い焼付け温度で焼き付けると、粘土状となったダストの細かい残渣が残留するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-83201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、意図しない部位に付着した耐チッピング塗料を焼き付け工程を増やすことなく除去することができ、その後に続く他の塗料の塗布工程をウエット状態で行うことを可能な自動車塗装ラインにおける塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の自動車塗装ラインにおける塗装方法は、請求項1に記載の通り、自動車の車体の所定の部位に、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、反応性アクリレートオリゴマー15〜150質量部を含有する紫外線硬化樹脂組成物をスプレーにより塗布し、前記紫外線硬化樹脂組成物を紫外線を照射して硬化させた後、前記所定の部位以外に付着した前記紫外線硬化樹脂組成物を除去し、前記紫外線硬化樹脂組成物が塗布された部位と前記紫外線硬化樹脂組成物が除去された部位の両方の部位に対して、他の塗料をウエット状態で塗り重ねて、前記他の塗料を前記紫外線硬化樹脂とともに焼き付けて硬化させることを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の自動車塗装ラインにおける塗装方法において、前記紫外線硬化樹脂組成物を、拭き取りにより除去することを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の自動車塗装ラインにおける塗装方法において、前記他の塗料は、中塗り塗料、ベース塗料及びクリアー塗料であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動車塗装ラインにおける塗装方法において、前記紫外線硬化樹脂組成物は、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、反応性アクリレートオリゴマー15〜100質量部と、重合開始剤0.15〜30質量部を含有したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫外線照射により組成物を硬化させるため、拭き取りの際に、引き延ばすようなことがない、また、紫外線硬化樹脂組成物は、紫外線照射により硬化はするものの被着体(電着板)とは密着しない為、簡単に拭き取ることができる。そして、この紫外線硬化樹脂組成物を使用することにより、3WET塗装を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例及び比較例の評価を示す表1
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、自動車の車体の所定の部位に、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、反応性アクリレートオリゴマー15〜150質量部を含有する紫外線硬化樹脂組成物をスプレーにより塗布し、前記紫外線硬化樹脂組成物を紫外線を照射して硬化させた後、前記所定の部位以外に付着した前記紫外線硬化樹脂組成物を除去し、前記紫外線硬化樹脂組成物が塗布された部位と前記紫外線硬化樹脂組成物が除去された部位の両方の部位に対して、他の塗料をウエット状態で塗り重ねて、前記他の塗料を前記紫外線硬化樹脂とともに焼き付けて硬化させるものである。
紫外線硬化樹脂組成物が塗布される自動車の車体の所定の部位を構成する部材としては、例えば、その外板を構成する電着板等を挙げることができる。この所定の部位に対して、紫外線硬化樹脂組成物をスプレーにより塗布した後、紫外線を照射して硬化させる。この状態において、紫外線硬化樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂等の可塑剤を取り込むゲル化反応を生じていない為に所定の部位に密着していない。このため、所定部位以外に付着した塗料は、布等を用いて手作業にて拭き取る等の除去を容易に行うことが可能となる。従って、紫外線硬化樹脂組成物が除去された所定の部位には、複数の他の塗料をウエット状態(焼き付けを行わない状態)で積層して塗布することが可能となる。
【0012】
本発明において使用する紫外線硬化樹脂組成物としては、スプレーにより塗布でき、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、反応性アクリレートオリゴマー15〜100質量部を含有し、且つ、紫外線により硬化するように重合開始剤を含むものであれば特に制限するものではない。
【0013】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等から選ばれるモノマーの単一重合体や共重合体等を使用することができる。該モノマーとしては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、ter-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、ter-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等を挙げることができる。また、共重合成分として、スチレン、α-メチルスチレン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等も使用することができる。
【0014】
また、塩化ビニル系樹脂としては、(1)塩化ビニル単独又は塩化ビニルと共重合可能なコモノマーとを乳化剤及び水溶性重合開始剤の存在下で乳化重合して製造される塩化ビニルペーストレジン;或いは(2)分散剤及び油溶性重合開始剤の存在下、塩化ビニル単独又は塩化ビニルと共重合可能なコモノマーとを機械的に微分散した後重合を行う微細懸濁重合法によって製造されるものが挙げられる。尚、これら以外にも、通常の懸濁重合によって製造された、粒径の比較的大きな塩化ビニル系樹脂を併用しても差し支えない。上記共重合可能なコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;ジブチルマレエート、ジエチルマレエート等のマレイン酸エステル類;ジブチルフマレート、ジエチルフマレート等のフマール酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;エチレン、プロピレン、スチレン等のα-オレフィン類;塩化ビニリデン若しくは臭化ビニル等のハロゲン化ビニリデン若しくは他のハロゲン化ビニル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を、30質量%以下、好ましくは20%以下で共重合させることができる。
上記塩化ビニル単独又は塩化ビニルと共重合可能なコモノマーを重合させたものとして、重合度は500〜2500、好ましくは850〜2000、更に好ましくは1200〜1800が好適である。
【0015】
重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系、アルキルフェノン系(ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン等)、アシルフォスフィンオキサイド系(モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド等)、チタノセン系、オキシムエステル系、オキシフェニル酢酸エステル系、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物等を使用することができる。
この重合開始剤は、塩化ビニル系樹脂又はアクリル系樹脂100質量部に対して0.15〜30質量部含有させることが好ましい。0.15質量部未満であると、紫外線硬化が不充分となり、30質量部を超えると、未反応物が多量に残り塗膜性能低下するからである。
重合開始剤の中でも、厚膜の深部まで紫外線硬化させる必要から、アシルフォスフィンオキサイド系化合物を使用することが好ましい。また、更に、アシルフォスフィンオキサイド系化合物にアルキルフェノン系のα-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物を混合することが好ましい。重合効率の向上及び表面硬化の促進を図ることができるからである。
更に、光重合開始効率を高めるために、光増感剤を組み合わせて使用しても良い。光増感剤としては、例えば、芳香族、脂肪族3級アミン等が挙げられる。
【0016】
また、反応性アクリレートオリゴマーとしては、分子骨格がウレタン、エーテル、エステル、エポキシ、シリコン等で分子末端がアクリロイル基であるオリゴマー等を使用することができ、これらの中でも、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマーを一般的には使用している。
ポリエステルアクリレートオリゴマーは、2塩基酸とジオールから得られるポリエステルの末端水酸基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる。
ウレタンアクリレートオリゴマーは水酸基を持つアクリルモノマー、ジイソシアネート及びジオールが付加反応して、アクリル性2重結合を持つウレタンを生成する。
エポキシアクリレートオリゴマーはエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させたものである。
前記オリゴマーの含有量は、塩化ビニル系樹脂又はアクリル系樹脂100質量部に対して15〜100質量部とする。15質量部未満であると紫外線による硬化が不充分となり、100質量部を越えるとモノマーよりも分子量が大きいため粘度が高く、塗布作業性を著しく悪化させる傾向となるからである。
【0017】
尚、本発明の紫外線硬化樹脂組成物の塗布条件や硬化条件については、特に制限するものではないが、一例を挙げるとすると、塗布条件は、膜厚0.2〜2mm程度で、常温〜40℃程度で塗布を行い、UV硬化条件は、1000mJ/cm〜6000mJ/cmとすることができる。
【0018】
尚、上述した必須成分に加えて、必要に応じて、潜在性硬化剤、密着剤、可塑剤や充填材等を含有させるようにしてもよい。
【0019】
潜在性硬化剤としては、例えば、ポリアミン系及び変性物、芳香族アミン系及び変性物、ヒドラジド系等を挙げることができ、常温不活性であるが、特に加温により活性しイソシアネートと反応するものであれば何れも使用でき、アクリル系樹脂100質量部に対して2.5〜10質量部を含有させることが好ましい。
【0020】
また、密着剤としては、ポリアミドアミンやブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーを使用することができる。尚、ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーはイソシアネート、及びポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のα-ポリオールを反応させて得られるポリウレタンの残存イソシアネートをブロック剤を用いてブロックしたものである。
尚、反応性アクリレートオリゴマーとの安定性の面でブロックイソシアネート含有プレポリマーを使用することが好ましい。
【0021】
前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーは、以下の手順に従って製造することができる。
先ず、ポリオールと過剰のポリイソシアネート化合物を反応させ、末端NCO含有ウレタンプレポリマーを得る。
上記ポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール(PPG)、ポリエーテルポリオール変性体、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むポリエーテルポリオール;縮合ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールを含むポリエステルポリオール;ポリブタジエン系ポリオール;ポリオレフィン系ポリオール;ポリエーテルポリオールの中でアクリロニトリル単独又はアクリロニトリルとスチレン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及び酢酸ビニルの群から選ばれる少なくも1種との混合モノマーを重合乃至グラフト重合させたポリマーポリオール等が挙げられる。
【0022】
上記ポリイソシアネート化合物としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロへキサン、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ω,ω単位-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0023】
次に、末端NCO含有ウレタンプレポリマーを適当なブロック剤と反応させて遊離のNCOをブロック化することにより、目的のブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーを得る。
上記ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソノニルアルコール、ステアリルアルコール等の1価アルコール又はこれらの異性体;フェノール、クレゾール、キシロール、p-ニトロフェノール、アルキルフェノール等のフェノール類;マロン酸メチル、マロン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物;アセトアミド、アクリルアミド、アセトアニリド等の酸アミド類;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド類;2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2-ピロリドン、ε-カプロラクタム等のラクタム類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトアルドキシム等のケトン又はアルデヒドのオキシム類;メチルグリコール、エチルグリコール、エチルジグリコール、エチルトリグリコール等のグリコール誘導体;ジシクロへキシルアミン等のアミン化合物、その他エチレンイミン、重亜硫酸塩等が挙げられる。
この密着剤は、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15〜150質量部含有させることが好ましい。15質量部未満では、被着体への密着性が不充分となり、150質量部を超えると塗布作業性を著しく悪化させる傾向となるからである。
【0024】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバチン酸エステル系可塑剤等、公知の可塑剤を使用することができる。例えば、フタル酸エステル系可塑剤としては、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘキシルフタレート(DHP)、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジノニルフタレート(DNP)等、リン酸エステル系可塑剤としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシリレンホスフェート(TXP)等、アジピン酸エステル系可塑剤としては、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)等、セバチン酸エステル系可塑剤としては、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルセバケート(DOS)等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、特にフタル酸系可塑剤が好ましい。
可塑剤は、粘度調整で変量させることができる為、特に量を規定するものではないが、少なすぎると伸びが低下し、多量すぎれば塗料密着性に影響を及ぼすことがある。通常は、添加すべき可塑剤の基本量に対して±20%程度で調整する。
【0025】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、珪藻土、シリカ、タルク等の無機充填剤が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、必要に応じて、ガラスバルーン、樹脂バルーン又は加熱時膨張する樹脂バルーン等の中空粒子を配合することもできる。
【0026】
また、紫外線硬化樹脂組成物の上からウエット状態にて塗布される他の塗料としては、中塗り塗料、ベース塗料及びクリアー塗料の何れか、或いは、これらを順に積層して塗布する。尚、これらの塗料に関しては、公知のものを使用することができる。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例を比較例とともに説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
以下の原料を使用し、図1で示される配合により、実施例1〜14及び比較例1〜4の紫外線硬化樹脂組成物を作成した。
【0028】
[配合原料]
(1)アクリル系樹脂:プラスチゾル用アクリルパウダー(三菱レーヨン(株)社製 ダイヤナールLP-3106)
(2)塩化ビニル系樹脂:(東ソー(株) リューロンペースト 850)
(3)反応性アクリレートオリゴマー:
・エポキシアクリレートオリゴマー(サートマー社製 CN111US)
・ポリエステルアクリレートオリゴマー(サートマー社製 CN2300)
・ウレタンアクリレートオリゴマー(サートマー社製 CN978)
(4)重合開始剤:アシルフォスフィンオキサイド(チバスペシャリティーケミカルズ(株) IRGACURE819)
(5)潜在性硬化剤(粉体):ポリアミン系((株)アデカ社製 EH3731S)
(6)密着剤:ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー((株)アデカ社製 QR9412)
(7)充填剤
・シリカ
・炭酸カルシウム
(8)可塑剤
・スルフォン酸系ポリエステル:(ランクセス(株)社製 メザモール)
・DINP:ジイソノニルフタレート((株)J・プラス社製)
【0029】
上記実施例及び比較例を使用して、下記条件で評価試験を行い、その結果を表1(図1)に示す。
(1)硬化性:各例を10cm×10cmの電着鋼板製の試験片に、各例の組成物を膜厚2mmで塗布し、紫外線照射後、指で押して表面のタック状態とその変形を指触にて確認した。尚、表1中の評価は、「◎」は「表面タックなし、変形なし」、「○」は「若干表面タックあり、変形なし」、「△」は「表面タックあり、変形有り」、「-」は「未硬化」である。
(2)拭き取り性:各例を10cm×30cmの電着鋼板製の試験片に、各例の組成物をエアレススプレーによりダストのみで塗布した後、タグラグ(拭き取り用クロス(Rusher 粘着無じんワイピングクロス))での拭取りの程度を確認した。尚、表1中の評価は、「◎」は「容易に拭取れ、跡がない」、「○」は「若干力を加えると拭取れ、跡がない」、「△」は「拭取り後が筋状に残る」である。
(3)拭き取り後の塗装性:上記拭き取り性実施後の各試験片に、中塗(第1ベース)、上塗(第2ベース)及びクリアーをいずれもウェット状態で塗布し、焼付け後の外観を確認した。尚、上記塗装において、中塗及び上塗後は、80℃のプレヒートを3分間行い、クリアー塗布後の焼付けは130℃で18分間行った。また、塗装時の膜厚は、中塗塗料は20μm、上塗塗料は13μm、クリアーは35μmとした。また、表1中の評価は、「○」は「凹凸なし」、「△」は「凹凸あり」である。
(4)ナット落下性能:10cm×15cmの電着鋼板の試験片に対して、各例の組成物を膜厚300μmで塗布し、紫外線照射後、(3)と同様に塗装及び焼付けを行った。各試験片を、60°で傾斜した台に固定し、2mの高さから直径20mmの塩化ビニルパイプ内を通してM4サイズのナットを試験片に落とし、電着鋼板面が露出するまでのナットの総重量を測定した。
(5)耐水塗料密着性:10cm×15cmの電着鋼板の試験片に対して、各例の組成物を膜厚300μmで塗布し、紫外線照射後、(3)と同様に塗装及び焼付けを行った。
各試験片を40℃の温水に浸漬し、10日後の塗料密着性を碁盤目剥離で確認した。尚、碁盤目剥離は、各試験片の塗装面に、2mm間隔で縦横にそれぞれ11本ずつ直交させて碁盤状に切れ目を入れて2mm角の塗装片100枚を形成した。この塗装片の上からニチバン工業用セロハンテープを貼着し、テープの一端を急激に引き剥がして剥がれた枚数を計数した。
尚、上記(1)、(4)及び(5)の紫外線照射には、アイグラフィックス社製「アイグランデージ ECS-401GX」を使用し、出力を4kWとし、対象物までの距離を100mmとした。
【0030】
上記表1から以下のことがわかる。
(1)硬化性
比較例1及び2は重合開始剤を含有していないため紫外線照射しても硬化せず、比較例3及び4は反応性アクリレートオリゴマーの含有量が、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部を下回ったためである。
これに対して、実施例1〜14は、いずれも良好に硬化していることがわかった。
(2)拭き取り性
比較例1及び2は硬化していないため拭き取りの際に被着面に対して延びてしまい拭き取ることができず、比較例3及び4は反応性アクリレートオリゴマーの含有量が、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部を下回ったために、比較例1及び2と同様に紫外線硬化樹脂組成物が被着面に残存してしまった。
これに対して、実施例1〜14は、被着面の紫外線硬化樹脂組成物は良好に拭き取りできていたことがわかった。
(3)拭き取り後の塗装性
比較例1〜4は、上記(1)及び(2)の結果からもわかるように、紫外線硬化樹脂組成物の被着面に紫外線硬化樹脂組成物が残っていたため、その後に他の塗料を塗布すれば、他の塗料の表面に紫外線硬化樹脂組成物の拭き残しによる凹凸が表面に現れることとなった。
これに対して、実施例1〜14は、紫外線硬化樹脂組成物は充分に拭き取られていたため他の塗料の表面に紫外線硬化樹脂組成物の拭き残しによる凹凸が表面に現れることとなった。
(4)ナット落下性能
実施例1〜14及び比較例1〜4は、目標となるナット重量20kg以上となったが、比較例5及び6のように反応性アクリレートオリゴマーが150質量部を超える場合には、20kgを下回ることが確認された。
(5)耐水塗料密着性
実施例1〜14及び比較例1〜4は目標となる剥がれは0であったが、比較例5及び6のように反応性アクリレートオリゴマーが150質量部を超える場合には、密着性が劣り剥がれることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の塗装方法は、今後増加すると予想される3WETラインでの塗装外観向上に自動車等の構造物を始めとして広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の所定の部位に、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、反応性アクリレートオリゴマー15〜150質量部を含有する紫外線硬化樹脂組成物をスプレーにより塗布し、前記紫外線硬化樹脂組成物を紫外線を照射して硬化させた後、前記所定の部位以外に付着した前記紫外線硬化樹脂組成物を除去し、前記紫外線硬化樹脂組成物が塗布された部位と前記紫外線硬化樹脂組成物が除去された部位の両方の部位に対して、他の塗料をウエット状態で塗り重ねて、前記他の塗料を前記紫外線硬化樹脂とともに焼き付けて硬化させることを特徴とする自動車塗装ラインにおける塗装方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化樹脂組成物を、拭き取りにより除去することを特徴とする請求項1に記載の自動車塗装ラインにおける塗装方法。
【請求項3】
前記他の塗料は、中塗り塗料、ベース塗料及びクリアー塗料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車塗装ラインにおける塗装方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化樹脂組成物は、アクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、反応性アクリレートオリゴマー15〜100質量部、重合開始剤0.15〜30質量部を含有したものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動車塗装ラインにおける塗装方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−194409(P2010−194409A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39764(P2009−39764)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(598109187)アサヒゴム株式会社 (27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】