説明

自動車外装部品

【課題】耐衝撃性と剛性のバランスに優れ、さらに、導電性、塗膜密着性に優れた自動車外装部品を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)を35〜90重量%、耐衝撃性改良材(B)を5〜35重量%、膨潤性層状珪酸塩(C)を1〜15重量%、導電性付与材(D)を1〜15重量%、数平均分子量が10000以下であるエポキシ基含有化合物(E)を0.1〜10重量%の合計100重量%からなるポリアミド樹脂組成物を形成させた自動車外装部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外装部品に関し、特に耐衝撃性と剛性のバランスに優れた自動車外装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車は軽量化による燃費向上を目的にして、自動車部品のプラスチック化が急速に進み、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの内装部品や、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの外装部品のみならず、従来は金属製であったバンパー、フェンダーまでが、各種プラスチック材料によって製造されるようになった。
【0003】
これらの自動車部品には、それぞれの用途に相応しい材料物性が求められ、特に耐衝撃性と剛性のバランスが基本的な材料物性として重視されている。さらに、自動車外装部品は、耐衝撃性と剛性の高度のバランスに加えて、耐熱性、寸法安定性が高く、表面外観に優れることが要求されている。
【0004】
また、自動車外装部品は、耐候性の改善や外観向上のために塗装を施すことが一般的であり、塗装時の塗膜密着性にすぐれることが、材料物性として要求される。さらに、近年、生産性や塗装品位の向上(周辺の金属製外装部品との一体感の向上)を目的に、樹脂製外装部品にも金属製外装部品と同様に、車体に組立てた後にオンライン塗装が可能となるように、導電性が高く、塗装性に優れる自動車外装部品が求められるようになってきている。
【0005】
従来の自動車部品を構成するプラスチック材料としては、例えば、RIM・ウレタン、複合ポリプロピレン、ガラス繊維強化ポリアミドなどの無機物強化プラスチック、及びポリカーボネート(PC)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンエーテル(PPE)/ポリアミド(PA)などのポリマーアロイ材料などが挙げられる。
【0006】
特にバンパーには、一般に複合ポリプロピレンが用いられており、この複合ポリプロピレンは、例えば、特許文献1、特許文献2に示されるようにポリプロピレンに部分的に架橋されたエチレン・プロピレン共重合ゴム、及びオイルなどを配合した樹脂組成物が提案されている。
【0007】
しかし、複合ポリプロピレンは塗膜密着性が不十分であることから、成形したバンパーは、専用の塗装ライン(オフライン塗装)を用いて、脱脂洗浄、プライマー塗装、プラズマ照射等の表面処理工程の後、塗装が施されている。このような表面処理工程を塗装ラインに組み入れることは、生産コストが増大し、生産・品質管理が煩雑となるため、これらの工程を省略できるように、塗膜密着性が良好でありながら耐衝撃性と剛性のバランス等の要求物性を満たすバンパーが求められていた。
【0008】
また、フェンダーには、例えば特許文献3に示されるようにPPEとPAの組み合わせに、耐衝撃性改良材を加えた樹脂組成物が提案されている。しかし、この樹脂組成物から得られたフェンダーは、導電性が低く、オンライン塗装の塗装である静電塗装には適応できていない。
【0009】
一般的に絶縁体であるプラスチック材料に導電性を付与するために、カーボンブラックや金属粒子などを含有せしめる方法が知られているが、このような成分を配合すると耐衝撃性と剛性のバランスが崩れ、特に耐衝撃性が低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開昭53−145857号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭54−16554号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭56−49753号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐衝撃性と剛性のバランスに優れ、さらに、導電性、塗膜密着性に優れた自動車外装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する自動車外装部品は、ポリアミド樹脂(A)を35〜90重量%、耐衝撃性改良材(B)を5〜35重量%、膨潤性層状珪酸塩(C)を1〜15重量%、導電性付与材(D)を1〜15重量%、数平均分子量が10000以下であるエポキシ基含有化合物(E)を0.1〜10重量%の合計100重量%からなるポリアミド樹脂組成物を形成させた自動車外装部品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動車外装部品、ポリアミド樹脂(A)、耐衝撃性改良材(B)、膨潤性層状珪酸塩(C)、導電性付与材(D)及び数平均分子量が10000以下であるエポキシ基含有化合物(E)の特定配合からなるポリアミド樹脂組成物から形成されることから、耐衝撃性と剛性のバランスに優れ、さらに、導電性、塗膜密着性を兼備した自動車外装部品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物に使用するポリアミド樹脂(A)は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとカルボン酸を主たる原料として用いられるアミド結合を有する重合体を言う。本発明において使用するポリアミド樹脂としては、特に制限はなく、任意のアミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を原料とするポリアミドを用いることができる。
【0015】
その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、(2,2,4−又は2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、及びアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを各々単独又は混合物の形で用いることができる。
【0016】
本発明において、とくに好適に用いられるポリアミド樹脂は、200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂である。かかるポリアミド樹脂を用いることにより、得られる樹脂組成物としても優れた耐熱性や強度を持つものを得ることができる。具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)及びこれらの混合物ないし共重合体などが好ましく挙げられる。
【0017】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66コポリマー及びこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
本発明に使用するポリアミド樹脂の重合度は、通常の成形加工が施せる程度であれば、とくに制限はないが、ポリアミド樹脂1重量%の98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0019】
本発明においてポリアミド樹脂(A)の配合量は35〜90重量%であることが必要であり、好ましくは40〜80重量%である。35重量%未満では自動車外装部品の剛性及び耐熱性が低下し、また、90重量%を超えると自動車外装部品の耐衝撃性が低下することがある。
【0020】
本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃性改良材(B)を配合することが必要である。耐衝撃性改良材(B)を用いることによって、自動車外装部品に必要な耐衝撃性を得ることができるからである。
【0021】
本発明に使用する耐衝撃性改良材(B)は、ポリアミド樹脂(A)とアロイ化した際に耐衝撃性を改良する成分を言い、例えばオレフィン系化合物及び/又は共役ジエン系化合物を重合して得られる(共)重合体、ポリアミド系エラストマーやポリエステル系エラストマーなどが好ましく挙げられる。これらの耐衝撃性改良材(B)は、2種以上併用することも可能である。
【0022】
上記オレフィン系化合物及び/又は共役ジエン系化合物の(共)重合体としては、エチレン系共重合体、共役ジエン系重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが好ましく挙げられる。
【0023】
ここで、エチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体及び多元共重合体をさし、エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体などの中から選択することができる。
【0024】
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オタクセン−1などが挙げられ、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。
【0025】
非共役系ジエンとしては、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどが挙げられ、好ましくは5−メチリデン−2−ノルブルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどである。
【0026】
α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられ、その誘導体としては、アルキルエステル、アリールエステル、グリシジルエステル、酸無水物、イミドを例として挙げることができる。
【0027】
また、共役ジエン系重合体とは少なくとも1種以上の共役ジエンを構成成分とする重合体であり、例えば1,3−ブタジエンの如き単独重合体や1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンから選ばれる1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。こられの重合体の不飽和結合の一部又は全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0028】
共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは、共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素からなるブロック共重合体又はランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体の芳香環の二重結合以外の不飽和結合の一部又は全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0029】
また、自動車外装部品中の耐衝撃性改良材(B)の分散粒子径を微細に制御するために、さらに、種々の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体やビニル単量体をグラフト反応あるいは共重合して得られる(共)重合体も好ましく使用できる。耐衝撃性改良材(B)に対してグラフト反応あるいは共重合されている不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体やビニル単量体の量は、耐衝撃性改良材(B)100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましい。
【0030】
グラフト反応あるいは共重合に用いる不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられる。また、それらの誘導体としては、アルキルエステル、グリシジルエステル、ジ−又はトリ−アルコキシシリル基を有するエステル、酸無水物又はイミドなどが挙げられ、中でも、グリシジルエステル、ジ−又はトリ−アルコキシシリル基を有する不飽和カルボン酸エステル、酸無水物、イミドが好ましい。
【0031】
不飽和カルボン酸又はその誘導体の好ましい例としては、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジルエステル、シトラコン酸ジグリシジルエステル、ブテンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテンジカルボン酸モノグリシジルエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸イミド、イタコン酸イミド、シトラコン酸イミドなどであり、特にメタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸イミドが好ましく使用できる。
【0032】
また、ビニル単量体例としてはスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物を例示することができ、これらの不飽和カルボン酸又はその誘導体あるいはビニル単量体は2種以上を併用してもよい。なお、これら不飽和カルボン酸又はその誘導体あるいはビニル単量体をグラフトさせる方法については公知の手法を用いることができる。
【0033】
このような耐衝撃性改良材(B)の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体及びこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部又は全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体(「g」はグラフトを表す、以下同じ。)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−マレイミド共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−N−フェニルマレイミド共重合体及びこれら共重合体の部分ケン化物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/グリシジルエーテル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−N−フェニルマレイミド共重合体、エチレン/ブテン−1−g−N−フェニルマレイミド共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリトリメチレングリコール共重合体、ポリブチルテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリトリメチルグリコール共重合体などを挙げることができる。
【0034】
この中で、エチレン/メタクリル酸共重合体及びこれら共重合体のカルボン酸部分の一部又は全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体がさらに好ましく、エチレン/メタクリル酸共重合体及びこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部又は全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
【0035】
本発明において耐衝撃性改良材(B)の配合量は5〜35重量%であることが必要であり、好ましくは5〜30重量%である。5重量%未満では自動車外装部品の耐衝撃性が低下し、また、35重量%を超えると自動車外装部品の剛性及び耐熱性や寸法安定性が低下することがある。
【0036】
本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物は、膨潤性層状珪酸塩(C)を用いることが必要である。膨潤性層状珪酸塩を用いることによって、自動車外装部品の剛性、耐熱性及び寸法安定性を改善することができるからである。本発明に使用する膨潤性層状珪酸塩(C)とは、粘土ハンドブック41頁(日本粘土学会編、技報堂(昭和42年1月15日発行))に示されているようなアルミニウム、マグネシウム、リチウム等の金属を含む八面体シートの上下に珪酸四面体シートが重なって1枚の板状結晶層を形成している2:1型の構造を持つものであり、その板状結晶層の層間に交換性の金属陽イオンを有している化合物である。
【0037】
その1枚の板状結晶の大きさは、通常幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームである。また、その交換性金属陽イオンの陽イオン交換容量は、20〜300meq/100g、好ましくは40〜110meq/100g、より好ましくは60〜95meq/100gである。陽イオン交換容量はメチレンブルー吸着法で測定した値である。
【0038】
かかる膨潤性層状珪酸塩(C)の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物が好ましく用いられ、特にモンモリロナイトが最も好ましく用いられる。
【0039】
本発明に使用する膨潤性層状珪酸塩(C)は、膨潤性層状珪酸塩(C)における板状結晶層の層間に存在する交換性金属陽イオンの少なくとも一部が、有機オニウムイオンで交換されていることが好ましい。
【0040】
有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好ましい。アンモニウムイオンとしては、一級アンモニウムイオン、二級アンモニウムイオン、三級アンモニウムイオン、四級アンモニウムイオンのいずれであっても良い。
【0041】
一級アンモニウムイオンとしては、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0042】
二級アンモニウムイオンとしては、メチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0043】
三級アンモニウムイオンとしては、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0044】
四級アンモニウムイオンとしては、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウムなどのトリアルキルメチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0045】
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。
【0046】
上述のアンモニウムイオンの中でも、炭素数が15〜30の四級アンモニウムイオンを用いることが好ましい。かかる四級アンモニウムイオンとしては、具体的にはトリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられ、特にトリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムを用いることが最も好ましい。
【0047】
本発明において、層間に存在する交換性金属陽イオンが有機オニウムイオンで交換された膨潤性層状珪酸塩(C)は、交換性の金属陽イオンを層間に有する膨潤性層状珪酸塩と有機オニウムイオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させたアンモニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
【0048】
本発明において、膨潤性層状珪酸塩(C)中に含有される有機オニウムイオンの量は、膨潤性層状珪酸塩の分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの観点から、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し、0.4〜2.0当量の範囲であるものを用いることが好ましく、0.8〜1.2当量の範囲のものを用いることが更に好ましい。
【0049】
本発明において膨潤性層状珪酸塩(C)の板状結晶層の層間距離は1.6〜2.9nmであることが好ましい。ここで層間距離とは、膨潤性層状珪酸塩(C)の乾燥粉末を広角X線回折測定して得られた面間隔を言う。ここで、層間距離が1.6nm未満の場合又は2.9nmを超える場合は、ポリアミド樹脂と溶融混練した場合に層状珪酸塩の分散性が低下する傾向があり、このため自動車外装部品の剛性及び耐熱性が低下する場合があり、好ましくない。
【0050】
膨潤性層状珪酸塩(C)の板状結晶層の層間距離は、用いる層状珪酸塩の陽イオン交換容量、有機オニウムイオンの量によって調整することができる。
【0051】
また、これら膨潤性層状珪酸塩(C)は、好ましくは反応性官能基を有するカップリング剤で予備処理して使用することにより、より優れた機械的強度を得ることができる。また、膨潤性層状珪酸塩(C)に対して、上記の有機オニウムイオンの交換に加え、カップリング剤で予備処理して使用することも、より好ましい。
【0052】
かかるカップリング剤としてはイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0053】
特に好ましいのは、有機シラン系化合物(以下シランカップリング剤と言うこともある)であり、その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等の炭素−炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。特に炭素−炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物が好ましく用いられる。
【0054】
これらシランカップリング剤での層状珪酸塩の処理は、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中、あるいはこれらの混合溶媒中でシランカップリング剤を層状珪酸塩に吸着させる方法や、ヘンシェルミキサー等の高速撹拌混合機の中に層状珪酸塩を添加し、撹拌しながらシランカップリング剤あるいは有機溶媒を含む水溶液の形で滴下して吸着させる方法、あるいは層状珪酸塩に直接シランカップリング剤を添加して、乳鉢等で混合して吸着させることによる方法などを挙げることができる。
【0055】
層状珪酸塩をシランカップリング剤で処理する場合には、シランカップリング剤のアルコキシ基の加水分解を促進するために水、酸性水、アルカリ性水等を同時に混合することは好ましい。また、シランカップリング剤の反応効率を高めるため、水のほかにメタノールやエタノール等の水、シランカップリング剤両方を溶解する有機溶媒を混合してもかまわない。このようなシランカップリング剤で処理した層状珪酸塩を熱処理することによってさらに反応を促進させることも可能である。なお、予め層状珪酸塩をカップリング剤で処理する代わりに、層状珪酸塩とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、これらカップリング剤を添加するいわゆるインテグラルブレンド法を用いてもよい。
【0056】
本発明において膨潤性層状珪酸塩(C)の配合量は1〜15重量%であることが必要であり、好ましくは3〜10重量%である。1重量%未満では自動車外装部品の剛性、耐熱性及び寸法安定性の改善効果が低下し、また、15重量%を超えると自動車外装部品の耐衝撃性が低下することがある。
【0057】
本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物は、導電性付与材(D)を用いることが必要である。導電性付与材を用いることにより自動車外装部品のオンライン塗装時に必要な静電塗装が可能となるように導電性を付与することができるからである。
【0058】
本発明に使用する導電性付与材(D)は、自動車外装部品の導電性を改良する成分を意味する。自動車外装部品が目標とする導電性レベルは、体積固有抵抗1×1010Ω・cm未満、表面固有抵抗1×1012Ω未満のいずれか、又は両方を満足することが好ましい。
【0059】
このような導電性付与材(D)としては、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブに代表される炭素フィブリル、カーボンナノファイバー、炭素繊維、グラファイト、カーボンで被覆された無機フィラー、アルミニウムでドープされた金属酸化物、アンチモンでドープされた金属酸化物で被覆された無機フィラー等が挙げられる。
【0060】
本発明において、これらの導電性付与材(D)の中でも、導電性カーボンブラック(D1)がより好ましく使用される。
【0061】
本発明で使用する導電性カーボンブラック(D1)は、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上のものが好ましく、より好ましくはDBP吸油量が300ml/100g以上、更に好ましくは350ml/100g以上600ml/100g以下のカーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とはASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
【0062】
また、本発明で使用する導電性カーボンブラック(D1)は、BET比表面積が400m/g以上のものが好ましく、更には600m/g以上のものがより好ましい。
【0063】
市販されているものを例示すると、ライオン(株)のケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD等が好ましく挙げられる。ただし、本発明に用いる導電性カーボンブラック(D1)はこれらに限られるものではない。
【0064】
本発明において導電性付与材(D)の配合量は1〜15重量%であることが必要であり、好ましくは3〜10重量%である。導電性付与材(D)の配合量が1重量%未満では自動車外装部品の導電性が発現せず、また、15重量%を超えると自動車外装部品の耐衝撃性や成形時の流動性が低下するためである。
【0065】
本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物は、数平均分子量が10000以下のエポキシ基含有化合物(E)を含有する。エポキシ基含有化合物(E)を含有することによって自動車外装部品に優れた塗膜密着性を付与することができるからである。塗膜密着性の点でより好ましい数平均分子量は7000以下200以上である。エポキシ基含有化合物(E)とは、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物を意味する。中でも塗膜密着性と成形時における滞留安定性の点で1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に2個のエポキシ基を有する化合物がさらに好ましい。
【0066】
このようなエポキシ基含有化合物(E)としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、オロカテロール、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5、5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノールのグリシジルエーテル系エポキシ基含有化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのジオールのジグリシジルエーテル系エポキシ基含有化合物、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルジオールのジグリシジルエーテル系エポキシ基含有化合物、グリシジルエステル系エポキシ基含有化合物、グリシジルアミン系エポキシ基含有化合物、フェノール型エポキシ基含有化合物、クレゾール型エポキシ基含有化合物、脂環式エポキシ基含有化合物、シリコン変性エポキシ基含有化合物、ゴム変性エポキシ基含有化合物、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油、ナフタレン骨格を持ったエポキシ基含有化合物、ジシクロペンタンジエン骨格を持ったエポキシ基含有化合物、リモネン骨格を持ったエポキシ基含有化合物などを挙げることができる。
【0067】
これらのエポキシ基含有化合物(E)は、ハロゲン化されているもの、水素添加されているものであってもよい。これらエポキシ基含有化合物は液体、固体いずれも用いることができるが、ハンドリング性の点で固体が好ましい。
【0068】
このようなエポキシ基含有化合物(E)は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0069】
また、数平均分子量が10000以下のエポキシ基含有化合物(E)は、具体的にはエピコート1002(数平均分子量1060、エポキシ当量650、ジャパンエポキシレジン社製)、エピコート1009(数平均分子量3750、エポキシ当量2850、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられるが、本発明においてはこれに限られるものではない。
【0070】
エポキシ基含有化合物(E)の配合量は、0.1〜10重量%であることが必要である。塗膜密着性と諸物性のバランスの点で0.3〜8重量%がより好ましい。エポキシ基含有化合物(E)の配合量が、0.1重量%未満では自動車外装部品の塗膜密着性などに劣り、10重量%を越えると自動車外装部品の剛性及び耐熱性などが低下するためである。
【0071】
さらに本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物全体に対するエポキシ基含有化合物(E)の重量比を、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)を1.5×10−5〜5.0×10−5とすることが好ましい。ここで、ポリアミド樹脂組成物全体に対するエポキシ基含有化合物(E)の重量比を、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)について説明する。
【0072】
エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ基含有化合物のグラム数を意味する。したがって、ポリアミド樹脂組成物全体に対するエポキシ基含有化合物(E)の重量比を、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)は、樹脂組成物1g中に含まれるエポキシ基のグラム当量を表す。
【0073】
本発明においては、この値を1.5×10−5〜5×10−5の範囲になるように自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物を調製することが好ましい。この範囲内に調製することにより、塗膜密着性向上効果と共に成形時の滞留安定性をも兼備する実用価値の高い材料を組成し得るのである。この値が1.5×10−5未満では、塗膜密着性向上効果及び滞留安定性向上効果が十分ではない場合があり、またこの値が5×10−5を越えると滞留安定性が低下する場合があり、好ましくない。
【0074】
ここで言う滞留安定性とは、溶融状態における滞留の有無による特性変化の小ささを意味する。すなわち、熱可塑性樹脂を射出成形機中などに溶融状態で滞留させると、熱分解や、アロイ系の場合には反応が起こり、その結果、熱可塑性樹脂が本来もつ特性に変化が生じるが、その際の特性変化の小ささを意味するものである。
【0075】
一般に、ポリアミド樹脂及び官能基を有する化合物やエポキシ基含有化合物を含有する樹脂組成物の場合、溶融状態で滞留させると両者の反応により特性変化が生じ易い。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂組成物全体に対するエポキシ基含有化合物(E)の重量比を、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)を、1.5×10−5〜5×10−5の範囲に調製したポリアミド樹脂組成物においては、エポキシ基含有化合物を含有しない場合よりも特性変化が小さくなる、すなわち滞留安定性が向上することを見出したのである。ポリアミド樹脂組成物全体に対するエポキシ基含有化合物(E)の重量比を、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)を上記範囲に制御する方法としては、配合するエポキシ基含有化合物のエポキシ当量とエポキシ基含有化合物の配合量とを調整することが挙げられる。
【0076】
これは、ポリアミド樹脂組成物全体に対するエポキシ基含有化合物(E)の重量比を、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)を、上記の範囲とすることにより、(1)エポキシ当量が小さく添加量が多い場合には、エポキシ基が多く存在することでエポキシ基含有化合物とポリアミド樹脂の過剰な反応に起因すると考えられる滞留安定性低下が生じること、(2)更に、エポキシ当量が大きく添加量が少ない場合には、エポキシ基が少ないためにポリアミド樹脂と官能基を有する耐衝撃性改良材との反応に起因すると考えられる滞留安定性低下が生じること、という問題を効果的に解決できたのである。逆に言えば、この値を1.5×10−5〜5×10−5の範囲とした場合には、エポキシ基含有化合物とポリアミド樹脂の反応が適度に進行することにより、ポリアミド樹脂と官能基を有する耐衝撃性改良材との反応の進行に遅延が生じると考えられ、その結果、滞留安定性低下を効果的に解決できるのである。
【0077】
本発明の自動車外装部品に用いるポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの誘導体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、着色防止剤(次亜リン酸塩等)、他の重合体を含有することができる。
【0078】
本発明の自動車外装部品は、ポリアミド樹脂(A)、耐衝撃性改良材(B)、膨潤性層状珪酸塩(C)、導電性付与材(D)及び数平均分子量が10000以下であるエポキシ基含有化合物(E)の特定配合からなるポリアミド樹脂組成物を成形したものであることから、耐衝撃性と剛性のバランスに優れ、同時に導電性、塗膜密着性を兼備するという優れた自動車部品である。さらに、本発明の自動車外装部品は、耐熱性、寸法安定性、および表面外観にも優れた特徴を有するものである。
【0079】
次に本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物を得る方法について例を挙げて説明する。本発明に用いるポリアミド樹脂組成物は、各成分を公知の混練方法により溶融混練して得ることができる。溶融混練の方法には特に制限はなく、ポリアミド樹脂の溶融状態下で機械的剪断を行うことができればよい。その処理方法もバッチ式又は連続式のいずれでも良いが、連続的に製造できる連続式の方が生産性の面から好ましい。具体的な混練装置にも制限はなく、例えば単軸又は二軸の押出機、混練機、ニーダーなどが挙げられるが、特に二軸押出機が生産性の面で好ましい。スクリューアレンジにも特に制限は無いが、層状珪酸塩をより均一に分散させるためにニーディングゾーンを設けることが好ましい。
【0080】
押出機を用いる場合には、(i)各原料を一括して押出機に供給する方法や、(ii)任意の複数の成分をあらかじめ溶融混練してペレット化しておき、それと残りの成分を押出機に供給する方法が挙げられる。さらに、(iii)供給口を2つ以上有する押出機を使用する場合には、第一の(上流側の)供給口から任意の1ないし複数の成分を供給し、第二以降の(下流側の)供給口から残りの成分を供給する方法をとることもできる。生産性の点から、(iii)の方法が好ましい。とりわけ、(ii)、(iii)の方法で、ポリアミド樹脂(A)と膨潤性層状珪酸塩(C)を予め溶融混練しておく、又は、両成分を第一の供給口から供給する方法が好ましい。溶融混練後ストランド状に吐出し、カッティング、水冷を行いペレット化し、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0081】
本発明の自動車外装部品は、このようなポリアミド樹脂組成物を材料とし、一般的な射出成形又はガスインジェクション成形を行うことによって得られた成形品であり、さらに自動車外装部品は、その表面に塗装を施すことが好ましい。
【0082】
本発明の自動車外装部品への塗装方法については特に制限はなく、スプレー塗装法、金型内塗装、静電塗装法など公知のあらゆる塗装方法を採用することができるが、あらかじめ静電塗装が可能となるように材料に導電性を付与していることから静電塗装されることが好ましい。
【0083】
本発明の自動車外装部品は、静電塗装が可能であるため、脱脂洗浄、プライマー塗装、プラズマ照射等の従来必要であった表面処理を施す必要が無く、オンライン塗装が可能なものとなる。
【0084】
一般に、樹脂製自動車部品への塗装は、耐熱性の制約から塗料の乾燥温度が120℃以下の仕様の塗料が使用されることが多いが、本発明の自動車部品用ポリアミド樹脂組成物から得られた自動車部品は、耐熱性が高いため、140℃程度の高温下においても変形が小さく、このため高温焼き付け塗装も可能である。このことより、自動車外板塗装に使用されているアクリルアルキッド樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料を使った自動車ボディーとの一体塗装(オンライン塗装)及び焼付け処理が可能となり、塗装品質の向上を図ることができる。
【0085】
もちろん、本発明の自動車外装部品は、塗装に用いる塗料として、従来の樹脂成形品の塗装用塗料も使用することができ、種類についてはラッカー系塗料、ウレタン系塗料、アクリル系塗料、アルキッド系塗料、エポキシ系塗料などを使用することができる。
【0086】
また、塗装時の膜厚については、特に限定するものではないが、一般的には5〜150μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10〜100μmである。最も好ましくは15〜80μmである。5μm以下では隠蔽性の問題があり、また150μm以上では、塗膜表面にゆず肌等が発生し易くなり好ましくない。
【0087】
本発明の自動車外装部品として、具体的にはモール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー、バンパー、フェンダー等を挙げることができるが、本発明の自動車外装部品を構成するポリアミド樹脂組成物は塗膜密着性および導電性を有することから、バンパー又はフェンダーが上記具体例の中でも好ましい例として挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0089】
I.使用した材料
・ポリアミド樹脂:ナイロン6樹脂(東レ社製“アミラン” CM1017)。以下、「ポリアミド」と記すことがある。
・耐衝撃性改良材:エチレン・ブテンランダム共重合体(三井化学社製“N−タフマー”MH7020)。以下、「衝撃改良材」と記すことがある。
・膨潤性層状珪酸塩:Na型モンモリロナイト(陽イオン交換容量85meq/100g)100gを温水10リットルに撹拌分散し、ここにベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド(BDMS:炭素数27)36g(陽イオン交換容量(CEC)に対して1.0倍)を溶解させた温水2リットルを添加して1時間撹拌し、生じた沈殿を濾別した後、温水で洗浄し、この濾別と洗浄の操作を3回行い、得られた固体を80℃で真空乾燥して、膨潤性層状珪酸塩を得た。広角X線回折装置(理学電気製RINT1100)を用いて膨潤性層状珪酸塩の粉末試料を2θ=2〜20度の範囲で測定し、d(001)ピークをもって層間距離を求めたところ、層間距離は1.9nmであった。また、得られた膨潤性層状珪酸塩0.1gを600℃の電気炉で3時間灰化して無機灰分量を測定したところ、69重量%だった。以下、「層状珪酸塩」と記すことがある。
・タルク:富士タルク工業社製LMS300、平均粒径4.5μm。
・カオリン:エンゲルハード社製トランスリンク445、平均粒径1.4μm。
・導電性付与材1:導電性カーボンブラック(ライオン社製ケッチェンブラックEC−600JD)、DBP吸油量:495ml/100g、BET比表面積:1400m/g。以下、「導電付与材1」と記すことがある。
・導電性付与材2:導電性カーボンブラック(ライオン社製ケッチェンブラックEC)、DBP吸油量:365ml/100g、BET比表面積:800m/g。以下、「導電付与材2」と記すことがある。
・エポキシ基含有化合物1:ビスフェノールA型エポキシ基含有化合物(ジャパンエポキシレジン社製エピコート1002、数平均分子量1060、エポキシ当量650)以下、「エポキシ−1」と記すことがある。
・エポキシ基含有化合物2:ビスフェノールA型エポキシ基含有化合物(ジャパンエポキシレジン社製エピコート1009、数平均分子量3750、エポキシ当量2850)。以下、「エポキシ−2」と記すことがある。
・塗料:ポリエステル系樹脂塗料(関西ペイント社製TP−65−2グレー)
【0090】
II.評価方法
〔耐熱性:ヒートサグ性試験〕
射出成形により作製した厚さ3.2mmの引張試験片(ASTM D638 タイプIダンベル)を治具に水平に片持固定し(自由端長17cm)、オーブン中に温度140℃で40分加熱した後、試験片の自由端先端の垂れ下り距離を測定した。測定は5試料について行いその平均を求めた。以下、「ヒートサグ」と記すことがある。
【0091】
〔耐衝撃性:高速面衝撃試験〕
射出成形により作製した80mm×80mm×3.2mmの角板を、高速面衝撃試験機(島津製作所社製サーボパルサーEHF−U2H−20L型)を用いて、温度23℃の環境下においてポンチ先端径12.7mm、衝突速度1.0m/sで試験を行った。破壊状態(延性破壊、脆性破壊)は目視で判断した。以下、「高速面衝撃」と記すことがある。
【0092】
〔寸法安定性:乾熱処理時寸法変化〕
射出成形により作製した80mm×80mm×3.2mmの角板をオーブン中に140℃で40分加熱した後、射出成形時の流動方向、流動直角方向において、加熱処理前後での寸法変化率から、その寸法変化の平均を求めた。
【0093】
流動直角方向の寸法は、流動方向に対して垂直方向の断面の寸法を測定し面積を算出し、それを乾熱処理前の断面積で除することにより導出した。測定は5試料について行いその平均を求めた。
【0094】
乾熱処理時寸法変化=(乾熱処理後の流動方向に対する垂直断面積/乾熱処理前の流動方向に対する垂直断面積)×100
以下、「寸法安定性」と記すことがある。
【0095】
〔剛性:曲げ弾性率〕
射出成形により作成した厚さ6.4mmの曲げ試験片をASTM D790に従って測定した。以下、「曲げ弾性率」と記すことがある。
【0096】
〔導電性:体積固有抵抗〕
射出成形により作製した厚さ3.2mmの引張試験片(ASTM D638 タイプIダンベル)の両端を精密カットソーで切断し、長さ50mmで両端に均一な断面積(12.4mm×3.2mm)の切断面を持つ、短冊状試験片を得た。この試験片の両端の切断面に銀ペーストを塗布し、充分乾燥させた後、テスター(東亜ディーケーケ社製SM−8200)を用いて両端間の抵抗値を500Vの電圧で測定し、下式を用いて体積固有抵抗として算出した。
体積固有抵抗(Ω・cm)=抵抗値×(長さ/断面積)
なお、この測定は5個の異なる試験片に対して実施し、その加算平均をもって体積固有抵抗とした。以下、「導電性」と記すことがある。
【0097】
〔表面外観:目視〕
射出成形により作製した80mm×80mm×3.2mmの角板にスプレーガンを用いて、ポリエステル系塗料で塗装を施し、140℃で20分の焼付処理を行った後、表面に凹凸が目立つものを×、問題ないものを○とした。以下、「表面外観」と記すことがある。
【0098】
〔塗膜密着性:基盤目剥離試験〕
表面外観の評価に用いた焼付塗装後の角板を、23℃×50%RHの条件で48時間放置した後、剥離試験を行った。剥離試験は、カッターナイフで1mm間隔で縦横11本の切り込みを入れ、100個の基盤目を作り、セロハン粘着テープを用いて行い、剥離数を求めた。この測定により得られた測定値が小さいほど、塗膜密着性に優れると言える。以下、「塗膜密着性」と記すことがある。
【0099】
実施例1〜4、比較例1〜6
各材料を表1に示す重量割合でポリアミド樹脂組成物を配合し、ポリアミド樹脂組成物全体に対するエポキシ基含有化合物(E)の重量比を、エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)を「エポキシg当量」として示した。ポリアミド樹脂組成物を調製するため、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX−44)で溶融混練後ペレット化した。
【0100】
得られたペレットを80℃、12時間の条件で真空乾燥した。乾燥したペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業社製PS60E9ASE)でASTM D638 タイプIダンベル試験片と80mm×80mm×3.2mmの角板を成形し、耐熱性、耐衝撃性、寸法安定性、導電性、表面外観、塗膜密着性を評価した。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例1〜4と比較例1〜6との比較において、実施例1〜4は剛性、耐熱性(ヒートサグ)、耐衝撃性(高速面衝撃)、寸法安定性(乾熱処理時の寸法変化)、導電性(体積固有抵抗値)、表面外観、塗膜密着性の全ての評価において優れた結果を示しており、自動車外装部品用として好適なものであった。
【0103】
上記により調製したポリアミド樹脂組成物を用いて射出成形機(住友重機械工業社製SG75H−MIV)でシリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で自動車部品を作成した。実施例の自動車部品は、比較例のものと比較して耐衝撃性と剛性のバランスに優れ、さらに耐熱性、表面外観、導電性、塗膜密着性を兼備していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)を35〜90重量%、耐衝撃性改良材(B)を5〜35重量%、膨潤性層状珪酸塩(C)を1〜15重量%、導電性付与材(D)を1〜15重量%、数平均分子量が10000以下であるエポキシ基含有化合物(E)を0.1〜10重量%の合計100重量%からなるポリアミド樹脂組成物を形成させた自動車外装部品。
【請求項2】
前記膨潤性層状珪酸塩(C)における板状結晶層の層間に存在する交換性金属陽イオンを、有機オニウムイオンで交換した請求項1記載の自動車外装部品。
【請求項3】
前記板状結晶層の層間距離が、1.6〜2.9nmである請求項1又は2記載の自動車外装部品。
【請求項4】
前記導電性付与材(D)が、導電性カーボンブラック(D1)である請求項1〜3いずれかに記載の自動車外装部品。
【請求項5】
前記導電性カーボンブラック(D1)のDBP吸油量が、250ml/100g以上である請求項4に記載の自動車外装部品。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂組成物全体に対する前記エポキシ基含有化合物(E)の重量比を、該エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で徐した値(エポキシ基含有化合物の重量比/エポキシ当量)が、1.5×10−5〜5.0×10−5である請求項1〜5いずれかに記載の自動車外装部品。

【公開番号】特開2006−342295(P2006−342295A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170825(P2005−170825)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】