説明

自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法

【課題】本発明は、植物由来脂肪酸含有率を大幅に向上させた、環境貢献度が高く、より反発弾性率が向上された自動車座席用ウレタンフォームを得ることを課題とする。
【解決手段】少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られ、且つポリオール成分が植物由来成分含有ポリオールと石油由来ポリオールとの混合物である軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームであって、前記自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来脂肪酸含有率が31重量%〜66重量%であり、且つ反発弾性率が45%〜70%であることを特徴とする自動車座席用ウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンフォーム原料成分に植物性油脂を使用した自動車座席用ウレタンフォームに関する。更に詳しくは、本発明は、自動車座席用ウレタンフォームの重量のうちの植物由来脂肪酸含有率を大幅に向上させた、環境貢献度の高い自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、地球温暖化防止、循環型社会の構築をめざし、技術開発の取り組みが世界規模で行われている。二酸化炭素は地球温暖化の一因とされている温室効果ガスの一つであり、その排出量の削減が求められている。
【0003】
現在、工業的に生産されている自動車座席用ウレタンフォームは、石油由来原料から製造されている(特許文献1)。ところで、この自動車座席用ウレタンフォームは廃車処理の際、シュレッダー処理された後、焼却処理される。従って、特許文献1のような石油由来原料のウレタンフォームを焼却することにより、地球温暖化の一因とされている温室効果ガスである二酸化炭素が増加してしまう。
【0004】
また、石油や石炭は有限で再生が不可能な資源であり、資源枯渇を防止するためにもその使用量削減が求められている。この石油由来原料の代替原料として注目されているのが植物由来原料である。植物由来原料は植物が大気中の二酸化炭素を取り込んで生産する、再生可能な資源である。従って、焼却によって二酸化炭素が発生しても、元々が二酸化炭素から光合成により作られているので、地球規模での二酸化炭素の収支はゼロであり地球温暖化を防止できると考えられている。このようなことから石油由来原料に代わって、植物由来原料を使用する働きがある。従来、植物由来原料からポリウレタンフォームの原料を製造する方法として、様々な方法が検討されている(特許文献2,3,4、非特許文献1)。
【0005】
特許文献2には、植物由来の原料として、曝気大豆油をポリエーテル物質として使用したポリウレタンフォームが開示されている。特許文献3,4には、エポキシ化大豆油のアルコール開環物をポリエーテル物質として使用したポリウレタンプレポリマーが開示されている。
非特許文献1には、廃大豆油を原料に65%硫酸と30%過酸化水素水を混合加熱し大豆油の持つ2重結合部分に水酸基を導入してポリオールを精製し、これとポリメリックジイソシアネート(PMDI)、水、アミン系触媒、シリコーン系整泡剤を混合攪拌することでウレタンフォームを製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平7−206961号公報
【特許文献2】特表2002−524627号公報
【特許文献3】特開昭59−207914号公報
【特許文献4】特開昭63−415123号公報
【非特許文献1】松永勝治,小倉正和、平成14年度 東洋大学修士論文要旨集
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2〜4に記載のポリウレタンフォームは植物由来であり、焼却による二酸化炭素の排出量の削減に期待されている。しかしながら、特許文献2のポリウレタンフォームは、大豆油の低分子量に起因して反発弾性が不十分であり自動車用クッションとしては使用できない。また、特許文献3,4のポリウレタンプレポリマーは主として湿気硬化型1成分ポリウレタンフォームの形成に用いられるものであり、自動車用クッション用途には用いることができない。
【0007】
また、非特許文献1のウレタンフォームの反発弾性率(JIS K6400)は1%であり自動車用途の目標値40%以上には程遠い。この反発弾性率は自動車座席用ウレタンフォーム材の特性値としては最も重要であり、反発弾性率が低いとウレタンフォームを自動車座席に用いる場合には、厚くして底づき感をなくす必要がある。しかし、フォームを厚くすることは限られた自動車の空間を狭めることにつながり好ましくない。また、底づき感をなくすためにフォームを硬くすると、座り心地が悪化してしまう。更に、非特許文献1のウレタンフォームの永久圧縮歪み(JIS K6400の50%圧縮)は47%であり、自動車用途の目標値20%以下には程遠い。
【0008】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、植物由来脂肪酸含有率を大幅に向上させた、環境貢献度が高く、より反発弾性率が格段に向上された自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動車座席用ウレタンフォームは、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られ、且つポリオール成分が植物由来成分含有ポリオールと石油由来ポリオールとの混合物である軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームであって、前記自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来脂肪酸含有率が31重量%〜66重量%であり、且つ反発弾性率が45%〜70%であることを特徴とする。
【0010】
本発明のウレタンフォームにおいて、前記植物由来成分としては、ヒドロキシ脂肪酸を構成成分とする油脂、及びその誘導体からなる群から選ばれる1種以上のものが挙げられる。
本発明において、前記植物由来成分含有ポリオールとしては、ヒマシ油とアルデヒド基を有する化合物とを反応させてなる水酸基を保有する変性ヒマシ油が挙げられる。
本発明において、前記アルデヒド基を有する化合物が、アルデヒド基の他に、イソシアネート基と反応し得る活性水素官能基を有する場合が挙げられる。
前記アルデヒド基を有する化合物としては、炭素数1〜20のアルデヒド化合物が挙げられる。前記石油由来ポリオールの数平均分子量は5000〜10000であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る自動車座席用ウレタンフォームの製造方法は、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームの製造方法であって、前記ポリオール成分が植物由来成分含有ポリオールと石油由来ポリオールとの混合物であり、前記植物由来成分含有ポリオールとしてヒマシ油とアルデヒド化合物を反応させてなる変性ヒマシ油を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明のウレタンフォームの製造方法において、前記ポリオール成分100重量部のうち、ヒマシ油とアルデヒド基を有する化合物とを反応させてなる変性ヒマシ油を45重量部〜75重量部用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術では得られなかった、植物由来脂肪酸含有率を大幅に向上させた、環境貢献度が高く、より反発弾性率が向上された座り心地の良い自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法を提供できる。具体的には、本発明により、目的とする自動車座席の快適性や性能値、あるいは環境貢献の必要性に応じて植物由来脂肪酸含有率の異なる自動車座席用ウレタンフォームを任意に選択することのできる自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明に係る自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法について、詳しく説明する。
本出願人は、先に、ヒマシ油を予めイソシアネートで架橋したウレタンプレポリマーを用いることにより、植物由来脂肪酸含有率を向上させる自動車座席用ウレタンフォームについて出願した(特願2006−233989)。しかしながら、ウレタンプレポリマーは架橋により生成される化学結合がウレタン結合であるため、結合間の水素結合に由来し、プレポリマーの粘度が非常に高くなってしまう。このことにより、汎用の発泡機を用いてウレタンフォームを製造するためには石油系ポリオールにより希釈して粘度を下げる必要性が生じてしまい、その結果、高植物由来成分含有率のウレタンフォームを得にくかった。また、ウレタンプレポリマー自体の高分子量化は、さらなるの粘度の増加を招くため、植物由来成分の高分子量化が困難であり、さらなる自動車座席用シートの反発弾性の向上は困難であった。
【0015】
本発明は、こうした点を考慮して、より改善された自動車座席用ウレタンフォーム及びその製造方法を究明するに至った。
本発明において、植物由来脂肪酸含有率(%)は、次式(1)のように定義される。
植物由来脂肪酸含有率(%)=(植物由来脂肪酸重量÷ウレタンフォーム重量)×100
…(1)
前記植物由来脂肪酸重量は、FT−IRやGS−MS等の分析装置を用いて、その含有割合を定量し、植物由来脂肪酸重量=ウレタンフォーム重量×植物由来脂肪酸(カルボン酸(RCOOH)換算)含有割合として算出することができる。
【0016】
なお、植物由来脂肪酸含有率(%)は、配合処方が分かっている場合には、次式(2)のようにして求めることができる。
植物由来脂肪酸含有率(%)={植物由来脂肪酸重量÷(各原料成分重量の総和−ガスロス重量)}×100 …(2)
但し、植物由来脂肪酸重量(カルボン酸(RCOOH)換算)=植物由来成分重量×植物由来成分中の脂肪酸含有割合で表わされる。ここで、ウレタンフォーム生成反応は下記化[1]に示す式(3)のように表わされるが、同時に発泡剤として加えられた水とイソシアネートとが反応して二酸化炭素が発生し、ウレタンフォームの発泡反応が起る。この時の反応は下記化[2]に示す式(4)のように表わされる。
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
イソシアネートと水との反応により二酸化炭素ガスは大気中に放出され、ウレタンフォーム中には残らないため、その損失分を「ガスロス」という。このガスロスの重量(放出されるCO重量)の算出は、原料中の水が全て二酸化炭素として放出されると考えて、次式(5)のように定義される。
【0019】
放出されるCO重量=(CO分子量÷水分子量)×水重量 …(5)
本発明において、植物由来脂肪酸含有率は31重量%〜66重量%であり、自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来脂肪酸含有率が高ければ、焼却処理時の二酸化炭素排出量を減少させることができ、環境へ大幅に貢献することが可能である。しかし、植物由来脂肪酸含有率が高すぎると自動車座席の快適性も失われてしまうため、好ましくは植物由来成分含有率が35重量%〜60重量%、更に好ましくは35重量%〜50重量%、最も好ましくは35重量%〜45重量%とすることにより環境への貢献度も高く、石油系由来原料により製造された自動車座席用ウレタンフォームと比較して遜色のない自動車座席用ウレタンフォームを提供することが可能となる。
【0020】
本発明において、「ポリオール成分」とは、植物由来成分含有ポリオール(以下、植物由来ポリオールともいう)と石油由来ポリオールとの混合物であり、末端に水酸基を有するポリオール単体、数種のポリオールの混合物、あるいは前記ポリオール成分にウレタンフォーム発泡に必要なイソシアネート化合物以外の成分を予め混合したものを示す。具体的には、発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の添加剤を示す。これらの成分全てを混合する必要はなく、製造方法に応じて前記の項目の内1つ以上を選択すればよい。
【0021】
本発明において、「植物由来成分」とは、主に植物種子を圧搾するか又は溶剤で抽出し、精製、脱色及び脱臭して得られる脂油及びその誘導体をいう。油脂の例としては、ヒマシ油、レスクレラ油等が挙げられる。また、その誘導体の例としては、油脂及び/又はそれを構成している脂肪酸や多価アルコール(ポリアルキレングリコール等の化合物を含む)や他の酸類(一塩基酸、二塩基酸や多塩基酸を含む)等を用いて水素添加、酸化重合、脱水反応、縮合反応等、一般的な公知の方法により得られるヒドロキシ脂肪酸含有の誘導体(水酸基末端ウレタンプレポリマーを含む)が挙げられる。中でも、元来ヒドロキシル基(水酸基)を有するリシノール酸を90%以上含有しているヒマシ油は植物由来成分として最も好ましく用いることができる。
【0022】
本発明において、「変性ヒマシ油」とは、目的とする性状となるよう植物由来成分とアルデヒド基を有する化合物を混合し、脱水縮合反応させたものである。この変性ヒマシ油の合成は公知の方法を用いることが出来る。例えば植物由来ポリオールを任意の溶媒に溶解させた後、任意のアルデヒドを添加する。ここで、溶媒としては、シクロヘキサン等の公知の溶剤を用いることができる。この反応液をディーン・スタークトラップを用いて還流し、脱水縮合反応を行ないつつ、系外へと反応により生じる水を除去する。反応が完結した後に、溶媒を減圧除去することにより目的とする化合物を得ることが出来る。
なお、目的とする性状とは、具体的には、数平均分子量が2000〜7000、官能基数が2〜4、粘度が4000cP以下、酸価が10mgKOH/g以下である。
【0023】
本発明に使用できる「アルデヒド基を有する化合物」とは、分子構造中に1つ以上のアルデヒド基を有する化合物であれば、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,プロピオンアルデヒド,ブチルアルデヒド,バレルアルデヒド,ヘキシルアルデヒド,オクチルアルデヒド,デシルアルデヒド,ベンズアルデヒド,アクロレイン,シンナムアルデヒド,ペリルアルデヒドが挙げられる。
【0024】
ここで、上記の任意の溶媒に溶解させ共沸させる方法においては、その溶媒の沸点より高く、かつ水の沸点よりも高い沸点を有する化合物を使用するのがよいため、炭素数が5〜10のアルデヒド化合物がより好ましい。
ところで、炭素数が4以下のものは沸点が低く、溶媒より先に系外に出てしまい、前述したディーン・スタークトラップを用いる変性ヒマシ油の反応に寄与しづらい。一方、アルデヒド基以外の炭素鎖はウレタンフォーム中において結合に関与しないぶら下がり構造となるため、このぶら下がり構造が大きすぎるとウレタンフォームの物性が低下してしまう。よって、上記変性ヒマシ油の合成においては、炭素数5〜6のバレルアルデヒド,ヘキサナールが最も好ましい。
【0025】
一方、前記ぶら下がり構造を防止するために、ヒマシ油の変性に用いるアルデヒド化合物として、分子構造中にアルデヒド基以外にイソシアネート成分と反応し得る活性水素官能基をもつアルデヒド化合物を用いることも出来る。この場合の当該活性水素官能基として、アミノ基、カルボキシル基が挙げられる。例えば、フェニルアラニナール、グリシナール、3−アミノスクシンアルデヒド酸が挙げられる。前記官能基がアルデヒド化合物に存在し、ウレタンフォーム生成時にイソシアネート成分と反応することで架橋点となる。このことにより、ぶら下がり構造を解消し、ひいては、生成するウレタンフォームの物性低下を防止することが出来る。
【0026】
この本発明の変性ヒマシ油用いることにより、目的とする自動車座席用ウレタンフォームの物性、あるいは製造設備に合わせて、植物由来脂肪酸含有率の高い自動車座席用ウレタンフォームを自由に設計することが可能となる。
【0027】
前記「イソシアネート成分」とは、ウレタンフォーム発泡に用いるイソシアネート化合物単体、及び、イソシアネート化合物と、イソシアネート化合物と反応しない成分をあらかじめ混合させたものを示す。
【0028】
また、本発明に係る「イソシアネート化合物」とは、分子中にイソシアネート基を2個以上含有する芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネート、あるいはそれらの変性物をいう。具体的には、脂肪族ジイソシアネート類、脂肪族環式ジイソシアネート類、脂肪族一芳香族ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、テトライソシアネート類、ポリイソシアネート類、または、これらの混合物が挙げられる。
【0029】
脂肪族ジイソシアネート類には、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネ一ト、1,3−ブチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、ブチリデンジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
脂肪族環式ジイソシアネート類には、例えば1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0031】
脂肪族−芳香族イソシアネート類には、例えばm−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−タレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−、又は2,6−トルエンジイソシアネート又はそれらの混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネートが挙げられる。
【0032】
芳香族ジイソシアネート類にはジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、クロロジフェニルジイソシアネート等、トリイソシアネート類には、トリフェニルメタン−4,4’、4”トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等、テトライソシアネート類には、4,4’−ジフェニル−ジメチルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート等、ポリイソシアネート類には、トルエンジイソシアネートダイマー、トルエンジイソシアネートトリマーが挙げられる。
【0033】
本発明によれば、低分子量である植物由来成分とアルデヒド基を有する化合物の仕込み比により、任意の分子量まで高分子量化することが出来る。このため、植物由来脂肪酸含有率が高含有量であるにも関わらず、自動車用途に用いることができるほどの反発弾性率を有する自動車座席用ウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0034】
また、本発明では、高分子量化する際にアルデヒド基を持つ化合物を架橋剤として用いる為、変性した結果生じる化学結合がエーテル結合であることも反発弾性率の向上に寄与している。この結合様式を用いて高分子化することにより反発弾性率が向上することは、石油系高分子量ポリオールの結合様式と同様であることから実証済である。
【0035】
その上に、上記エーテル結合は双極子モーメントが比較的低く、異なる分子の結合間での水素結合を生じない。その結果、一般的にポリオールの高分子化に用いられるエーテル結合以外の結合様式として汎用であるエステル結合、ウレタン結合と比較すると得られるポリオールの粘度が低くなる。
【0036】
ところで、ポリオール成分の粘度が生産へ与える影響は非常に大きい。例えば、自動車用クッションの製造に汎用的に用いられる高圧発泡機ではポリオール成分の上限粘度は通常3000cP程度である。従来、植物由来ポリオールの粘度は3000cPを超える場合、低粘度の石油由来ポリオールを混合し、3000cP以内となるよう希釈しなければならなかった。このことは、自動車座席用ウレタンフォーム中の植物由来脂肪酸含有率の減少、ひいては大気中へ放出されてしまう二酸化炭素量の増加につながっていた。
【0037】
この点において、本発明に係る低粘度の植物由来ポリオールを用いることにより、目的に応じて任意の植物由来脂肪酸含有率を選択できる。かつ、混合する石油系ポリオール種に制限がない。このことにより、目的とするウレタンフォーム物性に応じて設計を行なうことが可能となる。
【0038】
本発明に係る「ウレタンフォーム」は、スラブ法,ワンショット法,セミプレマー法及びプレポリマー法等公知の製造方法によって製造される。発泡剤としては、例えば水,有機系発泡剤,無機系発泡剤,空気,二酸化炭素を使用することができる。有機性発泡剤としては、例えば、アセトン,ジクロロメタン,ニトロアルカン,ニトロ尿素,アルドオキシム,活性メチレン化合物,酸アミド,3級アルコール,シュウ酸水和物が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、ホウ酸,固体炭酸,水酸化アルミニウム等が挙げられる。有機性発泡体及び無機系発泡体ともに、水を使用することが好ましい。
【0039】
また、ポリオールとイソシアネートの反応速度を調整するための触媒としては、ポリウレタンの製造に通常用いられる触媒、例えば三級アミンや反応性アミンが挙げられる。具体的には、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’、N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザービシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾールが挙げられる。
【0040】
また、反応性アミンとしては、例えばジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N’,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミンが挙げられる。また、これらの有機酸塩、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の有機金属化合物(他にアルミニウム、スズ)等を用いても良い。触媒の添加量は、0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、0.3重量%〜2重量%であることが更に好ましい。
【0041】
整泡剤としては、ポリウレタンの製造に通常用いられる整泡剤、例えばシリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤等が挙げられるがシリコーン系整泡剤を用いることが好ましい。
上記の他に必要に応じて活性水素化合物、架橋剤、光安定化剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定化剤、充填剤、着色防止剤、顔料、その他添加剤等を添加することができる。
【0042】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、ポリオール成分や触媒、整泡剤等の種類は上述したものに限らず、他のポリオール成分や触媒、整泡剤等を用いることができ、それらの配合割合も上述した数値に限定されるものではない。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られ、且つポリオール成分が植物由来成分含有ポリオールと石油由来ポリオールとの混合物である軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームであって、前記自動車座席用ウレタンフォーム重量に占める植物由来脂肪酸含有率が31重量%〜66重量%であり、且つ反発弾性率が45%〜70%であることを特徴とする自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項2】
前記植物由来成分が、ヒドロキシ脂肪酸を構成成分とする油脂、及びその誘導体からなる群から選ばれる1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項3】
前記植物由来成分含有ポリオールが、ヒマシ油とアルデヒド基を有する化合物とを反応させてなる水酸基を保有する変性ヒマシ油であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項4】
前記アルデヒド基を有する化合物が、炭素数1〜20のアルデヒド化合物であることを特徴とする請求項3に記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項5】
前記アルデヒド基を有する化合物が、アルデヒド基の他に、イソシアネート基と反応し得る活性水素官能基を有することを特徴とする請求項3若しくは請求項4記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項6】
前記石油由来ポリオールの数平均分子量が5000〜10000であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の自動車座席用ウレタンフォーム。
【請求項7】
少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる軟質ポリウレタンフォームからなる自動車座席用ウレタンフォームの製造方法であって、前記ポリオール成分が植物由来成分含有ポリオールと石油由来ポリオールとの混合物であり、前記植物由来成分含有ポリオールとしてヒマシ油とアルデヒド化合物を反応させてなる変性ヒマシ油を用いることを特徴とする自動車座席用ウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
前記ポリオール成分100重量部のうち、ヒマシ油とアルデヒド基を有する化合物とを反応させてなる変性ヒマシ油を45重量部〜75重量部用いることを特徴とする請求項7記載の自動車座席用ウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2009−84321(P2009−84321A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252613(P2007−252613)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003425)株式会社東洋クオリティワン (18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000118556)伊藤製油株式会社 (15)
【Fターム(参考)】