説明

自動車操作システムの診断を実施する方法および装置

自動車操作システム(1)から発信されるデータを記録する装置は、揮発性メモリと、不揮発性メモリと、データ記録モジュール(8)とを備えており、操作システム(1)によって発信される作動状態に関する信号を受信可能であって、作動状態信号の立ち上がりエッジで揮発性メモリの第1の領域に、作動状態信号の立ち下がりエッジで揮発性メモリの第2の領域に、それぞれデータを記録することができ、更には、作動状態信号を受信可能であって、作動状態信号により立ち下がりエッジ上に記録するコマンドを起動することができる記録操作モジュール(5)を備えており、前記記録モジュール(8)は、更に、記録コマンドを受信可能であって、記録コマンドが起動されている場合、不揮発性メモリの領域に揮発性メモリの2つの領域の内容を記録することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車制御システムの診断を実施する方法および装置に関する。
【0002】
特に、本発明はアシストパーキングブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、特定の自動車は、自動車の状況に応じてパーキングブレーキを自動的に操作するアシストパーキングブレーキシステムを備えている。このようなシステムでは、次の状況を自動的に操作することができる。
発進アシスト。この原理では、エンジンによって伝達されたトルクが勾配の作用を相殺するのに十分な力になると、非駆動輪のブレーキが解除される。
自動作動。この原理では、運転者がエンジンの停止を要求すると、パーキングブレーキが自動的にかかる。
発電ブレーキ。この原理では、パーキングブレーキ単独で一定の減速を保ちながら、車輪の回転をロックさせずに車両のブレーキをかける。
【0004】
パーキングブレーキの補助操作は複雑であり、あらゆる使用状況、特に運転者によってシステムが適切に使用されていない状況を考慮する必要がある。たとえば、エンジンが作動しており、パーキングブレーキが手動でかかっていない場合に運転者が車両のドアを開けると、車両が静止していないことから、システムは警告を発生する。さらに、エンジンがストールした状態で、パーキングブレーキがかかっていないまま運転者がドアを開けると、警告信号が発生し、パーキングブレーキがかかっていないことを運転者に示す。
【0005】
状況によっては、アシストパーキングブレーキシステムは運転者によって正しく使用されないことがあり、たとえば運転者が警告信号を無視すれば危険な状況に陥る可能性がある。このため、危険な状況の原因を判断し、運転者によってシステムが適切に使用されていないことを肯定又は否定できるように、そのような状況を診断する必要性がある。
【0006】
また、事故の場合、警告信号の発生と運転者によるパーキングブレーキの作動との間の経過時間を確認するのは困難である。現在、ほとんどの自動車が、電子制御装置を流れる情報に日付を付ける手段を備えていない。
【0007】
たとえば、車両が正の変位方向に動作してクラッチペダルが適正な位置に達するとパーキングブレーキが解除されるパーキングブレーキ制御システムについて記載した特許文献1を引用することができる。しかし、この明細書には、アシストパーキングブレーキシステムの診断を実施する手順が記載されていない。
【0008】
また、車輪にかかる制動トルクが特定の閾値を下回るとパーキングブレーキが解除されるパーキングブレーキ制御装置を開示した特許文献2を引用することができる。さらに、坂道発進を支援する装置を記載した、本出願人による特許文献3を引用することができる。また、特許文献4は、発進時にパーキングブレーキを解除する自動装置を開示している。このような明細書はいずれも、アシストパーキングブレーキシステムの操作を診断する手段を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許出願第2376990号明細書
【特許文献2】英国特許出願第2342967号明細書
【特許文献3】仏国特許出願第2828450号明細書
【特許文献4】仏国特許出願第2841199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的のひとつは、自動車の汎用制御システムにより警告信号が発信されたのち、不具合がアップロードされていない場合でもシステムの動作を診断する装置および方法を提供することである。
【0011】
特に、本発明の装置および方法は、自動車のアシストパーキングブレーキシステムを診断するのに適している。
【0012】
本発明の別の目的は、警告信号の発生と運転者の反応との間の時間を確認する簡便かつ安価な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態では、自動車制御システムから発信されるデータを記録する装置は、揮発性メモリと、不揮発性メモリと、データ記録モジュールとを備え、制御システムによって発信される作動状態信号を受信することができ、作動状態信号の立ち上がりエッジで揮発性メモリの第1の領域に、作動状態信号の立ち下がりエッジで揮発性メモリの第2の領域にデータを記録可能である。
【0014】
この装置は、操作作動状態信号を受信可能であって、作動状態信号の立ち下がりエッジで記録コマンドを起動可能な記録操作モジュールをさらに備える。さらに、記録モジュールは、記録コマンドを受信することができ、記録コマンドが起動しているとき、不揮発性メモリの領域に揮発性メモリの2つの領域の内容を記録可能である。
【0015】
このような装置は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを備える。揮発性メモリは、データを記録する2つの領域を備える。さらに、不揮発性メモリは、複数の記憶領域を備え、記録をそれぞれ異なる領域に保持することができる。「不揮発性メモリの領域にデータを記録する」という表現は、新たに記録するごとに異なる不揮発性メモリの領域にデータを記録するという意味である。このため、データ記録を開始するイベントと同数の不揮発性メモリの領域が使用される。
【0016】
たとえば、不揮発性メモリは、EEPROM(電気的消去可能ROM)であってよい。
【0017】
システムの起動の前後に揮発性メモリの2つの異なる領域に制御システムに関するデータを記録することによって、不具合のアップロードがない場合にシステムの操作を診断する手段を得ることができる。データの2つの異なる状態を比較することによって、システムの変化を追跡することができる。不揮発性メモリの領域に揮発性メモリの2つの領域の内容を保存することによって、データの分析を遅らせることができる。
【0018】
別の実施形態によれば、データを記録するモジュールと記録操作モジュールとは、制御システムによって発信された警告信号を受信することができる。データを記録するモジュールは、警告信号の立ち上がりエッジで揮発性メモリの第1の領域にデータを記録することができる。記録操作モジュールは、警告信号の立ち上がりエッジで記録コマンドを起動することができる。
【0019】
警告信号が発生する状況では、データは揮発性メモリの第1の領域に保存され、この領域の内容は不揮発性メモリの領域に保存される。このため、警告信号を開始する状況を保持することができる。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、この装置は、操作警告信号の立ち上がりエッジでカウンタをインクリメントすることができ、データを記録するモジュールにカウンタの現在値を送信可能なカウンタを操作するモジュールを備える。記録モジュールは、揮発性メモリの領域にカウンタの現在値を記録することができる。
【0021】
カウンタをインクリメントする目的で、たとえば、実施が複雑で且つ高価なデータの日付認証プロトコルを使用する必要がなく、記録日付を付ける簡便な方法が得られる。
【0022】
別の実施形態によれば、この装置は、制御システムによって発信された待機状態コマンドの立ち上がりエッジで不揮発性メモリの領域にカウンタの現在値を記録することができ、制御システムによって再開するコマンドの立ち上がりエッジでカウンタを操作するモジュールにカウンタの記録値を送信可能なカウンタを記録するモジュールを備える。
【0023】
特定の状況では、警告信号の発生から運転者の反応までの特定の時間を待機する必要がありうる。例えば、運転者がエンジンを止めて、パーキングブレーキをかけないで車両を離れる場合である。このようにして電力が過度に消費されるのを回避するために、この装置がカウンタの値を失わずに待機状態となるように要求することが可能である。
【0024】
さらに別の実施形態によれば、記録操作モジュールは、カウンタの現在値と最大閾値を比較することができ、記録コマンドを起動することができ、カウンタがカウンタの最大閾値より真に大きい場合は飽和したカウンタを記録するコマンドを起動することができる。データを記録するモジュールは、飽和したカウンタを記録するコマンドを受信でき、飽和したカウンタを記録するコマンドが起動している場合、揮発性メモリの第1の領域にカウンタとデータの現在値を記録することができる。
【0025】
メモリ空間を節約するために、カウンタ値が最大のカウンタを使用することができる。これにより、この装置は、カウンタ値がこの最大値に達する場合、即ちカウンタが飽和している場合、カウンタを操作する手段を備えることによって、カウンタに対するこの大きさの制約に対処することができる。
【0026】
別の態様によれば、揮発性メモリと不揮発性メモリとを備え、少なくとも1つの作動状態信号を生成する自動車制御システムから発信されたデータを記録するための方法が提案される。この方法によれば、データは、作動状態信号が作動している場合は揮発性メモリの第1の領域に記録され、作動状態信号が起動していない場合は揮発性メモリの第2の領域に記録される。
【0027】
作動状態信号が起動していない場合には、次いで揮発性メモリの2つの領域の内容が不揮発性メモリの領域に記録される。
【0028】
別の実施様式によれば、制御システムは、少なくとも1つの警告信号を生成し、警告信号が起動している場合、データは揮発性メモリの第1の領域に記録され、揮発性メモリの2つの領域の内容は不揮発性メモリの領域に記録される。
【0029】
さらに別の実施様式によれば、警告信号が起動している場合、カウンタがインクリメントされ、作動状態信号が起動している場合、データとカウンタは揮発性メモリの第1の領域に記録される。
【0030】
別の実施様式によれば、制御システムは待機コマンドと再開コマンドを生成し、待機コマンドが起動している場合、カウンタの現在値は不揮発性メモリの領域に記録され、再開コマンドが起動している場合、カウンタはカウンタの記録された現在値によって初期化される。
【0031】
さらに別の実施様式によれば、カウンタの現在値はカウンタの最大閾値と比較され、カウンタがカウンタの最大閾値より真に大きい場合、データとカウンタとは揮発性メモリの第1の領域に記録され、揮発性メモリの2つの領域の内容は不揮発性メモリの領域に記録される。
【0032】
本発明の他の目的、特徴および利点は、非限定的な実施例としてのみを提示されており、これらは添付図面を参照して示す以下の記載によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】自動車制御システムから発信されたデータを記録する装置の概略図である。
【図2】データを記録するモジュールの実施形態の概略図である。
【図3a】自動車制御システムから発信されたデータを記録する方法の主な段階を示す図である。
【図3b】自動車制御システムから発信されたデータを記録する方法の主な段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、自動車制御システムから発信されたデータを記録する装置の概略図である。記載する実施形態では、制御システムはアシストパーキングブレーキシステム1である。APBシステムとも呼ばれるアシストパーキングブレーキシステム1は、通信ネットワーク2の診断データを発信することができる。
【0035】
たとえば、この診断データは次のものであってよい。
−記録時の車両による移動距離
−記録時の車両速度
−パーキングブレーキの作動操作または解除操作の開始および終了時のパーキングブレーキの状態
−操作の開始および終了時のパーキングブレーキの作動力の計測値または推定値
−記録を開始したイベント
【0036】
他の診断データを記録することは有益でありうるが、唯一の制限は、利用可能な不揮発性メモリのサイズにかかわっている。
【0037】
APBシステムは、運転者の要求を操作するモジュール3から接続4によって送信されるブレーキの作動要求および解除要求を受信する。
【0038】
データを記録する装置は、記録操作モジュール5と、カウンタを操作するモジュール6と、カウンタを記録するモジュール7と、診断データを記録するモジュール8とを備える。データ記録の一般原理は、APBシステムから発信された作動状態信号または警告信号を検出し、少なくとも1つの警告信号が発信される場合にカウンタを操作し、警告の発生とこの警告に対する応答との間の経過時間を測定し、次にAPBシステムの操作の開始および終了時に記録を実施し、APBシステムの操作を診断することができる。警告時にAPBシステムの操作状況を記録するために、警告信号が発生すると系統的に記録行われる。
【0039】
さらに、パーキングブレーキシステム1は、信号APB_Active、APB_Alert、Cmnd_PlaceOnStandbyおよびCmnd_Resumptionを発信し、接続9〜12によって記録操作モジュール5にそれぞれ送信される。
−作動状態信号APB_Activeはブール信号であり、この信号は、
−APBシステムが作動していないか、パーキングブレーキの作動操作または解除操作が終了した場合は0であり、
−APBシステムが作動し、言い換えれば、パーキングブレーキの作動操作または解除操作が実施中である場合は1である。
−APB_Alert警告信号はブール信号であり、この信号は、
−APBシステムが警告を発生していない場合は0であり、
−APBシステムが警告を発生している場合は1である。
−待機状態にするコマンドCmnd_PlaceOnStandbyはブール信号であり、この信号は、
−APBシステムが記録装置を待機状態にするように命令しない場合は0であり、
−APBシステムが記録装置を待機状態にするように命令する場合は1である。
−Cmnd_Resumption再開コマンドはブール信号であり、この信号は、
−APBシステムが記録装置の再開を命令しない場合は0であり、
−APBシステムが記録装置の再開を命令する場合は1である。
【0040】
診断データを記録する装置は、アシストパーキングブレーキシステム1によって発信された信号の値に応じて診断データの記録を操作する。
【0041】
次の作動イベント時に、診断データの記録が開始される。
−エンジン停止時に起動されるパーキングブレーキの作動支援
−車両発進時に起動されるパーキングブレーキの解除支援
−車両の停止時または動作時に起動される、パーキングブレーキを作動する運転者の要求
−パーキングブレーキを解除する運転者の要求
【0042】
このような作動イベントのうち1つが発生すると、作動状態信号APB_Activeは1となり、アシストパーキングブレーキシステム1は作動していることを意味する。
【0043】
また、次の警告イベント時に、診断データの記録が開始される。
−パーキングブレーキが作動しないまま、運転者がドアを開けた場合の警告
−パーキングブレーキが作動したまま、車両が動作している場合の警告
−事故、たとえばエアバッグの起動が検出される場合の警告
【0044】
このような警告イベントのうち1つが発生すると、APB_Alert警告信号が1となり、アシストパーキングブレーキシステム1は危険な状況が検出されことを意味する。
【0045】
カウンタが飽和状態の場合、換言すれば、カウンタは最大閾値CounterMaxに達した場合も、診断データの記録が開始される。「カウンタ飽和」イベントは、警告の引き金とはならないが、危険な状況を通知し、警告メッセージに対する運転者側の反応が遅いこと又は反応がないことを示す。
【0046】
記録操作モジュール5は、アシストパーキングブレーキシステム1によって発信される作動状態信号APB_Active、APB_Alert警告信号と、信号Cmnd_PlaceOnStandbyおよびCmnd_Resumptionとを操作する。このような信号は、モジュール5の入力信号であると考えられている。さらに、この記録操作モジュール5は、カウンタ操作を制御し、カウンタと診断データの保存を制御する。
【0047】
記録操作モジュール5は、いくつかの出力信号を発信して記録装置の他のモジュール6、7および8を制御する。出力信号ACT_Counter、INIT_CounterおよびRTZ_Counterは、それぞれ接続13〜15によってカウンタを操作するモジュール6に送信される。
−カウンタの起動を命令するACT_Counter信号はブール信号であり、この信号は、
−カウンタの停止を命令する場合は0であり、
−カウンタの起動、即ちカウンタのインクリメントを命令する場合は1である。
−カウンタの初期化を命令するINIT_Counter信号はブール信号であり、この信号は、
−カウンタの初期化を命令しない場合は0であり、
−カウンタの初期化を命令する場合は1である。
−カウンタのゼロリセットを命令するRTZ_Counter信号はブール信号であり、この信号は、
−カウンタのゼロリセットを命令しない場合は0であり、
−カウンタのゼロリセットを命令する場合は1である。
【0048】
また、記録操作モジュール5は、出力信号Cmnd_RecおよびSAT_Counterを発信し、それぞれ接続16および17によって診断データを記録するモジュール8に送信する。
−記録信号Cmnd_Recはブール信号であり、この信号は、
−記録コマンドが停止している場合は0であり、
−記録コマンドが起動している場合は1である。
−飽和したカウンタの記録を命令するSAT_Counter信号はブール信号であり、この信号は、
−飽和したカウンタを記録するコマンドが停止している場合は0であり、
−飽和したカウンタを記録するコマンドが起動している場合は1である。
【0049】
さらに、記録操作モジュール5は、別の出力信号REC_Counterを発信し、接続18によってカウンタを記録するモジュール7に送信する。
−REC_Counter信号はブール信号であり、この信号は、
−不揮発性メモリの領域にカウンタの値を記録する要求がない場合は0であり、
−不揮発性メモリの領域にカウンタの値を記録する要求がある場合は1である。
【0050】
カウンタを記録するモジュール7は、カウンタ用に設けられる不揮発性メモリの領域にカウンタCounterの値を記録する。
【0051】
また、カウンタを記録するモジュール7は、カウンタの記録値Counter_Recを発信することができ、接続20によってカウンタを操作するモジュール6に送信する。カウンタの記録値Counter_Recは、カウンタCounterの値を表し、カウンタ用に設けられる領域に記録される。
【0052】
カウンタを操作するモジュール6は、カウンタCounterを操作し、記録モジュール8によって記録された診断データに日付を付ける簡便な方法を備える。カウンタの記録によって、警告の発生と運転者の反応またはパーキングブレーキシステムの反応、即ちパーキングブレーキを作動したり解除したりする要求との間の経過時間を推定することができる。
【0053】
カウンタを操作するモジュール6によって、記録操作モジュール5によって発信されるコマンド信号に応じて、カウンタを起動したり、初期化したり、ゼロリセットすることができる。例えば、次の方法でカウンタを操作することができる。
−カウンタをゼロリセットするように命令するRTZ_Counter信号が1である場合、信号Counterはゼロ値に変更される。
−カウンタを起動するように命令するACT_Counter信号が1である場合、信号Counterはインクリメントされる。
−カウンタの初期化を命令するINIT_Counter信号が1である場合、Counter信号には、カウンタ用に設けられる不揮発性メモリの領域に記録されるカウンタ値Counter_Recが代入される。
【0054】
カウンタを操作するモジュール6は、カウンタCounterの値を発信し、接続19によってデータを記録するモジュール8、カウンタを記録するモジュール7および記録操作モジュール5に送信する。
【0055】
診断データを記録するモジュール8は、揮発性メモリの領域に診断データとカウンタCounterの値を記録する。このデータを保持する必要がある場合、このモジュール8は、不揮発性メモリの領域に揮発性メモリの領域の内容を記録することができ、不揮発性メモリの専用領域にカウンタを記録することができる。
【0056】
データを記録するモジュール8はそれぞれ、APBシステムから接続9および10によって送信される信号APB_ActiveおよびAPB_Alertを受信する。信号Cmnd_RecおよびSAT_Counterはそれぞれ、記録操作モジュール5から接続16および17によってそれぞれ送信される。カウンタおよび診断データを操作するモジュール6から接続19によって送信されるカウンタCounterは、APBシステムから通信ネットワーク2によって送信される。
【0057】
図2は、診断データを記録するモジュール8の実施形態の概略図を表す。
【0058】
診断データを記録するモジュール8は、診断データの記録を操作する2つのモジュール30、31を備える。モジュール30は揮発性メモリの第1の領域に、診断データの記録操作モジュール31は揮発性メモリの第2の領域に、それぞれ診断データの記録を操作する。また、記録モジュール8は、不揮発性メモリの領域に揮発性メモリの2つの領域の内容を記録するモジュール32を含む。さらに、記録モジュール8は、記録コマンド信号Cmnd_Recの立ち上がりエッジを検出する手段33と、飽和したカウンタの記録を命令するSAT_Counter信号の立ち上がりエッジを検出する手段34と、APB_Alert警告信号および作動状態信号APB_Activeの立ち上がりエッジを検出する手段35とを備える。また、診断データを記録するモジュール8は、起動状態信号APB_Activeの立ち下がりエッジを検出する手段36を備える。
【0059】
手段35は、起動状態信号APB_ActiveまたはAPB_Alertの警告信号の立ち上がりエッジを検出すると、信号Activation2を起動し、記録モジュール30に対し、揮発性メモリの第1の領域に診断データとカウンタを記録するように命令する。
【0060】
手段34は、飽和したカウンタの記録を命令するSAT_Counter信号の立ち上がりエッジを検出すると、信号Activation4を起動し、記録モジュール30に対し、揮発性メモリの第1の領域に診断データを記録するように命令する。
【0061】
手段36は、起動状態信号APB_Activeの立ち下がりエッジを検出すると、信号Activation3を起動し、記録モジュール31に対し、揮発性メモリの第2の領域に診断データとカウンタを記録するように命令する。
【0062】
手段33は、Cmnd_Rec信号の立ち上がりエッジを検出すると、信号Activation1を起動し、記録モジュール32に対し、不揮発性メモリの領域に揮発性メモリの2つの領域の内容を記録するように命令する。
【0063】
データを記録する装置は、電子装置の形態、又はソフトウェアの形態で、電子制御装置に実装してもよい。装置は、プログラム可能な自動装置に実装されるソフトウェア形態に組み込むこともできる。
【0064】
図3aおよび図3bは、自動車制御システムから発信されたデータを記録する方法の主な段階を示す。
【0065】
データを記録する方法の一般原理は、APBシステムによって発信される起動状態信号および警告信号の変化を検出することであり、このような信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジに従って、診断データとカウンタの記録を実施することである。
【0066】
APBシステムが作動操作または解除操作を実施すると、診断データとカウンタは揮発性メモリの第1の領域に記録され、操作の終了待ちとなる。この第1の記録によって、操作の開始時にデータを保存することができる。
【0067】
操作が終了すると、診断データとカウンタとは揮発性メモリの第2の領域に記録され、揮発性メモリの2つの領域の内容は不揮発性メモリの領域に記録される。この第2の記録によって、操作の終了時にデータを保存することができる。
【0068】
操作の開始時および終了時に記録されたデータの比較によって、警告信号がない場合にAPBシステムの操作を診断することができる。
【0069】
APBシステムが警告信号を生成すると、診断データとカウンタとは揮発性メモリの第1の領域に記録され、揮発性メモリの2つの領域の内容は不揮発性メモリの領域に記録される。不揮発性メモリのデータを記録することによって、警告信号の原因となった内容を保持することができる。さらに、カウンタのインクリメントが開始され、警告信号に反応する運転者の要求時や、APBシステムが進行中の不具合を自動的に修正できる場合は、自動的に作動操作または解除操作を実施するためにAPBシステムを待つ。
【0070】
APBシステムが警告信号に対応して作動操作または解除操作を実施すると、カウンタのインクリメントは停止され、データは記録される。
【0071】
この方法は初期化ステップ100から開始される。この初期化ステップでは、図1に示す記録操作モジュール5の出力信号はゼロ値に初期化される。
【0072】
この初期化ステップ100ののちに、Cmnd_Resumption再開コマンドの値が評価される比較ステップ101が実施される。APBシステムが記録装置の再開を命令する(Cmnd_Resumptionが1である)場合、カウンタを復旧するステップ102が実施され、そうでない場合は初期化ステップ100が再び実施される。
【0073】
カウンタを復旧するステップ102では、カウンタの初期化を命令するINIT_Counter信号を値1に変更し(INIT_Counterは1となる)、カウンタ専用の不揮発性メモリの領域に記録された値Counter_Recをカウンタの現在のCounter値に代入する。
【0074】
この復旧ステップ102ののちに、比較ステップ103が実施され、カウンタCounterの値が評価される。カウンタの復旧した値がゼロ値(Counterが0)の場合、記録を開始するイベントを待つステップ104が実施され、そうでない場合は警告状況を記録するステップ105が実施される。
【0075】
記録を開始するイベントを待つステップ104では、記録操作モジュール5の出力信号はゼロ値に再び初期化される。
【0076】
このように記録を開始するイベントを待つステップ104ののちに、比較ステップ106が実施され、APB_Alert警告信号の値が評価される。APBシステムが警告を発生させる(APB_Alertが1である)場合、警告状況を記録するステップ105が実施され、そうでない場合は別の比較ステップ107が実施される。
【0077】
比較ステップ107では、起動状態信号APB_Activeの値が評価される。APBシステムが作動している(APB_Activeが1である)場合、APBシステムの操作終了を待つステップ113が実施され、そうでない場合は記録を開始するイベントを待つステップ104が再び実施される。
【0078】
警告状況を記録するステップ105では、カウンタの初期化を命令する信号INIT_Counterが値0に変更され(INIT_Counterは0となる)、記録コマンド信号Cmnd_Recは値1に変更される(Cmnd_Recは1となる)。記録コマンドCmnd_Recの起動によって、不揮発性メモリの領域に揮発性メモリの2つの領域の内容の記録が開始される。
【0079】
警告状況を記録するステップ105ののちに、カウンタを起動するステップ108が実施され、カウンタを起動するACT_Counter信号は値1に変更され(ACT_Counterは1となる)、これによりカウンタCounterのインクリメントが開始される。
【0080】
このようにカウンタを起動するステップ108ののちに、比較ステップ109が実施され、カウンタCounterの値が評価される。カウンタの現在値が、カウンタの飽和限界である閾値CounterMaxより真に大きい場合、(Counter>CounterMax)、カウンタを減算するステップ110が実施され、そうでない場合は別の比較ステップ111が実施される。
【0081】
カウンタを減算するステップ110では、SAT_Counter信号は値1に変更され、信号RTZ_Counter、Cmnd_Recは値1に変更される。飽和したカウンタの記録を命令するSAT_Counter信号の起動によって、揮発性メモリの第1の領域に診断データとカウンタが保存される。カウンタをゼロに設定するように命令する信号RTZ_Counterの起動によって、カウンタCounterは値0に再び初期化することにより減算され、記録コマンドCmnd_Recの起動によって不揮発性メモリの領域に不揮発性メモリの内容が保存される。
【0082】
このようにカウンタを減算するステップ110ののちに、記録を開始するイベントを待つステップ104が再び実施される。
【0083】
比較ステップ111では、APB_Alert警告信号の値が評価される。APBシステムが警告を発生させる(APB_Alertは1である)場合、警告状況を記録するステップ105が実施され、そうでない場合は別の比較ステップ112が実施される。
【0084】
比較ステップ112では、起動状態信号APB_Activeの値が評価される。APBシステムが作動している(APB_Activeが1である)場合、APBシステムの操作終了を待つステップ113が実施され、そうでない場合はカウンタを起動するステップ108が再び実施される。
【0085】
APBシステムの操作終了を待つステップ113では、記録操作モジュール5の出力信号がゼロ値に初期化される。カウンタが停止する(ACT_Counterは0である)と、カウンタCounterのインクリメントは停止する。
【0086】
このようにAPBシステムの操作終了を待つステップ113ののちに、比較ステップ114が実施され、APB_Alert警告信号の値が評価される。APBシステムが警告を発生させる(APB_Alertが1である)場合、警告状況を記録するステップ105が実施され、そうでない場合は別の比較ステップ115が実施される。
【0087】
比較ステップ115では、起動状態信号APB_Activeの値が評価される。APBシステムが起動していない(APB_Activeが0である)、即ち、パーキングブレーキの作動操作または解除操作が終了した場合、APBシステムの操作状況を記録するステップ116が実施され、そうでない場合はAPBシステムの操作終了を待つステップ113が再び実施される。
【0088】
APBシステムの操作状況を記録するステップ116では、カウンタのゼロにリセットするように命令するRTZ_Counter信号は、値1に変更され(RTZ_Counterは1である)、記録コマンド信号Cmnd_Recは値1に変更される(Cmnd_Recは1である)。
【0089】
APBシステムの操作状況を記録するステップ116ののちに、記録を開始するイベントを待つステップ104が再び実施される。
【0090】
記録方法の実施時のいずれの時点でも、待機コマンドCmnd_PlaceOnStandbyの値を評価することができる。APBシステムが記録装置を待機状態にするように命令する(Cmnd_PlaceOnStandbyが1である)場合、REC_Counter信号が値1に変更されて、カウンタ用に設けられた不揮発性メモリの領域にカウンタの現在値が保存され、初期化ステップ100が実施される。
【0091】
APB_Active信号は保留信号であり、即ちアシストパーキングブレーキシステム1が作動する限り信号APB_Activeは1である。
【0092】
APB_Alertは非保留信号であり、即ちアシストパーキングブレーキシステム1によって警告イベントが検出されるとAPB_Alertは1となって警告信号を送信し、即座に値0となる。
【0093】
記録方法のステップは、電子回路によって実施してもよく、或いは、ソフトウェア形態で、又はプログラム可能な自動装置として、記録操作モジュール5に実装してもよい。
【0094】
作動操作または解除操作の開始および終了時のパーキングブレーキの状態の記録によって、操作がシステムによって正しく実施されたかどうかを確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車制御システム(1)から発信されるデータを記録するための装置であって、揮発性メモリと、不揮発性メモリと、データ記録モジュール(8)とを備えており、前記制御システム(1)によって発信される作動状態信号を受信することができ、作動状態信号の立ち上がりエッジで前記揮発性メモリの第1の領域に、作動状態信号の立ち下がりエッジで前記揮発性メモリの第2の領域に、それぞれデータを記録できるもので、
前記作動状態信号を受信可能で、前記作動状態信号の立ち下がりエッジで記録コマンドを起動できる記録操作モジュール(5)を備えていることと、
前記記録モジュール(8)が、さらに前記記録コマンドを受信することができて、前記記録コマンドが起動している場合、前記不揮発性メモリの領域に前記揮発性メモリの2つの領域の内容を記録できることと
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記データ記録モジュール(8)と前記記録操作モジュール(5)とは、前記制御システムによって発信された警告信号を受信することができ、前記データ記録モジュール(8)は、前記警告信号の立ち上がりエッジで前記揮発性メモリの第1の領域にデータを記録することができ、前記記録操作モジュール(5)は、前記警告信号の立ち上がりエッジで前記記録コマンドを起動可能である、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記警告信号の立ち上がりエッジでカウンタをインクリメントすることができ、前記データ記録モジュール(8)にカウンタの現在値を送信できるカウンタ操作モジュール(6)を備え、前記記録モジュール(8)が前記揮発性メモリの領域に前記カウンタの現在値を記録することができる、請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御システム(1)によって発信された待機状態コマンドの立ち上がりエッジで前記不揮発性メモリの領域に前記カウンタの現在値を記録することができ、前記制御システム(1)によって再開するコマンドの立ち上がりエッジで前記カウンタを操作するモジュール(6)に前記カウンタの記録値を送信することができるカウンタ記録モジュール(7)を備える、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録操作モジュール(5)は、前記カウンタの現在値と最大閾値とを比較することができ、前記記録コマンドを起動することができ、そして前記カウンタが前記カウンタの最大閾値より真に大きい場合に、飽和したカウンタを記録するコマンドを起動することが可能で、前記データ記録モジュール(8)は、前記飽和したカウンタを記録するコマンドを受信することができ、前記飽和したカウンタを記録するコマンドが起動している場合、前記揮発性メモリの第1の領域に前記カウンタとデータの現在値を記録することができる、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
揮発性メモリと不揮発性メモリを備える自動車制御システムから発信されたデータを記録する方法であって、前記制御システムが少なくとも1つの作動状態信号を生成し、前記作動状態信号が作動しているときは前記データを前記揮発性メモリの第1の領域に記録し、前記作動状態信号が起動していないときは前記データを前記揮発性メモリの第2の領域に記録するもので、
前記作動状態信号が起動していないときは前記揮発性メモリの2つの領域の内容を前記不揮発性メモリの領域に記録することを特徴とする記録方法。
【請求項7】
前記制御システムが少なくとも1つの警告信号を生成し、警告信号が起動しているときは前記データを前記揮発性メモリの第1の領域に記録し、次いで前記揮発性メモリの2つの領域の内容を前記不揮発性メモリの領域に記録する、請求項6に記載の記録方法。
【請求項8】
前記警告信号が起動している場合にカウンタをインクリメントし、前記作動状態信号が起動している場合に前記データと前記カウンタとを前記揮発性メモリの第1の領域に記録する、請求項7に記載の記録方法。
【請求項9】
前記制御システムが待機コマンドと再開コマンドを発生させ、前記待機コマンドが起動している場合、前記カウンタの現在値を前記不揮発性メモリの1の領域に記録し、前記再開コマンドが起動している場合、前記カウンタを前記カウンタの記録された現在値によって初期化する、請求項8に記載の記録方法。
【請求項10】
前記カウンタの現在値を前記カウンタの最大閾値と比較し、前記カウンタが前記カウンタの最大閾値より真に大きい場合に、前記データと前記カウンタとを前記揮発性メモリの第1の領域に記録し、次いで前記揮発性メモリの2つの領域の内容を前記不揮発性メモリの領域に記録する、請求項8または9に記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2011−525670(P2011−525670A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515537(P2011−515537)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051105
【国際公開番号】WO2010/007270
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】