説明

自動車燃料中の植物由来エタノール含有量の測定法

【課題】植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノールの正確で簡便な測定法を提供する。
【解決手段】植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料に水を添加し、混合して静置した後二層分離した水相を取得する抽出操作を行い、次いで抽出液中の14C量を分析する炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量の測定法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物由来のエタノール(以下、バイオエタノールということもある)を含むガソリン等の自動車燃料中のバイオエタノール含有量の測定法に関し、詳しくは植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料に水を添加し、抽出操作によって得られた抽出液中の14C量を分析する自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量の測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素COを吸収したバイオエタノールは燃焼してもCO総量を増加させないため、温暖化ガス排出抑制を目的としてバイオエタノールを自動車燃料に混合したバイオ燃料の利用が推進されつつある。例えば、バイオ燃料としては、現在バイオエタノールを含有させたガソリン(以下、単にバイオガソリンということもある)、特にバイオエタノールを3%含有させたガソリンであるバイオエタノール3%混合ガソリン(以下、バイオガソリンE3ということもある)が考慮されている。
しかし、高収率でバイオエタノールを得るためには原料が限定されまた木材などの原料からエタノールへの反応は低収率であり、結局はバイオエタノールは価格が割高となることから、バイオ燃料の使用を促進するためにバイオ燃料への優遇措置が検討されている。
このバイオ燃料の促進のための優遇措置が実施されるためには、バイオ燃料中のバイオエタノールの正確で簡便な測定法の確立が不可欠である。
【0003】
一方、宇宙線由来の放射性炭素14CはCOの大気循環を通じて植物中に取り込まれる。その比放射能は生成速度と壊変速度との関係から時間および場所を問わずほぼ一定で15±0.4dpm/gC(isintegration er inute/炭素1g)とされている。このため、放射能の違いを利用してバイオ度を評価する技術である米国14C分析規格のASTM D6866が一般的に採用されている。
【0004】
このASTM D6866(非特許文献1)には以下のA法、B法およびC法が記載されている。これらの概略は以下の通りである。
A法は、試料を燃焼してCOとし、生成したCOをCO吸収剤で回収して液体シンチレーションカウンターを用いる液体シンチレーション法で14C量を計測する方法である。誤差は15%程度で、必要試料量(炭素量)は1〜2gとされる。
B法は、試料を燃焼してCOとし、正確に定量したカーボングラファイト化してAMS装置に入れて14C量を計測する方法である。誤差は15%程度で、必要試料量(炭素量)は0.5〜1gとされる。
C法は、試料を燃焼してCOとし、さらにCOをLiCとし、次いでLiCをアセチレンとし、さらにアセチレンをベンゼンに変化させて、ベンゼン中の14C量を液体シンチレーションカウンターを用いる液体シンチレーション法で計測する方法である。誤差は6%程度で、必要試料量(炭素量)は1〜2gとされる。
【0005】
【非特許文献1】ASTM D6866
【0006】
そして、これらASTM D6866のA法、B法およびC法は計測試料を定量的に化学合成させるための化学的に比較的高度の技能を必要とするものの14Cを含む試料を分析する手段として有効とされ、特に液体シンチレーション法自体はその測定の正確さにより比較的広く採用されている。この液体シンチレーション法は液体試料にシンチレータを加えて蛍光物質を発光させることによって放射線を可視光に変換して測定するものである。
一方、化石燃料(一般に使用されているガソリン、ジーゼル燃料)では半減期5730年の14Cが壊変し尽くして比放射能はほぼゼロであり、バイオエタノール量の測定法として、ASTM D6866のA法〜C法は有効と考えられる。
【0007】
しかし、前記のASTM D6866のA法〜C法を前記のバイオガソリンE3中のバイオエタノール含量の測定に適用しようとすると、前記の炭素1〜2gを用いたのでは生成するCOから純炭素成分を得たとしても3%バイオエタノール中の理論値は、(3/100)x2gx15dpm/gC=1dpm<1cpmとなり、14C計測でのバックグラウンド値20cpmの環境下では正味計数が少なすぎ正確なバイオガソリンE3中のバイオエタノール含量の測定は困難である。
【0008】
一方、前記の液体シンチレーション法をバイオガソリンE3に直接適用することが考えられるが、正味計数が少なすぎることに加え、市販のガソリンは取り扱い上の安全性の観点から着色されており、前記のようにこの液体シンチレーション法は液体試料にシンチレータを加えて蛍光を発光させることによって放射線を光に変換して測定するものであり、液体試料中に色素が含まれていると発光量、従って放射能(つまり14C量)の正確な測定が不可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来公知の米国14C分析規格のASTM D6866によるバイオ度の評価技術を自動車用バイオ燃料にそのまま適用しても、植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノールの簡便で正確な測定は不可能であることが明らかになったのである。
従って、この発明の目的は、植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノールの正確で簡便な測定法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料に水を添加し、混合して静置した後二層分離した水相を取得する抽出操作を行い、次いで抽出液中の14C量を分析する炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量の測定法に関する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノールの正確で簡便な測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明における好適な態様を次に示す。
1)抽出液中の14C量を分析する方法が、液体シンチレーション法である前記の測定法。
2)炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量が、前記抽出液についての14C量分析による抽出液中の植物由来のエタノール量計測値および抽出率を用いて算出される前記の測定法。
【0013】
3)炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量が、同一の試料に複数回の抽出操作を行い、各抽出液についての14C量分析による植物由来のエタノール計測値を用いて算出される前記の測定法。
4)添加する水の量が、炭化水素系自動車燃料の試料100質量部当たり0.5〜40質量部である前記の測定法。
5)炭化水素系自動車燃料が、ガソリンである前記の測定法。
【0014】
以下、この発明について、この発明の1実施態様の工程を示す図1を用いて説明する。図1において、容器1に入れた植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料2に水を添加し、混合操作で(図示せず)混合して静置した後二層分離した水相3を取得する抽出操作を行い、次いで計数バイアルに採取した抽出液4中の14C量を14C量分析装置を用いて(図示せず)分析することによって、炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量を測定することができる。
【0015】
この発明においては、先ず植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料に水を添加し、混合して静置した後二層分離した水相を取得する抽出操作を行うことが必要であり、これによって存在する炭化水素系自動車燃料中の14C計測妨害物質の除去およびエタノール分の濃縮抽出を達成することが可能となり、従来は不可能であった放射性炭素である14C量の直接分析が可能となる。
【0016】
この発明において、大気循環している天然14Cの比放射能を15.0±0.4dpm/gCとして扱い、エタノール1g中の炭素の質量をエタノールの分子量46から0.52g/gEtOHであるから、バイオエタノール1g当たりの14C比放射能は7.8dpm/gEtOHとなる。
この発明においては、この数値を比放射能と物質量との換算係数として用いる。
【0017】
この発明において、植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料としては、バイオエタノールを1〜30質量%、特に1〜3質量%含むバイオガソリン、バイオ軽油(バイオジーゼル燃料)、好適にはバイオエタノールを1〜30質量%、特に1〜3質量%含むバイオガソリンが挙げられる。
【0018】
前記の方法において、容器、例えばガラス製フラスコあるいは分液ロート中で、植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料100質量部当たり、0.5〜40質量部、特に1〜8質量部の水を添加し、植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料と水とを、0〜30℃、好適には0〜20℃程度の温度で1〜30分間、特に2〜10分間程度、水が微粒子となるように振とうあるいは攪拌などによって混合した後、5分間以上、好適には10分間以上、特に10〜30分間程度静置した後二層分離した下層の水相を取得する抽出操作を行って、炭化水素系自動車燃料中の14C計測妨害物質の除去およびエタノール分の濃縮抽出を達成することが可能となる。
【0019】
この発明においては、次いで、炭化水素系自動車燃料中の14C計測妨害物質の除去およびエタノール分の濃縮抽出が達成された抽出液中の14C量を分析して、炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量を測定する。
前記の方法において抽出液中の14C量の測定法としては、特に制限はないが液体シンチレーション法が好適である。
【0020】
前記の液体シンチレーション法において、後に詳細に説明される実施例の欄に記載の方法によって、前記のバイオエタノールを含む抽出液にシンチレータを加え放射性物質である14Cによって蛍光を発光させることによって放射線を光に変換してバイオエタノール量を求めることができる。
前記のシンチレータとしては、好適には水溶性シンチレータが使用される。水溶性シンチレータとしてはクリアゾル(ナカライテクス社、クリアゾルII)が挙げられる。
【0021】
この発明においては、前記の抽出液を用いて抽出液中の14C量を分析して炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量を測定する際に、抽出を1段階のみで行って抽出液中の植物由来のエタノール量計測値および算出された抽出率を用いて行う方法(1段階抽出法)および同一の試料に複数回の抽出操作を行って各抽出液についての14C量分析による植物由来のエタノール量計測値を利用して行う方法(多段階抽出法、特に2段階抽出法)が挙げられる。
【0022】
前記の1段階抽出法においては、バイオエタノール量既知の標準炭化水素系自動車燃料(例えば、バイオガソリン)のバイオエタノール量(含有量)を変えた試料を調製し、得られた抽出率を定数とみなしてバイオエタノール未知の炭化水素系自動車燃料(例えば、バイオガソリン)についてバイオエタノール量を算出する、あるいは得られた抽出率と抽出温度との関係から得た抽出率検量線を作成し、この検量線を用いてバイオエタノール量が未知の炭化水素系自動車燃料(例えば、バイオガソリン)について、バイオエタノール量を算出することができる。前記の場合、バイオエタノール量既知の標準炭化水素系自動車燃料とバイオエタノール量未知の炭化水素系自動車燃料との抽出温度を変えないでほぼ一定温度に保って行うことが好ましい。
【0023】
前記のバイオエタノール抽出率を定数とみなす場合、後述の実施例の欄において詳細に説明されるが、抽出温度がほぼ一定であればバイオエタノール量を変えても抽出率はほぼ一定であり(例えば、バイオ炭化水素系自動車燃料としてバイオガソリンを用い、温度12℃で抽出する場合には、0.6)、一定値r、例えば0.6として取り扱うことが可能である。
従って、標準炭化水素系自動車燃料試料中のバイオエタノール量をCとし、1段階抽出による抽出液中のバイオエタノール量をAとし、バイオエタノールの抽出率をrとすると、C=A/r(例えば、r=0.6)であるから、液体シンチレーション法によってAが得られるとバイオエタノール量が未知の炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノール量(C)を求めることができる。
【0024】
また、前記の検量線を用いる場合、抽出温度についての検量線上の抽出率(r)を決定して、未知のバイオエタノール量の炭化水素系自動車燃料(例えば、バイオガソリン)試料から液体シンチレーション法により求めたバイオエタノール量(A)から、C=A/rの式を用いてバイオエタノール量が未知の炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノール量(C)を求めることができる。
【0025】
前記の2段階抽出法においては、未知のバイオエタノール量の炭化水素系自動車燃料試料中のバイオエタノール量をCとし、液体シンチレーション法により求めた第1段目および第2段目の抽出液中のバイオエタノール量をそれぞれA、Aとし、バイオエタノールの抽出率をrとすると、A=r・C、A=r・(C−A)であるから、これらの2つの式を用いてrを消去して、C=A・A/(A−A)の式を用いてバイオエタノール量が未知の炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノール量(C)を求めることができる。
従って、前記の2段階抽出法によれば計算式において抽出率を使用しないため、1段階抽出法よりもより簡便にバイオエタノール量が未知の炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノール量を求めることができるので好適である。
【実施例】
【0026】
以下、この発明をさらに説明するために実施例を示すが、この発明は実施例に限定されるものではない。
以下の各例において、使用したバイオエタノールとして100%植物由来の一般試薬エタノール(関東化学社、特級99.5%)を用い、鉱物エタノールとして合成アルコール(日本アルコール販売社、未変性95%)を用いた。エタノール1g中の炭素質量は分子量から0.52gとして算出した。
以下の各例において、バイオガソリンは所定量のバイオエタノールに市販のレギュラーガソリン(着色されている)を混合して一定質量(100g)のバイオガソリンとなるように調製した。
【0027】
また、以下の各例において、抽出液中の14C量の測定法としての液体シンチレーション法は、液体シンチレーションカウンタとしてパッカード(Packard)社のTR2750CA/LLおよび14Cクエンチングスタンダード線源を使用する外部標準線源法のうち一般に広く利用されている14Cノーマル計測モードを使用し、計測バイアルとして20ml低カリウムガラス製を用い、抽出液の液面高はクエンチングスタンダード線源約15mlに合わせ、各バイアルについて1000分間の計数を行うことによって測定した。
【0028】
14C壊変率(A)の算出は常法通り下記式に示すように、試料の計数率(N)からバックグラウンド計数率(NBG)を差し引き、計数効率(EFF)で除して求めた。
A=(N−NBG)/EFF/K
(但し、K=7.8dpm/gEtOH)
【0029】
比較例1
バイオガソリンE3と油溶性シンチレータとしてのトルエンシンチレータ(同仁化学社、AL−1)とを直接混合し、液体シンチレーション計測を試みたところ、ケミカルルミネッセンスおよびクエンチングなどの妨害が著しく、計測が不可能であった。
【0030】
比較例2
バイオガソリンE3に含まれる妨害成分を何らかの方法で除去できたものとして、液体シンチレーション計測を行うシミュレーションを行った。
このバイオガソリンE3の計測可能量6.0gに含まれるバイオエタノールは0.18gであり、壊変率は1.4dpm、正味の計数率は1cpm程度と推算された。
確認のため、模擬試料として3%バイオエタノールを含有するn−ヘキサン試料6.0gを実測したところ、バックグラウンド計数率約20cpmに対し、正味計数率1cpmであり、1000分間計測を行っても、計数誤差は2σ=±40%となり、定量は困難であるとの結論であった。
【0031】
実施例1
1.バイオエタノール含有量既知のバイオガソリンを使用した抽出率の決定
バイオガソリン100.0g中に含まれるバイオエタノール含有量1.00g、2.00g、3.00gの3種類をそれぞれ分液ロートに採取し、蒸留水4.00gをそれぞれ添加し、蒸留水が微粒子となるようにそれぞれ約5分間振とう混合した。それぞれを10分間静置して、二層分離した水を全てピペットで採取し、20ml低カリウムガラス製液体シンチレーションカウンタ用バイアルに移し、抽出液試料とした。なお、抽出工程での温度は約12℃(室温)であった。
【0032】
各抽出液試料にクリアゾルIIシンチレータ(ナカライテクス社)を加え、常法に従って液体シンチレーションカウンタ(Packard2750CA)で1000分間計数にて14C計測を行った。
バックグラウンドとして、メタノール1.5gと水3gのクリアゾルIIシンチレータ溶液を用いた。
これらの14C計測から、抽出液中のバイオエタノール量の計測値および算出バイオエタノール抽出率をまとめて表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
2.求められた抽出率を用いたバイオエタノール含有量測定
この表1の結果から、抽出率は一定値(r=0.6)とみなすことができるので、同一条件(抽出温度)で、バイオエタノール含有量未知のバイオガソリンについて抽出液中のバイオエタノール量を測定した。
試料としては、前記のガソリン100.0g中に含まれるバイオエタノール含有量0.00g、1.00g、2.00g、3.00gの4種類の試料(試料:A、B、C、D)を用いたが、実験者にはどの試料にバイオエタノールがいくら入っているかわからない条件で実験を行った。
各試料について、前記と同様に、蒸留水4.00gをそれぞれ添加し、約5分間振とう混合し、10分間静置して、二層分離した水を全てピペットで採取し、20ml低カリウムガラス製液体シンチレーションカウンタ用バイアルに移し、抽出液試料とし、抽出液試料にクリアゾルIIシンチレータ(ナカライテクス社)を加え、液体シンチレーションカウンタ(Packard2750CA)で1000分間の計数にて14C計測を行った。
これらの14C計測から、抽出液中のバイオエタノール量の計測値および各試料中のバイオエタノール含有量をまとめて表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例2
バイオガソリン100.0g中に含まれるバイオエタノール含有量が0.00g、1.00g、2.00g、3.00gの4種類の試料(試料:1、2、3、4)を用意し、実験者にはどの試料にバイオエタノールがいくら入っているかわからない条件で以下の実験を行った。
各試料を500ml分液ロートに入れて、第一段目の抽出を実施例1と同様に抽出工程での温度が約12℃(室温)の条件で、蒸留水4.00gをそれぞれ添加し、約5分間振とう混合し、10分間静置して、二層分離した水を全てピペットで採取して行い、各抽出液を20ml低カリウムガラス製液体シンチレーションカウンタ用バイアルに移し、第一段目の抽出液試料とし、抽出液試料にクリアゾルIIシンチレータ(ナカライテクス社)を加え、液体シンチレーションカウンタ(Packard2750CA)で1000分間計数にて14C計測を行った。
次いで、第二段目の抽出を、前記の各抽出済のガソリンの残った分液ロートに新たな蒸留水4.0gを入れて同様に処理を行い、第二段目の抽出液試料とした。各抽出液試料にクリアゾルIIシンチレータ(ナカライテクス社)を加え、液体シンチレーションカウンタ(Packard2750CA)で1000分間計数にて14C計測を行った。
各試料について得られた結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
実施例3
バイオガソリンとして、バイオガソリン100.0g中に含まれるバイオエタノール含有量が30.0gの試料(試料5)を用い、蒸留水40gを添加し、第一段目の抽出液中4.0gを測定した他は実施例2と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
これらの結果から明らかなように、この発明の測定法によれば植物由来のエタノール(バイオエタノール)を含むガソリンなどの炭化水素系自動車燃料中のバイオエタノールの含有量を正確かつ簡便に測定することが可能となった。
また、この発明の測定法によれば植物由来のエタノール(バイオエタノール)を含む着色されたガソリンなどの炭化水素系自動車燃料であってもバイオエタノールの含有量をほぼ正確かつ簡便に測定することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、この発明の1実施態様の工程を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 容器
2 植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料
3 水相
4 計数バイアルに採取した抽出液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来のエタノールを含む炭化水素系自動車燃料の試料に水を添加し、混合して静置した後二層分離した水相を取得する抽出操作を行い、次いで抽出液中の14C量を分析する炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量の測定法。
【請求項2】
抽出液中の14C量を分析する方法が、液体シンチレーション法である請求項1に記載の測定法。
【請求項3】
炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量が、前記抽出液についての14C量分析による抽出液中の植物由来のエタノール量計測値および抽出率を用いて算出される請求項1に記載の測定法。
【請求項4】
炭化水素系自動車燃料中の植物由来のエタノール含有量が、同一の試料に複数回の抽出操作を行い、各抽出液についての14C量分析による植物由来のエタノール計測値を用いて算出される請求項1に記載の測定法。
【請求項5】
添加する水の量が、炭化水素系自動車燃料の試料100質量部当たり0.5〜40質量部である請求項1に記載の測定法。
【請求項6】
炭化水素系自動車燃料が、ガソリンである請求項1に記載の測定法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−297489(P2008−297489A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146932(P2007−146932)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】