説明

自動車用のブレーキシステム

本発明は、ブレーキ・バイ・ワイヤブレーキシステムであって、車輪ブレーキ回路I、IIに接続可能なマスタシリンダ3と、操作力を伝達する押圧ロッド10を介してブレーキペダル9と連結される第1のピストン11と、第2のピストン12を介してマスタシリンダ3が操作される第2のピストンと、第1のピストン11によって操作可能であり、かつ第2のピストン12と動力伝達結合可能な第3のピストン13とを有し、第2のピストン12と第3のピストン13との間の液圧で付勢可能な中間室21であって、中間室21の圧力付勢により、第2のピストン12および第3のピストン13が正反対の方向に負荷を受ける中間室を有するブレーキ・バイ・ワイヤブレーキシステムに関する。液圧設定エネルギの高価な中間貯蔵を回避するために、本発明によれば、中間室21で制御される圧力を電気的に調整するために圧力準備装置2内の必要な圧力媒体が大気圧下で用意され、かつ必要に応じてより高い圧力に設定されることが意図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のブレーキシステムであって、
・車輪ブレーキ回路が接続されるマスタシリンダと、
・操作力を伝達する押圧ロッドを介してブレーキペダルと連結される第1のピストンと、
・第2のピストンであって、該ピストンを介してマスタシリンダが操作される第2のピストンと、
・第1のピストンによって操作可能であり、かつ第2のピストンと動力を伝達する接続が可能な第3のピストンとを有し、
・少なくとも1つの弾性要素を有し、車両運転者に快適なペダル感覚を伝えるシミュレーション装置を有し、
・第2のピストンと第3のピストンとの間の液圧で付勢可能な中間室であって、中間室への圧力付勢により、第2のピストンおよび第3のピストンが正反対の方向に負荷を受ける中間室を有し、
・第3のピストンによって境界付けられ、遮断弁によって遮断可能な液圧室であって、必要な場合、第3のピストンの操作方向の移動を妨げる液圧室を有し、
・中間室内の圧力を制御する圧力準備装置を有し、
・中間室と液圧を介し接続可能で、大気圧下にある圧力媒体貯蔵容器を有し、ならびに
・中間室で制御される圧力を電気的に調整するための手段を有する、
自動車用のブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車技術では、「ブレーキ・バイ・ワイヤ」ブレーキシステムがますます普及しつつある。これらのブレーキシステムでは、ブレーキは、一方で、車両運転者の能動的な関与なしに電子信号に基づき「外部」操作することができる。これらの電子信号は、例えば、エレクトニックスタビリティプログラムESPまたは車間制御システムACCによって出力することができる。他方で、ブレーキペダル操作を介して車両運転者によって要求されるブレーキ効果が、例えば、車両の電動駆動装置を発電機作動に切り換えることによって達成される場合、ブレーキシステムの操作を完全にまたは部分的に省略することができる。両方の場合、ブレーキの作動状態は、車両運転者によって予め入力されるブレーキペダル操作に対応しない。従来のブレーキシステムでは、このことは、ブレーキペダルに対するある反作用をもたらす。ブレーキペダル特性、すなわち、ブレーキ力に対するブレーキペダルストロークの関係は、前述した反作用によって妨害される。ブレーキペダルに対するこの反作用効果は、運転者にとって予想外かつ不快であり得、この結果、運転者は、道路交通の危険な状態において、状態に適った程度でブレーキペダルを操作しない。この理由は、運転者は、ブレーキペダルに対する予測不可能な反作用によって困惑させられるからである。
【0003】
冒頭に述べた種類のブレーキシステムは、特許文献1から公知である。上述の公開に開示されたブレーキシステムは、特に、ハイブリッド駆動装置を有し、いわゆる回生ブレーキ行程が実行される車両で使用することができる。言及した中間室で制御される圧力の調整に使用される圧力調整弁は、既知のブレーキシステムの場合、機械式動力伝達手段によって制御され、この動力伝達手段は、作用的に第1のピストンと圧力調整弁の弁体との間に配置される。中間室で制御される圧力を電気的に調整するための手段として、電磁的に制御可能な弁装置が設けられ、この弁装置は、通電していないときに閉じる(Schtromlos Geschlossene(略してSG))アナログ調整可能な2/2方弁として形成される。既知のブレーキシステムの場合、その操作に必要な設定エネルギを高圧アキュムレータで用意しなければならず、その圧力媒体がブレーキ操作中に車輪ブレーキ回路に流入するという事実は、不利益であると思われる。一方で、複数回のブレーキの場合に、このアキュムレータ圧レベルの一部分のみが必要であるにもかかわらず、圧力媒体を最初に高圧アキュムレータの高圧レベルにもっていくことはエネルギ的に非効率であり、他方で、この場合、ガス泡による圧力媒体のあり得る汚染の際に、高圧アキュムレータからの流出と関連するガス泡の体積膨張によって、これらのガス泡が、液圧の力伝達に必要な液柱をブレーキ管路から押し退けることによって、ブレーキシステムが故障し得るという危険性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 321 721A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、費用がかかり、エネルギ的に不都合であり、かつブレーキシステムの故障を助長する液圧設定エネルギの中間貯蔵を省略することができる、冒頭に述べた種類のブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明に従って、中間室で制御される圧力を電気的に調整するために必要な圧力準備装置内の圧力媒体を、大気圧下で用意しておき、必要に応じてより高い圧力にすることによって解決される。
【0007】
本発明の構想を具体化するために、圧力準備装置がシリンダ・ピストン装置によって形成され、シリンダ・ピストン装置のピストンが電気機械式アクチュエータによって操作可能であることが意図される。
【0008】
本発明の対象の有利な発展形態では、電気機械式アクチュエータに給電する蓄電装置が設けられる。
【0009】
本発明の他の有利な発展形態は、シミュレーション装置が第1のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路に、そして圧力準備装置が第2のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路に付設され、この場合、ブレーキシステムの作動中に、第1および第2のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路と車輪ブレーキ回路との間の圧力媒体交換が行われないことにある。これらの措置によって、液圧回路の一方のあり得る漏れによって、他の液圧回路が影響を受けないので、本発明によるブレーキシステムの運転安全性が著しく高められる。
【0010】
本発明の対象の他の形態では、圧力準備装置は、電気式に切換可能な2/2方弁を介在して、大気圧にある第2の圧力媒体貯蔵容器の室に接続される。当然、制動技術で一般的であるように、上述した大気圧レベルでの圧力媒体貯蔵の準備を呼吸穴(Schnueffelloch)、傾注弁(Kippventil)または中央弁によって達成することも可能である。しかし、電気式に切換可能な2/2方弁はメリットがあり、圧力準備装置のアクチュエータが必要な場合に直ちに増圧を開始でき、弁切換ストロークを進んだ後にようやくということではない。
【0011】
本発明によるブレーキシステムの別の有利な実施形態が、従属請求項7〜21に記載されている。
【0012】
2つの実施例をもとに付属の概略図を参照して、本発明について以下に詳細に説明し、この場合、同一の構成要素には同一の参照番号が付与される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるブレーキシステムの第1の実施形態の構成図である。
【図2】本発明によるブレーキシステムの第2の実施形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に示した本発明によるブレーキシステムは、本質的に、操作装置1、圧力準備装置2から構成され、この場合、操作ユニットおよび圧力準備装置は、ブレーキ力ブースタを形成し、ならびにブレーキシステムは、ブレーキ力ブースタに作用的に後段に接続されたブレーキマスターシリンダまたはタンデムマスタシリンダ3から構成され、その図示していない圧力室は、第1の圧力媒体貯蔵容器18の大気圧下にある室と接続可能である。他方で、圧力室に車輪ブレーキ回路I、IIが接続され、これらの回路は、公知のABSまたはESP液圧装置もしくは制御可能なブレーキ圧調整モジュールを介在して、自動車の車輪ブレーキ5〜8に液圧媒体を供給する。ブレーキ圧調整モジュール4に、電子開および閉ループ制御ユニット41が付設される。タンデムマスタシリンダ3が接続されるハウジング20に配置される操作装置1は、操作ロッド10を介して操作装置1の第1のピストン11と作用的に接続されるブレーキペダル9を介して制御可能である。ブレーキペダル9の操作ストロークは、第1のピストン11のストロークを感知するストロークセンサ19によって検出される。しかし、同一の目的のために、ブレーキペダル9の回転角を検出する回転角センサも使用することができる。第1のピストン11は、第3のピストン13に配置され、この第3のピストン13内で第1のピストンは圧力室14を画定し、この圧力室14はブレーキペダル9が非操作の際に第1のピストン11を第3のピストン13に当接させる圧力ばね15を収容する。代わりにまたは追加して、押圧ロッド10またはブレーキペダル9の領域に、ペダル戻しばねを設けることができる。圧力室14は、操作装置1の非操作状態で、操作装置1に付設される、第2の圧力媒体貯蔵容器38、39の室38と結合される。第3のピストン13は、タンデムマスタシリンダ3の主ピストンを形成することができる第2のピストン12と協働し、この場合、図示した例では、第2のピストン12と第3のピストン13との間に、圧力伝達ピストン16が配置される。第3のピストン13と圧力伝達ピストン16との間に、中間室21が画定され、この中間室に液圧を加えることによって、第3のピストン13が、ハウジング20に形成されたストッパ22に保持され、一方、圧力伝達ピストン16、したがってタンデムマスタシリンダの主ピストン12は、タンデムマスタシリンダ3の増圧の意味で付勢される。この負荷から結果として生じる圧力伝達ピストン16の移動は、第2のストロークセンサ23によって検出される。さらに、ハウジング20の第3のピストン13により、液圧室17が画定され、その機能については以下に説明する。液圧室17に、第1の管路34が接続され、この管路は、通電していないときに開放する(Schtromloss offenes(略してSO))遮断弁33を介して、前述の圧力室14に接続される第2の管路35と接続される。
【0015】
さらに、図1から、前述の圧力室14が、遮断可能な結合管路24を介してシミュレータ室25と接続しており、このシミュレータ室がシミュレータピストン26によって画定されることが理解される。この場合、シミュレータピストン26は、シミュレータばね27と、シミュレータばね27に並列接続された弾性ばね28と協働する。この場合、シミュレータ室25、シミュレータピストン26、シミュレータばね27ならびに弾性ばね28は、ブレーキシステムの操作の際に、車両運転者に、通常のブレーキペダル特性に対応する普通のペダル感覚を伝えるペダルストロークシミュレータを形成する。このことは、ブレーキペダルストロークが小さい場合、抵抗がゆっくりと大きくなり、ブレーキペダルストロークがより大きい場合、比例を越えて大きくなることを意味する。シミュレータピストン26の移動を緩衝するために、図示していない例えば空圧式緩衝手段を設けることができる。シミュレータ室25と、圧力室14または第2の圧力媒体貯蔵容器の室38との間の液圧結合管路24は、ブレーキマスターシリンダ3の操作方向の第3のピストン13の移動によって遮断され、これにより、ペダルストロークシミュレータが作用的に遮断される。第1のピストン11、ばね15、液圧室14、液圧結合部24、シミュレータ室25、シミュレータピストン26、シミュレータばね18と27、ならびに図示していない緩衝手段は、シミュレーション装置を共に形成し、このシミュレーション装置は、第2の圧力媒体貯蔵容器の大気圧下にある室38と共に、車輪ブレーキ回路I、IIから完全に分離される第1のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路に付設される。
【0016】
前述の電気液圧式の圧力準備装置2は、本質的に、液圧式シリンダ・ピストン装置29と、電気機械式アクチュエータ30とから構成され、この電気機械式アクチュエータは、例えば、液圧ピストン31の並進運動を保証する減速ギヤを有する電動機によって形成される。この結果、液圧式シリンダ・ピストン装置29の圧力室36に液圧が構築される。電気機械式アクチュエータ30には、参照番号49が付与される蓄電装置からエネルギが供給される。ピストン31の移動は、参照番号32が付与されるストロークセンサによって検出される。圧力室36は、一方で、中間室21に接続され、他方で、通電していないときに開放する(SO)2/2方弁37によって、第2の圧力媒体貯蔵容器の大気圧下にある室39と結合可能である。この場合、圧力準備装置2、中間室21ならびに第2の圧力媒体貯蔵容器の室39は、第1のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路および車輪ブレーキ回路I、IIの両方から完全に分離される第2のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路に付設される。圧力センサ40は、圧力準備装置2によって提供される圧力または中間室21で支配する圧力の検出に使用される。
【0017】
前述の遮断弁33は、圧力室14に対する室17の遮断を可能にし、これにより、操作方向の第3のピストン13の移動が防止される。室17、第1の圧力媒体管路34、遮断弁33、第2の圧力媒体管路35、圧力室14、接続管路24、シミュレータ室25ならびに第2の圧力媒体貯蔵容器38は、第1のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路と、両方の車輪ブレーキ回路I、IIとから完全に分離される第2のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路を形成する。上述の要素には、専用の電子制御ユニット42が付設され、この電子制御ユニットは、前述の開および閉ループ電子制御ユニット41と協働して、センサデータの検出、これらのデータの処理、他の制御ユニットとのデータ交換、電気機械式アクチュエータ30の制御、ならびに車両のブレーキライトに使用される。
【0018】
図2に示した本発明によるブレーキシステムの第2の実施形態の構成は、図1に関連して詳細に説明した第1の実施形態の構成に大部分対応する。液圧室36または中間室21は、液圧体積収容要素43に接続され、この要素のピストン45は、圧力ばね47を収容する室46を画定する。室46は、通電していないときに開放する(SO)2/2方弁44を介在して、第3の圧力媒体貯蔵容器39と接続している。
【0019】
以下に、本発明によるブレーキシステムの機能方法について、図1と関連して詳細に説明する。
【0020】
第1の作動モードは、ブレーキシステムの構成要素全体が無傷であり、かつ支障なく動作する純粋に電気的なモード、いわゆる「ブレーキ・バイ・ワイヤ」作動方式に対応する。このモードでは、液圧を中間室21に構築するために、2/2方弁37および電気機械式アクチュエータ30が制御され、この結果、圧力準備装置2によって提供されるかまたはそのシリンダ・ピストン装置29に発生される圧力が、中間室21に供給される。圧力作用によって、第3のピストン13がストッパ22に保持され、圧力伝達ピストン16が左側に移動され、これにより、ブレーキマスターシリンダ3が操作される。圧力保持のため、ピストン・シリンダ装置29のピストン31が制御位置に確実に保持される。中間室21と第2の圧力媒体貯蔵容器38との間の接続部に挿入された通電していないときに開放する2/2方弁37は、増圧および圧力保持の両方の場合にその閉じた切換位置に保持される。
【0021】
減圧のため、シリンダ・ピストン装置29のピストン31は移動して戻される。この場合、圧力媒体は、中間室21から圧力室36に流入して戻る。圧力を大気圧レベルに完全に低下させるために、最後に、前述の2/2方弁37が開放され、これにより、第2の圧力媒体貯蔵容器の第2の室39に対する液圧を通じての接続が行われる。中間室21または圧力室36内の負圧を回避するために、第3の圧力媒体貯蔵容器39から圧力室21、26内への圧力媒体体積流を許容するよう、通電状態で、2/2方弁37を形成することができる。
【0022】
電気機械式アクチュエータ30の制御過程は、中間室21内の圧力が目標圧力値に近くなるように、電子制御ユニット42によって実行される。この目標圧力値は、一方で、検出されたブレーキペダル9の操作成分から、他方で、外部操作成分から得られる。ブレーキペダル9の操作成分は、ブレーキペダル9または第1のピストン11の操作ストロークから、そして圧力室14内の液圧から決定され、液圧は、圧力センサ48によって検出されて、ブレーキペダル9の操作力に比例する。
【0023】
電子回路の障害によって、または液圧準備装置2により発生される圧力の欠如によって特徴づけられ、かつ復帰面に対応する第2の作動モードでは、中間室21内の電子制御される増圧は不可能である。この作動モードでは、ブレーキシステムを純粋に機械式に操作することができる。第3のピストン13は、ブレーキペダル操作の影響下で、そのストッパ22から移動して離れ、機械的な接触によって第2のピストン12を移動させる。ブレーキマスターシリンダ3の操作は、もっぱら車両運転者の筋力により行われる。
【0024】
回生ブレーキに対応する第3の作動モードでは、中間室21内で制御される圧力は、ブレーキペダル9の操作にもかかわらず、車両の運動エネルギの可能な限り完全な回生を達成するために、ゼロまで低減することができる。このために、遮断弁33が閉鎖され、この結果、室17が遮断される。室17の遮断によって、操作方向の第3のピストン13の移動が妨げられる。回生によって完全にカバーできない減速要望は、その差に対応する部分ブレーキによってカバーされる。遮断弁33を使用する代わりに、第3の作動モードでは、すなわち圧力準備装置2を用いた回生ブレーキ中には、中間室21内の圧力を制御することができ、この圧力は一時的に必要とされる車輪ブレーキ圧の最大圧力よりも大きく、ならびにピストン13を拘束するために必要な圧力よりも大きく選択される。後段に接続されるABSまたはESP車輪ブレーキ圧調整ユニットを用いて、この圧力から、車軸または車輪個々のブレーキ圧が発生される。
【0025】
本発明によって、簡単に構成されるブレーキシステムが達成され、このシステムでは、「ブレーキ・バイ・ワイヤ」操作方式において、ならびに回生ブレーキの場合に、ブレーキペダル特性は他のブレーキシステムの作動状態と関係せず、これにより、運転者ブレーキの際のペダル感覚は、同時に外部のブレーキングが存在しても、あるいは、アンチロックコントロール、トラクション制御または走行安定性制御のようなブレーキシステムの他のコントロールアクティビティによっても、妨害されることがない。
【0026】
さらに、本発明によるブレーキ装置は、ポンプ、液圧アキュムレータおよびゲート弁のような高価な液圧構成要素を必要としないという利点を有する。唯一の液圧構成要素として、今述べた構成要素と比較して、簡単かつ廉価なエラストマでシールされたピストンおよびシリンダ、ならびに制動技術において数え切れないほど実証されてきた2/2電磁弁が使用される。本発明は、メカトロニクスアクチュエータの使用を可能にし、このメカトロニクスアクチュエータは電気式設定エネルギアキュムレータからも、車両電気系統からも直接給電されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のブレーキシステムであって、
・車輪ブレーキ回路(I、II)が接続されるマスタシリンダ(3)と、
・操作力を伝達する押圧ロッド(10)を介してブレーキペダル(9)と連結される第1のピストン(11)と、
・第2のピストン(12)であって、該ピストンを介してマスタシリンダ(3)が操作される第2のピストン(12)と、
・第1のピストン(11)によって操作可能であり、かつ第2のピストン(12)と動力を伝達する接続が可能な第3のピストン(13)とを有し、
・少なくとも1つの弾性要素(27、28)を有する、「ブレーキ・バイ・ワイヤ」運転方式において車両運転者に快適なペダル感覚を伝えるシミュレーション装置を有し、
・第2のピストン(12)と第3のピストン(13)との間の液圧で付勢可能な中間室(21)であって、中間室(21)への圧力付勢により、第2のピストン(12)および第3のピストン(13)が正反対の方向に負荷を受ける中間室を有し、
・第3のピストン(13)によって境界付けられ、遮断弁(33)によって遮断可能な液圧室(17)であって、必要な場合、第3のピストン(13)の操作方向の移動を妨げる液圧室を有し、
・中間室(21)内の圧力を制御する圧力準備装置(2)を有し、
・中間室(21)と液圧を通じ接続可能で、大気圧下にある圧力媒体貯蔵容器(39)を有し、ならびに
・中間室(21)内の圧力を電気的に調整するための手段を有する、自動車用のブレーキシステムにおいて、
中間室(21)で制御される圧力を電気的に調整するために圧力準備装置(2)内における必要な圧力媒体が、大気圧下で用意され、かつ必要に応じてより高い圧力に設定されるよう構成されていることを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
圧力準備装置(2)がシリンダ・ピストン装置(29)によって形成され、シリンダ・ピストン装置のピストン(31)が電気機械式アクチュエータ(30)によって操作可能であるよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
車両電気系統から電気機械式アクチュエータ(30)に直接給電されない限り、電気機械式アクチュエータ(30)に給電する蓄電装置(49)が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
蓄電装置(49)が車両電気系統から後充電され、かつ蓄電装置の充電状態および蓄電装置の能率が、ブレーキシステムに付設された電子ユニット(41、42)によって監視されることを特徴とする、請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
第3のピストン(13)内に、ブレーキペダル(9)に作用する操作力の検出に使用される液圧室(14)が形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
液圧室(14)が、液圧シミュレータピストン(26)によって画定される液圧シミュレータ室(25)と遮断可能に接続され、液圧シミュレータピストンが、ペダルストロークシミュレータを形成する要素(27、28)と動力を伝達するよう接続される構成であることを特徴とする、請求項5に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
液圧シミュレータ室(25)と液圧室(14)の間の接続が、第3のピストン(13)の移動によって遮断可能であるよう構成されていることを特徴とする、請求項6に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
圧力準備装置(2)が、電気式に切換可能な2/2方弁(37)を介在して圧力媒体貯蔵容器(39)に接続されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
室(17)を遮断するための遮断弁(33)が、電気式に切換可能な2/2方弁として形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
圧力準備装置(2)に液圧体積収容要素(43)が接続されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
液圧体積収容要素の体積収容機能が、電磁弁(44)を用いて接続可能および遮断可能であるよう構成されていることを特徴とする、請求項10に記載のブレーキシステム。
【請求項12】
圧力室(14)、シミュレータ室(25)、液圧室(17)および圧力媒体貯蔵容器の第1の室(38)が、第1のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路に、そして圧力準備装置(2)、中間室(21)および圧力媒体貯蔵容器の第2の室(39)が、第2のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路に付設されることと、ブレーキシステムの作動中に、第1および第2のブレーキ力ブースタ圧力媒体回路ならびに車輪ブレーキ回路(I、II)の間の圧力媒体交換が行われないよう構成されていることを特徴とする、請求項5〜11のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項13】
ブレーキペダル(9)の押し下げが検出され、電子処理され、圧力準備装置(2)の作動に変換されるよう構成されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項14】
ブレーキペダルの押し下げが、ペダルストロークを表す測定値および/またはペダル力を表す測定値を介して検出されるよう構成されていることを特徴とする、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項15】
ペダルストロークを表す値がピストン(11)のストロークであり、ピストンストロークセンサ(19)によって検出されるよう構成されていることを特徴とする、請求項14に記載のブレーキシステム。
【請求項16】
ペダルストロークを表す値がブレーキペダル(9)の回転角であり、回転角センサによって検出されるよう構成されていることを特徴とする、請求項14に記載のブレーキシステム。
【請求項17】
ペダル力を表す値が、押圧ロッド(10)に挿入された力センサによって検出される押圧ロッド(10)内の力であるよう構成されていることを特徴とする、請求項14に記載のブレーキシステム。
【請求項18】
ペダル力を表す値が、圧力センサ(48)によって検出される圧力室(14)内の圧力であるよう構成されていることを特徴とする、請求項14に記載のブレーキシステム。
【請求項19】
第2のピストン(12)が進んだストロークを検出するための手段が設けられることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
第2のピストン(12)と第3のピストン(13)との間に、圧力伝達ピストン(16)が設けられることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項21】
圧力伝達ピストン(16)が進んだストロークを検出するための手段(23)が設けられることを特徴とする、請求項20に記載のブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501410(P2010−501410A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526097(P2009−526097)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058989
【国際公開番号】WO2008/025797
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(399023800)コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト (162)
【Fターム(参考)】