説明

自動車用インストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ

【課題】インストゥルメントパネルの明度を高くしたとしても、ウインドシールドガラスへの映り込みを大幅に抑えることができ、高明度内装材の採用を可能にする自動車用インストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せを提供する。
【解決手段】入射角60°における反射率が13%以下のフロントガラス1と、例えば表面粗さRaが0.4μm以上であって、グロス値で表される表面の光沢が2以下であるインストゥルメントパネル2を組合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室内に明度の高い内装を適用するための技術に係わり、さらに詳しくは、高明度の内装を採用してもフロントガラスへの映り込みを防止することができる低反射フロントガラスと光沢を抑えたインストゥルメントパネルの組合せに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストゥルメントパネルには、高明度のものが求められているが、ウインドシールドガラス(フロントガラス)への映り込み防止の観点から、インストゥルメントパネルの明度を低く抑えざるを得ず、明るい内装実現の弊害となっている。
【0003】
すなわち、インストゥルメントパネルの明度が高い場合、インストゥルメントパネルの色がウインドシールドガラスに映り込むことがあるものの、これによって視界が遮られるようなことはなく、安全上の問題はない。
しかしながら、この映り込みを煩わしく感じることがないとは言えず、ガラスへの映り込みを最小限のものとするために、現状では、インストゥルメントパネルの明度を低く抑えるようにしており、デザイン自由度が少なくなっている。
【0004】
このような対策としては、インストゥルメントパネルの表面における反射率を低くすることによって、パネルの映り込みを抑え、これによる煩わしさを低減することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、ガラスへ映り込みを防止するため、ウインドシールドガラスに反射防止コーティングなどの反射防止処理を施すことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平6−12163号公報
【特許文献2】特開2000−211948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の方法では、ガラスへのパネルの映り込みをある程度は抑えられるものの、いずれもインストゥルメントパネルの高明度化には限界があるという問題がある。
【0006】
本発明は、ウインドシールドガラスへのインストゥルメントパネルの映り込みに関する上記のような課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、上記パネルの明度を高くしたとしても、ウインドシールドガラスへの映り込みを大幅に抑えることができ、高明度内装材の採用を可能にする自動車用インストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的の達成に向けて鋭意検討を重ねた結果、反射防止機能を有するフロントガラスと、光沢度の低いインストゥルメントパネルを組合わせることにより、顕著な相乗効果が発揮され、特にグロス値で表されるパネルの光沢度を所定値以下とすることによって、反射率が比較的高いフロントガラスを用いた場合でもガラスへの映り込みを防止することができ、高明度のインストゥルメントパネルを実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明はこのような知見に基づくものであって、本発明の自動車用インストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せにおいては、上記インストゥルメントパネルのグロス値で表される表面の光沢が2以下であると共に、上記フロントガラスの入射角60°における反射率が13%以下であることを特徴としている。
【0009】
このとき、上記フロントガラスは、屈折率の異なる複数の層から成る反射防止構造や、光の波長よりも小さいサイズの微細凹凸が光の波長よりも短いピッチで配列されて成る反射防止構造、あるいは屈折率が1.46以下の材料がコーティングされて成る反射防止構造を備えていることが望ましい。
一方、上記インストゥルメントパネルは、その表面光沢(グロス値)を2以下とするために、その表面粗さ(中心線平均あらさ)Raが0.4μm以上であることが望ましく、そのためにはパネル表面が型転写によって成形されていたり、シリカや樹脂ビーズ、ガラスビーズなどを含む塗料が塗布してあったり、塗膜表面と塗膜内部の硬化スピードが異なる塗料が塗布してあったり、テクスチャー塗装が施してあったりすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グロス値で表される表面の光沢が2以下であるインストゥルメントパネルと、入射角60°における反射率が13%以下のフロントガラスを組合わせるようにしたため、フロントガラスへのインストゥルメントパネルの映り込みを防止することができ、高明度パネル、例えば表面の明度が44以上のインストゥルメントパネルの採用を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の組合せを構成するフロントガラスやインストゥルメントパネルの構造や、本発明の実施形態について、その製造方法などと共に、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の自動車用インストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せにおいては、上記したように、グロス値で表される表面の光沢が2以下であるインストゥルメントパネルと、入射角60°における反射率が13%以下であるフロントガラスとを組合わせるようにしており、低光沢パネルと低反射ガラスの組合せによる相乗作用による顕著な映り込み防止効果が得られ、明度が44以上となるような高明度を備えたインストゥルメントパネルを採用した場合にも、当該パネルのフロントガラスへの映り込みを大幅に低減することができる。
【0013】
図1は、インストゥルメントパネルの窓映りの程度に及ぼすパネル表面の光沢(グロス値)とフロントガラスの反射率(入射角60°)の影響を調査した結果を示すものである。
すなわち、図2に示すように、反射率が異なる種々のフロントガラス1を組み付け角度α=30°で設置し、これに表面光沢が異なるインストゥルメントパネル2を種々に組合せ、日中の屋外環境を再現した光環境実験室において、パネルの窓映りが気になるかどうかの官能評価を実施した。
【0014】
このとき、窓映りの官能評価は、下記の基準に基づいて実施した。
評点1:窓映りがかなり気になる
評点2:窓映りが気になる
評点3:窓映りがやや気になるが許容できる
評点4:窓映りがさほど気にならない
評点5:窓映りが全く気にならない
【0015】
なお、本発明において、インストゥルメントパネル表面の光沢度を表すグロス値とは、JIS K 5600により定義され、micro−TRI−gloss μ(BYK Gargner社製)などの光沢計で測定することができる。
また、明度とは、同じくJIS K 5600で定義され、色の明るさの度合いを表すものであって、本発明においては、マルチアングル分光測色計MA68II(X−Rite社製)などの測色計で測定することができる。
【0016】
図1中に示す線分は、上記評点が「3」となるグロス値と反射率の座標をプロットしたものであって、この線分より下方側の領域では、高明度パネルを使用したとしても、当該パネルのフロントガラスへの映り込みがほとんど気にならないことになる。
ここで、上記線分には、変曲点が認められ、グロス値が「2」を超えた場合には、パネルの窓映りが気にならない窓映り防止可能領域が極めて狭く、窓映りを防止するためにはフロントガラスの反射率を10%以下にもしなければならないのに対し、グロス値を2以下とすることによって、グロス値の低下と共に窓映り防止可能領域が広くなり、パネル表面のグロス値によっては、反射率が12%あるいは13%のフロントガラスを使用した場合でも、窓映りを実質的に防止することができるようになることが判る。
【0017】
本発明は、このように、低光沢インストゥルメントパネルと低反射フロントガラスとを組合わせてなるものであるが、当該フロントガラスの反射率を低下させるための構造には、入射角60°における反射率が14%以下である限りにおいて特に限定はなく、従来から知られている種々の構造を採用することができ、例えば、SiOやTiOなど、屈折率の異なる複数の層から成る反射防止構造や、ナノフラクタルやMoth−eyeと呼ばれる表面の微細構造、すなわち光の波長以下の大きさの微細凹凸が光の波長以下のピッチで配列されて成る反射防止構造、さらには基材ガラスよりも低屈折の材料、具体的には屈折率が1.46以下の材料がコーティングされて成る反射防止構造を採用することができる。
【0018】
このようなコーティングや、多層構造による反射防止構造は、例えばスパッタ法によるドライプロセスやゾルゲル法によるウエットプロセスなどで製造することができる。
【0019】
すなわち、屈折率の異なる第1の相(例えば空気)から第2の相(例えばガラス)に入射する光の一部は、その境界面で反射されることになるが、これら第1及び第2の相の屈折率差が小さいほど、その反射率が小さくなる。したがって、第1の相と第2の相の間に、その中間の屈折率を持つ薄膜を配置することによって、それぞれの境界面における反射率を小さくすることができ、全体としての反射率を低下させることができる。
さらには、第1の相と第2の相の間に、屈折率の異なる複数の層を形成して各層の屈折率が第1の相から第2の相の屈折率に段階的に変化していくようにすることによって、各層間の屈折率差がより小さなものとなり、それぞれの境界面における反射率をさらに小さくすることができる。
【0020】
また、例えば円錐形や椎の実形をなし、光の波長以下の大きさを有する無数の微細凹凸を透明性素材の表面に、光の波長以下のピッチで形成することによって、凹凸の最表面では透明性素材の存在割合が限りなく0%に近いものとなって、実質的に空気の屈折率(1.0)に等しくなる一方、凹凸の最底部では逆に空気の存在割合が限りなく0%に近いものとなって素材の屈折率と等しくなり、中間部ではその断面における透明性素材の占める断面積に応じた屈折率となる結果、光の屈折率が当該透明性素材の厚み方向に、空気の屈折率から透明性素材の屈折率の間で連続的に変化するようになることから、上記同様の原理によって、より優れた反射防止性能を発揮させることができる。
【0021】
このような微細凹凸から成る反射防止構造は、例えばナノインプリントのような方法によって形成することができる。
すなわち、上記のような無数の微細凹凸の成形型(反転型)を用意し、この成形型と基材の一方、又は双方を加熱した状態で両者を相対的に押し当てることによって、あるいは上記成形型と基材の間に、活性エネルギー線硬化性樹脂を介在させた状態で活性エネルギー線を照射し、当該樹脂を硬化させることによって、当該基材の表面に上記のような微細凹凸を成形して、反射防止機能を発揮させるようにすることができる。
【0022】
基材材料としては、透明性があるものが用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、及びこれらを2種以上ブレンドした材料を用いることができる。
【0023】
また、例えば紫外線などの照射によって重合を開始し、硬化する活性エネルギー線硬化樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン計樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂などを挙げることができ、必要に応じて活性エネルギー線を照射することによってラジカルを発生する重合開始剤を用いることもでき、より強固に固めるためイソシアネートのような硬化剤を加えることもできる。
なお、ここで用いられる活性エネルギー線としては、代表的には、紫外線やX線、その他電子線、電磁波などが挙げられ、特に限定されるものではないが、安全性や作業の簡便さから、可視光線や紫外線が用いられることが多い。
【0024】
また、ガラス等の無機系透明材料を用いることも可能であり、この場合には、電子ビーム等によってガラス表面を切削することにより上記のような反射防止構造を形成する方法や、上記のような型に溶融した無機系透明材料を流し込む方法によって、基材表面に微細凹凸から成る反射防止構造を形成することができる。
なお、必要に応じて、溶融した無機系透明材料を流し込んだのち、冷却しないうちに同様の微細凹凸形状を有する第2の型を押し当てる、または両面に型を押し当てた無機系透明材料を軟化点まで加熱し、圧力をかけて形状を転写することによって、基材の両面に微細凹凸構造を形成することができる。
【0025】
一方、本発明に用いるインストゥルメントパネルとしては、グロス値が2以下という、表面光沢が低いものとすることが必要である。パネル表面のグロス値が2を超えると、図1からも明らかなように、窓映り防止効果が極端に低下し、反射率の極めて低いフロントガラスと組合せない限り、窓映りを防止することができなくなる。
が可能となる。
このようなインストゥルメントパネル表面のグロス値を小さくする手法の一つとしては、その表面粗さを大きくする方法があり、グロス値を2以下とするには、JIS B0601に中心線平均粗さとして規定される表面粗さRaが0.4μm以上となるようにすることが効果的であり、表面粗さRaが0.4μmに満たない場合、グロス値が2を超える可能性が高いものとなる。
【0026】
そして、表面粗さRaが0.4μm以上であって、グロス値で表される表面光沢が2以下のインストゥルメントパネルを製造するためには、当該パネルの製造に型転写を適用したり、インストゥルメントパネルの表面に、シリカ、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、非相溶性樹脂など含む塗料や、塗膜表面と塗膜内部の硬化スピードが異なる塗料を塗布したり、テクスチャー塗装を施したりすることができる。
【0027】
ここで、型転写とは、インストパネルを射出成形する際に金型に微細な凹凸を形成しておき、成形時に型を形成するものや、インストを成形後、微細凹凸を形成した金型を熱プレスにより転写するもの、インスト表面に塗装を施し、塗装面に微細凹凸を形成した金型を押し当てることにより転写するものなどがある。
【0028】
また、このような表面粗さをインストゥルメントパネルに塗装を施すことによって付与するに際して、塗料中に添加するシリカやガラス、樹脂などの微粒子(ビーズ)としては、50μm以下の粒子径のものを容量比で2%程度混合し、15μm程度の膜厚となるように塗布することが望ましい。なお、樹脂ビーズの材料樹脂としては、塗料の成分樹脂や溶媒に溶解しないものであれば、特に限定されない。
【0029】
さらに、非相溶樹脂添加塗料、硬化スピードの異なる塗料、テクスチャー塗装などにより凹凸構造を作成することも可能である。
すなわち、非相溶樹脂添加塗料の例としては、非水分散型アクリルポリオールと溶剤可溶型アクリルポリオオールを混合し、塗料に分散して、塗装、乾燥することにより微細凹凸を得ることができる。
【0030】
また、硬化スピードの異なる塗料の例としては、アクリル酸ポリオールとポリイソシアネートの分散させた塗料を基材に塗装し、その上に、硬化スピードを変えるための触媒であるDibutyltin Dilaurate(DBTL)を添加したアクリル酸ポリオールとポリイソシアネートの分散塗料を塗装し、乾燥することにより微細凹凸を得ることができる。
テクスチャー塗装の例としては、熱硬化性樹脂成分と結晶性ポリテトラフルオロエチレンを分散させた粉体塗料を塗装し、乾燥することにより、微細凹凸を得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
〈フロントガラス〉
厚さ4.6mmの板ガラスを使用し、この内面にTiO/SiOの2層構造による低反射処理をすることによって、入射角60°における反射率が9%のフロントガラスを作製し、当該フロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、10μm以下のシリカやガラス、樹脂などの微粒子(ビーズ)を容量比で5%程度混合した塗料を用いて、15μm程度の膜厚となるように塗装することによって、明度が52であると共に、表面粗さRaが1μm、表面のグロス値が1.5のインストゥルメントパネル2を作製し、当該パネル2を図2に示すように組み込んだ。
【0033】
(実施例2)
〈フロントガラス〉
厚さ4.6mmの板ガラスを使用し、この内面にTiO/SiO/TiO/SiOの4層構造による低反射処理を施すことによって、入射角60°における反射率が7.5%のフロントガラスを作製し、当該フロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、10μm以下のシリカやガラス、樹脂などの微粒子(ビーズ)を容量比で4%程度混合した塗料を用いて、15μm程度の膜厚となるように塗装することによって、明度が52であると共に、表面粗さRaが0.6μm、表面のグロス値が2のインストゥルメントパネル2を作製し、当該パネル2を図2に示すように組み込んだ。
【0034】
(実施例3)
〈フロントガラス〉
厚さ4.6mmの板ガラスを使用し、この内面に、UV硬化樹脂をコーティングして、ピッチ250nm、高さ500nmのMoth−eye構造を転写することにより低反射処理をし、入射角60°における反射率が7%のフロントガラスを作製し、当該フロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、10μm以下のシリカやガラス、樹脂などの微粒子(ビーズ)を容量比で4%程度混合した塗料を用いて、15μm程度の膜厚となるように塗装することによって、明度が52であると共に、表面粗さRaが0.6μm、表面のグロス値が2のインストゥルメントパネル2を作製し、当該パネル2を図2に示すように組み込んだ。
【0035】
(実施例4)
〈フロントガラス〉
厚さ4.6mmの板ガラスを使用し、この内面に、屈折率が1.38のフッ素系樹脂をコーティングすることによって低反射処理をし、入射角60°における反射率が11.5%のフロントガラスを作製し、当該フロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、10μm以下のシリカやガラス、樹脂などの微粒子(ビーズ)を容量比で7%程度混合した塗料を用いて、15μm程度の膜厚となるように塗装することによって、明度が52であると共に、表面粗さRaが1.8μm、表面のグロス値が1のインストゥルメントパネル2を作製し、当該パネル2を図2に示すように組み込んだ。
【0036】
(実施例5)
〈フロントガラス〉
上記実施例1と同様の低反射処理を施したフロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で、同様に設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、10μm以下のシリカやガラス、樹脂などの微粒子(ビーズ)を容量比で4%程度混合した塗料を用いて、15μm程度の膜厚となるように塗装することによって、明度が44であると共に、表面粗さRaが0.6μm、表面のグロス値が2のインストゥルメントパネル2を作製し、当該パネル2を図2に示すように組み込んだ。
【0037】
(実施例6)
〈フロントガラス〉
上記実施例1と同様の低反射処理を施したフロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、非水分散型アクリルポリオールと溶剤可溶型アクリルポリオオールを7:3の比で混合し、さらにポリオールのOH:NCO=1:1となるようにポリイソシアネートを配合し、塗装、乾燥することによって、明度が52であるとともに表面粗さRaが3μm、表面のグロス値が1.8のインストゥルパネル2を作製し、これを図2に示すように組み込んだ。
【0038】
(実施例7)
〈フロントガラス〉
上記実施例1と同様の低反射処理を施したフロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で、同様に設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、アクリル酸ポリオールとポリイソシアネートを分散させた塗料を基材に塗装し、その上に、硬化スピードを変えるための触媒であるDibutyltin Dilaurate(DBTL)を添加したアクリル酸ポリオールとポリイソシアネートの分散塗料を塗装することにより、明度が52であると共に、表面粗さRaが3μm、表面のグロス値が1.5のインストゥルパネル2を作製し、これを図2に示すように組み込んだ。
【0039】
(実施例8)
〈フロントガラス〉
上記実施例1と同様の低反射処理を施したフロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で、同様に設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、熱硬化性樹脂成分と結晶性ポリテトラフルオロエチレンを分散させた粉体塗料を塗装することにより、明度が52であると共に、表面粗さRaが1000μm、表面のグロス値が1.5のインストゥルパネル2を作製し、図2に示すように組み込んだ。
【0040】
(比較例1)
〈フロントガラス〉
上記実施例1と同様の低反射処理を施したフロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°でに設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、射出成形時の金型にシボを作成することによって、明度が52であると共に、表面粗さRaが9μm、表面のグロス値が2.5のインストゥルパネル2を作製し、当該パネル2を図2に示すように組み込んだ。
【0041】
(比較例2)
〈フロントガラス〉
厚さ4.6mmの合わせガラスを使用し、低反射処理を施すことなく、入射角60°における反射率が13.5%のフロントガラスを作製し、当該フロントガラス1を図2に示すように、組み付け角度30°で設置した。
〈インストゥルメントパネル〉
射出成形によって製造したPP樹脂から成るパネル素材に、10μm以下のシリカやガラス、樹脂などの微粒子(ビーズ)を容量比で5%程度混合した塗料を用いて、15μm程度の膜厚となるように塗装することによって、明度が52であると共に、表面粗さRaが1μm、表面のグロス値が1.5のインストゥルメントパネル2を作製し、当該パネル2を図2に示すように組み込んだ。
【0042】
〈評価方法〉
上記実施例及び比較例により得られたフロントガラスとインストゥルメントパネルの組合せについて、日中の屋外環境を再現した光環境実験室において、インストゥルメントパネルの窓映りが気になるかどうかの官能評価を実施した。その結果を表1に示す。
なお、評価については、先に示したものと同様の基準で行った。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、反射防止機能を有するガラスと光沢度の低いインストゥルメントパネルを組み合わせることにより、顕著な相乗効果が発揮され、高明度のインストゥルメントパネルを実現できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】インストゥルメントパネルの窓映りに及ぼすパネル表面の光沢とフロントガラスの反射率の影響を調査した結果を示すグラフである。
【図2】本発明におけるフロントガラスとインストゥルメントパネルの配置状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0046】
1 フロントガラス
2 インストゥルメントパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用インストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せにおいて、グロス値で表されるインストゥルメントパネル表面の光沢が2以下、フロントガラスの入射角60°における反射率が13%以下であることを特徴とするインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項2】
上記フロントガラスが屈折率の異なる複数の層から成る反射防止構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項3】
上記フロントガラスが光の波長よりも小さい微細凹凸が光の波長よりも短いピッチで配列されて成る反射防止構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項4】
上記フロントガラスが1.46以下の屈折率の材料がコーティングされて成る反射防止構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項5】
上記インストゥルメントパネルの表面粗さRaが0.4μm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項6】
上記インストゥルメントパネルの表面が型転写により形成されていることを特徴とする請求項5に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項7】
上記インストゥルメントパネルの表面に、シリカ、樹脂ビーズ、ガラスビーズ及び非相溶性樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種を添加した塗料が塗布してあることを特徴とする請求項5に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項8】
上記インストゥルメントパネルの表面に、塗膜表面と塗膜内部の硬化スピードが異なる塗料が塗布してあることを特徴とする請求項5に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項9】
上記インストゥルメントパネルの表面に、テクスチャー塗装が施してあることを特徴とする請求項5に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。
【請求項10】
上記インストゥルメントパネルの表面の明度が44以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載のインストゥルメントパネルとフロントガラスの組合せ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−260498(P2008−260498A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106670(P2007−106670)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】