説明

自動車用シート

【課題】 ヘッドレスト及びステーをかさばることなく収納することができるようにすること。
【解決手段】 背もたれ部13の上部にステー15を介してヘッドレスト14を配設する。ヘッドレスト14には着脱機構16を設け、その着脱機構16を介してヘッドレスト14をステー15に取り外し可能に装着する。背もたれ部13には保持機構19を設け、ヘッドレスト14をステー15から取り外した状態で、ステー15を背もたれ部13内に没入させて、保持機構19により没入位置に保持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車に搭載される自動車用シートに係り、特に背もたれ部の上部にヘッドレストを設けた自動車用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車のシートは、背もたれ部を後方に倒して、後方のシートの腰掛部と連続するように構成したものが一般的である。この場合、各シートの背もたれ部を倒したとき、それらの背もたれ部の上部に設けられたヘッドレストが邪魔になる。このため、背もたれ部を後方に倒して使用する際に、ヘッドレストはステーとともに背もたれ部から取り外される(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−255895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、ヘッドレストにはステーが突出状態で固定されているため、かさばり、その置き場所の確保が困難である。そのため、前記特許文献1のように、背もたれ部の背面にヘッドレスト収納部を設けたものも存在するが、その収納部自体が大きく、ヘッドレスト収納時以外は邪魔になるものであった。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、背もたれ部から取り外したヘッドレストをその状態で使用することができたり、ヘッドレスト及びステーをかさばることなく収納することができたりすることが可能な自動車用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、背もたれ部の上部にステーを介してヘッドレストを設けた自動車用シートにおいて、前記ヘッドレストをステーから取り外し可能にするとともに、ヘッドレストが取り外された状態のステーを背もたれ部内に没入可能にしたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ステーを没入位置において保持するとともに、ステーが没入状態で没入方向にプッシュ操作されたとき、ステーを保持状態から解除して上方へ突出させるためのプッシュ解除手段を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記ステーの軸線を中心とした回動変位を阻止するための阻止手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、背もたれ部の上部にステーを介してヘッドレストを設けた自動車用シートにおいて、前記ヘッドレストをステーから取り外し可能にするとともに、ステーを背もたれ部から取り外し可能にしたことを特徴とするものである。
【0009】
(作用)
請求項1に記載の発明においては、ヘッドレストを背もたれ部から取り外して、背もたれ部を後方に倒して使用する場合、ヘッドレストをステーから取り外すことができるとともに、ステーを背もたれ部内に没入させることができる。よって、ヘッドレスト及びステーをかさばることなく容易に収納することができる。また、ヘッドレストの取り外し状態において、その下部にステーが突出していないため、ヘッドレストを枕等として便利に使用することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明においては、ステーを背もたれ部内の没入位置に確実に保持することができるとともに、その保持状態を簡単なプッシュ操作によって容易に解除することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、ステーの軸線を中心とした回動変位を阻止することができて、ヘッドレストに対するステーの取付位置を一定に保つことができ、ステーに対してヘッドレストを取付ける場合に有効である。
【0012】
請求項4に記載の発明においては、背もたれ部を後方に倒して使用する場合、ヘッドレストをステーから取り外すことができるとともに、ステーを背もたれ部から取り外すことができる。よって、ヘッドレスト及びステーをかさばることなく空いているスペースに容易に収納することができる。また、請求項1の場合と同様に、ヘッドレストを枕等として便利に使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、ステーを有するヘッドレスト、あるいはヘッドレスト及びステーをかさばることなく収納したり、ヘッドレストを枕等として便利に使用したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図7に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態の自動車用シート11は、腰掛部12と、その後端部に角度調節可能に、かつ後方へ倒伏可能に設けられた背もたれ部13とから構成されている。背もたれ部13の上部にはヘッドレスト14が一対のパイプ状のステー15を介して取り付けられている。ヘッドレスト14には着脱機構16が設けられ、この着脱機構16を介してヘッドレスト14がステー15の上端部に取り外し可能に装着されている。そして、自動車用シート11の背もたれ部13を腰掛部12の後方に倒して使用する場合等に、ヘッドレスト14をステー15から取り外しできるようになっている。
【0015】
前記背もたれ部13内にはシートフレーム17が配設されている。シートフレーム17の上部前面には一対の軸支機構18が設けられ、これらの軸支機構18により、各ステー15が背もたれ部13に対して高さ調節可能に支持されている。また、ヘッドレスト14をステー15から取り外した状態で、ステー15を背もたれ部13内に没入させ得るようになっている。各軸支機構18の下部に連接配置されるように、シートフレーム17の前面には一対のプッシュ解除手段としての保持機構19が設けられ、これらの保持機構19により各ステー15が没入位置に保持されるようになっている。
【0016】
図3及び図4に示すように、前記着脱機構16においては、ヘッドレスト14内に支持枠21が配設され、その支持枠21にはステー15を嵌挿するための一対の挿通孔22が形成されている。図6(a)に示すように、各挿通孔22は断面ほぼ楕円筒状に形成されるとともに、各ステー15も挿通孔22と合致するように断面ほぼ楕円筒状に形成されている。
【0017】
前記支持枠21の一側端部には支持部23が形成されるとともに、他側端部には支持筒24が取り付けられている。支持枠21の支持部23と支持筒24との間には係止ロッド25が横方向へ移動可能に支持され、その一端には操作ボタン26が取り付けられている。係止ロッド25には、各一対の直線状をなす係止部25a及び凹状をなす解除部25bが形成されている。これらの係止部25a及び解除部25bと対応するように、各ステー15の上端外周には係止溝15aが形成されている。
【0018】
前記操作ボタン26と支持枠21内のバネ座27との間にはバネ28が介装され、このバネ28により係止ロッド25が操作ボタン26の端部側に向かって移動付勢されている。これにより、常には図3に示すように、係止ロッド25上の係止部25aがステー15の係止溝15aに係合して、ヘッドレスト14がステー15に対する取付状態に係止保持されている。また、この状態で操作ボタン26の押圧操作により係止ロッド25がバネ28の付勢力に抗して移動されたときには、係止ロッド25上の解除部25bがステー15の係止溝15aに対応して、ヘッドレスト14の取付状態での係止が解除されるようになっている。
【0019】
図5及び図6に示すように、前記軸支機構18においては、ステー15を上下動可能に嵌挿支持するための軸支筒29が設けられている。図6(b)に示すように、この軸支筒29は、ステー15と合致するように断面ほぼ楕円筒状に形成されている。そして、この軸支筒29に対するステー15の嵌挿構造により、ステー15の軸線を中心とした回動変位を阻止するための阻止手段が構成されている。軸支筒29の上端には、係止部材30が移動操作可能に配設されている。この係止部材30と対応するように、各ステー15の下端外周には複数の係止溝15bが形成されている。この係止部材30は、図示しないバネにより係止溝15bと係合する方向に付勢されている。そして、係止部材30を前記バネの付勢力に抗して係止溝15bとの係合位置から後退操作させることにより、ステー15を上下動させることができる。また、係止部材30が前記バネにより係止溝15bに択一的に係合することにより、ヘッドレスト14を取り付けた状態のステー15が所望の高さ位置に係止保持されるようになっている。
【0020】
図5〜図7に示すように、前記保持機構19においては、四角筒状の保持筒31が設けられている。保持筒31内にはほぼ四角筒状の移動部材32がガイドロッド33を介して上下移動可能に配設され、その上端には前記ステー15が連接固定されている。保持筒31の底部と移動部材32との間にはバネ34が介装され、このバネ34により移動部材32が上方に向かって移動付勢されている。移動部材32の側面には回動板35が支軸36を介して回動可能に支持され、その下部外面には係合ピン37が突設されている。移動部材32と対応するように、保持筒31の下部内面にはカム板38が配設され、その表面にはハート形のカム溝39が形成されている。
【0021】
そして、ヘッドレスト14をステー15上から取り外した状態で、ステー15が背もたれ部13内の没入位置にプッシュ操作されたときには、移動部材32がバネ34の付勢力に抗して下方に移動される。これにより、図7に鎖線で示すように、係合ピン37がカム溝39内に一側部39aから進入して係止カム部39bに係合され、ステー15が没入位置に保持されるようになっている。また、このステー15が没入位置の保持状態でさらに没入方向へプッシュ操作されたときには、係合ピン37がカム溝39の係止カム部39bから離脱されて他側部39cから上方へ退出可能な状態になる。これにより、ステー15の保持状態が解除されて、そのステー15がバネ34の付勢力により移動部材32とともに上方に復帰移動されて、背もたれ部13から上方に突出されるようになっている。
【0022】
次に、前記のように構成された自動車用シートの動作を説明する。
さて、この自動車用シート11において、背もたれ部13を後方に倒して、後方のシートの腰掛部と連続させる場合には、着脱機構16の操作ボタン26を押圧操作すると、係止ロッド25が同方向に移動される。これにより、係止ロッド25上の係止部25aがステー15の係止溝15aから離脱して、解除部25bが係止溝15aに対応し、ヘッドレスト14がステー15に対する取付位置での係止状態から解除される。よって、図1及び図2に実線で示すように、ステー15の上端部からヘッドレスト14を容易に取り外すことができる。
【0023】
そして、このヘッドレスト14の取り外した状態で、両ステー15を背もたれ部13内の没入位置にプッシュ操作すると、保持機構19の移動部材32が下方に移動される。これにより、図7に鎖線で示すように、係合ピン37がカム板38のカム溝39内に進入して係止カム部39bに係合し、ステー15が没入位置に保持される。よって、この状態でヘッドレスト14やステー15が邪魔になることなく、背もたれ部13を後方シートの腰掛部と連続させることができる。また、ヘッドレスト14がステー15から分離された状態にあるため、シート下やシートとドアトリムとの間等にかさばることなく容易に収納することができる。また、ヘッドレスト14の下部にステー15が突出していないため、ヘッドレスト14を枕や肘掛け等としても使用することもできる。
【0024】
さらに、前記背もたれ部13を後方の倒伏位置から前方の起立位置に戻した後、背もたれ部13の上部にヘッドレスト14を取り付ける場合には、没入位置のステー15を没入方向へプッシュ操作する。すると、係合ピン37がカム溝39の係止カム部39bから離脱されて、ステー15が没入位置での保持状態から解除される。これにより、ステー15がバネ34の付勢力にて移動部材32とともに上方へ復帰移動されて、背もたれ部13から上方に突出される。その後、ステー15の上端部にヘッドレスト14を取り付けると、着脱機構16の係止ロッド25上の係止部25aがステー15の係止溝15aに係合して、ヘッドレスト14がステー15に対する取付状態に係止保持される。以上のように、ステー15の没入位置からの突出操作、及びステー15に対するヘッドレスト14の取付操作を容易に行うことができる。
【0025】
以上に述べたこの実施形態においては、以下の効果がある。
・ ステー15の上端部からヘッドレスト14を取り外すことができるとともに、ステー15を背もたれ部13内に没入させて、背もたれ部13を後方シートの腰掛部と連続させることができる。
【0026】
・ ヘッドレスト14をステー15から分離させることができ、ヘッドレスト14をかさばることなく容易に収納することができる。
・ 従って、ヘッドレスト14を収納するための収納部を背もたれ部の背面等に設ける必要がない。
【0027】
・ ヘッドレスト14の下部にステー15が突出していないため、ヘッドレスト14を枕や肘掛け等として使用することもできる。
・ 図6(b)から明らかなように、軸支筒29及びステー15が断面ほぼ楕円筒状に形成されているため、ステー15の軸支筒29に対する回動が阻止される。従って、ステー15の回動方向の向きが常に一定であり、ステー15に対してヘッドレスト14を装着する場合に、ステー15の係止溝15aと係止ロッド25との位置関係が常に定まり、このヘッドレスト14の装着が容易である。
【0028】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
さて、この第2実施形態においては、図8に示すように、前記第1実施形態の保持機構19に代えて、背もたれ部13内にヘッドレスト14の着脱機構16と同じ構成の着脱機構16が配設されている。そして、ヘッドレスト14側の着脱機構16を解除操作して、ステー15の上端部からヘッドレスト14を取り外した後、背もたれ部13側の着脱機構16の操作ボタン26を解除操作して、ステー15を背もたれ部13から取り外すようになっている。
【0029】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態の場合とほぼ同様に、ヘッドレスト14及びステー15をかさばることなく容易に収納することができるとともに、ヘッドレスト14を枕等として使用することもできる。
【0030】
この第2実施形態においては、ステー15が背もたれ部13から取り外されるため、前記第1実施形態のように、ステー15及び軸支筒29の断面形状を楕円形にして、ステー15の軸線を中心とした回動を阻止するようにすることは、特に有効である。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0031】
・ ステー15の軸線を中心とした回動を阻止する手段として、ステー15にその長さ方向に延びる溝を形成するとともに、軸支筒29にその溝に係合する突起を設けること。
・ 図8に2点鎖線で示すように、左右のステー15間を連結する連結部15cを設け、この連結部15cにより左右のステー15を一体化すること。
【0032】
・ ステー15及び挿通孔22の断面形状を、前記実施形態以外の形状、例えば、四角形、六角形、円形等にすること。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態の自動車用シートを示す部分破断側面図。
【図2】図1の自動車用シートの部分破断正面図。
【図3】同自動車用シートのヘッドレスト部分の要部拡大断面図。
【図4】ステーに対するヘッドレストの着脱機構を示す分解斜視図。
【図5】背もたれ部内へのステーの没入保持機構を示す要部拡大断面図。
【図6】(a)は図3の6−6線における拡大断面図、(b)は図5の6−6線における拡大断面図。
【図7】図5の7−7線における部分拡大断面図。
【図8】第2実施形態の自動車用シートを示す部分正面図。
【符号の説明】
【0034】
11…自動車用シート、13…背もたれ部、14…ヘッドレスト、15…ステー、16…着脱機構、18…軸支機構、19…プッシュ解除手段としての保持機構、21…支持枠、22…回動阻止手段を構成する挿通孔、25…係止ロッド、29…回動阻止手段を構成する軸支筒、32…移動部材、35…回動板、37…係合ピン、38…カム板、39…カム溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部の上部にステーを介してヘッドレストを設けた自動車用シートにおいて、前記ヘッドレストをステーから取り外し可能にするとともに、ヘッドレストが取り外された状態のステーを背もたれ部内に没入可能にしたことを特徴とする自動車用シート。
【請求項2】
前記ステーを没入位置において保持するとともに、ステーが没入状態で没入方向にプッシュ操作されたとき、ステーを保持状態から解除して上方へ突出させるためのプッシュ解除手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用シート。
【請求項3】
前記ステーの軸線を中心とした回動変位を阻止するための阻止手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用シート。
【請求項4】
背もたれ部の上部にステーを介してヘッドレストを設けた自動車用シートにおいて、前記ヘッドレストをステーから取り外し可能にするとともに、ステーを背もたれ部から取り外し可能にしたことを特徴とする自動車用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−122515(P2006−122515A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317206(P2004−317206)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】