説明

自動車用スプラッシュシールド

【課題】前後に分割されヒンジを介して連結された分割部を有する自動車用スプラッシュシールドにおいて、取り付けのためにヒンジを中心として揺動させた際に互いに離れる立壁間の隙間からの異物の侵入を抑制する。
【解決手段】自動車用スプラッシュシールド10は、ヒンジ15によって連結された後側展開部13と本体部11にそれぞれ形成され、タイヤの回転中心から離れる方向に延びる立壁20,20’を有している。立壁20と20’の間には、ヒンジ15を中心とした揺動を可能とするために切欠21が形成されている。切欠21は、立壁20と20’の間に延びる遮蔽部材22によって塞がれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの上方を覆って、走行時にタイヤが跳ね上げる泥水などを遮蔽することを目的とした自動車用スプラッシュシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車体パネルの、自動車のタイヤの上面を覆う部分は、タイヤを受け入れるアーチ状の形状を有するホイールハウスを形成している。ホイールハウスには、車体パネルに沿うように形成された合成樹脂製のスプラッシュシールドが取り付けられている。スプラッシュシールドは、悪路や濡れた路面を走行した時にタイヤが跳ね上げる泥水や小石、氷雪等から車体パネルを保護するとともに、これら泥水や小石、氷雪等が車体側へ侵入するのを防止することを目的として設けられている。
【0003】
この種のスプラッシュシールドは、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂に各種の充填材を混入した組成物をシート状に形成し、それに対して、真空成形、圧空成形などを行うことによって製造される。このようにして、車体パネルの、スプラッシュシールドが取り付けられる部分であるホイールハウスに沿った形状に成形されたスプラッシュシールドは、ねじ止め、ビス止め、クリップ止めなどによって車体パネルに固定される。
【0004】
このような真空成形、圧空成形などでは、成形前の樹脂シートの板厚が均一であっても、成形後には、深い絞りを受ける部位の板厚が他の部位よりも薄くなる傾向がある。したがって、タイヤの上部に沿った円弧状の形状を有するスプラッシュシールドを、単純に一体成形した場合、深い絞りを受ける端部付近は薄肉になる傾向がある。特に、大型の車両では、円弧の径が大きくなり、成形品の高さが高くなるため、このような傾向が顕著となる。このため、薄肉となった箇所の剛性の低下、破れや変形などが生じないように、成形による薄肉化を抑制することが望まれる。また、成形品の高さが高くなれば、そのための成形金型が大型化し、製造コストが高くなるという問題もある。
【0005】
このような問題を解決するために、スプラッシュシールドを、前後に分割した複数の部材を組み合わせて形成する技術が知られている。さらに進んだ従来技術として、特許文献1には、図8に示すように、ほぼ平坦な板状の連接片103で互いに連結されたフロント側スプラッシュシールド101とリア側スプラッシュシールド102とを有するスプラッシュシールド100が開示されている。すなわち、タイヤの半径方向に延びる両側壁の、互いに対向する部分にそれぞれ切欠が設けられており、これら両切欠の間が連接片103となっている。この側壁には、その下端に沿って延びタイヤの軸線方向に突出したフランジ106が形成されている。フランジ106には、ホイールハウスに固定するためのビス挿入用の透孔105が形成されている。このフランジ106も、連接片103に対応する位置で切欠によって分断されている。
【0006】
このスプラッシュシールド100では、連接片103部分を平坦に形成することによって、この部分を中心として、フロント側スプラッシュシールド101とリア側スプラッシュシールド102とを互いに揺動させることが可能となっている。そこで、スプラッシュシールド100は、前後に開いたような形態で成形され、それによって、成形品の高さが低減されている。成形後、取り付け時には、スプラッシュシールド100は、図8に矢印Eで示すように、連接片103を中心として前後に縮めるように撓まされて、ホイールハウスに沿う形状とされる。この時、フロント側スプラッシュシールド101とリア側スプラッシュシールド102の間の前記の切欠が閉じる。そして、前後のフランジ106同士が重なり合った部分をねじ止めすることによって、スプラッシュシールド100は、切欠が閉じた状態で取り付けられる。
【0007】
また、スプラッシュシールドの前後に分割した分割部間を、互いに揺動可能に連結する種々のヒンジ構造が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特公平5−72314号公報
【特許文献2】実公平4−52145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車用スプラッシュシールドでは、ホイールハウスを形成する車体パネルとの間に泥水や雪や氷塊などの異物が侵入するのを抑制するのが好ましい。それによって、侵入した異物のために異音が発生したり、スプラッシュシールドが押し下げられてタイヤに干渉したりするのを抑制することができる。このための対策として、スプラッシュシールドの側壁の端部から折り返すように形成され、車体パネルの端部を回り込むように配置される立壁を設けた構造が知られている。
【0009】
しかしながら、このような立壁を、上述のように前後に分割した部分を互いに揺動可能に連結したスプラッシュシールドにおいて、分割した部分間にまたがって形成しようとすると、取り付け時の揺動によって、分割した各部分に形成した立壁は、互いに離れる方向に移動する。このため、立壁間に大きな隙間が残るのを避けられず、この隙間のために、泥水や雪や氷塊の侵入の抑制効果が損なわれてしまう。
【0010】
また、前後に分割された分割部間を、ヒンジを介して連結したスプラッシュシールドでは、特に、ヒンジをスプラッシュシールドの端部近くに形成した場合であっても、車両の走行時の風圧でばたつかないようにするのが好ましい。それによって、異音の発生や、ばたつきによってできる隙間からの泥水や雪などの侵入を抑制することができる。このための対策として、ボルトなどの固定手段を用いた、車体パネルへの固定点の数や間隔が適切に設定される。しかしながら、特に前記の立壁においては、防音性などの観点から車体パネル側に固定手段のための開孔を設けるのが好ましくなく、また、車体パネルの構造上、開孔を設定できない場合があり、ばたつきを抑制する他の方策が求められる。
【0011】
本発明は、前後に分割されヒンジを介して連結された分割部を有する自動車用スプラッシュシールドにおいて、取り付けのためにヒンジを中心として揺動させた際に互いに離れる立壁間の隙間からの異物の侵入を可及的に抑制することを目的とする。本発明の他の目的は、車両走行時のスプラッシュシールドのばたつきを可及的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の自動車用スプラッシュシールドは、車体パネルに沿って取り付けられ、タイヤの上方を覆う自動車用スプラッシュシールドであって、自動車の前後方向に並んで配置された複数の分割部と、分割部を互いに揺動可能に連結するヒンジと、分割部の側端縁に、タイヤの回転中心から離れる方向に立ち上がるように形成された立壁であって、この立壁は、互いに隣接する2つの分割部にそれぞれ形成され、ヒンジに対応する位置の切欠を挟んで互いに隣接して配置された2つの立壁を少なくとも含む、立壁と、切欠を覆うように前記2つの立壁の少なくとも一方に固定された遮蔽部材と、を有することを特徴とする。
【0013】
このような構成の本発明の自動車用スプラッシュシールドは、複数の分割部がヒンジによって連結されているため、自動車用スプラッシュシールドとなる成形品の高さを低く抑え、良好で効率的な成形が可能なものである。立壁は、タイヤによって跳ね上げられる泥水などの異物が自動車用スプラッシュシールドと車体パネルとの間に入り込むのを抑制する働きをする。立壁は、タイヤの回転中心から離れる方向に立ち上がるように形成されているため、成形後の、ヒンジを中心とした揺動時に、ヒンジに対応する位置の切欠を挟んで隣接して配置された2つの立壁は互いに離れる方向に移動させられる。したがって、このような2つの立壁の間に切欠が残るのは避けられない。この切欠を覆う遮蔽部材を設けることによって、立壁の、異物に対する遮蔽作用が損なわれるのを抑制することができる。
【0014】
遮蔽部材は、立壁の端縁から延長するように形成され、立壁の端縁に沿って折り曲げられて、切欠を覆う位置に配置されているのが好ましい。このような構成とすることによって、遮蔽部材が立壁と一体に形成されるため、部品点数が増えることがなくなり、また、遮蔽部材の配置作業の作業性や効率を向上させることができる。
【0015】
さらに、立壁の端縁の、遮蔽部材が折り曲げられる部分に沿って突条を形成するのが好ましい。突条を形成することによって、遮蔽部材の折り曲げ位置の誤差が低減され、また、遮蔽部材の折り曲げの作業性を向上させることができる。
【0016】
遮蔽部材は、切欠を挟んだ2つの立壁の両方に固定するのが好ましい。それによって、遮蔽部材の安定性、耐久性を向上させることができる。さらに、2つの立壁を互いに連結することによって、2つの立壁の剛性を向上させ安定性、耐久性を向上させることができる。また、遮蔽部材を固定した後には、遮蔽部材によって連結された立壁がそれぞれ設けられた2つの分割部間の揺動を規制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒンジを介して互いに連結された複数の分割部を有する自動車用スプラッシュシールドにおいて、取り付けのためにヒンジを中心として分割部を揺動させた際に互いに離れる立壁間の隙間からの異物の侵入を、遮蔽部材によって可及的に抑制することができる。
【0018】
さらに、遮蔽部材を、両立壁に固定する構成とすれば、立壁の剛性を高め、シールド性を向上させることができる。また、両立壁が設けられた両分割部間の揺動が遮蔽部材によって規制されるため、スプラッシュシールドのばたつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適の実施形態を説明する。
【0020】
図1は本実施形態の自動車用スプラッシュシールド10の全体を示した斜視図である。本実施形態では、自動車の走行方向に対して左側の前輪の上方に取り付けられる自動車用スプラッシュシールド10を例として示す。この自動車用スプラッシュシールド10は、自動車の前後方向の中央の本体部11と、その前後に位置する前側展開部12および後側展開部13との3つの分割部と、これらを連結するヒンジ14,15を有している。ヒンジ14,15は、本体部11と、前側展開部12および後側展開部13とを、互いに揺動可能とする構造を有しており、この構造としては、公知の種々の構造を採用することができ、ここでは詳細には示さない。前側展開部12および後側展開部13は、後述するように、自動車用スプラッシュシールド10の成形後、ヒンジ14,15を利用して、自動車用スプラッシュシールド10の全体が、図1に示すように円弧状となるように揺動させられる。
【0021】
図2は、本体部11と後側展開部13との連結部を拡大して示す斜視図である。図3は、図2のA−A線に沿った断面図、図4は、図2のB−B線に沿った断面図であり、これらの図には、自動車用スプラッシュシールド10の周囲に位置することになるタイヤ1や車体パネル2,2′が破線で示されている。図5は、この連結部の、後側展開部13を揺動させる前の状態を示す斜視図である。
【0022】
自動車用スプラッシュシールド10は、熱可塑性樹脂を原料とした概してシート状の部材である。自動車用スプラッシュシールド10は、フェンダーパネルやバンパーフランジやエンジンアンダーカバーなどの車体パネル2,2′に沿って取り付けられるものであり、車体パネル2,2′の形状に追従して、自動車の前後方向に概して円弧状の形状となっている。
【0023】
前側展開部12と後側展開部13には、端縁から突出するように取付座部16が形成され、この取付座部16に、車体パネル2,2′への取付用ボルトを挿通するための開孔17が設けられている。自動車用スプラッシュシールド10は、各開孔17と車体パネル2、2′の所定の位置に設けられた不図示の開孔に取付用ボルトを挿通し、ナットによって締結することによって車体パネル2、2′に固定される。それによって、自動車用スプラッシュシールド10は、車体パネル2、2′に対して、前側展開部12が自動車の前側、後側展開部13が自動車の後側となる所定の位置に配置される。自動車用スプラッシュシールド10は、このように、タイヤ1と車体パネル2、2′との間の所定の位置に取り付けられることによって、自動車走行中にタイヤ1が跳ね上げる、水、氷雪、小石などから、車体をシールドして保護する働きをする。
【0024】
自動車用スプラッシュシールド10には様々な凹凸形状部が設けられており、それによって剛性を高め、形状保持性および耐久性を持たせて、変形したり、撓んで異音が発生したりする等の不具合の発生を抑制することができる。また、前側展開部12には、多数の導風口18が設けられており、それによって、前側展開部12に当たった走行風を導風口18から逃がし、ばたつきなどの発生を抑制することができる。
【0025】
自動車用スプラッシュシールド10において、後方車内側は、自動車走行中にタイヤ1が跳ね上げる泥水、小石などの量が最も多い。そのため、何の対策もしなければ、後方車内側では、泥水、小石などが、車体パネル2′と自動車用スプラッシュシールド10との間に侵入しやすい。このように、車体パネル2′と自動車用スプラッシュシールド10との間に大量に異物が侵入すると、異物のために異音が発生したり、自動車用スプラッシュシールド10の変形や位置ずれが起こったりする惧れがある。自動車用スプラッシュシールド10の変形や位置ずれは、自動車用スプラッシュシールド10の後方または上方にドアパネルが位置する場合、その開閉に支障を生じさせたり、タイヤ1と自動車用スプラッシュシールド10との干渉を招いたりする惧れがある。特に、冬期には、侵入した水が凍ったり、大量の氷雪が堆積したりすることによって、上記のような悪影響が生じやすい。
【0026】
このため、本実施形態の自動車用スプラッシュシールド10の後方車内側に当たる右側端縁には、自動車用スプラッシュシールド10の円弧形状の中心から見て外向きに、すなわちタイヤ1の回転中心から離れる方向に突出する立壁20,20′が形成されている。立壁20,20′は、図3に示すように、車体パネル2、2′によって形成されたフランジ2aを回り込むように配置される。このような立壁20,20′によって、タイヤ1が跳ね上げた泥水などが、車体パネル2′と自動車用スプラッシュシールド10の間に入り込むのを抑制する作用が得られる。
【0027】
この際、立壁20は後側展開部13に形成され、立壁20′は本体部11に形成されており、後側展開部13と本体部11とを、ヒンジ15を中心として互いに揺動可能とするためには、立壁20と立壁20′の間に切欠21を設ける必要がある。この切欠21は、立壁20、20′が円弧の外側に突出して形成されているため、成形後に後側展開部13を揺動させても、立壁20、20′が重なって塞がれることはない。むしろ、成形後の揺動によって立壁20と20′との距離は大きくなり、切欠21は広くなる。
【0028】
そこで、本実施形態の自動車用スプラッシュシールド10は、立壁20および20′に連結され、切欠21を跨いで配置されて、切欠21を覆う遮蔽部材22を有している。この遮蔽部材22は、成形時に、図5に示すように、立壁20′の上縁から自動車の横方向および立壁20方向に延びる延長部分として立壁20′に一体に形成される。遮蔽部材22は、立壁20′の上縁を折れ線として、図5の矢印Cで示すように外側に折り返すことによって、立壁20と立壁20′の間に架設されるように配置されている。このように折り返された遮蔽部材22は、図2に示すように、タッカー23によって立壁20および立壁20′にそれぞれ2箇所で固定されている。
【0029】
これによって、ヒンジ15を設けることに伴って、立壁20,20′間に切欠21を形成しても、その切欠21が遮蔽部材22によって覆われるため、切欠21からの、泥水や氷雪などの侵入を可及的に抑制することができる。したがって、立壁20,20′および遮蔽部材22が設けられた部分全体にわたって侵入抑制作用が得られ、泥水や氷雪などの異物が、車体パネル2′と自動車用スプラッシュシールド10の間に入り込むのを効果的に抑制できる。
【0030】
また、遮蔽部材22によって立壁20と立壁20′が連結されるため、立壁20,20′の剛性が向上し、立壁の遮蔽性が向上する。さらに、遮蔽部材22を固定した後には、後側展開部13と本体部11との揺動が遮蔽部材22によって規制されるため、本体部11や後側展開部13の端末のばたつきが抑制されるという作用も得られる。ばたつきを抑制することによって、ばたつきに起因する異音の発生、および、ばたつきによってできる隙間からの氷雪などの侵入を抑制できる。
【0031】
次に、本実施形態の自動車用スプラッシュシールドの好ましい製造方法を説明する。
【0032】
自動車用スプラッシュシールド10の原料としては、高密度ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、エラストマー等を母材とし、充填材として、タルク、ガラス繊維等を混入したものが好ましいが、その他にも、不織布などの繊維系の材料も好適に用いることができる。最初に、このような熱可塑性樹脂を主体とした組成物をスクリュー押出機内に投入し、加熱、混練して可塑状態とした後、スクリュー押出機の先端に取り付けたTダイよりシート状に押出す。
【0033】
続いて、押出された樹脂シートが冷えて固化する前に、成形型間に投入し、真空成形または圧空成形する。この時、最初から、前後方向の全体にわたって円弧状の形状の成形品を形成するのではなく、ヒンジ14,15に相当する部分で、前側展開部12と後側展開部13に相当する部分が折れ曲がった形状の成形品を形成する。それによって、前後方向の全体にわたって円弧状の形状の成形品を形成するのに比べて、成形品の高さを低く抑えることができる。その結果、成形金型の高さを低くすることができる。また、アンダーカットを必要とすることなく、一回の成形工程での成形が可能となり、しかも、成形工程における成形金型のストロークを短くできる。このため、簡単な構造の金型を用いることができ、また、プレス等にかかる時間を短く抑えて、効率的に成形を行うことができる。また、成形品の高さを低く抑えることによって、成形金型のキャビティの深さを浅く抑え、成形の絞りを小さく抑えて、成形品が過度に薄肉化されるのを抑制することができる。
【0034】
成形後、成形品の外周ロス部分を手加工でトリミングした後、成形品を裁断型内へ配置して2次裁断を行う。それによって、外周端末がカットされて見栄えが向上する。また、この裁断工程の間に、図5に示す切欠21,21′も形成され、本体部11と後側展開部13とを連結するヒンジ15付近は、図5に示す状態となる。
【0035】
より詳細に説明すると、図示していないが、裁断前の成形品では、立壁20と20′に相当する部分は、本体部11と後側展開部13に相当する部分の一般面からほぼ垂直に立ち上がる一体部分として形成されている。また、遮蔽部材22は、取付座部16と一体に、立壁20、20′に相当する部分の上縁部から外方にほぼ垂直に、すなわち、本体部11と後側展開部13に相当する部分の一般面とほぼ平行に突出する一体部分として形成されている。このような成形品に対して、裁断型による裁断を行うことによって、図5の右側の部分では、立壁20と20′の間および取付座部16と遮蔽部材22との間に、図5にほぼS字状に図示されている一続きの切欠が形成される。これによって、切欠21によって分断された立壁20,20′が形成されるとともに、立壁20から、立壁20′の方へ延びる遮蔽部材22が形成される。また、図5の左側でも、本体部11と後側展開部13に相当する部分の一般面から立ち上がるようになった部分が切欠21’によって分断される。それによって、切欠21,21’間に残された部分をヒンジ15として、本体部11と後側展開部13を互いに揺動させることが可能となる。
【0036】
本実施形態においては、その後、自動車用スプラッシュシールド10を車体パネル2,2′に沿った円弧状とするため、後側展開部13が、図5の矢印D方向に約30度揺動させられる。遮蔽部材22は、立壁20′の上縁を折り線として折り返される。この折り線となる部分には、図5に示すように、折り線に沿って延びる突条24を形成しておくのが好ましい。突条24を設けることによって、折り曲げ位置が明確に視認可能となり、また、突条24を曲げの起点とすることができ、それによって、作業性が向上し、加工の誤差も低減できる。
【0037】
遮蔽部材22は、折り返すことによって、立壁20と20′の間にわたって延びて切欠21を覆う位置に配置される。この状態で、遮蔽部材22と立壁20,20′とがタッカー23によって固定される。
【0038】
以上のように、本実施形態の自動車用スプラッシュシールドは、自動車の前後方向に分割された3つの分割部がヒンジを介して連結された構成となっており、その結果、成形によって効率的かつ良好な製造が可能なものである。さらに、自動車用スプラッシュシールドから、それが取り付けられる車体パネル側に突出する立壁を設けることによって、自動車用スプラッシュシールドと車体パネルの間に、タイヤが跳ね上げる泥水などの異物が入り込むのが抑制される。この際、前後方向に分割された複数の部分にわたって立壁を設けようとした場合に、ヒンジ部分に設ける必要がある切欠のために、立壁による異物の遮蔽作用が損なわれるという問題を、切欠を挟んで前後に分離された立壁間に架設されて切欠を覆う遮蔽部材を設けることによって回避している。遮蔽部材は、それが固定された後、ヒンジを介した揺動を規制し、自動車用スプラッシュシールドのばたつきを抑える働きもする。
【0039】
以上説明した本実施形態は、本発明を例示するものであり、その詳細については、種々の変更が可能である。例えば、遮蔽部材22は、自動車用スプラッシュシールド10の一体部分として構成するのが作業性などの点で合理的であり好ましいが、別部材としてもよい。また、遮蔽部材22が、その両端において立壁20,20′に固定された構成を示したが、立壁20側では固定しなくてもよい。遮蔽部材22を両端で固定すれば、安定性、耐久性が向上し、また、上記のようにばたつきを抑制する作用が得られるので好ましい。しかし、遮蔽部材22自体の剛性によって十分な安定性、耐久性を期待できるのであれば、固定を省略することによって、製造効率を向上させ、また製造コストを低減できる。
【0040】
また、本実施形態においては、遮蔽部材22を、立壁20,20′にタッカー23を用いて固定する例を示したが、固定方法はこれに限られるものではない。固定方法は、接着剤を塗布して固着させる方法でもよいし、高周波溶着や超音波溶着によって固着させる方法でもよいし、マジックファスナによる固定でもよい。また、遮蔽部材22または立壁20,20′の一方に係止突起を設け、他方に係止孔を設けて、係止突起を係止孔に挿入し係止することによって、遮蔽部材22を立壁20,20′に固定してもよい。
【0041】
図6、図7に、遮蔽部材22をタッカーなどの固定具を用いずに固定可能とした変形例を示す。図6,7において、(a)は、真空または圧空成形後、裁断型で裁断して切欠21が形成された時の遮蔽部材22および立壁20、20′を示す模式図、(b)は、遮蔽部材22を折り曲げて固定した状態を示す模式図である。
【0042】
図6に示す変形例では、立壁20,20′には、夫々、破線で示すように切れ目が入れられており、それによって舌片26,26′が形成されている。一方、遮蔽部材22には、遮蔽部材22を折り返した時に舌片26,26′に対応する位置に、貫通孔25,25′が形成されている。遮蔽部材22は、図6(a)の破線に沿って折り返され、図6(b)に示すように、舌片26′を貫通孔25′に通して係止し、舌片26を貫通孔25に通して係止することによって固定される。
【0043】
また、図7に示す他の変形例は、図6に示した変形例と同様の舌片26,26′を遮蔽部材22に設け、立壁20に貫通孔25,25′を形成したものである。図7の例でも、遮蔽部材22は図7(a)に示した破線に沿って折り返され、図7(b)に示すように、舌片26′を貫通孔25′に係止し、舌片26を貫通孔25に係止することによって固定される。
【0044】
図6、図7に示すような構成とすれば、タッカーなどの固定具や接着剤などが不要となるためコストを低減できる。また、遮蔽部材22の立壁20,20′への固定作業が容易になるため、作業効率を向上させることができるといった効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態の自動車用スプラッシュシールドの全体を示す斜視図。
【図2】図1の自動車用スプラッシュシールドの、本体部と後側展開部とが連結されている部分を拡大して示す斜視図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図。
【図5】図1の自動車用スプラッシュシールドの本体部と後側展開部とが連結されている部分の、成形後、裁断型により裁断した後の状態を示す斜視図。
【図6】図1の変形例を示す模式図。
【図7】図1の他の変形例を示す模式図。
【図8】従来例の自動車用スプラッシュシールドを示す斜視図。
【符号の説明】
【0046】
10 自動車用スプラッシュシールド
11 本体部
12 前側展開部
13 後側展開部
14,15 ヒンジ
16 取付座部
17 開孔
18 導風口
20,20′ 立壁
21 切欠
22 遮蔽部材
23 タッカー
24 突条
25,25′ 貫通孔
26,26′ 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに沿って取り付けられ、タイヤの上方を覆う自動車用スプラッシュシールドであって、
自動車の前後方向に並んで配置された複数の分割部と、
前記分割部を互いに揺動可能に連結するヒンジと、
前記分割部の側端縁に、前記タイヤの回転中心から離れる方向に立ち上がるように形成された立壁であって、該立壁は、互いに隣接する2つの前記分割部にそれぞれ形成され、前記ヒンジに対応する位置の切欠を挟んで互いに隣接して配置された2つの立壁を少なくとも含む、立壁と、
前記切欠を覆うように前記2つの立壁の少なくとも一方に固定された遮蔽部材と、
を有する自動車用スプラッシュシールド。
【請求項2】
前記遮蔽部材は前記立壁の端縁から延長するように形成され、前記立壁の端縁に沿って折り曲げられて、前記切欠を覆う位置に配置されている、請求項1に記載の自動車用スプラッシュシールド。
【請求項3】
前記立壁の端縁の、前記遮蔽部材が折り曲げられている部分に沿って形成された突条をさらに有する、請求項2に記載の自動車用スプラッシュシールド。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記2つの立壁の両方に固定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の自動車用スプラッシュシールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−114755(P2008−114755A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300623(P2006−300623)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000251060)林テレンプ株式会社 (134)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】