説明

自動車用ドアのウェザーストリップ

【課題】
材料比重を下げながら剛性,シール性を確保でき、軽量化,低コスト化を実現できる自動車用ドアのウェザーストリップを提供する。
【解決手段】
基部5aの下面の下部シール5c寄り部分に枠部1cの外周面1c′に接する突条5kを一体形成し、前記基部5aの下面にビード5nを前記突条5kに隣接するように形成するとともに、該ビード5nと前記下部シール5cとの間に切欠き部5pを設け、前記突条5kを、上部シール部5dの反発力Fの作用方向と対向するよう位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアの枠部外周面に装着されるウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアの内面には、車体のドア開口との間から雨水等が車室内に進入するのを防止するためにウェザーストリップが装着されている。
【0003】
この種のウェザーストリップでは、軽量化及び低コスト化を図るために、発泡率を上げて材料比重を下げた場合、ウェザーストリップ自体の剛性が低下し、シール性が悪化する恐れがある。シール性を改善する構造として、例えば特許文献1に開示されているものがある。この従来構造においてさらにシール性を高めるには、図5に示すウェザーストリップ15のように、ドア枠部からの潜り水を防止するための下部メインシール15aの反発力を高めることが考えられる。具体的には、例えば、前記下部メインシール15aの根元に厚肉のビード部15bを設け、さらにこのビード部15bを押し出し成形直線部と型成形コーナ部の両部分に渡るように形成する。これにより下部メインシール15aの反発力を高め、該下部メインシール15aによるシール性を改善できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3864335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のように、厚肉のビード部15bにより下部メインシール15aの反発力を高めた場合、基底部15c下面に設けられた突条15d,15eが浮き上がり、該突条15d,15eによるシール性が低下する恐れがある。そのため、前記従来構造では、サブシール15fや発泡シール材を設けている。その結果、材料比重を下げたことによるコスト削減効果が阻害されてしまうといった問題が生じる。
【0006】
また前記従来構造では、前記突条15eと下部メインシール15aとが車幅方向に離れているため、図6に示すように、前記突条15eを支点として基底部15cの車内側が浮くように転んで組付くおそれがあり、下部メインシール15aの捲くれ込みによりシール性が低下するといった問題も生じる。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、材料比重を下げながら剛性,シール性を確保でき、軽量化,低コスト化を実現できる自動車用ドアのウェザーストリップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1発明は、ドアの枠部外周面に固定部材により装着される基部と、該基部に一体形成され、前記枠部外周面に接する下部シール及び車体のドア開口内面に接する上部シールとを備え、前記ドアの枠部外周面と前記ドア開口面との間をシールする自動車用ドアのウェザーストリップにおいて、前記基部の下面の前記下部シール寄り部分に前記枠部外周面に接する突条を一体形成し、前記基部の下面にビードを前記突条に隣接するように形成するとともに、該ビードと前記下部シールとの間に切欠き部を設け、前記突条を、前記上部シール部の反発力の作用方向と対向するよう位置させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウェザーストリップによれば、基部の下面に枠部外周面に接する突条を一体形成するとともに、該突条に隣接するようにビードを形成したので、該突条の剛性を高めることができる。
【0010】
また、突条を前記基部の下面の下部シール寄り部分に一体形成したので、組付け状態が安定し、下部シールが捲くれ込むことがなく、シール性を確保できる。
【0011】
さらにまたまたビードと下部シールとの間に切欠き部を設けたので、下部シールの反発力を小さくし、もって突条への影響を小さくできる。突条の剛性向上と、下部シールの反発力低下とによって、突条を枠部外周面に確実に当接させることができ、シール性を確保できる。
【0012】
しかも、前記突条を、上部シール部の反発力の作用方向に対向するように位置させたので、上部シール部による反発力を前記突条に対して、該突条が枠部外周面を押圧するように作用させることができ、突条をさらに確実に枠部外周面に当接させ、シール性を向上できる。
【0013】
その結果、ウェザーストリップの比重を小さくしながら、必要な剛性を確保でき、従来技術のようなサブシールや発泡シール材を設けことなく、シール性を確保でき、軽量化及び低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1によるウェザーストリップが装着された自動車用ドアの模式側面図である。
【図2】前記ウェザーストリップの装着範囲を示す模式図である。
【図3】前記ウェザーストリップのドアへの装着前の断面正面図である。
【図4】前記ウェザーストリップをドアに装着し、ドアを閉じた状態の断面正面図(図1のIV-IV線断面図)である。
【図5】従来のウェザーストリップを示す断面正面図である。
【図6】従来のウェザーストリップの問題点を説明するための断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1ないし図4は、本発明の実施例1による自動車用ドアのウェザーストリップを説明するための図である。
【0017】
図において、1は自動車用フロントドア、2はリヤドアであり、該フロント,リヤドア1,2は、車体パネル3の側面に形成されたドア開口3aを開閉するように取付けられている。
【0018】
前記フロントドア1は、アウタパネル1aとインナパネル1bの周縁をヘミング加工により一体的に結合したものであり、リヤドア2は同様にアウタパネル2aとインナパネル2bの周縁をヘミング加工により一体的に結合したものである。
【0019】
前記フロントドア1のインナパネル1bの外周部には、枠部1cがアウタパネル1aの外周縁1a′から段落ちするように、かつ全体として環状をなすように形成されている。前記枠部1cは、段落ち状の外周面1c′と、これの外縁から立ち上がる縦面1c′′とで構成されている。
【0020】
前記フロントドア1の枠部1cとドア開口3aの段落ち形成されたドア開口内面3bとの間には、両者間をシールするウェザーストリップ4が該フロントドア1の全周に渡って配設されている。リヤドア2についても同様であり、以下フロントドア1のウェザーストリップ4について説明する。
【0021】
前記ウェザーストリップ4は、前記枠部1cの上辺部に配設された上部ウェザーストリップ5と、縦辺部及び下辺部に配設された下部ウェザーストリップ6と、上部の前,後コーナ部に配置されたコーナ部ウェザーストリップ7,7とで構成されている。
【0022】
前記上部ウェザーストリップ5及び下部ウェザーストリップ6は樹脂材料を押し出し成形することにより形成されたものである。前記コーナ部ウェザーストリップ7は、金型内に、上部,下部ウェザーストリップ5,6の端部を位置させた状態で樹脂材料を射出することにより形成されたものであり、全体として環状の一体成形ウェザーストリップ4となっている。
【0023】
前記上部ウェザーストリップ5が本発明の構成要件を備えている。具体的には、図3に示すように、前記上部ウェザーストリップ5は、前記外周面1c′に沿って延びるチューブ状の基部5aと、該基部5aに沿って延びるように一体形成されたリップ状のドア側上シール5b,下シール5cと、同じくリップ状の車体側上シール5d,及びチューブ状の下シール5eと、内側突条5s,中央突条5j,外側突条5kとを有する。
【0024】
前記基部5aは、横断面大略台形状をなし、外壁5f,内壁5g,上壁5h及び底壁5iを有し、該底壁5iが、所定ピッチ毎に配置されたクリップ(固定部材)8によって前記枠部1cの外周面1c′に固定されている。具体的には、図4に示すように、クリップ8の脚部8aを底壁5iの内側突条5sと中央突条5jとの間に形成された取付孔5mから枠部1cの外周面1c′に形成された係合孔1dに貫通させ、係止片8bを係合孔1dの周縁に係止させることにより前記底壁5iが外周面1c′に固定されている。
【0025】
前記ドア側上,下シール5b,5cは、前記外壁5fから車幅方向外方に突出するように一体形成され、前記枠部1cの縦面1c′′に当接し、その弾性力で該縦面1c′′に密接し、シールしている。
【0026】
また前記車体側上,下シール5d,5eは、前記上壁5hから外方に突出するように一体形成され、前記ドア開口3aのドア開口内面3bに当接し、その弾性力により該ドア開口内面3bに密接し、シールしている。より詳細には、前記車体側上シール5dの下半部5d′は、前記外壁5fを上方に、かつ少し車室側に傾斜するように延びており、その上半部5d′′は少し車外側に傾斜するように延びている。その結果、車体側上シール5dは全体として、前記外壁5fの略真上に位置している。
【0027】
前記外側突条5kは下部シール5c寄り部分に、内側突条5sはクリップ8より車内側に、中央突条5jはクリップ8と外側突条5kとの間にそれぞれ位置するように前記底壁5iに一体形成されている。
【0028】
そして前記内側,中央,外側突条5s,5j,5kは、前記底壁5iから前記枠部1cの外周面1c′側に突出し、該外周面1c′に当接し、前記クリップ8の結合力により該外周面1c′に密接し、さらにドア閉時には車体側上,下シール5d,5eの反発力により密接力を増してシールしている。
【0029】
前記ドア側上シール5bの根元部分には、溝状の切欠き5gが該シール5bの全長に渡って形成されている。また、前記底壁5iの、前記外側突条5kの外側には、これに隣接するように厚肉のビード5nが該外側突条5kの全長に渡って形成されており、さらにまた前記ビード5nと前記ドア側下シール5cの根元との間には溝状の切欠き5pが該シール5cの全長に渡って形成されている。
【0030】
そして前記外側突条5kは、前記車体側上シール5dの反発力Fの作用方向と対向する位置に配置されている。具体的には、前記外側突条5kは、基部5aの外壁5fの略真下に位置しており、また前記車体側上シール5dは前記外壁5fの略真上に位置しており、従って外側突状5kは、前記車体側上シール5dの略真下方向位置に配置されており、その結果車体側上シール5dの反発力Fの作用方向に対向するように位置している。
【0031】
本実施例のウェザーストリップ4を、ドアの枠部1cに複数のクリップ8等により装着固定した状態で、ドアが開状態にしている場合には、前記ドア側上,下シール5b,5cは、枠部1cの縦面1c′′に当接し、図3の状態から図4の状態に上方に起立するように折り曲げられる。
【0032】
この場合、ドア側上シール5bは、その根元部に形成された溝状の切欠き5qにより比較的小さい反発力で折り曲げられる。同様に、ドア側下シール5cは、その根元部に形成された溝状の切欠き5pにより比較的小さい反発力で折り曲げられる。しかも、外側突条5kが底壁5iの下部シール5c寄り部分に一体形成されているため、組付けの際に従来構造のように下部シールが転んで組付くことがなく、組付け状態が安定する。従って、下部シール5cはより確実に所定の状態に折り曲げられる。
【0033】
また、外側突条5kは、隣接するように設けられている厚肉のビード5nにより剛性が高められているため、ドア側下シール5cが折り曲げられても浮き上がることなく、外周面1c′に確実に当接している。なお、内側突条5s及び中央突条5jは、底壁5iがクリップ8により外周面1cに固定されているため、該外周面1cに確実に当接している。
【0034】
一方、ドアを閉じると、車体側上シール5d,下シール5eは、ドア開口3aのドア開口内面3bにより押圧される。そのため、図4に示すように、下シール5eについては、偏平状に変形し、内部の空気は空気孔5rより排出される。車体側上シール5dについては、その上半部5d′′が下方に折り曲げられ、この変形に伴う反発力でシール性が確保される。
【0035】
そして前記外側突条5kは、前記基部5aの外壁5fの真下,ひいては前記車体側上シール5dの略直下方向に位置している。そのため、前記外側突条5kは、前記車体側上シール5dに作用する反発力Fの作用方向に対向するように位置しており、前記反発力Fは、基部5aの外壁5fを介して外側突条5kを外周面1c′に押し付けるように作用し、前記外側突条5kは、より確実に外周面1c′に当接し、シール性が向上する。
【0036】
その結果、ウェザーストリップ5の比重を小さくしながら、必要な剛性を確保でき、従来技術のようなサブシールや発泡シール材を設けことなく、シール性を確保でき、軽量化及び低コスト化を実現できる。
【0037】
なお、本発明において、外側突条5kを車体側上シール5dの反発力Fの作用方向に対向するように配置するとは、上シール5dによる反発力を外側突条5kに対して、該外側突条5kが外周面1c′を押圧する方向に作用させ得るよう配置するとの意味であり、この反発力の作用を確保できる範囲内で外側突条5kと上シール5dがずれていても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 ドア
1c 枠部
1c′ 枠部外周面
3a ドア開口
3c ドア開口内面
5 ウェザーストリップ
5a 基部
5c ドア側下シール(下部シール)
5d 車体側上シール(上部シール)
5k 外側突条(突条)
5n ビード
5p 切欠き部
8 クリップ(固定部材)
F 反発力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの枠部外周面に固定部材により装着される基部と、該基部に一体形成され、前記枠部外周面に接する下部シール及び車体のドア開口内面に接する上部シールとを備え、前記ドアの枠部外周面と前記ドア開口面との間をシールする自動車用ドアのウェザーストリップにおいて、
前記基部の下面の前記下部シール寄り部分に前記枠部外周面に接する突条を一体形成し、
前記基部の下面にビードを前記突条に隣接するように形成するとともに、該ビードと前記下部シールとの間に切欠き部を設け、
前記突条を、前記上部シール部の反発力の作用方向と対向するよう位置させた
ことを特徴とする自動車用ドアのウェザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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