説明

自動車用ファンシステム

【課題】ファンシステムを作動させるための制御方法を改良する。
【解決手段】特に自動車エンジンを冷却するためのファンシステムであって、ファンモータ(1a、2a)を備えた少なくとも1つのファン(1、2)と、制御機器と、空気フラップ用アクチュエータ(3、4)とを有するものにおいて、ファンシステムがこれに一体化されたファン制御装置を有し、このファン制御装置が独自に単数または複数のファンモータ(1a、2a)と空気フラップ用の単数または複数のアクチュエータ(3、4)とを制御することを特徴とするファンシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車エンジンを冷却するためのファンシステムであって、ファンモータを備えた少なくとも1つのファンと、制御機器と、空気フラップ用アクチュエータとを有する自動車用ファンシステム、そして自動車エンジンを冷却するファンシステムを作動させるための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単数または複数のファンモータ、空気流調節用フラップのアクチュエータ等の電気部品の制御はふつう車両側制御機器によって行われる。このような複雑な制御システムでは個々の部品の調整がしばしばかなりの支出でのみ行うことができる。さらに、各電気部品は車両側制御機器によって個別に制御され、個々に通電もされねばならず、窮屈な状況のとき組付空間に関して諸問題が生じることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この技術の現状から出発して本発明の課題は、改良されたファンシステムとファンシステムを作動させるための制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、ファンシステムがこれに一体化されたファン制御装置を有し、このファン制御装置が独自に単数または複数のファンモータと空気フラップ用の単数または複数のアクチュエータとを制御することを特徴とするファンシステムによって解決される。有利な諸構成は従属請求項の対象である。
【発明の実施の態様】
【0005】
本発明によれば、自動車エンジンをそれ自体冷却する冷却材を冷却するファンシステムを一体化した冷却モジュールが設けられており、このファンシステムはファンモータを備えた少なくとも1つのファンと、制御機器と、空気フラップ用の例えばステッピングモータ等のアクチュエータとを有し、ファンシステムはこれに一体化されたファン制御装置を有し、このファン制御装置は独自に単数または複数のファンモータと空気フラップ用の単数または複数のアクチュエータとを制御し、これにより、車両側制御装置に実質左右されない制御が可能となり、特に車両側制御機器を介した個別給電は必要でない。特に、ハードウェアおよびソフトウェアをコンパクトなシステム(CFS)に一体化することも可能である。それに加えて、車両搭載電気系統に至る配線支出が減少し、ファンシステムは簡単に車両に一体化することができる。
【0006】
空気フラップおよびファンモータ用、特に多板フラップ用制御機器をファンモータに一体化することによって、空気フラップおよびファンモータの制御はもはや車両側制御装置から直接行われるのでない。空気フラップおよびファンモータは相互に依存して、つまり特に冷却需要および走行速度に依存して、場合によっては空気温度にも依存して制御される。この空気温度は、場合によっては、すなわちファンシステム内部のセンサが設けられていない場合、車両側制御装置から、好ましくは標準信号(例えば端子15付きまたはなしでPWM信号またはバスシステム、例えばCANバス、LINバス)を介してファンモータ制御機器に通知される。車両側制御装置に殆ど左右されないファン制御装置によって、車両制御業者は両方の制御用変量で信号をなお用意しなければならないだけであり、最も単純な場合、ファン目標回転数の信号が伝送されるだけである。車両側制御装置の側から好ましくは制御信号のみが伝送され、他の諸機能は主に、例えばさまざまな周波数または負荷時間率等の修正制御信号、電流信号または電圧信号を介して伝送される。拡張された機能は好ましくは冷却需要(ファン回転数の目標値)および走行速度に関する信号を含む。ファンシステム、つまり単数または複数のファン制御機器のプログラミングは標準インタフェース、車両側制御装置または独自の端子を介して行われ、ファンシステムはさまざまな特殊な車両パラメータに適合することができ、それとともにさまざまな車両タイプ用に1つのファンシステムを使用することができる。さまざまな車両特有なパラメータはソフトウェアアルゴリズムに一体化しておくことができ、組込時にプログラミングが簡単となる。車両側制御装置に至る双方向インタフェースを設けておくことができ、このインタフェースは車両データをファンシステムに提供するとともに、制御機器との通信も可能とする。エネルギー節約動作モード、暖機動作モードおよび/または惰行動作モードおよびエラーマネジメントは、ファンモータ制御機器において使用されるソフトウェアを介して可能である。同様に、走行速度が高いときファンモータは最大出力で作動するように予定しておくことができる。
【0007】
ファン制御装置は好ましくは、冷却材温度および/またはエンジン出力および/またはファン領域における空気流速および/または空気温度用の少なくとも1つのセンサと接続されており、単数または複数のセンサの測定値は、単数または複数のファンモータおよび単数または複数の空気フラップ用アクチュエータの制御用に使用され、このパラメータはファンシステム内部で算出され、相応に処理される。
【0008】
ファン制御装置は好ましくは、空気フラップまたはアクチュエータの位置検知用に少なくとも1つのセンサを有し、このセンサは好ましくは、アクチュエータ制御装置に一体化されたセンサシステムの一部である。そのことから、単純で安価なアクチュエータおよび/または空気フラップの使用、特にリセットなしの単純なアクチュエータ、例えばステッピングモータまたは空気圧シリンダの使用も、可能となる。さらに、単純なアクチュエータを制御するためのハイサイドまたはロウサイド最終段を使用することができ、アクチュエータの位置検知の統合が可能である。
【0009】
主に、ファン制御装置はファンモータハウジングの表面または内部に配置され、差込接点を介して車両側制御装置と接続されている。そのことから、車両へのファンシステムの簡単な一体化が可能となる。
【0010】
複数のファンの場合、ファン制御機器は主に内部ファン‐バスシステムを介して互いに通信することができる。しかしこの通信は、接続された車両側バスシステム、例えばCANバスまたはLINバスシステムを介して行うこともできる。好ましくは、信号ユニットまたはマスタユニットおよび単数または複数のスレーブユニット用制御機器自動検知部が設けられている。差込コネクタを介して、例えば空気フラップのアクチュエータ用プラグを介して、マスタユニットもしくはスレーブユニットの符号化は行うことができる。好ましくはさらに、信号ユニットの存在を自動的に検知することのできる制御機器検知部が設けられており、その際このユニットは自動的にマスタユニットとして確定される。その際、モジュール構成(単一または二重ファンシステム)も可能である。
【0011】
ファンシステムが2つのファンを備えている場合、主に、マスタユニットの故障時にスレーブユニットの自動的継続動作を可能とするフェールセーフモジュールが設けられており、1つのファンの故障時に少なくとも部分冷却が確保されている。
【0012】
ファンモータ付きの2つのファンと空気フラップ用の2つのアクチュエータとを有するファンシステムは好ましくは同一構成または少なくとも実質的に同一構成されたファンおよびアクチュエータを有し、同一部品を使用することで製造費が低下し、貯蔵保管を容易とすることができる。
【0013】
ファンシステムは好ましくはファンによるエンジン冷却用に使用されるが、しかし空調装置の別の部品用にも相応に使用することができ、これに対して相応に調整された信号は車両側制御装置から伝送される。
【0014】
好ましくは、ファン制御装置によってエネルギー節約モードが調節可能であり、エネルギー節約モードは特に、少なくとも部分的に開口する空気フラップ位置と少なくとも低減されたファンモータ回転数とを含む。このモードは特に外気温度、エンジン回転数、走行速度等のパラメータに依存して初期化可能としておくことができ、少なくとも低減されたファンモータ回転数、しかし好ましくはゼロに低減されたファンモータ回転数によってエネルギーの節約が可能である。
【0015】
さらに好ましくは、走行速度が高いときファン制御装置によってファンモータの最大回転数が調整可能であり、こうしてファンが極力僅かな空気力学的抵抗を提供し、最大冷却性能が可能である。
【0016】
有利にはさらに、ファン制御装置によって暖機モードが調節可能であり、暖機モードは特に空気フラップ閉鎖位置とファンモータ遮断とを含む。これにより、自動車エンジンの動作温度に迅速に、それとともに摩耗を減らして到達することが可能である。
【0017】
有利にはさらに、車両エンジン停止後の惰行モードがファン制御装置によって調節可能であり、蓄熱を避けるために冷却モードは冷却することができる。特にこのような惰行の必要は有利にはファン制御装置から自動的に検知することができる。
【0018】
ファンシステムの好ましい1実施において、空気フラップの目標位置もファンモータの目標回転数も符号化信号によって伝送可能であり、これにより所要の信号線路の数は小さく抑えることができる。有利には符号化信号がパルス幅変調信号であり、第1パルス幅範囲に第1空気フラップ位置が割り当てられ、第2パルス幅範囲に第2空気フラップ位置が割り当てられている。有利にはさらに、パルス幅に依存したファンモータ可変目標回転数が1つのパルス幅範囲に割り当てられている。これにより全体として、ファンシステムと自動車との間に、またはファンシステムのモジュール(例えば2つ以上のファンを有するマスタ‐スレーブシステム)間にも、若干数の信号線路、理想的には単に1つの信号線路で通信は可能となる。それに加えて、伝達特性によってこのように定義されたパルス幅変調信号は、例えばCANバスまたはLINバス等の標準化バスシステムで簡単に使用することができる。
【0019】
課題は、ファンシステムを作動させるための制御方法に関して、自動車エンジンの動作状態に依存した少なくとも1つのパラメータを算出するステップ、パラメータに依存して空気フラップの目標位置とファンモータ目標回転数とを演繹するステップ、空気フラップを制御して目標位置に到達しかつファンモータを制御して目標回転数に到達するステップを含む制御方法で解決される。
【0020】
それとともに有利なことに、空気フラップとファンモータとの簡単な同時制御が可能となる。
【0021】
好ましくは、パラメータは自動車エンジンの動作状態に関する情報を含み、非動作時、ファンシステムの惰行制御に関して決定がなされる。それとともに、エンジン停止後の蓄熱の虞に対処することができる。
【0022】
好ましくはさらに、制御方法の過程で暖機モードに関して決定がなされ、暖機モードのとき空気フラップ閉鎖とファンモータ非動作が存在する。これにより、制御方法によって車両エンジンの動作温度に迅速に到達可能とすることができる。
【0023】
好ましくはさらに、エネルギー節約モードに関して決定がなされ、エネルギー節約モードのとき空気フラップ開放が存在し、少なくとも低減された出力でファンモータが作動される。
【0024】
それに加えて、空気フラップの目標位置とファン回転数の目標位置とに関して決定がなされ、決定可能性の1つがファンモータ目標回転数を含み、この目標回転数がゼロと最大回転数との間にある。それとともに、ファンモータのエネルギー消費量は所要の冷却能力に最適に適合させることができ、一時的過剰冷却も避けることができる。
【0025】
好ましくは前記操作ステップが全体として、サブプログラムの態様で1つの呼出可能な制御シーケンスにまとめられており、サブプログラムが1つのループ、特に主プログラムから呼出される。このプログラム技術的配置によって、変化する冷却要求に対して絶えざる適合を簡単に行うことができる。
【0026】
本発明に係る制御方法において好ましくはさらに、ファンシステムが自動車の始動信号によって初期化可能となっている。これは例えば電源電圧投入によって、または特別なバス信号によって行うことができる。それに加えて特別好ましくは、初期化後、自動車によって制御システムのプログラミングを行うことができる。これにより、制御方法を一体化したファンシステムをさまざまな自動車に特別容易に適合させることが可能である。
【0027】
本発明に係る制御方法の好ましい1実施形態において、第1電子制御装置を有する第1ファンモータがマスタシステムとして初期化され、第2電子制御装置を有する少なくとも1つの第2ファンモータがスレーブシステムとして初期化され、両方のマスタまたはスレーブシステムの一方が、それぞれ他方のシステムから動作データを受け取り、それぞれ他方のシステムが自動車から動作データを受け取る。好ましくはさらに、周期的制御ループの過程で、第1電子制御装置を有する第1ファンモータがマスタシステムとして検知され、第2電子制御装置を有する少なくとも1つの第2ファンモータがスレーブシステムとして検知され、両方のマスタまたはスレーブシステムの一方がそれぞれ他方のシステムから動作データを受け取り、それぞれ他方のシステムが自動車から動作データを受け取る。これにより、複数の平行な準自立的システム(ファンおよび空気フラップ)の制御を簡単に行うことができ、それに加えて、一方のシステムの故障時に少なくとも他方のシステムで冷却を制御する緊急動作モードまたはエラーマネジメントを予定することができ、場合によっては、低減された機能性および冷却需要について車両に対してフィードバックが行われる。
【0028】
選択的1実施において、第1電子制御装置を有する第1ファンモータがマスタシステムとして初期化され、第2電子制御装置を有する少なくとも1つの第2ファンモータがスレーブシステムとして初期化され、両方のマスタまたはスレーブシステムの一方が自動車と動作データを交換する。それとともに、両方のモータは車両から動作データを同時に受信し、各モータはそれ自体自動車と通信し、もしくはさまざまなデータを車両に送り戻す。マスタ/スレーブ符号化を介して、各モータにいかなるアドレスを割り当てるのかが確定され、このアドレスで各モータは自己のデータを自動車に伝送する。そのことから、バスシステムの設計に応じて、改良された冗長性がもたらされ、故障時にエラープログラムまたは緊急動作プログラムの実装が簡単に可能となる。
【0029】
一般に好ましくは、ファンシステムのエラーマネジメントが動作可能である。
【0030】
特別好ましくは、本発明に係る制御方法で制御されるファンシステムは請求項1〜22のいずれか1項記載のファンシステムである。
【0031】
装置に関して実現する意味で、本発明に係る制御方法はプログラム制御プロセッサを備えた電子制御装置を含み、請求項23〜34のいずれか1項記載の制御方法がプログラムによって実現されている。
【0032】
本発明のその他の利点と特徴は以下に述べる実施例と従属請求項とから明らかとなる。
【0033】
以下、図面を参考に2つの実施例に基づいて本発明が詳しく説明される。
【実施例】
【0034】
ファンシステムは、本発明に係る実施例によれば、ここで2つのファン1、2と、これを駆動する2つのファンモータ1a、2a、つまり2つのブラシレス電気ファンモータと、空気フラップ用、ここでは多板フラップ用の各1つのアクチュエータ3、4とを有する。多板フラップは詳細には図示されていないが、しかしアクチュエータ3、4に接続された機械的駆動要素3a、4aと空気フラップ用ガイド5も認めることができる。
【0035】
ファンモータ1a、2aはそれぞれ、差込コネクタ1b、2bを介して付属のアクチュエータと直接接続されてこれを直接制御できるハードウェアを内部に備えている(図2参照)。各アクチュエータ3、4を制御するための電子回路は各ファンモータ1a、2aを制御するための回路と同じハウジング内、特に各ファンモータ1a、2aのハウジング内に収容されている。残りの車両に向かってファン1、2はそれぞれ端子6、7を介して残りの車両の電子装置と接続されている。
【0036】
ここでは、両方のファンモータの一方が差込コネクタを介して符号化され、これによりマスタモータとして確定されることによって、自動マスタ/スレーブ検知兼通信部が設けられている。マスタモータは、本実施例(本流変更態様)によれば、車両側電子装置のみと通信する。符号化されていない第2スレーブモータは車両と通信しない。その際、両方のファンモータのハードウェアとソフトウェアは、マスタおよびスレーブの自動検知部が一体化されているように設計されている。
【0037】
このハードウェアと合せてソフトウェアアルゴリズムは、一方のファンモータの故障時にこの故障が検知され、なお機能している相補的ファンが自主的に継続作動できるように設計されている。それとともに冗長性が与えられている。同時に、エンジン冷却機能は特定の所定の車両動作点内ではなお限定されているが、しかし別の車両動作点では無制限に可能でもある(フェールセーブモード)。両方のファンモータの間で共通のバスシステム(ここではCANバスシステム)を介して通信が可能である。特に、マスタモータの故障時、その場合にも少なくとも部分的にエンジン冷却を可能とするために、スレーブモータがマスタモータとして再定義され、もしくは自主的に車両と通信するようになっている。
【0038】
多板フラップのアクチュエータおよびファンモータ用の制御ロジックが図3に流れ図で示してあり、同じ制御ロジックは基本的に車両側制御装置内でも応用可能であり、すなわちファン制御装置がそこに一体化されている。システムは車両側制御装置から、例えばエンジン始動時に自動的に放出される主制御シンテムの信号によって、または電圧の印加によって作動され、それを受けて主プログラムがスタートし、システムは基本位置に移動する。それに加えて、制御ロジックのプログラミング(フラッシュモード)を事前に行うことができる。このようなプログラミングは要求条件に応じて各始動後に行うことができ、例えばファンシステム電子装置の制御プログラム全体を含むことができ、または、例えばエラーマネジメントの場合異常なプログラミングのみを含むこともできる。
【0039】
それに加えて、システムの初期化の過程でマスタまたはスレーブとしてモータの初期化が行われる。利点はなかんずく、モータをその制御装置およびプログラミングも含めて同一とすることができ、一層安価な製造と予備品補給が可能であることにある。
【0040】
以下ではループの構成要素として制御装置およびファン動作用サブプログラムがスタートし、これが図3の右側に詳しく示してある。サブシステムは、システムがなお作動しているか否かを点検する。肯定の場合、正常動作、暖機運転またはエネルギー節約動作であるか否かに依存してさまざまな変更態様が可能である。ファンモータと多板フラップ用アクチュエータは要求条件に応じて給電される(図3の下側部分参照)。否の場合、惰行制御が予定されている限りそれが可能である。
【0041】
惰行モードもしくはシステム停止の問合せが否定されると、例えば車両がまだ動作温度を持たないとき暖機モードを開始するか否かがまず決定される。暖気モードが開始される場合、空気フラップが閉じられ、ファンモータが遮断される。
【0042】
そうでない場合、動作パラメータに応じて、エネルギー節約モードを開始するか否かが決定される。肯定の場合、空気フラップが開放され、ファンモータが遮断され、冷却は相対風のみによって達成される。
【0043】
エネルギー節約モードが開始されない場合、空気フラップおよびファン回転数は必要に応じて調整され、ファン回転数は最大回転数以下とすることもできる。
【0044】
前記決定のとき、例えば冷却材温度、走行速度等の動作パラメータは、確定された数値マトリックスからフラップ位置およびファン回転数の結果的に得られる目標値を読取るために独立変数として利用される。
【0045】
サブプログラムの実行前または実行後(ここでは実行前)、両方のファンモータについて、ファンモータがマスタモータまたはスレーブモータのいずれであるのかが算出され、相応する別の制御機器との通信が相応に行われる。マスタモータはさらに車両側制御装置と通信し、冷却需要および走行速度に関する信号がマスタモータに転送される。
【0046】
サブプログラムの通過後、制御機器がマスタモータに付属するのかスレーブモータに付属するのかに依存して分岐が行われる。
【0047】
スレーブモータに付属する場合、動作データを交換するためにマスタ機器との通信が開始される。その後、前記ループが再度通過される(マスタ/スレーブ検知とサブプログラムの呼出し)。
【0048】
マスタモータの制御機器である場合、まずスレーブ機器と通信される。次に、エラーマネジメントの必要性が算出され、エラーまたは欠陥のとき場合によっては、図示しない特別プログラムが呼出される。エラーのない正常な場合引き続き、なかんずく少なくとも1つの動作パラメータ、しかし一般には複数の動作パラメータを読み出すために車両と通信される。これは例えばシステム状態(モータ入/切)および走行速度の値、外気温度、冷却材温度、エンジン出力、エンジン動作モード(例えばスポーティーまたはエコノミー)である。
【0049】
実施例によれば、管形ファンとして構成されるファンおよび付属する多板フラップの2つのファンモータの特殊な調節が設けられている。図1が示すファンカウルは空気流用に上側長方形の開口部を有し、これらの開口部は図示しない多板フラップで閉鎖可能である。ファンカウルは走行方向で冷却器の下流に配置されている(「吸引ファン配置」)。走行速度の信号はここでは車両側制御装置から到来する。この配置においてファン制御装置は、十分な相対風のとき単数または複数のファンが遮断されたままとなり、空気が開口部を貫流でき、低速走行または車両停止時にファンが投入され、開口部が閉じられることを確保しなければならない。
【0050】
実施例の1変更態様によれば、ファン領域における空気流速用センサがファンシステムに一体化して設けられており、車両が低速で走行するにもかかわらず強い向かい風等の、前記制御装置において現れることのある外的影響の結果としてのエラーは回避することができ、これに関してファン制御装置は車両側制御装置に左右されない。
【0051】
他の変更態様に相応してエンジン冷却材用温度センサが設けられており、この温度センサはその測定値をファン制御装置に直接転送し、ファンモータおよび空気フラップ用アクチュエータを需要に依存して相応に調節する。これに関連してシステムも車両側制御装置に左右されない。
【0052】
図4は、例えば本発明に係る制御装置にプログラミングしておくことのできる例えば固定数値マトリックスの態様の伝達特性を示す。目標状態・開/閉への空気フラップの制御も、連続的に設定可能な目標回転数でのファンモータの制御も、図示した伝達特性によって行うことができ、その際同時に、単一もしくは前記構成要素に関して共通するパルス幅変調信号が使用されるだけである。パルス幅(TVin)は0%〜100%とすることができる。ここでは0%〜10%のパルス幅がファンモータの停止および空気フラップ閉鎖に割り当てられている。これは暖機モードに相当する。10%〜11%TVinの範囲内でファンモータ遮断、フラップ解放であり、これはエネルギー節約モードに相当することができる。11%〜90%の範囲では空気フラップ閉鎖、エンジン回転数は技術的に有意義な33%の極大〜最高回転数の間である。パルス幅に直線的に依存している。90%〜95%TVinの範囲では最大ファン回転数が存在し、フラップは93%〜94%の範囲内でのみ開放し、その他では閉鎖している。95%〜100%TVinの間でやはりエンジン遮断、空気フラップ閉鎖が存在する。こうして、動作にとって有意義なすべての組合せが一次元伝達特性もしくは単一のパルス幅変調信号内で符号化されている。
【0053】
このような伝達特性はマスタモータと車両との間の通信にも、マスタモータとスレーブモータとの間の通信にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】相対風用開口部を備えたファンカウルの図であり、開口部は図示しない多板フラップで閉鎖可能である。
【図2】ファンシステムの回路図である。
【図3】制御装置の基本構造を明らかにする流れ図である。
【図4】ファンモータ回転数の目標値と空気フラップ位置の目標値とを同時に伝送するための伝達特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車エンジンを冷却するためのファンシステムであって、ファンモータ(1a、2a)を備えた少なくとも1つのファン(1、2)と、制御機器と、空気フラップ用アクチュエータ(3、4)とを有するものにおいて、ファンシステムがこれに一体化されたファン制御装置を有し、このファン制御装置が独自に単数または複数のファンモータ(1a、2a)と空気フラップ用の単数または複数のアクチュエータ(3、4)とを制御することを特徴とするファンシステム。
【請求項2】
ファン制御装置が車両側制御装置と接続されていることを特徴とする、請求項1記載のファンシステム。
【請求項3】
ファン制御装置が車両側制御装置に実質左右されず、車両側制御装置から投入信号および/または遮断信号を受信することを特徴とする、請求項2記載のファンシステム。
【請求項4】
ファン制御装置が車両側制御装置に実質左右されず、車両側制御装置からエンジン冷却需要に関する信号を受信することを特徴とする、請求項2または3記載のファンシステム。
【請求項5】
ファン制御装置が車両側制御装置に実質左右されず、車両側制御装置から走行速度に関する信号を受信することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項6】
ファン制御装置が車両側制御装置に実質左右されず、車両側制御装置から空気温度に関する信号を受信することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項7】
ファン制御装置が、冷却材温度および/またはエンジン出力および/またはファン領域における空気流速および/または空気温度用の少なくとも1つのセンサと接続されており、単数または複数のセンサの測定値が、単数または複数のファンモータおよび単数または複数の空気フラップ用アクチュエータの制御用に使用されることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項8】
ファン制御装置が、空気フラップ位置検知またはアクチュエータ位置検知用に少なくとも1つのセンサを有することを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセンサが、アクチュエータ制御装置に一体化されたセンサシステムの一部であることを特徴とする、請求項8記載のファンシステム。
【請求項10】
ファン制御装置がファンモータハウジングの表面または内部に配置され、インタフェースを介して車両側制御装置と接続されていることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項11】
ファン制御装置が、インタフェース、特にCANバスまたはLINバス等の標準インタフェースを介して残りの車両側制御装置と接続されており、ファン制御装置のパラメータ引渡および/またはプログラミングがインタフェースを介して行うことができることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項12】
内部ファン‐バスシステムが設けられていることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項13】
信号ユニットまたは1つのマスタユニットおよび単数または複数のスレーブユニット用の制御機器自動検知部が設けられていることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項14】
ファンシステムが2つのファンを備えている場合、マスタユニットの故障時にスレーブユニットの自動的継続動作を可能とするフェールセーフモジュールが設けられていることを特徴とする、請求項13記載のファンシステム。
【請求項15】
ファンシステムがファンモータ付きの2つのファンと空気フラップ用の2つのアクチュエータとを有し、ファンとアクチュエータが同一構成されていることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項16】
ファン制御装置によってエネルギー節約モードが調節可能であり、エネルギー節約モードが特に、少なくとも部分的に開口する空気フラップ位置と少なくとも低減されたファンモータ回転数とを含むことを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項17】
走行速度が高いときファン制御装置によってファンモータの最大回転数が調整可能であることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項18】
ファン制御装置によって暖機モードが調節可能であり、暖機モードが特に空気フラップ閉鎖位置とファンモータ遮断とを含むことを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項19】
車両エンジン停止後の惰行モードがファン制御装置によって調節可能であることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項20】
空気フラップの目標位置もファンモータの目標回転数も符号化信号によって伝送可能であることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のファンシステム。
【請求項21】
符号化信号がパルス幅変調信号であり、第1パルス幅範囲に第1空気フラップ位置が割り当てられ、第2パルス幅範囲に第2空気フラップ位置が割り当てられていることを特徴とする、請求項21記載のファンシステム。
【請求項22】
パルス幅に依存したファンモータ可変目標回転数が1つのパルス幅範囲に割り当てられていることを特徴とする、請求項21記載のファンシステム。
【請求項23】
自動車エンジンを冷却するファンシステムを作動させるための制御方法であって、
a.自動車エンジンの動作状態に依存した少なくとも1つのパラメータを算出するステップ、
b.パラメータに依存して空気フラップ目標位置とファンモータ目標回転数とを演繹するステップ、
c.空気フラップを制御して目標位置に到達しかつファンモータを制御して目標回転数に到達するステップを含む制御方法。
【請求項24】
パラメータが自動車エンジンの動作状態に関する情報を含み、非動作時、ファンシステムの惰行制御に関して決定がなされることを特徴とする、請求項23記載の制御方法。
【請求項25】
暖機モードに関して決定がなされ、暖機モードのとき空気フラップ閉鎖とファンモータ非動作が存在することを特徴とする、請求項23または24記載の制御方法。
【請求項26】
エネルギー節約モードに関して決定がなされ、エネルギー節約モードのとき空気フラップ開放が存在し、少なくとも低減された出力でファンモータが作動されることを特徴とする、請求項23〜25のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項27】
空気フラップの目標位置とファン回転数の目標位置とに関して決定がなされ、決定可能性の1つがファンモータ目標回転数を含み、この目標回転数がゼロと最大回転数との間にあることを特徴とする、請求項23〜26のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項28】
操作ステップが全体として、サブプログラムの態様で1つの呼出可能な制御シーケンスにまとめられており、サブプログラムが1つのループから呼出されることを特徴とする、請求項23〜27のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項29】
ファンシステムが自動車の始動信号によって初期化可能であることを特徴とする、請求項23〜28のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項30】
初期化後、自動車によって制御システムのプログラミングを行うことができることを特徴とする、請求項23〜29のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項31】
第1電子制御装置を有する第1ファンモータがマスタシステムとして初期化され、第2電子制御装置を有する少なくとも1つの第2ファンモータがスレーブシステムとして初期化され、両方のマスタまたはスレーブシステムの一方が、それぞれ他方のシステムから動作データを受け取り、それぞれ他方のシステムが自動車から動作データを受け取ることを特徴とする、請求項23〜30のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項32】
周期的制御ループの過程で、第1電子制御装置を有する第1ファンモータがマスタシステムとして検知され、第2電子制御装置を有する少なくとも1つの第2ファンモータがスレーブシステムとして検知され、両方のマスタまたはスレーブシステムの一方がそれぞれ他方のシステムから動作データを受け取り、それぞれ他方のシステムが自動車から動作データを受け取ることを特徴とする、請求項23〜31のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項33】
第1電子制御装置を有する第1ファンモータがマスタシステムとして初期化され、第2電子制御装置を有する少なくとも1つの第2ファンモータがスレーブシステムとして初期化され、両方のマスタまたはスレーブシステムの一方が自動車と動作データを交換することを特徴とする、請求項23〜30のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項34】
ファンシステムのエラーマネジメントが動作可能であることを特徴とする、請求項23〜33のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項35】
ファンシステムが請求項1〜22のいずれか1項記載のファンシステムであることを特徴とする、請求項23〜34のいずれか1項記載の制御方法。
【請求項36】
プログラム制御プロセッサを備えた電子制御装置を含む、自動車の冷却材を冷却するための装置であって、請求項23〜35のいずれか1項記載の制御方法がプログラムによって実現されている装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−517195(P2008−517195A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536055(P2007−536055)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010830
【国際公開番号】WO2006/042648
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(594042033)ベール ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (222)
【Fターム(参考)】